(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20240903BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240903BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240903BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240903BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G03F9/00 H
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652C
H01L29/78 652H
H01L29/06 301D
H01L29/06 301V
H01L29/78 652F
H01L29/78 658G
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
H01L29/78 658L
(21)【出願番号】P 2021002834
(22)【出願日】2021-01-12
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】肥後 智子
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 洋平
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0223271(US,A1)
【文献】特開2020-109808(JP,A)
【文献】特開2014-138137(JP,A)
【文献】特開2003-234272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G03F 9/00
H01L 21/336
H01L 29/06-29/38
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を備えた炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
アライメントキー形成領域(R1)と前記半導体素子が形成されるデバイス形成領域(R2)とを有し、第1または第2導電型とされたウェハ状の炭化珪素半導体基板(101)を用意することと、
前記炭化珪素半導体基板の上に、前記炭化珪素半導体基板よりも低不純物濃度の炭化珪素からなる第1導電型層(102)を形成することと、
前記第1導電型層の上に、一方向を長手方向として複数本がストライプ状に並べられた第2導電型の炭化珪素からなる電界ブロック層(104)、および、前記一方向を長手方向として前記電界ブロック層と交互に複数本がストライプ状に並べられた部分を有する第1導電型の炭化珪素からなるJFET部(103)を有する飽和電流抑制層(103、104)を形成することと、
エピタキシャル成長により、前記飽和電流抑制層の上に、前記第1導電型層よりも第1導電型不純物濃度が高くされた第1導電型の炭化珪素からなる電流分散層(105)を形成することと、
前記電流分散層に対して第2導電型不純物のイオン注入を行うことで、前記電界ブロック層に達し、前記一方向と交差する方向を長手方向とする第2導電型のつなぎ層(109)を形成することと、
エピタキシャル成長により、前記電流分散層および前記つなぎ層の上に、第2導電型の炭化珪素からなるベース領域(106)を形成することと、
前記ベース領域の上に、前記第1導電型層よりも第1導電型不純物濃度が高くされた第1導電型の炭化珪素からなるソース領域(108)を形成することと、
前記ソース領域の表面から前記ベース領域よりも深いゲートトレンチ(111)を、一方向を長手方向としてストライプ状に複数本形成したのち、前記ゲートトレンチの内壁面にゲート絶縁膜(112)を形成すると共に、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極(113)を形成することでトレンチゲート構造を形成することと、
前記ソース領域に電気的に接続されるソース電極(115)を形成することと、
前記炭化珪素半導体基板の裏面側にドレイン電極(116)を形成することと、を含み、
前記飽和電流抑制層を形成することは、
前記JFET部と前記電界ブロック層のいずれか一方をエピタキシャル層によって構成すると共に、他方を該エピタキシャル層に対して不純物をイオン注入することで形成することであり
前記エピタキシャル層の上にマスク材料を配置したのち、フォト工程にて該マスク材料をパターニングすることで、前記デバイス形成領域に第1開口部(117b)が形成されると共に前記アライメントキー形成領域に前記第1開口部よりも幅の広い第2開口部(117a)が形成された第1マスク(117)を形成することと、
前記第1マスクを用いて前記エピタキシャル層に対して前記不純物のイオン注入を行うことで、前記第1開口部を通じて第1イオン注入層(104)を形成すると共に、前記第2開口部を通じて第2イオン注入層(104a)を形成することと、を含み、
前記第1マスクを形成することでは、前記フォト工程において、マイクロローディング現象に基づき、前記第2開口部の底部に位置する前記エピタキシャル層に凹部(103a)を形成することで、該凹部と前記エピタキシャル層の表面とによる段差に基づく第1アライメントキー(KY、KY1)を形成
し、
前記電流分散層を形成することでは、前記アライメントキー形成領域に位置する前記電流分散層に、前記第1アライメントキーが引き継がれた第2アライメントキー(KY、KY2)を形成し、
前記つなぎ層を形成することでは、前記第2アライメントキーを基準としたマスク合わせに基づくイオン注入を行うことで、前記つなぎ層を形成する、炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ベース領域を形成することおよび前記ソース領域を形成することでは、前記第2アライメントキーが引き継がれた第3アライメントキー(KY、KY3)を形成し、
前記ソース領域を形成することの後に、該ソース領域に対して第2導電型不純物をイオン注入することで第2導電型の連結層(110)を形成することを含み、
前記連結層を形成することでは、前記第3アライメントキーを基準としたマスク合わせに基づくイオン注入を行うことで、前記連結層を形成する、請求項
1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記連結層を形成することでは、
前記ソース領域の上にマスク材料を配置したのち、フォト工程にて該マスク材料をパターニングすることで、前記デバイス形成領域に第3開口部(118b)が形成されると共に、前記アライメントキー形成領域における前記第3アライメントキーと異なる位置に、前記第3開口部よりも幅の広い第4開口部(118a)が形成された第2マスク(118)を形成することと、
前記第2マスクを用いて前記ソース領域に対して不純物のイオン注入を行うことで、前記第3開口部を通じて前記連結層を形成すると共に、前記第4開口部を通じてイオン注入層(110a)を形成することと、を含み、
