(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】成形型の製造方法、および成形型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/38 20060101AFI20240903BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240903BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240903BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240903BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20240903BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C45/26
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y70/10
(21)【出願番号】P 2020202747
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】姉川 賢太
(72)【発明者】
【氏名】坪井 達哉
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 史明
(72)【発明者】
【氏名】和久田 弓加
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-221019(JP,A)
【文献】特開2014-188746(JP,A)
【文献】特表2013-506579(JP,A)
【文献】特表2019-536662(JP,A)
【文献】特表2017-514725(JP,A)
【文献】特開2020-075397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067766(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0118465(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 39/26-39/36
B29C 41/38-41/44
B29C 43/36-43/42
B29C 43/50
B29C 45/00-45/84
B29C 49/48-49/56
B29C 49/70
B29C 51/30-51/40
B29C 51/44
B29C 64/00-64/40
B29C 67/00-67/08
B29C 67/24-69/02
B29C 73/00-73/34
B29D 1/00-29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形装置に用いられる成形型の製造方法であって、
アモルファス金属および樹脂を含む第1造形材料を可塑化して第1可塑化材料を生成する工程と、
前記第1可塑化材料をステージに向けて吐出して層を積層することで、前記成形型の一部となる積層体を造形する工程と、
を含む、成形型の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記アモルファス金属は、球状である、成形型の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1造形材料における前記アモルファス金属の含有量は、1体積%以上40体積%以下である、成形型の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記アモルファス金属の主成分は、鉄であり、
前記アモルファス金属の粒径は、5μm以上100μm以下である、成形型の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記第1可塑化材料を生成する工程では、フラットスクリューを用いて前記第1可塑化材料を生成する、成形型の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記積層体を造形する工程では、キャビティーを有する前記積層体を造形する、成形型の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記積層体を切削してキャビティーを形成する工程を含む、成形型の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記第1造形材料と前記アモルファス金属の含有量が異なる第2造形材料を可塑化して第2可塑化材料を生成する工程を含み、
前記積層体を造形する工程では、
前記第1可塑化材料および前記第2可塑化材料を吐出し、同一の層内に前記第1可塑化材料および前記第2可塑化材料が存在する前記積層体、または異なる層間に分かれて前記第1可塑化材料および前記第2可塑化材料が存在する前記積層体を造形する、成形型の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記同一の層、または前記異なる層は、前記キャビティーと接する、成形型の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、
前記積層体を造形する工程では、冷却管を有する前記積層体を造形する、成形型の製造方法。
【請求項11】
射出成形装置に用いられる成形型であって、
アモルファス金属と、樹脂と、を含む積層体を有する、成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型の製造方法、および成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑化装置によって可塑化された材料を、成形型に設けられたキャビティーに供給し、成形品を成形する射出成形装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、射出成形装置の成形型を、三次元造形装置を用いて造形することが記載されている。三次元造形装置によって、従来では作ることができなかった形状を、一体的に造形することができる。特許文献1の成形型は、樹脂製または金属製である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂製の成形型の場合、熱伝導率が低いため、成形型に熱がこもり冷却に時間がかかる。一方、金属製の成形型の場合、熱伝導率が高いため、材料が成形型のキャビティーを充填する前に固まってしまい、充填不良が発生し易い。さらに、成形型によって成形される成形品が急冷されて反りが発生し易い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る成形型の製造方法の一態様は、
