(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】冷却システム、電力変換装置及び蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240903BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240903BHJP
H01M 10/627 20140101ALI20240903BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20240903BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20240903BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240903BHJP
H01M 10/667 20140101ALI20240903BHJP
H01M 50/251 20210101ALI20240903BHJP
H01M 50/287 20210101ALI20240903BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01M10/613
H01M10/627
H01M10/6551
H01M10/6554
H01M10/6563
H01M10/667
H01M50/251
H01M50/287
H05K7/20 B
(21)【出願番号】P 2020204047
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】奥田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】秋田 哲男
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/107358(WO,A1)
【文献】特開2009-222328(JP,A)
【文献】特開2004-140276(JP,A)
【文献】特開2014-222967(JP,A)
【文献】特開2016-046967(JP,A)
【文献】特開2019-165588(JP,A)
【文献】特開2016-220416(JP,A)
【文献】特開2019-125742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 7/20
H01M 10/60
H01M 50/00
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を冷却する送風器と、
2つの平面のうちの第1の平面が、前記発熱体及び前記送風器に向くように配置されるプレートと、
前記発熱体、前記送風器及び前記プレートを収容する筐体とを含み、
前記プレートは、前記筐体内の所定空間を第1空間及び第2空間に区分し、
前記発熱体及び前記送風器は、前記第1空間に配置され、
前記送風器は、鉛直方向に関して、前記発熱体よりも高い位置に配置され、かつ、鉛直下方に送風し、
前記プレートは、前記送風器による送風の中心軸を前記第1の平面に垂直に射影した場合の射影線の両側の
各々に設けられる開口を持つ、冷却システム。
【請求項2】
前記筐体内に、前記発熱体が搭載される電力変換基板をさらに含み、
前記電力変換基板は、前記電力変換基板の平面が
前記鉛直方向に沿うように配置さ
れる、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記電力変換基板は、前記プレートの前記第1の平面と対向する平面上に前記発熱体を含み、
前記発熱体は、前記送風器よりも前記プレートの前記第1の平面から離隔して配置され、
前記送風器による送風の少なくとも一部は、前記発熱体の少なくとも一部に向かう、請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記電力変換基板に設けられる回路を制御する制御基板をさらに含み、
前記制御基板は、前記プレートの前記2つの平面のうちの第2の平面上に配置され、
前記開口は、前記制御基板が配置される領域を除いた領域の半分以上を占める、請求項2又は3に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記送風器は、前記送風器の吸気口が前記筐体の天面から所定距離離隔して配置されるように、前記プレート上に配置される、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記送風器は、前記電力変換基板の動作モードに応じて送風量を変化させる、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記送風器は、前記筐体の幅方向の中央領域に配置される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記開口は、矩形状に形成される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項9】
前記筐体は、密閉型に形成されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項10】
発熱体を含む電力変換回路が実装された電力変換基板と、
前記発熱体を冷却する送風器と、
2つの平面のうちの第1の平面が、前記発熱体及び前記送風器に向くように配置され、電力変換回路を制御する制御基板を支持するプレートと、
前記発熱体、前記電力変換基板、前記送風器、前記プレート及び前記制御基板を収容する筐体とを含み、
前記プレートは、前記筐体内の所定空間を第1空間及び第2空間に区分し、
前記発熱体、前記電力変換基板及び前記送風器は、前記第1空間に配置され、
前記送風器は、鉛直方向に関して、前記発熱体よりも高い位置に配置され、かつ、鉛直下方に送風し、
前記プレートは、前記送風器による送風の中心軸を前記第1の平面に垂直に射影した場合の射影線の両側の
