(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240903BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
A41D13/11 B
A62B18/02 C
(21)【出願番号】P 2020210790
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】神野 文夫
(72)【発明者】
【氏名】徐 暁師
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205866065(CN,U)
【文献】中国実用新案第204682582(CN,U)
【文献】登録実用新案第3220213(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00-13/12;20/00
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟シートを含む複数のシートを積層した積層体によって形成されるマスク本体と、
前記マスク本体に設けられており、前記積層体を折り返すことによって形成されるプリーツ状の折り目と、を備え、
前記積層体は、孔と、前記孔の周囲の縁に沿って設けられ、プリーツの展開状態において柔軟な部分を支持可能な固化部分とを有する不織布のシートを含む、
マスク。
【請求項2】
前記孔は、略円形状、矩形状、又は六角形状を有する請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記孔は、前記不織布のシートを貫通する孔である請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記複数のシートは、肌面シート、外層シート、及び前記肌面シートと前記外層シートとの間に配置された中間シートを含み、
前記中間シートは、前記不織布のシートを含み、
前記固化部分の前記孔側の一部は、前記肌面シート側又は前記外層シート側に突出している請求項1から3のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項5】
前記折り目は、前記マスク本体の横方向に延在し、
前記不織布のシートは、前記孔を複数有し、
前記積層体に前記折り目が形成される前の前記不織布のシートを前記横方向に4等分にして、当該不織布のシートに仮想的な4つの領域を形成したときに、前記仮想的な4つの領域のうち、中央の2つの領域における前記孔の面積の和は、両端の2つの領域における前記孔の面積の和よりも大きい請求項1から4のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項6】
前記折り目は、前記マスク本体の横方向に延在し、
前記不織布のシートは、前記孔を複数有し、
前記積層体に前記折り目が形成される前の前記不織布のシートを前記マスク本体の縦方向に4等分にして、当該不織布のシートに仮想的な4つの領域を形成したときに、前記仮想的な4つの領域のうち、中央の2つの領域における前記孔の面積の和は、両端の2つの領域における前記孔の面積の和よりも大きい請求項1から4のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項7】
前記折り目は、前記マスク本体の横方向に延在し、
前記不織布のシートは、前記孔を複数有し、
前記積層体に前記折り目が形成される前の前記不織布のシートを前記横方向に同じ長さで分けて、当該不織布のシートに仮想的な複数の領域を形成したときに、前記仮想的な複数の領域のうち、中央の領域における前記孔の面積の和は、両端の領域の各々における前記孔の面積の和よりも大きい請求項1から4のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項8】
前記長さは、10mmである請求項7に記載のマスク。
【請求項9】
前記折り目は、前記マスク本体の横方向に延在し、
前記不織布のシートは、前記孔を複数有し、
前記積層体に前記折り目が形成される前の前記不織布のシートを前記マスク本体の縦方向に同じ長さで分けて、当該不織布のシートに仮想的な複数の領域を形成したときに、前記仮想的な複数の領域のうち、中央の領域における前記孔の面積の和は、両端の領域の各々における前記孔の面積の和よりも大きい請求項1から4のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項10】
前記長さは、10mmである請求項9に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布等を積層したマスク本体に耳紐等を取り付けた使い捨てマスクが知られている(例えば、特許文献1~4を参照)。
【0003】
マスク本体は、プリーツ状の立体形状を形成し得る折り目を有している。マスク装着時にプリーツを広げることで、マスク本体が立体形状となる。これにより、マスク本体と着用者の口との間に空間が形成され、着用者は呼吸を楽に行うことができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-21027号公報
【文献】実用新案登録第3220304号
【文献】実用新案登録第3163625号
【文献】特開2014-33973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、マスク本体は基本的には柔らかい不織布からなるものなので、装着時にプリーツを広げてマスク本体の立体形状を定めても、プリーツが折れ戻り易く、その立体形状を維持するのが困難である。
【0006】
本開示は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、プリーツを広げた形状を維持することができるマスクを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、積層体は、孔と、孔の周囲の縁に沿って設けられ、プリーツの展開状態において柔軟な部分を支持可能な固化部分とを有する不織布のシートを含む。
【0008】
詳細には、本発明のマスクは、柔軟シートを含む複数のシートを積層した積層体によって形成されるマスク本体と、マスク本体に設けられており、積層体を折り返すことによって形成されるプリーツ状の折り目と、を備え、積層体は、孔と、孔の周囲の縁に沿って設けられ、プリーツの展開状態において柔軟な部分を支持可能な固化部分とを有する不織布のシートを含む。
【0009】
なお、上記マスクにおいて、孔は、略円形状、矩形状、又は六角形状を有してもよい。
【0010】
また、上記マスクにおいて、孔は、不織布のシートを貫通する孔であってもよい。
【0011】
また、上記マスクにおいて、複数のシートは、肌面シート、外層シート、及び肌面シートと外層シートとの間に配置された中間シートを含み、中間シートは、不織布のシートを含み、固化部分の孔側の一部は、肌面シート側又は外層シート側に突出していてもよい。
【0012】
また、上記マスクにおいて、折り目は、マスク本体の横方向に延在し、不織布のシート
は、孔を複数有し、積層体に折り目が形成される前の不織布のシートを横方向に4等分にして、当該不織布のシートに仮想的な4つの領域を形成したときに、仮想的な4つの領域のうち、中央の2つの領域における孔の面積の和は、両端の2つの領域における孔の面積の和よりも大きくてもよい。
【0013】
また、上記マスクにおいて、折り目は、マスク本体の横方向に延在し、不織布のシートは、孔を複数有し、積層体に折り目が形成される前の不織布のシートをマスク本体の縦方向に4等分にして、当該不織布のシートに仮想的な4つの領域を形成したときに、仮想的な4つの領域のうち、中央の2つの領域における孔の面積の和は、両端の2つの領域における孔の面積の和よりも大きくてもよい。
【0014】
また、上記マスクにおいて、折り目は、マスク本体の横方向に延在し、不織布のシートは、孔を複数有し、積層体に折り目が形成される前の不織布のシートを横方向に同じ長さで分けて、当該不織布のシートに仮想的な複数の領域を形成したときに、仮想的な複数の領域のうち、中央の領域における孔の面積の和は、両端の領域の各々における孔の面積の和よりも大きくてもよい。更に、長さは、10mmであってもよい。
【0015】