前記第2マスクを形成することでは、前記フォト工程において、マイクロローディング現象に基づき、前記第4開口部の底部に位置する前記ソース領域に凹部(108a)を形成することで、該凹部と前記ソース領域の表面とによる段差に基づく第4アライメントキー(KY、KY4)を形成し、
前記トレンチゲート構造を形成することでは、前記ソース領域の表面からエッチングによって前記ゲートトレンチを形成する際に、前記第4アライメントキーを基準としたマスク合わせに基づいて形成したエッチングマスクを用いてエッチングを行うことで前記ゲートトレンチを形成する、請求項
2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクの位置合わせに用いられるアライメントキーを備えた炭化珪素(以下、SiCという)半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置を製造する際に用いるアライメントキーを高精度に認識できるようにする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
SiC半導体基板を用いてSiC半導体装置を製造する場合、高品質なエピタキシャル層を成長させることができることから、例えば(0001)面に対して<11-20>方向にオフカットされたオフ基板をSiC半導体基板として用いている。そして、このようなSiC半導体基板に対してアライメントキーを形成した上で、エピタキシャル成長やイオン注入による不純物層の形成などの所定の製造プロセスを行うことで、SiC半導体装置を製造する。製造プロセス中のマスク位置合わせについては、読取装置にてアライメントキーの位置を特定することで行っており、アライメントキーを基準としてマスク材料をパターニングすることで所望形状のマスクを形成している。
【0004】
このとき、アライメントキーとしては、例えば、相対する二辺がオフ方向と平行で、他の相対する二辺がオフ方向と垂直な長方形状のトレンチを用いることができる。長方形状のトレンチをオフ方向に複数個並べて形成し、それをステッパと呼ばれる読取装置で読み取ることでアライメントキーを認識し、製造プロセス中でのマスク位置合わせに用いる。
【0005】
なお、オフ方向とは、「成長面の法線ベクトルを(0001)面に投影したベクトルに平行な方向」のことを言う。また、以下の説明において、オフ方向の下流側とは、そのうちの一方側を定義したものであり、「成長面の法線ベクトルを(0001)面に投影したベクトルの先端が向いている側」を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アライメントキーを形成した後にエピタキシャル成長を行う場合、そのエピタキシャル成長によってアライメントキーが長方形状のトレンチにおけるオフ方向の下流側にファセット面が形成され、このファセット面の影響でアライメントキーの認識を高精度に行えなくなる。これにより、そのエピタキシャル成長以降のフォト工程全てにおいてマスクずれ等が生じて、SiC半導体装置を高精度に製造することができない。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、アライメントキーの認識をより高精度に行うことが可能なSiC半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、半導体素子を備えたSiC半導体装置の製造方法であって、
アライメントキー形成領域(R1)と前記半導体素子が形成されるデバイス形成領域(R2)とを有し、第1または第2導電型とされたウェハ状のSiC半導体基板(101)を用意することと、
前記SiC半導体基板の上に、前記SiC半導体基板よりも低不純物濃度のSiCからなる第1導電型層(102)を形成することと、
前記第1導電型層の上に、一方向を長手方向として複数本がストライプ状に並べられた第2導電型のSiCからなる電界ブロック層(104)、および、前記一方向を長手方向として前記電界ブロック層と交互に複数本がストライプ状に並べられた部分を有する第1導電型のSiCからなるJFET部(103)を有する飽和電流抑制層(103、104)を形成することと、
エピタキシャル成長により、前記飽和電流抑制層の上に、前記第1導電型層よりも第1導電型不純物濃度が高くされた第1導電型のSiCからなる電流分散層(105)を形成することと、
前記電流分散層に対して第2導電型不純物のイオン注入を行うことで、前記電界ブロック層に達し、前記一方向と交差する方向を長手方向とする第2導電型のつなぎ層(109)を形成することと、
エピタキシャル成長により、前記電流分散層および前記つなぎ層の上に、第2導電型のSiCからなるベース領域(106)を形成することと、
前記ベース領域の上に、前記第1導電型層よりも第1導電型不純物濃度が高くされた第1導電型のSiCからなるソース領域(108)を形成することと、
前記ソース領域の表面から前記ベース領域よりも深いゲートトレンチ(111)を、一方向を長手方向としてストライプ状に複数本形成したのち、前記ゲートトレンチの内壁面にゲート絶縁膜(112)を形成すると共に、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極(113)を形成することでトレンチゲート構造を形成することと、
前記ソース領域に電気的に接続されるソース電極(115)を形成することと、
前記SiC半導体基板の裏面側にドレイン電極(116)を形成することと、を含み、
前記飽和電流抑制層を形成することは、
前記JFET部と前記電界ブロック層のいずれか一方をエピタキシャル層によって構成すると共に、他方を該エピタキシャル層に対して不純物をイオン注入することで形成することであり
前記エピタキシャル層の上にマスク材料を配置したのち、フォト工程にて該マスク材料をパターニングすることで、前記デバイス形成領域に第1開口部(117b)が形成されると共に前記アライメントキー形成領域に前記第1開口部よりも幅の広い第2開口部(117a)が形成された第1マスク(117)を形成することと、
前記第1マスクを用いて前記エピタキシャル層に対して前記不純物のイオン注入を行うことで、前記第1開口部を通じて第1イオン注入層(104)を形成すると共に、前記第2開口部を通じて第2イオン注入層(104a)を形成することと、を含み、
前記第1マスクを形成することでは、前記フォト工程において、マイクロローディング現象に基づき、前記第2開口部の底部に位置する前記エピタキシャル層に凹部(103a)を形成することで、該凹部と前記エピタキシャル層の表面とによる段差に基づく第1アライメントキー(KY、KY1)を形成し、
前記電流分散層を形成することでは、前記アライメントキー形成領域に位置する前記電流分散層に、前記第1アライメントキーが引き継がれた第2アライメントキー(KY、KY2)を形成し、
前記つなぎ層を形成することでは、前記第2アライメントキーを基準としたマスク合わせに基づくイオン注入を行うことで、前記つなぎ層を形成する。
【0012】
