(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】異常診断システム、異常診断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
G05B23/02 T
(21)【出願番号】P 2020206729
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】島田 美里
(72)【発明者】
【氏名】山川 崇尚
(72)【発明者】
【氏名】水野 遼
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿
(72)【発明者】
【氏名】則武 大輔
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-113820(JP,A)
【文献】特開2014-186543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備において機器を制御する制御装置における制御のための論理的な回路と前記回路における制御状態とを視覚的に表す回路画像であり異常診断の対象となる第1の回路画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された前記第1の回路画像と、当該第1の回路画像に対応する前記制御装置に関する設備が正常状態である場合の前記回路画像である正常回路画像との間にずれがあるか否かを判定し、ずれがあると判定された場合に、設備に異常が発生していると判定する異常判定部と、
設備に異常が発生した場合に、前記第1の回路画像において、異常の発生箇所を異常が発生していない箇所と異なる表示形態で表示するように制御を行う診断結果出力部と、
を有
し、
前記異常判定部は、
前記設備に異常が発生していると判定された場合に、前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異なるか否かを判定し、
前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異なると判定された場合に、前記制御装置において前記回路が改ざんされたと判定し、
前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異ならないと判定された場合に、前記回路において動作条件が満たされなかったことによる異常が発生したと判定し、
前記診断結果出力部は、改ざんされたと判定された箇所を、動作条件が満たされなかったことによる異常が発生したと判定された箇所の表示形態とは異なる表示形態で表示するように制御を行う、
異常診断システム。
【請求項2】
前記回路画像は、前記回路と前記回路を通過した信号の軌跡とを視覚的に表す画像である、
請求項
1に記載の異常診断システム。
【請求項3】
設備において機器を制御する制御装置における制御のための論理的な回路と前記回路における制御状態とを視覚的に表す回路画像であり異常診断の対象となる第1の回路画像を取得し、
取得された前記第1の回路画像と、当該第1の回路画像に対応する前記制御装置に関する設備が正常状態である場合の前記回路画像である正常回路画像との間にずれがあるか否かを判定し、ずれがあると判定された場合に、設備に異常が発生していると判定
し、
前記設備に異常が発生していると判定された場合に、前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異なるか否かを判定し、
前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異なると判定された場合に、前記制御装置において前記回路が改ざんされたと判定し、
前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異ならないと判定された場合に、前記回路において動作条件が満たされなかったことによる異常が発生したと判定し、
設備に異常が発生した場合に、前記第1の回路画像において、異常の発生箇所を異常が発生していない箇所と異なる表示形態で表示するように制御を行い、改ざんされたと判定された箇所を、動作条件が満たされなかったことによる異常が発生したと判定された箇所の表示形態とは異なる表示形態で表示するように制御を行う、
異常診断方法。
【請求項4】
設備において機器を制御する制御装置における制御のための論理的な回路と前記回路における制御状態とを視覚的に表す回路画像であり異常診断の対象となる第1の回路画像を取得するステップと、
取得された前記第1の回路画像と、当該第1の回路画像に対応する前記制御装置に関する設備が正常状態である場合の前記回路画像である正常回路画像との間にずれがあるか否かを判定し、ずれがあると判定された場合に、設備に異常が発生していると判定するステップと、
前記設備に異常が発生していると判定された場合に、前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異なるか否かを判定するステップと、
前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異なると判定された場合に、前記制御装置において前記回路が改ざんされたと判定するステップと、
前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異ならないと判定された場合に、前記回路において動作条件が満たされなかったことによる異常が発生したと判定するステップと、
設備に異常が発生した場合に、前記第1の回路画像において、異常の発生箇所を異常が発生していない箇所と異なる表示形態で表示するように制御を行い、改ざんされたと判定された箇所を、動作条件が満たされなかったことによる異常が発生したと判定された箇所の表示形態とは異なる表示形態で表示するように制御を行うステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常診断システム、異常診断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボット等の設備を用いて、車体等の加工工場において、溶接及び塗装等の予め定められた作業が行われる。設備は、モータ、ブレーキ及び減速機等の機器を用いて所定の動作を行う。このような設備においては、設備が稼働中に意図せずに停止するといったトラブルの発生を防止するため、設備の異常を診断することが望まれる。
【0003】
