(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】レンジエクステンダ車両用発電ユニットの構造
(51)【国際特許分類】
B60K 6/405 20071001AFI20240903BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240903BHJP
B60K 15/063 20060101ALI20240903BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20240903BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20240903BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20240903BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240903BHJP
F02B 63/04 20060101ALI20240903BHJP
F01P 5/06 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B60K6/405
B60K11/04 H
B60K15/063 A
B60K1/00
B60K6/24 ZHV
B60K6/26
B60K6/46
F02B63/04 D
F02B63/04 C
F02B63/04 Z
F01P5/06 502C
F01P5/06 502Z
(21)【出願番号】P 2020181575
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】上妻 眞也
(72)【発明者】
【氏名】曽布川 靖
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕市
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 聖英
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-007723(JP,A)
【文献】特開2019-073237(JP,A)
【文献】米国特許第04871922(US,A)
【文献】特開2017-075563(JP,A)
【文献】特開2015-020598(JP,A)
【文献】特開2008-265685(JP,A)
【文献】特開2011-073582(JP,A)
【文献】中国実用新案第211737286(CN,U)
【文献】特開2002-295266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
B60K 11/04
B60K 15/063
B60K 1/00
F02B 63/04
F01P 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電用エンジンと、該発電用エンジンの駆動により発電する発電機と、前記発電用エンジンを冷却可能な冷却装置と、を有し、
前記発電用エンジン、前記発電機及び前記冷却装置は、車体後部に設けられた収容構造体の内部に配置されている、レンジエクステンダ車両用発電ユニットの構造において、
前記発電用エンジンは、車両前後方向に延びるケースを備
え、
前記発電機の外壁及び前記冷却装置の外壁は、前記ケースの車幅方向外側の後部で、前記ケースを挟んで互いに対向するように配置されて
おり、
前記冷却装置は、前記発電用エンジンに連動する冷却ファンを備え、
前記冷却装置の車両前方側には、前記発電用エンジンを駆動する燃料が充填される燃料タンクが配置され、
前記ケースに対向する前記燃料タンクの内側部は、車両後方に向かうに従い車幅方向外側に傾斜しており、
前記内側部に対応する前記ケースには、前記内側部の傾斜方向に沿って傾斜する傾斜部が設けられ、前記冷却ファンにより送風される冷却空気が流れる導風部は、前記傾斜部に沿って設けられていることを特徴とする、レンジエクステンダ車両用発電ユニットの構造。
【請求項2】
発電用エンジンと、該発電用エンジンの駆動により発電する発電機と、前記発電用エンジンを冷却可能な冷却装置と、を有し、
前記発電用エンジン、前記発電機及び前記冷却装置は、車体後部に設けられた収容構造体の内部に配置されている、レンジエクステンダ車両用発電ユニットの構造において、
前記発電用エンジンは、車両前後方向に延びるケースを備え、
前記発電機の外壁及び前記冷却装置の外壁は、前記ケースの車幅方向外側の後部で、前記ケースを挟んで互いに対向するように配置されており、
