(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240903BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B41J2/165 301
B41J2/01 451
B41J2/165 307
(21)【出願番号】P 2021000177
(22)【出願日】2021-01-04
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠田 知紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 史
(72)【発明者】
【氏名】岩室 猛
(72)【発明者】
【氏名】圓谷 悠
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-051774(JP,A)
【文献】特開2017-056696(JP,A)
【文献】特開2018-103399(JP,A)
【文献】特開2021-126810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0114647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/165
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル面に設けられるノズルから媒体に対して噴射方向に液体を噴射することで記録を行う記録部と、
前記ノズル面のクリーニングを行う押圧部を有するクリーニング部と、
温度を検出する温度検出部と、
を備え、
前記ノズル面は、前記ノズルが開口する第1面と、前記噴射方向において前記第1面と前記押圧部との間に位置する第2面と、を有し、
前記クリーニング部は、前記第1面から前記押圧部までの前記噴射方向における距離を、前記温度検出部が検出した検出温度が所定温度以上の場合には第1距離にし、前記検出温度が前記所定温度より低い場合には前記第1距離より短い第2距離にして前記クリーニングを行うことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記押圧部は、基準部と、該基準部に対して突出する凸部と、を有し、
前記検出温度が前記所定温度より低い場合、前記クリーニング部は、前記噴射方向において前記第1面と前記基準部との間の位置であって、且つ前記第1面と前記噴射方向に並ぶ位置に前記凸部を位置させることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記クリーニング部は、円筒形状に構成された第1押圧部と、前記押圧部である第2押圧部と、を備え、
前記検出温度が前記所定温度以上の場合、前記第1押圧部が前記ノズル面のクリーニングを行い、
前記検出温度が前記所定温度より低い場合、前記第2押圧部が前記ノズル面のクリーニングを行うことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記クリーニング部は、フラッシングに伴って前記ノズルから噴射された前記液体を受ける液体受容部をさらに備え、前記第1押圧部、前記第2押圧部、及び前記液体受容部をクリーニング方向に移動させて前記ノズル面のクリーニングを行い、
前記第1押圧部は、前記クリーニング方向において前記第2押圧部と前記液体受容部との間に位置することを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記クリーニング部は、第1押圧部と、前記押圧部である第2押圧部と、を備え、
前記第1押圧部及び前記第2押圧部の各々は、前記ノズル面をクリーニング可能なクリーニング位置と、該クリーニング位置から退避した退避位置と、に移動可能に構成され、
前記検出温度が前記所定温度以上の場合、前記クリーニング部は、前記第1押圧部を前記クリーニング位置に位置させると共に前記第2押圧部を前記退避位置に位置させて前記ノズル面のクリーニングを行い、
前記検出温度が前記所定温度より低い場合、前記クリーニング部は、前記第1押圧部を前記退避位置に位置させると共に前記第2押圧部を前記クリーニング位置に位置させて前記ノズル面のクリーニングを行うことを特徴とする請求項1~請求項4のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記検出温度が前記所定温度以上の場合、前記クリーニング部は、前記第1面と前記噴射方向に並ぶ位置に前記基準部を位置させることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記基準部と前記凸部は、幅方向に並び、
前記押圧部は、前記幅方向に移動可能に設けられることを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記検出温度が前記所定温度以上の場合、前記クリーニング部は、前記押圧部と前記記録部を第1速度で相対移動させて前記クリーニングを行い、
前記検出温度が前記所定温度より低い場合、前記クリーニング部は、前記押圧部と前記記録部を第2速度で相対移動させて前記クリーニングを行い、
前記第1速度は、前記第2速度より遅いことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記記録部は、前記第1面を複数有し、
複数の前記第1面は、幅方向及びクリーニング方向に互いに位置をずらして設けられ、
前記押圧部は、円筒形状に構成された基準部と、該基準部に対して突出する複数の凸部と、を有し、前記基準部を軸として回転方向に回転可能に設けられ、
複数の前記凸部は、前記幅方向及び前記回転方向に互いに位置をずらして設けられ、
前記クリーニング部は、前記記録部に対して前記押圧部を前記クリーニング方向に相対移動させて前記クリーニングを行い、前記検出温度が前記所定温度より低い場合は、前記押圧部を回転させることにより前記複数の凸部をそれぞれ複数の前記第1面と前記噴射方向に並ばせることを特徴とする請求項1~請求項8のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記ノズル面に接触して前記液体を吸収可能な吸収部材をさらに備え、
前記クリーニング部は、前記押圧部と前記ノズル面との間に前記吸収部材を挟んで前記クリーニングを行うことを特徴とする請求項1~請求項9のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターなどの液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、記録部の一例である記録ヘッドから液体の一例であるインクを吐出して印刷する液体噴射装置の一例であるプリンターがある。プリンターは、記録ヘッドを払拭するワイパーと、温度を検出する温度検出部の一例である温度センサーと、を備える。
