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特許7547935コイル及びその製造方法、送電装置及び受電装置並びに電力伝送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】コイル及びその製造方法、送電装置及び受電装置並びに電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20240903BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20240903BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240903BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240903BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240903BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F5/00 F
H01F41/04 C
H02J7/00 301D
H02J50/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020182344
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072736
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】岡部 将人
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-012637(JP,A)
【文献】特開平06-310324(JP,A)
【文献】特開2014-199902(JP,A)
【文献】特開2006-155899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 5/00
H01F 41/04
H02J 50/12
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触型の電力伝送に用いられるコイルにおいて、
当該コイルにおける巻回方向に巻回された巻回線であって、
前記巻回方向に延在する金属製の芯材と、
前記芯材の表面の少なくとも一部を前記巻回方向に沿って被覆する金属製の被覆材と、
からなる巻回線を備え、
前記芯材の密度が前記被覆材の密度より低く、
前記被覆材の導電率が前記芯材の導電率より高く、
前記被覆材の厚さが、前記電力伝送に用いられる電流の周波数における表皮効果が表れる表皮厚さの半分以下の厚さであることを特徴とするコイル。
【請求項2】
請求項1に記載のコイルにおいて、
前記芯材の中心軸に垂直な断面の形状が、当該コイルにおける前記巻回線の巻回面に平行な長辺を有する長方形であり、
前記被覆材が、前記長辺の少なくとも一方を前記巻回方向に沿って被覆していることを特徴とするコイル。
【請求項3】
請求項2に記載のコイルにおいて、
前記被覆材が、二つの前記長辺を前記巻回方向に沿って被覆していることを特徴とするコイル。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のコイルにおいて、
前記被覆材が前記芯材の表面の全てを被覆していることを特徴とするコイル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコイルにおいて、
前記芯材がアルミニウム製の芯材であり、
前記被覆材が銅製の被覆材であることを特徴とするコイル。
【請求項6】
送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記送電装置において、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の前記コイルである送電コイルであって、前記受電装置に対向して配置される送電コイルと、
伝送すべき電力を前記送電コイルに出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする送電装置
【請求項7】
送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記受電装置において、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の前記コイルである受電コイルであって、前記送電装置に対向して配置される受電コイルと、
当該受電コイルに接続された入力手段と、
を備えることを特徴とする受電装置。
【請求項8】
請求項6に記載の送電装置と、
当該送電装置から離隔し、且つ前記送電コイルに対向して配置される受電装置であって、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、
を備えることを特徴とする非接触型の電力伝送システム
【請求項9】
電装置と、
請求項7に記載の受電装置であって、前記送電装置から離隔し且つ前記受電コイルが当該送電装置に対向して配置され、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、
