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  • 特許-バーナ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 17/00 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
F23D17/00 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021001198
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106319
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】野村 賢一
(72)【発明者】
【氏名】新藤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】羽藤 和洋
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-071266(JP,U)
【文献】特開2020-186851(JP,A)
【文献】特開2013-155917(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0109860(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第111520717(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113587089(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 17/00
F23D 14/26
F23Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にパイロット燃料を流出するパイロット燃料開口が形成されたパイロット燃料供給管と、
前記パイロット燃料供給管の前記パイロット燃料開口よりも上流側の外周に鍔状に配置される保炎板と、
前記パイロット燃料供給管及び前記保炎板の外側に配設され、前記保炎板との隙間から少なくとも燃焼用空気を供給する第1空気供給筒と、
前記パイロット燃料供給管の外側、かつ、前記第1空気供給筒の内側に、前記パイロット燃料供給管と同軸に配置され、主燃料を供給する主燃料供給管と、
を備え、
前記保炎板は、前記パイロット燃料供給管に近接する領域に前記燃焼用空気を通過させる補助開口を有し、
前記主燃料供給管は、該主燃料供給管の先端部を前記保炎板との間に所定の距離をあけた状態で閉止する閉止蓋部と、該主燃料供給管の先端側の外周に形成され、前記主燃料を流出させる主燃料開口と、を有する、バーナ。
【請求項2】
前記補助開口の面積は、前記燃焼用空気を前記保炎板よりも下流側に流出させる開口の合計面積の1%以上10%以下である、請求項1に記載のバーナ。
【請求項3】
前記第1空気供給筒の外側に配置され、該第1空気供給筒との間の空間に前記燃焼用空気の一部が2次空気として導入される第2空気供給筒をさらに備え、
前記第1空気供給筒は、前記保炎板よりも下流側に前記2次空気を内側に噴出させる2次空気開口を有する、請求項1又は2に記載のバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種火となるパイロット火炎を形成するための燃料を供給するパイロット燃料供給管と、目的とする熱量を得るための主火炎を形成するための燃料を供給する主燃料供給管と、を備える燃焼装置が提案されている。また、主燃料及び燃焼用空気を供給する流路の中にパイロット燃料供給管を配置したバーナも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-204940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パイロット火炎は、主燃焼用の空気が導入される状態でも安定して燃焼することが望ましいが、主火炎を形成するバーナとしての性能を優先して設計すると、パイロット火炎の着火性が不十分となる場合がある。従って、本発明は、パイロット火炎の着火が容易なバーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るバーナは、先端部にパイロット燃料を流出するパイロット燃料開口が形成されたパイロット燃料供給管と、前記パイロット燃料開口よりも上流側の外周に鍔状に配置される保炎板と、前記パイロット燃料供給管の外側から少なくとも燃焼用空気を供給する第1空気供給筒と、を備え、前記保炎板は、前記パイロット燃料供給管に近接する領域に前記燃焼用空気を通過させる補助開口を有する。
【0006】
本発明の一態様に係るバーナにおいて、前記補助開口の面積は、前記燃焼用空気を前記保炎板よりも下流側に流出させる開口の合計面積の1%以上であってもよい。
【0007】
本発明の一態様に係るバーナは、前記パイロット燃料供給管の外側、かつ、前記第1空気供給筒の内側に、前記パイロット燃料供給管と同軸に配置され、主燃料を供給する主燃料供給管をさらに備え、前記主燃料供給管は、該主燃料供給管の先端部を前記保炎板との間に所定の距離をあけた状態で閉止する閉止蓋部と、該主燃料供給管の先端側の外周に形成され、前記主燃料を流出させる主燃料開口と、を有してもよい。
【0008】