【0003】
弾性を有するワイパーは、温度が低い場合に硬化し、記録ヘッドに対する密着性が低下する。そのため、プリンターは、温度センサーが検出した温度に応じて、ワイパーを記録ヘッドに当てる強さを変更する。具体的には、プリンターは、温度が低い場合にワイパーを記録ヘッドに押し当てる力を、温度が高い場合に比べて強くする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
温度が低い場合は、温度が高い場合に比べてノズル面に付着した液体の粘度が上昇し、ノズル面をクリーニングしにくくなることがある。特にノズル面に凹凸がある場合、ノズル面のうちクリーニング部から離れた凹の部分は、クリーニング部に近い凸の部分に比べてクリーニングを受けにくい。そのため、クリーニング部をノズル面に強く押し当てたとしても、ノズル面を十分にクリーニングできない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する液体噴射装置は、ノズル面に設けられるノズルから媒体に対して噴射方向に液体を噴射することで記録を行う記録部と、前記ノズル面のクリーニングを行う押圧部を有するクリーニング部と、温度を検出する温度検出部と、を備え、前記ノズル面は、前記ノズルが開口する第1面と、前記噴射方向において前記第1面と前記押圧部との間に位置する第2面と、を有し、前記クリーニング部は、前記第1面から前記押圧部までの前記噴射方向における距離を、前記温度検出部が検出した検出温度が所定温度以上の場合には第1距離にし、前記検出温度が前記所定温度より低い場合には前記第1距離より短い第2距離にして前記クリーニングを行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】待機位置に位置するクリーニング部の模式断面図。
【
図3】待機位置に位置するクリーニング部の模式断面図。
【
図7】第1押圧部でクリーニングを行うクリーニング部の模式断面図。
【
図8】第1押圧部でクリーニングを行った後のクリーニング部の模式断面図。
【
図9】第2押圧部でクリーニングを行うクリーニング部の模式断面図。
【
図11】第2押圧部でクリーニングを行った後のクリーニング部の模式断面図。
【
図12】第2実施形態の液体噴射装置が備えるクリーニング部の模式断面図。
【
図13】高温時に記録部をクリーニングする押圧部の模式断面図。
【
図14】低温時に記録部をクリーニングする押圧部の模式断面図。
【
図15】第3実施形態の液体噴射装置が備えるノズル面を示す模式図。
【
図19】第1状態の押圧部における第1凸部の断面図。
【
図20】第1状態の押圧部における第2凸部の断面図。
【
図21】第2状態の押圧部における第1凸部の断面図。
【
図22】第2状態の押圧部における第2凸部の断面図。
【
図23】第3状態の押圧部における第1凸部の断面図。
【
図24】第3状態の押圧部における第2凸部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、液体噴射装置の第1実施形態について図を参照しながら説明する。液体噴射装置は、例えば、用紙等の媒体に液体の一例であるインクを噴射して印刷するインクジェット式のプリンターである。
【0009】
図面では、液体噴射装置11が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。
【0010】
図1に示すように、液体噴射装置11は、一対の脚部12と、脚部12上に組み付けられる筐体13と、を備えてもよい。液体噴射装置11は、ロール状に巻き重ねた媒体14を巻き解いて繰り出す繰出部15と、筐体13から排出される媒体14を案内する案内部16と、媒体14を巻き取って回収する回収部17と、を備えてもよい。液体噴射装置11は、回収部17に回収される媒体14にテンションを付与するテンション付与機構18を備えてもよい。
【0011】
液体噴射装置11は、液体を噴射することで記録を行う記録部20を備える。液体噴射装置11は、記録部20を移動させるキャリッジ21を備えてもよい。液体噴射装置11は、記録部20のクリーニングを行うクリーニング部22を備える。液体噴射装置11は、記録部20に液体を供給する液体供給装置23と、ユーザーによって操作される操作パネル24と、を備えてもよい。
【0012】
キャリッジ21は、記録部20をX軸に沿って往復移動させる。記録部20は、媒体14に記録を行う記録領域と、
図2に示すメンテナンス位置MPと、を移動可能である。記録部20は、液体供給装置23を通じて供給された液体を移動しながら噴射し、媒体14に記録する。
【0013】
液体供給装置23は、液体を収容する複数の液体収容体25が着脱可能に装着される装着部26と、装着部26に装着させる液体収容体25から記録部20に液体を供給する供給流路27と、を備えてもよい。
【0014】
液体噴射装置11は、制御部29を備える。制御部29は、液体噴射装置11における各機構の駆動を統括的に制御し、液体噴射装置11で実行される各種動作を制御する。制御部29は、α:コンピュータープログラムに従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサー、β:各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはγ:それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサーは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる可読媒体を含む。
【0015】
図2に示すように、液体噴射装置11は、キャリッジ21を案内するガイド軸31を備えてもよい。キャリッジ21は、図示しないキャリッジモーターの駆動に伴い、ガイド軸31に沿って往復移動する。
【0016】
液体噴射装置11は、温度を検出する温度検出部33を備える。本実施形態の温度検出部33は、キャリッジ21に設けられる。温度検出部33は、キャリッジ21及び記録部20と共に移動し、記録部20の周辺の温度を検出する。
【0017】
記録部20は、ノズル35が設けられるノズル面36を有する。記録部20は、ノズル35から媒体14に対して噴射方向Zに液体を噴射することで記録を行う。本実施形態の噴射方向Zは、Z軸に平行であり、鉛直方向と一致する。したがって、本実施形態の記録部20は、液体を下方に噴射する。
【0018】
<クリーニング部>
図2に示すように、クリーニング部22は、メンテナンス位置MPに位置する記録部20と噴射方向Zに並び、ノズル面36と対向する。具体的には、本実施形態のクリーニング部22は、記録部20が移動する移動領域の下方に位置する。
【0019】