上記の技術に関連し、特許文献1は、生産工程に配置される制御対象を制御する制御装置を開示する。特許文献1にかかる制御装置は、制御対象に含まれる監視対象から取得された1または複数の状態値から1または複数の特徴量を算出する。特許文献1にかかる制御装置は、算出された特徴量に基づいて、監視対象に何らかの異常が発生している可能性を示す値であるスコアを算出する複数種類のアルゴリズムのうちの1つを実行する。特許文献1にかかる制御装置は、算出されるスコアに基づいて、監視対象に何らかの異常が発生しているか否かを示す判定結果を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工工場には多くの設備があるが、設備ごとに制御回路が異なることがある。したがって、設備の異常を診断する場合に、設備ごとに異なるアルゴリズムを設定する必要があった。したがって、特許文献1にかかる技術では、設備の異常を診断する場合に、設備ごとに異なる手法で異常を診断する必要があった。
【0006】
本発明は、設備ごとに異なる手法を用いることなく設備の異常を診断することが可能となる異常診断システム、異常診断方法及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる異常診断システムは、設備において機器を制御する制御装置における制御のための論理的な回路と前記回路における制御状態とを視覚的に表す回路画像であり異常診断の対象となる第1の回路画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得された前記第1の回路画像と、当該第1の回路画像に対応する前記制御装置に関する設備が正常状態である場合の前記回路画像である正常回路画像との間にずれがあるか否かを判定し、ずれがあると判定された場合に、設備に異常が発生していると判定する異常判定部と、を有する。
【0008】
また、本発明にかかる異常診断方法は、設備において機器を制御する制御装置における制御のための論理的な回路と前記回路における制御状態とを視覚的に表す回路画像であり異常診断の対象となる第1の回路画像を取得し、取得された前記第1の回路画像と、当該第1の回路画像に対応する前記制御装置に関する設備が正常状態である場合の前記回路画像である正常回路画像との間にずれがあるか否かを判定し、ずれがあると判定された場合に、設備に異常が発生していると判定する。
【0009】
また、本発明にかかるプログラムは、設備において機器を制御する制御装置における制御のための論理的な回路と前記回路における制御状態とを視覚的に表す回路画像であり異常診断の対象となる第1の回路画像を取得するステップと、取得された前記第1の回路画像と、当該第1の回路画像に対応する前記制御装置に関する設備が正常状態である場合の前記回路画像である正常回路画像との間にずれがあるか否かを判定し、ずれがあると判定された場合に、設備に異常が発生していると判定するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0010】
本発明では、画像の比較によって異常診断を行うことができるので、制御装置ごとに異なるアルゴリズムを設定することなく、各設備の異常を診断することができる。したがって、本発明は、設備ごとに異なる手法を用いることなく、設備の異常を診断することが可能となる。
【0011】
また、好ましくは、前記異常判定部は、前記設備に異常が発生していると判定された場合に、前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異なるか否かを判定し、前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異なると判定された場合に、前記制御装置において前記回路が改ざんされたと判定する。
回路は、通常、制御装置の制御中に変更されることはない。それにもかかわらず、回路が正常状態の場合と異なるということは、回路が改ざんされた可能性が極めて高いと考えられる。したがって、本発明は、上記のような構成により、回路の改ざんといった、異常内容についても診断することが可能となる。
【0012】
また、好ましくは、前記異常判定部は、前記設備に異常が発生していると判定された場合であって、前記第1の回路画像における前記回路が前記正常回路画像における前記回路と異ならないと判定されたときに、前記回路において動作条件が満たされなかったことによる異常が発生したと判定する。
第1の回路画像が正常回路画像と異なるが、互いに回路が異ならない場合とは、第1の回路画像における制御状態が正常回路画像における制御状態と異なる場合である。したがって、本発明は、上記のような構成により、回路において動作条件が満たされなかったことによる異常を、適切に検出することが可能となる。
【0013】
また、好ましくは、前記回路画像は、前記回路と前記回路を通過した信号の軌跡とを視覚的に表す画像である。
本発明は、このような構成により、作業者が制御装置における制御状態を容易に把握することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設備ごとに異なる手法を用いることなく設備の異常を診断することが可能となる異常診断システム、異常診断方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1にかかる異常診断システムを示す図である。
【
図2】実施の形態1にかかる制御装置において表示可能な回路画像を例示する図である。
【
図3】実施の形態1にかかる制御装置において表示可能な回路画像を例示する図である。
【
図4】実施の形態1にかかる異常診断装置の構成を示す図である。
【
図5】実施の形態1にかかる異常診断システム1によって実行される異常診断方法を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1にかかる異常診断方法を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1にかかる異常診断方法を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1にかかる異常診断方法を説明するための図である。
【
図9】実施の形態1にかかる異常診断方法を説明するための図である。
【
図10】比較例にかかる異常診断方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0017】
図1は、実施の形態1にかかる異常診断システム1を示す図である。異常診断システム1は、複数の設備10と、異常診断装置200とを有する。異常診断システム1は、例えば、複数の加工作業を行う工場に設けられている。
図1では、異常診断システム1は、設備10A~10Cの3つの設備10を有しているが、設備10の数は任意である。
【0018】
設備10は、機器20と、制御装置100とを有する。
図1では、設備10Aは、機器20Aと、制御装置100Aとを有する。設備10Bは、機器20Bと、制御装置100Bとを有する。設備10Cは、機器20Cと、制御装置100Cとを有する。機器20は、例えば、センサ等の検出器、及び、産業用ロボット等の加工機器等を含む。機器20は、例えば、車両の製造ラインの近傍等に設置されている。
【0019】