を備えることを特徴とする非接触型の電力伝送システム。
【請求項10】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコイルの製造方法であって、
前記芯材となる金属板を打ち抜くことにより前記芯材を製造する芯材製造工程と、
前記製造された芯材における被覆されるべき部分に、電気めっき法により前記被覆材を形成する被覆材形成工程と、
を含み、
前記被覆材形成工程においては、前記被覆材の厚さが、前記電力伝送に用いられる電流の周波数における表皮効果が表れる表皮厚さの半分以下の厚さとなるように当該被覆材を形成することを特徴とするコイルの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル及びその製造方法、送電装置及び受電装置並びに電力伝送システムの技術分野に属し、より詳細には、非接触型電力伝送用のコイル及びその製造方法、当該コイルを用いた非接触型の送電装置及び受電装置並びに電力伝送システムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばリチウムイオン電池等からなる蓄電池を搭載した電気自動車が普及しつつある。このような電気自動車では、蓄電池に蓄えた電力を使ってモータを駆動して移動することとなるため、蓄電池への効率のよい充電が求められる。そこで、電気自動車に対して充電用プラグ等を物理的に接続することなくそれに搭載されている蓄電池を充電する方法として、互いに離隔して対向された受電コイルと送電コイルを用いる、いわゆるワイヤレス電力伝送に関する研究が行われている。ワイヤレス電力伝送の方式としては、一般には、電界結合方式、電磁誘導方式及び磁界共鳴方式等がある。これらの方式を、例えば送受電される電力の周波数、水平及び垂直それぞれの方向の位置自由度並びに伝送効率等の観点から比較した場合、電気自動車に搭載されている蓄電池を充電するためのワイヤレス電力伝送の方式としては、コンデンサを使った電界結合方式又はコイルを使った磁界共鳴方式が有望視されており、これらに対する研究開発も活発に行われている。このような背景技術を開示した先行技術文献としては、例えば下記特許文献1が挙げられる。この特許文献1には、1回巻き(1ターン)のループコイルと、5.5回巻き(5.5ターン)のオープンコイルと、を用いて磁界共鳴方式により電力伝送を行うコイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-200045号公報
【0004】
一方、電気自動車用の上述したワイヤレス電力伝送(非接触給電)では、最小でも3.7キロワットの高出力の電力を伝送すること(即ちコイルに流すこと)が必要とされる。よって、このような高出力の電力(電流)を流す結果として導体(コイル)の抵抗が高くなると、ジュール熱の発生によりコイルとしての損失が大きくなり、ワイヤレス電力伝送としての効率を低下させてしまうことになる。
【0005】
そこで、上記コイルとしての損失に起因する抵抗を低減するための手法として、コイル自体を撚り線(いわゆるリッツ線)を用いて構成することが考えられる。しかしながら、上記受電コイルが自家用車に搭載されること等を考慮したとき、上記撚り線を用いてコイルを構成することは、コイルとしての重量増加や高価格化を招来する。この問題点を解決するための従来技術としては、例えば銅からなる薄膜と当該薄膜間を絶縁する絶縁層とを積層したコア材を、いわゆるフォトリソグラフィ法を用いて上記コイルの形状にパターニング及びエッチングすることによりコイルを製造することが考えられる。
【0006】
しかしながら一般に、銅は高価であり、その資源としての埋蔵量も潤沢とは言えない。これに対し、銅と同様に導電材として使用される材料としては、例えばアルミニウムが挙げられる。ここで一般に、アルミニウムは銅と比較して廉価であり、その資源として埋蔵量も多い。またアルミニウムは銅に対して密度が低く、よって軽量化や低コスト化が可能となる等、上記自家用車等に搭載した場合の利点は多いと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらアルミニウムは、銅と比較すると導電率が1/3程度である(即ち抵抗及びそれに対応した損失が大きい)と共に、送受電される電力の入出力用のケーブルをはんだ付けすることが難しいという問題点がある。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点及び要請に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、ワイヤレス電力伝送用のコイルとしてのコストを低減しつつ軽量化することができると共に、コイルとしての伝送効率の向上と動作温度の上昇の防止が可能なコイル及びその製造方法、当該コイルを用いた非接触型の送電装置及び受電装置並びに電力伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、非接触型の電力伝送に用いられるコイルにおいて、当該コイルにおける巻回方向に巻回された巻回線であって、前記巻回方向に延在する金属製の芯材と、前記芯材の表面の少なくとも一部を前記巻回方向に沿って被覆する金属製の被覆材と、からなる巻回線を備え、前記芯材の密度が前記被覆材の密度より低く、前記被覆材の導電率が前記芯材の導電率より高く、前記被覆材の厚さが、前記電力伝送に用いられる電流の周波数における表皮効果が表れる表皮厚さの半分以下の厚さである構成される。