クリーニング部22は、ノズル面36を払拭可能な払拭機構38を備える。クリーニング部22は、フラッシングに伴ってノズル35から噴射された液体を受ける液体受容部39と、払拭機構38及び液体受容部39を保持する保持部40と、を備えてもよい。液体噴射装置11は、クリーニング部22の移動を案内するレール41と、移動するクリーニング部22の位置を検出可能な検出部42と、を備えてもよい。検出部42は、例えばクリーニング部22を検出するセンサーでもよいし、クリーニング部22の移動距離を測定可能なリニアエンコーダーであってもよい。
【0020】
クリーニング部22は、レール41に沿ってクリーニング方向Y1もしくはクリーニング方向Y1とは反対の帰還方向Y2に移動する。本実施形態のクリーニング方向Y1及び帰還方向Y2は、Y軸に平行な方向である。本実施形態の払拭機構38と液体受容部39は、クリーニング方向Y1に並んだ状態で保持部40に保持される。具体的には、払拭機構38は、液体受容部39に対してクリーニング方向Y1の上流の位置に、液体受容部39と隣り合って設けられる。
【0021】
<液体受容部>
図2に示すように、待機位置WPに位置する液体受容部39は、メンテナンス位置MPに位置する記録部20と噴射方向Zに並ぶ。液体受容部39は、ノズル35から噴射される液体を廃液として受容する。液体受容部39は、液体を取り込む取込部43を備えてもよい。取込部43は、液体を吸収可能な吸収体で形成されてもよい。
【0022】
<払拭機構>
払拭機構38は、繰出軸45、押圧部の一例である第2押圧部46、テンションローラー47、押圧部の一例である第1押圧部48、及び巻取軸49と、これらを回転可能に支持する枠体50と、を備えてもよい。払拭機構38は、ノズル面36に接触して液体を吸収可能な吸収部材51を備えてもよい。
【0023】
第1押圧部48は、クリーニング方向Y1において第2押圧部46と液体受容部39との間に位置する。すなわち、クリーニング方向Y1において、第1押圧部48と液体受容部39との距離は、第2押圧部46と液体受容部39との距離より短い。
【0024】
繰出軸45は、帯状の吸収部材51をロール状に巻いた状態で保持する。繰出軸45から繰り出された吸収部材51は、搬送経路に沿って搬送される。吸収部材51は、搬送経路の上流から順に設けられる第2押圧部46、テンションローラー47、及び第1押圧部48に巻き掛けられる。巻取軸49は、図示しない巻取用モーターの駆動により回転する。巻取軸49は、吸収部材51をロール状に巻き取る。巻取用モーターは、繰出軸45、第2押圧部46、テンションローラー47、及び第1押圧部48のうち少なくとも1つを巻取軸49と共に回転させてもよい。
【0025】
繰出軸45、第2押圧部46、テンションローラー47、第1押圧部48、及び巻取軸49は、X軸を軸線方向として設けられ、吸収部材51を支持する。本実施形態では、吸収部材51の幅に沿う方向を幅方向Xという。幅方向Xは、X軸に平行である。
【0026】
図2,
図3に示すように、払拭機構38は、第1押圧部48と第2押圧部46を移動させる移動機構52を備えてもよい。移動機構52は、第1押圧部48と第2押圧部46を個別に移動させてもよいし、連動して移動させてもよい。例えば第1押圧部48及び第2押圧部46の各々は、ノズル面36をクリーニング可能なクリーニング位置CPと、クリーニング位置CPから退避した退避位置EPと、に移動可能に構成される。
【0027】
移動機構52は、第1押圧部48と第2押圧部46の一方をクリーニング位置CPに位置させるのに対し、他方を退避位置EPに位置させる。具体的には、
図2に示すように、移動機構52は、第1押圧部48をクリーニング位置CPに位置させ、第2押圧部46を退避位置EPに位置させる。
図3に示すように、移動機構52は、第2押圧部46をクリーニング位置CPに位置させ、第1押圧部48を退避位置EPに位置させる。
【0028】
第1押圧部48と第2押圧部46のうち、クリーニング位置CPに位置する一方は、吸収部材51を下から押し上げ、枠体50に形成された開口53から吸収部材51を突出させる。吸収部材51のうち、クリーニング位置CPに位置する第1押圧部48もしくは第2押圧部46に押し上げられた部分がノズル面36を払拭可能な払拭部分54になる。退避位置EPは、クリーニング位置CPから噴射方向Zに移動した位置であり、吸収部材51をノズル面36に接触させない位置である。
【0029】
図4に示すように、第1押圧部48は、円筒形状に構成されてもよい。第2押圧部46は、基準部55と、基準部55に対して突出する凸部56と、を有してもよい。第1押圧部48の直径は、第2押圧部46の基準部55の直径と同じである。第2押圧部46は、幅方向Xに互いに間隔を有して設けられる複数の凸部56を有してもよい。本実施形態の第2押圧部46は、4つの凸部56を有する。幅方向Xにおいて凸部56同士の間の部分が基準部55である。第2押圧部46は、円筒形状の基準部55と、円筒形状の凸部56と、が幅方向Xに交互に並ぶ。
【0030】
凸部56は基準部55を軸とする回転方向Drにおいて、基準部55の全周に亘って基準部55から径方向に突出する。凸部56の直径は、基準部55の直径より大きい。凸部56は、基準部55と一体で形成されてもよいし、基準部55に対して取り付けられてもよい。
【0031】
<記録部>
図5に示すように、記録部20は、液体噴射ヘッド58と、液体噴射ヘッド58を支持する支持部59と、を備えてもよい。記録部20は、複数の液体噴射ヘッド58を備えてもよい。本実施形態の記録部20は、X軸に沿って互いに間隔を有して並ぶ4つの液体噴射ヘッド58を備える。すなわち、記録部20は、第2押圧部46が有する凸部56と同数の液体噴射ヘッド58を備える。各液体噴射ヘッド58の構成は同じであるため、以下では、1つの液体噴射ヘッド58について説明する。
【0032】
液体噴射ヘッド58には、ノズル35の開口が一方向に一定の間隔で多数並ぶ。一列に並ぶ複数のノズル35は、ノズル列を構成する。本実施形態の記録部20は、幅方向Xに互いに間隔をあけて設けられる第1ノズル列61~第8ノズル列68を有する。
【0033】
本実施形態の第1ノズル列61~第8ノズル列68は、1つの液体噴射ヘッド58に2つずつ設けられる。すなわち、第1ノズル列61と第2ノズル列62が同じ液体噴射ヘッド58に設けられ、第3ノズル列63と第4ノズル列64が同じ液体噴射ヘッド58に設けられる。同様に、第5ノズル列65と第6ノズル列66が同じ液体噴射ヘッド58に設けられ、第7ノズル列67と第8ノズル列68が同じ液体噴射ヘッド58に設けられる。記録部20は、ノズル列ごとに異なる種類の液体を噴射してもよいし、液体噴射ヘッド58ごとに異なる種類の液体を噴射してもよい。
【0034】
図6に示すように、液体噴射ヘッド58は、ノズル35が形成されたノズル形成部材69と、ノズル形成部材69を支持部59に固定する固定部70と、を備えてもよい。ノズル形成部材69の一部は、固定部70に形成された穴70aから露出する。