制御装置100は、設備10において、機器20を制御する。制御装置100は、検出器である機器20によって検出された検出情報を用いて、加工機器である機器20の動作を制御する。制御装置100は、例えば、各設備10の機器20の近傍に設けられている。各制御装置100は、それぞれ、有線又は無線のネットワーク2を介して、異常診断装置200と、通信可能に接続されている。
【0020】
異常診断装置200は、各設備10の異常を診断するように構成されている。異常診断装置200は、例えばコンピュータとしての機能を有する。異常診断装置200は、例えば、異常診断システム1が設けられた工場の中央監視室等に設置され得る。異常診断装置200については後述する。
【0021】
なお、設備10ごとに、互いに異なる加工作業が実行され得る。また、設備10ごとに、互いに異なる機器20が備えられ、互いに異なる種類の制御装置100が備えられている。したがって、機器20A~20Cは、互いに異なり得る。また、制御装置100A~100Cは、互いに異なる種類のものであり得る。例えば、制御装置100A~100Cは、互いに異なるメーカによって製造されたものであり得る。なお、複数の設備10は、1つの工場に備えられていなくてもよく、物理的に離れた複数の工場にそれぞれ備えられていてもよい。
【0022】
制御装置100は、例えばコンピュータとしての機能を有する。制御装置100は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)である。制御装置100は、機器20の近傍に設置された制御盤又は操作盤に組み込まれていてもよい。制御装置100は、ハードウェアとして、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、I/O(Input/Output)104及びUI(User Interface)105を有する。
【0023】
CPU101は、制御処理及び演算処理等を行う処理デバイス(プロセッサ)としての機能を有する。ROM102は、CPU101によって実行される制御プログラム及び演算プログラム等を記憶するストレージとしての機能を有する。RAM103は、処理データ等を一時的に記憶するメモリとしての機能を有する。I/O104は、入出力装置であり、機器20又は異常診断装置200等の外部からデータ及び信号を入力し、外部にデータ及び信号を出力する。UI105は、例えばキーボード等の入力デバイスと、例えばディスプレイ等の出力デバイスとから構成される。なお、UI105は、入力デバイスと出力デバイスとが一体となったタッチパネルとして構成されてもよい。また、UI105は、制御盤等で構成された制御装置100から物理的に独立していてもよい。なお、ROM102は、機器20を制御するための動作プログラムを格納できるように構成されている。
【0024】
ここで、制御装置100は、ROM102に格納された動作プログラムによって実現される論理的な回路(論理回路)によって、機器20を制御する。論理回路は、例えば、ラダー回路であるが、これに限定されない。また、論理回路は、プログラムコードを変更することによって変更され得る。しかしながら、論理回路を変更すると制御装置100の制御内容が変更されてしまうので、通常、論理回路は、制御装置100の制御内容を変更する場合でなければ、変更されないものである。また、制御装置100は、UI105を用いて、論理回路と論理回路における制御状態とを視覚的に表す回路画像を表示することができる。回路画像において、制御状態が論理回路に重畳されている。これにより、作業者(保全担当者)は、制御装置100に関する設備10の制御状態を視覚的に確認することができる。回路画像は、例えばラダー図であるが、これに限定されない。なお、制御状態とは、制御装置100がどのような制御を行っているかを示す。
【0025】
図2及び
図3は、実施の形態1にかかる制御装置100において表示可能な回路画像を例示する図である。
図2は、論理回路を表す回路画像を例示し、
図3は、論理回路に制御状態を重畳して表す回路画像を例示している。各回路画像50は、各制御装置100における論理回路60を視覚的に表す。回路画像50Aは、制御装置100Aにおける論理回路60Aを表す。回路画像50Bは、制御装置100Bにおける論理回路60Bを表す。回路画像50Cは、制御装置100Cにおける論理回路60Cを表す。なお、
図3は、各設備10が正常状態である場合の回路画像50を例示している。「正常状態」とは、異常が発生していない状態である。また、「異常」とは、設備10の保守、保全又は停止等が必要となる状態、及び、これらが必要となる予兆が発生した状態を含む。「異常」は、作業管理者(保全担当者)によって、適宜、決められてもよい。なお、以下、用語「画像」は、情報処理における処理対象としての、「画像を示す画像データ」も意味する。
【0026】
論理回路60は、複数の回路要素(母線、ラング、接点、出力コイル等)から構成されている。母線は、論理回路60の左右端の縦線で示されている。ラングは、母線間の横線で示されている。接点は、ラング上の、対向する1組の縦線で示されている。対向する1組の縦線のみで示された接点は、a接点である。また、対向する1組の縦線と斜線で示された接点は、b接点である。出力コイル(負荷)は、ラング上の円形で示されている。また、
図3において、各回路画像50は、論理回路60(ラング)を通過した信号の軌跡である信号軌跡52を、視覚的に表している。また、各回路画像50は、正常シンボル54を、出力コイルを示す回路要素上に視覚的に表している。正常シンボル54は、信号軌跡52(ラング)において出力コイルが適切に作動したことを示す。信号軌跡52及び正常シンボル54は、論理回路60における制御状態を示している。
【0027】
例えば、回路画像50の背景が白色である場合、回路画像50において、論理回路60は、細い黒色の線で表されている。また、回路画像50において、信号軌跡52及び正常シンボル54は、例えば緑色等の、正常であることを示す表示形態で表されている。なお、正常であることを示す表示形態は、緑色に限定されない。信号軌跡52及び正常シンボル54は、論理回路60の表示形態との違いが視覚的に明らかな表示形態で、表され得る。
図3に示すように、信号軌跡52を太い実線で示し、正常シンボル54を所定のハッチングで示してもよい。
【0028】
図4は、実施の形態1にかかる異常診断装置200の構成を示す図である。異常診断装置200は、ハードウェア構成として、CPU201、ROM202、RAM203、I/O204及びUI205を有する。
【0029】
CPU201は、制御処理及び演算処理等を行う処理デバイス(プロセッサ)としての機能を有する。ROM202は、CPU201によって実行される制御プログラム及び演算プログラム等を記憶するストレージとしての機能を有する。RAM203は、処理データ等を一時的に記憶するメモリとしての機能を有する。I/O204は、入出力装置であり、制御装置100等の外部からデータ及び信号を入力し、外部にデータ及び信号を出力する。UI205は、例えばキーボード等の入力デバイスと、例えばディスプレイ等の出力デバイスとから構成される。なお、UI205は、入力デバイスと出力デバイスとが一体となったタッチパネルとして構成されてもよい。
