(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240903BHJP
B29C 64/336 20170101ALI20240903BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240903BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240903BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240903BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240903BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/336
B29C64/106
B33Y30/00
B33Y50/02
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2020182367
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】宮下 武
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-041201(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B22F 10/00 - 10/85
B22F 12/00 - 12/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージと、
第1材料を供給する第1材料供給手段と、
前記第1材料と異なる第2材料を供給する第2材料供給手段と、
制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記第1材料供給手段を制御して、前記ステージ上に前記第1材料を供給し、第1造形層を形成する処理と、
前記第1材料供給手段を制御して、前記第1造形層の第1領域上に前記第1材料を供給
することと、前記第2材料供給手段を制御して、前記第1造形層の前記第1領域と異なる第2領域上に前記第2材料を供給
することと、を複数回繰り返し、複数
の第2造形層からなる積層体を形成する処理と、
前記第2材料供給手段を制御して、前記積層体上に前記第2材料を供給し、第3造形層を形成する処理と、
を行い、
前記制御部は、前記積層体を形成する処理において、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第1層
が、前記第1造形層と接し、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第2層
が、前記第3造形層と接し、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第3層
が、前記第1層と前記第2層との間に位置し、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第4層
が、前記第1層と前記第3層との間に位置し、
前記第2造形層
が、
前記第1材料で形成される第1材料領域と、
前記第2材料で形成される第2材料領域と、
を有し、
前記積層体の積層方向からみて、
前記第1層の前記第1材料領域の面積
が、前記第4層の前記第1材料領域の面積よりも
大きく、
前記第2層の前記第2材料領域の面積
が、前記第3層の前記第2材料領域の面積よりも大きく、
前記第3層の前記第1材料領域の面積
が、前記第1層の前記第1材料領域の面積よりも大き
く、
前記第3層と前記第2層との間に、複数の前記第2造形層が設けられ、
前記積層方向からみて、前記第3層と前記第2層との間に設けられた複数の前記第2造形層における前記第1材料領域の面積が、前記第3層から前記第2層まで、段々と小さくなり、
前記積層方向からみて、前記第3層と前記第2層との間に設けられた複数の前記第2造形層における前記第2材料領域の面積が、前記第3層から前記第2層まで、段々と大きくなるように、前記積層体を形成する、三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記積層体を形成する処理において、
前記積層方向からみて、前記第1層の前記第1材料領域の面積と、前記第2層の前記第2材料領域の面積と
が、互いに等し
くなるように、前記積層体を形成する、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御部は、前記積層体を形成する処理において、
前記第1層の前記第1材料領域の前記積層方向における引張強度と、前記第2層の前記第2材料領域の前記積層方向における引張強度と
が、互いに等し
くなるように、前記積層体を形成する、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の材料を用いて三次元造形物を造形する三次元造形装置が知られている。複数の材料を用いることで、単一の材料や合金では得られない特性を有する三次元造形物を造形することができる。
【0003】
