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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】燃料電池車両の空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/08 20060101AFI20240903BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240903BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240903BHJP
   B60K 8/00 20060101ALI20240903BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240903BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20240903BHJP
   B60L 58/30 20190101ALI20240903BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B60H1/08 621Z
B60H1/22 671
B60K1/04 Z
B60K8/00
B60L1/00 L
B60L50/70
B60L58/30
G01C21/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021019989
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122631
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島内 隆行
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-187940(JP,A)
【文献】特開2002-343396(JP,A)
【文献】特開2015-064938(JP,A)
【文献】特開2009-083542(JP,A)
【文献】特開2009-046020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0122000(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112061111(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/08
B60H 1/22
B60K 1/04
B60K 8/00
B60L 1/00
B60L 50/70
B60L 58/30
G01C 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックの廃熱を暖房に利用する燃料電池車両の空調装置であって、
前記燃料電池スタックからの熱媒体を循環し、空気との熱交換により暖房を行うヒータコアと、
前記燃料電池車両が走行する際に発生する走行抵抗に影響する道路状態と、環境状態と、に基づき、道路を走行する際の走行抵抗を算出し、算出された前記走行抵抗に基づき、前記ヒータコアでの熱交換を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記算出された前記走行抵抗が所定以上の場合には、前記燃料電池スタックの廃熱を利用する暖房についての運転を制限するとともに
前記道路状態は、走行する前記道路についての道路勾配と当該道路の標準的な路面の摩擦係数を含む、
燃料電池車両の空調装置。
【請求項2】
燃料電池スタックの廃熱を暖房に利用する燃料電池車両の空調装置であって、
前記燃料電池スタックからの熱媒体を循環し、空気との熱交換により暖房を行うヒータコアと、
前記燃料電池車両が走行する際に発生する走行抵抗に影響する道路状態と、環境状態と、に基づき、道路を走行する際の走行抵抗を算出し、算出された前記走行抵抗に基づき、前記ヒータコアでの熱交換を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記算出された前記走行抵抗が所定以上の場合には、前記燃料電池スタックの廃熱を利用する暖房についての運転を制限するとともに、
前記環境状態は、走行時の気温と、降雨状態を含む、
燃料電池車両の空調装置。
【請求項3】
燃料電池スタックの廃熱を暖房に利用する燃料電池車両の空調装置であって、
前記燃料電池スタックからの熱媒体を循環し、空気との熱交換により暖房を行うヒータコアと、
前記燃料電池車両が走行する際に発生する走行抵抗に影響する道路状態と、環境状態と、に基づき、道路を走行する際の走行抵抗を算出し、算出された前記走行抵抗に基づき、前記ヒータコアでの熱交換を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記算出された前記走行抵抗が所定以上の場合には、前記燃料電池スタックの廃熱を利用する暖房についての運転を制限するとともに、前記道路状態および前記環境状態が標準的な場合における標準的走行抵抗と、前記算出された前記走行抵抗との差が所定値以上の場合に、前記燃料電池スタックの廃熱を利用する暖房についての運転を制限する、
燃料電池車両の空調装置。
【請求項4】
燃料電池スタックの廃熱を暖房に利用する燃料電池車両の空調装置であって、
前記燃料電池スタックからの熱媒体を循環し、空気との熱交換により暖房を行うヒータコアと、