本発明の一態様に係るバーナは、前記第1空気供給筒の外側に配置され、該第1空気供給筒との間の空間に前記燃焼用空気の一部が2次空気として導入される第2空気供給筒をさらに備え、前記第1空気供給筒は、前記保炎板よりも下流側に前記2次空気を内側に噴出させる2次空気開口を有してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パイロット火炎の着火が容易なバーナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るバーナの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るバーナ1の模式断面図である。なお、図示するバーナ1の各構成要素の形状は簡略化されており、各構成要素の寸法も見やすいよう調整されている。
【0012】
バーナ1は、パイロット燃料を供給するパイロット燃料供給管10と、パイロット燃料供給管10の外周に配設される保炎板20と、パイロット燃料供給管10の外側にパイロット燃料供給管10と同軸に配設され、主燃料を供給する主燃料供給管30と、主燃料供給管30の外側にパイロット燃料供給管10と同軸に配設され1次空気を供給する第1空気供給筒40と、第1空気供給筒40の外側にパイロット燃料供給管10と同軸に配設され、2次空気を供給する第2空気供給筒50と、第2空気供給筒50の上流側の端部に接続され、第1空気供給筒40及び第2空気供給筒50に燃焼用空気を分配する給気チャンバ60と、を備える。バーナ1は、鉛直方向下向きに主燃料及び燃焼用空気を噴出することにより、下方の燃焼空間に下向きの火炎を形成する。
【0013】
パイロット燃料供給管10は、鉛直方向に延びる。パイロット燃料供給管10の先端部には、パイロット燃料を流出するパイロット燃料開口11が形成されている。詳細には、パイロット燃料供給管10は、先端が封止され、先端近傍の側壁に、径方向に貫通する複数のパイロット燃料開口11が形成される構成とされ得る。パイロット燃料供給管10の径並びにパイロット燃料開口11の大きさ及び数は、保炎板20よりも下流側の燃焼空間にパイロット火炎を形成するために必要な燃料を適切に供給できるよう選択される。
【0014】
保炎板20は、パイロット燃料供給管10のパイロット燃料開口11よりも上流側の外周に鍔状に配置される。保炎板20の外径は、第1空気供給筒40の内周面との間に必要な燃焼用空気(主火炎を形成するための1次空気)を通過させることができる隙間を形成できる範囲で、できるだけ大きくすることが好ましい。これによりパイロット火炎が第1空気供給筒40から供給される一次空気によって吹き消されることを防止できる。
【0015】
保炎板20とパイロット燃料開口11との距離D1は十分に小さいことが好ましい。保炎板20とパイロット燃料開口11との距離D1をできるだけ小さくすることによって、保炎板20の外側から回り込む一次空気によって火炎が吹き消されることを防止できる。なお、保炎板20とパイロット燃料開口11との距離D1は、ゼロとすることもできる。
【0016】
保炎板20は、パイロット燃料供給管10に近接する領域に燃焼用空気を通過させる補助開口21を有する。補助開口21は、パイロット火炎の形成に必要な量の燃焼用空気を通過させるような数及び大きさに形成される。補助開口21は、丸穴であってもよいが、少ない数でパイロット火炎の形成に必要な量の燃焼用空気を供給できるようスリット状に形成されてもよい。
【0017】
具体的には、補助開口21の合計面積の下限としては、燃焼用空気を保炎板20よりも下流側に流出させる開口(保炎板20と第1空気供給筒40との隙間及び後述する2次空気開口41)の合計面積の1%が好ましく、2%がより好ましい。一方、補助開口21の合計面積の上限としては、燃焼用空気を保炎板よりも下流側に流出させる開口の合計面積の10%が好ましく、8%がより好ましい。補助開口21の面積を前記下限以上とすることによって、パイロット火炎を点火及び維持するために必要な酸素を適切に供給することができる。また、補助開口21の面積を前記下限以上とすることによって、主燃焼運転中にパイロット燃料供給管10への燃料を停止しても、補助開口21から流出する空気によってパイロット燃料供給管10を冷却することができるので、パイロット燃料供給管10の過熱による損傷を効果的に防止できる。また、補助開口21の面積を前記上限以下とすることによって、パイロット火炎を点火及び維持を確実にするために適切な空燃比を実現することができる。
【0018】
補助開口21とパイロット燃料供給管10との距離D2は十分に小さいことが好ましい。補助開口21とパイロット燃料供給管10との距離D2をできるだけ小さくすることによって、安定したパイロット火炎の形成が可能になる。なお、補助開口21とパイロット燃料供給管10との距離D2は、ゼロとすることもできる。
【0019】
保炎板20は、さらに外周に第1空気供給筒40との間隔を一定に保つためのスペーサとなる複数の突起部を有してもよい。
【0020】
主燃料供給管30は、パイロット燃料供給管10の外側に、パイロット燃料供給管10と同軸に配置される。主燃料供給管30とパイロット燃料供給管10との間の空間には、主燃焼行うための主燃料が導入される。
【0021】
主燃料供給管30は、先端部を保炎板20との間に所定の距離をあけた状態で閉止する閉止蓋部31と、先端側の外周に形成され、主燃料を流出させる主燃料開口32と、を有する。つまり、主燃料供給管30は、第1空気供給筒40との間の空間を通して、第1空気供給筒40の内部空間に主燃料を供給する。主燃料供給管30の径並びに主燃料開口32の大きさ及び数は、バーナ1の主燃焼に必要な燃料を供給できるよう選択される。