各々に設けられる開口を持つ、電力変換装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置の前記筐体内に収容され、前記電力変換回路に接続される蓄電池とを含む、蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却システム、電力変換装置及び蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続され、一旦蓄電池に蓄えた電力を、停電時等に電力変換装置を介して負荷に供給できる蓄電システムが知られている。太陽光発電システムにも接続され、負荷に供給される電力を超えた発電電力(余剰電力)を蓄える蓄電システムも知られている。そのような蓄電システムに含まれる電力変換装置においては、電力変換回路に使用される半導体スイッチング素子及びリアクトル等による発熱を冷却する構造が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、冷却機能を有する制御装置が開示されている。この制御装置は、密封筐体内に、稼動時に発熱するパワーデバイスと、当該パワーデバイスを制御する制御回路を実装した制御基板とを少なくとも配設し、パワーデバイス及び制御基板を冷却する冷却機能を有する。制御装置はさらに、パワーデバイスを装着して冷却するヒートシンクと、ヒートシンクに装着した放熱フィン及び放熱フィンの近傍に設けた第1の送風ファンを有する冷却風生成部と、冷却風生成部で生成した冷却風を筐体内に循環させる冷却風循環路とを備える。冷却風循環路には、第2の送風ファンが配置されている。このような構成により、パワーデバイス又はリアクトル等の発熱部品については、ヒートシンクで冷却し、冷却風循環路により筐体内の冷却温度を均一化する。
【0004】
下記特許文献2には、密閉型の筐体を有するインバータ装置が開示されている。このインバータ装置は、直流電源が出力する直流電力が入力され、入力された直流電力を交流電力に変換して出力する電力変換部と、電力変換部を収容して密閉される筺体とを備える。筺体には、電力変換部が配置される第1区画と、第1区画と壁を挟んで配置され、外部と接続される配線が接続される接続部を含む第2区画とが設けられている。また、壁には第1区画から第2区画へと通じる第1の風路及び第2の風路が設けられ、筐体内には、第1区画及び第2区画のうち一方の区画から他方の区画へと送風する送風機を配置し、送風機から送風された空気は第2の風路を通って他方の区画から一方の区画へ戻る。これにより、電力変換部が配置される区画が小さくなっても冷却効果を高めることができる。また、電力変換回路における発熱源である複数の直流リアクトル及び交流リアクトルを窪みに配置し、窪みに熱伝導性の高い樹脂部材を封入し、筐体との熱交換を促進する。また、別の発熱源である半導体スイッチング素子は、モジュールとしてまとめて筐体に直接取付けられる。筐体の外部にはフィンが設けられ、電子部品の発熱を外部へと放熱する。
【0005】
下記特許文献3には、冷却部品を集結して効率よく冷却できる蓄電池システムが開示されている。この蓄電池システムは、充電及び放電を繰返す二次電池と、二次電池を制御するための複数の電気部品とを備える。複数の電気部品は、二次電池の上方に形成された電気部品収容部に設けられ、冷却する第1電気部品とそれ以外の冷却を必要としない第2電気部品とに、鉛直に配置された電気部品取付板を隔てて分けるように配置されている。これにより、冷却が必要な第1電気部品のみを、電気部品取付板の後側に集中して冷却できる。冷却は、筐体の背面に吸気口及び排気口を設け、筐体内部に設けたファンにより外気を筐体内に取込むことにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-119588号公報
【文献】特開2018-57268号公報
【文献】特開2019-79738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された制御装置は、水冷式のヒートシンク及び2つの送風ファンを備えており、構造が複雑であり部品点数が多くなるという問題がある。特許文献2に開示されたインバータ装置は、リアクトルを収容するための窪みを設けたことにより筐体の形状が複雑となる。特許文献3に開示された蓄電池システムは、筐体に吸気口及び排気口を設けて、外気を取入れる構造であるので、屋外に設置された場合、雨水及び塵埃が筐体内部に侵入する問題がある。雨水及び塵埃の侵入を防止するには、吸気口及び排気口を特殊な構造にする等の対策が必要となる。
【0008】
屋外に設置される電力変換装置においては、簡単な構造で雨水及び塵埃の侵入を防止し、且つ、内部の発熱物を冷却できることが好ましい。また、送風器を用いる場合、送風器には、寿命(回転寿命、騒音寿命等)があるので、使用する送風器の数を少なくすることが望まれる。コスト削減のためにも、簡単な構造とし、送風器の数を少なくすることが好ましい。
【0009】
したがって、本開示は、電力変換回路において発熱源となる素子である発熱体を効率的に冷却でき、部品点数を削減し、簡単な構造を実現可能な冷却システム、電力変換装置及び蓄電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のある局面に係る冷却システムは、発熱体を冷却する送風器と、2つの平面のうちの第1の平面が、発熱体及び送風器に向くように配置されるプレートと、発熱体、送風器及びプレートを収容する筐体とを含み、プレートは、送風器による送風の中心軸を第1の平面に垂直に射影した場合の射影線の両側の少なくとも一方に設けられる開口を含む。
【0011】
本開示の別の局面に係る電力変換装置は、発熱体を含む電力変換回路が実装された電力変換基板と、発熱体を冷却する送風器と、2つの平面のうちの第1の平面が、発熱体及び送風器に向くように配置され、電力変換回路を制御する制御基板を支持するプレートと、発熱体、電力変換基板、送風器、プレート及び制御基板を収容する筐体とを含み、プレートは、送風器による送風の中心軸を第1の平面に垂直に射影した場合の射影線の両側の少なくとも一方に設けられる開口を含む。