また、上記マスクにおいて、折り目は、マスク本体の横方向に延在し、不織布のシートは、孔を複数有し、積層体に折り目が形成される前の不織布のシートをマスク本体の縦方向に同じ長さで分けて、当該不織布のシートに仮想的な複数の領域を形成したときに、仮想的な複数の領域のうち、中央の領域における孔の面積の和は、両端の領域の各々における孔の面積の和よりも大きくてもよい。更に、長さは、10mmであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プリーツを広げた形状を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るマスクの外観斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るマスクのシート構造を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の一例の構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、マスク本体の積層体に折り目が設けられた後に積層体の各シートに形成される折り目の構成を説明する図である。
【
図5】
図5は、穿孔部分の構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、穿孔部分の一部の構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、穿孔部分を形成する工程の一例を示した図である。
【
図8】
図8は、ロールを繰り出し積層する工程を示した図である。
【
図9】
図9は、積層体にプリーツとノーズフィッターを組み込む工程を示した図である。
【
図10】
図10は、積層体下部を溶着し、切断する工程を示した図である。
【
図11】
図11は、耳紐を設置し、カバーシートで固定する工程を示した図である。
【
図12】
図12は、穿孔部分を形成する工程の別例を示した図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その1)の構成を示す平面図である。
【
図14】
図14は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その2)の構成を示す平面図である。
【
図15】
図15は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その3)の構成を示す平面図である。
【
図16】
図16は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その4)の構成を示す平面図である。
【
図17】
図17は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その5)の構成を示す平面図である。
【
図18】
図18は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その6)の構成を示す平面図である。
【
図19】
図19は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その7)の構成を示す平面図である。
【
図20】
図20は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その8)の構成を示す平面図である。
【
図21】
図21は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その9)の構成を示す平面図である。
【
図22】
図22は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その10)の構成を示す平面図である。
【
図23】
図23は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その11)の構成を示す平面図である。
【
図24】
図24は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その12)の構成を示す平面図である。
【
図25】
図25は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その13)の構成を示す平面図である。
【
図26】
図26は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その14)の構成を示す平面図である。
【
図27】
図27は、第1の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その15)の構成を示す平面図である。
【
図28】
図28は、第2の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の一例の構成を示す平面図である。
【
図29】
図29は、第2の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その1)の構成を示す平面図である。
【
図30】
図30は、第2の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その2)の構成を示す平面図である。
【
図31】
図31は、第2の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その3)の構成を示す平面図である。
【
図32】
図32は、第2の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その4)の構成を示す平面図である。
【
図33】
図33は、第2の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その5)の構成を示す平面図である。
【
図34】
図34は、第2の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その6)の構成を示す平面図である。
【
図35】
図35は、第2の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その7)の構成を示す平面図である。
【
図36】
図36は、第2の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その8)の構成を示す平面図である。
【
図37】
図37は、第2の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その9)の構成を示す平面図である。
【
図38】
図38は、第2の実施形態の形状維持シートの穿孔部分の変形例(その10)の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るマスクについて説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、実施形態に係るマスクの外観斜視図である。
図1に示されるように、マスク1は、マスク本体2、耳紐3,4、側部5,6、ノーズフィッター7を有する。マスク本体2は、シート状の通気性素材で形成されており、着用者の口と鼻を覆うことが可能な大きさを有する。耳紐3,4は、紐状の伸縮性素材で形成されており、マスク本体2の両側部に位置する側部5,6において端部が接合されることにより、マスク本体2の左右両側に環状の輪をそれぞれ形成する。
【0020】
マスク本体2は、通気性を有する不織布等の各種シートから構成されるものであり、複数枚のシートの積層体である。そして、複数のシートは、上下左右の縁等において互いに適宜接合されている。マスク本体2は、プリーツ状の立体形状を形成し得る折り目を有する。このような折り目は、マスク本体2が襞状に折り込まれた状態で左右両側の端部に側部5,6が接合されることに、その形状が側部5,6によって保持される。すなわち、左右両側の端部の側部5,6で折り目の展開が阻止され、マスク本体2の中心部付近の領域において、マスク1の装着時に折り目が展開されることで、マスク本体2のプリーツが広げられて立体形状となる。なお、非装着時にはプリーツが閉じられることで、マスク本体2をかさばらない平面状とすることができる。
【0021】