【0030】
また、異常診断装置200は、構成要素として、画像格納部210、画像取得部212、異常判定部220、及び診断結果出力部230を有する。なお、異常診断装置200の各構成要素の1つ以上は、異常診断装置200とは別の装置(例えば制御装置100)によって実現されてもよい。異常診断装置200の各構成要素は、物理的に1つの装置によって実現されることに限定されず、例えばクラウドコンピューティング等により複数の装置によって実現されてもよい。異常診断装置200の各構成要素の機能の説明は後述する。
【0031】
なお、これらの構成要素は、CPU201がROM202に記憶されたプログラムを実行することによって実現可能である。また、異常診断装置200は、必要なプログラムを任意の不揮発性記録媒体に記録しておき、必要に応じてそのプログラムをインストールするようにしてもよい。なお、異常診断装置200の各構成要素は、上記のようにソフトウェアによって実現されることに限定されず、何らかの回路素子等のハードウェアによって実現されてもよい。また、異常診断装置200の各構成要素は、例えばFPGA(field-programmable gate array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、上記の各構成要素から構成されるプログラムを実現してもよい。
【0032】
画像格納部210は、各制御装置100のそれぞれについて、それぞれの制御装置100に対応する設備10が正常状態である場合の回路画像50を、正常回路画像(正常回路画像データ)として格納する。ここで、正常回路画像は、制御装置100ごとに異なり得る。正常回路画像は、制御装置100ごとに準備され、制御装置100ごとに格納され得る。
【0033】
正常回路画像は、例えば、設備10(制御装置100)が正常状態である場合の回路画像50のパターンを予め記憶することによって、取得されてもよい。例えば、正常回路画像は、設備10(制御装置100)が正常状態である場合の回路画像50の全てのパターンを予め記憶することによって、取得されてもよい。また、正常回路画像は、例えば、設備10が正常状態である場合の回路画像50を予め機械学習等によって学習することによって、取得されてもよい。この場合、正常回路画像は、学習データに対応する。なお、各設備10(各制御装置100)が複数の加工工程を実行し、各加工工程で正常状態の回路画像50が異なる場合、正常回路画像は、制御工程ごとに複数存在し得る。なお、この場合でも、ある制御装置100についての複数の正常回路画像において、信号軌跡52及び正常シンボル54(制御状態)は互いに異なり得るが、論理回路60は同じであり得る。
【0034】
画像取得部212は、異常診断の対象となる回路画像50である診断対象回路画像(第1の回路画像)を、各制御装置100から取得する。具体的には、画像取得部212は、I/O104を制御して、制御装置100から、ネットワーク2を介して、診断対象回路画像(診断対象回路画像データ)を受信する。この場合、制御装置100は、回路画像を、都度、I/O104を用いて、ネットワーク2を介して、異常診断装置200に送信するようにしてもよい。
【0035】
なお、画像取得部212は、制御装置100で現在表示されている回路画像50を、診断対象回路画像として取得してもよい。また、画像取得部212は、常時、診断対象回路画像を取得してもよい。あるいは、画像取得部212は、予め定められた時刻又は予め定められた期間ごとに、診断対象回路画像を取得してもよい。
【0036】
異常判定部220は、診断対象回路画像と正常回路画像とを用いて、設備10(制御装置100)に異常が発生しているか否かを判定する。具体的には、異常判定部220は、ある制御装置100に関する診断対象回路画像とその制御装置100に関する正常回路画像との間にずれがあるか否かを判定する。そして、異常判定部220は、ずれがあると判定された場合に、その制御装置100に関する設備10に異常が発生していると判定する。
【0037】
また、異常判定部220は、設備10に異常が発生していると判定した場合に、診断対象回路画像における論理回路60が正常回路画像における論理回路60と異なるか否かを判定する。そして、異常判定部220は、診断対象回路画像における論理回路60が正常回路画像における論理回路60と異なると判定された場合に、制御装置100において論理回路60が改ざんされたと判定する。一方、異常判定部220は、診断対象回路画像における論理回路60が正常回路画像における論理回路60と異ならないと判定された場合に、設備の動作不良による異常が発生したと判定する。言い換えると、異常判定部220は、設備の動作不良により論理回路60において動作条件が満たされなかったことによる異常が発生したと判定する。
【0038】
診断結果出力部230は、異常判定部220の判定結果である診断結果(異常診断の結果)を出力する。具体的には、診断結果出力部230は、UI205に、診断結果を表示させる。あるいは、診断結果出力部230は、I/O204を制御して、診断結果を示すデータを、診断対象の制御装置100に出力してもよい。これにより、制御装置100のUI105に診断結果が表示されてもよい。
【0039】
図5は、実施の形態1にかかる異常診断システム1によって実行される異常診断方法を示すフローチャートである。
図5の処理は、主に、異常診断装置200によって実行される。また、
図5に示す処理(異常診断処理)は、各制御装置100それぞれについて独立して実行され得る。
図5に示す処理は、各制御装置100それぞれについて、並行して実行されてもよい。以下の説明では、適宜、診断対象を設備10A(制御装置100A)として、制御装置100Aについての異常診断処理について説明するが、他の制御装置100についても同様である。
【0040】
まず、画像格納部210は、正常回路画像を格納する(ステップS100)。なお、上述したように、画像格納部210は、制御装置100A~100Cそれぞれについて、別個に、正常回路画像を格納する。この処理は、異常診断の前段階で行われる。
【0041】
画像取得部212は、制御装置100から診断対象回路画像を取得する(ステップS102)。例えば、異常診断装置200が制御装置100A(設備10A)についての異常診断を行う場合、画像取得部212は、制御装置100Aから、制御装置100Aで表示されている回路画像50を、診断対象回路画像として受信する。他の制御装置100についても同様である。
【0042】
異常判定部220は、診断対象回路画像と正常回路画像とを比較する(ステップS104)。例えば、異常診断装置200が制御装置100A(設備10A)についての異常診断を行う場合、異常判定部220は、画像格納部210から、制御装置100Aに関する正常回路画像を抽出する。そして、異常判定部220は、抽出された制御装置100Aに関する正常回路画像と、制御装置100Aから取得された診断対象回路画像とを比較する。