前記燃料電池車両が走行する際に発生する走行抵抗に影響する道路状態と、環境状態と、に基づき、道路を走行する際の走行抵抗を算出し、算出された前記走行抵抗に基づき、前記ヒータコアでの熱交換を制御する制御部と、
設定された経路についての経路案内を行うナビゲーション装置と、
を含み、
前記制御部は、前記算出された前記走行抵抗が所定以上の場合には、前記燃料電池スタックの廃熱を利用する暖房についての運転を制限するとともに、設定された経路における走行抵抗を算出し、前記制御部は設定された経路における前記走行抵抗に基づいて前記燃料電池スタックの廃熱を利用する暖房についての運転を制限する、
燃料電池車両の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックの廃熱を暖房に利用する燃料電池車両の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池による発電電力を利用して走行する燃料電池車両が知られている。ここで、燃料電池では、その発電の際に発熱があり、燃料電池で発生した廃熱を暖房に利用することも提案されている。特に、燃料電池では、その発電効率を制御することで発熱量を制御することができ、従って暖房要求に応じた熱を出力することができる。
【0003】
特許文献1では、冷却水を循環して燃料電池を冷却するが、燃料電池から排出された高温の冷却水を暖房に用いるとともに、冷却水の循環の方式を複数用意し、冷却水の温度に従って暖房の最適化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-209030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来は暖房要求に応じて、走行状態を考慮せず、燃料電池における余分の発熱量(暖房用発熱量)を決定している。しかし、走行状態によって、燃料電池の廃熱量も変化するため、走行状態によっては暖房用の余分な発熱は必要ない場合もある。特に、燃料電池における暖房用の発熱は、エネルギー効率が低く、これを行うことで車両の最大走行距離が短くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃料電池スタックの廃熱を暖房に利用する燃料電池車両の空調装置であって、燃料電池スタックからの熱媒体を循環し、空気との熱交換により暖房を行うヒータコアと、車両が走行する際に発生する走行抵抗に影響する道路状態と、環境状態と、に基づき、道路を走行する際の走行抵抗を算出し、算出された走行抵抗に基づき、前記ヒータコアでの熱交換を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記算出された前記走行抵抗が所定以上の場合には、燃料電池スタックの廃熱を利用する暖房についての運転を制限する。
【0007】
前記道路状態は、走行する道路についての道路勾配と当該道路の標準的な路面の摩擦係数を含むことができる。
【0008】
前記環境状態は、走行時の気温と、降雨状態を含むことができる。
【0009】
前記制御部は、道路状態および環境状態が標準的な場合における標準的走行抵抗と、前記算出された走行抵抗との差が所定値以上の場合に、燃料電池スタックの廃熱を利用する暖房についての運転を制限することができる。
【0010】
さらに、設定された経路についての経路案内を行うナビゲーション装置を有しており、前記制御部は、設定された経路における走行抵抗を算出し、制御部は設定された経路における走行抵抗に基づいて燃料電池スタックの廃熱を利用する暖房についての運転を制限することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、走行抵抗を考慮して、燃料電池スタックの廃熱による暖房に制限を加える。これによって、燃料電池スタックの運転の効率化を図ることができ、最大走行距離を大きく維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】FCスタック10を利用する空調システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】暖房についての単独モードの状態について示す図である。
図3】暖房についての連携モードの状態について示す図である。
図4】暖房についてのFCスタック10の廃熱要求についての処理を示すフローチャートである。
図5】走行抵抗を予測する場合の処理のフローチャートである。
図6】FCスタック10の廃熱要求についての制限状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0014】
「システム構成」
図1は、燃料電池スタック(FCスタック)10を利用する空調システムの全体構成を示すブロック図である。FCスタック10は、水素などの燃料ガスを燃焼して、発電するものであり、水素ガスの循環系、空気の供給排出系、および発電電力の出力系などを有する。すなわち、燃料電池セル内で、水素ガスを燃焼したエネルギーを電気エネルギーとして出力する。
【0015】
ここで、FCスタック10の運転は、水素ガスの循環量、空気の供給量、出力電力の大きさなどによって制御される。通常は、最適運転条件で運転されるが、運転条件の変更により発電効率を制御することができ、発電効率を低下することによって発熱量(廃熱量)が増加する。そこで、暖房要求に応じて廃熱量を増加し、その廃熱により熱媒体(通常は水)を加温することで廃熱を暖房に利用することができる。
【0016】
