(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240903BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240903BHJP
B65H 29/20 20060101ALI20240903BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G03G21/00 530
G03G15/20 505
B65H29/20
G03G15/00 460
(21)【出願番号】P 2020181195
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和澄 利洋
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-123368(JP,A)
【文献】特開2005-250335(JP,A)
【文献】特開2014-119564(JP,A)
【文献】特開2016-212339(JP,A)
【文献】特開2008-065146(JP,A)
【文献】特開2007-058077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/20
B65H 29/20
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に接触可能な位置に配置される接触部と、
前記記録媒体を冷却するための冷却部と、
前記記録媒体の温度の情報に基づいて、前記冷却部の前記記録媒体に対する冷却作用を制御する制御部と、
を備え、
前記接触部は、搬送される前記記録媒体に接触可能であり、
前記冷却部は、前記記録媒体に送風可能な送風装置であり、前記記録媒体の搬送方向における、前記接触部よりも上流側の上流位置および下流側の下流位置の何れかに向けて送風可能に構成され、
前記制御部は、前記記録媒体が前記接触部を通過する時間内で推移する温度範囲が所定温度範囲をまたぐ場合、前記所定温度範囲をまたがないように前記冷却部における冷却量を変更し、
前記所定温度範囲は、前記記録媒体に形成された画像に含まれる離型剤の結晶化温度または融点からガラス転移点までの温度域であり、
前記制御部は、前記温度の情報に基づいて、前記冷却部の送風方向を選択する、
画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記温度の情報に基づいて、前記接触部に起因する前記記録媒体の温度変化を推定し、
前記温度変化の推定結果に基づいて前記冷却部における冷却量を調整する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記推定結果に基づく、所定時間内で推移する温度範囲と所定温度範囲との関係性に基づいて、前記冷却部における冷却量を調整する、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記温度範囲が、前記所定温度範囲をまたぐ場合、前記冷却部における冷却量を設定冷却量から変更する、
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録媒体の温度を検出する温度検出部を備え、
前記制御部は、前記温度検出部の検出結果に係る情報に基づいて前記冷却部の前記冷却作用を制御する、
請求項1~4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記画像形成装置に入力された前記記録媒体の情報に基づいて前記冷却部の前記冷却作用を制御する、
請求項1~5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像形成装置の周囲の温度および湿度の少なくとも一方の情報に基づいて前記冷却部の前記冷却作用を制御する、
請求項1~6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記記録媒体に形成される画像データの情報に基づいて前記冷却部の前記冷却作用を制御する、
請求項1~7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記記録媒体に形成された画像の読取情報に基づいて前記冷却部の前記冷却作用を制御する、
請求項1~8の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記画像形成装置の機内温度に応じて、前記冷却部における前記冷却作用の制御を停止する、
請求項1~9の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記接触部の温度に応じて、前記冷却部における前記冷却作用の制御を停止する、
請求項1~9の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記冷却部は、複数設けられており、
前記制御部は、複数の冷却部の冷却作用をそれぞれ制御する、
請求項1~11の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記接触部は、前記記録媒体が搬送される搬送経路部における、前記記録媒体の一部分と接触可能な位置に設けられ、
前記冷却部は、前記搬送経路部における前記接触部よりも上流側に対応する位置を冷却可能に構成されている、
請求項1~12の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記記録媒体の搬送方向における前記接触部および前記冷却部よりも上流側に配置され、前記記録媒体に画像を加熱定着する定着部を備える、
請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記記録媒体に形成される画像の表面層には、前記定着部と前記画像とを剥離させるための離型剤が含まれる、
請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
記録媒体に接触可能な位置に配置される接触部と、
前記記録媒体を冷却するための冷却部と、
前記記録媒体の温度の情報に基づいて、前記冷却部の前記記録媒体に対する冷却作用を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記記録媒体が前記接触部を通過する時間内で推移する温度範囲が所定温度範囲をまたぐ場合、前記所定温度範囲をまたがないように前記冷却部における冷却量を変更し、