射出成形装置に用いられる成形型の製造方法であって、
アモルファス金属および樹脂を含む第1造形材料を可塑化して第1可塑化材料を生成する工程と、
前記第1可塑化材料をステージに向けて吐出して層を積層することで、前記成形型の一部となる積層体を造形する工程と、
を含む。
【0007】
本発明に係る成形型の一態様は、
射出成形装置に用いられる成形型であって、
アモルファス金属と、樹脂と、を含む積層体を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る射出成形装置を模式的に示す断面図。
【
図2】第1実施形態に係る射出成形装置のフラットスクリューを模式的に示す斜視図。
【
図3】第1実施形態に係る射出成形装置のバレルを模式的に示す図。
【
図4】第1実施形態に係る成形型を模式的に示す分解斜視図。
【
図5】第1実施形態に係る成形型を模式的に示す斜視図。
【
図6】第1実施形態に係る成形型を模式的に示す断面図。
【
図8】第1実施形態に係る成形型の製造方法を説明するためのフローチャート。
【
図9】第1実施形態に係る成形型の製造方法に用いられる三次元造形装置を模式的に示す斜視図。
【
図10】第1実施形態に係る成形型の製造方法に用いられる三次元造形装置の造形ユニットを模式的に示す断面図。
【
図11】第1実施形態に係る成形型の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図12】第2実施形態に係る成形型を模式的に示す断面図。
【
図13】第2実施形態の変形例に係る成形型を模式的に示す断面図。
【
図14】熱伝導率を測定するための熱伝導率測定装置を模式的に示す断面図。
【
図15】熱伝導率を測定するための熱伝導率測定装置を説明するための図。
【
図16】熱伝導率および弾性率の測定結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 第1実施形態
1.1. 射出成形装置
1.1.1. 全体の構成
まず、第1実施形態に係る射出成形装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る射出成形装置100を模式的に示す断面図である。なお、
図1では、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。
【0011】
射出成形装置100は、
図2に示すように、例えば、可塑化装置10と、射出機構20と、ノズル30と、成形型40と、型締装置50と、を含む。
【0012】
可塑化装置10は、供給された材料を可塑化し、流動性を有するペースト状の可塑化材料を生成して射出機構20へと導くように構成されている。
【0013】
なお、可塑化とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0014】
可塑化装置10に供給される材料は、例えば、樹脂である。より具体的には、材料としては、ABS樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM )、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。可塑化装置10に供給される材料の融点は、成形型40の融点よりも低い。
【0015】
可塑化装置10は、例えば、スクリューケース12と、駆動モーター14と、フラットスクリュー110と、バレル120と、ヒーター130と、を有している。
【0016】
スクリューケース12は、フラットスクリュー110を収容する筐体である。スクリューケース12とバレル120とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー110が収容されている。
【0017】
駆動モーター14は、スクリューケース12に設けられている。駆動モーター14は、フラットスクリュー110を回転させる。
【0018】
フラットスクリュー110は、回転軸RA方向の大きさが、回転軸RA方向と直交する方向の大きさよりも小さい略円柱形状を有している。図示の例では、回転軸RAは、Y軸と平行である。駆動モーター14が発生させるトルクによって、フラットスクリュー110は、回転軸RAを中心に回転する。フラットスクリュー110は、主面111と、主面111とは反対側の溝形成面112と、主面111と溝形成面112とを接続する接続面113と、を有している。ここで、
図2は、フラットスクリュー110を模式的に示す斜視図である。なお、便宜上、
図2では、
図1に示した状態とは上下の位置関係を逆向きとした状態を示している。また、
図1では、フラットスクリュー110を簡略化して図示している。
【0019】
フラットスクリュー110の溝形成面112には、
図2に示すように、第1溝114が形成されている。第1溝114は、例えば、中央部115と、接続部116と、材料導入部117と、を有している。中央部115は、バレル120に設けられた連通孔126と対向している。中央部115は、連通孔126と連通している。接続部116は、中央部115と材料導入部117とを接続している。図示の例では、接続部116は、中央部115から溝形成面112の外周に向かって渦状に設けられている。材料導入部117は、溝形成面112の外周に設けられている。すなわち、材料導入部117は、接続面113に設けられている。供給された材料は、材料導入部117から第1溝114に導入され、接続部116および中央部115を通って、バレル120に設けられた連通孔126に搬送される。図示の例では、第1溝114は、2つ設けられている。
【0020】
なお、第1溝114の数は、特に限定されない。図示はしないが、第1溝114は、3つ以上設けられていてもよいし、1つだけ設けられていてもよい。
【0021】
バレル120は、