例えば特許文献1には、材料の積層方向に対して垂直な垂直方向に異種材料が交互に現
われる境界が形成される三次元造形物の造形方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように複数の材料を用いて三次元造形物を造形する場合、互いに異なる材料の界面における密着性が問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る三次元造形装置の一態様は、
ステージと、
第1材料を供給する第1材料供給手段と、
前記第1材料と異なる第2材料を供給する第2材料供給手段と、
制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記第1材料供給手段を制御して、前記ステージ上に前記第1材料を供給し、第1造形層を形成する処理と、
前記第1材料供給手段を制御して、前記第1造形層の第1領域上に前記第1材料を供給し、前記第2材料供給手段を制御して、前記第1造形層の前記第1領域と異なる第2領域上に前記第2材料を供給し、第2造形層を形成する処理と、
前記第1材料の供給と、前記第2材料の供給と、を複数回繰り返し、複数の前記第2造形層からなる積層体を形成する処理と、
前記第2材料供給手段を制御して、前記積層体上に前記第2材料を供給し、第3造形層を形成する処理と、
を行い、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第1層は、前記第1造形層と接し、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第2層は、前記第3造形層と接し、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第3層は、前記第1層と前記第2層との間に位置し、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第4層は、前記第1層と前記第3層との間に位置し、
前記第2造形層は、
前記第1材料で形成される第1材料領域と、
前記第2材料で形成される第2材料領域と、
を有し、
前記積層体の積層方向からみて、
前記第1層の前記第1材料領域の面積は、前記第4層の前記第1材料領域の面積よりも大きく、
前記第2層の前記第2材料領域の面積は、前記第3層の前記第2材料領域の面積よりも大きく、
前記第3層の前記第1材料領域の面積は、前記第1層の前記第1材料領域の面積よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る三次元造形装置を模式的に示す断面図。
【
図2】本実施形態に係る三次元造形装置で造形される三次元造形物を模式的に示す断面図。
【
図3】本実施形態に係る三次元造形装置で造形される三次元造形物を模式的に示す断面図。
【
図4】本実施形態に係る三次元造形装置で造形される三次元造形物を模式的に示す斜視図。
【
図5】本実施形態に係る三次元造形装置で造形される三次元造形物の第1層を模式的に示す平面図。
【
図6】本実施形態に係る三次元造形装置で造形される三次元造形物の第2層を模式的に示す平面図。
【
図7】本実施形態に係る三次元造形装置の制御部の処理を説明するためのフローチャート。
【
図8】本実施形態に係る三次元造形装置で造形される三次元造形物の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図9】本実施形態に係る三次元造形装置で造形される三次元造形物の製造工程を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1. 三次元造形装置
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る三次元造形装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る三次元造形装置100を模式的に示す断面図である。なお、
図1では、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。X軸方向およびY軸方向は、例えば、水平方向である。Z軸方向は、例えば、鉛直方向である。
【0010】
三次元造形装置100は、
図1に示すように、例えば、造形ユニット10と、ステージ20と、移動手段30と、制御部40と、を含む。
【0011】
造形ユニット10は、例えば、支持部材110と、第1材料供給手段120と、第2材料供給手段130と、レーザー140と、を含む。
【0012】
支持部材110は、例えば、板状の部材である。支持部材110は、第1材料供給手段120、第2材料供給手段130、およびレーザー140を支持している。
【0013】
第1材料供給手段120は、第1材料を供給する。第1材料は、例えば、金属材料である。金属材料としては、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム (Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金、また、マルエージング鋼、ステンレス鋼(SUS)、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金が挙げられる。