前記冷却装置の車両前方側には、前記発電用エンジンを駆動する燃料が充填される燃料タンクが配置され、
前記収容構造体の底面部には、少なくとも前記発電用エンジンを支持する複数のマウントが設けられ、該複数のマウントは、2つの前側マウントと、前記2つの前側マウントの車両後方側に間隔を空けて配置される2つの後側マウントと、を含み、
前記2つの前側マウントは、前記ケースを挟んで車幅方向に互いに間隔を空けて配置され、前記2つの後側マウントは、前記ケースを挟んで車幅方向に互いに間隔を空けて配置されており、
前記ケースに対して、前記燃料タンクが配置されている側の前記前側マウントと前記後側マウントとを結ぶ第1の仮想線と、車両前後方向とにより形成される鋭角の角度は、反対側の前記前側マウントと前記後側マウントとを結ぶ第2の仮想線と、車両前後方向とにより形成される鋭角の角度よりも大きく設定されていることを特徴とす
る、レンジエクステンダ車両用発電ユニットの構造。
【請求項3】
前記ケースに対向する前記燃料タンクの内側部は、車両後方に向かうに従い前記ケースから離れるように傾斜しており、
前記第1の仮想線は、前記燃料タンクの前記内側部の傾斜方向に沿って延びていることを特徴とする、
請求項2に記載のレンジエクステンダ車両用発電ユニットの構造。
【請求項4】
前記ケースに対して、前記燃料タンクが配置される側とは反対側に、前記発電用エンジンから放出される排気ガスが流通するマフラが配置されていることを特徴とする、
請求項1または請求項2に記載のレンジエクステンダ車両用発電ユニットの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジエクステンダ車両用発電ユニットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータにより駆動される電動車両には、小型の発電ユニットが搭載されている車両が知られている。例えば特許文献1には、車両の後部に設けられた例えばラゲッジスペースの床下に、電源ユニットが搭載されている車両が開示されている。当該電源ユニットには、例えば、バッテリ、インバータ及びDC/DCコンバータ等が設けられている。
【0003】
当該電源ユニットは、車体の後端部に設けられているため、例えば後突による衝撃荷重の影響を受けやすい。そのため、衝撃吸収しやすい構造が求められる。一方で、電源ユニットを小型車両に搭載する場合には、よりコンパクトな構成が求められる。上記例の発電ユニットでは、ケース内において、バッテリ及びインバータ等の電気機器の後方側に、冷却空気が流通する中間ダクトが配置され、中間ダクトによって、後突により発電ユニットに入力される衝撃荷重を吸収し、電気機器等の破損を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両後部に設けられる電源ユニットには、発電用エンジンによって発電する発電機が搭載されるものがある。当該発電機は、インバータ等の電気機器に電力を供給する。また、このような発電ユニットにおいては、発電用エンジンを駆動するための燃料が充填される燃料タンクを有している。
【0006】
また、上記発電ユニットでは、発電用エンジンのクランクケース、発電機及び冷却ファン等を有する冷却装置等は、剛性が高い部材(剛性物)であるのに対して、インバータ等の電気機器や高電圧ハーネス等は、剛性物に比べて剛性が低く、後突等により受けた荷重により干渉を受けやすい。さらに、燃料タンクも衝撃荷重による干渉を回避できることが望ましい。
【0007】
例えば、中間ダクトで後突により荷重吸収を吸収させようとする上記例の発電ユニットでは、中間ダクトが潰れた後の衝撃荷重が、インバータ等の電気機器に伝達されやすい。そのため、上記例の発電ユニットの構造を、発電用エンジンを搭載する発電ユニットに適用する場合には、後突等による衝撃荷重を受けたときに当該衝撃荷重を効率よく剛性物に分散させようとする上では、改善の余地があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、発電用エンジンにより発電する発電ユニットを小型化し、且つ衝撃荷重を効率よく受けて吸収することが可能なレンジエクステンダ車両用発電ユニットの構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るレンジエクステンダ車両用発電ユニットの構造は、発電用エンジンと、該発電用エンジンの駆動により発電する発電機と、前記発電用エンジンを冷却可能な冷却装置と、を有し、前記発電用エンジン、前記発電機及び前記冷却装置は、車体後部に設けられた収容構造体の内部に配置されている。