図1に示すように、フラットスクリュー110に対向して設けられている。バレル120は、フラットスクリュー110の溝形成面112に対向する対向面122を有している。対向面122の中心には、連通孔126が設けられている。ここで、
図3は、バレル120を模式的に示す図である。なお、便宜上、
図1では、バレル120を簡略化して図示している。
【0022】
バレル120の対向面122には、
図3に示すように、第2溝124と、連通孔126と、が設けられている。第2溝124は、複数設けられている。図示の例では、6つの第2溝124が設けられているが、その数は、特に限定されない。複数の第2溝124は、Y軸方向からみて、連通孔126の周りに設けられている。第2溝124は、一端が連通孔126に接続され、連通孔126から対向面122の外周に向かって渦状に延びている。第2溝124は、可塑化材料を連通孔126に導く機能を有している。
【0023】
なお、第2溝124の形状は、特に限定されず、例えば、直線状であってもよい。また、第2溝124の一端は、連通孔126に接続されていなくてもよい。さらに、第2溝124は、対向面122に設けられていなくてもよい。ただし、連通孔126に可塑化材料を効率よく導くことを考慮すると、第2溝124は、対向面122に設けられていることが好ましい。
【0024】
ヒーター130は、バレル120に設けられている。図示の例では、ヒーター130は、バレル120に設けられた4本の棒ヒーターによって構成されている。ヒーター130は、フラットスクリュー110とバレル120との間に供給された材料を加熱する。可塑化装置10は、フラットスクリュー110、バレル120、およびヒーター130によって、材料を連通孔126に向かって搬送しながら加熱して可塑化材料を生成し、生成された可塑化材料を、連通孔126から射出機構20へと流出させる。
【0025】
射出機構20は、
図1に示すように、例えば、シリンダー22と、プランジャー24と、プランジャー駆動部26と、を有している。シリンダー22は、連通孔126に接続された略円筒状の部材である。プランジャー24は、シリンダー22の内部を移動する。プランジャー24は、モーターやギア等によって構成されたプランジャー駆動部26によって駆動される。
【0026】
射出機構20は、プランジャー24をシリンダー22内で摺動させることによって、計量操作および射出操作を実行する。計量操作とは、連通孔126から離れる-X軸方向にプランジャー24を移動させることによって、連通孔126に位置する可塑化材料をシリンダー22内へと導いて、シリンダー22内において計量する操作を指す。射出操作とは、連通孔126へ近付く+X軸方向にプランジャー24を移動させることによって、シリンダー22内の可塑化材料を、ノズル30を介して成形型40に射出する操作を指す。
【0027】
ノズル30には、連通孔126と連通しているノズル孔32が設けられている。ノズル孔32は、可塑化装置10から供給された可塑化材料を成形型40に射出する。具体的には、上述した計量操作および射出操作が実行されることによって、シリンダー22内で計量された可塑化材料が、射出機構20から連通孔126を介してノズル孔32へと送られる。そして、可塑化材料は、ノズル孔32から成形型40へと射出される。
【0028】
成形型40は、可動型41と、固定型42と、を有している。可動型41と固定型42とは、互いに対向して設けられている。成形型40は、可動型41と固定型42との間に、成形品の形状に応じたキャビティー140を有している。可動型41および固定型42の少なくともいずれか一方には、キャビティー140を規定する凹凸が設けられている。キャビティー140には、連通孔126から流出した可塑化材料が、射出機構20によって圧送されてノズル30から射出される。可動型41および固定型42の詳細については後述する。
【0029】
型締装置50は、成形型駆動部52を有し、可動型41と固定型42との開閉を行う機能を有している。型締装置50は、モーターによって構成される成形型駆動部52を駆動することによってボールネジ54を回転させ、ボールネジ54に結合された可動型41を、固定型42に対して移動させて成形型40を開閉させる。固定型42は、射出成形装置100において静止しており、その静止した固定型42に対して、可動型41が、相対的に移動することにより、成形型40の開閉が行われる。
【0030】
可動型41には、成形品を成形型40から離型させるための押出機構43が設けられている。押出機構43は、エジェクターピン44と、支持板45と、支持棒46と、バネ47と、押出板48と、スラストベアリング49と、を有している。
【0031】
エジェクターピン44は、キャビティー140で成形された成形品を押し出すための棒状部材である。エジェクターピン44は、可動型41を貫通してキャビティー140まで挿通するように設けられている。支持板45は、エジェクターピン44を支持する板部材である。エジェクターピン44は、支持板45に固定されている。支持棒46は、支持板45に固定されており、可動型41に設けられた貫通孔に挿通されている。バネ47は、可動型41と支持板45との間の空間に配置され、支持棒46に挿入されている。バネ47は、成形時において、エジェクターピン44の頭部がキャビティー140の壁面の一部をなすように支持板45を付勢する。押出板48は、支持板45に固定されている。スラストベアリング49は、押出板48に取り付けられている。スラストベアリング49は、ボールネジ54の頭部が押出板48を傷つけないように設けられている。なお、スラストベアリング49に替えて、スラスト滑り軸受等を用いてもよい。
【0032】
1.1.2. 成形型
図4は、成形型40を模式的に示す分解斜視図である。
図5は、成形型40の積層体142を模式的に示す斜視図である。
図6は、成形型40の積層体142を模式的に示す
図5のVI-VI線断面図である。
【0033】
成形型40の可動型41は、
図4~
図6に示すように、積層体142と、母型148と、を含む。なお、便宜上、
図4では、積層体142を簡略化して図示している。また、便宜上、
図4~
図6では、成形型40の固定型42の図示を省略している。成形型40は、射出成形装置100に用いられる成形型である。
【0034】
成形型40は、
図4に示すように、積層体142を、母型148に設けられた凹部149に嵌合することによって形成される。母型148の材質は、例えば、金属である。