前記所定温度範囲は、前記記録媒体に形成された画像に含まれる離型剤の結晶化温度または融点からガラス転移点までの温度域であり、
前記制御部は、
前記温度の情報に基づいて、前記接触部に起因する前記記録媒体の温度変化を推定し、
前記温度変化の推定結果および前記記録媒体に形成される画像データの情報に基づいて前記冷却部における冷却量を調整する、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、画像が形成された記録媒体を加熱加圧することにより、画像を記録媒体に定着する定着部を備えたものが知られている。定着部においては、画像の定着性の観点から所定の範囲内になるように定着温度が制御されている。
【0003】
定着部を通過した記録媒体は高温状態で搬送されるため、例えば特許文献1には、当該記録媒体に形成された画像を冷却するための冷却装置(送風機)が設けられた構成が開示されている。
【0004】
また、記録媒体に形成される画像であるトナーには、定着部における離型性の観点から離型剤(ワックス)が含まれている。この離型剤は、高温時は液体で存在し、温度降下によって固まり、定着後の画像の表面にしみ出してくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、離型剤は、温度推移の過程において、所定温度範囲を推移する際の温度変化量に応じて透明になる場合と、白く濁る場合とに分かれる。具体的には、所定温度範囲を推移する際の温度変化量が比較的大きい場合、離型剤が含まれる表面層は透明になり、所定温度範囲を推移する際の温度変化量が比較的小さい場合、表面層は白く濁る。
【0007】
画像形成装置には、記録媒体の搬送経路において、記録媒体と接触する部材(ローラー、ガイド、コロ、ベアリング等)が設けられているので、このような部材に記録媒体が熱を奪われる場合がある。つまり、この部材が存在することにより、記録媒体の幅方向の温度状態が不均一になるおそれがある。そのため、画像における表面層の状態が幅方向において不均一になるおそれがあり、ひいては画像における光沢ムラが発生するおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、画像における表面層の状態が幅方向において不均一になることを抑制することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、
記録媒体に接触可能な位置に配置される接触部と、
前記記録媒体を冷却するための冷却部と、
前記記録媒体の温度の情報に基づいて、前記冷却部の前記記録媒体に対する冷却作用を制御する制御部と、
を備え、
前記接触部は、搬送される前記記録媒体に接触可能であり、
前記冷却部は、前記記録媒体に送風可能な送風装置であり、前記記録媒体の搬送方向における、前記接触部よりも上流側の上流位置および下流側の下流位置の何れかに向けて送風可能に構成され、
前記制御部は、前記記録媒体が前記接触部を通過する時間内で推移する温度範囲が所定温度範囲をまたぐ場合、前記所定温度範囲をまたがないように前記冷却部における冷却量を変更し、
前記所定温度範囲は、前記記録媒体に形成された画像に含まれる離型剤の結晶化温度または融点からガラス転移点までの温度域であり、
前記制御部は、前記温度の情報に基づいて、前記冷却部の送風方向を選択する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像における表面層の状態が幅方向において不均一になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】本実施の形態に係る画像形成装置の制御系の主要部を示す図である。
【
図3A】定着部と搬送ローラー部とを側方から見た図である。
【
図3B】定着部と搬送ローラー部とを上方から見た図である。
【
図4】用紙の搬送方向の位置における用紙の温度変化を示す図である。
【
図5】用紙の幅方向の位置における用紙の温度変化を示す図である。
【
図6】冷却部の冷却量を調整した場合の、用紙の搬送方向の位置における用紙の温度変化を示す図である。
【
図7】複数層で構成される色と、用紙のサイズまたは画像面積とに、冷却部の冷却量を関連付けたテーブルの例を示す図である。
【
図8】画像形成装置における冷却部における冷却量調整制御の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】複数の搬送ローラー部を有する例に係る形態における、定着部と搬送ローラー部とを側方から見た図である。
【
図10A】
図9に係る形態における、用紙の搬送方向の位置における用紙の温度変化を示す図である。
【
図10B】
図10Aにおいて冷却部の冷却量を調整した場合の用紙の温度変化を示す図である。
【
図11】複数の冷却部を有する形態における、定着部と搬送ローラー部とを側方から見た図である。
【
図12】温度検出部を有する形態における、定着部と搬送ローラー部とを側方から見た図である。
【
図13】冷却量の調整量と、画像に係るトナーの層数とに、冷却部における冷却量を関連付けたテーブルの一例である。
【
図14】冷却量の調整量と、画像に係るトナーの層数とに、冷却部における冷却量を関連付けたテーブルの一例である。
【
図15A】冷却部の送風方向を変更可能な構成における、定着部と搬送ローラー部とを側方から見た図である。
【
図15B】冷却部の送風方向を変更可能な構成における、定着部と搬送ローラー部とを側方から見た図である。
【
図16】搬送ローラー部が移動可能な構成における、定着部と搬送ローラー部とを側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図2は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。
【0013】
図1および
図2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙S(記録媒体)に二次転写することにより、画像を形成する。
【0014】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0015】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20,画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、制御部101および冷却部200を備える。