当該レンジエクステンダ車両用発電ユニットの構造において、前記発電用エンジンは、車両前後方向に延びるケースを備え、前記発電機の外壁及び前記冷却装置の外壁は、前記ケースの車幅方向外側の後部で、前記ケースを挟んで互いに対向するように配置されており、前記冷却装置は、前記発電用エンジンに連動する冷却ファンを備え、前記冷却装置の車両前方側には、前記発電用エンジンを駆動する燃料が充填される燃料タンクが配置され、前記ケースに対向する前記燃料タンクの内側部には、車両後方に向かうに従い車幅方向外側に傾斜しており、前記内側部に対応する前記ケースには、前記内側部の傾斜方向に沿って傾斜する傾斜部が設けられ、前記冷却ファンにより送風される冷却空気が流れる導風部は、前記傾斜部に沿って設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レンジエクステンダ車両用発電ユニットにおいて、発電用エンジンにより発電する発電ユニットを小型化し、且つ衝撃荷重を効率よく受けて吸収することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るレンジエクステンダ車両用発電ユニットが取り付けられる車体下部の下面図である。
【
図3】
図2の発電ユニットを、車両前方側から見た正面図である。
【
図4】
図2の発電ユニットを、車両後方側から見た斜視図であり、燃料タンク及びインバータ等は、想像線で示している。
【
図5】
図2のマフラ及び排ガス用の配管が取り外された状態の上面図である。
【
図6】
図2の発電ユニットのトレイの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るレンジエクステンダ車両用発電ユニット1の冷却構造の一実施形態について、図面(
図1~
図6)を参照しながら説明する。
【0013】
なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印R,Lは、それぞれ車幅方向の右側、左側を示しており、本実施形態における「左右」は、乗員が車両前方を向いたときの「左側」及び「右側」に対応している。
【0014】
本実施形態のレンジエクステンダ車両用の発電ユニット1は、例えば、車両後部に設けられたラゲッジスペース等の床下に、着脱可能に取り付けられる発電ユニット1であって、全体で車幅方向に延びる略直方体状である。この場合、発電ユニット1は、例えば、車両の後部に設けられた開口から車両内に挿入された状態で、車両後部に固定される。この例では、
図1に示すように、車幅方向において、左右の後輪2の間に配置されており、取付部等を介して、リアサイドメンバ3及びリアクロスメンバ4等に取り付けられている。
【0015】
図1に示すように、リアサイドメンバ3は、車体の車幅方向両側に配置され、車両前後方向に延びる部材で、車体骨格を構成する剛性の高い金属製の部材である。この例のリアサイドメンバ3は、後輪2の車幅方向内側に配置されている。リアクロスメンバ4は、両側のリアサイドメンバ3を繋ぐように車幅方向に延びる部材で、車体骨格を構成する剛性の高い金属製の部材である。
【0016】
本実施形態の発電ユニット1は、
図2に示すように、発電用エンジン20と、燃料タンク25と、マフラ30と、発電機60と、冷却装置70と、を有している。また、当該発電ユニット1は、上記の装置及び部材が収容される収容構造体10を備えている。
【0017】
収容構造体10は、トレイ11と、上蓋(図示せず)を有している。トレイ11は、
図4及び
図6に示すように、設置面部12と、側壁部15と、を有している。設置面部12は、車幅方向に延びる略長方形状で、当該設置面部12には、上記した発電用エンジン20、燃料タンク25、マフラ30、台座40、発電機60及び冷却装置70等が設置されている。側壁部15は、設置面部12の車幅方向両端から車両上方に突出する縦壁で、車両前後方向に延びている。側壁部15の上部には、車幅方向外側に突出し、車両前後方向に延びる側部フランジ16が設けられ、該側部フランジ16の上面には、設置作業及び運搬等で用いられる取っ手17等が設けられている。図示は省略しているが、上蓋は、トレイ11の設置面部12を車両上方から覆う略直方体状の箱状であり、上蓋の側部が、例えば取っ手17よりやや内側に位置するように、トレイ11に取り付けられる。
【0018】
発電用エンジン20は、
図2~
図4に示すように、構成部材を収容するケースを有している。この例におけるケースは、シリンダ(図示せず)及びピストン(図示せず)等を収容するシリンダケース21と、クランクシャフト23aを覆うクランクケース23と、を有している。なお、本実施形態では、ピストンの詳細な図示は省略しているが、