【0035】
積層体142は、
図6に示すように、複数の層144を有している。積層体142は、複数の層144が積層されて構成されている。複数の層144の数は、特に限定されない。積層体142は、中子である。
【0036】
積層体142は、キャビティー140を有している。キャビティー140の形状は、射出成形装置100によって成形される成形品の形状に対応している。キャビティー140は、積層体142によって規定されている。
図5に示すように、キャビティー140の底面には、エジェクターピン44が挿入される貫通孔141が設けられている。図示の例では、貫通孔141は、2つ設けられている。
【0037】
積層体142は、
図6に示すように、冷却管146を有している。図示の例では、冷却管146は、キャビティー140の+Y軸方向に設けられている。冷却管146には、成形品を冷却させるための冷媒が流れる。冷媒としては、例えば、水が挙げられる。
【0038】
積層体142は、アモルファス金属と、樹脂と、を含む。アモルファス金属は、非晶質の金属である。
【0039】
積層体142に含まれるアモルファス金属の主成分は、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などである。「アモルファス金属の主成分」とは、アモルファス金属において70質量%以上の含有量を有する成分である。アモルファス金属は、上記の主成分に、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などが添加されていてもよい。
【0040】
積層体142に含まれる樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ABS樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM )、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。
【0041】
ここで、
図7は、積層体142のSEM(Scanning Electron Microscope)像である。
図7に示す積層体142では、アモルファス金属としてFeを用い、樹脂としてPPSを用いた。
図7に示すように、アモルファス金属の形状は、球状である。積層体142に含まれるアモルファス金属は、アトマイズ法によって形成されている。アトマイズ法により、球状のアモルファス金属を得ることができる。
【0042】
積層体142に含まれるアモルファス金属の粒径は、例えば、5μm以上100μm以下、好ましくは10μm以上50μm以下、より好ましくは20μm以上30μm以下である。アモルファス金属の粒径は、例えば、SEMによって測定される。
【0043】
積層体142におけるアモルファス金属の含有量は、例えば、1体積%以上40体積%以下であり、好ましくは10体積%以上40体積%以下である。
【0044】
積層体142の熱伝導率は、例えば、0.20W/mK以上10.0W/mK以下であり、好ましくは0.30W/mK以上0.80W/mK以下である。積層体142の熱伝導率は、例えば、後述する実験例のように、積層体142の温度差および熱流束量から推定することができる。
【0045】
積層体142の弾性率差割合は、例えば、80%以上120%以下であり、好ましくは90%以上110%以下である。積層体142の弾性率差割合Rは、積層体142の第1方向における弾性率をE1(GPa)とし、積層体142の第1方向と直交する第2方向における弾性率をE2(GPa)とした場合、下記式(1)により算出することができる。
【0046】
R=E1/E2×100 ・・・(1)
【0047】
なお、弾性率E1,E2は、例えば、「JIS K7171」に基づいて測定される。例えば、第1方向は、X軸方向であり、第2方向は、Z軸方向である。
【0048】
1.2. 成形型の製造方法
次に、第1実施形態に係る成形型40の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第1実施形態に係る成形型40の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0049】
まず、
図8に示すように、ステップS1として、アモルファス金属および樹脂を含む第1造形材料を可塑化して第1可塑化材料を生成する。第1造形材料は、上述した積層体142に含まれるアモルファス金属および樹脂を含む。第1造形材料におけるアモルファス金属の含有量は、例えば、1体積%以上40体積%以下であり、好ましくは10体積%以上40体積%以下である。第1造形材料は、例えば、アモルファス金属と樹脂とを二軸押出機で混錬することにより形成される。第1可塑化材料を生成する工程では、例えば、後述するようにフラットスクリューを用いて第1可塑化材料を生成する。
【0050】
なお、第1造形材料には、アモルファス金属および樹脂の他に、セラミックス、溶剤、バインダーなどが含まれていてもよい。
【0051】
次に、ステップS2として、第1可塑化材料をステージに向けて吐出して層144を積層することで、成形型40の一部となる積層体142を造形する。積層体142を造形する工程では、例えば、冷却管146を有する積層体142を造形する。
【0052】
次に、ステップS3として、積層体142を切削してキャビティー140を形成する。積層体142の切削は、例えば、後述するように切削工具を用いて行われる。なお、ステップS2の積層体142を造形する工程において、キャビティー140を形成してもよい。この場合、ステップS3は、省略されてもよい。
【0053】
次に、ステップS4として、
図4に示すように、積層体142を母型148に嵌合する
。
【0054】
以上の工程により、成形型40を製造することができる。
【0055】
1.3. 成形型の製造方法で用いられる三次元造形装置
成形型40の製造方法は、三次元造形装置を用いて行われる。
図9は、成形型40の製造方法で用いられる三次元造形装置60を模式的に示す図である。三次元造形装置60は、成形型40の一部となる積層体142を造形する。
【0056】
三次元造形装置60は、
図9に示すように、造形ユニット150と、切削ユニット160と、ステージ170と、移動機構180と、制御部190と、を含む。
【0057】