耳紐3,4を構成する紐状の伸縮性素材は、例えば、ゴム糸と綿の交織帯や、樹脂フィラメントの交編ネット、伸縮性の不織布等で形成される。このような紐状の素材の両端部が、それぞれマスク本体2の左右両側の側部の側部5,6に接合されることで、当該素材の一端が始点となり、当該素材の他端が終点となるループ状の形態の耳紐3,4がマスク本体2の左右両側に形成される。
【0022】
ノーズフィッター7は、マスク本体2の上部において、長手方向がマスク本体2の左右方向に延在する状態でマスク本体2に固定される部材である。ノーズフィッター7は、マスク本体2を構成するシート状の通気性素材同士の間に挟み込まれる状態で積層体の内部に固定されていてもよいし、或いは、マスク本体2の表面に固定されていてもよい。ノーズフィッター7は、着用者が指で押圧することにより適宜の形状へ変形可能な程度の強度を有すると共に、当該押圧から解放されても形状を維持する塑性変形可能な素材である。このようなノーズフィッター7がマスク本体2の上部に設けられていることにより、着用者は、鼻とマスク本体2との間にできる隙間を塞ぐことができる。
【0023】
マスク1を構成する上述の各素材は、超音波溶着による接合が好適であるが、例えば、ミシン糸等による縫合、ホットメルト接着剤等による接着、ヒートシール、その他の各種接合技術を適用し得る。
【0024】
図2は、実施形態に係るマスクのシート構造を示す図である。実施形態に係るマスク本体2は、外層シート10、フィルタシート11、形状維持シート12、肌面シート13の各シートを積層して構成されている。各シートには、熱可塑性ポリマーからなる不織布が用いられる。フィルタシート11は、本実施形態では1枚であるが、通気性を考慮しつつシートを更に増やしてもよい。
【0025】
肌面シート13は直接肌に触れるため、特に肌触りの良い不織布が用いられる。外層シート10は肌面シート13と同一の素材のシートであってもよいし、外部環境に対する耐性や通気性に優れた別規格のシートであってもよい。誤装着防止のため、外層シート10と肌面シート13で素材の色を変えることもできる。また、形状維持シート12(本開示の「不織布のシート」の一例)には肌面シート13と同一の素材が用いられる。
【0026】
フィルタシート11には粒子補足性能が高い素材が用いられる。このため、フィルタシート11には肌面シート13や形状維持シート12とは異なる素材のシートが用いられてもよい。例えば、肌面シート13や形状維持シート12よりも融点が高い熱可塑性ポリマー素材が用いられてよい。
【0027】
また、フィルタシート11にはティッシュペーパーのようなパルプ繊維が用いられてもよい。但し、この素材は熱で融解しない。このため、超音波溶着による接合を行うという観点では、フィルタシート11の素材も熱可塑性を有していることが望ましい。
【0028】
また、マスク本体2には、外層シート10、フィルタシート11、形状維持シート12及び肌面シート13の積層体を折り返すことによって形成されたプリーツ状の折り目が設けられている。本実施形態では、折り目は平面視でマスク本体2の左右方向(以下、「横方向」という)に延在している。そして、マスク1が装着され、折り目が平面視でマスク本体2の上下方向(以下、「縦方向」という)に展開されたときに、マスク本体2のプリーツが広げられて立体形状となる。このとき、マスク本体2では、側部5,6で折り目の展開が阻止されているので、着用者の非肌面側にドーム状に膨らんだ部分が形成される。これにより、マスク本体2と着用者の口との間に空間が形成され、着用者は呼吸を楽に行うことができるようになる。
【0029】
一方、前述したように、マスク本体2の積層体は、基本的には不織布のシートのように柔らかいシートからなるものである。このため、マスク1を装着した着用者がプリーツを広げてマスク本体2の立体形状を定めても、口を動かす等の着用者の動作による応力を受けたときにプリーツが折れ戻り易く、その立体形状を維持するのが困難である。そこで、本実施形態では、形状維持シート12に穿孔部分を有することで、マスク本体2の立体形状を維持するようにしている。
【0030】
図3は、第1の実施形態の形状維持シート12の穿孔部分の一例の構成を示す平面図である。
図3では、マスク本体2の積層体にプリーツ状の折り目が設けられる前の形状維持シート12の状態を示している。また、
図4は、マスク本体2の積層体に折り目が設けられた後に積層体の各シートに形成される折り目の構成を説明する図である。
図4では、プリーツが閉じている状態の折り目の構成について説明している。更にまた、
図5は、穿孔部分の構成を示す平面図である。そして、
図6は、穿孔部分の一部の構成を示す断面図である。
【0031】
まず、折り目の構成について説明する。
図4に示すように、マスク本体2の積層体が折り返された後、積層体の各シート10~13には、例えば、マスク本体2の下方向に見たときに上から谷折りの折り目VF1、山折りの折り目MF1、谷折りの折り目VF2、及び山折りの折り目MF2がこの順で形成されている。この構成の場合、着用者の非肌面側からマスク本体2を見たときには、上から2番目及び3番目の折り目MF1,VF2が視認可能となっている。なお、マスク本体2の積層体に設けられる折り目の構成は、
図4に示された構成に限定されない。例えば、マスク本体2の積層体に設けられる折り目の数が、
図4に示された構成の折り目の数よりも多くてもよく、また少なくてもよい。
【0032】
続いて、形状維持シート12の構成について説明する。
図3に示すように、マスク本体2の積層体に折り目が設けられる前の形状維持シート12は矩形状を有している。なお、折り目が設けられた後の形状維持シート12も、プリーツが閉じている状態の場合には矩形状を有している。但し、折り目が設けられる前の形状維持シート12は、縦方向の長さが、シートが縦方向に折り返されていない分、折り目が設けられた後の形状維持シート12よりも長い。
図3では、マスク本体2の積層体が折り返されたときに、形状維持シート12に形成される折り目の位置、すなわち
図4に示された折り目VF1,MF1,VF2
,MF2の位置を破線で示している。一方、横方向の長さについては、折り目が設けられる前の形状維持シート12は、折り目が設けられた後の形状維持シート12と同じである。
【0033】
そして、形状維持シート12は、横方向の中心部に配置され、マスク本体2の縦方向に延在する直線状の穿孔部分15を有している。穿孔部分15は、縦方向の上側から下側に向かって折り目VF1、折り目MF1、折り目VF2及び折り目MF2を越えるように延在している。
【0034】
図5に示すように、縦方向に延在する穿孔部分15では、複数の円形や楕円形のような略円形状の貫通孔15Aが縦方向に並んでいる。貫通孔15Aは、後述する穿孔装置によってフィルタシート11側から肌面シート13側に向かって穿孔された孔である。このため、
図6に示すように、貫通孔15Aでは、形状維持シート12の一部(後述する固化部分15B)が肌面シート13側に突出している。
【0035】
再び
図5に示すように、複数の貫通孔15Aの各々では、貫通孔15Aの周囲の縁に沿って固化部分15Bが設けられている。そして、隣り合う2つの貫通孔15Aの間では各々の固化部分15B同士が接している。このようにして、穿孔部分15では、上端から下端まで固化部分15Bが連続していて、固化部分15Bの連続体が縦方向に延在していると言える。
【0036】
また、固化部分15Bは、穿孔による熱で形状維持シート12の素材である不織布が軟化又は溶融して、膜状に固化したものであり、固化部分15B以外の不織布が固化していない部分よりも硬く、曲げ剛性が高くなっている。このため、固化部分15Bの連続体を含む穿孔部分15は、プリーツを広げた状態においてマスク本体2の積層体の柔軟な部分を支持可能となっている。これにより、マスク1を装着した着用者がプリーツを広げてマスク本体2の立体形状を定めたときに、穿孔部分15が、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分において、プリーツが折れ戻ろうとする種々の方向の力のうちの縦方向の力に抵抗して、折れ戻り難くすることができる。この結果、マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分の立体形状を維持することができる。なお、固化部分15Bは比較的硬いものの、柔軟性も備えているので、穿孔部分15はマスク本体2の積層体が折り返された後でも切断されることなく、立体形状を維持する機能を維持し得る。
