(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】原稿搬送装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 31/02 20060101AFI20240903BHJP
B65H 29/52 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B65H31/02
B65H29/52
(21)【出願番号】P 2021022613
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】所 義多賀
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴文
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-338899(JP,A)
【文献】特開2019-176370(JP,A)
【文献】特開2019-131344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0193181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/02
B65H 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が積載される給紙トレイと、
前記給紙トレイの下方に設けられた排紙トレイと、
前記給紙トレイから読取位置を経て前記排紙トレイに至る搬送路に沿って前記原稿を搬送する搬送機構と、を備え、
前記搬送機構は、
前記読取位置よりも前記原稿の搬送方向下流側の前記搬送路として設けられ、前記排紙トレイに前記原稿を排出する排紙口を有するガイド部と、
前記搬送方向と交差する前記原稿の幅方向を軸方向として前記ガイド部を揺動可能に支持する第1揺動軸と、
前記第1揺動軸よりも前記搬送方向下流側、且つ、前記ガイド部の下方に設けられ、前記幅方向を軸方向とする第2揺動軸と、
一端部が前記第2揺動軸に揺動可能に支持され、前記ガイド部に対してスライド可能に設けられた連結部材と、
前記連結部材を前記第2揺動軸回りに揺動させる駆動部と、を備えることを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記幅方向に突出した突起部を備え、
前記連結部材は、前記第2揺動軸に対して離間及び接近する方向に前記突起部がスライド可能な溝部を備えることを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項3】
前記駆動部は、ウォームギアを含む減速ギア列を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の原稿搬送装置。
【請求項4】
前記排紙トレイに積載された前記原稿の量に応じて前記排紙口の高さを変化させるように前記駆動部を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の原稿搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の原稿搬送装置と、
前記原稿搬送装置により搬送される前記原稿を前記読取位置にて読み取る画像読取装置と、
前記画像読取装置により読み取られた画像をシートに形成する画像形成装置と、を備えることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置の読取位置に原稿を搬送する原稿搬送装置及び原稿搬送装置を備える画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置の読取位置に原稿を搬送する原稿搬送装置が知られている。原稿搬送装置は、例えば、原稿が積載される給紙トレイと、給紙トレイの下方に設けられた排紙トレイと、給紙トレイから原稿読取装置の読取位置を経て排紙トレイに至る搬送路に沿って原稿を搬送する搬送機構と、を備える。搬送路の搬送方向下流側の端部に排紙口が形成されており、排紙口から排紙トレイに原稿が排出される。
【0003】