【0016】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)102、ROM(Read Only Memory)103、RAM(Random Access Memory)104等を備える。CPU102は、ROM103から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM104に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0017】
制御部101は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部101は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0018】
図1に示すように、画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0019】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
【0020】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0021】
図2に示すように、操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部101から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部101に出力する。
【0022】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部101の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0023】
図1に示すように、画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0024】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示および説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、CまたはKを添えて示すこととする。
図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0025】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414およびドラムクリーニング装置415等を備える。
【0026】
感光体ドラム413は、例えばドラム状の金属基体の外周面に、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層が形成された有機感光体よりなる。
【0027】
制御部101は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
【0028】
帯電装置414は、例えば帯電チャージャーであり、コロナ放電を発生させることにより、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
【0029】
露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。その結果、感光体ドラム413の表面のうちレーザー光が照射された画像領域には、背景領域との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0030】
現像装置412は、二成分逆転方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分の現像剤を付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0031】
現像装置412には、例えば帯電装置414の帯電極性と同極性の直流現像バイアス、または交流電圧に帯電装置414の帯電極性と同極性の直流電圧が重畳された現像バイアスが印加される。その結果、露光装置411によって形成された静電潜像にトナーを付着させる反転現像が行われる。
【0032】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に当接され、弾性体よりなる平板状のドラムクリーニングブレード415A等を有し、中間転写ベルト421に転写されずに感光体ドラム413の表面に残留するトナーを除去する。
【0033】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424およびベルトクリーニング装置426等を備える。中間転写ベルト421は、本発明の「像担持体」に対応する。
【0034】
中間転写ユニット42は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向の下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写ニップにおけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0035】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0036】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0037】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側、つまり、一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0038】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、バックアップローラー423Bに二次転写バイアスを印加し、用紙Sの表面側、つまり、中間転写ベルト421と当接する側にトナーと同極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写され、当該用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0039】
ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成いわゆるベルト方式の二次転写ユニットを採用しても良い。
【0040】
定着部60は、用紙Sの搬送方向において、後述する冷却部200よりも上流側に配置されている(