三次元造形装置60は、造形ユニット150のノズル156からステージ170に第1可塑化材料を吐出させつつ、移動機構180を駆動して、ノズル156とステージ170との相対的な位置を変化させる。これにより、造形ユニット150は、ステージ170上に積層体142を積層する。なお、便宜上、
図9では、積層体142を簡略化して図示している。
【0058】
さらに、三次元造形装置60は、切削ユニット160の切削工具162を回転させつつ、移動機構180を駆動して、切削工具162とステージ170との相対的な位置を変化させる。これにより、切削ユニット160は、ステージ170上に積層された積層体142を切削する。このようにして、三次元造形装置60は、所望の形状の積層体142を造形する。
【0059】
ここで、
図10は、造形ユニット150を模式的に示す断面図である。造形ユニット150は、
図10に示すように、例えば、材料供給部152と、可塑化部154と、ノズル156と、を有している。
【0060】
材料供給部152は、可塑化部154に第1造形材料を供給する。材料供給部152には、ペレット状や粉末状の第1造形材料が投入される。材料供給部152は、例えば、ホッパーによって構成されている。材料供給部152と可塑化部154とは、材料供給部152の下方に設けられた供給路153によって接続されている。材料供給部152に投入された第1造形材料は、供給路153を介して、可塑化部154に供給される。
【0061】
可塑化部154は、
図1に示した射出成形装置100の可塑化装置10と同様の構成を有している。すなわち、可塑化部154は、フラットスクリュー154aと、バレル154bと、ヒーター154cと、を有している。可塑化部154は、材料供給部152から供給された第1造形材料を可塑化することにより、流動性を有するペースト状の第1可塑化材料を生成し、ノズル156に設けられたノズル孔158へと導く。
【0062】
ノズル156は、可塑化部154によって生成された第1可塑化材料をステージ170に向けて吐出する。
【0063】
切削ユニット160は、
図9示すように、ステージ170側の先端に取り付けられた切削工具162を回転させて、ステージ170上に積層された積層体142の切削を行う装置である。切削ユニット160は、例えば、積層体142を切削してキャビティー140を形成する。切削工具162として、例えば、フラットエンドミルや、ボールエンドミルを用いる。制御部190は、移動機構180を制御することによって、切削工具162と、ステージ170上に積層された積層体142と、の相対的な位置を変化させて切削位置を制御する。
【0064】
ステージ170上には、積層体142が積層される。図示の例では、積層体142は、直接ステージ170上に設けられている。なお、図示はしないが、積層体142は、ベースプレートを介してステージ170上に設けられていてもよい。そして、積層体142およびベースプレートを母型148に嵌合することにより、成形型40が製造されてもよい。
【0065】
移動機構180は、ステージ170を支持している。図示の例では、移動機構180は、ステージ170を、造形ユニット150および切削ユニット160に対して、互いに直交する3軸に沿って移動させる3軸ポジショナーとして構成されている。
【0066】
なお、移動機構180は、ステージ170を移動させずに、造形ユニット150および切削ユニット160をステージ170に対して移動させてもよい。また、移動機構180は、ステージ170と、造形ユニット150および切削ユニット160と、の両方を移動させてもよい。移動機構180は、ステージ170を水平面に対して傾斜させる機能を有してもよい。移動機構180は、ノズル156や切削工具162を傾斜させる機能を有してもよい。
【0067】
制御部190は、例えば、プロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースと、を有するコンピューターによって構成されている。制御部190は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、造形ユニット150、切削ユニット160、および移動機構180を制御する。なお、制御部190は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0068】
ここで、
図11は、三次元造形装置60において積層体142の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0069】
制御部190は、
図11に示すように、ステージ170とノズル156との距離を保持したまま、ステージ170の上面に沿った方向に、ステージ170に対するノズル156の位置を変えながら、ノズル156から第1可塑化材料を吐出させる。ノズル156から吐出された第1可塑化材料は、ノズル156の移動方向に連続してステージ170上に堆積され、層144が形成される。
【0070】
制御部190は、ノズル156の走査を繰り返して複数の層144を形成する。具体的には、制御部190は、1つの層144を形成した後、ステージ170に対するノズル156の位置を、上方に移動させる。そして、これまでに形成された層144の上に、さらに層144を積み重ねることによって積層体142を造形する。
【0071】
制御部190は、例えば、1層分の層144を堆積した後にノズル156を上方に移動させる場合や、不連続のパスを造形する場合等において、ノズル156からの第1造形材料の吐出を一時的に中断させることがある。この場合、制御部190は、ノズル孔158に設けられた図示せぬバタフライバルブなどを制御して、ノズル156からの第1可塑化材料の吐出を停止させる。制御部190は、ノズル156の位置を変更した後、バタフライバルブを開いて第1可塑化材料の吐出を再開させることによって、変更後のノズル156の位置から第1可塑化材料の堆積を再開させる。
【0072】
1.4. 作用効果
成形型40の製造方法では、アモルファス金属および樹脂を含む第1造形材料を可塑化して第1可塑化材料を生成する工程と、第1可塑化材料をステージ170に向けて吐出し
て層144を積層することで、成形型40の一部となる積層体142を造形する工程と、を含む。アモルファス金属は、熱伝導率が金属よりも低く樹脂よりも高い。そのため、積層体142にこもる熱を少なくして成形品の冷却時間を短くさせつつ、成形品に充填不良および反りが発生し難い成形型40を製造することができる。
【0073】
