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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ヒータ、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20240903BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H05B3/10 A
G03G15/20 505
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021018757
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022121832
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】土居 昌弘
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-189807(JP,A)
【文献】特開2001-282026(JP,A)
【文献】特開2017-026785(JP,A)
【文献】特開2014-134819(JP,A)
【文献】特開2015-041100(JP,A)
【文献】特開2013-051069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00 - 3/86
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状を呈し、第1の方向に延びる基板と;
前記基板の一方の面に設けられ、前記第1の方向に延びる第1の配線と;
前記基板の一方の面に設けられ、前記第1の方向に直交する第2の方向において前記第1の配線と離隔し、前記第1の方向に延びる第2の配線と;
前記第1の配線と、前記第2の配線と、の間に設けられ、前記第1の方向に並ぶ複数の発熱体と;
を具備し、
前記第1の配線の、前記第2の配線側の第1の辺は、前記第1の方向に直線状に延び、
前記第2の配線の、前記第1の配線側の第2の辺は、前記第1の方向に直線状に延び、
前記基板の一方の面に垂直な方向から見て、
前記複数の発熱体の、前記第1の配線と接続される側の第1の端部が、前記第1の辺よりも前記第1の配線の内側に位置し、前記第1の端部の角が、全て鈍、あるいは、前記第1の端部の輪郭が凸状の曲線から構成され、
前記複数の発熱体の、前記第2の配線と接続される側の第2の端部が、前記第2の辺よりも前記第2の配線の内側に位置し、前記第2の端部の角が、全て鈍、あるいは、前記第2の端部の輪郭が凸状の曲線から構成さているヒータ。
【請求項2】
複数の発熱体は、酸化ルテニウムを含み、前記複数の発熱体に含まれる前記酸化ルテニウムの割合は、8wt%以上20wt%以下である請求項1記載のヒータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヒータを具備した画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヒータ、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの画像形成装置には、トナーを定着させるためのヒータが設けられている。一般的に、この様なヒータには、長尺状の基板と、基板の一方の面に設けられた発熱体と、発熱体と電気的に接続された配線と、が設けられている。
【0003】
また、基板の長辺に沿って延びる一対の配線と、一対の配線の間に設けられ、一対の配線に沿って並ぶ複数の発熱体と、を有するヒータが提案されている。複数の発熱体の一方の端部は、一方の配線と電気的に接続されている。複数の発熱体の他方の端部は、他方の配線と電気的に接続されている。この様な発熱体が設けられていれば、ヒータ(基板)に温度分布が生じるのを抑制することができる。
【0004】
ところが、単に、一対の配線に沿って並ぶ複数の発熱体を設けると、例えば、外部からのサージ電圧(例えば、雷サージ)に対して絶縁耐力が低くなるという問題がある。
【0005】