【0035】
ノズル面36は、ノズル35が開口する第1面71、支持部59が有する第2面72、及び固定部70が有する第3面73を有してもよい。第1面71は、ノズル形成部材69の下面のうち穴70aから露出する部分である。第2面72は、噴射方向Zにおいて第1面71と、第1押圧部48及び第2押圧部46との間に位置する。本実施形態の、第2面72は、第1面71より下方に位置する。第3面73は、噴射方向Zにおいて、第1面71と第2面72との間に位置する。第1面71及び第3面73は、第2面72に対して凹んだ面である。第1面71は、第3面73に対して凹んだ面である。
【0036】
本実施形態の作用について説明する。
<検出温度が所定温度以上の場合>
図2に示すように、温度検出部33が検出した検出温度が所定温度以上の場合には、第1押圧部48がノズル面36のクリーニングを行う。すなわち、クリーニング部22は、第1押圧部48をクリーニング位置CPに位置させると共に第2押圧部46を退避位置EPに位置させてノズル面36のクリーニングを行う。
【0037】
図7に示すように、クリーニング部22は、待機位置WPからクリーニング方向Y1に移動してノズル面36をクリーニングする。換言すると、クリーニング部22は、第1押圧部48、第2押圧部46、及び液体受容部39をクリーニング方向Y1に移動させてノズル面36のクリーニングを行う。クリーニング方向Y1は、払拭機構38がノズル面36をクリーニングする際に移動する方向である。
【0038】
吸収部材51は、払拭部分54がノズル面36に接触し、ノズル面36に付着した液体などの異物を拭き取る。すなわち、第1押圧部48は、吸収部材51をノズル面36に押し付けることでノズル面36のクリーニングを行う。したがって、クリーニング部22は、第1押圧部48とノズル面36との間に吸収部材51を挟んでクリーニングを行う。
【0039】
図6に示すように、第1押圧部48は、第1面71から第1押圧部48までの噴射方向Zにおける距離を、第1距離L1にしてクリーニングを行う。温度が高い場合は、温度が低い場合に比べて液体の流動性が高い。そのため、吸収部材51と第1面71との間に隙間がある場合でも、第1面71に付着した液体Lは、吸収部材51に接触したり、固定部70及び支持部59の側壁を伝って吸収部材51まで移動したりして吸収部材51に吸収される。
【0040】
図8に示すように、第1押圧部48がノズル面36を通過すると、制御部29は、クリーニング部22の移動を停止させると共に、記録部20をメンテナンス位置MPから移動させる。具体的には、制御部29は、クリーニング部22を待機位置WPからクリーニング方向Y1に第1移動距離M1だけ移動させたのち、帰還方向Y2に第1移動距離M1だけ移動させて待機位置WPに戻す。制御部29は、記録部20がメンテナンス位置MPから離れた状態でクリーニング部22を帰還方向Y2に移動させる。
【0041】
図2に示すように、制御部29は、クリーニング部22を待機位置WPに戻すと共に、記録部20をメンテナンス位置MPに戻してフラッシングを行わせる。メンテナンス位置MPに位置する記録部20は、待機位置WPに位置する液体受容部39に対向する。そのため、液体受容部39は、フラッシングに伴って排出された液体を受容する。
【0042】
<検出温度が所定温度より低い場合>
図3に示すように、温度検出部33が検出した検出温度が所定温度より低い場合、第2押圧部46がノズル面36のクリーニングを行う。すなわち、クリーニング部22は、第1押圧部48を退避位置EPに位置させると共に第2押圧部46をクリーニング位置CPに位置させてノズル面36のクリーニングを行う。
【0043】
図9に示すように、クリーニング部22は、待機位置WPからクリーニング方向Y1に移動してノズル面36をクリーニングする。払拭部分54は、払拭機構38がクリーニング方向Y1に移動する際にノズル面36に接触し、ノズル面36に付着した液体などの異物を拭き取る。すなわち、第2押圧部46は、吸収部材51をノズル面36に押し付けることでノズル面36のクリーニングを行う。したがって、クリーニング部22は、第2押圧部46とノズル面36との間に吸収部材51を挟んでクリーニングを行う。
【0044】
図10に示すように、検出温度が所定温度より低い場合、クリーニング部22は、噴射方向Zにおいて第1面71と基準部55との間の位置であって、且つ第1面71と噴射方向Zに並ぶ位置に凸部56を位置させる。
【0045】
幅方向Xにおいて、液体噴射ヘッド58の第1寸法S1は、凸部56の第2寸法S2より大きい。第2押圧部46は、第1面71から第2押圧部46までの噴射方向Zにおける距離を、第1距離L1より短い第2距離L2にしてクリーニングを行う。第2距離L2は、噴射方向Zにおける第1面71から第2面72までの第3距離L3より短い。
【0046】
温度が低い場合は、温度が高い場合に比べて液体の流動性が低い。第2押圧部46は、吸収部材51を支持部59に対して凹む第1面71に押し込むようにして第1面71及び第2面72をクリーニングする。
【0047】
図11に示すように、第2押圧部46がノズル面36を通過すると、制御部29は、クリーニング部22の移動を停止させると共に、記録部20をメンテナンス位置MPから移動させる。具体的には、制御部29は、クリーニング部22を待機位置WPからクリーニング方向Y1に第1移動距離M1より長い第2移動距離M2だけ移動させたのち、帰還方向Y2に第2移動距離M2だけ移動させて待機位置WPに戻す。制御部29は、記録部20がメンテナンス位置MPから離れた状態でクリーニング部22を帰還方向Y2に移動させる。
【0048】
図3に示すように、制御部29は、クリーニング部22を待機位置WPに戻すと共に、記録部20をメンテナンス位置MPに戻してフラッシングを行わせる。液体受容部39は、フラッシングに伴って排出された液体を受容する。
【0049】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ノズル面36は、第1面71と、第2面72と、を有する。第2面72は、噴射方向Zにおいて第1面71と、第1押圧部48及び第2押圧部46と、の間に位置する。第1押圧部48及び第2押圧部46から離れた位置に位置する第1面71は、第2面72に比べて第1押圧部48及び第2押圧部46によるクリーニングを受けにくい。クリーニングのしやすさは、温度にも影響を受ける。具体的には、温度が低い場合は、温度が高い場合に比べてノズル面36に付着した液体Lの粘度が上昇し、クリーニングしにくくなる。その点、クリーニング部22は、第1面71から第1押圧部48及び第2押圧部46までの距離を、検出温度が所定温度より低い場合に、所定温度以上である場合より短くする。すなわち、第2押圧部46は、検出温度が低く液体の粘度が高い場合に、第1面71に近づいて第1面71のクリーニングを行う。したがって、温度が変化した場合でも良好にクリーニングを行うことができる。
