(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】多気筒内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 17/02 20060101AFI20240903BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
F02D17/02 V
F02D45/00 345
F02D45/00 368F
(21)【出願番号】P 2020211814
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉本 仁己
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-100486(JP,A)
【文献】特開2013-148011(JP,A)
【文献】特開2018-193973(JP,A)
【文献】特開2007-085176(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0312785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 17/02
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に設けられる触媒の上流に配置される酸素を検出する排気センサと、1つ以上の気筒を含む第1の気筒群と、1つ以上の気筒を含む第2の気筒群と、実行装置と、を備え、前記第1の気筒群に含まれる気筒から排出される酸素に対する前記排気センサの検出値が前記第2の気筒群に含まれる気筒から排出される酸素に対する前記排気センサの検出値よりも大きくなるような吸入空気量の範囲が存在する多気筒内燃機関に適用される、多気筒内燃機関の制御装置であって、
前記実行装置は、
前記多気筒内燃機関の何れか1つの気筒に対して吸気バルブ及び排気バルブを開閉させつつ当該気筒への燃料供給を停止させ、かつ前記何れか1つの気筒以外の気筒に燃料を供給する特定気筒フューエルカット制御を実行する特定気筒フューエルカット処理と、
前記排気センサの検出値が、前記燃料供給を停止する供給停止気筒に対する燃料供給の停止が実行できているか否かを判定するための値として予め定められた判定値以下のときに、前記供給停止気筒に異常があると判定する異常判定処理と、を実行し、
前記実行装置は、
前記特定気筒フューエルカット処理
の一部として、前記吸入空気量が前記範囲内である場合に第1の気筒群の1つの気筒を前記供給停止気筒とする停止気筒選択処理
を実行する、多気筒内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記第1の気筒群は2つ以上の気筒を含み、
前記停止気筒選択処理は、前記第1の気筒群に含まれる気筒毎の燃料供給回数の相対関係を把握可能な供給履歴情報に基づいて、前記第1の気筒群の燃料供給回数のばらつきが低減されるように、燃料供給を停止する噴射供給停止気筒を選択する請求項1に記載の多気筒内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記停止気筒選択処理は、前記第1の気筒群に含まれる気筒毎の供給停止回数を前記供給履歴情報として算出し、前記供給停止回数が最小である気筒を、前記供給停止気筒とする請求項2に記載の多気筒内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記停止気筒選択処理は、前記第1の気筒群に含まれる気筒毎の燃料供給回数を前記供給履歴情報として算出し、前記燃料供給回数が最大である気筒を前記供給停止気筒とする請求項2に記載の多気筒内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は多気筒内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、停止対象となる気筒の燃料供給を停止するとともに該気筒の吸気弁および排気弁を閉じる気筒停止制御の実行中に、排気通路に設けられる排気センサの出力値に基づいて、気筒停止機構の動作異常を検出する多気筒内燃機関の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、排気通路に設けられる触媒に酸素を供給するために一部の気筒への燃料供給を停止し、残りの気筒への燃料供給を実施することを検討した。さらに、触媒の上流に設けられる上流側排気センサの出力値に基づいて、燃料供給を停止する気筒に燃料が供給されるという異常の有無を検出することを検討した。このとき、排気管の形状や排気センサと気筒の相対位置により、各気筒からの排気に対して、排気センサの検出値に差が生じる可能性がある。このため、燃料供給を停止する気筒によって、正常に燃料供給の停止が実行できているのにも関わらず、排気センサの検出値が低いことにより、異常判定がなされる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
上記課題を解決するための多気筒内燃機関の制御装置は、第1の気筒群に含まれる気筒から排出される酸素に対する排気センサの検出値が第2の気筒群に含まれる気筒から排出される酸素に対する前記排気センサの検出値よりも大きくなるような吸入空気量の範囲が存在する多気筒内燃機関に適用され、実行装置が、前記多気筒内燃機関の何れか1つの気筒に対して吸気バルブ及び排気バルブを開閉させつつ当該気筒への燃料供給を停止させ、かつ前記何れか1つの気筒以外の気筒に燃料を供給する特定気筒フューエルカット制御を実行する特定気筒フューエルカット処理と、前記排気センサの検出値が、前記燃料供給を停止する供給停止気筒に対する燃料供給の停止が実行できているか否かを判定するための値として予め定められた判定値以下のときに、前記供給停止気筒に異常があると判定する異常判定処理と、を実行し、前記多気筒内燃機関の何れか1つの気筒への燃料供給を停止させ、かつ前記何れか1つの気筒以外の気筒に燃料を供給する特定気筒フューエルカット制御を実行する特定気筒フューエルカット処理と、前記排気センサの検出値に基づいて、前記燃料供給を停止する供給停止気筒に異常があるか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、前記実行装置は、前記特定気筒フューエルカット処理の一部として、前記吸入空気量が前記範囲内である場合に第1の気筒群の1つの気筒を前記供給停止気筒とする停止気筒選択処理を実行することをその要旨とする。