原稿搬送装置は、排紙トレイの積載容量(積載可能な原稿の量)が多いほど利便性が高まる。排紙トレイを大容量化するには、排紙トレイに対する排紙口の高さを高くする必要がある。しかし、単に排紙口を高くすると、排出される原稿の位置や姿勢が乱れ、ユーザーが排紙トレイから取り出した原稿を揃えるのに手間がかかってしまう。そこで、従来、排紙口を昇降させる技術が検討されている。例えば、特許文献1では、給紙トレイに支持される原稿の減少に応じて排紙口を上昇させる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で提案された構成は、排出ユニットの軸に設けられたギアに駆動力を伝達して排出ユニットを揺動させるため、高トルクを必要とし、また、排紙口の高さ調整の精度が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、排紙トレイの積載容量を増やしても排出後の原稿の位置や姿勢の乱れを抑制することのできる原稿搬送装置及び画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る原稿搬送装置は、原稿が積載される給紙トレイと、前記給紙トレイの下方に設けられた排紙トレイと、前記給紙トレイから読取位置を経て前記排紙トレイに至る搬送路に沿って前記原稿を搬送する搬送機構と、を備え、前記搬送機構は、前記読取位置よりも前記原稿の搬送方向下流側の前記搬送路として設けられ、前記排紙トレイに前記原稿を排出する排紙口を有するガイド部と、前記搬送方向と交差する前記原稿の幅方向を軸方向として前記ガイド部を揺動可能に支持する第1揺動軸と、前記第1揺動軸よりも前記搬送方向下流側、且つ、前記ガイド部の下方に設けられ、前記幅方向を軸方向とする第2揺動軸と、一端部が前記第2揺動軸に揺動可能に支持され、前記ガイド部に対してスライド可能に設けられた連結部材と、前記連結部材を前記第2揺動軸回りに揺動させる駆動部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記ガイド部は、前記幅方向に突出した突起部を備え、前記連結部材は、前記第2揺動軸に対して離間及び接近する方向に前記突起部がスライド可能な溝部を備えていてもよい。
【0009】
前記駆動部は、ウォームギアを含む減速ギア列を備えていてもよい。
【0010】
前記原稿搬送装置は、前記排紙トレイに積載された前記原稿の量に応じて前記排紙口の高さを変化させるように前記駆動部を制御する制御部を備えていてもよい。
【0011】
また、本発明に係る画像形成システムは、前記のいずれかの原稿搬送装置と、前記原稿搬送装置により搬送される前記原稿を前記読取位置にて読み取る画像読取装置と、前記画像読取装置により読み取られた画像をシートに形成する画像形成装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排紙トレイの積載容量を増やしても排出後の原稿の位置や姿勢の乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複合機の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る複合機の内部構成を模式的に示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置の内部構成を模式的に示す正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置の内部構成を模式的に示す正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る揺動機構の正面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るガイド部の断面図である。
【
図8】
図6に示されるガイド部を反時計回り方向に揺動させた様子を示す正面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る検知部の正面図である。
【
図11】本発明の一実施形態の変形例に係る揺動機構34の正面図である。
【
図13】本発明の一実施形態の変形例に係る揺動機構34の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る複合機100(画像形成システムの一例)について説明する。
【0015】
最初に、複合機100の概要について説明する。
図1は、複合機100の外観を示す斜視図である。
図2は、複合機100の内部構成を模式的に示す正面図である。以下、
図2における紙面手前側を複合機100の正面側(前側)とし、左右の向きは複合機100を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0016】