そこで、一対の配線に沿って並ぶ複数の発熱体が設けられる場合であっても、絶縁耐力を向上させることができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-134819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、一対の配線に沿って並ぶ複数の発熱体が設けられる場合であっても、絶縁耐力を向上させることができるヒータ、および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るヒータは、板状を呈し、第1の方向に延びる基板と;前記基板の一方の面に設けられ、前記第1の方向に延びる第1の配線と;前記基板の一方の面に設けられ、前記第1の方向に直交する第2の方向において前記第1の配線と離隔し、前記第1の方向に延びる第2の配線と;前記第1の配線と、前記第2の配線と、の間に設けられ、前記第1の方向に並ぶ複数の発熱体と;を具備している。前記第1の配線の、前記第2の配線側の第1の辺は、前記第1の方向に直線状に延び、前記第2の配線の、前記第1の配線側の第2の辺は、前記第1の方向に直線状に延びている。前記基板の一方の面に垂直な方向から見て、前記複数の発熱体の、前記第1の配線と接続される側の第1の端部が、前記第1の辺よりも前記第1の配線の内側に位置し、前記第1の端部の角が、全て鈍、あるいは、前記第1の端部の輪郭が凸状の曲線から構成されている。前記複数の発熱体の、前記第2の配線と接続される側の第2の端部が、前記第2の辺よりも前記第2の配線の内側に位置し、前記第2の端部の角が、全て鈍、あるいは、前記第2の端部の輪郭が凸状の曲線から構成さている。

【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、一対の配線に沿って並ぶ複数の発熱体が設けられる場合であっても、絶縁耐力を向上させることができるヒータ、および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】発熱部が設けられた側から本実施の形態に係るヒータを見た模式平面図である。
図2図1におけるヒータのA-A線方向の模式断面図である。
図3】(a)は、比較例に係る発熱体の平面形状を例示するための模式平面図である。(b)、(c)は、発熱体の模式拡大平面図である。
図4】(a)は、本実施の形態に係る発熱体の平面形状を例示するための模式平面図である。(b)、(c)は、発熱体の模式拡大平面図である。
図5】(a)は、他の実施形態に係る発熱体の平面形状を例示するための模式平面図である。(b)、(c)は、発熱体の模式拡大平面図である。
図6】発熱体に含まれる酸化ルテニウムの割合と、絶縁耐力および配線の発熱量と、の関係を例示するための表である。
図7】本実施の形態に係る画像形成装置を例示するための模式図である。
図8】定着部を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、各図面中の矢印X、Y、Zは互いに直交する三方向を表している。例えば、基板の長手方向をX方向(第1の方向の一例に相当する)、基板の短手方向(幅方向)をY方向(第2の方向の一例に相当する)、基板の面に垂直な方向(厚み方向)をZ方向としている。
【0012】
まず、本実施の形態に係るヒータ1について説明する。
(ヒータ)
図1は、発熱部20が設けられた側から本実施の形態に係るヒータ1を見た模式平面図である。
図2は、図1におけるヒータ1のA-A線方向の模式断面図である。
図1および図2に示すように、ヒータ1は、例えば、基板10、発熱部20、配線部31、配線部32、および保護膜40を有する。
【0013】
基板10は、板状を呈し、一方の方向(例えば、X方向)に延びる形態を有する。基板10の平面形状は、例えば、長尺状の長方形とすることができる。基板10の厚みは、例えば、0.5mm~1.0mm程度とすることができる。基板10の平面寸法は、加熱対象物(例えば、紙)のサイズなどに応じて適宜変更することができる。
【0014】
基板10は、耐熱性および絶縁性を有する材料から形成されている。基板10は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミックス、結晶化ガラス(ガラスセラミックス)、金属板の表面を絶縁材料で被覆したものなどから形成することができる。
【0015】
発熱部20は、印加された電力を熱(ジュール熱)に変換する。発熱部20は、基板10の一方の面に設けられている。