【0043】
異常判定部220は、診断対象回路画像と正常回路画像との間にずれがあるか否かを判定する(ステップS106)。つまり、異常判定部220は、診断対象回路画像と正常回路画像とが一致するか否かを判定する。異常判定部220は、診断対象回路画像と正常回路画像とが一致する場合、診断対象回路画像と正常回路画像との間にずれがないと判定する。一方、異常判定部220は、診断対象回路画像と正常回路画像とが一致しない場合、診断対象回路画像と正常回路画像との間にずれがあると判定する。なお、正常回路画像が複数ある場合、異常判定部220は、診断対象回路画像が、その診断対象回路画像が取得されたときの加工工程に対応する正常回路画像と一致するか否かを、判定してもよい。あるいは、異常判定部220は、診断対象回路画像が複数の正常回路画像のうちのいずれかと一致するか否かを判定し、診断対象回路画像が複数の正常回路画像のうちのいずれかと一致する場合に、診断対象回路画像と正常回路画像とが一致すると判定してもよい。
【0044】
なお、診断対象回路画像と正常回路画像とが一致するか否かの判定方法については、例えば、以下の方法を用いてもよい。例えば、異常判定部220は、両者の回路画像50(診断対象回路画像及び正常回路画像)において、対応する座標(同じ座標)の画素値が全ての座標(画素)について互いに一致する場合に、診断対象回路画像と正常回路画像とが一致すると判定してもよい。あるいは、異常判定部220は、両者の回路画像50において、同じ座標の画素値が一致しない画素の数が予め定められた閾値以下である場合に、診断対象回路画像と正常回路画像とが一致すると判定してもよい。あるいは、異常判定部220は、両者の回路画像50において、同じ座標の画素値の差分を算出し、全ての座標(画素)について差分が予め定められた閾値以下である場合に、診断対象回路画像と正常回路画像とが一致すると判定してもよい。あるいは、異常判定部220は、両者の回路画像50において、同じ座標の画素値の差分を算出し、差分が予め定められた閾値以下である画素の数が予め定められた閾値以下である場合に、診断対象回路画像と正常回路画像とが一致すると判定してもよい。あるいは、異常判定部220は、両者の回路画像50において、同じ座標の画素値の差分を算出し、差分の絶対値の和(差分の二乗平均平方根)が予め定められた閾値以下である場合に、診断対象回路画像と正常回路画像とが一致すると判定してもよい。なお、上述した「閾値」は、診断対象回路画像と正常回路画像との差がノイズレベルの誤差のみの場合である場合であっても実質的に一致するように設けるものであるので、これらの閾値は、非常に小さいものである。つまり、両者の回路画像50の論理回路及び制御状態が互いに異なる場合、上述した差分又は画素数といったパラメータが閾値を超えるわけではない。逆に言えば、上述した閾値は、両者の回路画像50の論理回路及び制御状態が互いに異なる場合にパラメータが当該閾値を超えるように、設定される。
【0045】
診断対象回路画像と正常回路画像との間にずれがないと判定された場合(ステップS106のNO)、異常判定部220は、診断対象の設備10(制御装置100)が正常状態であると判定する(ステップS108)。そして、処理フローはS102に戻り、診断対象の設備10(制御装置100)について、異常診断処理が繰り返される。
【0046】
一方、診断対象回路画像と正常回路画像との間にずれがあると判定された場合(S106のYES)、制御装置100は、正常状態と異なる制御を行っている可能性が極めて高い。したがって、異常判定部220は、診断対象の設備10(制御装置100)について、異常が発生していると判定する(ステップS110)。そして、以下の処理により、異常判定部220は、異常の種類(論理回路60の改ざん又は設備10の動作不良)を判定する。
【0047】
異常判定部220は、診断対象回路画像における論理回路60が正常回路画像における論理回路60と異なるか否かを判定する(ステップS112)。具体的には、診断対象が設備10A(制御装置100A)である場合、異常判定部220は、制御装置100Aから取得された診断対象回路画像における論理回路60と、制御装置100Aに対応する正常回路画像における論理回路60とを比較する。そして、異常判定部220は、両者の論理回路60の画像が互いに異なるか否かを判定する。つまり、S112の処理では、信号軌跡52及び正常シンボル54は、比較の対象から除外されている。なお、論理回路60の画像が互いに異なるか否かの判定方法は、S106で用いた方法と実質的に同じであってもよい。
【0048】
診断対象回路画像における論理回路60が正常回路画像における論理回路60と異なると判定された場合(S112のYES)、異常判定部220は、制御装置100において論理回路60が改ざんされたと判定する(ステップS114)。すなわち、通常、ある制御装置100について、制御内容を変更しない限り、論理回路60は変更されない。それにも関わらず、診断対象回路画像の論理回路60が正常回路画像の論理回路60と異なるということは、その制御装置100の論理回路60が改ざんされた可能性が極めて高いということである。論理回路60の改ざんは、例えば、悪意の第三者により、制御装置100に格納された、論理回路60を実現するプログラムコードを改ざんすることによって実行され得る。また、論理回路60の改ざんは、例えば、ネットワークを経由したクラッキング(サイバー攻撃)によって実行され得る。
【0049】
また、異常判定部220は、診断対象回路画像の論理回路60において正常回路画像の論理回路60と異なる箇所を、異常が発生した異常発生箇所と判定する。異常判定部220は、診断結果(判定結果)を、診断結果出力部230に出力する。なお、診断結果には、異常発生箇所を示す情報が含まれている。
【0050】
診断結果出力部230は、異常発生箇所を提示し、異常が発生したことの警告を出力する(ステップS116)。具体的には、診断対象が設備10A(制御装置100A)である場合、診断結果出力部230は、設備10A(制御装置100A)に異常が発生したことを示す警告を、UI205に出力させる。診断結果出力部230は、警告を示す画像を、ディスプレイであるUI205に表示させてもよい。あるいは、診断結果出力部230は、警告を示す音声を、スピーカであるUI205に出力させてもよい。また、診断結果出力部230は、制御装置100AのUI105に、警告を出力させてもよい(後述する異常発生箇所についても同様)。
【0051】
また、診断結果出力部230は、警告とともに、異常発生箇所を、UI205に出力させる。例えば、診断結果出力部230は、診断対象回路画像において、正常回路画像の論理回路60と異なる箇所を、信号軌跡52及び正常シンボル54とは異なる表示形態で表示するように制御を行う。例えば、診断結果出力部230は、診断対象回路画像において、正常回路画像の論理回路60と異なる箇所を、赤色等の警告色で表示するようにしてもよい。
【0052】