【0006】
上記構成によれば、排気センサの酸素に対する検出値の大きい第1の気筒群の1つの気筒を供給停止気筒とする。このため、排気センサの検出値の大きい気筒が供給停止気筒となることで、正常に燃料供給の停止が実行できているのにも関わらず、特定気筒フューエルカット制御が異常と判定される可能性を低下できる。
【0007】
上記多気筒内燃機関の制御装置において、さらに、前記第1の気筒群は2つ以上の気筒を含み、前記停止気筒選択処理は、前記第1の気筒群に含まれる気筒毎の燃料供給回数の相対関係を把握可能な供給履歴情報に基づいて、前記第1の気筒群の燃料供給回数のばらつきが低減されるように、燃料供給を停止する供給停止気筒を選択する。
【0008】
上記構成によれば、2つ以上の第1の気筒群の気筒毎の燃料供給回数の相対関係を把握可能な供給履歴情報に基づいて、燃料供給回数のばらつきが低減されるように供給停止気筒を選択する。このため、第1の気筒群に含まれる気筒毎の燃料供給回数のばらつきが低減される。
【0009】
上記多気筒内燃機関の制御装置において、さらに、前記停止気筒選択処理は、前記供給履歴情報として、前記第1の気筒群に含まれる前記気筒毎の供給停止回数を算出し、前記供給停止回数が最小である気筒を前記供給停止気筒とするのが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、供給停止回数が最小である気筒を供給停止気筒とする。このため、第1の気筒群に含まれる気筒毎の燃料供給回数のばらつきが低減される。
【0011】
上記多気筒内燃機関の制御装置において、さらに、前記停止気筒選択処理は、前記供給履歴情報として、前記第1の気筒群に含まれる前記気筒毎の燃料供給回数を算出し、前記燃料供給回数が最大である気筒を前記供給停止気筒とするが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、燃料供給回数が最大である気筒を供給停止気筒とする。このため、第1の気筒群に含まれる気筒毎の燃料供給回数のばらつきが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態にかかる駆動系およびその制御系を示す図。
【
図2】同実施形態にかかる特定気筒フューエルカット制御の手順を示す流れ図。
【
図3】同実施形態にかかる特定気筒フューエルカット制御の異常検出の手順を示す流れ図。
【
図4】同実施形態にかかる横軸を時間とした各種センサの検出値を示す図。
【
図5】第2の実施形態にかかる特定気筒フューエルカット制御の手順を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、内燃機関の制御装置の第1の実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1は第1の実施形態にかかる駆動系およびその制御系を示している。
図1に示すように、内燃機関10は、気筒#1~#4の4つの気筒を備える。内燃機関10の上流側に配置される吸気通路12には、スロットルバルブ14が設けられている。吸気通路12の下流部分は、分岐しており、各気筒に繋がっている。この分岐して各気筒に繋がっている部分である吸気ポート12aには、燃料を供給するポート噴射弁16がそれぞれ設けられている。吸気通路12に吸入された空気やポート噴射弁16から供給された燃料は、吸気バルブ18の開弁に伴って、燃焼室20に流入する。また、燃焼室20には、筒内噴射弁22から燃料が供給される。燃焼室20に流入した空気や燃料、および筒内噴射弁22から供給された燃料からなる混合気は、燃焼室20に設けられた点火プラグ24の火花放電に伴って燃焼する。そのときに生成される燃焼エネルギは、クランク軸26の回転エネルギに変換される。
【0021】
燃焼室20において燃焼した混合気は、排気バルブ28の開弁に伴って、排気として排気通路30に排出される。排気通路30には、酸素吸蔵能力を有した三元触媒32と、ガソリンパティキュレートフィルタ(GPF34)とが設けられている。なお、本実施形態にかかるGPF34は、排気に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルタに三元触媒が担持されたものを想定している。
【0022】
クランク軸26には、歯部42が設けられたクランクロータ40が結合されている。クランクロータ40には、基本的には、10°CA間隔で歯部42が設けられているものの、隣接する歯部42間の間隔が30°CAとなる箇所である欠け歯部44が1箇所設けられている。これは、クランク軸26の基準となる回転角度を示すためのものである。
【0023】
クランク軸26は、動力分割装置を構成する遊星歯車機構50のキャリアCに機械的に連結されている。遊星歯車機構50のサンギアSには、第1モータジェネレータ52の回転軸52aが機械的に連結されている。また、遊星歯車機構50のリングギアRには、第2モータジェネレータ54の回転軸54aと駆動輪60とが機械的に連結されている。第1モータジェネレータ52の端子には、第1インバータ56によって交流電圧が印加される。また、第2モータジェネレータ54の端子には、第2インバータ58によって交流電圧が印加される。