【0050】
(2)検出温度が所定温度より低い場合、第2押圧部46が有する凸部56と、ノズル面36が有する第1面71と、が噴射方向Zに並ぶ。このとき、凸部56は、噴射方向Zにおいて第1面71と基準部55との間の位置に位置する。そのため、噴射方向Zにおいて、第1面71から凸部56までの距離は、第1面71から基準部55までの距離より短くなる。したがって、第1面71と第2押圧部46との距離を容易に短くできる。
【0051】
(3)クリーニング部22は、第1押圧部48及び第2押圧部46を備える。クリーニング部22は、検出温度に応じて第1押圧部48と第2押圧部46とを使い分けることで、良好にクリーニングを行うことができる。
【0052】
(4)クリーニング部22は、ノズル面36のクリーニングに伴って、ノズル面36に付着していた液体をノズル35内に押し込んでしまうことがある。ノズル35に押し込まれた液体は、時間の経過とともに蒸発し、ノズル35を詰まらせてしまう虞がある。温度が高い場合は、温度が低い場合に比べて液体が蒸発しやすい。そのため、温度が高い場合は、クリーニングを行った後、フラッシングを速やかに行うことが好ましい。その点、クリーニング方向Y1において、検出温度が所定温度以上の場合にクリーニングを行う第1押圧部48と液体受容部39との間隔を、検出温度が所定温度より低い場合にクリーニングを行う第2押圧部46と液体受容部39との間隔より小さくする。すなわち、第1押圧部48を液体受容部39に近い位置に設けることにより、第1押圧部48によるノズル面36のクリーニングを行った後、液体受容部39をノズル面36に速やかに対向させることができ、記録部20にフラッシングを行わせることができる。
【0053】
(5)第1押圧部48がクリーニング位置CPに位置する場合、第2押圧部46は退避位置EPに位置する。第1押圧部48が退避位置EPに位置する場合、第2押圧部46はクリーニング位置CPに位置する。これにより、第1押圧部48と第2押圧部46のうちクリーニング位置CPに位置する一方を用いてクリーニングを行うことができる。したがって、第1押圧部48と第2押圧部46の両方をクリーニング位置CPに位置させてクリーニングを行う場合に比べ、ノズル面36への負担を低減できる。
【0054】
(6)吸収部材51は液体を吸収可能である。そのため、クリーニング部22と記録部20とで吸収部材51を挟んでクリーニングを行うことにより、ノズル面36に付着した液体を吸収し、ノズル面36に残る液体を低減できる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、液体噴射装置の第2実施形態について図を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態は、払拭機構が第1実施形態の場合とは異なっている。そして、その他の点では第1実施形態とほぼ同じであるため、同一の構成については同一符号を付すことによって重複した説明は省略する。
【0056】
図12に示すように、払拭機構38は、繰出軸45、押圧部75、及び巻取軸49を備えてもよい。第2実施形態の押圧部75の構成は、第1実施形態の第2押圧部46と同じである。すなわち、本実施形態の押圧部75は、基準部55と、基準部55に対して突出する凸部56と、を有する。基準部55と凸部56は、幅方向Xに並ぶ。
【0057】
押圧部75は、吸収部材51を下から押し上げ、開口53から吸収部材51を突出させる。吸収部材51のうち、押圧部75に押し上げられた部分がノズル面36に接触可能な払拭部分54になる。移動機構52は、押圧部75をX軸に沿って往復移動させる。すなわち、押圧部75は、幅方向Xに移動可能に設けられる。
【0058】
本実施形態の作用について説明する。
<検出温度が所定温度以上の場合>
図13に示すように、温度検出部33が検出した検出温度が所定温度以上の場合には、クリーニング部22は、第1面71と噴射方向Zに並ぶ位置に基準部55を位置させる。押圧部75は、第1面71から押圧部75までの噴射方向Zにおける距離を、第1距離の一例である高温時距離L4にしてクリーニングを行う。
【0059】
クリーニング部22は、待機位置WPからクリーニング方向Y1に移動してノズル面36をクリーニングする。このときクリーニング部22は、押圧部75と記録部20を第1速度で相対移動させてクリーニングを行ってもよい。第1移動速度は、検出温度が所定温度より低い場合に、押圧部75と記録部20を相対移動させる際の第2速度より遅い速度である。
【0060】
押圧部75は、吸収部材51をノズル面36に押し付けることでノズル面36のクリーニングを行う。クリーニング部22は、押圧部75とノズル面36との間に吸収部材51を挟んでクリーニングを行う。
【0061】
<検出温度が所定温度より低い場合>
図14に示すように、温度検出部33が検出した検出温度が所定温度より低い場合、クリーニング部22は、噴射方向Zにおいて第1面71と基準部55との間の位置であって、且つ第1面71と噴射方向Zに並ぶ位置に凸部56を位置させる。押圧部75は、第1面71から押圧部75までの噴射方向Zにおける距離を、高温時距離L4より短い第2距離L2にしてクリーニングを行う。
【0062】
クリーニング部22は、待機位置WPからクリーニング方向Y1に移動してノズル面36をクリーニングする。このときクリーニング部22は、押圧部75と記録部20を第1速度より速い第2速度で相対移動させてクリーニングを行ってもよい。
【0063】
本実施形態の効果について説明する。
(7)検出温度が所定温度以上の場合、押圧部75が有する基準部55と、ノズル面36が有する第1面71と、が噴射方向Zに並ぶ。すなわち、押圧部75は、第1面71と噴射方向Zに並ぶ位置に基準部55が位置するか、凸部56が位置するか、により噴射方向Zにおける第1面71との距離を変更できる。したがって、第1面71とクリーニング部22との距離を、1つの押圧部75によって変更できる。
【0064】
(8)押圧部75は、基準部55と凸部56とが並ぶ幅方向Xに移動可能に設けられる。例えば、第1面71と凸部56とが噴射方向Zに並んだ状態で押圧部75を幅方向Xに移動させることで、第1面71に並ぶ位置から凸部56を移動させると共に、第1面71に並ぶ位置に基準部55を移動させることができる。したがって、第1面71と押圧部75との距離を容易に変更できる。
【0065】