【0037】
マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分のうち、
図3に示された穿孔部分15が延在している部分は、着用者の鼻(特に、鼻筋)及び口に対応する部分である。従って、このような部分に穿孔部分15が延在していることにより、ドーム状に膨らんだ部分のうちの着用者の鼻及び口に対応する部分の立体形状を効果的に維持することができる。
【0038】
また、固化部分15Bは比較的硬いものの、穿孔部分15を有する形状維持シート12(本開示の「中間シート」の一例)は、マスク本体2の積層体において着用者の肌面側の肌面シート13と非肌面側の外層シート10との間に配置されている。このため、形状維持シート12は着用者の肌面側に露出していなく、比較的硬い固化部分15Bが着用者の肌に直接当たることがない。よって、硬い部分が着用者の肌に直接当たるのを回避するための被覆部材を設ける必要もない。また、形状維持シート12が着用者の非肌面側にも露出していないので、非肌面側から見たときのマスク1の外観を損ねることもない。
【0039】
更にまた、
図6に示すように、貫通孔15Aでは、固化部分15Bの一部が肌面シート13側に突出している。これにより、形状維持シート12と肌面シート13との間に空間が生じるので、固化部分15Bの硬さを着用者に感じ難くすることができる。なお、貫通孔15Aは、肌面シート13側からフィルタシート11側に向かって穿孔されてもよい。
この場合には、貫通孔15Aでは、固化部分15Bの一部がフィルタシート11側に突出する。これにより、形状維持シート12とフィルタシート11との間に空間が生じるので、着用者が外層シート10側からマスク本体2を触れた際に固化部分15Bの硬さを違和感として感じ難くすることができる。
【0040】
更にまた、貫通孔15Aによってマスク本体2の通気性を確保することができるので、着用者は呼吸を楽に行うことができる。
【0041】
なお、前述した穿孔部分15では固化部分15B同士が接しているが、プリーツを広げた状態において積層体の柔軟な部分を支持可能であれば、固化部分15B同士が接していなく、固化部分15B同士間に固化していない部分が介在していてもよい。また、前述した穿孔部分15は複数の貫通孔15A及び固化部分15から構成されているが、1つの貫通孔15A及び固化部分15から構成されていてもよい。
【0042】
更にまた、前述した穿孔部分15は、略円形状の貫通孔15Aと、当該形状の貫通孔15Aの周囲の縁に沿って設けられた固化部分15Bを含むものであるが、貫通孔及び固化部分の形状はこれに限定されない。例えば、穿孔部分が、矩形状の貫通孔と、当該形状の貫通孔の周囲の縁に沿って設けられた固化部分を含むものであってもよく、また六角形状の貫通孔と、当該形状の貫通孔の周囲の縁に沿って設けられた固化部分を含むものであってもよい。
【0043】
このような穿孔部分15(貫通孔15A及び固化部分15B)の形成方法については、前述したように穿孔装置を用いて不織布のシート(穿孔部分15が形成される前の形状維持シート12)の所定部分を穿孔することにより、不織布のシートの当該所定部分に穿孔部分15を形成する。
【0044】
図7は、穿孔部分15を形成する工程の一例を示した図である。
【0045】
図7に示すように、不織布のシート(原反)20が、穿孔装置21に繰り出されている。
【0046】
穿孔装置21は、穿孔ローラ22と対面ローラ23により構成されている。穿孔ロール22にはヒータが内蔵されている。また、穿孔ローラ22の外周面には、当該ヒータによって加熱される穿孔針が設けられている。一方、対面ローラ23は穿孔ローラ22の上に配置されており、穿孔ローラ22と同じ回転速度で回転する。対面ローラ23の外周面には、穿孔針を受け入れ可能な受入口が開口されている。
【0047】
このような穿孔装置21において、穿孔ローラ22のヒータにより、穿孔針をシート20の素材(不織布)の融点±20℃の温度となるように穿孔針を加熱する。例えば、当該素材の融点の温度から当該融点よりも5℃低い温度までの範囲で加熱する。また、ローラ22,23を所定の回転速度で回転させる。このような状態において、シート20を穿孔ローラ22と対面ローラ23との間を通過させたときに、穿孔ローラ22の穿孔針がシート20を貫いて対面ローラ23の受入口に入り込み、受入口から出てシート20から離れる際に貫通孔15Aが形成される。そして、貫通孔15Aの形成と共に、シート20と穿孔針との接触が一瞬であれば、シート20における当該貫通孔15Aの周囲の縁の部分が溶融することなく軟化して、固化することにより、固化部分15Bが形成される。例えば、
図3に示された穿孔部分15をシート20に形成するときに、穿孔ローラ22の外周面においてローラの回転方向に対して垂直な方向に直線状に延在する穿孔針がシート20を貫いている間の時間が0.5秒である場合には、シート20の所定部分を溶融させることなく軟化させることができる。これにより、柔軟性を備えつつ、曲げ剛性が高い好適な穿
孔部分15をシート20に形成することができる。
【0048】
このようにして穿孔装置21によって穿孔部分15が形成された原反20が、前述した形状維持シート12となる。
【0049】
続いて、上記のような構成のマスク1の製造方法の一例について説明する。
【0050】
図8は、ロールを繰り出し積層する工程を示した図である。マスク1を構成する部材は、ロールシートの形態で製造ラインに設置される。一番上のロールには外層シート10の素材が、上から二番目のロールにはフィルタシート11の素材が、上から三番目のロールには形状維持シート12の素材(不織布のシート20)が、一番下のロールには肌面シート13の素材がそれぞれセットされ、ローラ30の圧力によって繰り出されて積層体となり、コンベア31の上を流れていく。以下の図面では省略するが、積層体はラインの複数個所に設けられたローラ30とコンベア31の力でライン上の工程を進む。
【0051】
また、
図8において、上から三番目のロールとローラ30との間の破線の矩形で示した部分には、前述した穿孔装置21が設置されている。これにより、原反20に穿孔部分15が形成されている。
【0052】
図9は、積層体にプリーツとノーズフィッターを組み込む工程を示した図である。積層体は黒矢印方向に流れていく間に、複数の金属片32の間を通過する。金属片32はライン上に固定されており、通過中の積層体を屈曲させて折りたたむ。金属片32の間を通過することにより、積層体はジグザクに折り畳まれ、この部分がプリーツになる。
【0053】
続いて、積層体の表面にはノーズフィッター7が配置される。本実施形態ではノーズフィッター7はローラ状になって提供され、切断配置装置33で適宜切断されて積層体の上に配置される。勿論、ノーズフィッター7の部材は予め切断されていてもよい。
【0054】
続いて、積層体のノーズフィッター側がライン上に固定された金属片34により折り返される。折り返されるシートは、積層体のうちの一部のシートであってもよいし、本実施形態のように全部であってもよい。これにより、ノーズフィッター7は、シートの中に包み込まれる。
【0055】
続いて、溶着装置35により、ノーズフィッター7を包み込んだシートと積層体とが溶着される。溶着方法は、熱溶着、振動溶着、超音波溶着であってよい。なお、ここでノーズフィッター7を挟み込むように溶着が行われてもよいし、ノーズフィッター7の延在方向左右に溶着が行われてもよい。このように溶着をすることで、ノーズフィッター7は完全に固定され、輸送中や装着中に移動することがなくなる。
【0056】
図10は、積層体下部を溶着し、切断する工程を示した図である。溶着装置35により、積層体のノーズフィッター7と反対側についても溶着が行われる。これまで連続体として加工されてきた積層体は、カッター36で横目方向に切断される。これ以降は、切断された積層体は、それぞれに耳紐とカバーをつけられてマスク本体となる。
【0057】
図11は、耳紐3、4を設置し、カバーシートで固定する工程を示した図である。
図11(a)では、左右の耳紐3、4を積層体の上に配置する。
図11(b)では、耳紐3、4と積層体を包み込むようにカバーシート37を配置する。カバーシート37は、熱可塑性を有するポリマーシートで構成されており、積層体と溶着することができる。
図11(c)では、このように形成したカバーシート37を溶着したものである。この状態で包装をすることでマスクの製造工程は完結する。