【0014】
第1材料供給手段120は、例えば、材料導入部121と、モーター122と、フラットスクリュー123と、バレル124と、ヒーター125と、ノズル126と、を有している。
【0015】
第1材料供給手段120の材料導入部121は、フラットスクリュー123のバレル124側の面に設けられた溝123aに第1材料を導入する。溝123aに導入される第1材料は、例えば、粉末状である。フラットスクリュー123は、モーター122によって回転させる。ヒーター125は、バレル124に設けられている。ヒーター125の熱によって、第1材料は、溝123aにおいて可塑化される。可塑化された第1材料は、バレル124に設けられた連通孔124aを通って、ノズル126からステージ20に向かって吐出される。吐出された第1材料は、ステージ20において流動性を失った状態となる。
【0016】
第2材料供給手段130は、第1材料と異なる第2材料を供給する。第2材料は、例えば、セラミック材料である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが挙げられる。
【0017】
第2材料供給手段130は、例えば、材料導入部121と、モーター122と、フラットスクリュー123と、バレル124と、ヒーター125と、ノズル126と、を有している。第2材料供給手段130は、例えば、第1材料供給手段120と同じ構成を有している。
【0018】
レーザー140は、第1材料および第2材料にレーザー光を照射する。レーザーは、例えば、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザー、ファイバーレーザー、UV(ultraviolet)レーザーなどである。
【0019】
ステージ20は、造形ユニット10の下方に設けられている。ステージ20の造形面22には、第1材料および第2材料が供給され、三次元造形物が形成される。
【0020】
移動手段30は、造形ユニット10とステージ20との相対的な位置を変化させる。移動手段30は、例えば、ステージ20と第1材料供給手段120との相対的な位置、ステージ20と第2材料供給手段130との相対的な位置、およびステージ20とレーザー140との相対的な位置を、同時に変化させる。図示の例では、ステージ20は、固定されており、移動手段30は、ステージ20に対して、造形ユニット10を移動させる。これにより、ステージ20と、第1材料供給手段120、第2材料供給手段130、およびレーザー140と、の相対的な位置を変化させることができる。図示の例では、移動手段30は、支持部材110に接続されており、支持部材110を移動させることにより、造形ユニット10を移動させる。
【0021】
移動手段30は、例えば、図示しない3つのモーターの駆動力によって、造形ユニット10をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。移動手段30のモーターは、制御部40によって制御される。
【0022】
なお、移動手段30は、造形ユニット10を移動させずに、ステージ20を移動させる構成であってもよい。この場合、移動手段30は、ステージ20に接続されている。または、移動手段30は、造形ユニット10およびステージ20の両方を移動させる構成であってもよい。この場合、移動手段30は、造形ユニット10およびステージ20の両方に接続されている。
【0023】
制御部40は、例えば、プロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースと、を有するコンピューターによって構成されている。制御部40は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。制御部40は、造形ユニット10および移動手段30を制御する。制御部40の具体的な処理は、後述する。なお、制御部40は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0024】
1.2. 三次元造形物の構成
図2は、三次元造形装置100で造形される三次元造形物Mを模式的に示す断面図である。
図3は、
図2に示す三次元造形物Mの拡大図である。
【0025】
三次元造形物Mは、
図2および
図3に示すように、第1積層体70と、第2積層体72と、第3積層体74と、を含む。
【0026】
第1積層体70は、ステージ20上に設けられ、複数の第1造形層60から構成されている。第1造形層60は、第1材料50を含み、第2材料52を含まない。第1積層体70を構成する複数の第1造形層60のうち、第2積層体72と接する第1造形層60は、第1領域60aと、第1領域60aと異なる第2領域60bと、を有している。図示の例では、第2積層体72と接する第1造形層60は、6層の第1造形層60を介して、ステージ20上に設けられている。第1領域60a上に、第2造形層62の第1材料領域51が形成される。第2領域60b上に、第2造形層62の第2材料領域53が形成される。
【0027】
