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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/06 20060101AFI20240903BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20240903BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B66F9/06 L
B66F9/06 M
B66F9/24 F
B66F11/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020198478
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086461
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 将士
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-034498(JP,A)
【文献】実用新案登録第2593333(JP,Y2)
【文献】実開平03-130300(JP,U)
【文献】特開平11-301995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0318610(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮、起伏及び旋回可能に構成されるブームと、
前記ブームを移動可能に支持する車両部と、
前記ブームの先端に設けられるバスケットフレームと、
前記バスケットフレームの上面に設けられる複数のロードセルと、
前記複数のロードセルの上方に配置されるバスケットと、
上下方向に貫通する孔部を有し、前記ロードセルと前記バスケットとの間に配置され、前記バスケットの下面に固定されるサポート部材と、
前記孔部に上方から挿通され、前記ロードセルに締結されるボルトと、
前記バスケットフレームと前記バスケットとを間隔を有して連結する環状部材と、を備える、高所作業車。
【請求項2】
前記複数のロードセルで検出した荷重の加算値から作業可能範囲を算出する制御部を備える、請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記ブームを起伏させる起伏シリンダと、
前記起伏シリンダに掛かる荷重を検出するセンサと、を備え、
前記制御部は、前記センサの検出値から前記バスケットの重さを算出し、該重さと前記ロードセルで検出した荷重の加算値とが所定値以上乖離している場合、前記ロードセル又は前記センサが故障していると判定する、請求項に記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車において、作業半径を算出するためにバスケットの荷重を検出することが行われている。例えば特許文献1には、バスケットの床板を4つのロードセルで支持する構成が開示されている。この構成によれば、バスケットの実際の荷重を検出できるため、精度よく作業半径を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平5-86996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、バスケットをロードセルで支持する場合、バスケットに掛かる全ての荷重をロードセルで受ける必要がある。そのため、ロードセルとバスケットとの締結部分における安全性の確保が重要となる。例えば、ロードセルとバスケットとをボルトで締結する構成とする場合、使用によりボルトが緩んだ場合における安全性の確保が想定される。しかしながら、特許文献1には、ロードセルの取り付け方についての具体的な記載はない。
【0005】
本発明は、バスケットをロードセルで支持する構成において安全性を確保することができる高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高所作業車は、伸縮、起伏及び旋回可能に構成されるブームと、前記ブームを移動可能に支持する車両部と、前記ブームの先端に設けられるバスケットフレームと、前記バスケットフレームの上面に設けられる複数のロードセルと、前記複数のロードセルの上方に配置されるバスケットと、上下方向に貫通する孔部を有し、前記ロードセルと前記バスケットとの間に配置され、前記バスケットの下面に固定されるサポート部材と、前記孔部に上方から挿通され、前記ロードセルに締結されるボルトと、前記バスケットフレームと前記バスケットとを間隔を有して連結する環状部材と、を備えるものである。
【0007】