このようにして診断結果を出力することにより、作業者は、ある制御装置100で論理回路60の改ざんが発生したこと、及び、論理回路60のどの箇所が改ざんされたのかを、容易に把握することができる。したがって、作業者は、改ざんされた論理回路60を修正し、セキュリティの強化等の改ざんの防止策を講じることができる。
そして、処理フローはS102に戻り、診断対象の設備10(制御装置100)について、異常診断処理が繰り返される。
【0053】
一方、診断対象回路画像における論理回路60が正常回路画像における論理回路60と異ならないと判定された場合(S112のNO)、異常判定部220は、設備10の動作不良による異常が発生したと判定する(ステップS124)。つまり、異常判定部220は、設備の動作不良により論理回路60において動作条件が満たされなかったことによる異常が発生したと判定する。この場合、診断対象回路画像において正常回路画像と異なる箇所は、制御状態、つまり信号軌跡52(及び正常シンボル54)である。信号軌跡52(及び正常シンボル54)が正常回路画像と異なるということは、正常状態では満たされるはずの動作条件が満たされないということである。そして、動作条件は、設備10(センサ等)の動作によるものである。したがって、異常判定部220は、診断対象回路画像において正常回路画像と異なる箇所が信号軌跡52(及び正常シンボル54)である場合に、設備の動作不良により論理回路60において動作条件が満たされなかったことによる異常が発生したと判定する。動作不良は、例えば、センサである機器20の検出情報の異常、機器20の故障、搬送装置である機器20の搬送物の落下、又は機器20と制御装置100との間の配線の断線等によって発生し得る。
【0054】
また、異常判定部220は、診断対象回路画像において正常回路画像と異なる箇所を、異常が発生した異常発生箇所と判定する。異常判定部220は、診断結果(判定結果)を、診断結果出力部230に出力する。なお、診断結果には、異常発生箇所を示す情報が含まれている。
【0055】
診断結果出力部230は、異常発生箇所を提示し、異常が発生したことの警告を出力する(ステップS126)。具体的には、S116の処理と同様に、診断対象が設備10A(制御装置100A)である場合、診断結果出力部230は、設備10A(制御装置100A)に異常が発生したことを示す警告を、UI205に出力させる。また、診断結果出力部230は、警告とともに、異常発生箇所を、UI205に出力させる。例えば、診断結果出力部230は、診断対象回路画像において、正常回路画像の信号軌跡52及び正常シンボル54と異なる箇所を、信号軌跡52及び正常シンボル54とは異なる表示形態で表示するように制御を行う。例えば、診断結果出力部230は、診断対象回路画像において、正常回路画像と異なる箇所を、赤色等の警告色で表示するようにしてもよい。
【0056】
このようにして診断結果を出力することにより、作業者は、ある制御装置100に関する設備不良が発生したこと、及び、どの機器20に関して動作不良が発生したのかを、容易に把握することができる。したがって、作業者は、動作不良に対して適切な対策を講じることができる。
そして、処理フローはS102に戻り、診断対象の設備10(制御装置100)について、異常診断処理が繰り返される。
【0057】
図6~
図9は、実施の形態1にかかる異常診断方法を説明するための図である。
図6~
図9を用いて、正常回路画像と診断対象回路画像との比較について説明する。
図6~
図8では、制御装置100Aにおける異常診断について説明する。
【0058】
図6には、制御装置100Aにおける正常回路画像50Axと、制御装置100Aのある時点における診断対象回路画像50Aaとが示されている。正常回路画像50Axには、論理回路60Axと、信号軌跡52Ax,52Bxと、正常シンボル54Ax,54Bxとが示されている。また、診断対象回路画像50Aaには、論理回路60Aaと、信号軌跡52Aa,52Baと、正常シンボル54Aaと、異常シンボル56Aa,56Baとが示されている。異常シンボル56は、論理回路60における制御状態を示している。
【0059】
ここで、異常シンボル56は、論理回路60上の異常を示している。例えば、異常シンボル56は、信号の入出力に関する異常を示している。例えば、異常シンボル56がa接点を示す回路要素上に示される場合は、異常シンボル56は、この接点に対応する入力が得られるべきであるにも関わらず得られなかったためオンになっていないという異常を示す。また、例えば、異常シンボル56がb接点を示す回路要素上に示される場合は、異常シンボル56は、この接点に対応する入力が得られるべきでないにも関わらず得られたためオンになっていないという異常を示す。また、例えば、異常シンボル56が出力コイルを示す回路要素上に示される場合は、異常シンボル56は、この出力コイルが作動すべきであるにも関わらず作動しなかったという異常を示す。異常シンボル56は、例えば赤色等の、異常であることを示す表示形態で表されている。なお、異常であることを示す表示形態は、赤色に限定されない。異常シンボル56は、信号軌跡52及び正常シンボル54の表示形態との違いが視覚的に明らかな表示形態で、表され得る。
【0060】
図6の例において、異常判定部220は、正常回路画像50Axと診断対象回路画像50Aaとを比較し(
図5のS104)、両者にずれがあるので設備10Aに異常が発生したと判定する(S106のYES,S110)。また、異常判定部220は、正常回路画像50Axの論理回路60Axと診断対象回路画像50Aaの論理回路60Aaとを比較して、両者が一致すると判定する(S112のNO)。したがって、異常判定部220は、論理回路60Aの改ざんの異常ではなく、動作不良による異常が発生したと判定する(S124)。
【0061】
ここで、異常判定部220は、正常回路画像50Axにおける制御状態と、診断対象回路画像50Aaにおける制御状態とを比較する。具体的には、異常判定部220は、正常回路画像50Axの信号軌跡52Ax,52Bx及び正常シンボル54Ax,54Bxと、診断対象回路画像50Aaの信号軌跡52Aa,52Ba、正常シンボル54Aa及び異常シンボル56Aa,56Baとを比較する。そして、異常判定部220は、信号軌跡52Axと信号軌跡52Aaとは一致するが、信号軌跡52Baは信号軌跡52Bxと一致しないと判定する。また、異常判定部220は、正常シンボル54Axと正常シンボル54Aaとは一致するが、正常シンボル54Bxと一致するシンボルが診断対象回路画像50Aaにないと判定する。また、異常判定部220は、異常シンボル56Aa,56Baに対応するシンボルが正常回路画像50Axにないと判定する。
【0062】
異常判定部220は、上述した正常回路画像50Axと診断対象回路画像50Aaとの差分を異常発生箇所として、診断結果を診断結果出力部230に出力する。診断結果出力部230は、診断対象回路画像50Aaにおいて正常回路画像50Axと異なる箇所の少なくとも一部に、異常発生箇所を示す異常発生箇所マーク70Aa,70Baを表示させてもよい(S126)。異常発生箇所マーク70Aa,70Baは、例えば赤色等で示されてもよい。