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、巻回方向に巻回された巻回線が、金属製の芯材及び被覆材からなり、芯材の密度が被覆材の密度より低く、被覆材の導電率が芯材の導電率より高いので、巻回線の表面に近い部分の導電率が高い一方、巻回線の中心に近い芯材の密度が被覆材の密度よりも低いので、コイルとしての損失の低減による伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、コイルとしての軽量化及び低コスト化と、を両立させることができる。また、被覆材の厚さが、電力伝送に用いられる電流の周波数における表皮効果が表れる表皮厚さの半分以下の厚さであるので、電力伝送によってコイルに発生する表皮効果に起因する交流抵抗を効果的に低減することができる。
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコイルにおいて、前記芯材の中心軸に垂直な断面の形状が、当該コイルにおける前記巻回線の巻回面に平行な長辺を有する長方形であり、前記被覆材が、前記長辺の少なくとも一方を前記巻回方向に沿って被覆している。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、芯材の中心軸に垂直な断面が、コイルにおける巻回線の巻回面に平行な長辺を有する長方形であり、被覆材が当該長辺の少なくとも一方を巻回方向に沿って被覆しているので、コイルの軽量化及び低コスト化を促進することができる。
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のコイルにおいて、前記被覆材が、二つの前記長辺を前記巻回方向に沿って被覆している。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の作用に加えて、芯材の断面における二つの長辺を被覆材が巻回方向に沿って被覆しているので、損失の低減を促進することができる。
【0015】
上記の課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載のコイルにおいて、前記被覆材が前記芯材の表面の全てを被覆している。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は請求項3に記載の発明の作用に加えて、被覆材が芯材の表面の全てを被覆しているので、損失の低減を更に促進することができる。
【0019】
上記の課題を解決するために、請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のコイルにおいて、前記芯材がアルミニウム製の芯材であり、前記被覆材が銅製の被覆材であるように構成される。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、芯材がアルミニウム製の芯材であり、被覆材が銅製の被覆材であるので、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、コイルとしての軽量化及び低コスト化と、を効果的に両立させることができる。
【0021】
上記の課題を解決するために、請求項に記載の発明は、送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記送電装置において、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の前記コイルである送電コイルであって、前記受電装置に対向して配置される送電コイルと、伝送すべき電力を前記送電コイルに出力する出力手段と、を備える。
【0022】
上記の課題を解決するために、請求項に記載の発明は、送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記受電装置において、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の前記コイルである受電コイルであって、前記送電装置に対向して配置される受電コイルと、当該受電コイルに接続された入力手段と、を備える。
【0023】
上記の課題を解決するために、請求項に記載の発明は、請求項に記載の送電装置と、当該送電装置から離隔し、且つ前記送電コイルに対向して配置される受電装置であって、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、を備える。
【0024】
上記の課題を解決するために、請求項に記載の発明は、送電装置と、請求項に記載の受電装置であって、前記送電装置から離隔し且つ前記受電コイルが当該送電装置に対向して配置され、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、を備える。
ことを特徴とする非接触型の電力伝送システム。
【0025】