【0058】
前述した穿孔部分15の形成方法を含む本実施形態のマスク1の製造方法によれば、単に外層シート10、フィルタシート11及び肌面シート13と共に形状維持シート12を積層するだけでよいので、マスク本体2の立体形状を維持するための部材(穿孔部分15)をマスク本体2に組み込むのが容易になる。
【0059】
また、穿孔部分15を形状維持シート12に形成しているので、ロールから形状維持シート12を繰り出したときに形状維持シート12に撚れなどが発生し難く、歩留まりの低下を抑えることができる。更に、立体形状を維持するための部材を積層体に配置している訳ではないので、当該部材を配置するときに同期を取る必要もない。これらの結果、立体形状を維持するための部材の設計の自由度を高めることができる。
【0060】
<穿孔部分の別の形成方法>
図12は、穿孔部分を形成する工程の別例を示した図である。
【0061】
図12において、上から二番目のロール及び上から三番目のロールとローラ30との間の破線の矩形で示した部分には、前述した穿孔装置21が設置されている。
図10に示すように、上から二番目のロールにフィルタシート11の素材がセットされ、上から三番目のロールに形状維持シート12の素材(不織布のシート20)がセットされ、穿孔装置21に繰り出される。穿孔装置21の穿孔ローラ22ではシート20の素材の融点よりも高く、且つフィルタシート11の素材の融点より低い温度となるように穿孔針を加熱する。また、ローラ22,23を所定の回転速度で回転させる。このような状態において、フィルタシート11及び不織布のシート20を穿孔ローラ22と対面ローラ23との間を通過させると、シート20と穿孔針との接触が一瞬であれば、前述したように貫通孔の形成と共にシート20における当該貫通孔の周囲の縁の部分が溶融することなく軟化して、固化する。仮にシート20の貫通孔の周囲の縁の部分が溶融してしまったとしても、シート20に隣接するフィルタシート11はシート20よりも融点が高い、又は熱で融解しないので、フィルタシート11で溶融した部分を受け止めることができる。この結果、穿孔部分がシート20に形成されて形状維持シート12となると共に、穿孔部分の固化部分を介して形状維持シート12がフィルタシート11に接着される。
【0062】
なお、この別例では、形状維持シート12が穿孔部分を介して接着するシートはフィルタシート11に限定されない。そのようなシートは、例えば、形状維持シート12と肌面シート13との間に配置された他のシートでもよく、また当該他のシート及びフィルタシート11の両方でもよい。
【0063】
<第1の実施形態の穿孔部分の変形例>
本実施形態の穿孔部分の形状や配置は
図3に示した穿孔部分15の形状や配置に限定されない。以下、種々の穿孔部分の変形例の構成について説明する。
【0064】
図13~
図14は、第1の実施形態の形状維持シート12の穿孔部分の変形例(その1~その2)の構成を示す平面図である。
【0065】
例えば、
図13に示すように、形状維持シート12が、横方向の中心部に配置され、縦方向に延在する直線状の穿孔部分15を複数有してもよい。更に、複数の穿孔部分15が、平行に配置されてもよい。
【0066】
このように、穿孔部分15が複数配置されることにより、着用者がプリーツを広げたときに、穿孔部分15が1つ配置される場合よりも強く縦方向のプリーツが折れ戻ろうとする力に抵抗して、より一層折れ戻り難くすることができる。更に、複数の穿孔部分15が
平行に配置されることにより、より一層効果的に折れ戻り難くすることができる。
【0067】
また、
図14に示すように、形状維持シート12を横方向に4等分にして(二点鎖線で示す仮想線を参照)、形状維持シート12に仮想的な4つの領域R1~R4を形成したときに、穿孔部分15が、4つの領域R1~R4のうちの中央の2つの領域R2,R3の各々に1つずつ配置されてもよい。
【0068】
中央の2つの領域R2,R3は、着用者の鼻及び口を覆う領域であり、着用者がプリーツを広げる可能性が高い領域である。このような領域R2,R3の各々に穿孔部分15が配置されることにより、縦方向のプリーツが折れ戻ろうとする力に効果的に抵抗することができる。
【0069】
上記の例では、穿孔部分15はマスク本体2の縦方向に延在するものであるが、穿孔部分はマスク本体2の斜め方向に延在するものであってもよい。
図15~
図18は、そのような形状維持シート12の穿孔部分の変形例(その3~その6)の構成を示す平面図である。
【0070】
例えば、
図15に示すように、形状維持シート12は、斜め方向に延在する直線状の穿孔部分40を複数有してもよい。この例では、形状維持シート12を横方向に2等分にして(二点鎖線で示す仮想線を参照)、形状維持シート12に仮想的な2つの領域R5,R6を形成したときに、穿孔部分40は、2つの領域R5,R6の各々に1つずつ配置されている。左側の領域R5に配置された穿孔部分16は領域R5の右上側から左下側に延在し、右側の領域R6に配置された穿孔部分40は領域R6の左上側から右下側に延在している。つまり、2つの穿孔部分40は、ハの字のように互いに交わる方向に配置されている。穿孔部分40は、縦方向の上側から下側に向かって折り目VF1、折り目MF1、折り目VF2及び折り目MF2を越えるように延在している。
【0071】
穿孔部分40は、穿孔部分15と同じくプリーツを広げた状態においてマスク本体2の積層体の柔軟な部分を支持可能となっている。このため、複数の穿孔部分40が交わる方向に配置されていることにより、着用者がプリーツを広げたときに、複数の穿孔部分40が、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分において、プリーツが折れ戻ろうとする種々の方向の力のうちの斜め方向の力に抵抗して、折れ戻り難くすることができる。
【0072】
また、マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分のうち、
図15に示された2つの穿孔部分40が延在している部分は、着用者の鼻の両側部及び口の両側部に沿った部分である。従って、このような部分に穿孔部分40が延在していることにより、穿孔部分16が着用者の鼻及び口に当たるのを回避しながら、マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分のうちの着用者の鼻及び口に対応する部分の立体形状を効果的に維持することができる。
【0073】
また、
図16に示すように、形状維持シート12の左側の領域R5において右上側から左下側に延在し、互いに平行に配置された2つの穿孔部分40を有し、右側の領域R6において左上側から右下側に延在し、互いに平行に配置された2つの穿孔部分40を有してもよい。これにより、領域R5,R6の各々に穿孔部分40が1つずつ配置される場合よりも強く斜め方向のプリーツが折れ戻ろうとする力に抵抗して、より一層折れ戻り難くすることができる。
【0074】
更にまた、
図17に示すように、形状維持シート12を横方向に4等分にし、且つ縦方向に2等分して(二点鎖線で示す仮想線を参照)、形状維持シート12に仮想的な8つの領域R7~R14を形成したときに、穿孔部分40が、8つの領域R7~R14のうちの
横方向の両端部、且つ縦方向の両端部の4つのR7,R10,R11及びR14の各々に1つずつ配置されてもよい。更に、左上端部の領域R7に配置された穿孔部分40は領域R7の左上側から右下側に延在し、右上端部の領域R10に配置された穿孔部分40は領域R10の右上側から左下側に延在してもよい。また、左下端部の領域R11に配置された穿孔部分40は領域R11の左下側から右上側に延在し、右下端部の領域R14に配置された穿孔部分40は領域R14の右下側から左上側に延在してもよい。つまり、複数の穿孔部分40が、横方向の中央部、且つ縦方向の中央部に向けて延在してもよい。
【0075】
前述したように、マスク本体2の左右両側の側部5,6が接合されているので、側部5,6で折り目の展開が阻止されている。このため、着用者がプリーツをマスク本体2の縦方向に広げても、プリーツの左右両端部では縦方向に完全には広がらず、斜め方向に若干広がる程度である。
【0076】
