(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
B43K 8/20 20060101AFI20240903BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B43K8/20
A45D34/04 510C
A45D34/04 540
A45D34/04 525Z
(21)【出願番号】P 2020205471
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】松下 欣也
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-161779(JP,U)
【文献】特開2016-209437(JP,A)
【文献】特開平08-228830(JP,A)
【文献】実開平02-145983(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 8/20
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインク収容体が配設された容器と、この容器の先部に回転可能に設けられ塗布対象面の上を回転することにより当該塗布対象面に対してインクを塗布し得る塗布体と、前記インク収容体と前記塗布体との間に介設され前記インク収容体のインクを前記塗布体に伝達し得る中継体とを備えた塗布具であって、
前記中継体が、前記容器に対して回転可能に設けられたものであり、当該中継体の回転中心点と前記塗布体の回転中心点との間を繋ぐ仮想直線よりも回転方向下流側に位置する前記塗布体の外周部に当接し得るように構成されている塗布具。
【請求項2】
前記中継体の軸心が、前記容器の軸心に対して傾斜した姿勢をなしている請求項1記載の塗布具。
【請求項3】
前記中継体が、前後方向に長手をなすものであり、先端部が前記塗布体の外周部に当接し得るとともに後端部が前記インク収容体に接続したものである請求項1又は2記載の塗布具。
【請求項4】
前記中継体が、前後方向に長手をなすものであり、その後部が前記容器に設けられた中継体支持部により支持されている請求項1、2又は3記載の塗布具。
【請求項5】
前記中継体の後部に一対の凹み部が形成されたものであり、
前記中継体支持部が、前記一対の凹み部に係合し得る一対の支持突部である請求項4記載の塗布具。
【請求項6】
前記塗布体が、前記外周部を有した塗布体本体と、この塗布体本体に突設され前記容器に設けられた軸支持部に支持される支軸とを備えたものであり、
前記塗布体は、前記支軸の軸心が前記容器の軸心に対して交差し得る位置に配設されている請求項1、2、3、4又は5記載の塗布具。
【請求項7】
前記中継体が、側面視において当該中継体の軸心を仮想中心線とした対称形状をなしたものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の塗布具。
【請求項8】
前記中継体における先端部が前方に向かって漸次厚み寸法が短くなるように形成されたものであり、
前記中継体における後端部が後方に向かって漸次厚み寸法が短くなるように形成されたものである請求項7記載の塗布具。
【請求項9】
前記中継体は、前記塗布体の回転方向が逆になった場合に、当該塗布体の逆転動作に伴って姿勢変更されるように構成されている請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の塗布具。
【請求項10】
前記インク収容体が、前後方向に延びてなる棒状をなし、内部にインクが含浸された中綿である請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙等に対してインクを塗布する塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器内に収容された液状化粧料を、中継芯を介して先端部に回転可能に設けられた塗布体に伝達し得る化粧料容器が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
化粧料容器に設けられた中継芯は、前後方向に延びた棒状をなしその軸心が容器の軸心と合致するように配設されている。そして、中継芯の先端は、塗布体における真後ろの部分に接したものとなっている。
【0004】
ところが、上記した構成のものでは、落下等により外部から大きな衝撃を受けた場合に、容器内に収容された中継芯が軸心方向に過大に前進又は後退してしまうことがあり、これに起因して、次のような不具合を生じさせるものとなっていた。
【0005】