【0022】
バーナ1では、主燃料供給管30が閉止蓋部31を有することによって、主燃料供給管30の先端と保炎板20との間に燃焼用空気が流れる空間が形成されるので、保炎板20の補助開口21をパイロット燃料供給管10に近接して設けることができる。これにより、安定したパイロット火炎の形成に必要な空気をパイロット燃料開口11の近傍に供給して、パイロット燃料開口11から流出する燃料に混合できる。
【0023】
主燃料供給管30の先端部は、部分的に閉止蓋部31よりも下流側に突出し、保炎板20に接続されてもよい。このように、閉止蓋部31と保炎板20との間に燃焼用空気の流路を確保しつつ、主燃料供給管30の先端を保炎板20に接続することによって、パイロット燃料供給管10、保炎板20及び主燃料供給管30の相互の位置関係を容易に定めることができる。
【0024】
第1空気供給筒40は、主燃料供給管30の外側に主燃料供給管30ひいてはパイロット燃料供給管10と同軸に配設され、パイロット燃料供給管10及び主燃料供給管30の外側から、保炎板20との隙間を通して燃焼空間に少なくとも1次空気を供給する。第1空気供給筒40の径は、バーナ1の燃焼に必要な1次空気を供給できるよう選択される。
【0025】
また、第1空気供給筒40は、保炎板20よりも下流側に、後述する第2空気供給筒50との間の空間を通して供給される2次空気を内側の燃焼空間に噴出させる複数の2次空気開口41を有する。バーナ1は、第1空気供給筒40から流出した燃焼用空気及び主燃料の混合ガスの燃焼により形成される主燃焼火炎の形状を2次空気開口41から噴出する2次空気によって良好な燃焼状態が得られるように整えることができる。つまり、2次空気開口41から噴出する2次空気は、主燃焼火炎の外側への広がりを抑制することによって、主燃料の完全燃焼を促進する。主燃料開口32の大きさ及び数は、主燃焼火炎を安定させられるよう選択される。
【0026】
第2空気供給筒50は、第1空気供給筒40の外側に第1空気供給筒40ひいてはパイロット燃料供給管10及び主燃料供給管30と同軸に配設され、第1空気供給筒40との間の空間に燃焼用空気の一部が2次空気として導入される。第1空気供給筒40と第2空気供給筒50との隙間の下流側の端部は、封止板部51によって閉塞される。
【0027】
給気チャンバ60は、第1空気供給筒40及び第2空気供給筒50の上流側に連通し、不図示のブロワから燃焼用空気が供給される供給ダクト61が接続される。給気チャンバ60は、供給ダクト61を通して供給される燃焼用空気を、1次空気と2次空気とに分割し、第1空気供給筒40の内側の空間と第2空気供給筒50の内側の空間とに導入する。
【0028】
以上のように、バーナ1は、パイロット燃料供給管10に近接する領域に燃焼用空気を通過させる補助開口21を有する保炎板20を備えるため、補助開口21からパイロット燃料供給管10の先端側に燃焼用空気を供給することができる。これにより、パイロット燃料開口11から流出するパイロット燃料の燃焼に必要な燃焼用空気を効果的に供給できるため、パイロット火炎の着火性が向上する。また、バーナ1は、燃焼運転中にパイロット燃料の供給を停止しても、補助開口21から供給される燃焼用空気によってパイロット燃料供給管10の先端部を冷却することができるので、パイロット燃料供給管10の寿命を延ばすことができる。
【0029】
また、バーナ1は、パイロット燃料供給管10の外側にパイロット燃料供給管10と同軸に配置された主燃料供給管30の外周に主燃料を流出させる主燃料開口32を形成した構成とされていることにより、第1空気供給筒40の内側を流れる1次空気に均等に主燃料を供給し、適切な燃焼が可能な混合ガスを生成することができる。また、バーナ1は、主燃料供給管30が、その先端を保炎板20との間に所定の距離をあけた状態で閉止する閉止蓋部31を有することによって、主燃料供給管30の先端と保炎板20との間に補助開口21に流入する燃焼用空気の流路を確保することができるので、補助開口21をパイロット燃料供給管10のすぐ近くに形成することによりパイロット火炎の着火性を確実に向上できる。
【0030】
以上、本発明のバーナの好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0031】
例として、本発明に係るバーナにおいて、主燃料は、最終的に第1空気供給筒の内部に供給されればよく、必ずしもパイロット燃料供給管と同軸に配設される主燃料供給管を用いる必要はない。また、主燃料と燃焼用空気との混合を促進するフィン等が設けられてもよい。上述の実施形態では、燃料として気体燃料を用いることを想定しているが、スプレーノズル等を設けて液体燃料を使用してもよい。
【0032】
本発明に係るバーナにおいて、2次空気の供給のための構成も任意の構成である。例えば、第1空気供給筒に1次空気を供給するブロワとは別のブロワによって2次空気を供給するよう構成されてもよい。また、2次空気は、第1空気供給筒と同軸に配設される第2空気供給筒以外の構成要素を用いて供給されてもよく、第1空気供給筒に形成される2次空気開口を通して行うことも必須の構成ではない。
【符号の説明】
【0033】
1 バーナ
10 パイロット燃料供給管
11 パイロット燃料開口
20 保炎板
21 補助開口
30 主燃料供給管
31 閉止蓋部
32 主燃料開口
40 第1空気供給筒
41 2次空気開口
50 第2空気供給筒
51 封止板部
60 給気チャンバ
61 供給ダクト
図1