発熱部20は、例えば、複数の発熱体21、および複数の発熱体22を有する。複数の発熱体21は、例えば、配線31a(第1の配線の一例に相当する)と、配線32a(第2の配線の一例に相当する)と、の間に設けられX方向に並んでいる。複数の発熱体22は、例えば、配線31b(第1の配線の一例に相当する)と、配線32aと、の間に設けられX方向に並んでいる。複数の発熱体21の列と、複数の発熱体22の列は、Y方向に並んでいる。
【0016】
なお、一例として、一列に並べられた複数の発熱体21、および、一列に並べられた複数の発熱体22を例示したが、複数の発熱体21、および複数の発熱体22のいずれかが設けられるようにしてもよい。また、X方向に並べて設けられた複数の発熱体が、Y方向に3列以上設けられていてもよい。発熱体の数、平面寸法、厚み、および配置などは、加熱対象物のサイズなどに応じて適宜変更することができる。また、平面寸法、および厚みが異なる発熱体を設けることもできるし、平面寸法、および厚みの少なくともいずれかが同じ発熱体を設けることもできる。
【0017】
複数の発熱体21、および複数の発熱体22は、膜状を呈している。複数の発熱体21、および複数の発熱体22の厚みは、例えば、15μm~20μmとすることができる。複数の発熱体21、および複数の発熱体22の幅(発熱体が延びる方向に直交する方向の寸法)は、例えば、0.5mm~1.0mmとすることができる。
【0018】
複数の発熱体21、および複数の発熱体22は、少なくとも酸化ルテニウム(RuO)を含む。例えば、複数の発熱体21、および複数の発熱体22は、酸化ルテニウムと、酸化銅を含んでいる。
なお、酸化ルテニウムの割合に関する詳細は後述する。
【0019】
複数の発熱体21、および複数の発熱体22は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を基板10の面に塗布し、焼成法などを用いてペースト状の材料を硬化させることで形成することができる。
【0020】
配線部31、および配線部32は、基板10の、発熱部20が設けられる面に設けられている。
【0021】
配線部31は、例えば、配線31a、配線31b、および端子31cを有する。配線31a、配線31b、および端子31cは、一体に形成することができる。
Y方向において、配線31aは、基板10の一方の周縁の近傍に設けられている。配線31aは、基板10の一方の周縁に沿ってX方向に延びている。
Y方向において、配線31bは、基板10の他方の周縁の近傍に設けられている。配線31bは、基板10の他方の周縁に沿ってX方向に延びている。
端子31cは、基板10の、X方向における両側の端部の近傍に設けられている。配線31a、および配線31bの一方の端部は、一方の端子31cに電気的に接続されている。配線31a、および配線31bの他方の端部は、他方の端子31cに電気的に接続されている。なお、2つの端子31cが設けられる場合を例示したが、1つの端子31cが基板10の、X方向における一方の端部の近傍に設けられるようにしてもよい。ただし、X方向における基板10の長さ(配線31aおよび配線31bの長さ)が長くなる場合には、基板10の、X方向における両側の端部の近傍に端子31cを設けることが好ましい。
【0022】
Y方向において、配線部32は、基板10の中央領域に設けられている。配線部32は、例えば、配線32a、および端子32bを有する。配線32a、および端子32bは、一体に形成することができる。
Y方向において、配線32aは、配線部31の配線31aと配線31bの間に設けられている。すなわち、配線32aは、X方向に直交するY方向において配線31a、31bと離隔している。配線32aは、基板10の周縁に沿ってX方向に延びている。
【0023】
端子32bは、基板10の、X方向における両側の端部の近傍に設けられている。X方向において、端子32bは、端子31cよりも基板10の中心側に設けられている。配線32aの一方の端部は、一方の端子32bに電気的に接続されている。配線32aの他方の端部は、他方の端子32bに電気的に接続されている。なお、2つの端子32bが設けられる場合を例示したが、1つの端子32bが基板10の、X方向における一方の端部の近傍に設けられるようにしてもよい。ただし、X方向における基板10の長さ(配線32aの長さ)が長くなる場合には、基板10の、X方向における両側の端部の近傍に端子32bを設けることが好ましい。
【0024】
複数の発熱体21の一方の端部は、配線部31の配線31aに電気的に接続されている。複数の発熱体21の他方の端部は、配線部32の配線32aに電気的に接続されている。すなわち、複数の発熱体21は並列接続されている。