【0012】
本開示のさらに別の局面に係る蓄電システムは、上記の電力変換装置と、電力変換装置の筐体内に収容され、電力変換回路に接続される蓄電池とを含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、発熱体を効率的に冷却でき、部品点数を削減し、簡単な構造を実現可能な冷却システム、電力変換装置及び蓄電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る蓄電システムの外観(前面)を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した蓄電システムの外観(背面)を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した蓄電システムの背面においてヒートシンクカバーを取外した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した蓄電システムの前面カバーを取外した状態を示す正面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した蓄電システムのV-V断面を示す鉛直断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した蓄電システムのVI-VI断面を示す水平断面図である。
【
図8】
図8は、送風器を取付けるための部材を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図4に示した状態の蓄電システムから制御基板及び支持プレートを取外した状態を示す正面図である。
【
図10】
図10は、
図1に示した蓄電システムにおいて、送風器及び複数の基板を搭載する前の状態を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、
図1に示した蓄電システムにおける送風器による空気の流れを示す正面図である。
【
図12】
図12は、
図1に示した蓄電システムの筐体内に形成される空気の循環流を示す正面図である。
【
図13】
図13は、比較例の支持プレートを示す正面図である。
【
図14】
図14は、比較例の支持プレートを搭載した蓄電システムの上部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態の内容を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組合せてもよい。
【0016】
(1)本開示の第1の局面に係る冷却システムは、発熱体を冷却する送風器と、2つの平面のうちの第1の平面が、発熱体及び送風器に向くように配置されるプレートと、発熱体、送風器及びプレートを収容する筐体とを含み、プレートは、送風器による送風の中心軸を第1の平面に垂直に射影した場合の射影線の両側の少なくとも一方に設けられる開口を持つ。これにより、開口を介してプレートの前後の空気の攪拌を促進し、発熱体を効率的に冷却でき、発熱体が高温になって損傷することを防止できる。
【0017】
(2)好ましくは、冷却システムは、筐体内に、発熱体が搭載される電力変換基板をさらに含み、電力変換基板は、電力変換基板の平面が鉛直方向に沿うように配置され、送風器は、鉛直方向に関して、発熱体よりも高い位置に配置される。これにより、発熱体の発熱により高温になった空気の上昇方向と逆方向に送風でき、筐体内部における空気をより攪拌させ、発熱体をより効率的に冷却できる。
【0018】
(3)より好ましくは、電力変換基板は、プレートの第1の平面と対向する平面上に発熱体を含み、発熱体は、送風器よりもプレートの第1の平面から離隔して配置され、送風器による送風の少なくとも一部は、発熱体の少なくとも一部に向かう。これにより、送風により発熱体を直接冷却できる。また、発熱体の周囲の空気をより攪拌させ、発熱体をより効率的に冷却できる。
【0019】
(4)さらに好ましくは、冷却システムは、電力変換基板に設けられる回路を制御する制御基板をさらに含み、制御基板は、プレートの2つの平面のうちの第2の平面上に配置され、開口は、制御基板が配置される領域を除いた領域の半分以上を占める。これにより、筐体内部における空気の攪拌をより促進し、発熱体をより効率的に冷却できる。
【0020】
(5)好ましくは、送風器は、送風器の吸気口が筐体の天面から所定距離離隔して配置されるように、プレート上に配置される。これにより、安定した送風を実現でき、筐体内部における空気の攪拌を安定させ、発熱体をより効率的に冷却できる。
【0021】
(6)より好ましくは、送風器は、電力変換基板の動作モードに応じて送風量を変化させる。これにより、発熱体による発熱の程度に応じて、筐体内の空気の攪拌の程度を調整でき、不要な電力消費を抑制できる。
【0022】
(7)さらに好ましくは、送風器は、筐体の幅方向の中央領域に配置される。これにより、発熱体から筐体の側壁に向かう空気の流れを形成でき、より効率的に筐体外部に放熱できる。
【0023】
(8)好ましくは、開口は、矩形状に形成される。これにより、より大きい開口を実現でき、プレートの前後の空気の攪拌をより促進し、発熱体をより効率的に冷却できる。
【0024】
(9)より好ましくは、筐体は、密閉型に形成されている。これにより、外部から筐体内に水、塵埃等が侵入することを抑制でき、それらによる送風器及び基板の劣化及び損傷を防止できる。
【0025】
(10)本開示の第2の局面に係る電力変換装置は、発熱体を含む電力変換回路が実装された電力変換基板と、発熱体を冷却する送風器と、2つの平面のうちの第1の平面が、発熱体及び送風器に向くように配置され、電力変換回路を制御する制御基板を支持するプレートと、発熱体、電力変換基板、送風器、プレート及び制御基板を収容する筐体とを含み、プレートは、送風器による送風の中心軸を第1の平面に垂直に射影した場合の射影線の両側の少なくとも一方に設けられる開口を持つ。これにより、開口を介してプレートの前後の空気の攪拌を促進し、発熱体を効率的に冷却でき、発熱体が高温になって損傷することを防止できる。したがって、電力変換装置の異状動作を防止できる。