上記の構成によれば、振動等によりボルトが緩んだ場合、ロードセルに対するボルトの螺合が外れる前にボルトの頭部がバスケットの下面に当接する。よって、ボルトは緩んでも脱落しないため、バスケットがバスケットフレームから脱落することを防止でき、安全性を確保することができる。また、バスケットフレームとバスケットとが間隔を有しているため、ロードセルの検出結果に影響しない。そして、万一、バスケットとロードセルとを締結する全てのボルトが破断しても、応急的にバスケットがバスケットフレームから脱落することを防止でき、安全性を確保することができる。
【0010】
また上記の高所作業車において、前記複数のロードセルで検出した荷重の加算値から作業可能範囲を算出する制御部を備えるようにしてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、作業可能範囲の算出にロードセルの検出値から算出したバスケットの実際の重さを用いることにより、バスケットの定格荷重を用いる場合に比べて軽負荷時に作業可能範囲を拡げることができる。
【0012】
また上記の高所作業車において、前記ブームを起伏させる起伏シリンダと、前記起伏シリンダに掛かる荷重を検出するセンサと、を備え、前記制御部は、前記センサの検出値から前記バスケットの重さを算出し、該重さと前記ロードセルで検出した荷重の加算値とが所定値以上乖離している場合、前記ロードセル又は前記センサが故障していると判定するようにしてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、バスケットの重さを2つの異なる検出手段で検出することにより、一方の検出手段が故障している場合に発見できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バスケットをロードセルで支持する構成において安全性を確保することができる高所作業車を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の高所作業車の全体構成を示す側面図である。
図2図1のバスケット周辺の斜視図である。
図3図1のバスケット周辺の平面図である。
図4図1のバスケット周辺の底面図である。
図5図1のバスケット周辺の背面図である。
図6図1のバスケット周辺の側面図である。
図7図6のA-A断面図である。
図8図6のB-B断面図である。
図9図8のC-C断面図である。
図10図8の荷重検出装置の分解斜視図である。
図11図1のバスケット周辺の斜視図である。
図12】一実施形態の高所作業車の制御構成の一部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明では、図1に示すように前後、左右及び上下方向を規定する。
【0017】
[高所作業車の全体構成]
図1に示すように、高所作業車1は、主に車両部2と作業装置3により構成されている。車両部2は、作業装置3を支持し、左右一対の前輪21及び後輪22を備えている。また、車両部2は、高所作業を行う際に接地させて安定を図るアウトリガ23を備えている。
【0018】
作業装置3は、ブーム31と、ブーム31の先端に設けられたバスケットフレーム4と、バスケットフレーム4に下方から支持されるバスケット5とを備えている。ブーム31は、伸縮、起伏及び旋回可能に構成されている。ブーム31の起伏は起伏シリンダ32により行われる。
【0019】
バスケットフレーム4及びバスケット5は、ブーム31に対してパン・チルト・スイング等の動作が可能となっている。本実施形態においてバスケットフレーム4は、下フレーム41と後フレーム42とを有する側面視L字型に構成されている。なお、バスケットフレーム4の形状には特に限定はなく、バスケット5を下方から支持できる形状であればよい。バスケットフレーム4は、剛性を確保する観点から鉄製であることが好ましい。
【0020】
バスケット5は、略矩形の床部51と、床部51上に設けられた複数の棒部材を格子状に組み付けて構成された籠状のガード52とを備えている。バスケット5は、軽量化の観点からはアルミ製であることが好ましく、コスト、強度及びメンテナンス性の観点からは鉄製又はFRP(Fiber Reinforced Plastics)製であることが好ましい。
【0021】
図2に示すように、バスケット5は、バスケットフレーム4に対して、荷重検出装置6を介して支持されており、それ以外の部分でバスケットフレーム4に接触していない。荷重検出装置6は、バスケット5の荷重を検出する装置であり、本実施形態では4つ設けられている。なお、荷重検出装置6は複数設けられていれば、その数には特に限定はない。また、荷重検出装置6の配置には特に限定はないが、バスケット5を支持するとともに、バスケット5の荷重を精度よく検出する観点から、互いに離れた位置に均等に配置されることが好ましい。
【0022】
[荷重検出装置]