【0024】
制御装置70は、内燃機関10を制御対象とし、その制御量としてのトルクや排気成分比率等を制御するために、スロットルバルブ14、ポート噴射弁16、筒内噴射弁22、および点火プラグ24等の内燃機関10の操作部を操作する。さらに、制御装置70は、第1モータジェネレータ52を制御対象とし、その制御量である回転速度を制御すべく、第1インバータ56を操作する。また、制御装置70は、第2モータジェネレータ54を制御対象とし、その制御量であるトルクを制御すべく第2インバータ58を操作する。
図1には、スロットルバルブ14、ポート噴射弁16、筒内噴射弁22、点火プラグ24、およびインバータ56,58のそれぞれの操作信号MS1~MS6を記載している。制御装置70は、内燃機関10の制御量を制御するために、エアフローメータ80によって検出される吸入空気量Ga、クランク角センサ82の出力信号Scr、水温センサ86によって検出される水温THW、三元触媒32の上流側の上流側空燃比センサ88によって検出される上流側空燃比AFf、三元触媒32の下流側の下流側空燃比センサ90によって検出される下流側空燃比AFr、および排気圧センサ92によって検出されるGPF34に流入する排気の圧力Pexを参照する。また、制御装置70は、第1モータジェネレータ52や第2モータジェネレータ54の制御量を制御するために、第1モータジェネレータ52の回転角を検知する第1回転角センサ94の出力信号Sm1、および第2モータジェネレータ54の回転角を検知する第2回転角センサ96の出力信号Sm2を参照する。
【0025】
制御装置70は、CPU72、ROM74、記憶装置75、および周辺回路76を備えており、それらが通信線78によって通信可能とされている。ここで、周辺回路76は、内部の動作を規定するクロック信号を生成する回路や、電源回路、リセット回路等を含む。制御装置70は、ROM74に記憶されたプログラムをCPU72が実行することにより制御量を制御する。
【0026】
図2に、第1実施形態にかかる制御装置70が実行する処理の手順を示す。
図2に示す処理は、ROM74に記憶されたプログラムをCPU72がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって、各処理のステップ番号を表現する。
【0027】
図2に示す一連の処理において、CPU72は、まず、回転速度NE、充填効率η、出力信号Scr、下流側空燃比AFrおよび吸入空気量Gaを取得する(S100)。回転速度NEは、CPU72により、出力信号Scrに基づき算出される。また、充填効率ηは、CPU72により、吸入空気量Gaおよび回転速度NEに基づき算出される。次にCPU72は、取得した下流側空燃比AFrと特定気筒フューエルカット実行値AF1を比較する(S110)。下流側空燃比AFrが特定気筒フューエルカット実行値AF1よりも大きい場合には(S110:NO)、特定気筒フューエルカット制御を実行せずに、
図2に示す一連の処理を一旦終了させる。すなわち、CPU72は、空燃比が特定気筒フューエルカット実行値AF1よりも大きい場合には、空燃比がリーンであり、三元触媒32に酸素を供給する必要がないとして、特定気筒フューエルカット制御を実行しない。一方、下流側空燃比AFrが特定気筒フューエルカット実行値AF1以下となる場合(S110:YES)、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に含まれるか否かを判定する(S120)。
【0028】
CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に含まれる場合(S120:YES)、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲を、所定時間継続しているか否かを判定する(S130)。CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲を、所定時間継続していないと判定した場合(S130:NO)、第1の気筒群の中から、後述する記憶装置75に記憶された供給停止回数Cmn(m=1,2)の最も少ない気筒を、燃料供給を停止する気筒とする(S140)。一方、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に含まれない場合(S120:NO)、気筒#1~気筒#4の中から、供給停止回数Cmn(m=1~4)の最も少ない気筒を、燃料供給を停止しかつ点火を継続する気筒とする(S145)。また、CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲を、所定時間継続していると判定した場合(S130:YES)、第1モータジェネレータ52および第2モータジェネレータ54を制御して、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲とならないように内燃機関10の運転条件を変更し(S135)、気筒#1~気筒#4の中から、供給停止回数Cmn(m=1~4)の最も少ない気筒を、燃料供給を停止しかつ点火を継続する気筒とする(S145)。以下、燃料供給を停止することを「フューエルカット(F/C)」といい、燃料供給を停止する気筒を「供給停止気筒」といい、燃料供給を停止せずに燃料供給を継続する気筒を「燃焼気筒」という。なお、供給停止回数Cmnのmとnは、それぞれ気筒#mが供給停止をn回実行したことを意味する。ここで、第1の気筒群は、少なくとも下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲において気筒#1~気筒#4から流れる排気に対して上流側空燃比センサ88の検出値が大きい気筒としており、本実施例においては、気筒#1、気筒#2が第1の気筒群に相当し、気筒#1、気筒#2よりも上流側空燃比センサ88の検出値が小さい気筒#3,気筒#4が第2の気筒群に相当する。