【0026】
(11)本開示の第3の局面に係る蓄電システムは、上記の電力変換装置と、電力変換装置の筐体内に収容され、電力変換回路に接続される蓄電池とを含む。これにより、筐体内部の空気の攪拌を促進し、電力変換回路の発熱体を効率的に冷却でき、発熱体が高温になって損傷することを防止できる。したがって、蓄電システムの異状動作を防止できる。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
以下の実施形態においては、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0028】
(実施形態)
(システムの構成)
図1及び
図2を参照して本開示の実施形態に係る蓄電システム100は、前面パネル102、背面パネル104、天面パネル106、左側面パネル108、右側面パネル110、底面パネル112及びヒートシンクカバー118を含む。蓄電システム100は、後述するように、蓄電池モジュール、電力変換基板、制御基板及び冷却システムを内部に収容している。前面パネル102、背面パネル104、天面パネル106、左側面パネル108、右側面パネル110及び底面パネル112は、蓄電システム100の略直方体の筐体を構成する。蓄電システム100は屋外に設置され得るので、雨水、塵埃等の侵入を防止するために、筐体は、内部の空気と外部の空気とを交換するための吸気口及び排気口のいずれをも有しない密閉型に形成される。なお、「密閉型」とは、完全な密閉構造を含むが、それに限定されず、隙間又は貫通孔等により、筐体の内部及び外部の間で、ある程度の空気の移動があり得る構造をも含む。
【0029】
図1の左下には直交軸を示している(
図2以降に関しても同様)。X軸、Y軸及びZ軸は、それぞれ前面パネル102、右側面パネル110及び天面パネル106に垂直な軸を表し、いずれも正方向は蓄電システム100の内部から外部に向かう方向である。
【0030】
蓄電システム100は、脚部114及び116を含んでいてもよい。蓄電システム100は通常、脚部114及び116が水平面(略水平面を含む。例えばXY平面に平行な面)に固定される。これにより、前面パネル102、背面パネル104、左側面パネル108及び右側面パネル110は鉛直(略鉛直を含む。例えばZ軸方向)に配置される。前面パネル102、背面パネル104、天面パネル106、左側面パネル108、右側面パネル110、底面パネル112、脚部114及び116は、例えば金属(鉄(鋼)、ステンレス鋼等)等の所定の強度を有する導電性部材で形成され、表面が絶縁部材によりコーティングされている。
【0031】
図2及び
図3を参照して、蓄電システム100は、その背面に配置されたヒートシンク120を含む。ヒートシンクカバー118は、ヒートシンク120を覆い、ヒートシンク120に人等が直接触れることを防止するためのカバーである。後述するようにヒートシンク120は、電力変換装置に含まれる半導体スイッチング素子により発生した熱を、蓄電システム100の背面から放熱(周囲の空気への熱伝導及び赤外線輻射等)する。電力変換装置の動作(電力変換)時には、半導体スイッチング素子に大電流(例えば、最大電流が約30A以上)が流れ、半導体スイッチング素子は発熱する。そのため、ヒートシンク120近傍の空気の温度は上昇する。
【0032】
ヒートシンクカバー118の上部には、複数のスリットが形成されており、ヒートシンクカバー118の下部と背面パネル104との間には、隙間が形成されている。これにより、ヒートシンク120の周囲に存在する温度上昇して膨張した空気は、複数のスリットを介してヒートシンクカバー118の外側に排出され、ヒートシンクカバー118の下部の隙間から比較的低温の空気がヒートシンク120の周囲に流入する。このような空気の流れにより、ヒートシンク120の放熱機能が維持される。
【0033】
ヒートシンク120は、例えば、アルミ、鉄、銅等の熱伝導性の高い部材で形成される。ヒートシンク120の大きさ及び背面パネル104上における位置は、電力変換回路を構成する後述の第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304上における複数の半導体スイッチング素子の配置に対応して決定されていればよい。例えば、
図3においては、ヒートシンク120は、半導体スイッチング素子の配置に応じて、左右方向に関して若干右側面パネル110の側に偏心して配置されている。
【0034】
図4から
図6を参照して、蓄電システム100は、仕切りプレート204を挟んで上部及び下部に区分される。上部には、電力変換装置(例えば、パワーコンディショナ)を構成する制御基板300、第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304を含み、下部には蓄電池モジュール320を含む。蓄電池モジュール320は、充電及び放電可能な二次電池を含む。仕切りプレート204により、蓄電システム100の上部及び下部の間での空気の移動は抑制される。
【0035】
蓄電システム100の上部には支持プレート200が鉛直に配置されている。より具体的には、支持プレート200は、蓄電システム100が水平面に固定される通常の設置状態において、蓄電システム100の上部に鉛直に配置されている。支持プレート200及び仕切りプレート204の各々は、長方形(略長方形を含む)の外周を有し、金属(鉄(鋼)ステンレス鋼等)により形成されている。支持プレート200には、第1開口220及び第2開口222が形成されている(
図7参照)。