FCスタック10は、発電によって発熱する。そこで、FCスタック10には、熱媒体の循環路が設けられており、ここを通過する熱媒体がラジエータ12に循環して冷却される。図1では、ラジエータ12とFCスタック10を結ぶ管路14-1には、ポンプ16が設けられている。また、FCスタック10とラジエータ12を結ぶ管路14-2には、ロータリバルブ18が設けられ、管路14-1からの分岐管路14-3がロータリバルブ18に接続されている。
【0017】
従って、ポンプ16を駆動して、管路14-1により、ラジエータ12からの熱媒体をFCスタック10に供給し、燃料電池スタックからの熱媒体を、管路14-2を介しラジエータ12に供給することで、熱媒体がFCスタック10、ラジエータ12を循環し、FCスタック10内で吸収した熱をラジエータ12で放熱することで、FCスタック10を冷却することができる。
【0018】
また、管路14-2には分岐路20-1が接続され、この分岐路20-1には、三方弁22、ポンプ24、ヒータ26を介し、ヒータコア30が接続され、ヒータコア30は、分岐路20-2を介し、管路14-2に接続されている。また、分岐路20-2は、分岐路20-3を介し、三方弁22にも接続されている。
【0019】
従って、三方弁22により分岐路20-1をポンプ24に接続することによって、FCスタック10からの熱媒体をポンプ24によりヒータ26,ヒータコア30に供給した後、管路14-2に戻すことができる。また、三方弁22により分岐路20-3を選択することで、ポンプ24からの熱媒体をヒータ26、ヒータコア30、三方弁22という経路で循環することができる。
【0020】
ロータリバルブ18は、管路14-2と分岐管路14-3からの熱媒体を任意の比率でラジエータ12に供給することができる。すなわち、ロータリバルブ18により、ラジエータ12内を循環する熱媒体と、FCスタック10に循環する熱媒体の比率を制御することができる。
【0021】
制御部40は、各種部材を制御するものであり、入力信号に応じて、三方弁22を制御して熱媒体の循環モードを切り換えたり、ポンプ16,24の流量を変更したり、ヒータ26の発熱量や、FCスタック10の廃熱量を制御したりする。
【0022】
また、制御部40には、ナビゲーション装置42が接続されている。ナビゲーション装置42は、地図データなどを有しており、GPS装置などの現在地検出手段からの信号に応じて、地図上に現在地を表示したり、目的地が設定された場合にはそこまでの経路を探索設定して、経路案内を行ったりする。なお、ナビゲーション装置42は、通信機能を有し、クラウド上のサーバなどから地図情報や経路情報を取得することができる。
【0023】
「循環モード」
<単独モード>
図2には、暖房についての単独モードの状態が示してある。単独モードでは、三方弁22により、管路14-2からの経路を閉ざし、分岐路20-3からの熱媒体をヒータ26、ヒータコア30に循環する。従って、ヒータ26の発熱によって、ヒータコア30の熱交換が制御でき、FCスタック10の発熱とは切り離して暖房が制御される。
【0024】
<連携モード>
図3には、暖房についての連携モードの状態が示してある。連携モードでは、三方弁22により、分岐路20-3からからの経路を閉ざし、管路14-2からの熱媒体をヒータ26、ヒータコア30に通過させてから管路14-2に戻す。従って、FCスタック10の発熱と、ヒータ26の発熱の両方によって、ヒータコア30の熱交換が制御される。
【0025】
<中間モード>
なお、分岐路20-3を介しての単独の循環と、管路14-2からの熱媒体の循環の両方を併用する中間モードを設けてもよい。
【0026】
「暖房の制御」
<通常時>
通常時は、室内の暖房要求に対し、ヒータコア30の運転条件が決定され、これに見合った温度、流量の熱媒体がヒータコア30に循環する。このために、FCスタック10からの熱媒体温度を考慮して、熱媒体の循環経路、流量、ヒータ26の発熱量を制御する。FCスタック10は、走行状態に応じてその動作が制御され、暖房要求とは関係しない。
【0027】
<FCスタックの廃熱要求>
寒冷地における始動時や、外気温が非常に低い場合など、必要な暖房に車両における発熱量が十分でない場合には、制御部40にてFCスタック10の廃熱要求が発生され、これに応じてFCスタック10の発熱量が増加され、廃熱要求に応じた廃熱が発生される。
【0028】
ここで、この廃熱要求は、ヒータコア30における必要熱量を得るために、必要なFCスタック10の廃熱を予め定められた方式で計算する。例えば、管路14-2の熱媒体温度、ヒータ26の適正発熱量などからFCスタック10の廃熱量、すなわち廃熱要求が決定される。
【0029】
図4は、暖房についてのFCスタック10の廃熱要求についての制御部40における処理を示すフローチャートである。
【0030】
まず、暖房要求のFCスタック10の廃熱要求があったかを判定する(S11)。S11の判定でNO(廃熱要求がない)の場合には、特別な処理は必要ないため、通常の動作を継続する(S12)。
【0031】
S11の判定でYESの場合には、走行抵抗を算出する(S13)。まず、現在の車両の走行抵抗を算出する。この場合、地図データから現在の道路の摩擦係数(例えば、25℃)、勾配を取得するとともに、車両の車速Vを取得する。なお、車両の車両前面投影面積、空気抵抗係数などは記憶しており、記憶している値を用いるとよい。25℃における走行抵抗αを次式により、算出する。
α=(A)V+C
【0032】
ここで、Aは25℃における空気抵抗係数であり、Vは車速、Cは25℃におけるタイヤころがり抵抗である。なお、タイヤころがり抵抗Cは、車両総重量と、25℃におけるころがり抵抗係数によって算出され、ころがり抵抗係数は、路面の状況(舗装材料、乾湿等)、タイヤ(種類、空気圧)、輪重、車輪軸受けの状態(グリスの温度)等に影響されるが、ここでは標準的な状態(25℃)におけるころがり抵抗係数を用いる。