図2では、ピストンの摺動方向を矢印Aで示している。また、クランクシャフト23aについては、
図2において凡その位置を仮想的に示している。クランクケース23は、車幅方向に延びている部材で、トレイ11の設置面部12の後部における車幅方向のほぼ中央部に配置されている。クランクシャフト23aは、車幅方向に延びている状態で、クランクケース23の内部に収容されている。また、ピストンは、車両前後方向に延びた状態で、シリンダケース21の内部に収容され、発電用エンジン20の駆動時には車両前後方向(
図2の矢印Aの方向)のに往復する。
【0019】
燃料タンク25は、発電用エンジン20を駆動するための燃料が充填されているタンクであり、燃料タンク25の上面は平坦であり、該上面には、燃料を補給する開口(図示せず)が設けられている。該開口には、燃料補給時に取り外し可能なキャップ26が取り付けられている。燃料タンク25は、収容構造体10のトレイ11の設置面部12における右前側の角部に配置されている。
【0020】
燃料タンク25は、複数の側壁を有している。側壁は、上面と設置面部12との間で、車両上下方向に延びている。側壁は、前側壁25aと、後側壁25bと、右側壁25cと、左側壁25dと、内側傾斜壁25eと、を有している。前側壁25aは、車両前方を臨み、車幅方向に延び、設置面部12の前端付近に配置されている。後側壁25bは、車両後方を臨み、車幅方向に延び、設置面部12の車両前後方向の中央付近に配置されている。右側壁25cは、前側壁25aの右側端と後側壁25bの右側端とを繋ぐように車両前後方向に延び、設置面部12の右側端付近に配置されている。左側壁25dは、前側壁25aの左側端から車両後方に延びている。左側壁25dの後端は、燃料タンク25の前端と後端との間で、やや前端に近い側に位置している。
【0021】
内側傾斜壁25eは、後側壁25bと左側壁25dとの間に位置する燃料タンク25の内側部に設けられ、発電用エンジン20のシリンダケース21の後述する導風部24に対向している。この例の内側傾斜壁25eは、トレイ11の設置面部12から車両上方に上面まで延び、上面視で、車両後方に向かうに従い車幅方向外側に傾斜している。すなわち、当該内側傾斜壁25eは、車両後方に向かうに従いシリンダケース21から離れるように傾斜している。
【0022】
マフラ30は、車幅方向に延びる部材で、該発電用エンジン20から放出される排気ガスが流通する。マフラ30は、
図2及び
図5に示すように、シリンダケース21の車幅方向に隣接するように配置され、マフラ30の車幅方向の左側端部は、接続用配管(図示せず)を介して、シリンダケース21に接続されている。マフラ30は、車幅方向に延びた状態で、マフラ30の車幅方向の右側端部が、収容構造体10のトレイ11の設置面部12における左前側の角部に配置されている。マフラ30は、シリンダケース21に対して、燃料タンク25が配置される側とは反対側(車幅方向の左側)に配置されている。すなわち、マフラ30と燃料タンク25は、シリンダケース21を間に置いて対向している。
【0023】
マフラ30の上部には、
図4に示すように、台座40が設けられている。当該台座40は、マフラ30を車両上方側から覆う略直方体状の中空の部材である。台座40の上部には、インバータ(電気機器)50が設置されている。
【0024】
図2に示すように、に、角部に位置するマフラ30の側部、すなわち、マフラ30の後側面における車幅方向の右側部には、車両前後方向に延びる略円筒状の排気管32が取り付けられている。当該排気管32には、マフラ30を流通した排ガスが流入し、流入した排ガスは、排気管32の後部から発電ユニット1の外部に排気される。
【0025】
発電機60は、
図2~
図4に示すように、車幅方向に延びる装置で、クランクケース23の車幅方向における左側に位置する設置面部12に固定されている。発電機60は、発電機本体61と、設置用ブラケット63とを有している。発電機本体61は、クランクケース23の車幅方向の左側に配置され、発電機本体61の後端は、設置面部12の後端付近に配置されている。発電機本体61は、車幅方向に延びる回転軸(図示せず)を有し、当該回転軸は、クランクシャフト23aの左側部が接続されている。発電機60は、発電用エンジン20の駆動により回転軸が回転することにより発電する。また、発電機本体61には、後述するラジエータ71を流通する冷却水が流れる冷却水配管82が接続されている。
【0026】
設置用ブラケット63は、発電機本体61を設置面部12に固定するための部材で、発電機本体61の車幅方向の左側に配置されている。設置用ブラケット63は、設置面部12から車両上方に延び、車幅方向を臨む縦壁を有している。縦壁は、排気管32と発電機本体61との間に配置され、縦壁には、発電機本体61の左側部がボルト等により接合されている。