複合機100は、プリンター1(画像形成装置の一例)と、スキャナー110(画像読取装置の一例)と、原稿搬送装置120と、を備える。プリンター1の上方にスキャナー110が設けられ、スキャナー110の上方に原稿搬送装置120が設けられている。プリンター1は、電子写真方式でシートSに画像を形成する。スキャナー110は、フラットベッド型のイメージスキャナーであり、原稿Gを読み取って画像データを生成する。原稿搬送装置120は、スキャナー110の読取位置を経由する搬送路61に沿って原稿Gを搬送する。
【0017】
プリンター1とスキャナー110は、直方体状のハウジング3により一体化されている。ハウジング3の内部の下部には、シートSが収容される給紙カセット4と、給紙カセット4からシートSを送り出す給紙ローラー5が設けられている。給紙カセット4の上方には、電子写真方式にてトナー像を形成する作像装置6が設けられ、作像装置6の右上方には、トナー像をシートSに定着させる定着装置7が設けられている。定着装置7の左上方には、トナー像が定着されたシートSを排出する排紙ローラー対8と、排出されたシートSが積載される排紙トレイ9が設けられている。
【0018】
ハウジング3の内部には、給紙ローラー5から作像装置6、定着装置7を経て排紙ローラー対8に至る搬送路10が設けられている。搬送路10は、シートSを通過させる間隙を空けて互いに対向する板状部材によって形成されており、シートSを挟持して搬送する搬送ローラー対17が搬送方向Yの複数箇所に設けられている。作像装置6よりも搬送方向上流側には、レジストローラー対18が設けられている。
【0019】
制御部2は、プロセッサーとメモリーとを備える。プロセッサーは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。メモリーは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。プロセッサーは、メモリーに記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで各種処理を実施する。なお、制御部2は、ソフトウェアを用いない集積回路によって実現されてもよい。
【0020】
スキャナー110の前側には、操作パネル19が設けられている。操作パネル19は、表示パネルと、表示パネルの表示面に重ねて設けられたタッチパネルと、表示パネルに隣接するキーパッドと、を備える。制御部2は、プリンター1及びスキャナー110の操作メニューを表す画面を表示パネルに表示させ、タッチパネル及びキーパッドで検知された操作に応じてプリンター1、スキャナー110及び原稿搬送装置120の各部を制御する。
【0021】
プリンター1の基本的な画像形成動作は、次のとおりである。外部のコンピューター等からプリンター1に印刷ジョブが入力されると、給紙ローラー5が給紙カセット4から搬送路10にシートSを送り出し、回転が停止されたレジストローラー対18がシートSの斜行を補正し、レジストローラー対18が所定のタイミングで作像装置6にシートSを送り出す。作像装置6においては、帯電装置が感光体ドラムを所定の電位に帯電させ、露光装置が感光体ドラムに潜像を書き込み、現像装置がトナーコンテナから供給されたトナーを用いて潜像を現像することでトナー像を形成し、一次転写ローラーが感光体ドラム上のトナー像を中間転写ベルトに転写し、二次転写ローラーが中間転写ベルト上のトナー像をシートSに転写する。続いて、定着装置7がシートSを挟持して搬送しながらトナー像を溶融させることでトナー像をシートSに定着させ、排紙ローラー対8が排紙トレイ9にシートSを排出する。クリーニング装置は、感光体ドラムに残留したトナーを除去する。
【0022】
次に、スキャナー110について説明する。スキャナー110は、光源と反射鏡を備える第1キャリッジ81と、2つの反射鏡を備える第2キャリッジ82と、光を結像させるレンズ83と、結像した光を画像データに変換する撮像素子84と、原稿Gが載せ置かれるコンタクトガラス85と、を備える。
【0023】
ユーザーがコンタクトガラス85の上面に原稿Gを置いて操作パネル19に複写又は読取の指示を与えると、第1キャリッジ81が速度Vで右方に移動するのと連動して第2キャリッジ82が速度V/2で右方に移動する。その間、光源が原稿Gに光を照射し、原稿Gで反射された反射光が、第1キャリッジ81の反射鏡と第2キャリッジ82の反射鏡で反射されてレンズ83に導かれ、撮像素子84に結像される。撮像素子84は、反射光を画像データに変換し、プリンター1の制御部2に出力する。複写の場合、露光装置が画像データに応じた潜像を感光体ドラムに書き込む。読取の場合、制御部2が画像データをメモリーに記憶させる。
【0024】
[原稿搬送装置]
次に、原稿搬送装置120について説明する。