複数の発熱体22の一方の端部は、配線部31の配線31bに電気的に接続されている。複数の発熱体22の他方の端部は、配線部32の配線32aに電気的に接続されている。すなわち、複数の発熱体22は並列接続されている。
【0025】
配線部31、および配線部32は、例えば、銀や銅などを含む材料を用いて形成することができる。この場合、配線部31、および配線部32は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を、基板10の、発熱部20が設けられる面に塗布し、焼成法などを用いてペースト状の材料を硬化させることで形成することができる。
【0026】
保護膜40は、発熱体21、発熱体22、配線部31、および配線部32を覆っている。この場合、電源などとの電気的な接続のために、配線部31の端子31c、および配線部32の端子32bを、保護膜40から露出させることができる。
【0027】
保護膜40は、例えば、発熱体21、発熱体22、配線部31、および配線部32を絶縁する機能、発熱体21と発熱体22において発生した熱を外部に伝える機能、および、外力や腐食性ガスなどから発熱体21、発熱体22、配線部31、および配線部32を保護する機能を有する。
【0028】
保護膜40は、耐熱性および絶縁性を有し、化学的安定性の高い材料から形成することが好ましい。保護膜40は、例えば、セラミックスやガラスなどを用いて形成することができる。この場合、酸化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料を含むフィラーが添加されたガラスを用いれば、保護膜40の形成を容易とすることができる。フィラーが添加されたガラスの熱伝導率は、例えば、2[W/(m・K)]以上とすることができる。保護膜40は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を、基板10、発熱部20、配線部31、および配線部32の上に塗布し、焼成法などを用いてペースト状の材料を硬化させることで形成することができる。
【0029】
また、基板10の、発熱部20が設けられる側とは反対側の面には、温度センサ、および温度センサに電気的に接続される配線を設けることもできる。温度センサは、例えば、膜状のサーミスタとすることができる。膜状のサーミスタは、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を、基板10の面に塗布し、焼成法などを用いてペースト状の材料を硬化させることで形成することができる。例えば、チタン酸バリウムを含む材料、酸化物を含む材料などを用いて、膜状のサーミスタを形成することができる。酸化物は、例えば、ニッケル、マンガン、コバルト、鉄、銅などの酸化物とすることができる。
【0030】
温度センサに電気的に接続される配線は、例えば、前述した配線部31、32と同様に、スクリーン印刷法、および焼成法などを用いて形成することができる。また、温度センサおよび配線を覆う保護膜を設けることもできる。保護膜は、例えば、前述した保護膜40と同様とすることができる。
【0031】
次に、発熱体21および発熱体22の平面形状について説明する。
まず、比較例に係る発熱体221、222の平面形状について説明する。
図3(a)は、比較例に係る発熱体221、222の平面形状を例示するための模式平面図である。
図3(b)は、発熱体221の模式拡大平面図である。
図3(c)は、発熱体222の模式拡大平面図である。
【0032】
図3(a)~(c)に示すように、発熱体221、222の平面形状は、平行四辺形となっている。
図3(a)に示すように、発熱体221は、配線31aおよび配線32aに電気的に接続されている。発熱体221は、配線31aおよび配線32aが延びる方向(X方向)に対して傾斜している。
図3(b)に示すように、発熱体221の、配線31aと接続される側の一方の角は鈍角θ1となり、他方の角は鋭角θ2となっている。発熱体221の、配線32aと接続される側の一方の角は鈍角θ3となり、他方の角は鋭角θ4となっている。
【0033】
図3(a)に示すように、発熱体222は、配線31bおよび配線32aに電気的に接続されている。発熱体222は、配線31bおよび配線32aが延びる方向(X方向)に対して傾斜している。