第2積層体72は、第1積層体70と第3積層体74との間に設けられ、複数の第2造形層62から構成されている。第2積層体72は、複数の凸部73を有している。凸部73は、第1材料50によって構成されている。凸部73は、第1積層体70から突出した形状を有している。第2造形層62は、第1材料50で形成される第1材料領域51と、第2材料52で形成される第2材料領域53と、を有している。第1材料領域51が凸部73の一部を構成している。第2積層体72を構成する複数の第2造形層62のうち、第1積層体70と接する第2造形層62において、第1材料領域51は第1領域60a上に形成され、第2材料領域53は第2領域60b上に形成される。
【0028】
ここで、
図4は、第2積層体72の凸部73を模式的に示す斜視図である。なお、便宜上、
図4では、凸部73を簡略化して図示している。凸部73は、
図4に示すように、複数設けられている。図示の例では、複数の凸部73は、X軸方向およびY軸方向にマトリックス状に設けられている。以下では、凸部73の数をnとする。n個の凸部73の形状および大きさは、例えば、互いに等しい。
【0029】
図3に示すように、第2積層体72を構成する複数の第2造形層62のうち(以下、単に「第2積層体72のうち」ともいう)第1層62aは、第1積層体70と接している。第2積層体72のうち第2層62bは、第3積層体74と接している。第2積層体72のうち第3層62cは、第1層62aと第2層62bとの間に位置している。第2積層体72のうち第4層62dは、第1層62aと第3層62cとの間に位置している。図示の例では、第4層62dは、第1層62aと接している。
【0030】
第2積層体72の積層方向からみて(以下、単に「積層方向からみて」ともいう)、第1層62aの第1材料領域51aの面積nS11は、第4層62dの第1材料領域51dの面積nS41よりも大きい。第2層62bの第2材料領域53bの面積nS22は、第3層62cの第2材料領域53cの面積nS32よりも大きい。第3層62cの第1材料領域51cの面積nS31は、第1層62aの第1材料領域51aの面積nS11よりも大きい。図示の例では、積層方向は、Z軸方向である。
【0031】
積層方向からみて、第3層62cは、例えば、第1材料領域51cの面積が第2積層体72のうちで最大である。第3層62cは、第2材料領域53cの面積が第2積層体72のうちで最小である。
【0032】
積層方向からみて、第4層62dは、例えば、第1材料領域51の面積が第1層62aと第3層62cとの間に位置する複数の第2造形層62のうちで最小である。各第2造形層62における第1材料領域51の面積は、例えば、第4層62dから第3層62cまで、段々と大きくなっており、第3層62cから第2層62bまで、段々と小さくなっている。
【0033】
積層方向からみて、第4層62dは、例えば、第2材料領域53の面積が第1層62aと第3層62cとの間に位置する複数の第2造形層62のうちで最大である。各第2造形層62における第2材料領域53の面積は、例えば、第4層62dから第3層62cまで、段々と小さくなっており、第3層62cから第2層62bまで、段々と大きくなっている。
【0034】
なお、第1材料領域51aは、複数の第1材料領域51のうち、第1層62aが有する第1材料領域51である。第1材料領域51bは、複数の第1材料領域51のうち、第2層62bが有する第1材料領域51である。第1材料領域51cは、複数の第1材料領域51のうち、第3層62cが有する第1材料領域51である。第1材料領域51dは、複数の第1材料領域51のうち、第4層62dが有する第1材料領域51である。
【0035】
また、第2材料領域53aは、複数の第2材料領域53のうち、第1層62aが有する第2材料領域53である。第2材料領域53bは、複数の第2材料領域53のうち、第2層62bが有する第2材料領域53である。第2材料領域53cは、複数の第2材料領域53のうち、第3層62cが有する第2材料領域53である。
【0036】
積層方向からみて、第1層62aの第1材料領域51aの面積nS
11と、第2層62bの第2材料領域53bの面積nS
22とは、例えば、互いに等しい。ここで、
図5は、第1層62aの一部を模式的に示す平面図である。
図6は、第2層62bの一部を模式的に示す平面図である。
【0037】
図5に示すように、第1層62aにおいて、一辺の長さがAの正方形の中に、半径R
1の円を仮定する。第1層62aにおいて、円の面積を第1材料領域51aの面積S
11とし、正方形から面積S
11を引いた面積を第2材料領域53aの面積S
12とすると、面積S
11および面積S
12は、以下のように表される。
【0038】
【0039】
図6に示すように、第2層62bにおいて、一辺の長さがAの正方形の中に、半径R
2の円を仮定する。第2層62bにおいて、円の面積を第1材料領域51bの面積S
21とし、正方形から面積S
21を引いた面積を第2材料領域53bの面積S
22とすると、面積S
21および面積S
22は、以下のように表される。
【0040】
【0041】
したがって、面積S11と面積S22とが互いに等しい場合、半径R1は、以下のように表される。
【0042】
【0043】
第3積層体74は、第2積層体72上に設けられ、複数の第3造形層64から構成されている。第3造形層64は、第2材料52を含み、第1材料50を含まない。
【0044】
1.3. 制御部の処理