図3、4は、原稿搬送装置120の内部構成を模式的に示す正面図である。原稿搬送装置120は、扁平な形状に形成された概ね矩形の底部40と、前後方向に互いに対向する第1壁部41と第2壁部42とを備える。底部40の後端部は、スキャナー110のコンタクトガラス85(
図2参照)の後方にヒンジ結合されており、底部40は、コンタクトガラス85上の原稿Gを押さえる押さえ板の機能を兼ね備える。第1壁部41は、底部40の前端部の中央部から左側に設けられ、第2壁部42は、底部40の後端部の全体にわたって設けられている。
【0025】
[給紙トレイ]
給紙トレイ43は、底部40の上方の中央よりも右側に設けられている。給紙トレイ43は、左側が低くなるように傾斜した板状の部材であり、原稿Gの前後方向の端部をそろえるカーソル45を備えている。
【0026】
[排紙トレイ]
排紙トレイ44は、底部40の上面の中央よりも右側、すなわち、給紙トレイ43の下方に設けられている。排紙トレイ44の中央部には、左側が低くなるように傾斜した傾斜面が設けられている。
【0027】
[昇降機構]
昇降機構33(
図3参照)は、給紙トレイ43の前後に設けられている。昇降機構33は、駆動プーリー71及び従動プーリー72と、駆動プーリー71及び従動プーリー72に巻き掛けられたベルト73と、ベルト73に固定された摺動部74と、摺動部74の昇降を案内する昇降案内部75と、駆動プーリー71を駆動する駆動部(図示省略)と、を備える。昇降案内部75は、上下方向を長手方向とするレール状の部材であり、第1壁部41及び第2壁部42に設けられている。摺動部74は、昇降案内部75に沿って摺動可能な部材であり、給紙トレイ43とベルト73(上下方向に渡された部分)に固定されている。駆動部は、モーターと、減速ギア列と、を含む。駆動プーリー71が駆動されると、ベルト73の周回に伴って給紙トレイ43が昇降する。なお、昇降機構33による給紙トレイ43の昇降は、給紙トレイ43に積載された原稿Gの量に応じて行われてもよく、後述するガイド部64の揺動と連動させて行われてもよいが、給紙トレイ43の昇降の詳細については、説明を省略する。
【0028】
[繰出機構]
繰出機構31(
図4参照)は、第1壁部41と第2壁部42との間の空間に設けられている。繰出機構31は、下部が開口した箱形のホルダー53を備え、ホルダー53の内部に、繰出ローラー51と、繰出ローラー51の左方に設けられた従動ローラー55と、従動ローラー55の左方に設けられた駆動ローラー52と、駆動ローラー52と従動ローラー55とに巻き掛けられたゴム製のベルト56と、ベルト56の下側の部分の下面に押し当てられた補助ローラー57と、を備える。
【0029】
繰出ローラー51、従動ローラー55、駆動ローラー52及び補助ローラー57は、前後方向を軸方向として配置されている。繰出ローラー51は、芯金と、ゴム等で形成された弾性層と、を備える(図示省略)。従動ローラー55、駆動ローラー52及び補助ローラー57は、樹脂等で形成されている。駆動ローラー52の駆動軸54の前後両端部は、第1壁部41と第2壁部42に支持され、モーターと減速ギア列等を含む駆動部(図示省略)に接続されている。ホルダー53は、駆動軸54に支持され、駆動軸54を中心として揺動可能である。駆動軸54の駆動力は、ギア列やタイミングベルト等の伝達機構(図示省略)により繰出ローラー51に伝達される。
【0030】
[搬送機構]
搬送機構32(
図3,4参照)は、繰出機構31から開口部40Aを経由して排紙ローラー対69に至る湾曲した搬送路61と、搬送路61に配置された複数の搬送ローラー対62と、を備える。開口部40Aは、底部40のうち、ホームポジションに位置する第1キャリッジ81(
図2参照)に対向する領域に設けられた前後方向を長手方向とする矩形の貫通穴である。開口部40Aは、スキャナー110が原稿Gを読み取る読取位置の一例である。搬送路61は、原稿Gが通過可能な間隙を空けて互いに対向する板状部材により形成されている。読取位置において、搬送路61の下側の板状部材には開口部40Aに対応する開口部61Aが設けられており、搬送中の原稿Gの下面が開口部40A及び開口部61Aを介して露出される。
【0031】
複数の搬送ローラー対62は、駆動ローラーと従動ローラーとを備え(
図4参照)、各駆動ローラーの軸には従動プーリー62Pが結合されている(
図3参照)。駆動部63は、モーター(図示省略)と、減速ギア列(図示省略)と、減速ギア列の最終ギアの軸に結合された駆動プーリー63P(
図3参照)と、を備える。駆動プーリー63Pと複数の従動プーリー62Pにはベルト63Bが巻き掛けられており、複数の搬送ローラー対62の駆動が同期する。搬送機構32の上方には、開閉可能なカバー部46が設けられている。カバー部46の左下端部は、底部40の左端部にヒンジ結合されている。