請求項から請求項のいずれか一項に記載の発明によれば、電力伝送システムを構成する送電装置に備えられた送電コイル又は受電装置に備えられた受電コイルの少なくともいずれか一方が請求項1から請求項のいずれか一項に記載のコイルであるので、当該送電コイル又は当該受電コイルを対向させて非接触型の電力伝送を行った場合に、上記損失の低減に起因する伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、コイルとしての軽量化及び低コスト化と、を両立させることができる。また、被覆材の厚さが、電力伝送に用いられる電流の周波数における表皮効果が表れる表皮厚さの半分以下の厚さであるので、電力伝送によってコイルに発生する表皮効果に起因する交流抵抗を効果的に低減することができる。
【0026】
上記の課題を解決するために、請求項10に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のコイルの製造方法であって、前記芯材となる金属板を打ち抜くことにより前記芯材を製造する芯材製造工程と、前記製造された芯材における被覆されるべき部分に、電気めっき法により前記被覆材を形成する被覆材形成工程と、を含み、前記被覆材形成工程においては、前記被覆材の厚さが、前記電力伝送に用いられる電流の周波数における表皮効果が表れる表皮厚さの半分以下の厚さとなるように当該被覆材を形成する
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、芯材製造工程と、被覆材形成工程と、を含むので、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のコイルと効率的に製造できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、巻回方向に巻回された巻回線が、金属製の芯材及び被覆材からなり、芯材の密度が被覆材の密度より低く、被覆材の導電率が芯材の導電率より高い。
【0029】
従って、巻回線の表面に近い部分の導電率が高い一方、巻回線の中心に近い芯材の密度が被覆材の密度よりも低いので、コイルとしての損失の低減による伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、コイルとしての軽量化及び低コスト化と、を両立させることができる。また、被覆材の厚さが、電力伝送に用いられる電流の周波数における表皮効果が表れる表皮厚さの半分以下の厚さであるので、電力伝送によってコイルに発生する表皮効果に起因する交流抵抗を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態の電力伝送システムの概要構成を示すブロック図である。
図2】実施形態の送電コイルの構造を示す平面図である。
図3】実施形態の送電コイルの構造等を示す断面図であり、(a)は当該送電コイルの構造を示す断面図であり、(b)の第1変形形態の送電コイルの構造等を示す断面図であり、(c)は第2変形形態の送電コイルの構造を示す断面図であり、(d)は第3変形形態の送電コイルの構造を示す断面図である。
図4】実施形態の送電コイルの製造方法を示すフローチャートである。
図5】実施形態の送電コイル及び受電コイルの構造による効果としての銅薄膜線全体の厚さとQ値との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明を実施するための形態について、図1乃至図3を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態及び変形形態は、電気自動車に搭載されている充電池を充電するための電力を、当該充電池を備えた電気自動車に対して磁界共鳴方式により非接触で伝送する電力伝送システムに対して、本発明を適用した場合の実施形態及び変形形態である。
【0032】
ここで、実施形態及び変形形態の磁界共鳴方式による電力伝送システムは、電力を送る後述の送電コイルと、当該送電コイルから離隔して向き合うように(即ち対向するように)配置され且つ送電コイルから送られた電力を受電する後述の受電コイルと、を備える。
【0033】
(I)実施形態の電力伝送システムの全体構成及び動作について
先ず、実施形態の電力伝送システムの全体構成及び動作について、図1を用いて説明する。なお図1は、実施形態の電力伝送システムの概要構成を示すブロック図である。
【0034】
図1に示すように、実施形態の電力伝送システムSは、受電部RV及び上記受電コイルRCを備えた受電装置Rと、送電部TR及び上記送電コイルTCを備えた送電装置Tと、により構成されている。このとき受電装置Rは上記電気自動車に搭載され、且つ当該電気自動車に搭載されている図示しない蓄電池に接続されている。一方送電装置Tは、当該電気自動車が移動又は停車する位置の地面に設置されている。そして、当該蓄電池を充電する場合、受電装置Rの受電コイルRCと送電装置Tの送電コイルTCとが対向するように電気自動車が運転又は停車される。なお、実施形態の電力伝送システムSによる上記蓄電池の充電に際しては、停車している電気自動車に搭載されている受電装置Rに対して、その停車位置の下方の地面に設置された送電装置Tの送電コイルTCを介して、当該送電装置Tから電力を伝送するように構成することができる。またこの他、移動中の電気自動車に搭載されている受電装置Rに対して、その電気自動車が移動している道路の一定距離の区間に設置された複数の送電装置Tの送電コイルTCを介して、当該送電装置Tから連続的に電力を伝送するように構成してもよい。このとき、送電部TRが本発明の「出力手段」の一例に相当し、受電部RVが本発明の「入力手段」の一例に相当する。