このように、第1イオン注入層の形成のための第1マスクを形成する際のフォト工程において、マイクロローディング現象に基づき、第2開口部の底部に位置するエピタキシャル層に凹部を形成している。これにより、凹部とエピタキシャル層の表面とによる段差に基づく第1アライメントキーを形成することができ、第1アライメントキーと第1イオン注入層とが位置ずれなく形成できる。このため、第1アライメントキーを基準とすれば、他のイオン注入層やトレンチの位置ずれを最小限にできる。よって、さらにアライメントキーの認識を高精度に行うことが可能になる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態にかかるSiC半導体装置の製造フローを示した図である。
【
図2A】
図1に示す製造フローの前工程でのSiC半導体ウェハの断面図である。
【
図2B】
図2Aに続く
図1に示す製造フロー中の一工程でのSiC半導体ウェハの断面図である。
【
図2C】
図2Bに続く
図1に示す製造フロー中の一工程でのSiC半導体ウェハの断面図である。
【
図4A】アライメントキー形成領域に形成された開口部の近傍の拡大断面図である。
【
図4B】デバイス形成領域に形成された開口部の近傍の拡大断面図である。
【
図5】従来のSiC半導体装置の製造フローを示した図である。
【
図6】第2実施形態で説明するSiC半導体装置の断面図である。
【
図7】
図6に示すSiC半導体装置の斜視断面図である。
【
図8A】
図6に示すSiC半導体装置の製造工程を示す断面斜視図である。
【
図8B】
図8Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面斜視図である。
【
図8C】
図8Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面斜視図である。
【
図8D】
図8Cに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面斜視図である。
【
図8E】
図8Dに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面斜視図である。
【
図8F】
図8Eに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面斜視図である。
【
図8G】
図8Fに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面斜視図である。
【
図9】アライメントキーの上にエピタキシャル成長を行った際のアライメントキーの形状の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態では、SiC半導体装置を製造する際の製造プロセス中の一部として、アライメントキーを使用した位置合わせを行う場合を例に挙げる。以下、
図1に示す製造フローおよび
図2A~
図2Cに示す
図1の製造フローに対応した断面図を参照して、本実施形態にかかる製造プロセスについて説明する。
【0017】
まず、
図1に示す各工程の前工程として、
図2Aに示すように、n型もしくはp型のウェハ状のSiC半導体基板11を用意する。例えば(0001)Si面に対して主表面の成す角度、つまりオフ角が4°で、オフ方向が<11-20>とされた4H型のSiC単結晶からなるSiC半導体基板11を用意する。なお、このSiC半導体基板11のうちアライメントキーを形成する領域をアライメントキー形成領域R1とし、半導体素子等のデバイスを形成する領域をデバイス形成領域R2とする。アライメントキー形成領域R1は、例えばウェハ状のSiC半導体基板11のうちのダイシング領域に配置される。このため、種々の製造プロセスを経てからチップ単位に個片化する際に除去されてしまうが、この領域に形成されるアライメントキーが種々の製造プロセスの際にマスクの位置合わせなどに用いられることで、精度良い位置合わせが可能になる。
【0018】
次に、このSiC半導体基板11の上にエピタキシャル(以下、エピという)成長によってSiCエピ層12を形成する。ここでは、例えばn型のSiCエピ層12を形成している。このとき、ステップフロー成長に基づいてエピタキシャル成長が行われることから、SiCエピ層12は、SiC半導体基板11の結晶性を受け継ぐことになり、オフ角を有したものとなる。
【0019】
続いて、
図2Bに示すように、SiCエピ層12の表面にアライメントキー形成用兼イオン注入用のマスク13を形成する。例えば、まず、
図1に示すマスク材料成膜工程として、マスク13の材料となる酸化膜をCVD(chemical vapor deposition)などで成膜する。次に、
図1に示すフォト工程として、図示しないがフォトレジストの塗布、露光および現像によるパターニングを行ってフォトマスクを形成する。そして、
図1に示すマスクエッチング工程として、フォトマスクで覆った状態で酸化膜をドライエッチングすることでマスク13を所望パターンとする。具体的には、マスク13のうちのアライメントキー形成領域R1におけるアライメントキー形成予定位置に、第2開口部に相当する開口部13aが形成されるようにする。また、マスク13のうちのデバイス形成領域R2におけるイオン注入層の形成予定位置に、第1開口部に相当する開口部13bが形成されるようにする。そして、
図1に示すアッシング工程として、アッシングによってフォトマスクを除去する。
【0020】
このとき、アライメントキー形成予定位置の開口部13aの開口幅がイオン注入層の形成予定位置の開口部13bの開口幅よりも広くなるようにしている。例えば、開口部13aと開口部13bについては、
図3に示す形状としている。なお、
図3は、断面図ではないが、開口部13aや開口部13bとされる部分をハッチングで示してある。
【0021】
図3に示すように、開口部13aを上面から見ると、外形が長方形状とされている。そして、開口部13aの内側に、開口部13aに囲まれるように開口部13aではないキーマスク部13cが設けられている。キーマスク部13cは、複数本の長方形状のラインが等間隔に並べられたストライプ形状とされ、この部分にマスク13が残された状態となっている。開口部13aの外形は、例えば一方向、ここではオフ方向に伸びる二辺の長さが150μm、オフ方向と垂直な方向に伸びる二辺の長さが80μmとされている。また、複数本に並べられたそれぞれのキーマスク部13cは、オフ方向に伸びる二辺の長さが5μm、オフ方向と垂直な方向に伸びる二辺の長さが40μmとされている。
【0022】
一方、開口部13bを上面から見ると、長方形状とされているが、オフ方向に伸びる二辺の長さがデバイスのアクティブ領域の長さ程度、例えば4mm、オフ方向と垂直な方向に伸びる二辺の長さが1μmとされている。この場合、2つの開口部13aおよび開口部13bの中で最も短い辺の伸びる方向、ここでは開口部13bにおけるオフ方向に垂直な辺の伸びる方向が開口部13aおよび開口部13bの幅方向となる。
【0023】
