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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】電力増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/20 20060101AFI20240903BHJP
   H03F 1/52 20060101ALN20240903BHJP
   H03G 11/02 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
H03F3/20
H03F1/52
H03G11/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020210054
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096838
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】筒井 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将夫
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0368280(US,A1)
【文献】特開2005-236259(JP,A)
【文献】特開2018-186144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0232471(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0226367(US,A1)
【文献】特開2016-065797(JP,A)
【文献】特表平09-511120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
H03G 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体領域を含む第1部材と、
前記第1部材の一つの面である第1面に面接触して接合され、化合物半導体系の半導体領域を含む第2部材と
を備え、
前記第2部材は、
化合物半導体系のトランジスタを含む増幅回路と、
多段に接続されて、前記増幅回路の出力ポートとグランドとの間に、前記出力ポートからグランドに向かう向きが順方向になるように挿入された複数のクランプダイオードと
を含み、
前記第1部材は、
多段に接続された前記複数のクランプダイオードの途中の点である引出点とグランドとの間に接続されたスイッチと、
前記トランジスタの温度を測定する温度センサと、
前記温度センサの測定値が第1しきい値以下になったら前記スイッチをオンにし、前記スイッチがオンのときに前記温度センサの測定値が第2しきい値以上になったら前記スイッチをオフに戻すスイッチ制御回路と
を含み、
前記引出点と前記スイッチとは、前記第1部材の前記第1面から前記第2部材の表面まで至る層間絶縁膜の上に配置された金属パターンからなる部材間接続配線を含む経路、または前記第1部材と前記第2部材とが接合された界面と交差する経路を介して接続されている電力増幅器。
【請求項2】
前記温度センサは、平面視において前記第2部材と重なる位置に配置されている請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項3】
前記第1部材の前記第1面、及び前記第2部材の表面のそれぞれから突出する導体突起を、さらに備えた請求項1または2に記載の電力増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末に搭載される主要部品の一つに高周波電力増幅器がある。携帯端末の無線伝送容量を大容量化するために、キャリアアグリゲーション(CA)等の多くの周波数バンドを利用する無線通信規格が実用化されている。使用される周波数バンドの増加に付随して、RFフロントエンドの回路構成が複雑になっている。さらに、第5世代移動通信システム(5G)のサブ6GHz帯の周波数バンドを使用可能にするために、RFフロントエンドの回路構成がさらに複雑になる。
【0003】
RFフロントエンドの回路構成が複雑になると、高周波電力増幅器からアンテナまでの伝送線路に挿入されるフィルタ、スイッチ等による損失が増大する。その結果、高周波電力増幅器には、複数の周波数バンドへの対応の他に、高出力化が求められることになる。
【0004】
高周波電力増幅器の出力電流及び出力電圧は、負荷の位相変動に合わせて大きく変動する。高周波電力増幅に高出力化が求められるとともに、負荷変動時における耐電圧特性の向上が求められる。一般に、電力増幅率等の特性と、耐電圧特性とはトレードオフの関係にあり、電力増幅率を高めるとともに、耐電圧特性を向上させることは困難である。
【0005】
下記の特許文献1に、出力ポートに多段のクランプダイオードを接続した高周波電力増幅器が開示されている。この電力増幅器は、多段接続されたクランプダイオードの途中から電圧信号を取り出し、高電圧信号が検出されると、増幅器のゲインが低下するようにバイアス電流を変化させるフィードバック回路を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6580321号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