【0032】
上記の構成に加えて、搬送機構32は、ガイド部64、連結部材67、及び駆動部68を備える。
図5は、揺動機構34の正面図である。
図6は、
図5から駆動部68を除いた正面図である。
図7は、ガイド部64の断面図である。
図8は、
図6に示されるガイド部64を反時計回り方向に揺動させた様子を示す正面図である。
図9は、
図5のI-I断面の断面図である。
図10は、検知部35の正面図である。
【0033】
原稿搬送装置120は、原稿Gが積載される給紙トレイ43と、給紙トレイ43の下方に設けられた排紙トレイ44と、給紙トレイ43から読取位置を経て排紙トレイ44に至る搬送路61に沿って原稿Gを搬送する搬送機構32と、を備え、搬送機構32は、読取位置よりも原稿Gの搬送方向Z(
図2参照)下流側の搬送路61として設けられ、排紙トレイ44に原稿Gを排出する排紙口69Aを有するガイド部64と、搬送方向Zと交差する原稿Gの幅方向を軸方向としてガイド部64を揺動可能に支持する第1揺動軸661と、第1揺動軸661よりも搬送方向Z下流側、且つ、ガイド部64の下方に設けられ、幅方向を軸方向とする第2揺動軸672と、一端部が第2揺動軸672に揺動可能に支持され、ガイド部64に対してスライド可能に設けられた連結部材67と、連結部材67を第2揺動軸672回りに揺動させる駆動部68と、を備える。
【0034】
[ガイド部]
ガイド部64(
図6、7参照)は、上下方向に対向する下部ガイド部材65及び上部ガイド部材66を一体化したものである。下部ガイド部材65は、搬送路61の下側の部分を形成する概ね矩形の板状部65Pと、板状部65Pの前後両端部を支持する支持部65Sと、を備える。上部ガイド部材66は、搬送路61の上側の部分を形成する概ね矩形の板状部66Pと、板状部66Pの前後両端部を支持する支持部66Sと、を備える。上部ガイド部材66の前後の支持部66Sの左端部は、開口部40Aの右側に隣接する搬送ローラー対62の駆動ローラーの軸(第1揺動軸661)に支持されている。ガイド部64は、第1揺動軸661を中心として揺動可能である。
【0035】
ガイド部64の右端部には、排紙ローラー対69が設けられている。排紙ローラー対69は、駆動ローラー69Dと、駆動ローラー69Dの上方に配置された従動ローラー69Nと、を含み、駆動ローラー69Dが下部ガイド部材65の支持部65Sの右端部に支持され、従動ローラー69Nが上部ガイド部材66の支持部66Sの右端部に支持されている。駆動ローラー69Dと従動ローラー69Nとの接触領域は、搬送路61の搬送方向Z下流側の端部にあり、搬送路61から原稿Gを排出する排紙口69Aとなっている。
【0036】
下部ガイド部材65の前後の支持部65Sには、円柱状の突起部65Bが設けられている(
図9参照)。この例では、突起部65Bは、支持部65Sに形成された貫通穴にカシメピンを挿入することで形成されている。突起部65Bは、第1揺動軸661から離れた位置にあることが望ましい。一例として本実施形態では、突起部65Bは、下部ガイド部材65の左右方向の中央よりも右側に設けられている。突起部65Bは、前方又は後方に突出している。一例として本実施形態では、前側の支持部65Sに設けられた突起部65Bは、前方に突出しており、後側の支持部65Sに設けられた突起部65Bは、後方に突出している。
【0037】
[連結部材]
下部ガイド部材65の前後には、連結部材67が設けられている(
図5乃至8参照)。前後の連結部材67は、底部40のうち、ガイド部64の下方に対応する領域に設けられた第2揺動軸672に支持され、第2揺動軸672を中心として前後の連結部材67が一体となって揺動可能である。第2揺動軸672は、突起部65Bの左側又は右側に対応する位置に設けられる。一例として本実施形態では、第2揺動軸672は、突起部65Bの左側、すなわち、第1揺動軸661と突起部65Bの間に対応する位置に設けられている。
【0038】
連結部材67には、第2揺動軸672に対して離間及び接近する方向を長手方向とする溝部67Uが設けられている(
図9参照)。溝部67Uの幅は、突起部65Bの径よりも若干広い。突起部65Bは、溝部67Uに挿入されており、溝部67Uに沿ってスライド可能である。
【0039】
[駆動部]
第1壁部41又は第2壁部42(本実施形態では、第1壁部41)には、連結部材67を駆動する駆動部68が設けられている(