図7において、第1開口220及び第2開口222は、それぞれ第1縁部210及び第2縁部212により画定される。第1開口220及び第2開口222の形状、並びに、支持プレート200上における第1開口220及び第2開口222の位置は任意である。後述するように、送風器230により蓄電システム100内部の空気を効率よく循環させるためには、開口はできるだけ大きいことが好ましい。なお、第1縁部210及び第2縁部212には、基板間の配線(ワイヤーハーネス等)の位置を固定するために複数の切欠きが形成されていてもよい。
【0036】
蓄電システム100の上部の空間は、支持プレート200により第1空間240及び第2空間242に区切られる。第2空間242には、制御基板300が配置されている。具体的には、制御基板300は、支持プレート200の前面(前面パネル102側の面)上に、基板スペーサ等を介して配置(例えばネジ固定)されている。制御基板300は、支持プレート200を正面視した場合に第1開口220及び第2開口222に重ならないように配置される。制御基板300は、支持プレート200の中央領域(支持プレート200の長手方向(Y軸方向)の中央を含む領域)に配置されることが好ましい。
【0037】
第1空間240には、送風器230、第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304が配置されている。具体的には、送風器230は、支持プレート200の背面(制御基板300が配置された面の裏側の面)に、送風器取付部材232(
図8参照)を介して固定される。送風器取付部材232は、金属(鉄(鋼)ステンレス鋼等)、又は、透明若しくは不透明の樹脂により形成されている。送風器230は、回転翼と、回転翼を回転させる駆動装置(モータ)とを含み、回転翼を回転軸の回りに回転させることにより、回転軸方向に排気口から送風する。即ち、送風器230は、
図5において破線の下向きの矢印で示す方向に送風する。送風器230が動作するための電力は、例えば制御基板300から供給される。なお、送風器230にその送風能力を十分に発揮させるには、送風器230の吸気口と天面パネル106との間隔L(
図5参照)は、所定距離(例えば、約10cm)以上であることが好ましい。
【0038】
送風器230は、送風器230による送風が、第3開口224(
図8参照)を通るように送風器取付部材232に装着される。例えば、送風器230は、第3開口224の周囲の貫通孔236を介してネジ固定される。貫通孔236には雌ネジが形成されており、送風器230は、雄ネジにより送風器取付部材232に固定される。送風器230が装着された状態の送風器取付部材232は、送風器230及びその装着部分が、支持プレート200の前面から着脱口234(
図7参照)に挿入され、支持プレート200に形成された雌ネジに対して、貫通孔238を介して雄ネジにより固定される。これにより、支持プレート200の背面、即ち第1空間240に送風器230が配置される。
【0039】
制御基板300は、送風器230が装着された状態の送風器取付部材232が支持プレート200に配置された後に、支持プレート200に配置される。したがって、送風器230の故障等により、送風器230を交換する必要が生じた場合、制御基板300を取外し、送風器230を新たな送風器と交換する。このとき、送風器取付部材232及び送風器230を1つのセットとして新たなセットと交換すれば、作業効率が向上できるので好ましい。なお、送風器230に電力を供給するための配線の端子(コネクタ)が、送風器230又は制御基板300において、着脱式に設けられていれば、送風器230の交換作業が容易であるので好ましい。このように、蓄電システム100の前面から、前面パネル102を取外すだけで、容易に送風器のメンテナンスが可能である。
【0040】
図5、
図6及び
図9を参照して、第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304は、背面パネル104上に基板スペーサ等を介して配置(例えばネジ固定)されている。
図9は制御基板300及び支持プレート200を取外した状態を示すが、支持プレート200を破線で示している。第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304上に配置された発熱体306及び308(6つのリアクトル)は、送風器230の送風による冷却対象である。それ以外の素子(半導体スイッチング素子等)は図示していない。電力変換時には、上記したように第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304上の複数の半導体スイッチング素子に大電流が流れ、発熱体306及び308にも大電流が流れる。複数の半導体スイッチング素子は、例えば、各々の放熱板を介してヒートシンク120に固定されている。これにより、上記したように、半導体スイッチング素子により発生する熱はヒートシンク120伝達され、ヒートシンク120から放熱される。
【0041】
なお、蓄電システム100の下部(仕切りプレート204の下方領域)の第3空間244には、電気配線等が配置される。例えば、底面パネル112に設けられた電気配線を通すための開口(又は開口に装着されたブッシング)を介して、外部電源及び外部負荷との接続のための電気配線が、第3空間244に設けられた端子台(図示せず)に接続される。これにより、蓄電システム100は、外部電源(例えば、太陽光発電システム)から電気配線を介して供給される電力(直流)を蓄電池モジュール320に蓄電する。蓄電システム100は、蓄電池モジュール320の放電時には、制御基板300による制御を受けた第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304により変換された電力(交流)を、電気配線を介して外部負荷(例えば、電気機器)に供給する。なお、蓄電システム100に外部電源から交流電力が供給される場合、第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304は制御基板300による制御を受けて、入力される交流電力を直流電力に変換して蓄電池モジュール320に蓄電する。
【0042】
