(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20240903BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/22 A
(21)【出願番号】P 2020571868
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2020034773
(87)【国際公開番号】W WO2021186767
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020048172
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 智哉
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/115655(WO,A1)
【文献】特開2010-207067(JP,A)
【文献】特開2018-110487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/00-1/34
15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなすロータコアと、
前記ロータコアの周方向に沿って交互に配置された第1磁石および第2磁石を有する磁石群とを備え、
前記第1磁石内で生じる第1磁力線は、前記ロータコアの径方向に沿っており、
前記第2磁石内で生じる第2磁力線は、前記第1磁力線に対して傾斜しており、
前記ロータコアは、前記磁石群よりも前記径方向内側に位置する内側部と、前記磁石群よりも前記径方向外側に位置する外側部とを有し、
前記外側部は、前記第1磁石を前記径方向外側から覆う第1鉄心と、前記第2磁石の前記ロータコアの中心軸方向の少な
くとも一部を、前記径方向外側から覆う第2鉄心とを有
し、前記第2鉄心は、前記中心軸方向に互いに距離を置いて複数配置される、ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記第2磁石の前記径方向に沿った厚さは、前記第1磁石の前記径方向に沿った厚さよりも厚い請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第2鉄心の前記径方向に沿った厚さは、前記第1鉄心の前記径方向に沿った厚さよりも薄い請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第2鉄心の少なくとも一部は、磁性体で構成される請求項1~
3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記ロータコアは、前記内側部と前記外側部とを連結する連結部を有する請求項1~
4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記第2磁石を介して前記周方向に隣り合う第1磁石同士のうち、一方の第1磁石の前記第1磁力線は、前記ロータコアの内側に向かい、他方の第1磁石の前記第1磁力線は、前記ロータコアの外側に向かう請求項1~
5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記第2磁石は、前記第2磁力線の向きが異なるよう、2つに分かれている請求項1~
6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記2つに分かれている第2磁石
のうち、一方の前記第2磁力線は、前記ロータコアの内側に向かい、他方の前記第2磁力線は、前記ロータコアの外側に向かう請求項
7に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転電機である同期式多相交流モータには、筒状をなす回転子と、回転子の内側に、回転子と同心的に配置された固定子とを備えるモータがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、回転子の内周部の周方向に沿って複数の永久磁石が配置されるモータが記載されている。そして、複数の永久磁石は「ハルバッハ配列」と称される磁石配列を用いて構成されている。すなわち、複数の永久磁石は、磁化方向を径方向とする第1磁石と磁化方向を周方向とする第2磁石とを有しており、第1磁石と第2磁石とが周方向に沿って交互に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のモータでは、磁石保持部内で磁気飽和が生じるため、漏れ磁束が生じてしまい、漏れ磁束が生じた分、モータの出力が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、モータの出力を向上させることができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータの一つの態様は、筒状をなすロータコアと、前記ロータコアの周方向に沿って交互に配置された第1磁石および第2磁石を有する磁石群とを備える。前記第1磁石内で生じる第1磁力線は、前記ロータコアの径方向に沿っており、前記第2磁石内で生じる第2磁力線は、前記第1磁力線に対して傾斜している。前記ロータコアは、前記磁石群よりも前記径方向内側に位置する内側部と、前記磁石群よりも前記径方向外側に位置する外側部とを有する。前記外側部は、前記第1磁石を前記径方向外側から覆う第1鉄心と、前記第2磁石の前記ロータコアの中心軸方向の少なとも一部を、前記径方向外側から覆う第2鉄心とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のモータの一つの態様によれば、出力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のモータの実施形態を示す概略部分横断面図である。
【
図3】
図1に示すモータが備えるロータの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図3を参照して、本発明のモータの実施形態について説明する。
図1に示すモータ1は、例えば、自動車等の車両に搭載して用いられるモータである。モータ1は、ロータ11と、ステータ9とを備える。
【0010】
図2に示すように、ステータ9は、円筒状をなすコアバック91と、コアバック91の内周部に設けられた複数のティース(突出部)92とを有する。複数のティース92は、モータ1の中心軸O1に向かって放射状に突出する。各ティース92には、導電性を有するコイル(図示せず)が巻回される。
【0011】