これに対し、本変形例では、穿孔部分40が、横方向の両端部、且つ縦方向の両端部の4つのR7,R10,R11及びR14の各々に1つずつ配置され、横方向の中央部、且つ縦方向の中央部に向けて延在している。これにより、着用者がプリーツを広げたときに、複数の穿孔部分40の各々がプリーツの左右両端部に対して略直交するようになり、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分においてプリーツが折れ戻ろうとする種々の方向の力のうち、ドーム状に膨らんだ部分の周辺部における斜め方向の力に抵抗して、折れ戻り難くすることができる。
【0077】
更にまた、
図18に示すように、2つの穿孔部分40が、形状維持シート12の横方向の中心部において、互いに交わるように配置されてもよい。
【0078】
このように、複数の穿孔部分40が交わるように配置されることにより、着用者がプリーツを広げたときに、複数の穿孔部分40が、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分において、プリーツが折れ戻ろうとする種々の方向の力のうちの斜め方向の力に抵抗して、折れ戻り難くすることができる。
【0079】
また、マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分のうち、
図18に示された穿孔部分40が延在している部分は、着用者の口に対応する部分である。従って、このような部分に穿孔部分40が延在していることにより、マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分のうちの着用者の口に対応する部分の立体形状を効果的に維持することができる。
【0080】
上記の例では、穿孔部分15,40が直線状に延在するものであるが、穿孔部分が曲線状に延在するものであってもよい。
図19~
図23は、そのような形状維持シート12の穿孔部分の変形例(その7~その11)の構成を示す平面図である。
【0081】
例えば、
図19に示すように、形状維持シート12が、横方向の中心部に配置され、縦方向と略同じ方向に延在する曲線状の穿孔部分41を複数有してもよい。この例では、2つの穿孔部分41が、それぞれ穿孔部分41の凸状に膨らんだ部分が横方向の中心側に向くように配置されている。穿孔部分41は、縦方向の上側から下側に向かって折り目VF1、折り目MF1、折り目VF2及び折り目MF2を越えるように延在している。
【0082】
穿孔部分41は、穿孔部分15と同じくプリーツを広げた状態においてマスク本体2の積層体の柔軟な部分を支持可能となっている。このため、穿孔部分41が縦方向と略同じ方向に延在することにより、着用者がプリーツを広げたときに、穿孔部分41が、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分において、プリーツが折れ戻ろうとする種々の方向の力のうちの縦方向と略同じ方向の力に抵抗して、折れ戻り難くすることができる。
【0083】
また、凸状に膨らんだ部分が横方向の中心側に向くように穿孔部分41が配置されている。穿孔部分41の凸状に膨らんだ部分は曲線状であるので、肌当たりが柔らかい。このため、凸状に膨らんだ部分が着用者の鼻等に当たったとしても、着用者の不快感を低減することができる。
【0084】
また、
図20に示すように、斜め方向に延在する直線状部分、及び縦方向に延在する直線状部分が連続して配置されることにより、縦方向と略同じ方向に延在する略曲線状の穿孔部分42が形成されてもよい。穿孔部分42もまた、穿孔部分15と同じくプリーツを広げた状態においてマスク本体2の積層体の柔軟な部分を支持可能となっている。
【0085】
更にまた、
図21に示すように、形状維持シート12を横方向に2等分にして(二点鎖線で示す仮想線を参照)、形状維持シート12に仮想的な2つの領域R5,R6を形成したときに、穿孔部分41が、2つの領域R5,R6の各々に複数配置されてもよい。更に、左側の領域R5に配置された複数の穿孔部分41は、左側端部側に配置されたものほど左側端部に大きく湾曲し、右側の領域R6に配置された複数の穿孔部分41は、右側端部側に配置されたものほど右側端部に大きく湾曲してもよい。
【0086】
このように、複数の穿孔部分41が、横方向の端部側に配置されたものほど当該端部側に大きく湾曲していることにより、着用者がプリーツを広げたときに、複数の穿孔部分41が、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分の形状に沿うようになる。これにより、マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分の形状を効果的に維持することができる。
【0087】
また、このような穿孔部分41の配置によれば、マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分のうちの着用者の鼻及び口に対応する部分では穿孔部分41の割合が少なくなる、言い換えると不織布のままの部分の割合が多くなるので、通気性が良い。このため、着用者は呼吸を楽に行うことができる。
【0088】
更にまた、
図22に示すように、複数の穿孔部分41が、折れ線VF1,MF1,VF2,MF2と略直交するように配置されてもよい。
【0089】
これにより、着用者がプリーツを広げてマスク本体2の立体形状を定めたときに、複数の穿孔部分41が、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分においてプリーツが折れ戻ろうとする力に抵抗して、折れ戻り難くすることができる。
【0090】
更にまた、
図23に示すように、穿孔部分41が、縦方向と略同じ方向に円弧状に延在し、複数の穿孔部分41が、二点鎖線で示した形状維持シート12の横方向の仮想的な中心線に対して線対称に配置されてもよい。
【0091】
これにより、着用者がプリーツを広げてマスク本体2の立体形状を定めたときに、複数の穿孔部分41が、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分の形状に沿うようになる。特に、マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分の縁は、着用者の鼻根及び顎を通る略円形状となっている。従って、このような縁の一部に沿うように穿孔部分41が延在することにより、マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分の形状を効果的に維持することができる。
【0092】
なお、
図21~
図23に示された穿孔部分の配置において、穿孔部分41を替えて、
図20に示された穿孔部分42を用いてもよい。
【0093】
また、形状維持シート12のほぼ全面に穿孔部分が配置されていてもよい。
図24~
図27は、そのような形状維持シート12の穿孔部分の変形例(その12~その15)の構成を示す平面図である。
【0094】
例えば、
図24に示すように、形状維持シート12が、縦方向に延在する穿孔部分15を有している場合に、形状維持シート12を横方向に4等分にして(二点鎖線で示す仮想線を参照)、形状維持シート12に仮想的な4つの領域R1~R4を形成したときに、4つの領域R1~R4のうちの中央の2つの領域R2,R3における貫通孔の面積の和が、両端の2つの領域R1,R4における貫通孔の面積の和よりも大きくてもよい。
【0095】
前述したように、中央の2つの領域R2,R3は、着用者の鼻及び口を覆う領域である。このような領域R2,R3における通気性が良い貫通孔の面積の和が比較的大きいことにより、着用者の呼吸を容易にすることができる。
【0096】
一方、両端の2つの領域R1,R4は、着用者の両頬を覆う領域である。このような領域R1,R4における貫通孔の面積の和が比較的小さい、言い換えると領域R1,R4では固化部分が比較的密に配置されている。これにより、着用者がプリーツを広げたときに、固化部分が、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分のうちの着用者の両頬に対応する部分の立体形状を効果的に維持することができる。
【0097】
また、
図25に示すように、形状維持シート12が、横方向に延在する穿孔部分43を有している場合に、形状維持シート12を縦方向に4等分にして(二点鎖線で示す仮想線を参照)、形状維持シート12に仮想的な4つの領域R15~R18を形成したときに、4つの領域R15~R18のうちの中央の2つの領域R16,R17における貫通孔の面積の和が、両端の2つの領域R15,R18における貫通孔の面積の和よりも大きくてもよい。