図10を参照して、支持プレート200の蓄電システム100への配置に関して、より具体的に説明する。
図10は、蓄電システム100において、制御基板300、第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304を配置せずに、支持プレート200を配置した状態を示す。左側面パネル108及び右側面パネル110の相互に対向する面(内側面)には、合計4つの固定部材206が固定されている(
図9参照)。即ち、左側面パネル108の内側面には、Z軸に平行な同一の直線上に上下に2つの固定部材206が固定(例えば、ネジ固定)されている。右側面パネル110の内側面にも、Z軸に平行な同一の直線上に上下に2つの固定部材206が固定(例えば、ネジ固定)されている。支持プレート200は、その4隅の各々が固定部材206により固定(例えば、ネジ固定)されている。これにより、支持プレート200は、蓄電システム100内部において、前面パネル102及び背面パネル104に平行になるように配置されている。したがって、蓄電システム100が、水平面(XY面)に設置される場合、支持プレート200は鉛直(Z軸方向)に配置される。
【0043】
以上、密閉型の筐体(前面パネル102、背面パネル104、天面パネル106、左側面パネル108、右側面パネル110及び底面パネル112)と、当該筐体の上部に収容される支持プレート200及び送風器230とにより冷却システムが構成される。上記したように、蓄電システム100の上部と下部とは仕切りプレート204により区切られている。仕切りプレート204は平板状に形成されている。したがって、蓄電システム100の上部と下部との間での空気の流れは殆どなく、前面パネル102、背面パネル104、天面パネル106、左側面パネル108及び仕切りプレート204により、蓄電システム100の上部に密閉型の筐体が形成されていると考えることもできる。即ち、蓄電システム100の上部が冷却システムと解釈されてもよい。なお、仕切りプレート204には、制御基板300、第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304と蓄電池モジュール320とを接続するためのワイヤーハーネスを通すための比較的小さい開口が形成されていてもよい。そのような場合にも、蓄電システム100の上部と下部との間での空気の流れは少ないので、上記したように蓄電システム100の上部を冷却システムと解釈できる。
【0044】
このような冷却システムにおいて、支持プレート200は、その一方の平面(背面)が、送風器230と、その冷却対象である発熱体306及び308とに向くように配置されている。支持プレート200は、支持プレート200を正面視した場合に、送風器230の送風方向の両側の各々に開口(第1開口220及び第2開口222)が形成されている。即ち、第1開口220及び第2開口222は、送風器230による送風の中心軸(回転翼の回転軸に対応)を、支持プレート200の一方の平面に垂直に射影した場合の射影線の両側に設けられている。
【0045】
(動作)
図11を参照して、蓄電システム100の電力変換動作時における冷却システムの動作(送風器230による送風)に関して説明する。電力変換動作時には、制御基板300の制御を受けて第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304の半導体スイッチング素子が動作し、半導体スイッチング素子と発熱体306及び308とに大電流が流れる。これに伴い送風器230は送風を開始する。送風器230の送風は、例えば、制御基板300により、送風器230への電力供給が制御されることにより行われる。電力変換動作により、主として、半導体スイッチング素子及び発熱体306及び308が発熱する。上記したように、半導体スイッチング素子により発生する熱は、主としてヒートシンク120により放熱される。一方、発熱体306及び308により発生する熱は、送風器230の送風により蓄電システム100内部(第1空間240及び第2空間242)に発生する空気の流れにより放熱される。
【0046】
具体的には、送風器230の送風(排気口からの空気の出力)により、
図11に破線の下向き(鉛直方向)の矢印で示す方向に空気の流れが生じる。この空気流は、発熱体306及び308に向かい、その一部は発熱体に当たる。発熱体306及び308の発熱により発熱体306及び308近傍の空気は温度が高くなり、膨張して上昇しようとするので、その方向と逆の方向に送風器230から送風することにより、筐体内部の空気は攪拌される。これにより、発熱体306及び308による熱は、周囲に拡散し、左側面パネル108、右側面パネル110及び天面パネル106を介して蓄電システム100の外部に放熱される。したがって、発熱体の温度上昇が抑制され、発熱体の劣化及び損傷を回避できる。
【0047】
また、送風器230により形成された空気流の一部は仕切りプレート204に向かい、左右方向に向かう空気流400及び402も形成される。その後、左側面パネル108及び右側面パネル110により、それぞれの壁面に沿って上方に向かう空気流が形成され、天面パネル106により、送風器230の上側の吸気口に向かう空気流が形成される。即ち、
図12に矢印で示すように、第1空間240において循環流が形成される。発熱体306及び308の発熱により温度が高くなった空気の一部は、左側面パネル108、右側面パネル110及び天面パネル106に沿って流れる間に、蓄電システム100の外部への放熱により温度が低下する。したがって、送風器230の吸気口から吸入される空気の温度は、発熱体306及び308近傍の空気の温度よりも低く、送風器230の排気口から排出される空気(送風)の温度も、発熱体306及び308近傍の空気の温度よりも低い。これによっても、発熱体の温度上昇が抑制され、発熱体の劣化及び損傷を回避できる。
【0048】