【0027】
冷却装置70は、
図2~
図4に示すように、クランクケース23の車幅方向における右側に位置する設置面部12に固定されている。冷却装置70は、全体で車幅方向に延びる装置で、冷却装置70の後端は、設置面部12の後端付近に配置されている。冷却装置70は、複数の冷却水配管81,82が接続されているラジエータ71と、冷却ファン75と、を有している。
【0028】
冷却ファン75は、クランクシャフト23aの車幅方向の右側部に図示しない減速機等を介して取り付けられており、クランクシャフト23aに連動して同軸で回転する。
図2では、冷却ファン75とクランクシャフト23aとの位置関係を仮想的に示している。冷却ファン75が回転することにより発生する冷却風は、例えばシリンダケース21に吹き付けられる。冷却ファン75による送風の経路は、後で説明する。
【0029】
図2及び
図3に示すように、発電機60の発電機本体61の右側の外壁及び冷却装置70の左側の外壁は、クランクケース23の車幅方向外側の後部で、クランクケース23を挟んで互いに対向するように配置されている。本実施形態では、
図5に示すように、発電用エンジン20、発電機60及び冷却装置70によって、上面視でT字形状を形成している。
図5の破線で示すT字形状は、上面視で逆T字となっている。
【0030】
上記のように、発電ユニット1の後端部に、剛性の高い発電用エンジン20のクランクケース23、発電機60、冷却装置70を車幅方向に直線状に配置しており、後突等による衝撃荷重を受けたときは、これらの剛性の高い装置で車幅方向に広範囲で、該衝撃荷重を受けることができ、衝撃荷重を効率よく吸収することができ、さらに、広範囲に衝撃荷重を分散させることが可能となる。また、このような剛性物の配置により、発電用エンジン20等に比して剛性の低いインバータ50等の電気機器等や燃料タンク25への衝撃荷重による干渉を低減することができる。
【0031】
また、本実施形態では、
図2に示すように、燃料タンク25の内側部に対応する発電用エンジン20のケースには、内側部の傾斜方向に沿った傾斜部24aが設けられている。詳細には、燃料タンク25の内側部とシリンダケース21との間には、冷却ファン75により送風される冷却空気の導風部24が設けられ、該導風部24は、シリンダケース21の右側部に一体的に設けられおり、上面視で、略三角形状である。傾斜部24aは、導風部24の右側部に設けられており、燃料タンク25の内側部の内側傾斜壁25eに間隔を空けて、内側傾斜壁25eの傾斜方向に沿って延びている。導風部24の右端は、冷却装置70の冷却ファン75の車両前方側に配置され、導風部24の前端は、シリンダケース21の車両前後方向の中間部に配置されている。導風部24の右後部から、冷却ファン75による冷却空気が流入し、導風部24内を流れた冷却空気は、導風部24とシリンダケース21の接続部からシリンダケース21の内側に流入する。
【0032】
燃料タンク25は、車両前後方向に延びるシリンダケース21を避けて、該シリンダケース21の車幅方向の左右の一方(この例では、右側)に配置されるので、後突等による衝撃荷重で、T字形状に配置される剛性物、すなわち、発電用エンジン20、発電機60及び冷却装置70が、車両前方側に移動しても、該剛性物が燃料タンク25に干渉することを低減できる。
【0033】
さらに、燃料タンク25には、T字形状に配置された発電用エンジン20等に対向する内側傾斜壁25eを設け、内部に冷却経路が形成される導風部24を、T字形状の角を1つの角とする三角形となるように設け、送風部の右側部を、燃料タンク25の内側傾斜壁と同じ方向に傾斜するように配置している。これにより、後突により発電用エンジン20等の剛性物が車両前方に移動しても、傾斜する壁同士がずれて移動し、T字形状が、この例では上面視で反時計周り(左回転)または左前側に斜めに移動をするため、T字形状に配置された剛性物からの荷重が燃料タンク25に作用することを低減することができる。
【0034】
本実施形態のトレイ11の設置面部12には、
図5及び
図6に示すように、発電用エンジン20、発電機60及び冷却装置70等を支持する複数のマウントが設けられている。複数のマウントは、左右に間隔を空けて配置される2つの前側マウント13A,13B、すなわち、右前側マウント13A及び左前側マウント13Bを含んでいる。さらに、複数のマウントは、右前側マウント13A及び左前側マウント13Bの車両後方側に間隔を空けて配置される2つの後側マウント14A,14B、すなわち、右後側マウント14A及び左後側マウント14Bを含んでいる。