【0029】
S140,S145の後、CPU72は、内燃機関10に対するトルクの指令値である機関トルク指令値Te*に基づいて、気筒#1~#4に対する燃料供給量を設定する(S150)。S150において、CPU72は気筒#1~#4のうち、供給停止気筒(例えば、気筒#1)への燃料供給量をゼロにし、且つ当該供給停止気筒以外の残余の気筒(例えば、気筒#2、気筒#3および気筒#4)への燃料供給量を空燃比がストイキとなる値に設定する。
【0030】
次にCPU72は、出力信号Scrに基づいて、燃料供給開始時期が到来した気筒を判別する(S155)。CPU72は、ステップS155の判別処理により燃焼気筒(気筒#2、気筒#3または気筒#4)の何れかの燃料供給開始時期が到来したと判定した場合(S160:YES)、当該燃焼気筒に対して該当するポート噴射弁16および筒内噴射弁22からS150にて設定した燃料供給量を供給させる(S165)。また、CPU72は、S155の判別処理により上記供給停止気筒(気筒#1)の燃料供給開始時期が到来したと判定した場合(S160:NO)、当該1つの気筒に対応したポート噴射弁16および筒内噴射弁22から燃料供給を停止させ、供給停止回数C1nに供給停止回数C1n+1を代入して、記憶装置75に記憶させる(S170)。ここで供給停止気筒(気筒#1)へ燃料供給を停止される間、当該供給停止気筒の吸気バルブ18および排気バルブ28は、燃料が供給される場合と同様に開閉させられる。
【0031】
S165,S170の後、CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲外の状態(S120:NO)から吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の状態に変更されたか否かを判定する(S180)。CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲外の状態(S120:NO)から下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に変更された場合(S180:YES)、第1の気筒群の中から、記憶装置75に記憶された供給停止回数Cmn(m=1,2)の最も少ない気筒を、燃料供給を停止する気筒とする(S140)。一方、下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲外の状態(S120:NO)から変更がない場合(S180:NO)や、そもそもS120の段階で下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲であった場合(S180:NO)は、内燃機関10を20回転させる10サイクルの燃料供給が完了したか否かを判定する(S190)。
【0032】
S190にて10サイクルの燃料供給が完了していないと判定した場合(S190:NO)、CPU72は、S150~S180の処理を繰り返し実行する。一方で、CPU72は、S190にて10サイクルの燃料供給が完了したと判定した場合(S190:YES)、
図2に示す一連の処理を一旦終了させる。
【0033】
図3に、制御装置70が実行する別の処理の手順を示す。
図3に示す処理は、ROM74に記憶されたプログラムをフューエルカットが実行されるたびに繰り返し実行することにより実現される。
【0034】
図3に示す一連の処理において、CPU72は、まず、出力信号Scrおよび上流側空燃比AFfを取得する(S200)。次に、CPU72は、特定気筒フューエルカット制御の実行中であるか否かを判定する(S210)。CPU72は、特定気筒フューエルカットの実行中である場合(S210:YES)、出力信号Scrに基づいて、排気バルブ28の開弁時期が到来した気筒を判別する(S220)。CPU72は、ステップS220の判別処理により上記供給停止気筒(気筒#1)の排気バルブ28の開弁時期が到来したと判定した場合(S230:YES)、後述する上流側空燃比AFfの最大値である最大空燃比AFmaxを取得する(S240)。
【0035】
次に、CPU72は、取得した最大空燃比AFmaxと予め決められた判定値AF0を比較する(S250)。CPU72は、最大空燃比AFmaxが判定値AF0よりも大きいとき(S250:YES)、特定気筒フューエルカット制御が正常であると判定して(S260)、
図3に示す一連の処理を一旦終了させる。また、CPU72は、最大空燃比AFmaxが判定値AF0以下のとき(S250:NO)、特定気筒フューエルカット制御が異常であると判定して(S265)、
図3に示す一連の処理を一旦終了させる。すなわち、CPU72は、供給停止気筒からの排気の最大空燃比AFmaxが判定値AF0よりもリーンであれば、供給停止気筒は適切にフューエルカットを実行できているとして、特定気筒フューエルカット制御が正常に実行されていると判定する。一方で、CPU72は、供給停止気筒からの排気の最大空燃比AFmaxが判定値AF0と同じ、あるいは最大空燃比AFmaxが判定値AF0よりもリッチであれば、供給停止気筒は適切にフューエルカットを実行できていないとして、特定気筒フューエルカット制御に異常があると判定する。なお、判定値AF0は特定気筒フューエルカット制御に異常があるにもかかわらず、正常であると誤判定されない程度の大きさの空燃比が設定される。
【0036】
また、CPU72は、特定気筒フューエルカット制御の実行中でないと判定した場合や(S210:NO)、判別処理により上記供給停止気筒(気筒#1)の排気バルブ28の開弁時期が到来していないと判定した場合(S230:NO)、
図3に示す一連の処理を一旦終了させる。
【0037】