一方、支持プレート200が存在するために、第2空間242の空気は、送風器230の送風の影響を直接受けず、第2空間242には、第1空間240において形成されるような循環流は形成されない。しかし、第1空間240における空気の温度上昇(膨張による圧力低下)に対して、第2空間242における空気の温度は比較的低い。制御基板300には発熱体は搭載されておらず、搭載されている素子による発熱量は少ない。したがって、空気流404、406、408及び410(
図11参照)のように、第1開口220及び第2開口222を介して第2空間242から第1空間240への空気流が生じる。これにより、筐体内部の空気がより攪拌され、第1空間240における空気の温度をより低減できる。したがって、より一層、発熱体の温度上昇を抑制し、発熱体の劣化及び損傷を回避できる。
【0049】
以上により、冷却システムは、第1開口220及び第2開口222を介して支持プレート200の前後(第1空間240及び第2空間242)の空気の攪拌を促進し、発熱体306及び308を効率的に冷却できる。1つの送風器230により、発熱体を効率的に冷却でき、発熱体が高温になって損傷することを防止できる。したがって、複数の送風器を使用する場合よりも、部品点数を削減でき、簡単な構造の冷却システム、それを含む電力変換装置及び蓄電システムを実現できる。また、コストを削減でき、送風器の騒音を低減できる。
【0050】
また、発熱体306及び308が搭載された第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304の表面は、背面パネル104の表面に沿って(鉛直方向に沿って)配置されている。支持プレート200の表面は、第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304の表面に平行に配置されている。即ち、支持プレート200は鉛直に配置されている。送風器230は、鉛直方向に関して、発熱体306及び308よりも高い位置に配置される。したがって、発熱体の発熱により高温になった空気の上昇方向と逆方向に送風でき、筐体内部における空気をより攪拌させ、発熱体をより効率的に冷却できる。リアクトル自体に発熱対策が講じられたリアクトルが販売されているが、そのような高価で特殊なリアクトルを使用しなくても、安価な通常のリアクトルを使用して、電力変換装置を構成できる。
【0051】
発熱体306及び308が搭載された第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304は、送風器230と共に支持プレート200の一方の平面側(背面側)に配置されており、送風器230よりも支持プレート200から離隔して配置されている。第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304上の発熱体306及び308も、送風器230よりも支持プレート200から離隔して配置されている。したがって、発熱体と支持プレート200の背面との間に、送風器230の送風による空気流を形成でき、蓄電システム100の上部における空気をより拡散でき、発熱体の温度上昇を抑制し、発熱体の劣化及び損傷を回避できる。
【0052】
制御基板300は、支持プレート200の他方の平面(前面)の中央領域に配置されている。第1開口220及び第2開口222は、制御基板300が配置された領域を除いた領域の半分以上を占めている。これにより、筐体内部における空気の攪拌をより促進し、発熱体をより効率的に冷却できる。
【0053】
送風器230は、支持プレート200の背面に送風器取付部材232を介して固定されている。これにより、安定した送風を実現でき、筐体内部における空気の攪拌を安定させ、発熱体をより効率的に冷却できる。また、送風器230は、筐体の幅方向の中央領域に配置されている。これにより、発熱体から筐体の側壁に向かう空気の流れを形成でき、より効率的に筐体外部に放熱できる。
【0054】
なお、上記したように、蓄電システム100は密閉型の筐体を採用している。これにより、外部からの水、塵埃等の侵入を抑制でき、それらによる送風器及び基板の劣化及び損傷を防止できる。
【0055】
(冷却効率)
送風器を複数台設ける場合には、上記とは異なる構造を採用することが考えられる。例えば、制御基板300を搭載する支持プレートとして、
図13に示す支持プレート900を用い、
図14に示すように、2つの送風器906及び908を用いる構成を採用できる。支持プレート900には、縁部902により画定される1つの開口904が形成されている。開口904は支持プレート900の左側に形成されており、制御基板300(
図14において図示せず)は支持プレート900前面の右側に配置される。送風器906及び908は、支持プレート900の背面に配置されている。送風器906は、発熱体306に向かって送風するように配置され、送風器908は、発熱体308に向かって送風するように配置されている。
【0056】
図11に示した構成の電力変換装置を試作し、比較例として
図14に示した構成の電力変換装置を試作し、両者において電力変換動作時における内部温度を測定した。具体的には、支持プレート、制御基板及び送風器を除く構成を作製し、それに、
図11及び
図14の各々に示した支持プレート、制御基板及び送風器を搭載した。
【0057】
その結果、
図14(比較例)に示した構成よりも、
図11に示した構成の方が、第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304付近の空気温度が低かった。
図14に示した構成の場合、
図11に示したような、第2空間242から第1空間240に向かう空気流404、406、408及び410が形成されないため、
図11に示した構成よりも、筐体内部の空気を攪拌する機能が低いと考えられる。また、
図14に示した構成の場合、
図12に示したような循環流が形成されないため、冷却効率が比較的低いと考えられる。即ち、発熱体の温度上昇を抑制するには、
図7に示した第1開口220及び第2開口222が形成された支持プレート200を採用し、