図3(c)に示すように、発熱体222の、配線31bと接続される側の一方の角は鈍角θ5となり、他方の角は鋭角θ6となっている。発熱体222の、配線32aと接続される側の一方の角は鈍角θ7となり、他方の角は鋭角θ8となっている。
【0034】
ここで、発熱体の角が鋭角となっていると、鋭角となっている角の近傍において電界集中が生じ易くなる。この場合、鋭角となっている角の角度が小さくなるほど、電界の強度が大きくなる。電界の強度が大きくなると、発熱体と配線との接続部分の近傍において絶縁破壊が生じ、大きな電流が流れる場合がある。例えば、突入電流やサージ電流がヒータに流れた場合には、絶縁破壊がさらに生じ易くなる。絶縁破壊が生じて大きな電流が流れると、発熱体および配線の少なくともいずれかが損傷するおそれがある。
【0035】
図4(a)は、本実施の形態に係る発熱体21、22の平面形状を例示するための模式平面図である。
図4(b)は、発熱体21の模式拡大平面図である。
図4(c)は、発熱体22の模式拡大平面図である。
【0036】
図4(a)に示すように、発熱体21は、配線31aおよび配線32aに電気的に接続されている。発熱体21は、配線31aおよび配線32aが延びる方向(X方向)に対して傾斜している。
図4(b)に示すように、発熱体21の、配線31aと接続される側の角は、全て鈍角θa~θcとなっている。発熱体21の、配線32aと接続される側の角は、全て鈍角θd~θfとなっている。
【0037】
図4(a)に示すように、発熱体22は、配線31bおよび配線32aに電気的に接続されている。発熱体22は、配線31bおよび配線32aが延びる方向(X方向)に対して傾斜している。
図4(c)に示すように、発熱体22の、配線31bと接続される側の角は、全て鈍角θg~θiとなっている。発熱体22の、配線32aと接続される側の角は、全て鈍角θj~θlとなっている。
【0038】
図4(a)に示すように、X方向に対して傾斜する複数の傾斜部21、22が、X方向に並べて設けられていれば、ヒータ1(基板10)に温度分布が生じるのを抑制することができる。
【0039】
本実施の形態に係る発熱体21、22においては、発熱体21、22の角が全て鈍角となっているので、発熱体21と配線31a、32aとの接続部分の近傍、および発熱体22と配線31b、32aとの接続部分の近傍において電界集中が発生するのを抑制することができる。また、発生する電界の強度を小さくすることができる。そのため、例えば、突入電流やサージ電流がヒータ1に流れた場合であっても、発熱体21、22の角の近傍において絶縁破壊が生じるのを抑制することができる。その結果、発熱体21、22、および配線31a、31b、32aが損傷するのを抑制することができる。
【0040】
なお、発熱体21、22の平面形状は、図4(a)~(c)に例示をしたものに限定されるわけではなく、配線と接続される側の角が、全て鈍角または直角となるような形状であればよい。例えば、発熱体21、22の平面形状は、配線と接続される側の角が全て直角である長方形や正方形であってもよい。ただし、角の角度が大きくなるほど発生する電界の強度を小さくすることができるので、発熱体21、22の平面形状は、配線と接続される側の角が全て鈍角となる形状とすることが好ましい。
【0041】
図5(a)は、他の実施形態に係る発熱体21a、22aの平面形状を例示するための模式平面図である。
図5(b)は、発熱体21aの模式拡大平面図である。
図5(c)は、発熱体22aの模式拡大平面図である。
【0042】
図5(a)に示すように、発熱体21aは、配線31aおよび配線32aに電気的に接続されている。発熱体21aは、配線31aおよび配線32aが延びる方向(X方向)に対して傾斜している。
図5(b)に示すように、発熱体21aの、配線31aと接続される側の端部の輪郭は、曲線から構成されている。発熱体21aの、配線32aと接続される側の端部の輪郭は、曲線から構成されている。この場合、発熱体21aの端部の輪郭は、発熱体21aの外部に向かって突出する凸状の曲線から構成することが好ましい。
【0043】
図5(a)に示すように、発熱体22aは、配線31bおよび配線32aに電気的に接続されている。発熱体22aは、配線31bおよび配線32aが延びる方向(X方向)に対して傾斜している。
図5(c)に示すように、発熱体22aの、配線31bと接続される側の端部の輪郭は、曲線から構成されている。発熱体22aの、配線32aと接続される側の端部の輪郭は、曲線から構成されている。この場合、発熱体22aの端部の輪郭は、発熱体22aの外部に向かって突出する凸状の曲線から構成することが好ましい。