制御部40は、移動手段30、第1材料供給手段120、第2材料供給手段130、およびレーザー140を制御する。
図7は、制御部40の処理を説明するためのフローチャートである。
図8および
図9は、三次元造形装置100で製造される三次元造形物Mの製造工程を模式的に示す断面図である。
【0045】
ユーザーは、例えば、図示せぬ操作部を操作して、制御部40に処理開始信号を送信する。操作部は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルなどによって実現される。制御部40は、処理開始信号を受けると、
図7に示すように、処理を開始する。
【0046】
まず、制御部40は、造形データを取得する処理を行う(ステップS1)。造形データは、三次元造形物を造形するための造形データである。造形データは、造形される三次元造形物の形状、大きさ、および材質などに関する情報を含む。以下に示す制御部40の処理は、造形データに基づいて行われる。造形データは、例えば、三次元造形装置100に接続されたコンピューターにインストールされたスライサーソフトによって生成される。制御部40は、三次元造形装置100に接続されたコンピューターや、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの記録媒体から造形データを取得する。
【0047】
次に、制御部40は、移動手段30を制御して、ステージ20に対して造形ユニット10を移動させながら、第1材料供給手段120を制御して、ステージ20上に第1材料50を供給する処理を行う(ステップS2)。
【0048】
次に、制御部40は、移動手段30を制御して、ステージ20に対して造形ユニット10を移動させながら、レーザー140を制御して、ステージ20上の第1材料50にレーザー光を照射し、第1造形層60を形成する処理を行う(ステップS3)。第1材料50にレーザー光を照射することにより、第1材料50は、焼結または溶融され、平坦性の高い第1造形層60を形成することができる。
【0049】
次に、制御部40は、取得した造形データに基づいて、第1造形層60の積層数が所定数になったか否か判定する処理を行う(ステップS4)。第1造形層60の積層数が所定数になっていないと判定した場合(ステップS4で「NO」の場合)、制御部40は、ステップS2に戻り、第1造形層60の積層数が所定数になるまで、ステップS2およびステップS3を繰り返す。これにより、
図8に示すように、複数の第1造形層60からなる第1積層体70を形成することができる。第1造形層60の積層数が所定数になったと判定した場合(ステップS4で「YES」の場合)、制御部40は、ステップS5に移行する。
【0050】
ステップS5では、制御部40は、移動手段30を制御して、ステージ20に対して造形ユニット10を移動させながら、第1材料供給手段120を制御して、第1造形層60の第1領域60a上に第1材料50を供給し、第2材料供給手段130を制御して、第1造形層60の第2領域60b上に第2材料52を供給する処理を行う(ステップS5)。
【0051】
次に、制御部40は、移動手段30を制御して、ステージ20に対して造形ユニット10を移動させながら、レーザー140を制御して、第1造形層60上の第1材料50および第2材料52にレーザー光を照射し、第2造形層62を形成する処理を行う(ステップS6)。
【0052】
次に、制御部40は、取得した造形データに基づいて、第2造形層62の積層数が所定数になったか否か判定する処理を行う(ステップS7)。第2造形層62の積層数が所定数になっていないと判定した場合(ステップS7で「NO」の場合)、制御部40は、ステップS5に戻り、第2造形層62の積層数が所定数になるまで、ステップS5とステップS6とを繰り返す。これにより、
図9に示すように、複数の第2造形層62からなる第2積層体72を形成することができる。第2造形層62の積層数が所定数になったと判定した場合(ステップS7で「YES」の場合)、制御部40は、ステップS8に移行する。
【0053】
ステップS8では、制御部40は、移動手段30を制御して、ステージ20に対して造形ユニット10を移動させながら、第2材料供給手段130を制御して、ステージ20上に第2材料52を供給する処理を行う(ステップS8)。
【0054】
次に、制御部40は、移動手段30を制御して、ステージ20に対して造形ユニット10を移動させながら、レーザー140を制御して、ステージ20上の第2材料52にレーザー光を照射し、第3造形層64を形成する処理を行う(ステップS9)。
【0055】
次に、制御部40は、取得した造形データに基づいて、第3造形層64の積層数が所定数になったか否か判定する処理を行う(ステップS10)。第3造形層64の積層数が所定数になっていないと判定した場合(ステップS10で「NO」の場合)、制御部40は、ステップS8に戻り、第3造形層64の積層数が所定数になるまで、ステップS8とステップS9とを繰り返す。これにより、
図2に示すように、複数の第3造形層64からなる第3積層体74を形成することができる。第3造形層64の積層数が所定数になったと判定した場合(ステップS10で「YES」の場合)、制御部40は、処理を終了する。
【0056】
1.4. 作用効果