このような寸法とされていることから、開口部13aの方が開口部13bよりも幅広となり、開口部13aが形成される領域は酸化膜が疎になる疎パターン、開口部13bが形成される領域は酸化膜が密になる密パターンとなる。このため、開口部13a、13bを形成する際のパターニング時には、マイクロローディング現象により、幅広な開口部13aの方が幅狭な開口部13bよりもエッチングレートが大きくなる。そして、開口部13bを形成するために除去する酸化膜のエッチングが完了した際には、既に開口部13aを形成するために除去する酸化膜のエッチングが完了しており、更に下地のSiCエピ層12まで掘り進められる。
【0024】
このため、
図4Aに示す開口部13aの近傍の拡大断面図および
図4Bに示す開口部13bの近傍の拡大断面図を見ると判るように、開口部13a内では開口部13b内と比較して、SiCエピ層12が深い位置まで削られた状態となる。実験では、例えば開口部13a内ではSiCエピ層12に形成された凹部12aの深さ、つまりSiCエピ層12の削れ量が60nmとなった。また、開口部14b内ではSiCエピ層12に形成された凹部12bの深さ、つまりSiCエピ層12の削れ量が10nmとなった。このことから、凹部12aの底面と凹部12bの底面との間に50nm程度の段差が生じた状態になっていることが判る。
【0025】
このように、アライメントキー形成領域R1に形成される凹部12aをデバイス形成領域R2に形成される凹部12bよりも深くすることができる。このため、この凹部12aとSiCエピ層12の表面とによる段差に基づいてアライメントキーKYを構成すれば、この後のマスク位置合わせに用いることが可能になる。上記のような形状のキーマスク部13cとする場合、アライメントキーKYを複数本の長方形状のラインが等間隔に並べられたストライプ形状の凸部で構成することもできる。アライメントキーKYについては、段差に基づいて構成されれば良いため、凹部12aのみによって構成しても良いし、凹部12a内に残した凸部によって構成しても良い。
【0026】
さらに、
図1に示すイオン注入工程として、
図2Cに示すように、マスク13で覆った状態で不純物のイオン注入を行うことで、デバイス形成領域R2において、SiCエピ層12に異なる導電型のイオン注入層14を形成する。ここでは、p型不純物としてAlなどを注入することで、p型のイオン注入層14を形成している。また、アライメントキー形成領域R1においても、開口部13aが形成されているため、凹部12aの底面にもイオン注入層15が形成されることになる。このイオン注入層15は、種々の製造プロセスを経てからチップ単位に個片化する際に除去されてしまうため、SiC半導体装置のデバイス特性へ影響を与えることはない。なお、ここで形成されるイオン注入層14が第1イオン注入層、イオン注入層15が第2イオン注入層に相当する。
【0027】
その後、
図1に示す剥離洗浄工程として、マスク13を剥離洗浄する。これにより、アライメントキー形成領域R1に凹部12aによるアライメントキーKYが形成され、かつ、デバイス形成領域R2にアライメントキーKYと位置ずれないイオン注入層14が形成されたSiC半導体ウェハが構成される。
【0028】
このように、SiCエピ層12に対して異なる導電型のイオン注入層14を形成する際に、マイクロローディング現象を用いてアライメントキー形成領域R1にアライメントキーKYが構成されるようにしている。このため、アライメントキーKYの形成工程をイオン注入層14の形成工程と共通化することが可能となる。
【0029】
また、同じ階層、例えばはデバイス形成領域R2のうちのイオン注入層14以外の位置におけるSiCエピ層12に対して他のイオン注入層を形成したり、トレンチを形成したりする際には、アライメントキーKYを基準として位置合わせできる。このとき、同じマスク13を用いてイオン注入層14やアライメントキーKYを形成しており、これらの位置ずれがないため、アライメントキーKYを基準とすれば、他のイオン注入層やトレンチの位置ずれを最小限にできる。つまり、アライメントキーKYとイオン注入層14との形成を別工程で行い、アライメントキーKYを基準としてイオン注入層14を形成する場合には、アライメントキーKYとイオン注入層14との間に位置ずれが生じ得る。このため、イオン注入層14を形成する際に発生する位置ずれ分と、他のイオン注入層やトレンチを形成する際に発生する位置ずれ分との加算値が最大発生し得る位置ずれとなる。これに対して、アライメントキーKYとイオン注入層14を同じマスク13で位置ずれなく形成しているため、他のイオン注入層やトレンチを形成しても、その位置ずれ分しか発生し得ない。このため、発生し得る位置ずれ量の最大量を低減することが可能となる。
【0030】
ここで、このような効果が得られる理由について、従来の製造フローと本実施形態の製造フローを比較して説明する。
【0031】
従来では、アライメントキーの形成工程とイオン注入層の形成工程は別工程として行われる。具体的には、従来では、SiC半導体装置を製造する際には、
図5に示す製造フローのような製造プロセスを実行している。
【0032】
まず、アライメントキーの形成工程を行う。例えば、n型のSiCエピ層の上にアライメントキー形成用マスクの材料となる酸化膜を成膜したのち、フォト工程としてフォトレジストの塗布および露光によるパターニングを行い、フォトマスクを形成する。次に、フォトマスクで覆った状態で酸化膜をエッチングすることで所望パターンのアライメントキー形成用マスクを形成したのち、フォトマスクをアッシングにより除去する。そして、アライメントキー形成用マスクを用いてドライエッチングを行うことで、SiCエピ層に対してアライメントキーとなる凹部を形成する。その後、アライメントキー形成用マスクを剥離洗浄して除去する。
【0033】
続いて、イオン注入用マスクの形成工程を行う。すなわち、アライメントキー形成用マスクを除去したのち、再びイオン注入用マスクの材料となる酸化膜を成膜する。そして、フォト工程としてフォトレジストの塗布および露光によるパターニングを行い、フォトマスクを形成する。このとき、先の工程で形成したアライメントキーを基準としてフォトレジストを露光する際のマスク合わせを行っている。さらに、フォトマスクで覆った状態で酸化膜をエッチングすることで所望パターンのイオン注入用マスクを形成したのち、フォトマスクをアッシングにより除去する。そして、例えばイオン注入用マスクの上からSiCエピ層と異なる導電型の不純物、例えばp型不純物をイオン注入することで、イオン注入層を形成する。その後、イオン注入用マスクを剥離洗浄して除去する。
【0034】
このように、従来の製造フローでは、アライメントキーの形成工程とイオン注入層の形成工程を別工程として行っている。このため、アライメントキーとイオン注入層との間に位置ずれが発生する可能性があるのに加えて、マスクとなる材料、例えば酸化膜の成膜やフォト工程、マスクのパターニングなどの工程を別々に行う必要があり、製造工程が増大する。
【0035】
これに対して、本実施形態では、上記したように
図1に示す製造フローのような製造プロセスとすることで、アライメントキーKYの形成工程をイオン注入層14の形成工程と共通化でき、製造工程の削減を図ることが可能となる。具体的には、マスク材料成膜工程、フォト工程、マスクエッチング工程、アッシング工程、剥離洗浄工程を共通化できる。
【0036】