すなわち、中継芯が軸心方向に大きく前進してしまった場合には、その中継芯の先端が塗布体の真後ろを過剰に押圧することになるため、塗布体の円滑な回転を阻害するという不具合を惹き起こすものとなっていた。
【0006】
また、中継芯が軸心方向に大きく後退してしまった場合には、その中継芯の先端が塗布体から離れ過ぎることになるため、塗布体に対して液状化粧料を適切に伝達できなくなるという不具合を惹き起こすものとなっていた。
【0007】
なお、以上の事情は化粧料容器に限られるものではなく、インクを収容した塗布具においても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも、先部に回転可能に設けられた塗布体に対して、容器内に収容されたインクを好適に伝達し得る構成を有した塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0011】
請求項1に記載の発明は、内部にインク収容体が配設された容器と、この容器の先部に回転可能に設けられ塗布対象面の上を回転することにより当該塗布対象面に対してインクを塗布し得る塗布体と、前記インク収容体と前記塗布体との間に介設され前記インク収容体のインクを前記塗布体に伝達し得る中継体とを備えた塗布具であって、前記中継体が、前記容器に対して回転可能に設けられたものであり、当該中継体の回転中心点と前記塗布体の回転中心点との間を繋ぐ仮想直線よりも回転方向下流側に位置する前記塗布体の外周部に当接し得るように構成されている塗布具である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記中継体の軸心が、前記容器の軸心に対して傾斜した姿勢をなしている請求項1記載の塗布具である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記中継体が、前後方向に長手をなすものであり、先端部が前記塗布体の外周部に当接し得るとともに後端部が前記インク収容体に接続したものである請求項1又は2記載の塗布具である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記中継体が、前後方向に長手をなすものであり、その後部が前記容器に設けられた中継体支持部により支持されている請求項1、2又は3記載の塗布具である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記中継体の後部に一対の凹み部が形成されたものであり、前記中継体支持部が、前記一対の凹み部に係合し得る一対の支持突部である請求項4記載の塗布具である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記塗布体が、前記外周部を有した塗布体本体と、この塗布体本体に突設され前記容器に設けられた軸支持部に支持される支軸とを備えたものであり、前記塗布体は、前記支軸の軸心が前記容器の軸心に対して交差し得る位置に配設されている請求項1、2、3、4又は5記載の塗布具である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記中継体が、側面視において当該中継体の軸心を仮想中心線とした対称形状をなしたものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の塗布具である。
【0018】
請求項8に記載の発明は、前記中継体における先端部が前方に向かって漸次厚み寸法が短くなるように形成されたものであり、前記中継体における後端部が後方に向かって漸次厚み寸法が短くなるように形成されたものである請求項7記載の塗布具である。
【0019】
請求項9に記載の発明は、前記中継体は、前記塗布体の回転方向が逆になった場合に、当該塗布体の逆転動作に伴って姿勢変更されるように構成されている請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の塗布具である。
【0020】
請求項10に記載の発明は、前記インク収容体が、前後方向に延びてなる棒状をなし、内部にインクが含浸された中綿である請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の塗布具である。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、先端部に回転可能に設けられた塗布体に対して、容器内に収容されたインクを好適に伝達し得る構成を有した塗布具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図9】