増幅回路のトランジスタの破壊耐圧は温度依存性を有しており、特に低温時に破壊耐圧が低下する。例えば、高温時にトランジスタが破壊しないようにフィードバック制御を行うと、低温時にトランジスタが破壊してしまうおそれがある。逆に、低温時にトランジスタが破壊しないようにフィードバック制御を行うと、高温時には破壊上限電圧まで余裕があるにもかかわらず、出力が抑制されてしまい、高出力化に反することになる。
【0008】
本発明の目的は、温度に応じて好適に出力電圧を抑制することが可能な電力増幅器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によると、
半導体領域を含む第1部材と、
前記第1部材の一つの面である第1面に面接触して接合され、化合物半導体系の半導体領域を含む第2部材と
を備え、
前記第2部材は、
化合物半導体系のトランジスタを含む増幅回路と、
多段に接続されて、前記増幅回路の出力ポートとグランドとの間に、前記出力ポートからグランドに向かう向きが順方向になるように挿入された複数のクランプダイオードと
を含み、
前記第1部材は、
多段に接続された前記複数のクランプダイオードの途中の点である引出点とグランドとの間に接続されたスイッチと、
前記トランジスタの温度を測定する温度センサと、
前記温度センサの測定値が第1しきい値以下になったら前記スイッチをオンにし、前記スイッチがオンのときに前記温度センサの測定値が第2しきい値以上になったら前記スイッチをオフに戻すスイッチ制御回路と
を含み、
前記引出点と前記スイッチとは、前記第1部材の前記第1面から前記第2部材の表面まで至る層間絶縁膜の上に配置された金属パターンからなる部材間接続配線を含む経路、または前記第1部材と前記第2部材とが接合された界面と交差する経路を介して接続されている電力増幅器が提供される。
【発明の効果】
【0011】
温度センサの測定値に基づいてスイッチのオンオフ制御を行うことにより、多段接続されたクランプダイオードの実効的な段数を、温度に応じて変化させることができる。クランプダイオードの段数を温度に応じた好適な値に設定することが可能になり、出力ポートに出力される瞬時電圧を温度に応じて好適に抑制することができる。さらに、引出点とスイッチとが、部材間接続配線、または第1部材と第2部材との界面と交差する経路を介して接続されているため、多段接続されたクランプダイオードの引出点からグランドまでの経路の寄生インダクタンスの増大が抑制される。これにより、引出点をグランドに接続してクランプダイオードの実効的な段数を削減する十分な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施例による電力増幅器のブロック図である。
図2図2は、第1実施例による電力増幅器の概略断面図である。
図3図3は、第1実施例による電力増幅器の第1部材及び第2部材の一部の断面図である。
図4図4Aから図4Fまでの図面は、製造途中段階における電力増幅器の断面図である。
図5図5Aから図5Cまでの図面は、製造途中段階における電力増幅器の断面図であり、図5Dは、完成した電力増幅器の断面図である。
図6図6は、HBTの破壊耐圧特性の一例を示すグラフである。
図7図7A及び図7Bは、図1に示したパワー段増幅回路のトランジスタに加わる瞬時コレクタ電圧及び瞬時コレクタ電流のシミュレーション結果を示すグラフである。
図8図8は、図1に示したパワー段増幅回路のトランジスタに加わる瞬時コレクタ電圧及び瞬時コレクタ電流のシミュレーション結果を示すグラフである。
図9図9A及び図9Bは、図1に示したパワー段増幅回路のトランジスタに加わる瞬時コレクタ電圧及び瞬時コレクタ電流のシミュレーション結果を示すグラフである。
図10図10は、図1に示したパワー段増幅回路のトランジスタに加わる瞬時コレクタ電圧及び瞬時コレクタ電流のシミュレーション結果を示すグラフである。
図11図11は、第2実施例による電力増幅器の概略断面図である。
図12図12は、第2実施例による電力増幅器の第1部材及び第2部材の一部の断面図である。
図13図13は、第3実施例による電力増幅器のブロック図である。
図14図14は、第4実施例による電力増幅器の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施例]
図1から図10までの図面を参照して、第1実施例による電力増幅器について説明する。
図1は、第1実施例による電力増幅器のブロック図である。第1実施例による電力増幅器は、ドライバ段増幅回路21とパワー段増幅回路22との2段で構成されている。入力端子Pinから入力された高周波信号が、ドライバ段増幅回路21で増幅され、増幅された高周波信号がパワー段増幅回路22でさらに増幅される。
【0014】
パワー段増幅回路22で増幅され、出力ポート22outから出力された高周波信号が、出力整合回路23を介して出力端子Poutから出力される。パワー段増幅回路22の出力ポート22outとグランド32との間に、多段接続された複数のクランプダイオード30が接続されている。複数のクランプダイオード30は、出力ポート22outからグランド32に向かう向きが順方向になる極性で接続されている。
【0015】
多段接続された複数のクランプダイオード30の途中の点(以下、引出点31という。)とグランド32との間にスイッチ42が接続されている。例えば、6個のクランプダイオード30が多段に接続されており、グランド32側から2番目のクランプダイオード30と3番目のクランプダイオード30との間が引出点31とされている。スイッチ42がオンになった時に、引出点31からグランド32までの経路の寄生インダクタンスをPLと表記する。例えば、この経路を通って高周波電流が流れる。この場合、導体からなる経路は「電流経路」として機能する。なお、この経路を通って、主として高周波の電圧信号が伝送される場合もある。