【0098】
中央の2つの領域R16,R17は、着用者の鼻及び口を覆う領域である。このような領域R16,R17における通気性が良い貫通孔の面積の和が比較的大きいことにより、着用者の呼吸を容易にすることができる。
【0099】
一方、両端の2つの領域R15,R18は、着用者の鼻根及び下顎を覆う領域である。このような領域R15,R18における貫通孔の面積の和が比較的小さい、言い換えると領域R15,R18では固化部分が比較的密に配置されている。これにより、着用者がプリーツを広げたときに、固化部分が、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分のうちの着用者の鼻根及び下顎に対応する部分の立体形状を効果的に維持することができる。
【0100】
更にまた、
図26に示すように、形状維持シート12が、縦方向に延在する穿孔部分15と、点状に存在する穿孔部分44を有している場合に、形状維持シート12を横方向に同じ長さ、例えば10mmで分けて(二点鎖線で示す仮想線を参照)、形状維持シート12に仮想的な複数の領域R19~R26を形成したときに、複数の領域R19~R26のうちの中央の領域R22又は領域R23における貫通孔の面積の和が、両端の2つの領域R19,R26の各々における貫通孔の面積の和よりも大きくてもよい。
【0101】
中央の領域R22又は領域23では、貫通孔の面積の和、言い換えると貫通孔の縦方向の長さの和が比較的大きくなっている。これにより、固化部分の縦方向の長さを長くすることができる。
【0102】
更にまた、
図27に示すように、形状維持シート12が、横方向に延在する穿孔部分4
3と、点状に存在する穿孔部分44を有している場合に、形状維持シート12を縦方向に同じ長さ、例えば10mmで分けて(二点鎖線で示す仮想線を参照)、形状維持シート12に仮想的な複数の領域R27~R32を形成したときに、複数の領域R27~R32のうちの中央の領域R29又は領域R30における貫通孔の面積の和が、両端の2つの領域R27,R32の各々における貫通孔の面積の和よりも大きくてもよい。
【0103】
中央の領域R29又は領域30では、貫通孔の面積の和、言い換えると貫通孔の横方向の長さの和が比較的大きくなっている。これにより、固化部分の縦方向の長さを長くすることができる。
【0104】
<第2の実施形態>
図28は、第2の実施形態の形状維持シート12の固化部分の一例の構成を示す平面図である。
図28では、マスク本体2の積層体にプリーツ状の折り目が設けられる前の形状維持シート12の状態を示している。
【0105】
図28に示すように、形状維持シート12は、当該シート12の四隅の角部の各々に1つずつ配置され、斜め方向に延在する直線状の穿孔部分50を有している。四隅の角部のうち、左上角部に配置された穿孔部分50は、当該角部の左下側から右上側に延在し、右上角部に配置された穿孔部分50は、当該角部の左上側から右下側に延在している。これらの穿孔部分50はまた、折り目VF1,MF1と交わるように延在している。更に、右下角部に配置された穿孔部分50は、当該角部の右上側から左下側に延在し、左下角部に配置された穿孔部分50は、当該角部の右下側から左上側に延在している。これらの穿孔部分50はまた、折り目VF2,MF2と交わるように延在している。
【0106】
左上角部及び右上角部に配置された穿孔部分50の上側端部UEは、二点鎖線で示す形状維持シート12の横方向の中心、すなわちマスク本体2の横方向の中心から30mmから45mmの位置に配置されている。更に、左下角部及び右下角部に配置された穿孔部分50の下側端部LEは、マスク本体2の横方向の中心から30mmから45mmの位置に配置されている。また、左上角部に配置された穿孔部分50の下側端部LE、及び左下角部に配置された穿孔部分50の上側端部UEは、形状維持シート12の側部、すなわちマスク本体2の左側の側部5から5mmから15mm離れている。更に、右上角部に配置された穿孔部分50の下側端部LE、及び右下角部に配置された穿孔部分50の上側端部UEは、マスク本体2の右側の側部6から5mmから15mm離れている。
【0107】
また、穿孔部分50は、穿孔部分15と同じく、貫通孔と、当該貫通孔の周囲の縁に沿って設けられた固化部分から構成されている。
【0108】
すなわち、斜め方向に延在する穿孔部分50では、複数の略円形状の貫通孔が斜め方向に並んでいる。複数の貫通孔の各々では、貫通孔の周囲の縁に沿って固化部分が設けられている。そして、隣り合う2つの貫通孔の間では各々の固化部分同士が接している。このようにして、穿孔部分50では、上側端部UEから下側端部LEまで固化部分が連続していて、固化部分の連続体が斜め方向に延在していると言える。また、固化部分は、穿孔による熱で形状維持シート12の素材である不織布が軟化又は溶融して、膜状に固化したものであり、固化部分以外の不織布が固化していない部分よりも硬くなっている。
【0109】
これにより、形状維持シート12を含む積層体は、マスク本体2の中心部側からのプリーツが広がろうとする力を受けたときに、固化部分の連続体を含む穿孔部分50に沿って折れ曲がり易くなっている。このため、積層体が穿孔部分50のマスク本体2の中心部側の端部で一度折れ曲がると、積層体が折れ戻り難くなる。つまり、穿孔部分50は、広げられたプリーツが元の形状へ戻るのを阻害することができると言える。これにより、積層
体が折れ曲がった状態を維持することができる。この結果、マスク1を装着した着用者がプリーツを広げてマスク本体2の立体形状を定めたときに、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分の立体形状を維持することができる。なお、穿孔部分50の固化部分は比較的硬いものの、柔軟性も備えているので、マスク本体2の積層体が折り返された後でも切断されることなく、立体形状を維持する機能を維持し得る。
【0110】
しかも、穿孔部分50が折り目VF1,MF1,VF2,MF2と交わるように延在しているので、プリーツを広げたときに、積層体が当該折り目の延在方向と異なる方向に沿って折れ曲がるようになる。例えば、穿孔部分50が折り目と交わらず平行に延在している場合、積層体は折り目の延在方向と同じ方向に沿って折れ曲がるようになる。しかし、この場合では、折れ曲がる方向が、折れ戻ろうとする方向と反対ではあるものの、平行になってしまうので、折れ戻ろうとする力を受け易くなってしまう。本実施形態では、穿孔部分50が“折り目”として機能することにより、積層体が折り目VF1,MF1,VF2,MF2の延在方向と異なる方向に沿って折れ曲がるようになるので、折れ戻ろうとする力を受け難くなり、積層体が折れ曲がった状態をより一層維持することができる。
【0111】
また、前述した穿孔部分50の配置によって形成されたマスク本体2のドーム状に膨らんだ部分は、着用者の縦方向には鼻根から下顎まで、横方向には左頬から左頬までを覆う部分である。従って、本配置によって着用者に適切な立体形状を形成することができる。特に、前述した左上角部及び右上角部の穿孔部分50の上側端部UEの位置により、着用者の鼻根を起点とするドーム状に膨らんだ部分を形成することができる。
【0112】
更にまた、前述した左上角部の穿孔部分50の下側端部LE、及び左下角部の穿孔部分15の上側端部UEの位置と、右上角部の穿孔部分15の下側端部LE、及び右下角部の穿孔部分15の上側端部UEの位置により、プリーツを広げたときにマスク本体2の側部5,6が着用者の非肌面側に反り返ったとしても、穿孔部分15まで反り返らないので、穿孔部分15による積層体を折れ戻り難くする機能を維持することができる。
【0113】
<第2の実施形態の穿孔部分の変形例>
本実施形態の穿孔部分の形状や配置は
図28に示した穿孔部分50の形状や配置に限定されない。以下、種々の穿孔部分の変形例の構成について説明する。
【0114】
図29~
図38は、第2の実施形態の形状維持シート12の穿孔部分の変形例(その1~その10)の構成を示す平面図である。
【0115】
例えば、
図29に示すように、形状維持シート12が、
図28と同様に当該シート12の四隅の角部の各々に1つずつ配置され、略斜め方向に延在する曲線状の穿孔部分51を有してもよい。穿孔部分51は、穿孔部分50と同じく広げられたプリーツが元の形状へ戻るのを阻害することができるので、積層体が折れ曲がった状態を維持することができる。