図7におけるX-X線で切断した状態の部分拡大斜視図。
【
図10】同実施形態における部品(中継体)の斜視図。
【
図11】同実施形態における部品(中継体)の平面図。
【
図12】同実施形態における部品(中継体)の右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~14を参照して説明する。
【0024】
この実施形態は、本発明を、塗布具たるローラーマーカー(以下、単に「マーカー」という。)に適用したものである。
【0025】
マーカーは、先端部に塗布体たる塗布ローラーDが設けられたものである。塗布ローラーDは、用紙等の塗布対象面F上を転がることにより当該塗布対象面Fに対してインクを塗布し得るものである。この実施形態では、
図2に示すように、塗布ローラーDを転動させて塗布対象面Fにインクを塗布することにより、複数の線構成要素n1によって模様が構成された線Nを引くことができるようになっている。
【0026】
マーカーは、内部にインクが収容されたインク収容体たる中綿Bを収容し得る容器Aと、容器Aの先部に回転可能に設けられ用紙等の塗布対象面Fの上を回転することにより当該塗布対象面Fに対してインクを塗布し得る塗布ローラーDと、中綿Bと塗布ローラーDとの間に介設され中綿Bのインクを塗布ローラーDに伝達し得る中継体Cとを備えたものである。
【0027】
以下、マーカーについて詳述する。
【0028】
容器Aは、中綿Bを収容し得る主要部をなす後容器部材1と、後容器部材1の前部に取り付けられ内部において中継体Cを支持するとともに先部において塗布ローラーDを回転可能に支持し得る前容器部材2とを備えたものである。
【0029】
後容器部材1は、前側が開放された有底円筒状をなしている。後容器部材1には、内部に中綿Bを収容し得る収容空間spが形成されている。後容器部材1における後端部の外面側には、キャップEを取り付け可能な凸状をなすキャップ取付部11が形成されている。後容器部材1には、前容器部材2の後部に設けられた連結部21aが挿入されるようになっている。
【0030】
前容器部材2は、前方及び後方に開放された筒状をなしている。前容器部材2は、前後方向に貫通した概略円筒状のものである。前容器部材2は、先部において塗布ローラーDを回転可能に支持し得る構成をなしている。前容器部材2は、後部において中綿Bの前部分を位置決めし得るとともに前部において中継体Cを収容及び支持し得る構成をなしている。
【0031】
前容器部材2は、円筒状をなす前容器部材本体21と、前容器部材本体21の前端部から前方に延出した一対すなわち左右に対をなすアーム部22とを備えたものである。
【0032】
前容器部材本体21は、後容器部材1の内部に挿入され後容器部材1に連結される連結部21aと、連結部21aの前に設けられ後容器部材1の前端縁1eに係合し得る鍔部21bと、内面側に設けられ中継体Cを回転可能に支持し得る中継体支持部たる一対の支持突部Gとを備えたものである。
【0033】
鍔部21bは、後容器部材1に対する前容器部材2の位置決めをするためのものである。なお、前容器部材2における鍔部21bよりも前側の部位には、キャップEが着脱可能に装着され得るものとなっている。
【0034】
一対の支持突部Gは、中継体Cの後部に設けられた一対の凹み部5に係合し、当該中継体Cを前容器部材本体21に対して回転可能に支持し得るものである。一対の支持突部Gは、上下対称に設けられている。すなわち、一対の支持突部Gは、前連結部材本体21における内面の上側及び下側から互いに相寄る方向に突設されている。各支持突部Gは、左右方向に延びた形態をなしており、突出端が半円弧状に形成されている。
【0035】
左右のアーム部22は、塗布ローラーDの左右両端部と係わり合い当該塗布ローラーDを回転可能に支持し得るものである。アーム部22は、左右に対をなして設けられている。アーム部22は、先部において塗布ローラーDを回転可能に支持し得るものである。アーム部22には、塗布ローラーDの左右に突設された支軸7を回転可能に支持し得る軸支持部22aが設けられている。
【0036】
中綿Bは、インクが含浸された前後方向に延びてなる棒状ないし円柱状のものである。中綿Bは、合成樹脂により形成された円筒状をなす外筒b1と、外筒b1の内部に収容されインクを吸収して保持し得る繊維材料を主体に作られたインク含浸材b2とを備えたものである。中綿Bのインク含浸材b2は、中継体Cよりも弾性変形し易く設定されている。換言すれば、中綿Bのインク含浸材b2は、中継体Cよりも柔軟に構成されている。中綿Bは、その軸心j2が容器Aの軸心j1と略合致するように、容器A内に収容されている。
【0037】