図3Aも参照)。定着部60は、用紙Sの定着面、つまりトナー像が形成されている面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Sの裏面つまり定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、および加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Sを挟持して搬送する定着ニップが形成される。
【0041】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。
【0042】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙Sが予め設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラーを有する。
【0043】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0044】
図3Aに示すように、冷却部200は、搬送経路部53を搬送される用紙Sを冷却するためのファン(送風装置)であり、定着部60よりも下流側に配置されている。冷却部200は、搬送経路部53における、後述する搬送ローラー部210よりも上流側に対応する位置を冷却可能に構成されており、定着部60を通過した用紙Sに送風することで、用紙Sを冷却する。
【0045】
また、用紙Sの搬送方向において、搬送経路部53における冷却部200よりも下流側には、搬送ローラー部210が設けられている。搬送ローラー部210は、例えば金属で構成されており、
図3Bに示すように、用紙Sの幅方向において2つ並んで配置されている。2つの搬送ローラー部210の間隔は、画像形成装置1に適用可能な最小サイズの用紙の幅に合わせて設定されている。搬送ローラー部210は、本発明の「接触部」に対応する。なお、
図3Bには、冷却部200の図示を省略している。
【0046】
制御部101は、用紙Sの温度の情報に基づいて、冷却部200の用紙Sに対する冷却作用を制御する。具体的には、制御部101は、温度の情報に基づいて、搬送ローラー部210に起因する用紙Sの温度変化を推定する。そして、制御部101は、当該温度変化の推定結果に基づいて冷却部200における冷却量を調整する。
【0047】
用紙Sの温度の情報は、例えば、画像形成装置1に入力された用紙Sの種類に関する情報(坪量、サイズ、目方向等)である。この理由は、例えば定着部60における定着温度が決まっているため、当該定着温度に基づいて用紙Sの温度が実験的に推定し得るためである。
【0048】
また、用紙Sの温度の情報は、例えば、画像形成装置1の周囲の温度および湿度の少なくとも一方の情報であっても良い。この理由は、画像形成装置1の周囲の温度および湿度の少なくとも一方の情報と、定着温度との関係性から用紙Sの温度が実験的に推定し得るためである。なお、画像形成装置1の周囲の温度および湿度の情報は、画像形成装置1に設けられた温湿度検出部や、画像形成装置1の周囲に設けられた温湿度検出部等の情報であり、画像形成装置1が自動で、またはユーザーの手動入力によって、当該情報を取得する。
【0049】
搬送ローラー部210に起因する用紙Sの温度変化とは、用紙Sが搬送ローラー部210を通過する前と、用紙Sが搬送ローラー部210を通過した後との、用紙Sの温度変化である。
【0050】
用紙Sが搬送ローラー部210の部分を通過する際、用紙Sと搬送ローラー部210とが接触することにより、用紙Sの熱が搬送ローラー部210に奪われるので、用紙Sの温度が、搬送ローラー部210との接触前よりも低下する。
【0051】
例えば、定着部60付近を通過する際の用紙Sの温度は、
図4に示す実線L1のように変化することが実験的にわかっている。より詳細には、定着部60よりも上流側の位置では、用紙Sの温度はT1であるが、定着部60の位置を通過すると、定着部60によって加熱されることにより、用紙Sの温度はT1からT2に急激に上昇する。
【0052】
そして、用紙Sが冷却部200の位置を通過する際に冷却部200によって冷却されて温度が低下した後、用紙Sが定着部60よりも下流側に向かうほど、用紙Sの温度が放熱によって徐々に低下していく。なお、
図4における横軸(用紙Sの位置)においては、右から左に向かうにつれて、搬送方向の上流側から下流側に向かう位置であることを示している。
【0053】
しかし、搬送ローラー部210のように、搬送中の用紙Sの一部分に接触する接触部が搬送経路部53に存在すると、用紙Sの温度が
図4に示す破線L2のように、当該接触部との接触部分の位置で急激に低下する。つまり、当該接触部分の位置の前後において、用紙Sの単位時間当たりの温度変化量が大きくなる。
【0054】
ここで、例えば本実施の形態のように、接触部が幅方向に2つ並ぶローラー対で構成される搬送ローラー部210である場合、搬送ローラー部210と接触した後における、用紙Sの幅方向にわたる温度が均一にならなくなる。
【0055】
具体的には、用紙Sには、幅方向において、搬送ローラー部210と接触する部分(接触部分)と接触しない部分(非接触部分)とが存在するので、例えば、
図5に示すように、用紙Sの幅方向の温度分布が、非接触部分に対して、接触部分が凹んだようなものとなる。
【0056】
そのため、接触部分に対応する部分における用紙Sの温度変化が、搬送ローラー部210の接触前と、接触後とで、非接触部分に対応する部分の温度変化よりも大きくなるという現象が発生する。
【0057】
また、
図3Aに示すように、用紙Sに形成される画像であるトナーGには、定着部60と画像とを剥離するための離型剤(例えば、ワックス)が含まれている。この離型剤は、高温時は液体で存在し、温度降下によって固まり、画像の表面にしみ出してくる。そのため、画像は、離型剤が含まれる表面層WとトナーGによるトナー層G1とが積層されたものとなる。
【0058】
離型剤は、定着部60付近における温度推移の過程において、所定温度範囲を推移する際の温度変化量に応じて透明になる場合と、白く濁る場合とに分かれる。所定温度範囲は、例えば、50~90℃の範囲であり、離型剤が結晶性の場合の結晶化温度、離型剤が非結晶性の場合は融点からガラス転移点までの温度域である。
【0059】
所定温度範囲を推移する際の温度変化量が比較的大きい場合、離型剤(表面層)は透明になり、所定温度範囲を推移する際の温度変化量が比較的小さい場合、離型剤(表面層)は白く濁る。
【0060】