図4は、横軸を時間とした各種センサの検出値を示す図である。
図4(a)は、下流側空燃比AFrの検出値を示し、
図4(b)は、出力信号Scrに基づいて算出されるクランクアングルを示し、
図4(c)は、第1の気筒群に含まれる気筒#1が供給停止気筒となった時の上流側空燃比AFfの検出値を示し、
図4(d)は、第2の気筒群に含まれる気筒#3が供給停止気筒となった時の上流側空燃比AFfの検出値を示す。まず、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲内であるときに、第1の気筒群に含まれる気筒#1が供給停止気筒となる場合について説明する。このとき、特定気筒フューエルカット制御が開始されてから、2サイクル目までは燃料供給の停止が正常に行われるとし、3サイクル目では燃料供給の停止が正常に行われず、微少の燃料が供給停止気筒である気筒#1に供給されてしまう例を示す。t=t0で下流側空燃比AFrが特定気筒フューエルカット実行値AF1以下となり、気筒#1を供給停止気筒として特定気筒フューエルカット制御が開始される。t=t1で気筒#1の排気バルブ28が開弁される。ここで、上流側触媒88は燃焼室20に対して下流側に配置されているため、供給停止気筒から供給される酸素は所定の遅れ時間をもって上流側空燃比センサ88で検出される。このため、特定気筒フューエルカット制御が実行されてから1サイクル目において、CPU72は、供給停止気筒の排気バルブ28が開弁された時間t10に対して、第1所定時間t11が経過してから第2所定時間t12が経過するまでの間の上流側空燃比AFfの最大値AFf1maxを、最大空燃比AFmaxとして、判定値AF0と比較する。AFf1maxは、判定値AF0よりも大きいため、
図3のS250において、1サイクル目の特定気筒フューエルカット制御は正常判定される。同様に、特定気筒フューエルカット制御が実行されてから2サイクル目において、CPU72は、供給停止気筒の排気バルブ28が開弁された時間t2に対して、第1所定時間t21が経過してから第2所定時間t22が経過するまでの間の上流側空燃比AFfの最大値AFf2maxを、最大空燃比AFmaxとして、判定値AF0と比較する。AFf2maxも、判定値AF0よりも大きいため、特定気筒フューエルカットが実行されてから2サイクル目まで特定気筒フューエルカットは正常判定される。一方で特定気筒フューエルカット制御が実行されてから3サイクル目の上流側空燃比の最大値AF3maxは、判定値AF0よりも小さい。このため、3サイクル目の特定気筒フューエルカットは異常判定される。したがって、特定気筒フューエルカット制御が開始されてから燃料供給を停止する気筒に燃料が供給されるという異常の有無を正確に判定している。ここで、エンジン回転数NEと吸入空気量Gaに基づいて、供給停止気筒の排気バルブ28が開弁された時間に対して、上流側空燃比のピーク値となる時間が変化する。このため、第1所定時間と第2所定時間は、エンジン回転数NEと吸入空気量Gaに基づいて、上流側空燃比のピーク値となる時間を含むように適宜設定される。
【0038】
次に、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲にあるときに、第2の気筒群に含まれる気筒#3が供給停止気筒となる場合について説明する。このとき、特定気筒フューエルカット制御が開始されてから、2サイクル目までは燃料供給の停止が正常に行われるとし、3サイクル目では燃料供給の停止が正常に行われず、微少の燃料が供給停止気筒である気筒#3に供給されてしまう例を示す。t=t0で下流側空燃比AFrが特定気筒フューエルカット実行値AF1以下となり、気筒#3を供給停止気筒としてフューエルカット制御が開始される。特定気筒フューエルカット制御が実行されてから1サイクル目において、CPU72は、供給停止気筒の排気バルブ28が開弁された時間t1’に対して、第1所定時間t11’が経過してから第2所定時間t12’が経過するまでの間の上流側空燃比AFfの最大値AFf1’maxを、最大空燃比AFmaxとして、判定値AF0と比較する。AFf1’maxは、判定値AF0よりも小さいため、
図3のS250において、1サイクル目の特定気筒フューエルカット制御は異常判定される。同様に、特定気筒フューエルカット制御が実行されてから2サイクル目において、CPU72は、供給停止気筒の排気バルブ28が開弁された時間t2’に対して、第1所定時間t21’が経過してから第2所定時間t22’が経過するまでの間の上流側空燃比AFfの最大値AFf2’maxを、最大空燃比AFmaxとして、判定値AF0と比較する。AFf2’maxも、判定値AF0よりも小さいため、2サイクル目の特定気筒フューエルカット制御も異常判定される。さらに特定気筒フューエルカット制御が実行されてから3サイクル目の上流側空燃比の最大値AF3’maxは、判定値AF0よりも小さい。このため、3サイクル目の特定気筒フューエルカットも異常判定される。したがって、特定気筒フューエルカット制御が開始されてから2サイクル目までは、正常に燃料供給の停止が実行できているのにも関わらず、排気センサの検出値が低いことにより、異常判定がなされている。本実施例では上記のように、正常に燃料供給の停止が実行できているのにも関わらず、排気センサの検出値が低いことにより、異常判定がなされていることを低減するため、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に含まれる場合は、上流側空燃比センサ88の検出値が大きい第1の気筒群に含まれる気筒の中から供給停止気筒を選択するようにしている。
【0039】
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