中継体Cは、毛細管現象により中綿Bに含浸されたインクを吸い上げ、当該インクを塗布ローラーDに伝達し得るものである。中継体Cは、中綿Bよりも硬質であり、毛細管力が強く設定されている。中継体Cは、ポリエステル等の樹脂繊維材料を主体に形成されたものである。中継体Cは、前後方向に長手をなしている。
【0038】
中継体Cは、先端部3が塗布ローラーDの外周部Mに当接し得るとともに後端部4が中綿Bに接続している。この実施形態では、中継体Cの後端部4は、中綿Bにおけるインク含浸材b1の前端部を押圧しつつ、インク含浸材b1に埋まるように配設されている。中継体Cは、インク含浸材b1の弾性復帰力により、先端部3が塗布ローラーDの外周部Mに接する方向に付勢されたものとなっている。
【0039】
中継体Cは、その後部が容器Aに支持されている。より具体的に言えば、中継体Cは、前容器部材2に設けられた中継体支持部たる一対の支持突部Gに支持されて、容器Aに対して回転可能、且つ、支持突部Gと凹み部5との間に形成され得る隙間により前後及び上下方向に微動可能に設けられている。
【0040】
中継体Cにおける後部には上下の同じ前後方向位置に一対の凹み部5が形成されている。容器Aにおける前容器部材2には、中継体Cの互いに異なる方向を向く一対の凹み部5に係合し得る一対の支持突部Gが設けられている。
【0041】
中継体Cは、その軸心j3が容器Aの軸心j3に対して傾斜した姿勢をなしている。容器Aに対して傾斜した姿勢をなす中継体Cは、当該中継体Cの回転中心点s1と塗布ローラーDの回転中心点s2との間を繋ぐ仮想直線Lよりも回転方向R下流側に位置する塗布ローラーDの外周部Mにのみ当接し得るように構成されている。
【0042】
換言すると、マーカーは、中継体Cの先端部3と塗布ローラーDの外周部Mとが接触し得る接触位置Tが、仮想直線Lと外周部Mとが交差する位置よりも塗布ローラーDにおける回転方向Rの下流側にのみ設けられている。
【0043】
中継体Cは、側面視において当該中継体Cの軸心j3を仮想中心線とした対称形状をなしている。そして、中継体Cにおける先端部3は、前方に向かって漸次厚み寸法が短くなるように形成されている。
【0044】
中継体Cにおける後端部4は、後方に向かって漸次厚み寸法が短くなるように形成されている。中継体Cにおける後端部4は、後方に向かって先細りした部分円錐状をなしている。
【0045】
また、中継体Cにおける先端部3と後端部4との間に位置する上部及び下部には、互いに略平行をなす平面部8が形成されている。中継体Cにおける先端部3と後端部4との間に位置する左側部及び右側部には外方に向かって凸をなすように湾曲した曲面部9が形成されている。
【0046】
なお、中継体Cは、例えば、次のようにして前容器部材2における所定の位置に配設される。すなわち、人力等により、中継体Cは前容器部材2の前側から当該前容器部材2内に挿入され、後方に向かって押圧される。そうすると、中継体Cの後部における上端部c1及び下端部c2、すなわち、中継体Cにおいて一対の凹み部5よりも後にある上下方向に幅広な部分の上端部c1及び下端部c2が、前容器部材2の内部に形成された一対の支持突部Gに当たることにより一時的に圧縮変形され、中継体Cが更に後方に移動し得るものとなる。しかる後に、中継体Cは、一対の凹み部5が一対の支持突部Gに係合し得る箇所、すなわち、一対の凹み部5内に一対の支持突部Gの突出端が囲まれるように位置する所定の位置に配設されるものとなる。
【0047】
塗布ローラーDは、中継体Cによってインクが塗布されるとともに当該塗布されたインクを塗布対象面Fに対して塗布し得る外周部Mを有した塗布体本体たるローラー本体6と、ローラー本体6の左右に突設され容器Aのアーム部22に設けられた軸支持部22aに支持される支軸7とを備えたものである。
【0048】
塗布ローラーDは、支軸7の軸心j4が容器Aの軸心j1に対して交差し得る位置に配設されている。換言すれば、塗布ローラーDは、支軸7の軸心j4が容器Aの軸心j1上に位置するように容器Aに支持されている。
【0049】
この実施形態では、ローラー本体6の外周部Mは、進行方向に対して傾斜し間隔を空けて表示される線構成要素n1を含んでなる線Nを塗布し得るように、複数の隆起部m1を一定の間隔を空けて並べ設けたものとなっている。この実施形態では、塗布ローラーDの外周部Mにおける複数の隆起部m1の先端部分に、中継体Cの先端部3が当接することによりインクが伝達されるようになっている。
【0050】
このマーカーの作動について、特に、
図13及び
図14を参照して説明する。
【0051】
マーカーは、塗布ローラーDの外周部Mが塗布対象面Fに当接した状態で、