【0016】
温度センサ41がパワー段増幅回路22を構成するトランジスタの温度を測定する。一例として、温度センサ41は、トランジスタで発生した熱が伝導されて温度が上昇した箇所の温度、すなわちトランジスタから熱的影響を受ける箇所の温度を測定することにより、トランジスタの温度を間接的に測定する。スイッチ制御回路40が、温度センサ41の測定結果に基づいてスイッチ42のオンオフ制御を行う。例えば、スイッチ制御回路40は、温度センサ41の測定値が第1しきい値以下になったらスイッチ42をオンにする。スイッチ42がオンのときに温度センサ41の測定値が第2しきい値以上になったら、スイッチ42をオフに戻す。
【0017】
図2は、第1実施例による電力増幅器の概略断面図である。なお、図2において、一部の回路を回路図記号や破線で模式的に示している。
【0018】
第1実施例による電力増幅器は、第1部材51及び第2部材61を含む。第1部材51は、単体半導体系の半導体領域を含む。例えば、第1部材51は、半導体基板52と、その一方の面に配置された多層配線構造53とを含む。なお、多層配線構造53の表面を覆う保護膜を配置してもよい。半導体基板52として、例えばシリコン基板、シリコンオンインシュレータ(SOI)基板等の単体半導体系の基板を用いることができる。
【0019】
多層配線構造53の表面(以下、第1面51Aという。)に、第2部材61が面接触して接合されている。多層配線構造53の表面を覆う保護膜を配置する場合には、この保護膜の表面を第1面51Aと定義する。第2部材61は、化合物半導体系の半導体領域を含む。第2部材61の構造については、後に図3を参照して詳細に説明する。
【0020】
第1部材51は、スイッチ42、スイッチ制御回路40、及び温度センサ41を含む。スイッチ42は、例えば半導体基板52の表層部に形成されたMOSFETで構成される。温度センサ41は、例えば半導体基板52の表層部に形成されたダイオード等を含む。スイッチ制御回路40は、半導体基板52の表層部に形成された複数の半導体素子等からなるAD変換回路、メモリ回路、電圧発生回路を含む。AD変換回路は、温度センサ41のアナログ的な温度に関する測定値をデジタル信号に変換する。電圧発生回路は、メモリ回路に記憶されている制御情報、及び温度センサ41の測定値に基づいて、スイッチ42を制御する電圧信号を発生する。
【0021】
第2部材61は、ドライバ段増幅回路21(図1)、パワー段増幅回路22(図1)、及び多段接続された複数のクランプダイオード30を含む。パワー段増幅回路22は複数のトランジスタ22Tを含む。第1部材51の第1面51A及び第2部材61を覆うように、層間絶縁膜77が配置されている。層間絶縁膜77の上面は平坦化されている。層間絶縁膜77の上に、金属パターンからなる部材間接続配線71、パッド72、73等が配置されている。
【0022】
パッド72は、層間絶縁膜77に設けられた開口を通ってパワー段増幅回路22のトランジスタ22Tのエミッタに接続されている。もう一つのパッド73は、層間絶縁膜77に設けられた開口を通って、多層配線構造53内の配線に接続されている。部材間接続配線71は、層間絶縁膜77に設けられた開口を通って、多段接続されたクランプダイオード30の引出点31に接続されるとともに、層間絶縁膜77に設けられた他の開口を通り、多層配線構造53内の配線54を介してスイッチ42に接続されている。
【0023】
部材間接続配線71、パッド72、73等が配置された配線層は、再配線層と呼ばれる場合がある。再配線層を覆うように層間絶縁膜77の上に絶縁性の保護膜78が配置されている。保護膜78に、平面視においてパッド72、73等のそれぞれに包含される開口が設けられている。開口内に露出したパッド72、73の上に、それぞれ導体突起82、83が設けられている。導体突起82、83は、保護膜78の上面から突出しており、開口の周辺の保護膜78の上面まで広がっている。
【0024】
導体突起82は、パッド72に接続されたCuピラー82Aと、Cuピラー82Aの上面に配置されたハンダ層82Bとを含む。このような構造の導体突起82は、Cuピラーバンプといわれる。なお、Cuピラー82Aの底面に、密着性向上を目的としてアンダーバンプメタル層を配置してもよい。他の導体突起83も、導体突起82と同じ積層構造を有する。なお、導体突起82、83等に、Cuピラーバンプに代えて、Auバンプ、ハンダボールバンプ、パッド上に立てられた導体柱等を用いてもよい。Auバンプのように、ハンダ層が載せられていないバンプは、ピラーともいわれる。パッド上に立てられた導体柱は、ポストともいわれる。
【0025】
第2部材61内のグランド導体と第1部材51内のグランド導体とが、再配線層内の再配線により相互に接続されている。その他の構成として、第2部材61内のグランド導体と第1部材51内のグランド導体とが、それぞれ第1部材51に設けられた導体突起及び第2部材61に設けられた導体突起を介して、モジュール基板の共通のグランド導体に接続される構成を採用してもよい。
【0026】