【0035】
一方上記送電コイルTCには、受電装置Rに送電すべき電力が送電部TRから入力される。これにより送電コイルTCは、当該電力を磁界共鳴方式により受電コイルRCに送電する。このとき、送電コイルTC及び受電コイルRCが本発明の「コイル」の一例にそれぞれ相当する。
【0036】
以上の構成において、送電装置Tの送電部TRは、例えば電力伝送システムSが用いられる国における電波法等の法規等に対応しつつ、受電装置Rに伝送すべき上記電力を送電コイルTCに出力する。これにより送電コイルTCは、出力された電力を磁界共鳴方式により受電コイルRCに送電する。このときに対応すべき法規等は、例えば人体への影響を考慮して漏洩磁界が予め決められた所定のレベル以下になるように規制している。また、全ての送電装置Tと受電装置Rとの間における相互接続利用が可能となるためには、結果的に、両者が予め決められた所定範囲の周波数を利用する必要があり、このため上記所定範囲の周波数又は周波数帯域は、上記法規等としてのISO(International Organization for Standardization)又はIEC(International Electrotechnical Commission)等の国際機関の推奨に従う必要がある。また、送電コイルTCと受電コイルRCとの間の所定の位置ずれも考慮した伝送効率の下限値も上記国際機関により規定されているため、電力伝送システムSとしても高い電力の伝送効率が要求される。
【0037】
そして、上記磁界共鳴方式により送電コイルTCからの上記電力を受電した受電装置Rの受電コイルRCは、当該受電した電力を受電部RVに出力する。これにより受電部RVは、当該電力に対応した出力(例えば、後述するように85キロヘルツの高周波電力となる)を、例えば図示しない電力変換ユニットによりDC(直流)電流に変換し、電気自動車の蓄電池に出力する。以上の受電装置Rの構成により、当該蓄電池には必要量の電力が充電される。
【0038】
(II)送電コイルTC(受電コイルRC)の構成について
次に、上述した実施形態の電力伝送システムSに用いられる、実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCの構成について、図2を用いて説明する。なお、実施形態の送電コイルTCと受電コイルRCとは、基本的に同じ構成を備える。よって以下の説明では、送電コイルTCについて、その構造を説明する。また、図2は実施形態の送電コイルTCの構造を示す平面図であり、送電装置Tにおいて、受電装置R側から送電コイルTCを見た場合(図1参照)の平面図である。
【0039】
図2にその平面図を示すように、実施形態の送電コイルTCは、並行して巻回された後述する二本の例えば銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2が、絶縁性のフィルムBF(詳細は後述する)上に積層されて構成される。この構成において、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2のそれぞれが、本発明の「巻回線」の一例に相当する。ここで実施形態では、送電コイルTCの積層のためにフィルムBFを用いているが、これらの他に、ガラスエポキシ材料等の絶縁性の材料を用いることもできる。また、送電コイルTCとして発生した熱を効率良く放熱するため、例えばセラミック粒子等を分散した薄膜化材料を用いることもできる。更にまた、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2の巻回の中心は、各巻回において相互に同一又は略同一とされている。
【0040】
図2に示すように、送電コイルTCは、同じ層内を相互に並行して巻回されている上記銅薄膜線TL1及び上記銅薄膜線TL2により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2を接続すると共に銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2を送電部TRに接続するための外部接続端子O1及び外部接続端子O2を有している。そして送電コイルTCは、並行する銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2が、上記外部接続端子O1の位置(図2に示す場合は右辺部)から反時計方向に四回転(4ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2それぞれの他端部が、上記巻回における最内周部から最外周部(図2に示す場合は右辺部)に引き出され、上記外部接続端子O2とされている。このとき、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2の交差部分(図2右下部に破線で示されている交差部分)では、フィルムBF又は他の絶縁層を挟んだ積層構造或いはジャンパ線を用いる方法等により、交差対象の銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2同士が絶縁されつつ相互に交差されている。