CPU72は、下流側空燃比AFrが特定気筒フューエルカット実行値AF1以下となる場合、特定気筒フューエルカット制御を実行する。これにより、気筒#1の吸気行程において吸入された空気は、燃焼に供されることなく、気筒#1の排気行程において排気通路に流出する。また、気筒#2~#4の混合気は、理論空燃比で燃焼する。したがって、三元触媒32がリッチ状態となった場合に、リーン燃焼に伴うNOx排出をすることなく、三元触媒32に酸素を供給することができる。これにより三元触媒32をリーン状態にすることができる。
【0040】
CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に含まれる場合、第1の気筒群の中から供給停止回数Cmn(m=1,2)の最も少ない気筒を、燃料供給を停止する気筒とする。このため、第1の気筒群に含まれる気筒毎の燃料供給回数のばらつきが低減される。
【0041】
さらに、第1の気筒群に含まれる気筒は第2の気筒群に含まれる気筒と比較して、少なくとも下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲内において上流側空燃比センサ88の検出値の大きい気筒である。このため、吸入空気量が下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲で排出される排気に対して、上流側空燃比センサ88の排気に対する検出値の大きい気筒が供給停止気筒となることで、正常に燃料供給の停止が実行できているのにも関わらず、特定気筒フューエルカット制御が異常と判定される可能性を低下できる。
【0042】
また、CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に含まれない場合、供給停止回数Cmn(m=1~4)の最も少ない気筒を、燃料供給を停止する気筒とする。このため、気筒毎の燃料供給回数のばらつきが低減される。
【0043】
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
(1)上流側空燃比センサ88の検出値は、吸入空気量Gaに依存するため、供給停止気筒を選択する条件を、吸入空気量Gaとする。このため、吸入空気量が下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲内であるときに、第1の気筒群の中から供給停止回数Cmn(m=1,2)の最も少ない気筒を供給停止気筒として選択するため、正常に燃料供給の停止が実行できているのにも関わらず、特定気筒フューエルカット制御が異常と判定される可能性を低下できる。
(2)CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲となっている状態を所定時間継続している場合に、第1モータジェネレータ52や第2モータジェネレータ54を制御して、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1未満、あるいは上限吸入空気量Ga2より大きい範囲となるように内燃機関10の運転条件を変更する。このため、第1の気筒群のみが供給停止気筒となることを抑制し、気筒毎の燃料供給回数のばらつきが低減される。
【0044】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に
図5を参照しつつ説明する。
【0045】
第2実施例では、供給停止気筒の選択に、燃料供給回数C‘mnを用いる。具体的には、燃料供給回数C‘mnが最も多い気筒を供給停止気筒とする。
【0046】
図5に第2実施形態にかかる制御装置70が実行する処理の手順を示す。
図5に示す処理は、ROM74に記憶されたプログラムをCPU72がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。
【0047】
図5に示す一連の処理において、CPU72は、まず、回転速度NE、充填効率η、出力信号Scr、下流側空燃比AFrおよび吸入空気量Gaを取得する(S300)。回転速度NEは、CPU72により、出力信号Scrに基づき算出される。また、充填効率ηは、CPU72により、吸入空気量Gaおよび回転速度NEに基づき算出される。次にCPU72は、取得した下流側空燃比AFrと特定気筒フューエルカット実行値AF1を比較する(S310)。下流側空燃比AFrが特定気筒フューエルカット実行値AF1よりも大きい場合には(S310:NO)、特定気筒フューエルカット制御を実行せずに、
図2に示す一連の処理を一旦終了させる。下流側空燃比AFrが特定気筒フューエルカット実行値AF1以下となる場合(S310:YES)、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に含まれるか否かを判定する(S320)。
【0048】
CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に含まれる場合(S320:YES)、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲を、所定時間継続しているか否かを判定する(S330)。CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲を、所定時間継続していないと判定した場合(S330:NO)、第1の気筒群の中から、後述する記憶装置75に記憶された燃料供給回数C’mn(m=1,2)の最も多い気筒を、燃料供給を停止する気筒とする(S340)。一方で、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に含まれない場合(S320:NO)、気筒#1~気筒#4の中から、燃料供給回数C’mn(m=1~4)の最も多い気筒を、燃料供給を停止しかつ点火を継続する気筒とする(S345)。また、CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲を、所定時間継続していると判定した場合(S330:YES)、第1モータジェネレータ52や第2モータジェネレータ54を制御して、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲とならないように内燃機関10の運転条件を変更し(S335)、気筒#1~気筒#4の中から、燃料供給回数C’mn(m=1~4)の最も多い気筒を、燃料供給を停止しかつ点火を継続する気筒とする(S345)。なお、供給停止回数C’mnのmとnは、それぞれ気筒#mが燃料供給をn回実行したことを意味する。