図5参照)。前側の連結部材67には、第2揺動軸672を中心とする従動ギア67Nが設けられている。駆動部68は、モーター68Mと、減速ギア列68Rと、を含む。モーター68Mは、DCブラシレスモーターである。減速ギア列68Rは、モーター68Mの軸に設けられたウォームギア68Wと、ウォームギア68Wから従動ギア67Nに駆動力を伝達する1つ以上のギア68Gと、を含む。モーター68Mが駆動されると、減速ギア列68Rを介して従動ギア67Nに駆動力が伝達され、前後の連結部材67が一体となって揺動する。
【0040】
例えば、
図6に示される状態を初期状態としてモーター68Mが駆動されると、
図8に示されるように、連結部材67が第2揺動軸672を中心として反時計回り方向に揺動する。連結部材67の揺動に伴って、突起部65Bが連結部材67の溝部67Uに沿って第2揺動軸672から離間する方向にスライドするため、ガイド部64が第1揺動軸661を中心として反時計回り方向に揺動し、排紙口69Aが上昇する。
【0041】
一方、モーター68Mが逆方向に駆動されると、連結部材67が時計回り方向に揺動し、突起部65Bが第2揺動軸672に接近する方向にスライドするため、ガイド部64が時計回り方向に揺動し、排紙口69Aが下降する。
【0042】
[検知部]
検知部35は、排紙トレイ44に積載された原稿Gの高さを検知する(
図5乃至8、10参照)。検知部35は、アクチュエーター91と、センサー92と、を含む。アクチュエーター91は、棒状の接触部91Cと、接触部91Cの一端部に設けられた軸穴91H及び板状の遮光部91Sと、を含む。上部ガイド部材66の右端部の上部には、幅方向を軸方向とする第3揺動軸93が設けられ、アクチュエーター91は、軸穴91Hを介して第3揺動軸93に支持されている。センサー92は、透過型又は反射型の光センサーであり、センサー92が出射する光が遮光部91Sによって遮られることで、アクチュエーター91の揺動を検知する。
【0043】
原稿Gが排紙口69Aから排出されるとき、及び、排紙トレイ44に積載された原稿Gの高さが所定高さ未満の場合には、接触部91Cの先端部が最も低い位置に位置する(
図10の実線A参照)。この状態を初期状態と呼び、遮光部91Sはセンサー92に検知されない。
【0044】
アクチュエーター91が初期状態に対して反時計回り方向に約15°以上65°以下の回転角にある場合に、センサー92が遮光部91Sを検知する。初期状態に対して反時計回り方向に約15°だけアクチュエーター91が揺動した状態を低位検知状態という(
図10の一点鎖線B参照)。同じく約65°だけアクチュエーター91が揺動した状態を高位検知状態という(
図10の二点鎖線C参照)。
【0045】
制御部47(
図2参照)は、プロセッサーとメモリーとを備える。プロセッサーは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。メモリーは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。プロセッサーは、メモリーに記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで各種処理を実施する。なお、制御部47は、ソフトウェアを用いない集積回路によって実現されてもよい。
【0046】
次に、原稿搬送装置120の動作を説明する。原稿Gが排紙口69Aから排出されるとき、接触部91Cの先端部に原稿Gが接触するため、アクチュエーター91が反時計回り方向に揺動し、低位検知状態を経て高位検知状態付近まで到達するが、原稿Gの積載高さが所定高さ未満の場合には、原稿Gの排出後に接触部91Cの先端部が原稿Gの上面に接触しないため、アクチュエーター91が初期状態に戻る。
【0047】
原稿Gの積載高さが所定高さに達すると、原稿Gの排出後に接触部91Cの先端部が原稿Gの上面に接触する。その後、原稿Gが排出されるたびに、原稿Gの1枚分ずつ接触部91Cの先端部の高さが高くなり、やがて低位検知状態に到達する。すると、制御部47は、駆動部68に制御信号を送り、接触部91Cの先端部と原稿Gの上面との間に所定量(数mm程度)の間隙が形成されるように、排紙口69Aを上昇させる。例えば、排紙口69Aを上昇させていくと、或る時点でセンサー92が遮光部91Sを検知しなくなるが、その時点からさらに所定時間だけモーター68Mの駆動を続けることで、接触部91Cの先端部と原稿Gの上面との間に所定量の間隙が形成される。アクチュエーター91が低位検知状態に到達するたびに上記の制御を実行することで、排紙口69Aと排紙トレイ44に積載された原稿Gの上面との高さの差が一定の範囲内に維持される。
【0048】