図2から図10に示すように、荷重検出装置6は、バスケット5の重さ(バスケット5に掛かる荷重を含む)を検出するロードセル61と、サポート部材62と、ボルト63とを備えている。図8に示すように、ロードセル61は、左右方向の一端側に形成された上下方向に貫通する2つの孔部611と、左右方向の他端側に形成された上下方向に貫通する孔部612とを有している。孔部612は、ロードセル61の下面に貫通するネジ穴部612Aと、ネジ穴部612Aの上端部と連通してロードセル61の上面に貫通するザグリ穴部612Bとで構成されている。
【0023】
ロードセル61は、バスケットフレーム4の下フレーム41の上面に設けられている。具体的には、2つのボルト64が、孔部611に挿通され、下フレーム41の上面を構成する取付部411に螺合されることで、ロードセル61がバスケットフレーム4の上面に固定される。なお、ロードセル61は、ボルト64以外の固定手段によって下フレーム41に固定されてもよい。そして、ロードセル61は、図示しない配線によって後述する制御部に電気的に接続されている。
【0024】
ロードセル61としては、応力に比例してひずむ起歪体とひずみゲージを使用しているロードセルを用いることができる。本実施形態ではロードセル61として角型ビーム型ロードセルを用いているが、他型のロードセルを用いてもよい。
ている。
【0025】
図10に示すように、サポート部材62は、水平方向に拡がる略矩形の板状部621と、板状部621の四隅に形成された上下方向に貫通する孔部622と、板状部621の中央から下方へ突出する係合部623と、板状部621及び係合部623を上下方向に貫通する孔部624と、板状部621の下面から下方へ突出する回り止め部625とを有している。係合部623は、ザグリ穴部612Bに嵌合する形状であればよく、本実施形態では円筒状に構成されている。係合部623の長さは、ザグリ穴部612Bの深さより長く構成されている。回り止め部625は、一側面がロードセル61の一側面に当接する位置及び長さに構成されている。サポート部材62は、剛性を確保する観点から鉄製であることが好ましい。
【0026】
サポート部材62はロードセル61の上方からロードセル61に組み付けられる。その際、係合部623がザグリ穴部612Bに嵌合され、サポート部材62が回動されて回り止め部625の一側面がロードセル61の一側面に当接させられる。回り止め部625がロードセル61に当接することにより、サポート部材62が位置決めされる。次に、ボルト63が孔部624に上方から挿通され、ロードセル61のネジ穴部612Aに螺合されることで、サポート部材62がロードセル61の上面に固定される。
【0027】
次に、図8に示すように、サポート部材62はバスケット5の下面に組み付けられる。その際、バスケット5の下面を構成する取付部511がサポート部材の上面に当接するように、バスケット5が載置される。取付部511は、バスケット5の床梁512に固着されている一対の板状部材である。そして、サポート部材62の4つの孔部622に重なる取付部511の4つの孔部511Aに上方からボルト65が挿通され、板状部621の下面側からダブルナット66で締め付けられる。これにより、サポート部材62の上面にバスケット5が固定される。
【0028】
このように、サポート部材62はロードセル61とバスケット5との間に配置される。この状態において、取付部511の厚みはボルト63の頭部63Aの厚みよりも厚い。したがって、ボルト63の頭部63Aとその直上に位置するバスケット5の床梁512との間には隙間Gが生じる。そして、この隙間Gは、ボルト63のネジ部63Bのうち、ロードセル61のネジ穴部612Aに螺合している部分とネジ穴部612Aから下方に突出している部分との長さLよりも小さくなるように構成されている。
【0029】
その結果、振動等によりボルト63が緩んだ場合、ロードセル61に対するボルト63の螺合が外れる前にボルト63の頭部63Aがバスケット5の床梁512に当接する。よって、ボルト63は緩んでも脱落しないため、バスケット5がバスケットフレーム4から脱落することを防止でき、安全性を確保することができる。
【0030】
また、サポート部材62の係合部623がロードセル61のザグリ穴部612Bに嵌合されていることにより、バスケット5に横方向の荷重がかかった場合に、係合部623からザグリ穴部612Bに荷重が掛かり、ボルト63に掛かるせん断力を抑制できる。よって、ボルト63の破断が抑制される。
【0031】
[バスケットの脱落防止の構成]
図11に示すように、バスケット5は、バスケットフレーム4に対して、Uボルト7を介して連結されている。本実施形態において、Uボルト7は、バスケットフレーム4の上フレーム42に4つ設けられており、所定間隔(例えば数mm)を有してバスケット5のガード52を囲んでいる。Uボルト7の数には特に限定はなく、1つ以上であればよい。なお、Uボルト7は、バスケット5に設け、所定間隔を有してバスケットフレーム4を囲むように配置してもよい。