【0033】
また、ここで、上述のように、ころがり抵抗係数は、路面の状況や道路勾配などの道路状態によって変化する。また、現在の外気温、風速、降雪、降雨などの環境状態によっても、空気抵抗係数A、ころがり抵抗係数Cなどが変化する。そこで、本実施形態では、車両において各種センサを設けたり、クラウド上のサーバから情報を取得することによって、現状の道路状態および環境状態における空気抵抗係数A’、ころがり抵抗C’に基づく走行抵抗βを算出する。なお、このような走行抵抗の算出には、公知の各種手法を採用することができる。
β=(A’)V+C’
【0034】
そして、算出した環境状態を考慮した走行抵抗βが所定値以上かを判定する(S14)。例えば、平坦な標準的道路を走行する場合の標準走行抵抗を記憶しておき、その標準走行抵抗に比べ走行抵抗が十分大きいかを判定すればよい。
【0035】
このために、算出した走行抵抗α、βから、β-αを算出し、これが所定の閾値より大きいか否かを判定する。例えば、閾値を20Nとした場合、次式の判定を行う。
β-α>20N
【0036】
S14の判定で、NOであれば、S12に移り、通常の動作を継続する。一方、S14の判定でYESであれば、走行抵抗が通常の場合より大きく、この場合にはFCスタック10に対する廃熱要求を制限する(S15)。
【0037】
走行抵抗が大きい場合、車両走行についてのエネルギーが大きくなり、従ってFCスタック10の負荷も大きくなり、発熱量も大きくなる。従って、FCスタック10からの熱媒体の温度が上昇するはずである。そこで、このような場合には、暖房のためのFCスタック10の廃熱要求を制限し、FCスタック10の非効率的な運転を抑制し、車両走行の効率化を図る。これによって、車両の走行可能距離を長くすることができる。
【0038】
ここで、上記例においては、現在の走行状態に応じて、走行抵抗を算出した。しかし、将来の走行状態を予測した方が、実際に合った制御が行える。
【0039】
図5は、走行抵抗を予測する場合の処理のフローチャートである。このように、図4のS13の走行抵抗の算出について、現在の走行抵抗だけでなく、将来の走行抵抗を考慮する。
【0040】
例えば、ナビゲーション装置42において、目的地が設定されており、設定された経路を走行している場合であれば、その経路上を走行する可能性が高く、これを前提として将来の走行抵抗を算出することができる。
【0041】
例えば、現在から所定時間や所定距離(10分間や、10kmなど)の走行について、上記α、βの平均値を算出すればよい。なお、目的地までの経路を対象としてもよい。地図データは、離散的なポイントごとに記憶されており、勾配、標準的な路面の摩擦係数などは、対象範囲の記憶されているデータをそのまま利用すればよい。また、離散的なデータを補間して平均値を計算してもよい。温度などの環境データ(気象データ)については、現状のものを用いればよい。例えば、勾配データのみ、対象範囲の平均値に置き換えるだけでも、本実施形態のFC廃熱要求についての処理の適正化を図ることができる。
【0042】
また、経路走行において、気象予報(例えば、目的地までの走行時における気温変化、降雨状態の変化)なども考慮して、最も効率的な暖房が行えるように、最適化計算を行い、FCスタックの廃熱利用の最適化を図ってもよい。
【0043】
「廃熱要求の制限」
図6は、FCスタック10の廃熱要求についての制限状態を示す図である。このように、走行抵抗の通常に比べての差β-αが所定の閾値(例えば、20N)までは、廃熱要求を100%とし制限を行わない。そして、β-αが閾値を超えた場合には、廃熱要求を制限する。β-αが大きくなるにしたがって、廃熱要求が低く制限され、所定値以降は十分低い値になる(0kWとしてもよい)。このような処理によって、FCスタック10の廃熱を利用する暖房についての運転が制限され、暖房に制限が加わる。しかし、走行抵抗が大きいことによって、FCスタック10の発電量が大きくなり、発電の際の発熱量が大きくなるため、暖房のための廃熱量を大きくしなくても、必要な熱量を確保できる可能性が高い。また、将来の走行の予測を考慮した制御によって、一時的に暖房量が不足するかもしれないが、トータルとしては十分な暖房が達成できる。
【0044】
ここで、廃熱要求の制限値をその発熱量(kW)として、制限してもよく、その場合の縦軸が発熱量(kW)になるが、特性は図6と同様になる。
【0045】
このように、本実施形態では、現在または現在および将来の走行抵抗を考慮して、FCスタック10の廃熱要求に制限を加える。これによって、FCスタック10の運転の効率化を図ることができ、最大走行距離を大きく維持することが可能となる。
【0046】
「その他」
また、走行抵抗が大きく、FCスタック10の廃熱が大きい場合または大きいことが予測される場合には、その廃熱を利用して暖房ができるため、ヒータ26による加熱を制限してもよい。これによっても、暖房の効率化を図ることができ、車両走行距離を延長することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 燃料電池スタック(FCスタック)、12 ラジエータ、14-1,14-2 管路、14-3 分岐管路、16,24 ポンプ、18 ロータリバルブ、20-1,20-2,20-3 分岐路、22 三方弁、26 ヒータ、30 ヒータコア、40 制御部、42 ナビゲーション装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6