また、図2に例示する場合の銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2のそれぞれは、全周に渡って同一幅及び同一厚さとされている。更に銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2としては、図2におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。なお、実施形態の送電コイルTCにおいては、図2に示す銅薄膜線TL1の幅W1と銅薄膜線TL2の幅W2との関係は、送電コイルTCの全体に渡って幅W1<幅W2とされており、これにより、送電コイルTC又は受電コイルRCにおける後述する交流抵抗の低減を図っている。
【0041】
次に、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2それぞれの構造について、関連する第1変形形態の銅薄膜線及び第2変形形態の銅薄膜線それぞれの構造と共に、図3を用いて説明する。なお図3は、実施形態の送電コイルTCの構造等を示す断面図である。
【0042】
先ず、実施形態の送電コイルTCを構成する銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2それぞれの構造について、銅薄膜線TL2を代表として、図3(a)を用いて説明する。なお、銅薄膜線TL1の断面構造は、その幅W1を除いて銅薄膜線TL2の断面構造と同一である。
【0043】
ここで、実施形態の電力伝送システムSにより送電コイルTCから受電コイルRCに伝送される電力の上記周波数は、例えば法律により予め定められている。より具体的に、実施形態の電力伝送システムSによる電力伝送(即ち、上記電気自動車に対する電力伝送)の場合には、85キロヘルツの高周波とされている。このとき、高周波の電流を導体に流すと、その電流密度は、導体の表面で高く、表面からその中心に向かうほど低くなることが知られている。またこの点については、電流の周波数が高くなるほど電流が表面へ集中することとなるので、この結果として、その導体の交流抵抗は高くなってしまう。この現象は、いわゆる「導体の表皮効果」として知られているところである。なお以下の説明において、高周波の電流を導体に流す際の当該導体における上記交流抵抗を、単に「インピーダンス」と称する。そして、実施形態の電力伝送システムSによる電力伝送において、上記85キロヘルツの高周波の電流を用いつつ高出力の電力を伝送しようとすると、当該高出力の電力(電流)を流す結果として上記表皮効果によって銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2の抵抗が更に高くなることで、上記ジュール熱に起因する損失が大きくなり、この点でも当該電力伝送としての効率を低下させてしまう。
【0044】
また、上記表皮効果と同様に高周波によるワイヤレス電力伝送としての効率を低下させてしまう電気的な現象としては、それぞれの巻回において銅薄膜線TL1又は銅薄膜線TL2同士が近接することに起因する、いわゆる「導体の近接効果」が挙げられる。よって、この近接効果によるインピーダンスの上昇についても、対策を講じる必要がある。
【0045】
そこで、実施形態の送電コイルTCを構成する銅薄膜線TL2は、図3(a)にその断面図を示すように、送電コイルTCの全周に渡って、フィルムBFの側から順に、被覆材としての銅薄膜2、芯材としてのアルミニウム薄膜10及び被覆材としての銅薄膜1が積層されて構成されている。即ち、銅薄膜線TL2では、上記表皮効果又は上記近接効果によるインピーダンスの増大が一般に大きくなるとされている銅薄膜線TL2の表面(表裏両面)を、銅薄膜1及び銅薄膜2(即ち、アルミニウム薄膜10より導電率が高い銅薄膜1及び銅薄膜2)により形成することで、当該インピーダンスの増大を抑制している。これに加えて、銅薄膜線TL2では、上記表皮効果又は上記近接効果によるインピーダンスの増大が小さいとされる銅薄膜線TL2の中心に近い部分を、アルミニウム薄膜10(即ち、銅薄膜1及び銅薄膜2より密度が低いアルミニウム薄膜10)により形成することで、銅薄膜線TL2(即ち結果的に送電コイルTC)の軽量化と低コスト化を図っている。このとき、銅薄膜1及び銅薄膜2それぞれの厚さは、銅薄膜線TL2の表面における上記表皮効果及び上記近接効果が表れる表皮部分の厚さの半分以下の厚さとして、例えば25マイクロメートルとされている。これに対し、アルミニウム薄膜10の厚さは例えば500マイクロメートルとされている。そして、銅薄膜線TL2が銅薄膜2の面でフィルムBFに例えば接着されることにより、送電コイルTCが構成されている。
【0046】
なお、実施形態の銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2それぞれの断面構造については、複数の変形形態の断面構造が採用し得るので、これらの変形形態を、銅薄膜線TL2に対応する銅薄膜線を代表として図3(b)乃至図3(d)を用いてそれぞれ説明する。なお、銅薄膜線TL1に対応する各変形形態の銅薄膜線の断面構造は、その幅を除いて、銅薄膜線TL2に対応する各変形形態の銅薄膜線の断面構造と同一である。また、図3(b)乃至図3(d)において、実施形態の送電コイルTCと同様の鋼製部材については、同一の部材番号を付して細部の説明は省略する。