【0032】
このように、バスケットフレーム4とバスケット5とを間隔を有して連結するUボルト7を備えることにより、ロードセル61の検出結果に影響を与えることがない。そして、万一、バスケット5とロードセル61とを締結する全てのボルト63が破断しても、応急的にバスケット5がバスケットフレーム4から脱落することを防止でき、安全性を確保することができる。
【0033】
なお、バスケットフレーム4とバスケット5とを間隔を有して連結する部材であれば、Uボルト7以外の部材、例えば、円や楕円等の円環状部材、四角や三角等の角環状部材など、環状部材を用いてもよい。
【0034】
[荷重検出装置を用いた制御]
図12に示すように、高所作業車1は、センサ81と、作動制御部82と、警報部83と、ディスプレイ84と、制御部85とを備えている。センサ81は、起伏シリンダ32に掛かる荷重を検出する荷重センサである。センサ81の検出値からはバスケット5の重さを概算することができる。
【0035】
作動制御部82は、CPU(Central Processing Unit)等の制御装置で構成され、ブーム31やバスケットフレーム4等の作業装置3の作動を制御するものである。警報部83は、スピーカやベル等の放音装置で構成され、オペレータに対して警告等の高所作業車1の状態を音声で報知するものである。ディスプレイ84は、液晶パネル等の表示装置で構成され、オペレータに対して作業可能範囲等の高所作業車1に関する情報を表示するものである。
【0036】
制御部85は、CPU等の制御装置及びRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置で構成され、記憶装置にはバスケット5の重さに対する作業可能範囲等の作業に関する性能データ等が格納されている。制御部85は、ロードセル61やセンサ81等の検出装置から入力される信号及び性能データに基づいて、作動制御部82、警報部83、ディスプレイ84等を制御する。
【0037】
ここでは、制御部85の制御のうち、荷重検出装置6を用いた制御について説明する。まず、制御部85は、各ロードセル61の検出値を用いて作業可能範囲を算出してディスプレイ84に表示させる。具体的には、制御部85は、各ロードセル61の検出値を加算することで、バスケット5の重さを算出する。ここで算出されるバスケット5の重さには、バスケット5上のオペレータやガード52に引っ掛けられた工具など、バスケット5に掛かる全ての荷重を含んでいる。続いて、制御部85は、格納されている性能データから、算出したバスケット5の重さに対応する作業可能範囲を抽出する。そして、制御部85は、抽出した作業可能範囲をディスプレイ84に表示させる。これにより、オペレータはディスプレイ84に表示された作業可能範囲を参照してバスケット5を移動させることができる。
【0038】
このように、作業可能範囲の算出にロードセル61の検出値から算出したバスケット5の実際の重さを用いることにより、バスケット5の定格荷重(バスケット5に積載できる最大荷重)を用いる場合に比べて軽負荷時に作業可能範囲を拡げることができる。
【0039】
また、制御部85は、ロードセル61の検出値を用いて算出したバスケット5の重さから定格荷重を超えている場合、警報部83から警報を放音させ、ディスプレイ84に警告を表示させ、作業装置3の移動操作を無効にする。これにより、バスケット5が過負荷の状態で作業装置3が作動することを防止でき、安全性を確保することができる。
【0040】
また、制御部85は、ブーム31又はバスケット5の移動中にロードセル61の検出値から負荷の急増を検出した場合、ブーム31又はバスケット5の移動を停止させる。これにより、バスケット5が建物の天井等に衝突した場合に移動が停止するため、オペレータが天井との間に挟まれることを回避でき、安全性を確保することができる。
【0041】
また、制御部85は、センサ81の検出値からバスケット5の重さを算出し、該重さとロードセル61の検出値から算出したバスケット5の重さとを比較し、両者が所定値以上乖離している場合、ロードセル61又はセンサ81が故障していると判定し、警報部83から警報を放音させ、ディスプレイ84に警告を表示させる。このように、バスケット5の重さを2つの異なる検出手段で検出することにより、一方の検出手段が故障している場合に発見できる。
【符号の説明】
【0042】
1 高所作業車
2 車両部
4 バスケットフレーム
5 バスケット
7 Uボルト(環状部材)
31 ブーム
32 起伏シリンダ
61 ロードセル
62 サポート部材
63 ボルト
81 センサ
85 制御部
624 孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12