成形型40の製造方法では、アモルファス金属は、球状である。そのため、アモルファス金属が球状ではない場合に比べて、互いに直交する第1方向および第2方向において、弾性率の差が小さい積層体142を製造することができる。これにより、積層体142の機械的特性を安定化させることができる。さらに、設計の自由度を高めることができる。
【0074】
成形型40の製造方法では、第1造形材料におけるアモルファス金属の含有量は、1体積%以上40体積%以下である。そのため、積層体142の熱伝導率を、金属の熱伝導率よりも低く、樹脂の熱伝導率よりも高くしつつ、三次元造形装置60で、積層体142を容易に造形することができる。第1造形材料におけるアモルファス金属の含有量が40体積%より大きいと、三次元造形装置によって積層体を造形することが困難となる。ただし、装置の工夫をすれば、アモルファス金属の含有量が80%までの積層体を製造することができる。
【0075】
成形型40の製造方法では、アモルファス金属の主成分は、鉄であり、アモルファス金属の粒径は、5μm以上100μm以下である。アモルファス金属の粒径が5μm以上であれば、積層体142は高い剛性を有することができる。また、粒径が5μmより小さいアモルファス金属を製造することは、困難である。アモルファス金属の粒径が100μm以下であれば、積層体142を切削する際に、アモルファス金属がこぼれ落ちる可能性を小さくすることができる。
【0076】
成形型40の製造方法では、第1可塑化材料を生成する工程では、フラットスクリュー154aを用いて第1可塑化材料を生成する。そのため、例えばインラインスクリューを用いて第1可塑化材料を生成する場合に比べて、積層体142を製造するための三次元造形装置60の小型化を図ることができる。なお、装置の大きさを考慮しないのであれば、インラインスクリューを用いて第1可塑化材料を生成してもよい。
【0077】
成形型40の製造方法では、積層体142を切削してキャビティー140を形成する工程を含む。そのため、積層体142を造形する工程においてキャビティー140を形成しないので、積層体142を造形する工程の簡易化を図ることができる。
【0078】
なお、積層体142を造形する工程において、キャビティー140を形成してもよい。この場合、積層体142を切削してキャビティー140を形成しないので、切削工程の簡易化、または切削工程を省略することができる。
【0079】
成形型40の製造方法では、積層体142を造形する工程において、冷却管146を有する積層体142を造形する。そのため、成形品の冷却時間を、より短くすることができる。
【0080】
2. 第2実施形態
2.1. 成形型
次に、第2実施形態に係る成形型について、図面を参照しながら説明する。
図12は、第2実施形態に係る成形型240を模式的に示す断面図である。以下、第2実施形態に係る成形型240において、上述した第1実施形態に係る成形型40の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0081】
成形型240は、
図12に示すように、第1可塑化材料で構成された第1可塑化材料部242と、第2可塑化材料で構成された第2可塑化材料部244と、を有している点において、上述した成形型40と異なる。
【0082】
第2可塑化材料は、第1可塑化材料とアモルファス金属の含有量が異なる。そのため、第2可塑化材料は、第1可塑化材料と熱伝導率が異なる。第2可塑化材料は、例えば、第1可塑化材料よりもアモルファス金属の含有量が少ない。そのため、第2可塑化材料は、第1可塑化材料よりも熱伝導率が低い。第2可塑化材料は、例えば、アモルファス金属の含有量がゼロでもよい。すなわち、第2可塑化材料は、アモルファス金属を含んでいなくてもよい。
【0083】
成形型240のキャビティー140は、
図12に示すように、例えば、第1部分140aと、第2部分140bと、第3部分140cと、第4部分140dと、を有している。
【0084】
図示の例では、第1部分140aは、ノズル30からの可塑化材料が流入する流路2と接続している。流路2は、固定型42に設けられている。第1部分140aは、X軸方向に延在している。第2部分140bおよび第3部分140cは、第1部分140aに接続している。第2部分140bおよび第3部分140cは、第1部分140aから+Y軸方向に延在している。第4部分140dは、第2部分140bおよび第3部分140cに接続している。第4部分140dは、X軸方向に延在している。
【0085】
成形品を成形する場合、例えば可塑化された樹脂は、
図12に示す矢印のように、流路2を通って第1部分140aに至り、第2部分140bと第3部分140cとに分岐した後、第4部分140dにおいて合流する。
【0086】
第4部分140dは、第2可塑化材料部244と接している。第4部分140dは、第1可塑化材料部242と接していない。すなわち、第4部分140dは、第2可塑化材料部244によって規定されている。図示の例では、異なる層間に分かれて第1可塑化材料および第2可塑化材料が存在している。すなわち、1つの層144には、第1可塑化材料および第2可塑化材料の両方が存在していない。第1可塑化材料が存在している層144および第2可塑化材料が存在している層144は、キャビティー140に接している。
【0087】
2.2. 成形型の製造方法
次に、第2実施形態に係る成形型240の製造方法について、図面を参照しながら説明する。以下、第2実施形態に係る成形型240の製造方法において、上述した第1実施形態に係る成形型40の製造方法の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0088】
成形型240の製造方法は、第2造形材料を可塑化して第2可塑化材料を生成する工程を含む。積層体142を造形する工程では、第1可塑化材料および第2可塑化材料を吐出し、異なる層間に分かれて第1可塑化材料および第2可塑化材料が存在する積層体142を造形する。
図11に示す例では、まず、第2可塑化材料を吐出して第2可塑化材料部244を形成し、次に、第2可塑化材料部244上に、第1可塑化材料を吐出して第1可塑化材料部242を形成する。
【0089】
成形型240の製造方法では、例えば、造形ユニット150を2つ有する三次元造形装置を用いる。一方の造形ユニット150では、材料供給部152に第1造形材料が投入され、可塑化部154は、第1造形材料を可塑化して第1可塑化材料を生成し、ノズル156は、第1可塑化材料を吐出する。他方の造形ユニット150では、材料供給部152に第2造形材料が投入され、可塑化部154は、第2造形材料を可塑化して第2可塑化材料