【0044】
図5(a)に示すように、X方向に対して傾斜する複数の傾斜部21a、22aが、X方向に並べて設けられていれば、ヒータ1(基板10)に温度分布が生じるのを抑制することができる。
【0045】
本実施の形態に係る発熱体21a、22aにおいては、発熱体21a、22aの端部の輪郭が曲線から構成されているので、発熱体21aと配線31a、32aとの接続部分の近傍、および発熱体22aと配線31b、32aとの接続部分の近傍において電界集中が発生するのを抑制することができる。また、発生する電界の強度を小さくすることができる。そのため、例えば、突入電流やサージ電流がヒータ1に流れた場合であっても、発熱体21a、22aの端部の近傍において絶縁破壊が生じるのを抑制することができる。その結果、発熱体21a、22a、および配線31a、31b、32aが損傷するのを抑制することができる。
【0046】
なお、発熱体21a、22aの平面形状は、図5(a)~(c)に例示をしたものに限定されるわけではなく、配線と接続される側の端部の輪郭が曲線から構成されていればよい。例えば、発熱体21a、22aの平面形状は、楕円などの曲線から構成される形状であってもよい。
【0047】
また、発熱体の一方の端部の角が、全て鈍角または直角となっており、発熱体の他方の端部の輪郭が曲線から構成されていてもよい。
【0048】
次に、発熱体に含まれる酸化ルテニウムの割合についてさらに説明する。
前述したように、発熱体は、少なくとも酸化ルテニウムを含んでいる。本発明者の得た知見によれば、発熱体に含まれる酸化ルテニウムの割合を変えることで、発熱体の抵抗値を調整すれば、絶縁耐力を向上させることができる。例えば、酸化ルテニウムの割合を多くすれば、発熱体の抵抗値を小さくすることができるので、サージ電圧に対する絶縁耐力を向上させることができる。ただし、酸化ルテニウムの割合を多くし過ぎると、発熱体の抵抗値が小さくなり過ぎて、発熱体の抵抗値と配線の抵抗値との差が小さくなる。発熱体の抵抗値と配線の抵抗値との差が小さくなると、配線における発熱量が増加して、ヒータ(基板)に温度分布が生じ易くなるなどの問題が生じるおそれがある。
【0049】
図6は、発熱体に含まれる酸化ルテニウムの割合と、絶縁耐力および配線の発熱量と、の関係を例示するための表である。
なお、発熱体は、酸化ルテニウムと、酸化銅とを含むものとした。
絶縁耐力評価においては、発熱体の抵抗値により印加される電力が変化すること、並列接続する発熱体の本数により電力が分散されること、から全体の印加電圧での記載は適切でなく、発熱体1本あたりの印加電力に換算して評価した。発熱体1本あたりの印加電力は以下のように記述できる。オームの法則、電圧=電流×抵抗値、電力=電圧×電流から、電力=電圧×電圧/抵抗値と記述でき、電力を並列接続される発熱体の本数で割って、発熱体1本あたり印加電力=電圧×電圧/抵抗値/発熱体本数となる。発熱体1本あたりの印加電力を800W/本として評価を行った。
発熱体の、発熱体が延びる方向の長さは、5.0mmとした。発熱体の、発熱体が延びる方向と直交する方向の長さ(幅)は、0.5mmとした。発熱体の厚みは、17μmとした。
発熱体の平面形状は、図4に例示をしたものとした。
【0050】
図6から分かるように、発熱体に含まれる酸化ルテニウムの割合を、8wt%以上20wt%以下とすれば、絶縁耐力の向上を図ることができ、且つ、配線における発熱を抑制することができる。またさらに、発熱体に含まれる酸化ルテニウムの割合を、13wt%以上20wt%以下とすれば、絶縁耐力のさらなる向上を図ることができる。
【0051】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置100について説明する。
(画像形成装置)
以下においては、一例として、画像形成装置100が複写機である場合を説明する。ただし、画像形成装置100は複写機に限定されるわけではなく、トナーを定着させるためのヒータが設けられているものであればよい。例えば、画像形成装置100は、プリンタなどとすることもできる。
【0052】
図7は、本実施の形態に係る画像形成装置100を例示するための模式図である。
図8は、定着部200を例示するための模式図である。
図7に示すように、画像形成装置100には、フレーム110、照明部120、結像素子130、感光ドラム140、帯電部150、放電部151、現像部160、クリーナ170、収納部180、搬送部190、定着部200、およびコントローラ210を設けることができる。