加えて、アライメントキーKYとイオン注入層14とが位置ずれなく形成できる。このため、アライメントキーKYを基準とすれば、他のイオン注入層やトレンチの位置ずれを最小限にできる。
【0037】
また、このようにイオン注入層14と同時に形成したアライメントキーKYを有するSiC半導体ウェハを用いれば、その後に、他のイオン注入層やトレンチを形成する際の位置ずれを最小限にできる。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態では、半導体素子として、
図6および
図7に示すトレンチゲート構造の反転型の縦型MOSFETが備えられたSiC半導体装置について、第1実施形態で説明した製造プロセスを適用する場合について説明する。
図6および
図7に示す縦型MOSFETは、SiC半導体装置のうちのセル領域に形成されており、そのセル領域を囲むように外周耐圧構造が形成されることでSiC半導体装置が構成されているが、ここでは縦型MOSFETのみ図示してある。なお、以下では、
図6および
図7に示すように、縦型MOSFETの幅方向をX方向、X方向に対して交差する縦型MOSFETの奥行方向をY方向、縦型MOSFETの厚み方向もしくは深さ方向、つまりXY平面に対する法線方向をZ方向として説明する。
【0039】
図6および
図7に示されるように、SiC半導体装置には、SiCからなるn
+型基板101が半導体基板として用いられている。n
+型基板101の主表面上にSiCからなるn
-型層102が形成されている。n
+型基板101は、表面が(0001)Si面とされ、4°のオフ角を有するオフカット基板とされている。
【0040】
n-型層102の上には、SiCからなるJFET部103と電界ブロック層104が形成されており、n-型層102は、n+型基板101から離れた位置においてJFET部103と連結されている。
【0041】
JFET部103と電界ブロック層104は、飽和電流抑制層を構成するものであり、共に、X方向に延設され、Y方向において交互に繰り返し並べられて配置されている。つまり、n+型基板101の主表面に対する法線方向から見て、JFET部103の少なくとも一部と電界ブロック層104は、それぞれ複数の短冊状、つまりストライプ状とされ、それぞれが交互に並べられたレイアウトとされている。
【0042】
なお、本実施形態の場合、JFET部103が電界ブロック層104よりも下方まで形成されたものとされている。このため、JFET部103のうちストライプ状とされている部分は電界ブロック層104の下方において連結した状態になっているが、ストライプ状とされている各部はそれぞれ複数の電界ブロック層104の間に配置された状態となっている。
【0043】
JFET部103は、n型不純物層によって構成されており、ストライプ状とされている部分の各部、つまり各短冊状の部分は、同一幅とされている。電界ブロック層104は、p型不純物層によって構成されている。上記したように、電界ブロック層104は、ストライプ状とされており、ストライプ状とされた電界ブロック層104の各短冊状の部分は、同一幅とされている。本実施形態の場合、電界ブロック層104は、深さ方向においてp型不純物濃度が一定とされている。また、電界ブロック層104は、n-型層102と反対側の表面がJFET部103の表面と同一平面とされている。
【0044】
さらに、JFET部103および電界ブロック層104の上には、SiCからなるn型電流分散層105が形成されている。n型電流分散層105は、後述するようにチャネルを通じて流れる電流がX方向に拡散できるようにする層であり、例えば、n-型層102よりもn型不純物濃度が高くされている。本実施形態では、n型電流分散層105は、Y方向に向けて延設されており、n型不純物濃度がJFET部103と同じかそれよりも高くされている。
【0045】
なお、ここでは、ドリフト層を、便宜的にn-型層102、JFET部103およびn型電流分散層105に分けて説明しているが、これらは共にドリフト層を構成する部分であり、互いに連結されている。
【0046】
n型電流分散層105の上にはSiCからなるp型ベース領域106が形成されている。また、p型ベース領域106の上にはn型ソース領域108が形成されている。n型ソース領域108は、p型ベース領域106のうちn型電流分散層105と対応する部分の上に形成されている。
【0047】
p型ベース領域106は、電界ブロック層104よりもp型不純物濃度が低くされている。n型ソース領域108は、p型ベース領域106と接しており、後述するソース電極115とのコンタクトが取られるためn型不純物が高濃度に設定されている。
【0048】
また、p型ベース領域106から下方に向けて、具体的にはJFET部103と電界ブロック層104の表面からp型ベース領域106の間であって、n型電流分散層105が形成されていない部分に、つなぎ層を構成するp型ディープ層109が形成されている。本実施形態では、p型ディープ層109は、JFET部103のうちのストライプ状の部分や電界ブロック層104の長手方向に対して交差する方向、ここではY方向を長手方向とした短冊状とされ、X方向に複数本並べられることでストライプ状にレイアウトされている。このp型ディープ層109を通じて、p型ベース領域106や電界ブロック層104が電気的に接続されている。p型ディープ層109の形成ピッチは、後述するトレンチゲート構造の形成間隔となるセルピッチと合わせてあり、隣り合うトレンチゲート構造の間にp型ディープ層109が配置されるようにしてある。
【0049】
さらに、p型ベース領域106上のうちp型ディープ層109と対応する位置、換言すればn型ソース領域108と異なる位置であってn型ソース領域108を挟んでトレンチゲート構造と反対側の位置に、p型連結層110が形成されている。p型連結層110は、p型ベース領域106と後述するソース電極115とを連結することで電気的に接続するための層である。本実施形態では、p型連結層110は、n型ソース領域108を挟んでトレンチゲート構造の反対側に配置しているが、トレンチゲート構造の長手方向に沿ってn型ソース領域108とp型連結層110が交互に繰り返し配置される構造であっても良い。
【0050】
さらに、n型ソース領域108およびp型ベース領域106を貫通してn型電流分散層105に達するように、所定幅で、深さがp型ベース領域106とn型ソース領域108の合計膜厚よりも深くされたゲートトレンチ111が形成されている。このゲートトレンチ111の側面と接するように上述したp型ベース領域106やn型ソース領域108が配置されている。ゲートトレンチ111は、
図7のX方向を幅方向、JFET部103や電界ブロック層104の長手方向と交差する方向、ここではY方向を長手方向、Z方向を深さ方向とする短冊状のレイアウトで形成されている。そして、
図6および
図7には示していないが、ゲートトレンチ111は、複数本がX方向に等間隔に配置されたストライプ状とされており、それぞれの間にp型ベース領域106やn型ソース領域108が配置されている。また、各ゲートトレンチ111の中間位置に、p型ディープ層109やp型連結層110が配置されている。
【0051】