上記したように、定着部60を通過した用紙Sが搬送ローラー部210の部分を通過する場合、搬送ローラー部210との接触部分における温度変化量が非接触部分よりも大きくなっている。そのため、搬送ローラー部210付近を通過する際における用紙Sの温度が所定温度範囲に近いと、画像において離型剤が透明になる部分と、白く濁る部分とが画像に表れてしまうことがある。
【0061】
例えば、
図3Bに示すように、用紙Sの搬送ローラー部210との接触部分における、接触直前の温度から接触直後の温度までの温度変化量が、所定温度範囲をまたぐ程度に大きい場合、当該接触部分における離型剤が透明になる(
図3BにおけるW1の部分)。
【0062】
それに対し、用紙Sの搬送ローラー部210との非接触部分においては、接触直前の温度から接触直後の温度までの温度変化量が緩やかなままであるので、当該非接触部分における離型剤が白く濁る(
図3BにおけるW2の部分)。
【0063】
そのため、用紙Sに形成された画像において、搬送ローラー部210に接触した部分と、搬送ローラー部210に接触しない部分とで、表面層Wの状態が異なった状態となる。つまり、用紙Sにおける表面層Wの状態が幅方向において不均一になり、ひいては画像における光沢ムラ(スジ)が発生する。
【0064】
本実施の形態では、制御部101が、用紙Sの温度の情報に基づいて、上記の、接触部分における温度変化を推定する。推定される温度変化は、例えば、用紙Sの種類(坪量、サイズ、目方向等)、画像形成条件(用紙Sの搬送速度、定着温度、画像データ等)、搬送ローラー部210の材質等を考慮して実験的に算出された温度変化量等である。
【0065】
制御部101は、推定結果に基づく、所定時間内で推移する温度範囲と所定温度範囲との関係性に応じて、冷却部200における冷却量を調整する。より詳細には、制御部101は、所定時間内で推移する温度範囲が所定温度範囲をまたぐ場合、冷却部200における冷却量を、設定冷却量から変更する。本実施の形態では、冷却部200における冷却量は0に調整される。
【0066】
所定時間は、例えば用紙Sの先端が搬送ローラー部210に到達してから用紙Sの末端が搬送ローラー部210を抜けるまでの時間であり、搬送速度等により設定可能な時間である。
【0067】
設定冷却量は、例えば、画像形成時において予め設定された冷却量である。本実施の形態では、例えば冷却部200における最大冷却量が、設定冷却量として設定されている。
【0068】
所定時間(例えば、
図4における搬送ローラー部の位置に対応する範囲に対応する時間)内で推移する温度範囲が所定温度範囲をまたぐ場合、表面層は透明になる。そのため、表面層の状態が、非接触部分における表面層の白く濁った状態と異なるものとなるので、光沢ムラが発生する可能性が高くなる。
【0069】
そのため、この場合、例えば冷却部200における冷却量が設定冷却量(最大冷却量)よりも弱くなるように、当該冷却量を調整することにより、所定時間内で推移する温度範囲が、所定温度範囲をまたがないようにすることが可能となる。
【0070】
例えば、
図6に示す例では、冷却部200の位置での温度変化量が小さくなるため、所定時間内で推移する温度範囲(搬送ローラー部210の位置を用紙Sが通過する際の用紙Sの温度)が、所定温度範囲よりも高い温度の範囲となっている。これにより、所定温度範囲に用紙Sの温度が推移する際には、緩やかな温度変化とすることが可能となる(破線L2参照)。
【0071】
その結果、搬送ローラー部210と接触した部分と、搬送ローラー部210と接触しなかった部分とで、表面層Wの状態が異なった状態となることを抑制することができ、ひいては画像における光沢ムラが発生することを抑制することができる。
【0072】
また、制御部101は、所定時間内で推移する温度範囲が所定温度範囲をまたがない場合、冷却部200における冷却量を設定冷却量から変更しない。
【0073】
この場合、冷却部200における所望の冷却作用を維持することができる。
【0074】
なお、所定時間内で推移する温度範囲が所定温度範囲をまたがない場合であっても、例えば、所定温度範囲の大部分に、所定時間内で推移する温度範囲が差し掛かっているような場合等においては、制御部101は、冷却部200における冷却量を設定冷却量から変更しても良い。この温度範囲の、所定温度範囲への差し掛かり度合いは、任意に決定することができる。
【0075】
また、制御部101は、用紙Sの温度に関する情報以外に、用紙Sに形成される画像データの情報に基づいて、冷却部200における冷却量を調整しても良い。
【0076】
例えば、Y色のみ、M色のみ、C色のみ、K色のみ等、1色のベタ画像で構成される1層ベタ画像の場合、トナー量が少ないことにより離型剤の量も少ないので、光沢ムラが発生したとしても、ユーザーが視認しにくい。
【0077】
そのため、制御部101は、画像データが1層ベタ画像に係るものである場合、冷却部200における冷却量を調整しない。
【0078】
また、Y色、M色、C色およびK色のうち、2色以上を用いるベタ画像(例えば、Red、Blue、Green)で構成される複数層ベタ画像の場合、トナー量が増えることにより離型剤の量も増えるので、光沢ムラが発生すると、ユーザーが視認しやすいものとなる。
【0079】
そのため、制御部101は、画像データが複数層ベタ画像に係るものである場合、冷却部200における冷却量を調整する。
【0080】
こうすることで、光沢ムラの発生を抑制しやすくすることができる。
【0081】
また、複数層ベタ画像であっても、画像面積が小さいと、トナー量が少なく、光沢ムラが発生しても、ユーザーが視認しにくい場合がある。例えば、はがきサイズ等の用紙サイズが小さい用紙に形成された画像や、画像面積が40cm2以下の画像については、光沢ムラが発生しても画像サイズが小さいため、光沢ムラが目立ちにくい。
【0082】
そこで、制御部101は、画像データが複数層ベタ画像である場合、画像サイズに応じて、冷却部200における冷却量を調整するようにしても良い。画像サイズについては、用紙のサイズで判断しても良いし、画像面積で判断しても良い。
【0083】
例えば、用紙のサイズがはがきサイズである場合や、画像面積が40cm2以下である場合、制御部101は、冷却部200における冷却量を調整しない。また、用紙のサイズがA4Sサイズ以上である場合や、画像面積が60cm2以上である場合、制御部101は、冷却部200における冷却量を調整する。
【0084】
こうすることで、複数層ベタ画像であっても光沢ムラが目立たない場合は、冷却部200における冷却量を調整せずに冷却部200における冷却作用を確保し、光沢ムラが目立つ場合は、冷却部200における冷却量を調整して、光沢ムラを発生しないようにすることができる。
【0085】
また、