【0063】
図7には、制御装置100Aにおける正常回路画像50Axと、制御装置100Aのある時点における診断対象回路画像50Abとが示されている。正常回路画像50Axは、
図6に示したものと同じである。診断対象回路画像50Abには、論理回路60Abと、信号軌跡52Ab,52Bbと、正常シンボル54Abと、異常シンボル56Ab,56Bbとが示されている。
【0064】
図7の例において、異常判定部220は、正常回路画像50Axと診断対象回路画像50Abとを比較し(
図5のS104)、両者にずれがあるので設備10Aに異常が発生したと判定する(S106のYES,S110)。また、異常判定部220は、正常回路画像50Axの論理回路60Axと診断対象回路画像50Abの論理回路60Abとを比較して、両者が一致しないと判定する(S112のYES)。したがって、異常判定部220は、論理回路60Aの改ざんの異常が発生したと判定する(S114)。
【0065】
ここで、異常判定部220は、論理回路60Abに、論理回路60Axにはない回路要素62Abが存在すると判定する。回路要素62Abは、改ざんによって付加された回路要素である。なお、
図7の例では、接点に対応する回路要素62Abがオンになっていないので、この回路要素62Abに異常シンボル56Abが重畳され、回路要素62Abで信号軌跡52Bbが途切れている状態が示されている。また、回路要素62Abと同じラングの出力コイルには、
図6の場合と同様に、異常シンボル56Bbが重畳されている。つまり、
図7の例では、論理回路60の改ざんに加えて、動作条件が満たされなかったことによる異常も発生している。
【0066】
異常判定部220は、上述した正常回路画像50Axの論理回路60Axと診断対象回路画像50Abの論理回路60Abとの差分を異常発生箇所として、診断結果を診断結果出力部230に出力する。診断結果出力部230は、回路要素62Abに、異常発生箇所を示す異常発生箇所マーク70Abを表示させてもよい(S116)。異常発生箇所マーク70Abは、例えば赤色等で示されてもよい。さらに、
図7の例で発生した異常の種類(論理回路の改ざん)は、
図6の例で発生した異常の種類(動作不良)と異なる。したがって、異常発生箇所マーク70Abは、
図6に示した異常発生箇所マーク70Aa,70Baと異なる表示形態で表示されてもよい。例えば、改ざんによる異常は、悪意の第三者の介入があったという観点から、動作不良による異常よりも深刻な事態であるとも考えられる。したがって、異常発生箇所マーク70Abは、
図6に示した異常発生箇所マーク70Aa,70Baよりも、より目立つ表示形態で表示されてもよい。例えば、異常発生箇所マーク70Abは、点滅するようにして表示されてもよい。
【0067】
図8には、制御装置100Aにおける正常回路画像50Axと、制御装置100Aのある時点における診断対象回路画像50Acとが示されている。正常回路画像50Axは、
図6に示したものと同じである。診断対象回路画像50Acには、論理回路60Acと、信号軌跡52Ac,52Bcと、正常シンボル54Ac,54Bcとが示されている。
【0068】
図8の例において、異常判定部220は、正常回路画像50Axと診断対象回路画像50Acとを比較し(
図5のS104)、両者にずれがあるので設備10Aに異常が発生したと判定する(S106のYES,S110)。また、異常判定部220は、正常回路画像50Axの論理回路60Axと診断対象回路画像50Acの論理回路60Acとを比較して、両者が一致しないと判定する(S112のYES)。したがって、異常判定部220は、論理回路60Aの改ざんの異常が発生したと判定する(S114)。
【0069】
ここで、異常判定部220は、正常回路画像50Axの論理回路60Axと診断対象回路画像50Acの論理回路60Acとを比較する。そして、異常判定部220は、論理回路60Acに、論理回路60Axにはない回路要素62Acが存在すると判定する。回路要素62Acは、改ざんによって付加された回路要素である。なお、
図8の例では、接点に対応する回路要素62Acがオンになっているので、この回路要素62Acを信号軌跡52Bcが通過した状態が示されている。したがって、回路要素62Acと同じラングの出力コイルには、正常シンボル54Bcが重畳されている。つまり、
図8の例では、
図7の例と異なり、動作条件が満たされなかったことによる異常は発生していない。したがって、診断対象回路画像50Acの制御状態は、正常回路画像50Axの制御状態と一致している。
【0070】
異常判定部220は、上述した正常回路画像50Axの論理回路60Axと診断対象回路画像50Acの論理回路60Acとの差分を異常発生箇所として、診断結果を診断結果出力部230に出力する。診断結果出力部230は、回路要素62Acに、異常発生箇所を示す異常発生箇所マーク70Acを表示させてもよい(S116)。異常発生箇所マーク70Acは、例えば赤色等で示されてもよい。また、
図7の場合と同様に、異常発生箇所マーク70Acは、
図6に示した異常発生箇所マーク70Aa,70Baと異なる表示形態で表示されてもよい。
【0071】
図8の例では、論理回路60の改ざんは発生しているが、動作条件が満たされなかったことによる異常は発生していない。実施の形態1においては、このような場合であっても、設備10(制御装置100)の異常を、適切に診断することが可能である。したがって、作業者は、制御装置100が、見かけ上、正常に動作していても、論理回路60の改ざんが発生したことを把握することができる。
【0072】
図9は、異常診断装置200が制御装置100A~100Cそれぞれについて異常診断を行う場合を例示した図である。制御装置100A(設備10A)については、
図6に例示した場合と同様であるので、説明を省略する。制御装置100B(設備10B)については、異常判定部220は、正常回路画像50Bxと診断対象回路画像50Baとを比較し(
図5のS104)、両者にずれがないので設備10Bは正常状態であると判定する(S106のNO,S108)。
【0073】
制御装置100C(設備10C)については、異常判定部220は、正常回路画像50Cxと診断対象回路画像50Caとを比較し(
図5のS104)、両者にずれがあるので設備10Cに異常が発生したと判定する(S106のYES,S110)。また、異常判定部220は、正常回路画像50Cxの論理回路60Cxと診断対象回路画像50Caの論理回路60Caとを比較して、両者が一致しないと判定する(S112のYES)。したがって、異常判定部220は、論理回路60Cの改ざんの異常が発生したと判定する(S114)。具体的には、異常判定部220は、診断対象回路画像50Caの論理回路60Caに、正常回路画像50Cxの論理回路60Cxにはあった回路要素62Cxが存在しないと判定する。回路要素62Cxは、改ざんによって消去された回路要素である。この場合、診断結果出力部230は、診断対象回路画像50Ca(論理回路60Ca)の回路要素62Cxが消去された箇所に、異常発生箇所を示す異常発生箇所マーク70Caを表示させてもよい(S116)。