このゲートトレンチ111の側面の位置において、p型ベース領域106は、縦型MOSFETの作動時にn型ソース領域108とn型電流分散層105との間を繋ぐチャネル領域を形成する。このチャネル領域を含むゲートトレンチ111の内壁面は、ゲート絶縁膜112で覆われている。ゲート絶縁膜112の表面にはドープドPoly-Siにて構成されたゲート電極113が形成されており、これらゲート絶縁膜112およびゲート電極113によってゲートトレンチ111内が埋め尽くされ、トレンチゲート構造が構成されている。
【0052】
このトレンチゲート構造は、ゲートトレンチ111の側壁がほぼZ方向と平行とされ、開口部の入口側において丸みを帯びて傾斜させられて、開口幅が底部よりも若干広くなった構造となっている。より詳しくは、ゲートトレンチ111の側壁のうちp型ベース領域106およびn型電流分散層105と接する部分についてはほぼZ方向と平行とされ、n型ソース領域108と接する部分については丸みを帯びて傾斜した状態となっている。
【0053】
また、n型ソース領域108の表面やゲート電極113の表面には、層間絶縁膜114を介してソース電極115や図示しないゲート配線層などが形成されている。ソース電極115やゲート配線層は、複数の金属、例えばNi/Al等にて構成されている。そして、複数の金属のうち少なくともn型SiC、具体的にはn型ソース領域108と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうち少なくともp型SiC、具体的にはp型連結層110と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、ソース電極115は、層間絶縁膜114上に形成されることでSiC部分と電気的に絶縁されているが、層間絶縁膜114に形成されたコンタクトホールを通じて、n型ソース領域108およびp型ディープ層109と電気的に接触させられている。
【0054】
一方、n+型基板101の裏面側にはn+型基板101と電気的に接続されたドレイン電極116が形成されている。このような構造により、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造の縦型MOSFETが構成されている。このような縦型MOSFETが複数セル配置されることでセル領域が構成されている。そして、このような縦型MOSFETが形成されたセル領域を囲むように図示しないガードリングなどによる外周耐圧構造が構成されることでSiC半導体装置が構成されている。
【0055】
このように構成される縦型MOSFETを有するSiC半導体装置は、例えば、ソース電圧Vsを0V、ドレイン電圧Vdを1~1.5Vとした状態で、ゲート電極113に対して20Vのゲート電圧Vgを印加することで動作させられる。すなわち、縦型MOSFETは、ゲート電圧Vgが印加されることにより、ゲートトレンチ111に接する部分のp型ベース領域106にチャネル領域を形成する。これにより、n型ソース領域108とn型電流分散層105との間が導通する。したがって、縦型MOSFETは、n+型基板101より、n-型層102とJFET部103およびn型電流分散層105にて構成されるドリフト層を通じ、さらにチャネル領域からn型ソース領域108を通じて、ドレイン-ソース間に電流を流すという動作を行う。
【0056】
また、本実施形態のSiC半導体装置には、JFET部103および電界ブロック層104を備えてある。このため、縦型MOSFETの動作時には、JFET部103および電界ブロック層104が飽和電流抑制層として機能し、飽和電流抑制効果を発揮することで低オン抵抗を図りつつ、低飽和電流を維持できる構造とすることが可能となる。具体的には、JFET部103のうちストライプ状とされた部分と電界ブロック層104とが交互に繰り返し形成された構造とされていることから、次に示すような作動を行う。
【0057】
まず、ドレイン電圧Vdが例えば1~1.5Vのように通常作動時に印加される電圧である場合には、電界ブロック層104側からJFET部103へ伸びる空乏層は、JFET部103のうちストライプ状とされた部分の幅よりも小さい幅しか伸びない。このため、JFET部103内へ空乏層が伸びても電流経路が確保される。そして、JFET部103のn型不純物濃度がn-型層102よりも高くされていて、電流経路を低抵抗に構成できるため、低オン抵抗を図ることが可能となる。
【0058】
また、負荷短絡などによってドレイン電圧Vdが通常作動時の電圧よりも高くなると、電界ブロック層104側からJFET部103へ伸びる空乏層がJFET部103のうちストライプ状とされた部分の幅よりも伸びる。そして、n型電流分散層105よりも先にJFET部103が即座にピンチオフされる。このとき、JFET部103のうちストライプ状とされた部分の幅およびn型不純物濃度に基づいてドレイン電圧Vdと空乏層の幅との関係が決まる。このため、通常作動時のドレイン電圧Vdよりも少し高い電圧となったときにJFET部103がピンチオフされるように、JFET部103のうちストライプ状とされた部分の幅およびn型不純物濃度を設定する。これにより、低いドレイン電圧VdでもJFET部103をピンチオフすることが可能となる。このように、ドレイン電圧Vdが通常作動時の電圧よりも高くなったときにJFET部103が即座にピンチオフされるようにすることで、低飽和電流を維持することができ、更に負荷短絡等によるSiC半導体装置の耐量を向上することが可能となる。
【0059】
このように、JFET部103および電界ブロック層104が飽和電流抑制層として機能し、飽和電流抑制効果を発揮することで、更に低オン抵抗と低飽和電流を両立することができるSiC半導体装置とすることが可能となる。
【0060】
さらに、JFET部103を挟み込むように電界ブロック層104を備えることで、JFET部103のうちストライプ状とされた部分と電界ブロック層104とが交互に繰り返し形成された構造とされている。このため、ドレイン電圧Vdが高電圧になったとしても、下方からn-型層102に伸びてくる空乏層の伸びが電界ブロック層104によって抑えられ、トレンチゲート構造に延伸することを防ぐことができる。したがって、ゲート絶縁膜112に掛かる電界を低下させる電界抑制効果を発揮させられ、ゲート絶縁膜112が破壊されることを抑制できるため、高耐圧で信頼性の高い素子とすることが可能となる。そして、このようにトレンチゲート構造への空乏層の延伸を防げるため、ドリフト層の一部を構成するn-型層102やJFET部103のn型不純物濃度を比較的濃くすることができ、低オン抵抗化を図ることが可能となる。
【0061】
次に、本実施形態にかかるnチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造の縦型MOSFETを備えたSiC半導体装置の製造方法について、
図8A~
図8Hに示す製造工程中の断面図を参照して説明する。
【0062】
〔
図8Aに示す工程〕
まず、SiC半導体基板として、例えば4°のオフ角を有するオフカット基板で構成されたn
+型基板101を用意する。そして、図示しないCVD装置を用いたエピタキシャル成長により、n
+型基板101の主表面上にSiCからなるn
-型層102を形成する。このとき、n