【0116】
また、
図30に示すように、形状維持シート12が、縦方向と略同じ方向に延在する曲線状の穿孔部分52を複数有してもよい。更に、穿孔部分52が、横方向の端部側に湾曲した円弧状を有していてもよい。更にまた、複数の穿孔部分52が、二点鎖線で示すマスク本体2の横方向の仮想的な中心線に対して線対称に配置されてもよい。この例では、左側に配置された穿孔部分52の上側端部UE及び下側端部LEは、マスク本体2の横方向の中心から30mmから45mmの位置に配置されていて、右側に配置された穿孔部分52の上側端部UE及び下側端部LEは、マスク本体2の横方向の中心から30mmから45mmの位置に配置されている。更に、左側に配置された穿孔部分52は、その中央部マスク本体2の左側端部に最も近くなっていて、右側に配置された穿孔部分52は、その中
央部がマスク本体2の右側端部に最も近くなっている。
【0117】
穿孔部分52は、穿孔部分50と同じく広げられたプリーツが元の形状へ戻るのを阻害することができるので、積層体が折れ曲がった状態を維持することができる。また、前述した穿孔部分52の配置によって形成されたマスク本体2のドーム状に膨らんだ部分は、着用者の鼻及び口を覆う部分である。従って、本例の配置によって着用者に適切な立体形状を形成することができる。
【0118】
また、
図31に示すように、形状維持シート12が、
図30に示された穿孔部分52に加えて、更に横方向の中心部に配置され、縦方向に延在する直線状の穿孔部分60を有してもよい。
【0119】
穿孔部分60は、穿孔部分15や穿孔部分50と同じく、貫通孔と、当該貫通孔の周囲の縁に沿って設けられた固化部分から構成されている。そして、穿孔部分60の固化部分は、穿孔部分15の固化部分15Bや穿孔部分50の固化部分と同様に、形状維持シート12の素材である不織布が軟化又は溶融して、膜状に固化したものであり、不織布が固化していない部分よりも硬く、曲げ剛性が高くなっている。このため、穿孔部分50は、プリーツを広げた状態においてマスク本体2の積層体の柔軟な部分を支持可能となっている。これにより、プリーツを広げたときに、穿孔部分60が、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分において、プリーツが折れ戻ろうとする種々の方向の力のうちの縦方向の力に抵抗して、折れ戻り難くすることができる。このため、穿孔部分52に加えて穿孔部分60を有することにより、マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分の立体形状を効果的に維持することができる。
【0120】
但し、穿孔部分60よりも穿孔部分52の方で折れ曲がり易くする必要があるため、この例では、穿孔部分52の幅(横方向の長さ)は穿孔部分60の幅よりも太いことが望ましい。
【0121】
プリーツを広げた状態においての積層体の柔軟な部分を支持可能な穿孔部分の形状や配置は、
図31に示した穿孔部分60の形状や配置に限定されない。
図32~
図37にそのような穿孔部分の構成の変形例を示す。
【0122】
例えば、
図32に示すように、形状維持シート12が、穿孔部分52に加えて、更に横方向の中心部に配置され、縦方向に延在する直線状の穿孔部分60を複数有してもよい。更に、複数の穿孔部分60が平行に配置されていてもよい。
【0123】
また、
図33に示すように、形状維持シート12が、穿孔部分52に加えて、更に斜め方向に延在する直線状の穿孔部分61を複数有してもよい。この例では、左側に配置された穿孔部分61は右上側から左下側に延在し、右側に配置された穿孔部分61は左上側から右下側に延在している。つまり、2つの穿孔部分61は、ハの字のように互いに交わる方向に配置されている。
【0124】
斜め方向に延在する穿孔部分61は、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分において、プリーツが折れ戻ろうとする種々の方向の力のうちの斜め方向の力に抵抗して、折れ戻り難くすることができる。
【0125】
更にまた、
図34に示すように、2つの穿孔部分61が、形状維持シート12の横方向の中心部において、互いに交わるように配置されてもよい。
【0126】
更にまた、
図35に示すように、形状維持シート12が、穿孔部分52に加えて、更に
横方向の中心部に配置され、縦方向と略同じ方向に延在する曲線状の穿孔部分62を複数有してもよい。この例では、2つの穿孔部分62が、それぞれ穿孔部分62の凸状に膨らんだ部分が横方向の中心側に向くように配置されている。
【0127】
縦方向と略同じ方向に延在する穿孔部分62は、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分において、プリーツが折れ戻ろうとする種々の方向の力のうちの縦方向と略同じ方向の力に抵抗して、折れ戻り難くすることができる。
【0128】
更にまた、
図36に示すように、形状維持シート12が、穿孔部分52に加えて、更に斜め方向に延在する直線状部分、及び縦方向に延在する直線状部分が連続して配置されることによって形成された、縦方向と略同じ方向に延在する略曲線状の穿孔部分63を複数有してもよい。
【0129】
そして、
図37に示すように、2つの穿孔部分62が、
図35の構成とは反対に、それぞれ穿孔部分62の凸状に膨らんだ部分が横方向の端部側に向くように配置されていてもよい。更に、穿孔部分52,62が、二点鎖線で示すマスク本体12の横方向の仮想的な中心線に対して線対称に配置されてもよい。
【0130】
図31に続いて、
図38に示すように、形状維持シート12が、縦方向と同じ方向に延在する直線状の穿孔部分53を複数有してもよい。更に、穿孔部分53は、二点鎖線で示すマスク本体2の横方向の中心から30mmから50mmの位置に配置されていてもよい。
【0131】
穿孔部分53は、穿孔部分50と同じく広げられたプリーツが元の形状へ戻るのを阻害することができるので、積層体が折れ曲がった状態を維持することができる。また、前述した穿孔部分50~52は、マスク本体2のドーム状に膨らんだ部分のうちの下端部における折れ曲がりの起点として機能している。これに対して、本例の穿孔部分53は、ドーム状に膨らんだ部分のうちの天井部における折れ曲がりの起点として機能していると共に、天井部を支える梁としても機能している。このため、本例の配置により、積層体が折れ曲がった状態を効果的に維持することができる。
【0132】
<実施形態の変形例>
マスク本体2を積層する外層シート10、フィルタシート11、形状維持シート12、肌面シート13の各シートのいずれかまたは複数、特に、外層シート10、肌面シート13については、スパンボンド不織布のような長繊維の不織布を用いてもよい。この際、長繊維の繊維配向(MD方向)をプリーツ(折り目)の延在方向と一致させないことが望ましい。
【0133】
長繊維の不織布を繊維配向と略直交するように歪曲させると復元力がより強く働き、元の平面の状態に戻ろうとする。このため、繊維配向と略直交するように不織布を折り曲げてプリーツを形成すれば、プリーツは容易に開くようになる。更に、着用者がプリーツを広げたときに、マスク本体2に形成されたドーム状に膨らんだ部分において、プリーツが折れ戻ろうとする種々の方向の力のうちの縦方向の力に抵抗して、折れ戻り難くすることができる。従って、例えば、
図3に示すように形状維持シート12が縦方向に延在する穿孔部分15を有している場合には、より一層強く縦方向のプリーツが折れ戻ろうとする力に抵抗して、より一層折れ戻り難くすることができる。
【0134】
以上で開示した実施形態や変形例は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0135】
1・・マスク
2・・マスク本体
3,4・・耳紐
5,6・・側部
7・・ノーズフィッター
10・・外層シート
11・・フィルタシート
12・・形状維持シート
13・・肌面シート
15、40~44、50~53、60~63・・穿孔部分
20・・不織布のシート
21・・穿孔装置
22・・穿孔ローラ
23・・対面ローラ
30・・ローラ
31・・コンベア
32・・金属片
33・・切断配置装置
34・・金属片
35・・溶着装置
36・・カッター
37・・カバーシート
R1~R32・・形状維持シートの仮想的な領域
VF1、MF1、VF2、MF2・・マスク本体の折り目