を生成し、ノズル156は、第2可塑化材料を吐出する。
【0090】
2.3. 作用効果
成形型240の製造方法では、第1造形材料とアモルファス金属の含有量が異なる第2造形材料を可塑化して第2可塑化材料を生成する工程を含み、積層体142を造形する工程では、第1可塑化材料および第2可塑化材料を吐出し、異なる層間に分かれて第1可塑化材料および第2可塑化材料が存在する積層体142を造形する。そのため、成形型240の製造方法では、積層体142の熱伝導率を制御することができる。
【0091】
成形型240の製造方法では、第1可塑化材料が存在している層144および第2可塑化材料が存在している層144は、キャビティー140に接している。そのため、成形型240の製造方法では、積層体142のキャビティー140と接している部分の熱伝導率を制御することができる。
【0092】
例えば、キャビティーの第4部分は、可塑化された樹脂が合流するため、ウェルドラインや樹脂の充填不良が発生し易い。これに対し、成形型240では、第4部分140dと接する部分を第2可塑化材料で形成することにより、第4部分140dと接する部分の熱伝導率を低くしている。これにより、第4部分140dを流れる樹脂が冷え難くなり、ウェルドラインおよび樹脂の充填不良が発生し難くなる。
【0093】
2.4. 成形型の変形例
次に、第2実施形態の変形例に係る成形型について、図面を参照しながら説明する。
図13は、第2実施形態の変形例に係る成形型340を模式的に示す断面図である。以下、第2実施形態の変形例に係る成形型340において、上述した第2実施形態に係る成形型240の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0094】
上述した成形型240では、
図12に示すように、キャビティー140は、第2部分140bおよび第3部分140cに接続する第4部分140dを有した。
【0095】
これに対し、成形型340では、
図13に示すように、キャビティー140は、第4部分140dを有していない。第2部分140bおよび第3部分140cは、第1部分140aから-Y軸方向に延在している。成形品を成形する場合、例えば可塑化された樹脂は、
図13に示す矢印のように、流路2を通って第1部分140aに至り、第2部分140bと第3部分140cとに分岐する。
【0096】
成形型340では、図示の例では、キャビティー140の第1角部4aおよび第2角部4bは、第1可塑化材料部242と接している。第1角部4aおよび第2角部4bは、第1可塑化材料部242によって規定されている。第1角部4aは、第1部分140aと第2部分140bとの接続部分である。第2角部4bは、第1部分140aと第3部分140cとの接続部分である。
【0097】
キャビティーの角部では、熱がこもり易く、角部と、角部以外の部分と、の温度差によって成形品に反りが発生し易い。これに対し、成形型340では、角部4a,4bと接する部分を第1可塑化材料で形成することにより、角部4a,4bと接する部分の熱伝導率を高くしている。これにより、角部4a,4bと、角部4a,4b以外の部分と、の温度差を小さくすることができ、成形品に反りが発生し難くなる。
【0098】
図示の例では、同一の層144内に第1可塑化材料および第2可塑化材料が存在する。すなわち、1つの層144に第1可塑化材料および第2可塑化材料が存在する。第1可塑
化材料および第2可塑化材料が存在する1つの層144は、キャビティー140と接している。
【0099】
3. 実験例
3.1. 試料の作製
アモルファス金属および樹脂を含む造形材料を可塑化して可塑化材料を生成し、可塑化材料をステージに向けて吐出して層を積層することで積層体を造形した。積層体の造形には、上述した
図9に示すような三次元造形装置を用いた。アモルファス金属として鉄を用いた。樹脂としてPPSを用いた。造形材料におけるアモルファス金属の含有量を10体積%から40体積%まで振った。
【0100】
3.2. 熱伝導率測定の条件
上記のように作製した試料の熱伝導率を測定した。
図14は、熱伝導率を測定するための熱伝導率測定装置400を模式的に示す断面図である。
図15は、熱伝導率を測定するための熱伝導率測定装置400を説明するための図である。なお、
図15では、熱伝導率測定装置400を簡略化して図示している。
【0101】
図14および
図15に示すように、ホットプレート410上に熱伝導率が既知であるプレート420を配置し、プレート420上に、上記のように作製した試料Pを配置した。プレート420の材質は、SUS(Steel Use Stainless)304であり、熱伝導率は、16.3W/m・Kである。試料P上に、水Wが入っているアルミ箱430を配置した。試料Pおよびプレート420の周囲に、発砲スチロールからなる断熱材440を配置した。温度計450で、試料Pの温度を測定した。
【0102】
試料Pの大きさおよびプレート420の大きさを、縦50mm、横70mm、厚さ2mmとした。アルミ箱430の大きさを、縦100mm、横100mm、厚さ3mmとした。界面は、サーマルコンパウンドを用いて空気層の影響を低減した。
【0103】
熱伝導率が既知のプレート420を用いることで、下記式(2)に示すQの平衡状態における関係式から試料Pの熱伝導率K2を求めることができる。
【0104】
【0105】
なお、式(2)において、Q:伝熱量(W)、K:熱伝導率(W/m・K)、S:平板面積(m2)、T:温度(K)、d:板の厚さ(mm)、α:単位厚さあたり単位面積あたりの輻射・対流による側方熱損失の補正項である。
【0106】
3.3. 弾性率測定の条件
「JIS K7171」に基づいて、試料の弾性率を測定した。試料を、縦50mm、横10mm、厚さ4mmの板状とした。第1方向と平行な方向の試料の弾性率と、第1方向と垂直な方向の試料の弾性率と、を測定した。各方向につきて、測定数を3個とした。弾性率を、圧縮方向3点曲げ試験により測定した。試験速度を1mm/minの押し込みとした。アウトプットを、試験力10N~20Nにおける領域での弾性率とした。
【0107】
3.4. 測定結果
図16は、熱伝導率および弾性率の測定結果を示す表である。
図16では、アモルファ