図11に示したように、制御基板300及び送風器230を配置することが有効であることが確認できた。中央領域に制御基板300が配置され、その両側に第1開口220及び第2開口222が形成された支持プレート200を採用することにより、1つの送風器230を用いても、複数の送風器を用いる場合と同等以上の冷却機能を実現でき、効率的に発熱体の温度上昇を抑制できる。
【0058】
(変形例)
送風器230による送風は、蓄電システム100内部の温度を低下させるためであるので、発熱量に応じて送風量を調整できれば好ましい。例えば、制御基板300は、送風器230に供給する電力量を、第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304による電力変換の動作モードに応じて調整する。電力変換動作の電力量が比較的大きい動作モードであれば、より大きい電力を送風器230に供給し(電流増大)、送風器230の回転数を大きくして送風量を大きくする。電力変換動作の電力量が比較的小さい動作モードであれば、より小さい電力を送風器230に供給し(電流減少)、送風器230の回転数を小さくして送風量を小さくする。これにより、蓄電システム100の上部における空気を攪拌する程度を調整でき、不必要な送風器230の動作を抑制し、不要な電力消費を低減できる。
【0059】
支持プレート200上に形成される2つの開口の形状及びそれらの位置は、上記に限定されない。支持プレート200の前面から背面への空気流を促進するには、支持プレート200の前面に配置される制御基板300の位置、及び、支持プレート200に要求される機械的強度に応じて、可能な限り大きい開口が形成されることが好ましい。したがって、支持プレート200(前面)の形状が矩形(長方形)である場合には、開口の形状は矩形状であることが好ましい。「矩形状」とは、矩形を含み、矩形を画定する縁部の一部が直線でない形状をも含む意味である。これにより、支持プレート200の前面側から背面側への空気流、即ち第2空間242から第1空間240への空気流を促進でき、支持プレート200の背面側に位置する発熱体を効率的に冷却できる。
【0060】
上記したように、制御基板300は支持プレート200の前面の中央領域に位置することが好ましいが、これに限定されない。制御基板300は、支持プレート200の中央領域外の領域(支持プレート200の中央を含まない領域)に配置されてもよい。その場合にも、支持プレート200の長手方向(Y軸方向)に関して制御基板300の両側の少なくとも一方に開口が設けられていればよい。
【0061】
送風器230は、上記したように、着脱口234を介して、支持プレート200の背面に送風器取付部材232により固定されることが好ましい。しかし、これに限定されない。支持プレートは、着脱口234を有していなくてもよい。その場合、送風器230の交換は、制御基板300が配置されたまま支持プレートを、固定部材206から取外すことにより可能である。送風器230により支持プレート200の背面に平行に送風できればよく、送風器230は送風器取付部材232(
図8)とは異なる部材により支持プレート200に固定されてもよい。
【0062】
上記では、送風器230により、支持プレート200の背面に沿って鉛直下方に送風する場合を説明したが、これに限定されない。送風器230は、発熱体の少なくとも一部に向かって、支持プレート200の平面に沿って送風すればよく、例えば、上方に送風しても、左方向又は右方向に送風してもよい。
【0063】
上記では、発熱体がリアクトルである場合を説明したが、これに限定されない。第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304上に配置され、蓄電システム100の動作時に発熱する素子であり、冷却されなければ損傷する素子であればよい。そのような素子は、発熱体として冷却の対象となる。
【0064】
上記では、電力変換装置が2枚の第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304を含む場合を説明したが、これに限定されない。第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304は、一体(1枚の基板)に形成されていてもよい。第1電力変換基板302及び第2電力変換基板304は、3枚以上の基板として形成されていてもよい。
【0065】
上記では、蓄電システム100の下部に蓄電池モジュール320が配置され、上部に冷却システムが配置される場合を説明したが、これに限定されない。鉛直方向に関して、蓄電池モジュール320と同じ位置(高さ)に冷却システムが配置される構成であってもよい。例えば、蓄電池モジュールの前後左右のいずれかに冷却システムが配置されてもよい。また、蓄電システムの上部に蓄電池モジュールが配置され、下部に冷却システムが配置されてもよい。
【0066】
以上、実施の形態を説明することにより本開示を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本開示は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本開示の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0067】
100 蓄電システム
102 前面パネル
104 背面パネル
106 天面パネル
108 左側面パネル
110 右側面パネル
112 底面パネル
114、116 脚部
118 ヒートシンクカバー
120 ヒートシンク
200、900 支持プレート
204 仕切りプレート
206 固定部材
210 第1縁部
212 第2縁部
220 第1開口
222 第2開口
224 第3開口
230、906、908 送風器
232 送風器取付部材
234 着脱口
236、238 貫通孔
240 第1空間
242 第2空間
244 第3空間
300 制御基板
302 第1電力変換基板
304 第2電力変換基板
306、308 発熱体
320 蓄電池モジュール
400、402、404、406、408、410 空気流
902 縁部
904 開口
L 間隔