【0053】
フレーム110は、箱状を呈し、その内部に、照明部120、結像素子130、感光ドラム140、帯電部150、現像部160、クリーナ170、収納部180の一部、搬送部190、定着部200、およびコントローラ210を収納可能となっている。
フレーム110の上面には、ガラスなどの透光性材料を用いた窓111を設けることができる。窓111の上には、複写される原稿500を載置することができる。また、原稿500の位置を移動させる移動部を設けることができる。
【0054】
照明部120は、窓111の近傍に設けることができる。照明部120は、ランプなどの光源121、および反射鏡122を備えることができる。
結像素子130は、窓111の近傍に設けることができる。
感光ドラム140は、照明部120および結像素子130の下方に設けることができる。感光ドラム140は、回転可能に設けることができる。感光ドラム140の表面には、例えば、酸化亜鉛感光層または有機半導体感光層を設けることができる。
帯電部150、放電部151、現像部160、およびクリーナ170は、感光ドラム140の周辺に設けることができる。
【0055】
収納部180は、カセット181、およびトレイ182を有する。カセット181は、フレーム110の一方の側部に着脱可能に取り付けることができる。トレイ182は、フレーム110の、カセット181が取り付けられる側とは反対側の側部に設けることができる。カセット181には、複写が行われる前の紙510(例えば、白紙)を収納する。トレイ182には、複写像511aが定着した紙511を収納する。
【0056】
搬送部190は、感光ドラム140の下方に設けることができる。搬送部190は、カセット181とトレイ182との間で紙510を搬送する。搬送部190は、搬送される紙510を支持するガイド191、および紙510を搬送する搬送ローラ192~194を備える。また、搬送部190には、搬送ローラ192~194を回転させるモータを設けることができる。
【0057】
定着部200は、感光ドラム140の下流側(トレイ182側)に設けることができる。
図8に示すように、定着部200は、例えば、ヒータ1、ステー201、フィルムベルト202、および加圧ローラ203を有する。
ステー201の、紙510の搬送ライン側にはヒータ1を取り付けることができる。ヒータ1は、ステー201に埋め込むことができる。ヒータ1の、保護膜40が設けられた側がステー201から露出するようにすることができる。
【0058】
フィルムベルト202は、ヒータ1が設けられたステー201を覆っている。フィルムベルト202は、例えば、ポリイミドなどの耐熱性を有する樹脂を含むことができる。
【0059】
加圧ローラ203は、ステー201と対向するように設けることができる。加圧ローラ203は、芯金203a、駆動軸203b、および弾性部203cを有する。駆動軸203bは、芯金203aの端部から突出し、モータなどの駆動装置に接続されている。弾性部203cは、芯金203aの外面に設けることができる。弾性部203cは、耐熱性を有する弾性材料から形成される。弾性部203cは、例えば、シリコーン樹脂などを含む。
【0060】
コントローラ210は、フレーム110の内部に設けられている。コントローラ210は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部、および制御プログラムが格納された記憶部を有する。演算部は、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、画像形成装置100に設けられた各要素の動作を制御する。また、コントローラ210は、使用者が複写条件などを入力する操作部、動作状態や異常表示などを表示する表示部などを備えることもできる。
なお、画像形成装置100に設けられた各要素の動作の制御には、既知の技術を適用することができるので詳細な説明は省略する。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ヒータ、10 基板、20 発熱部、21 発熱体、21a 発熱体、22 発熱体、22a 発熱体、31 配線部、31a 配線、31b 配線、32 配線部、32a 配線、100 画像形成装置、200 定着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8