ス金属およびPPSを含む「Fe/PPS」、アモルファス金属を含んでいないPPS単体である「PPS」、PPSを含んでいない金属単体である「NAK」、およびPPSにフィラーとしてカーボンファイバーを添加した「CF/PPS」について示している。「CF/PPS」のカーボンファイバーを30質量%とした。
【0108】
図16に示すように、「Fe/PPS」では、アモルファス金属であるFeの含有量を調整することにより、熱伝導率および弾性率を制御できることがわかった。「Fe/PPS」の熱伝導率および弾性率は、「PPS」よりも高く、「NAK」よりも低かった。
【0109】
さらに、
図16に示すように、「Fe/PPS」は、平行方向と垂直方向との弾性率の差が、「CF/PPS」よりも小さかった。これは、アモルファス金属が球状であるためである。
【0110】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0111】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0112】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0113】
成形型の製造方法の一態様は、
射出成形装置に用いられる成形型の製造方法であって、
アモルファス金属および樹脂を含む第1造形材料を可塑化して第1可塑化材料を生成する工程と、
前記第1可塑化材料をステージに向けて吐出して層を積層することで、前記成形型の一部となる積層体を造形する工程と、
を含む。
【0114】
この成形型の製造方法によれば、積層体にこもる熱を少なくして成形品の冷却時間を短くさせつつ、成形品に充填不良および反りが発生し難い成形型を製造することができる。
【0115】
前記成形型の製造方法の一態様において、
前記アモルファス金属は、球状であってもよい。
【0116】
この成形型の製造方法によれば、アモルファス金属が球状ではない場合に比べて、互いに直交する第1方向および第2方向において、弾性率の差が小さい積層体を製造することができる。
【0117】
前記成形型の製造方法の一態様において、
前記第1造形材料における前記アモルファス金属の含有量は、1体積%以上40体積%以下であってもよい。
【0118】
この成形型の製造方法によれば、積層体の熱伝導率を、金属の熱伝導率よりも低く、樹脂の熱伝導率よりも高くしつつ、三次元造形装置で、積層体を容易に造形することができる。
【0119】
前記成形型の製造方法の一態様において、
前記アモルファス金属の主成分は、鉄であり、
前記アモルファス金属の粒径は、5μm以上100μm以下であってもよい。
【0120】
この成形型の製造方法によれば、積層体の剛性を高くしつつ、積層体を切削する際に、アモルファス金属がこぼれ落ちる可能性を小さくすることができる。
【0121】
前記成形型の製造方法の一態様において、
前記第1可塑化材料を生成する工程では、フラットスクリューを用いて前記第1可塑化材料を生成してもよい。
【0122】
この成形型の製造方法によれば、例えばインラインスクリューを用いて第1可塑化材料を生成する場合に比べて、積層体を製造するための装置の小型化を図ることができる。
【0123】
前記成形型の製造方法の一態様において、
前記積層体を造形する工程では、キャビティーを有する前記積層体を造形してもよい。
【0124】
この成形型の製造方法によれば、切削工程の簡易化を図ることができる。
【0125】
前記成形型の製造方法の一態様において、
前記積層体を切削してキャビティーを形成する工程を含んでもよい。
【0126】
この成形型の製造方法によれば、積層体を造形する工程の簡易化を図ることができる。
【0127】
前記成形型の製造方法の一態様において、
前記第1造形材料と前記アモルファス金属の含有量が異なる第2造形材料を可塑化して第2可塑化材料を生成する工程を含み、
前記積層体を造形する工程では、
前記第1可塑化材料および前記第2可塑化材料を吐出し、同一の層内に前記第1可塑化材料および前記第2可塑化材料が存在する前記積層体、または異なる層間に分かれて前記第1可塑化材料および前記第2可塑化材料が存在する前記積層体を造形してもよい。
【0128】
この成形型の製造方法によれば、積層体の熱伝導率を制御することができる。
【0129】
前記成形型の製造方法の一態様において、
前記同一の層、または前記異なる層は、前記キャビティーと接してもよい。
【0130】
この成形型の製造方法によれば、積層体のキャビティーと接している部分の熱伝導率を制御することができる。
【0131】
前記成形型の製造方法の一態様において、
前記積層体を造形する工程では、冷却管を有する前記積層体を造形してもよい。
【0132】
この成形型の製造方法によれば、成形品の冷却時間を、より短くすることができる。
【0133】
成形型の一態様は、
射出成形装置に用いられる成形型であって、
アモルファス金属と、樹脂と、を含む積層体を有する。
【符号の説明】
【0134】
2…流路、4a…第1角部、4b…第2角部、10…可塑化装置、12…スクリューケース、14…駆動モーター、20…射出機構、30…ノズル、32…ノズル孔、40…成形型、41…可動型、42…固定型、43…押出機構、44…エジェクターピン、45…支持板、46…支持棒、47…バネ、48…押出板、49…スラストベアリング、50…型締装置、52…成形型駆動部、54…ボールネジ、60…三次元造形装置、110…フラットスクリュー、111…主面、112…溝形成面、113…接続面、114…第1溝、115…中央部、116…接続部、117…材料導入部、120…バレル、122…対向面、124…第2溝、126…連通孔、130…ヒーター、140…キャビティー、140a…第1部分、140b…第2部分、140c…第3部分、140d…第4部分、141…貫通孔、142…積層体、144…層、146…冷却管、148…母型、149…凹部、150…造形ユニット、152…材料供給部、153…供給路、154a…フラットスクリュー、154b…バレル、154c…ヒーター、156…ノズル、158…ノズル孔、160…切削ユニット、162…切削工具、170…ステージ、180…移動機構、190…制御部、240…成形型、242…第1可塑化材料部、244…第2可塑化材料部、340…成形型、400…熱伝導率測定装置、410…ホットプレート、420…プレート、430…アルミ箱、440…断熱材、450…温度計