図7に示すように、色と、用紙のサイズまたは画像面積とに、冷却部200における冷却量を関連付けたテーブルを参照することで、冷却量を調整するようにしても良い。
【0086】
図7における上側のテーブルは、色と用紙のサイズとに冷却部200における冷却量を関連付けたテーブルである。
図7における下側のテーブルは、色と画像面積とに冷却部200における冷却量を関連付けたテーブルである。
図7における「〇」は、光沢ムラが目立ちにくいことを示し、「△」は、光沢ムラがやや目立つことを示し、「×」は、光沢ムラが目立つことを示している。これらのテーブルは、例えば記憶部72等に記憶される。
【0087】
言い換えると、
図7における「○」は、冷却部200における冷却量を調整しないことを示し、「△」および「×」は、冷却部200における冷却量を調整することを示している。
【0088】
これにより、テーブルを参照することによって、冷却部200における冷却量の調整を容易に行うことができる。
【0089】
以上のように構成された画像形成装置1の冷却部200における冷却量調整制御の動作例について説明する。
図8は、画像形成装置1の冷却部200における冷却量調整制御の動作例を示すフローチャートである。
図8における処理は、例えば、画像形成装置1が印刷ジョブの実行指令を受け付けた際に適宜実行される。
【0090】
図8に示すように、制御部101は、画像データの情報を取得する(ステップS101)。次に、制御部101は、画像データに係る画像が、光沢ムラが視認しやすい画像であるか否かについて判定する(ステップS102)。
【0091】
判定の結果、光沢ムラが視認しにくい画像である場合(ステップS102、NO)、処理はステップS106に遷移する。一方、光沢ムラが視認しやすい画像である場合(ステップS102、YES)、制御部101は、用紙Sの温度に関する情報を取得し(ステップS103)、所定時間内で推移する温度範囲が所定温度範囲をまたぐか否かについて判定する(ステップS104)。
【0092】
判定の結果、温度範囲が所定温度範囲をまたぐ場合(ステップS104、YES)、制御部101は、冷却部200における冷却量を調整する(ステップS105)。一方、温度範囲が所定温度範囲をまたがない場合(ステップS104、NO)、制御部101は、冷却部200における冷却量を調整しない(ステップS106)。ステップS105またはステップS106の後、本制御は終了する。
【0093】
なお、上記のフローチャートには、ステップS101,S102と、ステップS103,S104とが組み合わされていたが、これに限定されず、ステップS101,S102、および、ステップS103,S104の何れか一方のみのフローチャートであっても良い。
【0094】
以上のように構成された本実施の形態によれば、冷却部200における冷却量を調整することにより、画像における表面層の状態が幅方向において不均一になることを抑制することができ、ひいては画像における光沢ムラが発生することを抑制することができる。
【0095】
また、用紙Sの温度の情報に基づいて、搬送ローラー部210に起因する用紙Sの温度変化を推定し、その推定結果に基づいて、冷却部200における冷却量を調整する。その結果、表面層の状態の均一性を正確に維持することができる。
【0096】
また、搬送ローラー部210が金属で構成されているので、用紙Sの熱を奪いやすく、ひいては用紙Sの温度が低下しやすく、用紙Sの幅方向の温度状態が不均一になりやすい。
【0097】
本実施の形態では、冷却部200における冷却量を調整可能であるので、用紙Sの幅方向温度状態が不均一になりやすい構成であっても、用紙Sの画像における表面層の状態を均一にすることができる。
【0098】
なお、上記実施の形態では、搬送ローラー部210が1つのみの構成であったが、本発明はこれに限定されず、例えば
図9に示すように、搬送ローラー部が複数設けられた構成であっても良い。
【0099】
この構成では、搬送経路部53における定着部60よりも下流側に、第1搬送ローラー部220、第2搬送ローラー部230、第3搬送ローラー部240、第4搬送ローラー部250および第5搬送ローラー部260が、搬送方向においてこの順に設けられている。
【0100】
第1搬送ローラー部220、第2搬送ローラー部230、第3搬送ローラー部240、第4搬送ローラー部250および第5搬送ローラー部260のそれぞれは、上側ローラーおよび下側ローラーで構成されるローラー対である。
【0101】
また、第2搬送ローラー部230は、上記の搬送ローラー部210と同様に、幅方向にローラーが2つ並んだ構成である。第1搬送ローラー部220、第3搬送ローラー部240、第4搬送ローラー部250および第5搬送ローラー部260のそれぞれは、幅方向において用紙Sの幅よりも長いローラーである。
【0102】
冷却部200は、第3搬送ローラー部240と第4搬送ローラー部250との間に対応する位置に送風可能に配置されている。
【0103】
この構成では、用紙Sの温度が、
図10Aに示すように、各ローラー部との接触部分で急激に低下するため、用紙Sの温度分布は、搬送方向の下流側に向かうにつれ階段状に下がるような分布となる(実線L3、破線L4参照)。
【0104】
具体的には、第2搬送ローラー部230の部分において、用紙Sが、第2搬送ローラー部230との接触部分と、非接触部分とを有するため、当該接触部分に対応する温度分布が破線L4のように、非接触部分に対応する温度分布(実線L3)よりも第2搬送ローラー部230の部分で温度が低下したようなものとなる。
【0105】
また、冷却部200の位置(第3搬送ローラー部240と第4搬送ローラー部250との間に対応する位置)では、冷却部200における冷却作用により、温度変化の傾きが、比較的急峻なものとなっている。
【0106】
なお、第1搬送ローラー部220、第3搬送ローラー部240、第4搬送ローラー部250および第5搬送ローラー部260の部分においては、用紙Sが幅方向の全体で接触するため、各ローラー部の部分で、接触部分および非接触部分に係る温度が一様に低下するようなものとなる。
【0107】
そのため、第2搬送ローラー部230の接触部分と非接触部分とで、接触部分(破線L4参照)と非接触部分(実線L3参照)とで温度分布に差が生じるため、例えば、接触部分に対応する部分の温度が、何れかのローラー部と接触する部分で所定温度範囲と重なった場合、光沢ムラが発生する可能性がある。
【0108】
このような場合、制御部101は、冷却部200における冷却量を設定冷却量から変更する。こうすることにより、
図10Bに示すように、冷却部200における冷却作用が小さくなって、冷却部200の位置における温度変化の傾きが、