図13に示すように、容器Aを把持した使用者によって塗布ローラーDを前進させる方向Pに操作力が付与されると、塗布ローラーDが正転(
図13の回転方向Rに回転)し、塗布ローラーDの外周部Mに付着しているインクが塗布対象面Fに対して塗布されるようになっている。
【0052】
図14に示すように、容器Aを把持した使用者によって塗布ローラーDを後進させる方向Uに操作力が付与されると、塗布ローラーDの回転方向Rが逆転することになる。塗布ローラーDの回転方向Rが逆(
図13の回転方向Rの逆、すなわち、
図14の回転方向Rに回転すること)になった場合には、中継体Cは、当該塗布ローラーDの逆転動作に伴って姿勢変更されるようになっている。
【0053】
より具体的に言えば、使用者の操作によって塗布ローラーDが逆転した場合には、中継体Cは、その先端部3が逆転している塗布ローラーDの外周部Mに係わり合い当該塗布ローラーDに搬送されるようにして塗布ローラーDの外周部Mを乗り越えるようになっている。
【0054】
そして、中継体Cは、その先端部3が逆転している塗布ローラーDにおける回転方向R下流側に位置するように姿勢変更した上で、塗布ローラーDにインクを供給すべく当該塗布ローラーの外周部Mにおける所定の接触位置Tに当接し得るようになっている。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る塗布具たるマーカーは、内部にインク収容体たる中綿Bが配設された容器Aと、容器Aの先部に回転可能に設けられ塗布対象面Fの上を回転することにより当該塗布対象面Fに対してインクを塗布し得る塗布体たる塗布ローラーDと、中綿Bと塗布ローラーDとの間に介設され中綿Bのインクを塗布ローラーDに伝達し得る中継体Cとを備えたものである。
【0056】
そして、中継体Cが、容器Aに対して回転可能に設けられたものである。中継体Cは、その回転中心点s1と塗布ローラーDの回転中心点s2との間を繋ぐ仮想直線Lよりも回転方向R下流側に位置する塗布ローラーDの外周部Mに当接し得るように構成されている。
【0057】
このため、先部に回転可能に設けられた塗布ローラーDに対して、容器A内に収容されたインクを好適に伝達し得る構成を有したマーカーを提供することができるものとなる。
【0058】
つまり、中継体Cは、容器Aに対して回転可能に設けられたものとなっているため、落下等によってマーカーが大きな衝撃を受けた場合であっても、塗布ローラーDに対する相対位置が大きく変わり難いものとなっている。
【0059】
しかも、中継体Cは、その回転中心点s1と塗布ローラーDの回転中心点s2との間を繋ぐ仮想直線Lよりも回転方向R下流側に位置する塗布ローラーDの外周部Mに当接し得るように構成されているため、中継体Cと塗布ローラーDとの相対位置を極めて精密に設定することなく、中継体Cを塗布ローラーDの外周部Mに好適に当接させることができるようになっている。
【0060】
中継体Cの軸心j3が、容器Aの軸心j1に対して傾斜した姿勢をなしている。
【0061】
このため、中継体Cは、容器A内において塗布ローラーDの回転方向R下流側に接し得る好適な姿勢をなしたものとなっている。
【0062】
中継体Cが、前後方向に長手をなすものであり、先端部3が塗布ローラーDの外周部Mに当接し得るとともに後端部4がインク収容体たる中綿Bに接続したものである。
【0063】
このため、中継体Cは、中綿Bと塗布ローラーDとの間に好適に介設され得るものとなっている。
【0064】
中継体Cが、前後方向に長手をなすものであり、その後部が容器Aに設けられた中継体支持部により支持されている。より具体的に言えば、中継体Cの後部の前後に一対の凹み部5が形成されたものであり、中継体支持部が、前後一対の凹み部5に係合し得る前後一対の支持突部Gである。
【0065】
このため、中継体Cは、容器Aに対して回転し得るように当該容器Aに対して好適に支持されたものとなっている。しかも、中継体Cに設けられた一対の凹み部5に対して容器Aに設けられた一対の支持突部Gが係合し得るようにしているため、容器Aに対して中継体Cを支持させやすいものとなっている。
【0066】
さらに、一対の凹み部5に対して一対の支持突部Gが係合し得るようにしているため、中継体Cの先端部3が上下方向に振り動き得るように当該中継体Cを回転可能に支持し易いだけでなく、凹み部5と支持突部Gとの間に一定のクリアランスを設け易いため中継体Cを容器Aに対して前後方向及び上下方向に微動し得るように支持させることも柔軟に行い得るものとなっている。そのため、中継体Cは、中綿Bや塗布ローラーDに対して好適な姿勢で介在し得る柔軟性に優れたものとなっている。
【0067】