+型基板101の主表面上に予めn
-型層102を成長させてある所謂エピ基板を用いても良い。そして、n
-型層102の上にSiCからなるJFET部103をエピタキシャル成長させる。
【0063】
なお、エピタキシャル成長については、SiCの原料ガスとなるシランやプロパンに加えて、n型ドーパントとなるガス、例えば窒素ガスを導入することで行っている。
【0064】
〔
図8Bに示す工程〕
JFET部103の表面に第1マスクに相当するマスク117を形成し、このマスク117を用いてJFET部103に対してp型不純物をイオン注入することで電界ブロック層104を形成する工程を行う。p型不純物としては、ボロン(B)とアルミニウム(Al)のいずれか一方もしくは両方を用いることができる。
【0065】
このときのマスク117の形成および電界ブロック層104の形成のためのイオン注入に対して、第1実施形態で説明した
図1の製造フローで示した製造プロセスを適用する。具体的には、まずマスク117を形成するためのマスク材料を配置する。次に、フォト工程などを経て、
図8Bに示されるセル領域などをデバイス形成領域R2として、マスク117のうちの電界ブロック層4の形成予定位置に第1開口部に相当する開口部117bを形成する。同時に、デバイス形成領域R2と異なる領域にアライメントキー形成領域R1を設けて、マスク117のうちのアライメントキーKYの形成予定位置に第2開口部に相当する開口部117aを形成する。そして、p型不純物をイオン注入することで、イオン注入層として電界ブロック層104を形成し、その後、マスク117を除去する。この電界ブロック層104の形成に用いるマスク117のパターニングの際に、同時にアライメントキー形成領域R1に凹部103aが形成される。これにより、同じ工程にて、電界ブロック層104を形成しつつ、凹部103aによって構成される第1アライメントキーKY1を形成でき、かつ、電界ブロック層104と第1アライメントキーKY1とを位置ずれなく形成することができる。
【0066】
〔
図8Cに示す工程〕
引き続き、JFET部103および電界ブロック層104の上にn型SiCをエピタキシャル成長させることで、n型電流分散層105を形成する。そして、n型電流分散層105の上に、p型ディープ層109の形成予定領域が開口する図示しないマスクを配置する。その後、マスクの上からp型不純物をイオン注入することでp型ディープ層109を形成する。
【0067】
なお、n型電流分散層105をエピタキシャル成長させると、下地に形成した第1アライメントキーKY1が受け継がれ、アライメントキー形成領域R1に新しく第2アライメントキーKY2が形成されることになる。このため、p型ディープ層109を形成する際のイオン注入については、その新しい第2アライメントキーKY2を基準とした位置合わせによって形成されることになる。ただし、このときには、下地となるJFET部103の上に、SiCエピ層に相当するn型電流分散層105を形成することで第2アライメントキーKY2を構成することになる。このため、オフ方向の下流側において第2アライメントキーKY2にファセット面が形成されることになる。したがって、p型ディープ層109を形成する際には、ファセット面の影響を受けて第2アライメントキーKY2を基準とする位置合わせ時に位置ずれが生じ得る。
【0068】
具体的には、
図9(a)に示すように、n型電流分散層105は、n
+型基板101に対してエピタキシャル成長させた各層の上に更にエピタキシャル成長させることで形成したものであるため、n
+型基板101のオフ角を引き継いだ結晶構造になっている。そして、凹部103aによって構成された第1アライメントキーKY1を覆うようにn型電流分散層105を形成すると、
図9(b)、
図9(c)に示すように第2アライメントキーKY2におけるオフ方向下流側に(0001)ファセット面が形成される。このため、ステッパと呼ばれる読取装置での第2アライメントキーKY2の認識に誤差が発生し得る。
【0069】
しかしながら、同時に形成した第1アライメントキーKY1と電界ブロック層104とが位置ずれしていないため、その上に新たに形成した第2アライメントキーKY2とp型ディープ層109との位置ずれのみとなる。このため、発生し得る位置ずれ量の最大量を低減することが可能となる。
【0070】
〔
図8Dに示す工程〕
図示しないCVD装置を用いて、n型電流分散層105およびp型ディープ層109の上にp型ベース領域106をエピタキシャル成長させる。そして、イオン注入装置を用いて、p型ベース領域106の表層部にn型不純物をイオン注入することでn型ソース領域108を形成する。
【0071】
なお、p型ベース領域106をエピタキシャル成長させると、下地に形成した第2アライメントキーKY2が受け継がれ、再びアライメントキー形成領域R1に新しく第3アライメントキーKY3が形成されることになる。
【0072】
〔
図8Eに示す工程〕
n型ソース領域108の上に、マスク材料を配置する。そして、フォト工程により、マスク材料をパターニングすることで第2マスクに相当するマスク118を形成する。このマスク118をイオン注入用マスクとして用いて、マスク118の上からp型不純物をイオン注入したのち、活性化のための熱処理を行う。これにより、n型ソース領域108をp型不純物のイオン注入によって打ち返してp型連結層110を形成することができる。
【0073】
このときのマスク118の形成およびp型連結層110の形成のためのイオン注入に対しても、第1実施形態で説明した
図1の製造フローで示した製造プロセスを適用する。具体的には、まずマスク118を形成するためのマスク材料を配置する。次に、アライメントキーKY3を基準としてマスク118をパターニングする。すなわち、
図8Eに示されるセル領域などをデバイス形成領域R2として、マスク118のうちのp型連結層110の形成予定位置に第3開口部に相当する開口部118bを形成する。同時に、デバイス形成領域R2と異なる領域にアライメントキー形成領域R1を設けて、マスク118のうちアライメントキーKY3と異なる位置に第4開口部に相当する開口部118aを形成する。そして、p型不純物をイオン注入することで、イオン注入層としてp型連結層110を形成し、その後、マスク118を除去する。このp型連結層110の形成に用いるマスク118のパターニングの際に、同時にアライメントキー形成領域R1に凹部108aが形成される。これにより、同じ工程にて、p型連結層110を形成しつつ、凹部108aとn型ソース領域108との段差に基づく第4アライメントキーKY4を形成でき、かつ、p型連結層110と第4アライメントキーKY4とを位置ずれなく形成することができる。
【0074】