図10Aにおける温度変化と比べて緩やかになる。
【0109】
その結果、
図10Aにおける破線L4における所定温度範囲と重なる、温度変化の大きい部分を、所定温度範囲の部分から回避させることができるので、画像の表面層の状態を幅方向において均一にすることができ、ひいては光沢ムラが発生することを抑制することができる。
【0110】
また、上記各実施の形態においては、
図11に示すように、冷却部200が複数設けられていても良い。
図11に示す構成は、
図9に示す構成と同様に、搬送ローラー部が複数設けられている。
【0111】
図11に示す構成には、第2搬送ローラー部230と第3搬送ローラー部240との間に対応する冷却部200と、第3搬送ローラー部240と第4搬送ローラー部250の間に対応する冷却部200とがそれぞれ設けられている。
【0112】
この構成では、制御部101は、複数の冷却部200の冷却作用をそれぞれ制御する。これにより、所望の冷却量を確保しやすくすることができる。
【0113】
また、上記各実施の形態においては、
図12に示すように、温度検出部300が設けられていても良い。
図12に示す構成は、
図9に示す構成と同様に、搬送ローラー部が複数設けられている。また、
図12では、冷却部の図示を省略している。なお、
図3A等に示す構成に温度検出部が設けられていても良い。
【0114】
温度検出部300は、用紙Sの搬送経路部に設けられ、用紙Sの温度を検出する。温度検出部300は、第1搬送ローラー部220、第3搬送ローラー部240、第4搬送ローラー部250および第5搬送ローラー部260のそれぞれの手前(搬送方向の上流側)に1つずつ設けられている。
【0115】
制御部101は、温度検出部300の検出結果に係る情報に基づいて冷却部200の冷却作用を制御する。
【0116】
例えば、温度が急激に変化する部分のうち、所定温度範囲に差し掛かる箇所が、第5搬送ローラー部260に対応する部分である場合、制御部101は、冷却部200における冷却量を設定冷却量から変更する。
【0117】
こうすることで、冷却部200における冷却量が小さくなるので(例えば、
図10B参照)、所定時間内で推移する温度範囲が所定温度範囲をまたがないようにすることができる。その結果、第2搬送ローラー部230との接触部分と非接触部分とを有することで、温度分布に差異が生じる場合であっても、表面層の状態を均一にすることができ、ひいては光沢ムラが発生することを抑制することができる。
【0118】
また、用紙の温度を直接的に測定できるので、冷却部200における冷却量調整制御を正確に行うことができる。
【0119】
また、上記実施の形態では、用紙の温度に関する情報や、画像データの情報に基づいて、冷却部200の冷却作用を制御していたが、本発明はこれに限定されず、用紙Sに形成された画像の読取情報に基づいて、冷却部200の冷却作用を制御しても良い。
【0120】
こうすることで、用紙Sに形成された画像における光沢ムラの有無をユーザーが確認した上で、冷却部200の冷却作用の制御にフィードバックすることができるので、確実な冷却量調整制御を行うことができる。
【0121】
また、上記実施の形態では、冷却量を調整する際、冷却量を0にしていたが、冷却量の程度を細かく調整するようにしても良い。
【0122】
冷却部200で十分に用紙Sを冷却しないと、画像におけるトナーが溶けた状態で排紙されるので、排紙トレイで複数の用紙Sが重なった際に、双方のトナー同士が接着する現象であるタッキングが発生する。
【0123】
そのため、冷却部200の冷却量を調整する際、調整後の冷却量を0(冷却部200をOFF状態)となるように設定していた場合、十分にトナー(画像)が冷却されず、上記のタッキングを回避できない可能性がある。
【0124】
例えば、複数層に積層されたトナーで構成される画像を用紙Sに形成する場合、トナーの量が全体的に増加して、トナーが溶けた状態で排紙されやすくなるので、冷却部200により十分に冷却する必要がある。
【0125】
この場合、制御部101は、冷却部200における冷却量を、例えば、設定冷却量の80%程度の冷却量とするようにする。言い換えると、制御部101は、タッキングの発生度合い(用紙Sに形成される画像に係るトナー量)に応じて冷却部200の冷却量を調整する。
【0126】
こうすることで、タッキングを考慮した冷却量調整制御を行うことができる。
【0127】
また、
図13に示すように、冷却量の調整量と、画像に係るトナーの層数とに、タッキングの発生を関連付けたテーブルを参照することで、冷却部200における冷却量するようにしても良い。
【0128】
図13におけるテーブルは、冷却量の調整量と、画像に係るトナーの層数とに、冷却部200における冷却量を関連付けたテーブルである。
図13における「〇」は、タッキングが発生しないことを示し、「×」は、タッキングが発生する可能性が高いことを示している。これらのテーブルは、例えば記憶部72等に記憶される。
【0129】
例えば、トナーの層数が3層である場合、冷却部200における冷却量が80~100%の範囲であれば、タッキングが発生しないため、制御部101は、トナーの層数が3層である場合、例えば冷却部200における冷却量を80%とする。なお、
図13等における100%は、設定冷却量を示している。
【0130】
また、トナーの層数が2層である場合、冷却部200における冷却量が40~100%の範囲であれば、タッキングが発生しないため、制御部101は、トナーの層数が2層である場合、例えば冷却部200における冷却量を40%とする。
【0131】
また、トナーの層数が1層である場合、冷却部200における冷却量が0~100%の範囲であれば、タッキングが発生しないため、制御部101は、トナーの層数が1層である場合、例えば冷却部200における冷却量を0%とする。
【0132】
このように、テーブルを参照することで、タッキングの発生を抑制した冷却量に容易に調整することができる。また、テーブルにおける冷却量(「○」の部分)は、所定時間内で推移する温度範囲と所定温度範囲との関係性に基づいて適宜選択可能である。
【0133】
ところで、画像形成装置1では、適度に印刷を行っている場合は、機内が十分に暖められた暖気状態となるが、印刷を行わずに画像形成装置1をしばらくの間放置した場合や、画像形成装置1の電源をONにした後の場合においては、画像形成装置1の機内温度が暖気状態の温度(暖気温度)から低下しているため、冷却部200で冷却しなくても、用紙Sの温度が低下してタッキングが発生しない場合がある。
【0134】