(9)液体は、温度が高い場合に、温度が低い場合に比べて流動しやすい。検出温度が所定温度以上の場合、クリーニング部22は、第2速度より遅い第1速度で押圧部75と記録部20とを相対移動させてクリーニングを行う。したがって、第1面71と押圧部75との距離を第2距離L2より長い高温時距離L4にして行うクリーニングであっても、第1面71に付着した液体Lが移動するのを待ちながらクリーニングを行うことができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、液体噴射装置の第3実施形態について図を参照しながら説明する。なお、この第3実施形態は、記録部と押圧部の形状が第1実施形態の場合とは異なっている。そして、その他の点では第1実施形態とほぼ同じであるため、同一の構成については同一符号を付すことによって重複した説明は省略する。
【0067】
図15に示すように、第1ノズル列61~第8ノズル列68の各ノズル列は、第1ノズル群77及び第2ノズル群78を有してもよい。第1ノズル群77及び第2ノズル群78は、互いに幅方向X及びクリーニング方向Y1にずれた位置に位置し、クリーニング方向Y1において一部が重なる。第1ノズル群77及び第2ノズル群78は、それぞれクリーニング方向Y1に並ぶ複数のノズル35により構成される。
【0068】
記録部20は、第1面71を複数有する。具体的には、1つの液体噴射ヘッド58は、第1ノズル群77を構成するノズル35が開口する第1面71と、第2ノズル群78が構成するノズル35が開口する第1面71と、を有する。以下の説明では、第1ノズル群77に対応する第1面71をクリーニング方向Y1の上流に位置する上流面79、第2ノズル群78に対応する第1面71をクリーニング方向Y1の下流に位置する下流面80ともいう。上流面79及び下流面80は、幅方向X及びクリーニング方向Y1に互いに位置をずらして設けられる。
【0069】
図16に示すように、押圧部75は、円筒形状に構成された基準部55と、基準部55に対して突出する凸部の一例である第1凸部81と、凸部の一例である第2凸部82と、を有する。すなわち、押圧部75は、複数の凸部を有する。第1凸部81と第2凸部82は、幅方向Xに互いに位置をずらして設けられる。押圧部75は、液体噴射ヘッド58と同数の第1凸部81及び第2凸部82を有する。
【0070】
第1凸部81は、メンテナンス位置MPに位置する上流面79と幅方向Xにおいて同じ位置に位置する。第2凸部82は、メンテナンス位置MPに位置する下流面80と幅方向Xにおいて同じ位置に位置する。
【0071】
クリーニング部22は、押圧部75を回転させる回転機構84を備える。押圧部75は、基準部55を軸として回転方向Drに回転可能に設けられる。押圧部75は、
図17,
図18に示す基準状態から回転方向Drに回転し、
図19,
図20に示す第1状態、
図21,
図22に示す第2状態、
図23,
図24に示す第3状態になった後、基準状態に戻る。
【0072】
図17,
図18に示すように、第1凸部81及び第2凸部82は、基準部55を軸とする回転方向Drの一部に、基準部55から径方向に突出するように設けられる。第1凸部81及び第2凸部82は、回転方向Drに互いに位置をずらして設けられる。
【0073】
本実施形態の作用について説明する。
<検出温度が所定温度以上の場合>
図16~
図18に示すように、温度検出部33が検出した検出温度が所定温度以上の場合には、クリーニング部22は、記録部20に対して基準状態の押圧部75をクリーニング方向Y1に相対移動させてクリーニングを行う。
【0074】
押圧部75が基準状態のとき、吸収部材51は、基準部55が押す部分が払拭部分54になる。そのため、
図6に示す第1実施形態と同様に、クリーニング部22は、第1面71と押圧部75との噴射方向Zにおける距離を第1距離L1にしてクリーニングを行う。
【0075】
<検出温度が所定温度より低い場合>
検出温度が所定温度より低い場合は、クリーニング部22は、押圧部75を回転させることにより第1凸部81及び第2凸部82をそれぞれ上流面79及び下流面80と噴射方向Zに並ばせる。
【0076】
図15に示すように、クリーニング部22は、押圧部75をクリーニング方向Y1に移動させてクリーニングを行う。そのため、押圧部75は、上流面79と噴射方向Zに並ぶ上流領域Au、上流面79及び下流面80と噴射方向Zに並ぶ中流領域Ac、下流面80と噴射方向Zに並ぶ下流領域Adを順に移動する。
【0077】
図19,
図20に示すように、クリーニング部22は、上流領域Auを移動するとき、押圧部75を第1状態にする。第1状態の押圧部75は、第1凸部81が押圧部75の上端に位置する。そのため、吸収部材51のうち、第1凸部81が押す部分が払拭部分54になる。第2凸部82は、第1凸部81の上端より下方に位置する。
【0078】
第1凸部81は、上流面79と噴射方向Zに並ぶ。
図10に示す第1実施形態と同様に、クリーニング部22は、上流面79から第1凸部81までの噴射方向Zにおける距離を第2距離L2にしてクリーニングを行う。
【0079】
図21,
図22に示すように、クリーニング部22は、中流領域Acを移動するとき、押圧部75を第2状態にする。第2状態の押圧部75は、第1凸部81及び第2凸部82が押圧部75の上端に位置する。そのため、吸収部材51のうち第1凸部81及び第2凸部82が押す部分が払拭部分54になる。
【0080】
第1凸部81は、上流面79と噴射方向Zに並び、第2凸部82は、下流面80と噴射方向Zに並ぶ。クリーニング部22は、上流面79から第1凸部81までの噴射方向Zにおける距離を第2距離L2にし、下流面80から第2凸部82までの噴射方向Zにおける距離を第2距離L2にしてクリーニングを行う。
【0081】
図23,
図24に示すように、クリーニング部22は、下流領域Adを移動するとき、押圧部75を第3状態にする。第3状態の押圧部75は、第2凸部82が押圧部75の上端に位置する。そのため、吸収部材51のうち第2凸部82が押す部分が払拭部分54になる。第1凸部81は、第2凸部82の上端より下方に位置する。第2凸部82は、下流面80と噴射方向Zに並ぶ。クリーニング部22は、下流面80から第2凸部82までの噴射方向Zにおける距離を第2距離L2にしてクリーニングを行う。
【0082】
本実施形態の効果について説明する。
(10)押圧部75は、幅方向X及び回転方向Drに互いに位置をずらして設けられる第1凸部81及び第2凸部82を有する。そのため、押圧部75は、押圧部75を回転方向Drに回転させることにより、第1凸部81及び第2凸部82をそれぞれ上流面79及び下流面80に並ばせることができる。したがって、記録部20が上流面79及び下流面80を有する場合でも、ノズル面36のクリーニングを良好に行うことができる。
【0083】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第1実施形態及び第2実施形態において、第2押圧部46及び押圧部75は、回転しなくてもよい。凸部56は、少なくともノズル面36との間に吸収部材51を挟むことができればよく回転方向Drの一部に設けてもよい。
【0084】