塗布ローラーDが、外周部Mを有したローラー本体6と、ローラー本体6に突設され容器Aに設けられた軸支持部22aに支持される支軸7とを備えたものである。そして、塗布ローラーDは、支軸7の軸心j4が容器Aの軸心j1に対して交差し得る位置に配設されている。
【0068】
このため、塗布ローラーDは、容器Aに対して好適な位置に配設されたものとなっている。つまり、使用者は、容器Aを把持して塗布ローラーDを違和感なく快適に操作し得るものとなっている。
【0069】
中継体Cが、側面視において当該中継体Cの軸心j3を仮想中心線とした対称形状をなしたものである。
【0070】
このため、中継体Cは、容器Aに対して回転可能に支持され得る好適な形状をなしたものとなっている。
【0071】
中継体Cにおける先端部3が前方に向かって漸次厚み寸法が短くなるように形成されたものであり、中継体Cにおける後端部4が後方に向かって漸次厚み寸法が短くなるように形成されたものである。
【0072】
このため、中継体Cの先端部3は塗布ローラーDの回転方向R下流側の外周部Mに当接し得る好適な形状をなしたものとなるとともに中継体Cの後端部4は中綿Bに接続し得る好適な形状となしたものとなる。
【0073】
中継体Cは、塗布ローラーDの回転方向Rが逆になった場合に、当該塗布ローラーDの逆転動作に伴って姿勢変更し得るように構成されている。
【0074】
このため、塗布ローラーDを逆転させた場合であっても、中継体Cは、塗布ローラーDの逆転動作に伴って自動的に姿勢変更し得るものとなるため、塗布ローラーDの回転を阻害するすることなく、塗布ローラーDに対してインクを供給し得る適切な姿勢を採り得るものとなっている。
【0075】
インク収容体たる中綿Bは、前後方向に延びてなる棒状をなし、内部にインクが含浸されたものである。
【0076】
このため、中継体Cが容器Aに対して回動し得るものであっても、後端部4が中綿Bに対して好適に接続したものとなっている。
【0077】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0078】
塗布具に用いられるインクは、塗布対象面に塗布され得るものあれば、どのようなものであってもよい。
【0079】
塗布具は、ローラーマーカーに限られるものではなくインクを塗布し得るものであればどのようなものであってもよい。換言すれば、塗布体は、ローラー式ないし回転式のものに限られるものではない。
【0080】
容器の形状は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の形態のものを適用することができるものである。
【0081】
中継体の形状についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の形態のものを採用することができるのは言うまでもない。
【0082】
塗布体の形状についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の形態のものと採用することができるのは言うまでもない。例えば、塗布体における外周部の形態は、塗布しようとする線の太さや模様の有無や模様のバリエーション等に応じて適宜の態様に設定されるものである。
【0083】
塗布体は、一方向のみに回転するものであってもよい。
【0084】
塗布具は、塗布体の回転方向が逆転した場合に、中継体の姿勢が変更されないものであってもよい。
【0085】
中継体が容器に対して回転可能に支持され得る構成は、適宜の構成を採用することができるものである。例えば、中継体は、軸を介して容器に対して支持されたものであってもよい。
【0086】
中継体は、その軸心が、容器の軸心に対して傾斜した姿勢をなしていないものであってもよい。例えば、塗布体における支軸の軸心が容器の軸心に対して交差し得る位置に配設されていない場合には、中継体の軸心が容器の軸心に対して傾斜していない場合であっても、中継体は、中継体の回転中心点と塗布体の回転中心点との間を繋ぐ仮想直線よりも回転方向下流側に位置する塗布体の外周部に当接し得るように構成することができるものとなっている。
【0087】
インク収容体は、インクが含浸された中綿に限られるものではなく、インクが収容されたタンクすなわちインクタンクであってもよい。換言すれば、塗布具は、上述した実施形態のようないわゆる中綿式のものに限られるものではなく、容器の内部にインクタンクが配設されたいわゆる直液式のものであってもよい。
【0088】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0089】
A…容器
B…中綿(インク収容体)
C…中継体
D…塗布ローラー(塗布体)