図3は、第1実施例による電力増幅器20の第1部材51及び第2部材61の一部の断面図である。第2部材61は、下地半導体層62と、その上に配置されたパワー段増幅回路22(図1)のトランジスタ22T、クランプダイオード30等を含む。下地半導体層62が、第1部材51の第1面51Aに面接触して接合されている。下地半導体層62は、複数の導電領域62A、62B等と、複数の導電領域62A、62B等を相互に電気的に分離する素子分離領域62Cとに区分されている。導電領域62A、62B等は、例えばn型GaAsで形成されている。素子分離領域62Cは、n型GaAsに不純物をイオン注入して絶縁化することにより形成される。
【0027】
導電領域62Aの上に、トランジスタ22Tが配置されており、導電領域62Bの上にクランプダイオード30が配置されている。図3では、複数のトランジスタ22Tのうちの一つ、及び複数のクランプダイオード30のうちの一つを示している。パワー段増幅回路22は、並列に接続された複数のトランジスタ22Tを含む。
【0028】
トランジスタ22Tは、導電領域62Aの上に順番に積層されたコレクタ層63C、ベース層63B、及びエミッタ層63Eを含む。エミッタ層63Eは、ベース層63Bの一部の領域の上に配置されている。コレクタ層63Cは、例えばn型GaAsで形成されており、導電領域62Aに電気的に接続されている。ベース層63Bは、例えばp型GaAsで形成されている。エミッタ層63Eは、例えばn型InGaPで形成されている。なお、エミッタ層63Eの上に、n型GaAsからなる層を配置してもよい。コレクタ層63C、ベース層63B、及びエミッタ層63Eにより、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)が構成される。
【0029】
エミッタ層63Eの上にエミッタ電極64Eが配置されている。エミッタ電極64Eはエミッタ層63Eに電気的に接続されている。ベース層63Bの上にベース電極64Bが配置されている。ベース電極64Bはベース層63Bに電気的に接続されている。導電領域62Aの上にコレクタ電極64Cが配置されている。コレクタ電極64Cは導電領域62Aを介してコレクタ層63Cに電気的に接続されている。
【0030】
クランプダイオード30は、導電領域62Bの上に順番に積層されたカソード層63N及びアノード層63Pを含む。カソード層63Nとコレクタ層63Cとは、同一の半導体層をパターニングすることにより形成され、アノード層63Pとベース層63Bとは、同一の半導体層をパターニングすることにより形成される。カソード層63Nは導電領域62Bに電気的に接続されている。
【0031】
アノード層63Pの上にアノード電極64Pが配置されている。アノード電極64Pは、アノード層63Pに電気的に接続されている。導電領域62Bの上にカソード電極64Nが配置されている。カソード電極64Nは導電領域62Bを介してカソード層63Nに電気的に接続されている。
【0032】
トランジスタ22T及びクランプダイオード30を覆うように、下地半導体層62の上に層間絶縁膜66が配置されている。層間絶縁膜66の所定の位置に開口が設けられている。層間絶縁膜66の上に1層目の配線層が配置されている。1層目の配線層に、エミッタ配線65E、コレクタ配線65C、アノード配線65P及びカソード配線65N等が含まれる。エミッタ配線65E及びコレクタ配線65Cは、それぞれ層間絶縁膜66に設けられた開口を通ってエミッタ電極64E及びコレクタ電極64Cに接続されている。アノード配線65P及びカソード配線65Nは、それぞれ層間絶縁膜66に設けられた開口を通ってアノード電極64P及びカソード電極64Nに接続されている。
【0033】
1層目の配線層の上に、層間絶縁膜77が配置されている。層間絶縁膜77は、図2に示したように第1部材51の第1面51Aの上まで広がっている。層間絶縁膜77の所定の位置に開口が設けられている。
【0034】
層間絶縁膜77の上に、パッド72を含む再配線層が配置されている。パッド72は、層間絶縁膜77に設けられた開口を通ってエミッタ配線65Eに接続されている。パッド72を覆うように、保護膜78が配置されている。保護膜78に、パッド72を露出する開口が設けられている。開口内に露出したパッド72の上、及び開口の周囲の保護膜78の上に、導体突起82が配置されている。導体突起82は、Cuピラー82Aとハンダ層82Bとを含む。導体突起82は、トランジスタ22Tのエミッタを外部回路に接続するための外部接続用端子として用いられる。
【0035】
次に、図4Aから図5Dまでの図面を参照して第1実施例による電力増幅器の製造方法について説明する。図4Aから図5Cまでの図面は、製造途中段階における電力増幅器の断面図であり、図5Dは、完成した電力増幅器の断面図である。
【0036】
図4Aに示すように、GaAs等の化合物半導体の単結晶の母基板200の上に剥離層201をエピタキシャル成長させ、剥離層201の上に素子形成層202を形成する。素子形成層202には、図3に示した第2部材61のトランジスタ22T、クランプダイオード30、1層目の配線層等が形成されている。これらの回路素子は、一般的な半導体プロセスにより形成される。図4Aでは、素子形成層202に形成されている素子構造については記載を省略している。この段階では、素子形成層202は個々の第2部材61に分離されていない。
【0037】
次に、図4Bに示すように、レジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、素子形成層202(図4A)及び剥離層201をパターニングする。この段階で、素子形成層202(図4A)は第2部材61ごとに分離される。
【0038】