【0035】
右前側マウント13A及び左前側マウント13Bは、シリンダケース21を挟んで車幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。また、右後側マウント14A及び左後側マウント14Bは、クランクケース23を挟んで車幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0036】
左前側マウント13Bは、発電用エンジン20及び発電機60等を支持している。左後側マウント14Bは、発電機60等を支持している。また。右前側マウント13Aは、発電用エンジン20のシリンダケース21及び導風部24等を支持し、右後側マウント14Aは、冷却装置70等を支持している。
【0037】
本実施形態では、
図5及び
図6に示すように、発電用エンジン20のシリンダケース21に対して、燃料タンク25が配置されている側の右前側マウント13Aと右後側マウント14Aとを結ぶ破線で示している第1の仮想線L1と、車両前後方向に延びる破線で示している前後方向仮想線L3とにより形成される鋭角の角度α1は、反対側の左前側マウント13Bと左後側マウント14Bとを結ぶ破線で示している第2の仮想線L2と、前後方向仮想線L3とにより形成される鋭角の角度α2よりも大きく設定されている。
【0038】
右前側マウント13A、左前側マウント13B、右後側マウント14A及び左後側マウント14Bを上記のように配置して、第1の仮想線L1、第2の仮想線L2、及び設置面部12の後端に沿って延びる幅方向仮想辺L4により仮想的に形成される三角形TA(
図5、
図6)は、車両前方側に位置する頂点Pが、幅方向辺L4の中心よりやや左側に寄っている。このため、発電ユニット1が車両後方からの衝撃荷重が入力されると、上方視で車幅方向の右側のマウント13A,14Aが、左側のマウント13B,14Bよりも強く押されるため、全体として、上面視で左回転または左斜め前への移動を起こす。これにより、T字形状に配置される剛性物からの荷重が、燃料タンク25に作用することを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、上記した第1の仮想線L1は、燃料タンク25の内側部の内側傾斜壁25eに沿って延びている。この例では、内側傾斜線25eは、車両後方に向かうに従い第1の仮想線L1からやや離れるように傾斜している。内側傾斜壁25eと第1の仮想線L1の傾斜方向を同じ方向にすることで、T字形状を形成する剛性物からの荷重が、燃料タンク25に作用することを、より効果的に抑制できる。
【0040】
上記したように、本実施形態では、シリンダケース21を挟むようにマフラ30及び燃料タンク25を配置している。後突等の衝撃荷重を受けると、T字形状を形成する発電用エンジン20等の剛性物は、上面視で左回転または左斜め前へ移動する。この変形がさらに進むと、発電用エンジン20等の剛性物は、マフラ30に干渉することになる。このとき、マフラ30が潰れることで、荷重吸収と荷重分散が促進されるので、インバータ50等の比較的剛性の低い重要部品に荷重が作用することを低減しつつ荷重を受け止めることができる。
【0041】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0042】
例えば、本実施形態では、剛性の高い発電用エンジン20のクランクケース23、発電機60、冷却装置70を車幅方向に直線状に配置しているが、これに限らない。例えば、発電機60及び冷却装置70を車幅方向に対して、車両前方側または車両後方側にやや傾斜するように配置してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 発電ユニット
2 後輪
3 サイドメンバ
4 クロスメンバ
10 収容構造体
11 トレイ
12 設置面部
13A 右前側マウント
13B 左前側マウント
14A 右後側マウント
14B 左後側マウント
15 側壁部
16 側部フランジ
17 取っ手
20 発電用エンジン
21 シリンダケース
23 クランクケース
23a クランクシャフト
24 導風部
24a 傾斜部
25 燃料タンク
25a 前側壁
25b 後側壁
25c 右側壁
25d 左側壁
25e 内側傾斜壁
26 キャップ
30 マフラ
32 排気管
40 台座
50 インバータ(電気機器)
60 発電機
61 発電機本体
63 設置用ブラケット
70 冷却装置
71 ラジエータ
75 冷却ファン
81 冷却水配管
82 冷却水配管
L1 第1の仮想線
L2 第2の仮想線
L3 前後方向仮想線
L4 幅方向仮想線