そのため、制御部101は、画像形成装置1の機内温度が暖気温度に達していない場合、冷却部200における冷却量を、機内温度が暖気温度に達した場合の冷却量とは変更するように調整しても良い。
【0135】
例えば、画像形成装置1の機内温度が暖気温度に達していない場合、制御部101は、
図13に示すテーブルではなく、
図14に示すテーブルを用いて、冷却部200における冷却量を調整する。
【0136】
この場合、例えば、トナーの層数が3層である場合、冷却部200における冷却量が20~100%の範囲であれば、タッキングが発生しないため、制御部101は、トナーの層数が3層である場合、例えば冷却部200における冷却量を20%とする。
【0137】
また、トナーの層数が2層または1層である場合、冷却部200における冷却量が0~100%の範囲であれば、タッキングが発生しないため、制御部101は、トナーの層数が2層である場合、例えば冷却部200における冷却量を0%とする。
【0138】
これにより、冷却部200により用紙Sを過剰に冷却することを抑制することができる。
【0139】
また、画像形成装置1の機内温度が暖気温度に達した後、搬送ローラー部210で、加熱された用紙Sを搬送し続けると、搬送ローラー部210の温度が増大していく。搬送ローラー部210の温度が増大していくと、用紙Sが搬送ローラー部210の部分を通過しても、用紙Sの温度が下がらず、例えば、所定時間内で推移する温度範囲が、所定温度範囲をまたがない場合が起こり得る。
【0140】
この場合、冷却部200における冷却量を設定冷却量より小さくしてしまうと、上記のタッキングの問題等が起こる可能性がある。そこで、制御部101は、搬送ローラー部210の温度に応じて、冷却部200における冷却量の調整を停止するようにしても良い。
【0141】
搬送ローラー部210の温度は、例えば、搬送ローラー部210の近傍に、温度検出部を設けることにより、検出されるようにしても良い。こうすることで、搬送ローラー部210の温度に基づいて、冷却部200における冷却量の調整を停止することで、タッキングの発生を精度良く抑制することができる。
【0142】
また、制御部101は、画像形成装置1に設けられている温度検出部等の情報に基づく、画像形成装置1の機内温度に応じて、冷却部200における冷却量の調整を停止するようにしても良い。
【0143】
こうすることで、搬送ローラー部210の温度を検出するための温度検出部を設けることなく、タッキングの発生を抑制することができる。
【0144】
また、上記実施の形態では、冷却部200が搬送ローラー部210よりも上流側に対応する位置に送風可能に構成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図15Aおよび
図15Bに示すように、冷却部200が用紙Sの搬送方向における、搬送ローラー部210よりも上流側の上流位置(
図15A参照)および下流側の下流位置(
図15B参照)の何れかに向けて送風可能に構成されていても良い。
【0145】
この場合、制御部101は、用紙Sの温度の情報に基づいて、冷却部200の送風方向を選択する。例えば、冷却部200における冷却量を調整することで、光沢ムラの問題は解消できても、上記のタッキングの問題が解消できないような場合、制御部101は、下流位置に送風されるように、冷却部200の送風方向を選択する(
図15B参照)。
【0146】
こうすることで、冷却部200における冷却量が弱まることに起因するタッキングの発生を抑制することができる。
【0147】
また、上記実施の形態では、冷却部200の冷却作用によって用紙Sの温度を調整していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1位置と第2位置とを移動可能な搬送ローラー部210の移動制御を、冷却部200の冷却量調整制御と組み合わせることで、用紙Sの温度を調整しても良い。
【0148】
第1位置は、例えば、
図16に示すように、搬送ローラー部210を構成する上側ローラー210Aと下側ローラー210Bとが接触した位置である(実線参照)。搬送ローラー部210が第1位置に位置する場合、上側ローラー210Aと下側ローラー210Bとの接触部分(ニップ部分)を用紙Sが通過する。
【0149】
第2位置は、上側ローラー210Aと下側ローラー210Bとが互いに離間した位置である(破線参照)。搬送ローラー部210が第2位置に位置する場合、上側ローラー210Aは、搬送される用紙Sの上方に離間した位置に位置し、下側ローラー210Bは、搬送される用紙Sの下方に離間した位置に位置する。
【0150】
つまり、搬送ローラー部210が第1位置と第2位置とを移動可能な構成で、搬送ローラー部210が第2位置に位置する場合、用紙Sの温度は、搬送ローラー部210に対応する位置において、搬送ローラー部210と接触しないため、幅方向で略均一になる。
【0151】
この搬送ローラー部210の移動制御が必要となるのは、例えば、冷却部200における冷却量を調整した際、タッキングが生じてしまうような場合である。このような場合は、搬送ローラー部210を第1位置から第2位置に移動させることにより、画像における表面層の状態が幅方向において不均一になることを抑制することができる。
【0152】
また、上記実施の形態では、冷却部200における冷却量を調整する際、設定冷却量よりも冷却量を弱くしていたが、本発明はこれに限定されず、例えば設定冷却量よりも冷却量を強くしても良い。
【0153】
また、上記実施の形態では、搬送ローラー部を接触部として例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ガイド部材、コロ、ベアリング等、用紙に接触可能な部材である限り、接触部はどのような部材であっても良い。
【0154】
また、上記実施の形態では、接触部(搬送ローラー部)が金属で構成されていたが、本発明はこれに限定されず、金属以外で構成されていても良い。
【0155】
また、上記実施の形態では、トナーに離型剤が含まれていたが、本発明はこれに限定されず、画像の表面層となり得る、他の物質がトナーに含まれていても良い。
【0156】
また、上記のように例示した以外の用紙の温度の情報に基づいて、冷却部の冷却作用を制御しても良い。また、上記に例示した用紙の温度の情報のそれぞれは、適宜組み合わせても良い。
【0157】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0158】
1 画像形成装置
53 搬送経路部
60 定着部
101 制御部
200 冷却部
210 搬送ローラー部