【0047】
即ち第1変形形態として、その断面を図3(b)に示すように、第1変形形態の銅薄膜線TL2aは、第1変形形態の送電コイルの全周に渡って、フィルムBFの側から順に、アルミニウム薄膜10及び銅薄膜3が積層されて構成されている。そして、銅薄膜3の厚さは例えば100マイクロメートルであり、アルミニウム薄膜10の厚さは実施形態の銅薄膜線TL2と同様に例えば500マイクロメートルとされている。このとき、第1変形形態の銅薄膜線TL2aは、上記表皮効果及び上記近接効果の影響を受け易い銅薄膜線TL2aの一方の面にのみ、銅薄膜3が積層されている。そして、銅薄膜線TL2aがアルミニウム薄膜10の面でフィルムBFに例えば接着されることにより、第1変形形態の送電コイルが構成されている。
【0048】
また第2変形形態として、その断面を図3(c)に示すように、第2変形形態の銅薄膜線TL2bは、第2変形形態の送電コイルの全周に渡って、フィルムBFの側から順に、銅薄膜4、アルミニウム薄膜10及び銅薄膜3が積層されて構成されている。そして、銅薄膜3及び銅薄膜4それぞれの厚さは例えば100マイクロメートルであり、アルミニウム薄膜10の厚さは例えば500マイクロメートルとされている。このとき、第2変形形態の銅薄膜線TL2bは、実施形態の銅薄膜線TL2と同様に、上記表皮効果及び上記近接効果の影響を受け易い銅薄膜線TL2aの二つの面に、実施形態の銅薄膜線TL2とは異なる厚さの銅薄膜3及び銅薄膜4がそれぞれ積層されている。そして、銅薄膜線TL2bが銅薄膜4の面でフィルムBFに例えば接着されることにより、第2変形形態の送電コイルが構成されている。
【0049】
最後に第3変形形態として、その断面を図3(d)に示すように、第3変形形態の銅薄膜線TL2cは、第3変形形態の送電コイルの全周に渡って、アルミニウム薄膜10の周囲全部が銅薄膜5により被覆されており、その状態のアルミニウム薄膜10及び銅薄膜5がフィルムBF上に接着/積層されて構成されている。銅薄膜5の厚さは例えば100マイクロメートルであり、アルミニウム薄膜10の厚さは例えば500マイクロメートルとされている。
【0050】
(III)送電コイルTC(受電コイルRC)の製造方法について
次に、実施形態の送電コイルTCの製造方法について、図4を用いてその概要を説明する。なお、以下に説明する製造方法は、送電コイルTCと同様の構成を備える受電コイルRCの製造方法としても採用することができる。また図4は、実施形態の送電コイルの製造方法を示すフローチャートである。
【0051】
より具体的に、送電コイルTCの製造方法としては、下記(a)乃至(d)の各工程を含む製造方法を用いることができる。
【0052】
(a)アルミニウム薄膜10の厚さと同じ厚さ(例えば500マイクロメートル)のアルミニウム薄膜材を例えば打抜き法により打抜き、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2それぞれの芯材に相当するアルミニウム薄膜10を製造する(ステップS1)。なお、このステップS1は、第1変形形態の銅薄膜線TL2a乃至第3変形形態の銅薄膜線TL2cそれぞれを製造する場合において同様である。
【0053】
(b)ステップS1で製造されたアルミニウム薄膜10の図3(a)における上下の表面に、例えば電気めっき法により必要な厚さ(例えば25マイクロメートル)の銅薄膜1及び銅薄膜2を成膜する(ステップS2)。なお、第1変形形態の銅薄膜線TL2aを製造する場合における上記ステップS2では、アルミニウム薄膜10の図3(b)における上面にのみ、例えば厚さ100マイクロメートルの銅薄膜3を成膜することになる。また、第2変形形態の銅薄膜線TL2bを製造する場合における上記ステップS2では、アルミニウム薄膜10の図3(c)における上下の表面に例えばそれぞれ厚さ100マイクロメートルの銅薄膜3及び銅薄膜4をそれぞれ成膜することになる。更に、第3変形形態の銅薄膜線TL2cを製造する場合における上記ステップS2では、アルミニウム薄膜10の周表面全体に必要な厚さの銅薄膜5を成膜することになる。
【0054】
(c)上記(b)で製造された銅薄膜線TL2を、フィルムBF上の対応する位置に例えば接着し、実施形態の送電コイルTCとする(ステップS3)。
【0055】
(d)上記(c)で製造された送電コイルTCの外部接続端子O1及び外部接続端子O2と、送電部TRとを接続する(ステップS4)。
【実施例
【0056】