次に、図4Cに示すように、分離された第2部材61の上に連結支持体204を貼り付ける。これにより、複数の第2部材61が、連結支持体204を介して相互に連結される。なお、図4Bのパターニング工程でエッチングマスクとして用いたレジストパターンを残しておき、第2部材61と連結支持体204との間にレジストパターンを介在させてもよい。
【0039】
次に、図4Dに示すように、母基板200及び第2部材61に対して剥離層201を選択的にエッチングする。これにより、第2部材61及び連結支持体204が母基板200から剥離される。剥離層201を選択的にエッチングするために、剥離層201として、母基板200及び第2部材61のいずれともエッチング耐性の異なる化合物半導体が用いられる。
【0040】
図4Eに示すように、第1部材51(図2)に設けられるスイッチ42、スイッチ制御回路40、温度センサ41、及び多層配線構造53等が形成された基板210を準備する。この段階で、基板210は個々の第1部材51に分離されていない。
【0041】
図4Fに示すように、第2部材61を基板210に接合する。第2部材61と基板210との接合は、ファンデルワールス結合または水素結合による。その他に、静電気力、共有結合、共晶合金結合等によって第2部材61を基板210に接合してもよい。例えば、基板210の表面の一部がAuで形成されている場合、第2部材61をAu領域に密着させて加圧することにより、両者を接合してもよい。
【0042】
次に、図5Aに示すように、第2部材61から連結支持体204を剥離する。連結支持体204を剥離した後、図5Bに示すように、基板210及び第2部材61の上に層間絶縁膜77及び再配線層を形成する。再配線層には、部材間接続配線71、パッド72等が含まれる。
【0043】
次に、図5Cに示すように、再配線層の上に保護膜78を形成し、保護膜78の所定の位置に開口を形成する。その後、開口内及び保護膜78の上に、導体突起82を形成する。
【0044】
最後に、図5Dに示すように、基板210をダイシングする。これにより、電力増幅器20が得られる。個片化された電力増幅器20のそれぞれの第1部材51は、平面視において第2部材61より大きい。電力増幅器20は、モジュール基板等にフリップチップ実装される。
【0045】
次に、図6から図8Bまでの図面を参照して、第1実施例による電力増幅器20にスイッチ42を設けることの優れた効果について説明する。
【0046】
図6は、HBTの破壊耐圧特性の一例を示すグラフである。横軸はコレクタ電圧を表し、縦軸はコレクタ電流を表す。図6のグラフ中に示した実線及び破線は、それぞれ室温時及び低温時における破壊境界を示す。HBTのコレクタ電圧及びコレクタ電流が破壊境界を超えると、HBTが破壊してしまう。室温時においてコレクタ電圧が増加すると、破壊境界を示すコレクタ電流が急激に低下する領域が現れる。このときのコレクタ電圧を破壊電圧ということとする。HBTは、コレクタ電圧が破壊電圧を超えない範囲で動作させなければならない。HBTの温度が低温になると、図6において矢印で示したように破壊電圧が低下する。
【0047】
図7A図7B及び図8は、図1に示したパワー段増幅回路22のトランジスタ22Tに加わる瞬時コレクタ電圧及び瞬時コレクタ電流のシミュレーション結果を示すグラフである。図7A及び図7Bの横軸は時間を単位「ns」で表し、図7Aの縦軸は瞬時コレクタ電圧を任意単位で表し、図7Bの縦軸は瞬時コレクタ電流を任意単位で表す。図8の横軸は瞬時コレクタ電圧を任意単位で表し、縦軸は瞬時コレクタ電流を任意単位で表す。
【0048】
このシミュレーションでは、入力信号の周波数を1.9GHzとした。さらに、負荷変動によってインピーダンス不整合が生じ、電圧定在波比(VSWR)が5になった場合を想定してシミュレーションを行った。また、図1に示した寄生インダクタンスPLはゼロとした。グラフ中の太い実線、細い実線、及び破線は、それぞれ図1に示した等価回路図のクランプダイオード30の段数を、6段、4段、及び2段にした時のシミュレーション結果を示している。クランプダイオード30の各々の順方向電圧をVfと表記し、クランプダイオード30の段数をNと表記する。瞬時コレクタ電圧がVf×Nを超えると、クランプダイオード30に順方向電流が流れ、瞬時コレクタ電圧の上昇が抑制される。このため、クランプダイオード30の段数Nが少ないほど、瞬時コレクタ電圧のピーク値が抑制される。
【0049】
また、クランプダイオード30の段数を増加させると、コレクタ電圧として十分なダイナミックロードラインを確保することができるため、瞬時コレクタ電圧のピーク値が高くなる。この条件のとき、電流電圧特性において瞬時コレクタ電流のピーク値は、クランプダイオード30の段数が少ない場合と比較して抑制される。
【0050】
図7A図7B図8に示したシミュレーション結果から、クランプダイオード30の段数を少なくすると、瞬時コレクタ電圧のピーク値を低減させる効果が大きくなることがわかる。トランジスタの瞬時コレクタ電圧が破壊境界(図6)を越えないようにするためには、低温時にクランプダイオード30の段数を減らせばよい。第1実施例では、温度センサ41の測定値が第1しきい値以下の時にスイッチ42(図1)をオンにすることにより、クランプダイオード30の実効的な段数を減らしている。このため、負荷変動が生じても、低温時におけるトランジスタ22Tの瞬時コレクタ電圧のピーク値を抑制することができる。これにより、トランジスタ22Tの破壊を抑制することができる。
【0051】