【0074】
(比較例)
図10は、比較例にかかる異常診断方法を説明するための図である。比較例では、各制御装置100で異常を検知するためには、制御装置100ごとに、論理回路60に異常検知回路90を組み込む必要がある。
図10に例示するように、制御装置100Aにかかる論理回路60Aに、異常検知回路90Aが組み込まれている。同様に、制御装置100Bにかかる論理回路60Bに、異常検知回路90Bが組み込まれている。制御装置100Cにかかる論理回路60Cに、異常検知回路90Cが組み込まれている。
【0075】
ここで、論理回路60は、制御装置100ごとに異なり得る。そして、制御装置100ごとに、論理回路60を記述するプログラミング言語も異なり得る。したがって、異常検知回路90A~90Cは、互いに異なり得る。言い換えると、比較例において各制御装置100で異常診断を行う場合、制御装置100ごとに異なるアルゴリズムで異常検知回路90を作成する必要がある。そして、制御装置100ごとに異なる異常検知回路90を準備するのは非常に煩雑である。
【0076】
これに対し、実施の形態1にかかる異常診断システム1は、各制御装置100の診断対象回路画像を取得して、診断対象回路画像と、その制御装置100の正常回路画像とを比較するように構成されている。そして、異常診断システム1は、診断対象回路画像と正常回路画像との間にずれがある場合に、異常が発生していると判定するように構成されている。実施の形態1では、このように、画像の比較によって異常診断を行うことができるので、制御装置100(設備10)ごとに異なるアルゴリズムを設定することなく、各制御装置100(設備10)の異常を診断することができる。言い換えると、制御装置100ごとに正常回路画像を予め準備しておき、各制御装置100から取得された診断対象回路画像と対応する制御装置100の正常回路画像とを比較することで、異常を診断することができる。したがって、実施の形態1にかかる異常診断システム1は、設備10ごとに異なる手法を用いることなく、設備10の異常を診断することが可能となる。
【0077】
また、実施の形態1にかかる異常診断システム1は、制御装置100とは別個の装置である異常診断装置200を有する。そして、異常診断装置200が、各制御装置100から診断対象回路画像を取得して、診断対象回路画像と正常回路画像とを比較して、異常が発生しているか否かを判定する。ここで、異常診断装置200は、工場の作業現場から離れた中央監視室等に設置され得る。したがって、異常診断装置200を処理能力の高いコンピュータとすることは、比較的容易である。したがって、上記のような構成により、制御装置100がPLCのような処理能力が比較的低い装置である場合であっても、適切に、異常を診断することが可能となる。
【0078】
また、実施の形態1にかかる異常診断システム1は、設備10に異常が発生していると判定された場合に、診断対象回路画像における論理回路が正常回路画像における論理回路と異なるか否かを判定するように構成されている。そして、異常診断システム1は、診断対象回路画像における論理回路が正常回路画像における論理回路と異なると判定された場合に、制御装置100において論理回路が改ざんされたと判定する。上述したように、論理回路は、通常、制御装置100の制御中に変更されることはない。それにもかかわらず、論理回路が正常状態の場合と異なる、つまり正常状態の論理回路から変更されたということは、論理回路が改ざんされた可能性が極めて高いと考えられる。したがって、上記のような構成により、論理回路の改ざんといった、異常内容についても診断することが可能となる。さらに、論理回路が改ざんされても回路画像上で異常が発生していない(異常シンボルが表示されていない)場合であっても、論理回路の改ざんという異常を検出することが可能となる。
【0079】
また、実施の形態1にかかる異常診断システム1は、設備10に異常が発生していると判定された場合であって、診断対象回路画像における論理回路が正常回路画像における論理回路と異ならないと判定されたときに、論理回路において動作条件が満たされなかったことによる異常が発生したと判定するように構成されている。診断対象回路画像が正常回路画像と異なるが、互いに論理回路が異ならない場合とは、診断対象回路画像における制御状態が正常回路画像における制御状態と異なる場合である。したがって、上記のような構成により、論理回路において動作条件が満たされなかったことによる異常、つまり、設備10の動作不良による異常を、適切に検出することが可能となる。
【0080】
また、実施の形態1にかかる異常診断システム1では、回路画像は、論理回路と、論理回路を通過した信号の軌跡である信号軌跡とを視覚的に表す画像である。このような構成により、作業者が制御装置100における制御状態を容易に把握することが可能となる。
【0081】
(変形例)
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述したフローチャートの各ステップの順序は、適宜変更可能である。また、また、フローチャートの各ステップの1つ以上は、省略されてもよい。例えば、
図5のフローチャートにおいて、S116及びS126の処理は省略されてもよい。また、異常の内容(論理回路の改ざん又は設備不良)の判定ではなく単に異常が発生しているかどうかのみを判定する場合は、S112以降の処理はなくてもよい。
【0082】
また、上述した実施の形態1では、
図5に示した異常診断方法を異常診断装置200が行うとしたが、このような構成に限られない。各制御装置100が、各制御装置100(設備10)についての異常診断を行ってもよい。しかしながら、PLC等の制御装置100の処理能力は、異常診断装置200の処理能力よりも低いことが多い。したがって、異常診断装置200が各制御装置100について異常診断を行うようにすることで、より効率的に異常診断を行うことができる。
【0083】
また、上述した実施の形態では、正常回路画像は、論理回路と、制御状態に対応する信号軌跡及び正常シンボルとから構成されるとしたが、このような構成に限られない。正常回路画像に含まれる制御状態は、異常を示してもよい。つまり、正常回路画像に異常シンボルが示されていてもよい。
【0084】
また、上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0085】
1・・・異常診断システム、2・・・ネットワーク、20・・・機器、50・・・回路画像、52・・・信号軌跡、54・・・正常シンボル、56・・・異常シンボル、60・・・論理回路、62・・・回路要素、70・・・異常発生箇所マーク、100・・・制御装置、200・・・異常診断装置、210・・・画像格納部、212・・・画像取得部、220・・・異常判定部、226・・・指標取得部、228・・・重要度判定部、230・・・診断結果出力部、232・・・点検時期決定部