次に、図2及び図3(a)に示す構造を有する実施形態の銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2を備える送電コイルTC及び受電コイルRCの当該構造による効果として、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2それぞれの全体の厚さと、当該送電コイルTC及び当該受電コイルRCを含む実施形態の電力伝送システムSによる電力伝送におけるQ値との関係について、図5及び以下の表1を用いて説明する。なお図5は、実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCの構造による効果としての銅薄膜線の全体の厚さとQ値との関係を示すグラフ図である。ここで図5には、図2及び図3(a)に示す構造(断面構造)を有する実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRC、図3(b)に示す構造(断面構造)を有する第1変形形態の送電コイル及び受電コイル、並びに図3(c)に示す構造(断面構造)を有する第2変形形態の送電コイル及び受電コイルのそれぞれについて、銅薄膜線TL2、銅薄膜線TL2a及び銅薄膜線TL2bそれぞれの全体の厚さと、各送電コイルを用いた電力伝送における上記Q値との関係を計測した実験結果(シミュレーション結果)が示されている。またこれらと対比して、図5には、従来例の構造を有する送電コイル及び送電コイルを用いた電力伝送における当該Q値も示されている。
【0057】
このとき、図5に上記実験結果が示されている従来例の銅薄膜線は、銅薄膜のみからなる従来例の銅薄膜線とアルミニウム薄膜のみからなる従来例の銅薄膜線である。そして、当該各銅薄膜線の幅は実施形態の銅薄膜線TL2と同じ幅W2とされ、それぞれの厚さについては、以下の表1に示されている。
【表1】
【0058】
そして、図5及び表1に示す通り、従来例の構造を有する送電コイル及び受電コイルに対して、実施形態並びに第1変形形態及び第2変形形態の銅薄膜線TL2等の方が、送電コイル及び受電コイルとしての軽量化を図りつつ、銅薄膜線のみからなる従来例と同等のQ値が得られていることが判る。更に、実施形態並びに第1変形形態及び第2変形形態の銅薄膜線TL2等はその表面が銅であることから、上記表皮効果及び上記近接効果を考慮した場合の導電率が低いことや入出力用のケーブルの接続性の問題も解決されている。
【0059】
以上説明したように、実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCの構造によれば、それぞれの巻回方向に巻回された銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2が、芯材としてのアルミニウム薄膜10と被覆材としての銅薄膜1及び銅薄膜2からなり、アルミニウム薄膜10の密度が銅薄膜1及び銅薄膜2の密度より低く、銅薄膜1及び銅薄膜2の導電率がアルミニウム薄膜10の導電率より高いので、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2の表面に近い部分の導電率が高い一方、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2の中心に近い芯材の密度が被覆材の密度よりも低いので、いわゆる表皮効果又は近接効果によるインピーダンスの低減に起因する伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、コイルとしての軽量化及び低コスト化と、を両立させることができる。
【0060】
また、芯材としてのアルミニウム薄膜10の銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2の中心軸に垂直な断面が、その巻回面に平行な長辺を有する長方形であり、被覆材としての銅薄膜1等が当該長辺の少なくとも一方を巻回方向に沿って被覆しているので(図3参照)、送電コイルTC及び受電コイルRCの軽量化及び低コスト化を促進することができる。
【0061】
更に、実施形態の銅薄膜線TL2及び第2変形形態の銅薄膜線TL2bの場合は、芯材の断面における二つの長辺を被覆材が巻回方向に沿って被覆しているので、インピーダンスの低減を促進することができる。
【0062】
更にまた、第3変形形態の銅薄膜線TL2cの場合は、被覆材としての銅薄膜5が芯材としてのアルミニウム薄膜10の全周に渡って被覆されているので、インピーダンスの低減を更に促進することができる。
【0063】
更に、被覆材としての銅薄膜1等の厚さが、実施形態の電力伝送システムSによる電力伝送に用いられる電流の周波数(即ち85キロヘルツ)における表皮効果が表れる表皮厚さの半分以下の厚さ(即ち、25マイクロメートル乃至100マイクロメートル)であるので、当該電力伝送によるインピーダンスを効果的に低減することができる。
【0064】
更にまた、芯材がアルミニウム薄膜10であり、被覆材が銅薄膜1等であるので、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、送電コイルTC及び受電コイルRCとしての軽量化及び低コスト化と、を効果的に両立させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上それぞれ説明したように、本発明は非接触の電力伝送の分野に利用することが可能であり、特に電気自動車に搭載された蓄電池を充電するための電力伝送の分野に適用すれば特に顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0066】
1、2、3、4、5 銅薄膜
10 アルミニウム薄膜
S 電力伝送システム
R 受電装置
RV 受電部
RC 送電コイル
T 送電装置
TR 送電部
TC 送電コイル
TL1、TL2、TL2a、TL2b、TL2c 銅薄膜線
BF フィルム
O1、O2 外部接続端子
図1
図2
図3
図4
図5