また、第1実施例では、トランジスタの温度が第2しきい値を超えるとスイッチ42をオフにして、クランプダイオード30の実効的な段数を元に戻す。このため、例えば室温時には、トランジスタ22Tの破壊境界のほぼ上限値までの範囲で、瞬時コレクタ電圧を振ることができ、出力の不要な低下を抑制することができる。
【0052】
次に、図9A図9B、及び図10を参照して、第1実施例による電力増幅器20において、多段接続されたクランプダイオード30の引出点31(図2)とスイッチ42とを、部材間接続配線71で接続することの優れた効果について説明する。
【0053】
図9A図9B及び図10は、図1に示したパワー段増幅回路22のトランジスタ22Tに加わる瞬時コレクタ電圧及び瞬時コレクタ電流のシミュレーション結果を示すグラフである。図9A及び図9Bの横軸は時間を単位「ns」で表し、図9Aの縦軸は瞬時コレクタ電圧を任意単位で表し、図9Bの縦軸は瞬時コレクタ電流を任意単位で表す。図8の横軸は瞬時コレクタ電圧を任意単位で表し、縦軸は瞬時コレクタ電流を任意単位で表す。
【0054】
このシミュレーションにおいて、入力信号の周波数、及び負荷変動による電圧定在波比は、図7A図7B図8におけるシミュレーションの条件と同一とした。グラフ中の太い実線及び細い実線は、それぞれ図1に示した等価回路図の寄生インダクタンスPLをゼロとし、クランプダイオード30の段数を、6段及び3段にした時のシミュレーション結果を示している。グラフ中の破線は、図1に示した等価回路図の寄生インダクタンスPLを1nHとし、クランプダイオード30の段数を3段にした時のシミュレーション結果を示している。
【0055】
寄生インダクタンスPLがゼロの条件で、クランプダイオード30の段数を6段から3段に減らすと、太い実線及び細い実線で示すように、瞬時コレクタ電圧のピーク値が抑制されている。ところが、寄生インダクタンスPLが1nHの条件では、太い実線及び破線で示すように、クランプダイオード30の段数を減らしても瞬時コレクタ電圧のピーク値を抑制する効果は得られないことがわかる。例えば、多段接続されたクランプダイオード30の引出点31とスイッチ42とをボンディングワイヤで接続すると、1nH程度の寄生インダクタンスが発生する。したがって、ボンディングワイヤを用いる場合には、スイッチ42をオンにしてクランプダイオード30の実効的な段数を減らしても、瞬時コレクタ電圧のピーク値をさらに抑制する効果はほとんど得られない。
【0056】
以下、瞬時コレクタ電圧のピーク値を抑制する効果がほとんど得られない理由について説明する。寄生インダクタンスPLが増加すると、パワー段増幅回路22(図1)の出力ポートからスイッチ42を介してグランドに向かう経路のインピーダンスが高くなる。また、パワー段増幅回路22の出力インピーダンスはもともと低インピーダンスであるため、出力整合回路23(図1)を含む負荷インピーダンスは、低く設定されている。寄生インダクタンスPLに起因して、スイッチ42を介してグランドに向かう経路のインピーダンスが負荷インピーダンスに比べて相対的に高くなることにより、瞬時コレクタ電圧のピーク電圧をグランドに逃がす効果が得られにくくなる。
【0057】
第1実施例では、多段接続されたクランプダイオード30の引出点31とスイッチ42とが、再配線層に含まれる部材間接続配線71(図2)によって接続されているため、ボンディングワイヤによって両者を接続する構成と比べて、寄生インダクタンスLPが低減する。このため、スイッチ42をオンにしてクランプダイオード30の実効的な段数を減らすことによって、瞬時コレクタ電圧のピーク値をさらに抑制する十分な効果を得ることができる。
【0058】
次に、第1実施例の他の優れた効果について説明する。
第1実施例(図2)では、第2部材61が第1部材51に面接触しているため、第2部材61に設けられたトランジスタ22Tから第1部材51に至る伝熱経路の熱抵抗が低くなる。トランジスタ22Tで発生した熱は、第1部材51と第2部材61との界面を通って第1部材51に伝導される。第1部材51に伝導された熱は、第1部材51内を拡散し、第1部材51の表面から外部に放熱される。また、第1部材51自体が第2部材61に比べて大きな熱容量を持つため、第1部材51がヒートシンクとして機能する。
【0059】
第1部材51を介した放熱特性を向上させるために、第1部材51の半導体領域、例えば半導体基板52に、トランジスタ22Tを構成する化合物半導体材料の熱伝導率より高い熱伝導率を持つ半導体材料を用いることが好ましい。例えば、第1部材51の半導体領域に、単体半導体、SiC等を用いることが好ましい。
【0060】
さらに、第1実施例(図2)では、トランジスタ22Tで発生した熱は、パッド72及び導体突起82を介してモジュール基板に伝導される。このように、トランジスタ22Tから第1部材51に至る伝熱経路と、導体突起82を介してモジュール基板に至る伝熱経路との2つの経路が形成されるため、トランジスタ22Tの温度上昇を抑制する効果を高めることができる。
【0061】
さらに、第1実施例では、温度センサ41が第2部材61に面接触する第1部材51に設けられている。このため、第2部材61に設けられたトランジスタ22Tの自己発熱による温度上昇が、温度センサ41の測定値に迅速に反映される。このため、トランジスタ22Tの温度変化がスイッチ42のオンオフ制御に迅速に反映されるという優れた効果が得られる。トランジスタ22Tの温度変化が温度センサ41の測定値に反映されやすくするために、図2に示すように、温度センサ41と第2部材61とを、平面視において相互に重なるように配置することが好ましい。
【0062】