【0049】
S340,S345の後、CPU72は、内燃機関10に対するトルクの指令値である機関トルク指令値Te*に基づいて、気筒#1~#4に対する燃料供給量を設定する(S350)。S350において、CPU72は気筒#1~#4のうち、供給停止気筒(例えば、気筒#1)への燃料供給量をゼロにし、且つ当該供給停止気筒以外の残余の気筒(例えば、気筒#2、気筒#3および気筒#4)への燃料供給量を空燃比がストイキとなる値に設定する。
【0050】
次にCPU72は、出力信号Scrに基づいて、燃料供給開始時期が到来した気筒を判別する(S355)。CPU72は、ステップS340の判別処理により燃焼気筒(気筒#2、気筒#3または気筒#4)の何れかの燃料供給開始時期が到来したと判定した場合(S360:YES)、当該燃焼気筒に対して該当するポート噴射弁16および筒内噴射弁22からS350にて設定した燃料供給量を供給させ(S365)、燃料供給回数C’mn(m=2~4)に燃料供給回数C’mn+1(m=2~4)を代入して、記憶装置75に記憶させる(S370)。このとき、例えば気筒#4の燃料供給開始時期が到来していた場合は、m=4として、燃料供給回数C’4nに燃料供給回数C’4n+1を代入する。また、CPU72は、ステップS355の判別処理により上記供給停止気筒(気筒#1)の燃料供給開始時期が到来したと判定した場合(S360:NO)、当該1つの気筒に対応したポート噴射弁16および筒内噴射弁22から燃料供給を停止させる。ここで供給停止気筒(気筒#1)へ燃料供給を停止される間、当該供給停止気筒の吸気バルブ18および排気バルブ28は、燃料が供給される場合と同様に開閉させられる。
【0051】
次に、CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1未満または上限吸入空気量Ga2より大きい状態(S320:NO)から吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に変更されたか否かを判定する(S380)。また、S370の後にも、CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1未満または上限吸入空気量Ga2より大きい状態(S320:NO)から吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に変更されたか否かを判定する(S380)。CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1未満または上限吸入空気量Ga2より大きい状態(S320:NO)から下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に変更された場合(S380:YES)、第1の気筒群の中から、記憶装置75に記憶された供給停止回数C’mn(m=1,2)の最も少ない気筒を、燃料供給を停止する気筒とする(S340)。一方、CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1未満または上限吸入空気量Ga2より大きい状態(S320:NO)から下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に変更されなかった場合(S380:NO)や、S320の段階で下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下であった場合(S380:NO)は、内燃機関10を20回転させる10サイクルの燃料供給が完了したか否かを判定する(S390)。
【0052】
S390にて10サイクルの燃料供給が完了していないと判定した場合(S390:NO)、CPU72は、S350~S380の処理を繰り返し実行する。CPU72は、S390にて10サイクルの燃料供給が完了したと判定した場合(S390:YES)、
図5に示す一連の処理を一旦終了させる。
【0053】
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に含まれる場合、第1の気筒群の中から燃料供給回数C’mn(m=1,2)の最も多い気筒を、燃料供給を停止する気筒とする。このため、第1の気筒群に含まれる気筒毎の燃料供給回数のばらつきが低減される。
【0054】
また、CPU72は、吸入空気量Gaが下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下の範囲に含まれない場合、燃料供給回数C’mn(m=1~4)の最も多い気筒を、燃料供給を停止する気筒とする。このため、気筒毎の燃料供給回数のばらつきが低減される。
【0055】
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。排気センサは、上流側空燃比センサ88に対応する。実行装置は、CPU72に対応する。吸入空気量の指標値は、吸入空気量Gaに対応する。特定気筒フューエルカット処理は、
図2のS120~S190、
図5のS320~S390の処理に対応する。異常判定処理は、
図3のS240,S250,S260,265の処理に対応する。停止気筒選択処理は、