図1に示すように、ステータ9の内側には、ロータ11がステータ9と同心的に配置される。ロータ11は、モータ1の中心軸O1回りに回転可能に支持される。ロータ11は、ロータコア2と、磁石群8とを備える。
【0012】
ロータコア2は、全体として円筒状をなす。
磁石群8は、ロータコア2の周方向に沿って交互に間隔を置いて配置された第1磁石81および第2磁石82を有する。第1磁石81と第2磁石82とは、いずれも永久磁石で構成され、同数ずつ配置される。
【0013】
図2、
図3に示すように、ロータコア2は、磁石群8よりも径方向内側(中心軸O1側)に位置する内側部3と、磁石群8よりも径方向外側に位置する外側部4と、内側部3と外側部4とを連結する連結部5とを有する。
【0014】
内側部3は、円筒状をなす。
外側部4は、内側部3の周方向に沿って設けられる。外側部4は、第1磁石81および第2磁石82に対し、径方向外側に配置された状態となる。これにより、渦電流損が低減する。
【0015】
連結部5は、内側部3と外側部4との間に設けられる。これにより、ロータコア2を製造する際、成形型を用いて、内側部3、外側部4および連結部5とを一体的に成型することができる。これにより、ロータコア2を容易かつ迅速に製造することができる。連結部5は、内側部3の周方向に沿って複数配置される。これにより、内側部3と外側部4とを安定して強固に連結することができる。
【0016】
なお、内側部3、外側部4および連結部5とが一体的に成型されるのに限定されない。例えば、ロータコア2を製造する際、例えば、後述する第2鉄心42と連結部5とが一体化したT字状の磁性体を、第2磁石82の間に差し込んでもよい。この場合、第2磁石82と第2鉄心42とは、接着剤等により固定されるのが好ましい。
【0017】
ロータコア2の構成材料としては、特に限定されない。ロータコア2は、例えば、磁性体で構成され、磁性体の構成材料(軟質磁性材料)としては、例えば、電磁鋼(ケイ素鋼)、炭素鋼、構造鋼、純鉄、軟鉄、ステンレスパーマロイ等が挙げられる。
【0018】
内側部3と外側部4との間には、磁石群8が保持される。前述したように、磁石群8は、ロータコア2の周方向に沿って交互に配置された複数の第1磁石81および複数の第2磁石82を有する。各第1磁石81および各第2磁石82は、それぞれ、中心軸O1方向に沿った長尺状をなす、すなわち、棒状または板状をなす。
【0019】
図1、
図2に示すように、各第1磁石81内では、第1磁力線ML1が生じる。各第1磁力線ML1は、ロータコア2の径方向に沿う。特に本実施形態では、第2磁石82を介して周方向に隣り合う第1磁石81同士のうち、一方の第1磁石81の第1磁力線ML1は、ロータコア2の内側、すなわち、中心軸O1に向かう第1磁力線ML1Aとなっている。他方の第1磁石81の第1磁力線ML1は、ロータコア2の外側、すなわち、中心軸O1から遠ざかる方向に向かう第1磁力線ML1Bとなっている。
【0020】
各第2磁石82内では、第2磁力線ML2が生じる。各第2磁力線ML2は、当該第2磁石82の中心と中心軸O1とを結ぶ仮想線VL(第1磁力線ML1)に対して傾斜する。特に本実施形態では、第2磁石82は、第2磁力線ML2の向きが異なるよう、2つの小磁石に分かれている。以下、2つの小磁石のうちの一方の小磁石を「第1分割磁石(第1小磁石)821」と言い、他方の小磁石を「第2分割磁石(第2小磁石)822」と言う。第1分割磁石821と第2分割磁石822との間には、連結部5が位置する。
【0021】
第1分割磁石(第1小磁石)821の第2磁力線ML2は、ロータコア2の内側に向かう第2磁力線ML2Aとなっている。第2分割磁石822の第2磁力線ML2は、ロータコア2の外側に向かう第2磁力線ML2Bとなっている。なお、第2磁力線ML2Aおよび第2磁力線ML2Bは、いずれも、仮想線VLに対して傾斜する。第2磁力線ML2Aの仮想線VLに対する傾斜角度θ2A、第2磁力線ML2Bの仮想線VLに対する傾斜角度θ2Bは、例えば、0度を超え、90度以下であるのが好ましく、25度以上、65度以下であるのがより好ましい。
【0022】
図3に示すように、外側部4は、第1鉄心41と、第2鉄心42とを有する。
第1鉄心41は、第1磁石81に臨んで配置される。第1鉄心41は、中心軸O1方向に沿った板状をなし、径方向外側から第1磁石81の外側の面(表側の面)813全体を覆う。
【0023】
第2鉄心42は、第2磁石82、すなわち、第1分割磁石821および第2分割磁石822の双方に臨んで配置される。第2鉄心42は、ロータコア2の周方向に沿った板状をなし、径方向外側から、第2磁石82の外側の面(表側の面)823に対し、中心軸O1方向(ロータコア2の中心軸)の少なとも一部を覆う。本実施形態では、第2鉄心42は、第2磁石82、1つ当たり、中心軸O1方向に互いに距離を置いて2つ配置される。
【0024】
このような構成の外側部4により、磁束を、透磁率が比較的高い前記材料(磁性体)で構成された第1鉄心41および第2鉄心42に引き付けることができる。これにより、漏れ磁束が低減する(以下「漏れ磁束低減効果」と言う)。そして、漏れ磁束低減効果と、前述した各磁力線の向きとが相まって、モータ1の出力を向上させることができる。
【0025】
特に本実施形態では、前記のように、第2鉄心42は、第2磁石82、1つ当たり2つ配置され、各第2鉄心42が第2磁石82の外側の面823を部分的に覆う。これにより、漏れ磁束低減効果が向上する。
【0026】
第2磁石82の径方向に沿った厚さt82は、第1磁石81の径方向に沿った厚さt81よりも厚い。これにより、第2鉄心42の厚さt42を第1鉄心41の厚さt41よりも薄くして、ロータコア2(外側部4)を円筒体とすることができる。これにより、ロータコア2は、安定して回転することができる。厚さt42が薄い第2鉄心42では、当該第2鉄心42に留まる磁束を低減することができる。
【0027】
以上、本発明のモータを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、モータを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…モータ、2…ロータコア、3…内側部、4…外側部、41…第1鉄心、42…第2鉄心、5…連結部、8…磁石群、81…第1磁石、813…外側の面(表側の面)、82…第2磁石、821…第1分割磁石(第1小磁石)、822…第2分割磁石(第2小磁石)、823…外側の面(表側の面)、9…ステータ、91…コアバック、92…ティース(突出部)、11…ロータ、ML1…第1磁力線、ML1A…第1磁力線、ML1B…第1磁力線、ML2…第2磁力線、ML2A…第2磁力線、ML2B…第2磁力線、O1…中心軸、t41…厚さ、t42…厚さ、t81…厚さ、t82…厚さ、VL…仮想線、θ2A…傾斜角度、θ2B…傾斜角度