さらに、第1実施例では、化合物半導体系のトランジスタ22Tを含む第2部材61が、スイッチ制御回路40等が設けられた第1部材51に面接触しているため、トランジスタ22Tを含む化合物半導体系のチップと、スイッチ制御回路40等を含むチップとをモジュール基板に別々に実装する構成と比べて、電力増幅器20の小型化を図ることが可能である。
【0063】
[第2実施例]
次に、図11及び図12を参照して第2実施例による電力増幅器について説明する。以下、図1から図10までの図面を参照して説明した第1実施例による電力増幅器と共通の構成については説明を省略する。
【0064】
図11は、第2実施例による電力増幅器20の概略断面図である。なお、図11において、一部の回路を回路図記号や破線で模式的に示している。第1実施例(図2)では、多段接続されたクランプダイオード30の引出点31とスイッチ42とが、再配線層内の部材間接続配線71によって接続されている。これに対して第2実施例では、第2部材61と第1部材51とが面接触する界面と交差する経路を介して、多段接続されたクランプダイオード30の引出点31とスイッチ42とが接続されている。
【0065】
第2実施例による電力増幅器20の第1部材51は、多層配線構造53の上に配置された接着層56を含む。接着層56は、複数の金属領域56B、56D等と、複数の金属領域を相互に絶縁する絶縁領域56Cとに区分されている。接着層56は、例えば、ダマシン法を用いて形成することができる。図4Eに示した製造工程の段階で、基板210に接着層56が形成されている。多段接続されたクランプダイオード30の引出点31は、金属領域56B及び多層配線構造53内の配線55を含む経路を介してスイッチ42に電気的に接続されている。この経路は、第1部材51と第2部材61とが面接触する界面と交差している。
【0066】
他の一つのパッド73は、接着層56の金属領域56Dを介して、多層配線構造53内の配線に接続されている。
【0067】
図12は、第2実施例による電力増幅器の第1部材51及び第2部材61の一部の断面図である。第1実施例(図3)では、第2部材61の下地半導体層62が第1部材51の多層配線構造53に接合されている。これに対して第2実施例では、第2部材61の下地半導体層62が、第1部材51の接着層56に接合されている。平面視においてトランジスタ22Tを包含する導電領域62Aが、接着層56の金属領域56Aに重ねられており、両者が電気的に接続されている。平面視において一つのクランプダイオード30を包含する導電領域62Bが、接着層56の金属領域56Bに重ねられており、両者が電気的に接続されている。下地半導体層62の素子分離領域62Cと接着層56の絶縁領域56Cとが平面視において重なっており、下地半導体層62内の複数の導電領域の間、及び接着層56の複数の金属領域の間の電気的絶縁性が確保されている。
【0068】
金属領域56Bが、多層配線構造53内の配線55を介してスイッチ42に電気的に接続されている。図12に示した断面内のクランプダイオード30のカソード層63Nが、引出点31(図1)に相当する。導電領域62B、金属領域56B、及び配線55が、引出点31(図1)とスイッチ42との間の経路を構成する。
【0069】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
第2実施例においても、ボンディングワイヤを用いることなく、多段接続されたクランプダイオード30の引出点31(図1)とスイッチ42とが電気的に接続される。両者を接続する導電領域62B、金属領域56B、及び配線55からなる経路の寄生インダクタンスは、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスより小さい。このため、第2実施例においても第1実施例と同様に、スイッチ42をオンにしてクランプダイオード30の実効的な段数を減らすことによって、瞬時コレクタ電圧のピーク値をさらに抑制する十分な効果を得ることができる。
【0070】
さらに第2実施例においても第1実施例と同様に、トランジスタ22Tの温度上昇を抑制する効果が得られるとともに、電力増幅器20の小型化を図ることが可能になる。
【0071】
[第3実施例]
次に、図13を参照して第3実施例による電力増幅器について説明する。以下、図1から図10までの図面を参照して説明した第1実施例による電力増幅器と共通の構成については説明を省略する。
【0072】
図13は、第3実施例による電力増幅器のブロック図である。第1実施例(図1)では、パワー段増幅回路22の出力ポート22outとグランド32との間に、多段接続されたクランプダイオード30が接続されており、ドライバ段増幅回路21の出力ポートには、クランプダイオードが接続されていない。これに対して第3実施例では、ドライバ段増幅回路21の出力ポート21outとグランド32との間にも、多段接続されたクランプダイオード35が接続されている。ドライバ段増幅回路21に接続されたクランプダイオード35の段数は、パワー段増幅回路22に接続されたクランプダイオード30の段数と同一である必要はない。ドライバ段増幅回路21とパワー段増幅回路22との間に、段間整合回路25が接続されている。
【0073】
ドライバ段増幅回路21の多段のクランプダイオード35の引出点36が、スイッチ43を介してグランド32に接続されている。ドライバ段増幅回路21側の引出点36は、部材間接続配線71(図2)と同じ再配線層に配置された他の部材間接続配線を介してスイッチ43に接続されている。スイッチ制御回路40が、スイッチ42及びスイッチ43のオンオフを制御する。