図2のS140,S145、
図5のS340,S345の処理に対応する。運転条件変更処理は、
図2のS130,S135、
図5のS330,S335の処理に対応する。
【0056】
<その他の実施形態>
その他、上記各実施形態に共通して変更可能な要素としては次のようなものがある。以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
「排気センサについて」
・排気センサは、上流側空燃比センサ88に対応するとしたが、これに限らない。例えば、排気センサを酸素センサとしてもよい。
【0058】
「吸入空気量の指標値について」
・吸入空気量の指標値は、吸入空気量Gaに対応するとしたが、これに限らない。例えば、エンジン回転数NEや充填効率ηとしてもよい。
【0059】
「第1の気筒群および第2の気筒群について」
・第1の気筒群を気筒#1、気筒#2とし、第2の気筒群を気筒#3、気筒#4としたが、これに限らない。例えば上流側空燃比センサ88の検出値の大きい気筒が気筒#3のみである場合は、第1の気筒群に含まれる気筒を気筒#3のみとして、第2の気筒群に含まれる気筒を気筒#1、気筒#2、気筒#4としてもよいし、上流側空燃比センサ88の検出値の大きい気筒が気筒#1,気筒#2,気筒#3である場合は、第1の気筒群に含まれる気筒を気筒#1~#3とし、第2の気筒群に含まれる気筒を気筒#4としてもよい。
【0060】
「所定範囲について」
・所定範囲は下限吸入空気量Ga1以上かつ上限吸入空気量Ga2以下としたが、これに限らない。例えば下限吸入空気量Ga1以上の範囲において第1の気筒群が第2の気筒群よりも上流側空燃比センサ88の検出値が大きければ、所定範囲を下限吸入空気量Ga1以上としてもよいし、上限吸入空気量Ga2以下の範囲において第1の気筒群が第2の気筒群よりも上流側空燃比センサ88の検出値が大きければ、所定範囲を上限吸入空気量Ga2以下としてもよい。
【0061】
・所定範囲は吸入空気量に基づいて設定したが、これに限らない。例えばエンジン回転数NEや充填効率ηに基づいて所定範囲を設定してもよい。
【0062】
「S190,S390について」
・S190,S390において10サイクルの燃料供給が完了したか否かを判定しているが、これに限らない。フューエルカットを所定サイクル数継続後に下流側空燃比AFrが十分リーンとなるようなサイクル数であればよい。
【0063】
「上流側空燃比AFfと判定値AF0の比較について」
・上流側空燃比AFfの最大値である最大空燃比AFmaxと判定値AF0を比較したが、これに限らない。例えば、供給停止気筒の排気バルブ28が開弁された時間に対して、第1所定時間が経過してから第2所定時間が経過するまでの間の上流側空燃比センサ88の検出値の積算値ΣAFと判定値AF0’を比較して、積算値ΣAFが判定値AF0’よりも大きい場合に、供給停止気筒が正常であると判定し、積算値ΣAFが判定値AF0’以下の場合に、供給停止気筒が異常であると判定してもよい。
【0064】
・第1所定時間と第2所定時間は、供給停止気筒の排気バルブ28が閉弁された時間に対する経過時間として設定されたが、これに限らない。例えば、供給停止気筒の排気バルブ28が閉弁されたクランク角度に対する、第1のクランク角度および第2のクランク角度を経過するまでの時間としてもよい。
【0065】
「特定気筒フューエルカット処理について」
・燃焼気筒における混合気の空燃比をストイキとすることも必須ではない。たとえば供給停止気筒、燃焼気筒の合計の空燃比がリーンとなれば、燃焼気筒における混合気の空燃比をリーンとしてもよいし、弱リッチとしてもよい。
【0066】
・特定気筒フューエルカット処理の開始条件は、空燃比AFr≦特定気筒フューエルカット実行値AF1の場合に限らない。例えば、GPF34に堆積物が所定値以上堆積したと推定する場合に実行してもよい。この場合、燃焼気筒における空燃比をリッチとしてもよい。また、堆積量の推定は、GPF34の上流側と下流側との圧力の差と吸入空気量Gaとに基づき堆積量を推定してもよいし、回転速度NE、充填効率ηおよび水温THWに基づき堆積量を算出してもよい。
【0067】
「制御装置について」
・制御装置としては、CPU72とROM74とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理するたとえばASIC等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。すなわち、制御装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【0068】
「車両について」
・車両としては、シリーズ・パラレルハイブリッド車に限らず、たとえばパラレルハイブリッド車やシリーズハイブリッド車であってもよい。もっとも、ハイブリッド車に限らず、たとえば、車両の動力発生装置が内燃機関10のみの車両であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 内燃機関、12 吸気通路、12a 吸気ポート、14 スロットルバルブ、16 ポート噴射弁、18 吸気バルブ、20 燃焼室、22 筒内噴射弁、24 点火プラグ、26 クランク軸、28 排気バルブ、30 排気通路、32 三元触媒、34 GPF、40 クランクロータ、42 歯部、44 欠け歯部、50 遊星歯車機構、52 第1モータジェネレータ、52a 回転軸、54 第2モータジェネレータ、54a 回転軸、56 第1インバータ、58 第2インバータ、60 駆動輪、70 制御装置、72 CPU、74 ROM、75 記憶装置、76 周辺回路、78 通信線、80 エアフローメータ、82 クランク角センサ、86 水温センサ、88 上流側空燃比センサ、90 下流側空燃比センサ、92 排気圧センサ、94 第1回転角センサ、96 第2回転角センサ