・第1実施形態において、第1押圧部48の直径は、第2押圧部46の凸部56の直径と同じであってもよい。
・クリーニング部22は、吸収部材51を備えない構成としてもよい。第1押圧部48、第2押圧部46、及び押圧部75は、ノズル面36を直接クリーニングしてもよい。
【0085】
・第3実施形態において、1つの液体噴射ヘッド58は、1つの第1面71を有してもよい。押圧部75は、基準部55と第1凸部81とを有してもよい。クリーニング部22は、検出温度が所定温度以上の場合は、基準部55が押圧部75の上端になる基準状態でクリーニングを行い、検出温度が所定温度より低い場合は、第1凸部81が押圧部75の上端になる第1状態でクリーニングを行ってもよい。
【0086】
・制御部29は、検出温度に関係なく一定速度でクリーニング部22を移動させてもよい。
・制御部29は、検出温度が所定温度以上の場合、検出温度が所定温度より低い場合より速い速度でクリーニング部22を移動させてもよい。
【0087】
・第1実施形態において、第1押圧部48と第2押圧部46のクリーニング方向Y1における間隔を、ノズル面36のクリーニング方向Y1における寸法より大きくしてもよい。この場合、第1押圧部48と第2押圧部46をクリーニング位置CPに位置させた状態でクリーニングを行ってもよい。
【0088】
・液体受容部39は、クリーニング部22とは別に設けてもよい。例えば、液体受容部39は、クリーニング部22と幅方向Xに並ぶ位置に設けてもよい。記録部20は、メンテナンス位置MPから幅方向Xに移動してフラッシングを行ってもよい。
【0089】
・クリーニング方向Y1は、X軸に平行な方向であってもよい。
・記録部20は、X軸に沿って移動することにより、クリーニング部22に対して相対移動し、クリーニング部22にノズル面36のクリーニングを行わせてもよい。記録部20とクリーニング部22は、双方が移動してノズル面36のクリーニングを行ってもよい。
【0090】
・温度検出部33は、ノズル面36の温度を検出してもよい。温度検出部33は、記録部20内の液体の温度を検出してもよい。温度検出部33は、クリーニング部22の周辺の温度を検出してもよい。温度検出部33は、液体噴射装置11が設置された環境の温度である気温を検出してもよい。
【0091】
・液体噴射装置11は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置であってもよい。液体噴射装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。ここでいう液体は、液体噴射装置から噴射させることができるような材料であればよい。例えば、液体は、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属、金属融液、のような流状体を含むものとする。液体は、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する装置がある。液体噴射装置は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。液体噴射装置は、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ、光学レンズ、などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する装置であってもよい。液体噴射装置は、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する装置であってもよい。
【0092】
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
(A)液体噴射装置は、ノズル面に設けられるノズルから媒体に対して噴射方向に液体を噴射することで記録を行う記録部と、前記ノズル面のクリーニングを行う押圧部を有するクリーニング部と、温度を検出する温度検出部と、を備え、前記ノズル面は、前記ノズルが開口する第1面と、前記噴射方向において前記第1面と前記押圧部との間に位置する第2面と、を有し、前記クリーニング部は、前記第1面から前記押圧部までの前記噴射方向における距離を、前記温度検出部が検出した検出温度が所定温度以上の場合には第1距離にし、前記検出温度が前記所定温度より低い場合には前記第1距離より短い第2距離にして前記クリーニングを行う。
【0093】
この構成によれば、ノズル面は、第1面と、第2面と、を有する。第2面は、噴射方向において第1面と押圧部との間に位置する。押圧部から離れた位置に位置する第1面は、第2面に比べて押圧部によるクリーニングを受けにくい。その点、クリーニング部は、第1面から押圧部までの距離を、検出温度が所定温度より低い場合に、所定温度以上である場合より短くする。すなわち、押圧部は、検出温度が低く液体の粘度が高い場合に、第1面に近づいて第1面のクリーニングを行う。したがって、温度が変化した場合でも良好にクリーニングを行うことができる。
【0094】
(B)液体噴射装置において、前記押圧部は、基準部と、該基準部に対して突出する凸部と、を有し、前記検出温度が前記所定温度より低い場合、前記クリーニング部は、前記噴射方向において前記第1面と前記基準部との間の位置であって、且つ前記第1面と前記噴射方向に並ぶ位置に前記凸部を位置させてもよい。
【0095】
この構成によれば、検出温度が所定温度より低い場合、押圧部が有する凸部と、ノズル面が有する第1面と、が噴射方向に並ぶ。このとき、凸部は、噴射方向において第1面と基準部との間の位置に位置する。そのため、噴射方向において、第1面から凸部までの距離は、第1面から基準部までの距離より短くなる。したがって、第1面と押圧部との距離を容易に短くできる。
【0096】
(C)液体噴射装置において、前記クリーニング部は、円筒形状に構成された第1押圧部と、前記押圧部である第2押圧部と、を備え、前記検出温度が前記所定温度以上の場合、前記第1押圧部が前記ノズル面のクリーニングを行い、前記検出温度が前記所定温度より低い場合、前記第2押圧部が前記ノズル面のクリーニングを行ってもよい。
【0097】
この構成によれば、クリーニング部は、第1押圧部及び第2押圧部を備える。クリーニング部は、検出温度に応じて第1押圧部と第2押圧部とを使い分けることで、良好にクリーニングを行うことができる。
【0098】
(D)液体噴射装置において、前記クリーニング部は、フラッシングに伴って前記ノズルから噴射された前記液体を受ける液体受容部をさらに備え、前記第1押圧部、前記第2押圧部、及び前記液体受容部をクリーニング方向に移動させて前記ノズル面のクリーニングを行い、前記第1押圧部は、前記クリーニング方向において前記第2押圧部と前記液体受容部との間に位置してもよい。
【0099】