【0074】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。
第3実施例においては、ドライバ段増幅かいろ21の多段のクランプダイオード35の引出点36も、ボンディングワイヤを用いることなく再配線層内の部材間接続配線を介してスイッチ43に接続される。このため、ドライバ段増幅回路21においても、スイッチ43をオンにしてクランプダイオード35の実効的な段数を減らすことによって、瞬時コレクタ電圧のピーク値を抑制する十分な効果を得ることができる。さらに第3実施例においても第1実施例と同様に、トランジスタ22Tの温度上昇を抑制する効果が得られるとともに、電力増幅器20の小型化を図ることが可能になる。
【0075】
次に、第3実施例の変形例について説明する。
第3実施例では、ドライバ段増幅回路21の多段接続されたクランプダイオード35の引出点36を、再配線層内の部材間接続配線を介してスイッチ43に接続しているが、図11及び図12に示した第2実施例のように、第1部材51と第2部材61とが面接触する界面と交差する経路を介してスイッチ43に接続してもよい。
【0076】
第3実施例では、2つのスイッチ42、43が用いられているが、2つのスイッチ42、43に代えて1つのSPDTスイッチを用いてもよい。この場合、SPDTスイッチのコモン端子をグランド32に接続し、一方の接点を一方の引出点31に接続し、他方の接点を他方の引出点36に接続すればよい。また、ドライバ段増幅回路21とパワー段増幅回路22とで、1つのSPSTスイッチを共用してもよい。この場合には、SPSTスイッチの1つの接点を、2つの引出点31、36の両方に接続すればよい。
【0077】
[第4実施例]
次に、図14を参照して第4実施例による電力増幅器について説明する。以下、図1から図10までの図面を参照して説明した第1実施例による電力増幅器と共通の構成については説明を省略する。
【0078】
図14は、第4実施例による電力増幅器の概略断面図である。なお、図14において、一部の回路を回路図記号や破線で模式的に示している。第1実施例(図2)では、スイッチ42が第1部材51に設けられている。これに対して第4実施例では、スイッチ42が第2部材61に設けられている。スイッチ42は、例えば化合物半導体系のFETやHEMTで構成される。なお、パワー段増幅回路22のトランジスタ22Tは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタである。このため、第2部材61には、BiFET構造またはBiHEMT構造が用いられる。
【0079】
多段接続されたクランプダイオード30とスイッチ42とが、共に第2部材61に設けられているため、多段接続されたクランプダイオード30の引出点31とスイッチ42とは、第2部材61内の金属パターンからなる配線を介して相互に接続されている。第1部材51に設けられたスイッチ制御回路40が、多層配線構造53内の配線57、再配線層内の部材間接続配線75を介して、オンオフを制御する制御信号をスイッチ42に与える。
【0080】
次に、第4実施例の優れた効果について説明する。
第4実施例では、多段接続されたクランプダイオード30の引出点31とスイッチ42とが、第2部材61内の金属パターンからなる配線を介して接続されており、両者の接続にボンディングワイヤは用いられない。このため、スイッチ42がオンになったときの引出点31からグランド32(図1)までの経路の寄生インダクタンスPLを低減させることができる。これにより、スイッチ42をオンにして瞬時コレクタ電圧のピーク値をさらに抑制する十分な効果を得ることができる。さらに第4実施例においても第1実施例と同様に、トランジスタ22Tの温度上昇を抑制する効果が得られるとともに、電力増幅器20の小型化を図ることが可能になる。
【0081】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0082】
20 電力増幅器
21 ドライバ段増幅回路
21outドライバ段増幅回路の出力ポート
22 パワー段増幅回路
22out パワー段増幅回路の出力ポート
22T パワー段増幅回路のトランジスタ
23 出力整合回路
25 段間整合回路
30 クランプダイオード
31 引出点
32 グランド
35 クランプダイオード
36 引出点
40 スイッチ制御回路
41 温度センサ
42、43 スイッチ
51 第1部材
51A 第1部材の第1面
52 半導体基板
53 多層配線構造
54、55 配線
56 接着層
56A、56B、56D 金属領域
56C 絶縁領域
57 配線
61 第2部材
62 下地半導体層
62A、62B 導電領域
62C 素子分離領域
63B ベース層
63C コレクタ層
63E エミッタ層
63N カソード層
63P アノード層
64B ベース電極
64C コレクタ電極
64E エミッタ電極
64N カソード電極
64P アノード電極
65C コレクタ配線
65E エミッタ配線
65N カソード配線
65P アノード配線
66 層間絶縁膜
71 部材間接続配線
72、73 パッド
75 部材間接続配線
77 層間絶縁膜
78 保護膜
82 導体突起
82A Cuピラー
82B ハンダ層
83 導体突起
200 母基板
201 剥離層
202 素子形成層
204 連結支持体
210 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14