三次元造形装置100では、第2積層体72を構成する複数の第2造形層62のうち、第1層62aは、第1造形層60と接し、第2層62bは、第3造形層64と接し、第3層62cは、第1層62aと第2層62bとの間に位置し、第4層62dは、第1層62aと第3層62cとの間に位置する。第2造形層62は、第1材料50で形成される第1
材料領域51と、第2材料52で形成される第2材料領域53と、を有する。積層方向からみて、第1層62aの第1材料領域51aの面積nS11は、第4層62dの第1材料領域51dの面積nS41よりも大きく、第2層62bの第2材料領域53bの面積nS22は、第3層62cの第2材料領域53cの面積nS32よりも大きく、第3層62cの第1材料領域51cの面積nS31は、第1層62aの第1材料領域51aの面積nS11よりも大きい。三次元造形装置100では、第1層62aの第1材料領域51aの面積nS11が第4層62dの第1材料領域51dの面積nS41よりも大きいため、第1層62aは、第1材料領域51の面積が第2積層体72のうちで最小ではない。これにより、第1造形層60と第2造形層62との密着性を高めることができる。面積nS11が第2積層体のうちで最小であると、第1造形層と接触する第2材料領域の面積が大きくなり、第1造形層と第2造形層との密着性が低くなる。
【0057】
さらに、三次元造形装置100では、積層方向からみて、第2層62bの第2材料領域53bの面積nS22は、第3層62cの第2材料領域53cの面積nS32よりも大きい。そのため、第2層62bは、第2材料領域53の面積が第2積層体72のうちで最小ではない。これにより、第2造形層62と第3造形層64との密着性を高めることができる。
【0058】
さらに、三次元造形装置100では、積層方向からみて、第3層62cの第1材料領域51cの面積nS31は、第1層62aの第1材料領域51aの面積nS11よりも大きい。そのため、例えば、第1層から第2層まで段々と第1材料領域の面積が小さくなる場合に比べて、アンカー効果を発現し易く、第1造形層60と第2造形層62との密着性を高めることができる。
【0059】
さらに、三次元造形装置100では、積層方向からみて、第4層62dの第1材料領域51dの面積nS41は、第1層62aの第1材料領域51aの面積nS11よりも小さい。そのため、例えば、第1層から第3層まで段々と第1材料領域の面積が大きくなる場合に比べて、アンカー効果を発現し易く、第1造形層60と第2造形層62との密着性を高めることができる。
【0060】
三次元造形装置100では、積層方向からみて、第1層62aの第1材料領域51aの面積nS11と、第2層62bの第2材料領域53bの面積nS22とは、互いに等しい。そのため、三次元造形装置100では、面積nS11と面積nS22とが互いに異なる場合に比べて、第1造形層60と第2造形層62との密着性と、第2造形層62と第3造形層64との密着性と、の差を小さくすることができる。当該2つの密着性の差が大きいと、密着性の小さい方において、負荷が集中しクラックや剥離が生じる。
【0061】
2. 変形例
次に、本実施形態の変形例に係る三次元造形装置について、説明する。以下、本実施形態の変形例に係る三次元造形装置において、上述した本実施形態に係る三次元造形装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0062】
本実施形態の変形例に係る三次元造形装置では、第1層62aの第1材料領域51aの積層方向における引張強度F11と、第2層62bの第2材料領域53bの積層方向における引張強度F22とは、互いに等しい点において、上述した三次元造形装置100と異なる。
【0063】
例えば、1つの凸部73において、第1材料領域51aの0.2%耐力をσ1とし、第2材料領域53bの0.2%耐力をσ2とし、凸部73の数をn個とすると、第1層62aの第1材料領域51aの積層方向における引張強度F11と、第2層62bの第2材料領域53bの積層方向における引張強度F22とは、以下のように表される。
【0064】
【0065】
したがって、引張強度F11と引張強度F22とが互いに等しい場合、半径R1は、以下のように表される。
【0066】
【0067】
本実施形態の変形例に係る三次元造形装置では、引張強度F11と引張強度F22とが互いに等しいため、第1造形層60と第2造形層62との密着性と、第2造形層62と第3造形層64との密着性と、を同じにすることができる。
【0068】
なお、上記の例では、ステージ20と、第1材料供給手段120、第2材料供給手段130、およびレーザー140と、の相対的な位置を同時に変化させることができる例について説明したが、第1材料供給手段120と、第2材料供給手段130と、レーザー140とは、別々に移動される構成であってもよい。また、レーザー140は、固定されており、ガルバノミラーを用いてレーザー光を移動させてもよい。この場合、ガルバノミラーは、制御部40によって制御される。
【0069】
また、上記の例では、フラットスクリュー123を用いた例について説明したが、フラットスクリュー123の代わりにインラインスクリューまたはFDM方式のヘッドを用いてもよい。
【0070】