この構成によれば、クリーニング方向において、検出温度が所定温度以上の場合にクリーニングを行う第1押圧部と液体受容部との間隔を、検出温度が所定温度より低い場合にクリーニングを行う第2押圧部と液体受容部との間隔より小さくする。すなわち、第1押圧部を液体受容部に近い位置に設けることにより、第1押圧部によるノズル面のクリーニングを行った後、液体受容部をノズル面に速やかに対向させることができ、記録部にフラッシングを行わせることができる。
【0100】
(E)液体噴射装置において、前記クリーニング部は、第1押圧部と、前記押圧部である第2押圧部と、を備え、前記第1押圧部及び前記第2押圧部の各々は、前記ノズル面をクリーニング可能なクリーニング位置と、該クリーニング位置から退避した退避位置と、に移動可能に構成され、前記検出温度が前記所定温度以上の場合、前記クリーニング部は、前記第1押圧部を前記クリーニング位置に位置させると共に前記第2押圧部を前記退避位置に位置させて前記ノズル面のクリーニングを行い、前記検出温度が前記所定温度より低い場合、前記クリーニング部は、前記第1押圧部を前記退避位置に位置させると共に前記第2押圧部を前記クリーニング位置に位置させて前記ノズル面のクリーニングを行ってもよい。
【0101】
この構成によれば、第1押圧部がクリーニング位置に位置する場合、第2押圧部は退避位置に位置する。第1押圧部が退避位置に位置する場合、第2押圧部はクリーニング位置に位置する。これにより、第1押圧部と第2押圧部のうちクリーニング位置に位置する一方を用いてクリーニングを行うことができる。したがって、第1押圧部と第2押圧部の両方をクリーニング位置に位置させてクリーニングを行う場合に比べ、ノズル面への負担を低減できる。
【0102】
(F)液体噴射装置において、前記検出温度が前記所定温度以上の場合、前記クリーニング部は、前記第1面と前記噴射方向に並ぶ位置に前記基準部を位置させてもよい。
この構成によれば、検出温度が所定温度以上の場合、押圧部が有する基準部と、ノズル面が有する第1面と、が噴射方向に並ぶ。すなわち、押圧部は、第1面と噴射方向に並ぶ位置に基準部が位置するか、凸部が位置するか、により噴射方向における第1面との距離を変更できる。したがって、第1面とクリーニング部との距離を、1つの押圧部によって変更できる。
【0103】
(G)液体噴射装置において、前記基準部と前記凸部は、幅方向に並び、前記押圧部は、前記幅方向に移動可能に設けられてもよい。
この構成によれば、押圧部は、基準部と凸部とが並ぶ幅方向に移動可能に設けられる。例えば、第1面と凸部とが噴射方向に並んだ状態で押圧部を幅方向に移動させることで、第1面に並ぶ位置から凸部を移動させると共に、第1面に並ぶ位置に基準部を移動させることができる。したがって、第1面と押圧部との距離を容易に変更できる。
【0104】
(H)液体噴射装置において、前記検出温度が前記所定温度以上の場合、前記クリーニング部は、前記押圧部と前記記録部を第1速度で相対移動させて前記クリーニングを行い、前記検出温度が前記所定温度より低い場合、前記クリーニング部は、前記押圧部と前記記録部を第2速度で相対移動させて前記クリーニングを行い、前記第1速度は、前記第2速度より遅くてもよい。
【0105】
液体は、温度が高い場合に、温度が低い場合に比べて流動しやすい。この構成によれば、検出温度が所定温度以上の場合、クリーニング部は、第2速度より遅い第1速度で押圧部と記録部とを相対移動させてクリーニングを行う。したがって、第1面と押圧部との距離を第2距離より長い第1距離にして行うクリーニングであっても、第1面に付着した液体が移動するのを待ちながらクリーニングを行うことができる。
【0106】
(I)液体噴射装置において、前記記録部は、前記第1面を複数有し、複数の前記第1面は、幅方向及びクリーニング方向に互いに位置をずらして設けられ、前記押圧部は、円筒形状に構成された基準部と、該基準部に対して突出する複数の凸部と、を有し、前記基準部を軸として回転方向に回転可能に設けられ、複数の前記凸部は、前記幅方向及び前記回転方向に互いに位置をずらして設けられ、前記クリーニング部は、前記記録部に対して前記押圧部を前記クリーニング方向に相対移動させて前記クリーニングを行い、前記検出温度が前記所定温度より低い場合は、前記押圧部を回転させることにより前記複数の凸部をそれぞれ複数の前記第1面と前記噴射方向に並ばせてもよい。
【0107】
この構成によれば、押圧部は、幅方向及び回転方向に互いに位置をずらして設けられる複数の凸部を有する。そのため、押圧部は、押圧部を回転方向に回転させることにより、複数の凸部をそれぞれ複数の第1面に並ばせることができる。したがって、記録部が複数の第1面を有する場合でも、ノズル面のクリーニングを良好に行うことができる。
【0108】
(J)液体噴射装置は、前記ノズル面に接触して前記液体を吸収可能な吸収部材をさらに備え、前記クリーニング部は、前記押圧部と前記ノズル面との間に前記吸収部材を挟んで前記クリーニングを行ってもよい。
【0109】
この構成によれば、吸収部材は液体を吸収可能である。そのため、クリーニング部と記録部とで吸収部材を挟んでクリーニングを行うことにより、ノズル面に付着した液体を吸収し、ノズル面に残る液体を低減できる。
【符号の説明】
【0110】
11…液体噴射装置、12…脚部、13…筐体、14…媒体、15…繰出部、16…案内部、17…回収部、18…テンション付与機構、20…記録部、21…キャリッジ、22…クリーニング部、23…液体供給装置、24…操作パネル、25…液体収容体、26…装着部、27…供給流路、29…制御部、31…ガイド軸、33…温度検出部、35…ノズル、36…ノズル面、38…払拭機構、39…液体受容部、40…保持部、41…レール、42…検出部、43…取込部、45…繰出軸、46…押圧部の一例である第2押圧部、47…テンションローラー、48…押圧部の一例である第1押圧部、49…巻取軸、50…枠体、51…吸収部材、52…移動機構、53…開口、54…払拭部分、55…基準部、56…凸部、58…液体噴射ヘッド、59…支持部、61…第1ノズル列、62…第2ノズル列、63…第3ノズル列、64…第4ノズル列、65…第5ノズル列、66…第6ノズル列、67…第7ノズル列、68…第8ノズル列、69…ノズル形成部材、70…固定部、70a…穴、71…第1面、72…第2面、73…第3面、75…押圧部、77…第1ノズル群、78…第2ノズル群、79…第1面の一例である上流面、80…第1面の一例である下流面、81…凸部の一例である第1凸部、82…凸部の一例である第2凸部、84…回転機構、Ac…中流領域、Ad…下流領域、Au…上流領域、CP…クリーニング位置、Dr…回転方向、EP…退避位置、L…液体、L1…第1距離、L2…第2距離、L3…第3距離、L4…第1距離の一例である高温時距離、M1…第1移動距離、M2…第2移動距離、MP…メンテナンス位置、S1…第1寸法、S2…第2寸法、WP…待機位置、X…幅方向、Y1…クリーニング方向、Y2…帰還方向、Z…噴射方向。