なお、p型連結層110を形成する際には、開口部118aを通じてもイオン注入が行われるため、凹部108aの底部にp型のイオン注入層110aが形成される。また、p型連結層110の形成などに用いるマスク18のパターニングを行うときに用いる第3アライメントキーKY3は、p型ベース領域106のうちのアライメントキー形成領域R1に位置する部分に形成されたものである。p型ベース領域106がエピタキシャル成長によって形成されたものであるため、オフ方向の下流側において第3アライメントキーKY3にファセット面が形成されることになる。このため、p型連結層110を形成する際には、ファセット面の影響を受けて第3アライメントキーKY3を基準とする位置合わせ時に位置ずれが生じ得る。しかしながら、下層において同時に形成した第1アライメントキーKY1と電界ブロック層104とが位置ずれしていないため、その上に新たに形成した第3アライメントキーKY3とp型連結層110との位置ずれのみとなり、発生し得る位置ずれ量の最大量を低減できる。
【0075】
〔
図8Fに示す工程〕
n型ソース領域108などの上に図示しないマスクを形成したのち、マスクのうちのゲートトレンチ111の形成予定領域を開口させる。そして、マスクを用いてRIE(Reactive Ion Etching)等の異方性エッチングを行うことで、ゲートトレンチ111を形成する。
【0076】
このとき、ゲートトレンチ111を形成する際に用いるエッチングマスクのパターニングには、p型連結層110を形成する際に同時に形成した第4アライメントキーKY4を基準として位置合わせできる。つまり、p型連結層110と同じ階層に形成されるゲートトレンチ111については、精度良い位置合わせに基づいてエッチングマスクを形成することが可能となる。このため、p型連結層110に対して位置ずれすることなくゲートトレンチ111を形成できる。
【0077】
〔
図8Gに示す工程〕
その後、マスクを除去してから例えば熱酸化を行うことによって、ゲート絶縁膜112を形成し、ゲート絶縁膜112によってゲートトレンチ111の内壁面上およびn型ソース領域108の表面上を覆う。そして、p型不純物もしくはn型不純物がドープされたPoly-Siをデポジションした後、これをエッチバックし、少なくともゲートトレンチ111内にPoly-Siを残すことでゲート電極113を形成する。これにより、トレンチゲート構造が完成する。
【0078】
この後の工程については図示しないが、以下のような工程を行う。すなわち、ゲート電極113およびゲート絶縁膜112の表面を覆うように、例えば酸化膜などによって構成される層間絶縁膜114を形成する。また、図示しないマスクを用いて層間絶縁膜114にn型ソース領域108およびp型ディープ層109を露出させるコンタクトホールを形成する。そして、層間絶縁膜114の表面上に例えば複数の金属の積層構造により構成される電極材料を形成したのち、電極材料をパターニングすることでソース電極115やゲート配線層を形成する。さらに、n+型基板101の裏面側にドレイン電極116を形成する。このようにして、本実施形態にかかるSiC半導体装置が完成する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態では、縦型MOSFETを備えたSiC半導体装置の製造方法において、アライメントキーの形成工程とイオン注入層の形成工程を共通化させ、アライメントキーとイオン注入層とが位置ずれなく形成されるようにしている。一例を挙げると、第1アライメントキーKY1と電界ブロック層104とが位置ずれなく形成され、第4アライメントキーKY4とp型連結層110とが位置ずれなく形成されるようにしている。
【0080】
このため、イオン注入層と同じ階層に他のイオン注入層やトレンチを形成する際に、アライメントキーKYを基準とした精度良い位置合わせに基づいてマスクを形成することが可能となる。そして、アライメントキーKYと同時に形成したイオン注入層に対して他のイオン注入層やトレンチの位置ずれを最小限にできる。
【0081】
さらに、本実施形態の製造方法によれば、以下のような効果を得ることもできる。
【0082】
(1)本実施形態では、アライメントキーKYの形成工程とイオン注入層の形成工程を共通化させ、アライメントキーKYとイオン注入層とを同時に形成した後に、イオン注入層の上層に更にSiCエピ層を形成し、その上層のSiCエピ層にイオン注入層やトレンチを形成している。そして、上層のSiCエピ層のイオン注入層を形成する際に同時にアライメントキーKYを形成している。具体的には、第1アライメントキーKY1と電界ブロック層104を同時に形成した後に、その上にSiCエピ層としてn型電流分散層105やp型ベース領域106を形成し、p型ベース領域106にイオン注入層としてp型連結層110を形成している。そして、p型連結層110を形成する際に同時に第4アライメントキーKY4を形成している。
【0083】
このとき、下層のイオン注入層14となる電界ブロック層104と第1アライメントキーKY1とが位置ずれなく形成されている。このため、その上層にSiCエピ層となるp型ベース領域106などを形成し、それにp型連結層110を形成したとしても、p型ベース領域106に引き継がれた第3アライメントキーKY3とp型連結層110との位置ずれのみとなる。したがって、電界ブロック層104とp型連結層110との間で発生し得る一ずれ量の最大量を低減できる。
【0084】
(2)さらに、上層のSiCエピ層に対して他のイオン注入層やトレンチを形成することもできる。その場合、上層のSiCエピ層にイオン注入層と同時に形成したアライメントキーを用いて、同じ上層のSiCエピ層に他のイオン注入層やトレンチを形成する際の位置合わせが行える。このため、上層のSiCエピ層に最初に形成したイオン注入層と他のイオン注入層やトレンチとの間に発生し得る位置ずれ量の最大量を低減できる。
【0085】
例えば、上層のSiCエピ層に相当するp型ベース領域106などに対してゲートトレンチ111を形成することができる。この場合、p型連結層110と同時に形成した第4アライメントキーKY4を基準とした位置合わせによってゲートトレンチ111を形成できる。このため、p型連結層110に対して位置ずれすることなくゲートトレンチ111を形成できる。
【0086】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0087】
例えば、上記第1、第2実施形態では、本発明を適用したSiC半導体装置の一例を挙げたに過ぎず、他の素子構造のSiC半導体装置に対しても本発明を適用することができる。
【0088】
例えば、n型ソース領域108をイオン注入に限らず、エピタキシャル成長によって形成しても良い。その場合でも、n型ソース領域108に第3アライメントキーKY3が引き継がれるため、第3アライメントキーKY3を基準としたマスク合わせに基づくイオン注入によってp型連結層110を位置ずれなく精度良く形成できる。また、第4アライメントキーKY4を基準としたマスク合わせによってエッチングマスクのパターニングを行えば、ゲートトレンチ111を位置ずれなく精度良く形成できる。
【0089】
なお、結晶の方位などを示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(-)を付すべきであるが、電子出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書においては、所望の数字の前にバーを付すものとする。
【符号の説明】
【0090】
11 SiC半導体基板
12 SiCエピ層
13 マスク
13a、13b 開口部
14、15 イオン注入層