また、上記の例では、第1材料50が金属材料で、第2材料52がセラミック材料である場合について説明したが、第1材料50がセラミック材料で、第2材料52が金属材料であってもよい。また、第1材料50と第2材料52が互いに異なる材料であれば、第1材料50および第2材料52ともに金属材料であってもよいし、第1材料50および第2材料52ともにセラミック材料であってもよいし、金属材料およびセラミック材料以外の材料であってもよい。
【0071】
また、第1材料供給手段120および第2材料供給手段130は、第1材料50および第2材料52と一緒に混錬して供給される材料として、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)などの合成樹脂が挙げられる。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。バインダーおよび溶剤は、例えば、レーザー光の照射によって気化される。なお、溶媒は、ランプなどにより塗布後の事前乾燥工程で気化されても構わない。
【0072】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0073】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び
結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0074】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0075】
三次元造形装置の一態様は、
ステージと、
第1材料を供給する第1材料供給手段と、
前記第1材料と異なる第2材料を供給する第2材料供給手段と、
制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記第1材料供給手段を制御して、前記ステージ上に前記第1材料を供給し、第1造形層を形成する処理と、
前記第1材料供給手段を制御して、前記第1造形層の第1領域上に前記第1材料を供給し、前記第2材料供給手段を制御して、前記第1造形層の前記第1領域と異なる第2領域上に前記第2材料を供給し、第2造形層を形成する処理と、
前記第1材料の供給と、前記第2材料の供給と、を複数回繰り返し、複数の前記第2造形層からなる積層体を形成する処理と、
前記第2材料供給手段を制御して、前記積層体上に前記第2材料を供給し、第3造形層を形成する処理と、
を行い、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第1層は、前記第1造形層と接し、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第2層は、前記第3造形層と接し、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第3層は、前記第1層と前記第2層との間に位置し、
前記積層体を構成する複数の前記第2造形層のうち第4層は、前記第1層と前記第3層との間に位置し、
前記第2造形層は、
前記第1材料で形成される第1材料領域と、
前記第2材料で形成される第2材料領域と、
を有し、
前記積層体の積層方向からみて、
前記第1層の前記第1材料領域の面積は、前記第4層の前記第1材料領域の面積よりも大きく、
前記第2層の前記第2材料領域の面積は、前記第3層の前記第2材料領域の面積よりも大きく、
前記第3層の前記第1材料領域の面積は、前記第1層の前記第1材料領域の面積よりも大きい。
【0076】
この三次元造形装置によれば、第1造形層と第2造形層との密着性、および第2造形層と第3造形層との密着性を高めることができる。
【0077】
前記三次元造形装置の一態様において、
前記積層方向からみて、前記第1層の前記第1材料領域の面積と、前記第2層の前記第2材料領域の面積とは、互いに等しくてもよい。
【0078】
この三次元造形装置によれば、第1造形層と第2造形層との密着性と、第2造形層と第3造形層との密着性と、の差を小さくすることができる。
【0079】
前記三次元造形装置の一態様において、
前記第1層の前記第1材料領域の前記積層方向における引張強度と、前記第2層の前記第2材料領域の前記積層方向における引張強度とは、互いに等しくてもよい。
【0080】
この三次元造形装置によれば、第1造形層と第2造形層との密着性と、第2造形層と第3造形層との密着性と、を同じにすることができる。
【符号の説明】
【0081】
10…造形ユニット、20…ステージ、22…造形面、30…移動手段、40…制御部、50…第1材料、51,51a,51b,51c,51d…第1材料領域、52…第2材料、53,53a,53b,53c…第2材料領域、60…第1造形層、60a…第1領域、60b…第2領域、62…第2造形層、62a…第1層、62b…第2層、62c…第3層、62d…第4層、64…第3造形層、70…第1積層体、72…第2積層体、73…凸部、74…第3積層体、100…三次元造形装置、110…支持部材、120…第1材料供給手段、121…材料導入部、122…モーター、123…フラットスクリュー、123a…溝、124…バレル、124a…連通孔、125…ヒーター、126…ノズル、130…第2材料供給手段、140…レーザー