以上説明した本実施形態に係る原稿搬送装置120によれば、搬送機構32は、読取位置よりも原稿Gの搬送方向Z下流側の搬送路61として設けられ、排紙トレイ44に原稿Gを排出する排紙口69Aを有するガイド部64と、搬送方向Zと交差する原稿Gの幅方向を軸方向としてガイド部64を揺動可能に支持する第1揺動軸661と、第1揺動軸661よりも搬送方向Z下流側、且つ、ガイド部64の下方に設けられ、幅方向を軸方向とする第2揺動軸672と、一端部が第2揺動軸672に揺動可能に支持され、ガイド部64に対してスライド可能に設けられた連結部材67と、連結部材67を第2揺動軸672回りに揺動させる駆動部68と、を備える。この構成によれば、排紙口69Aを自在に昇降させることが可能であるから、排紙トレイ44の積載容量を増やしても排出後の原稿Gの位置や姿勢の乱れを抑制することができる。また、排紙トレイ44の積載容量を増やすために排紙口69Aを高い位置に設ける必要がないから、原稿搬送装置120の高さ方向の省スペース化を実現することができる。また、ガイド部64の第1揺動軸661から離れた箇所に駆動力を作用させるから、低トルクで高精度の高さ調整ができる。
【0049】
また、本実施形態に係る原稿搬送装置120によれば、ガイド部64は、幅方向に突出した突起部65Bを備え、連結部材67は、第2揺動軸672に対して離間及び接近する方向に突起部65Bがスライド可能な溝部67Uを備えるから、簡潔な構成でガイド部64を揺動させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る原稿搬送装置120によれば、駆動部68は、ウォームギア68Wを含む減速ギア列68Rを備えるから、減速比を大きくすることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る原稿搬送装置120によれば、排紙トレイ44に積載された原稿Gの量に応じて排紙口69Aの高さを変化させるように駆動部68を制御する制御部2を備えるから、排紙口69Aと原稿Gの上面との高さの差を一定の範囲内に維持することができる。
【0052】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0053】
上記実施形態では、検知部35がアクチュエーター91を用いて原稿Gの高さを検知する例が示されたが、検知部35はいかなる構成でもよい。例えば、検知部35が排紙トレイ44に積載された原稿Gの上面に光を出射し、反射光の位相のずれから原稿Gの上面の高さを検知するように構成されていてもよい。この構成によっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
上記実施形態では、下部ガイド部材65の支持部65Sに突起部65Bが設けられ、連結部材67に溝部67Uが設けられた例が示されたが、揺動機構34は、以下の構成を備えていてもよい。
図11は、変形例に係る揺動機構34の正面図である。
図12は、
図11のII-II断面の断面図である。この変形例では、下部ガイド部材65の支持部65Sに溝部65Uが設けられ、連結部材67に突起部67Bが設けられている。突起部67Bは、溝部65Uに挿入されており、溝部65Uに沿ってスライド可能である。この構成によっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0055】
あるいは、揺動機構34は、以下の構成を備えていてもよい。
図13は、変形例に係る揺動機構34の正面図である。
図14は、
図13のIII-III断面の断面図である。この例では、下部ガイド部材65の支持部65Sの底部に段部65Nが設けられ、連結部材67が段部65Nに沿ってスライド可能である。この構成によっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
上記実施形態では、駆動部68が、ウォームギア68Wを含む減速ギア列68Rを備える例が示されたが、減速ギア列68Rは、ウォームギア68Wを含まずに、平歯車や斜歯歯車等で構成されていてもよい。
【0057】
上記実施形態では、原稿搬送装置120に制御部47が設けられている例が示されたが、スキャナー110に制御部47が設けられていてもよい。また、プリンター1の制御部2が制御部47の機能を有していてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 プリンター(画像形成装置)
2 制御部
32 搬送機構
43 給紙トレイ
44 排紙トレイ
61 搬送路
64 ガイド部
65B 突起部
661 第1揺動軸
67 連結部材
672 第2揺動軸
67U 溝部
68 駆動部
69A 排紙口
100 複合機(画像形成システム)
110 スキャナー(画像読取装置)
120 原稿搬送装置