(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
H01R13/52 301B
H01R13/52 301H
(21)【出願番号】P 2021029766
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 将太
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-105011(JP,A)
【文献】特開平09-134756(JP,A)
【文献】特開2002-231374(JP,A)
【文献】特開2001-068202(JP,A)
【文献】特開2009-083770(JP,A)
【文献】実開昭58-159179(JP,U)
【文献】特開2003-297479(JP,A)
【文献】特開2013-229168(JP,A)
【文献】特開2008-166105(JP,A)
【文献】特開2019-212597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非防水コネクタと、
一端側に前記非防水コネクタが接続される複数の電線と、
前記複数の電線の他端側に接続されるコネクタと、を備え、
前記コネクタは、互いに嵌合可能な第一ハウジング及び第二ハウジングと、シール部材と、前記第一ハウジングに収容され、前記複数の電線のそれぞれの他端に接続される複数の第一端子金具と、前記第一端子金具のそれぞれに電気的に接続される複数の第二端子金具と、を有し、
前記第一ハウジングは、第一嵌合面を有し、
前記第二ハウジングは、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの嵌合状態において、前記第一嵌合面と対向する第二嵌合面を有し、
前記シール部材は、前記第一嵌合面と前記第二嵌合面との間に配置され、
前記第一ハウジングには、前記第一端子金具のぞれぞれを収容する第一キャビティが複数設けられ、前記第二ハウジングには、前記第二端子金具のそれぞれを収容する第二キャビティが複数設けられ、
前記第一嵌合面は、前記第一キャビティの開口を個別に囲んで前記シール部材に接触する第一突条部を有し、
前記第二嵌合面は、前記第二キャビティの開口を個別に囲んで前記シール部材に接触する第二突条部を有し、
前記第一嵌合面は、前記シール部材の外形に沿った形状の凹部を備え、
前記シール部材は、シール本体と、前記シール本体の外周面から突出している係止突起とを有し、
前記凹部は、周壁部によって囲まれ、前記周壁部には係止孔が形成され、前記係止突起が前記係止孔に係止することによって、前記シール部材は、前記第一嵌合面に保持されているワイヤハーネス。
【請求項2】
前記コネクタは、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとを嵌合状態に保持するロック部を有し、
前記ロック部は、前記第一嵌合面及び前記第二嵌合面に平行な方向に相対して一対設けられている請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第二端子金具は、前記嵌合状態において、前記第二嵌合面から前記第一キャビティ側に突出するタブ部を有し、
前記第二ハウジングは、前記タブ部を囲むフード部を有し、
前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの非嵌合状態において、前記シール部材は、前記第一嵌合面に保持されている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記第二嵌合面は、前記嵌合状態において、前記シール部材側に突出する筒状部を有し、
前記タブ部は、前記筒状部に形成された貫通孔を貫通し、
前記筒状部は、前記シール部材に形成された嵌合穴部に嵌合している
請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
一端側に非防水コネクタが接続される複数の電線の他端側に接続されるコネクタであって、
互いに嵌合可能な第一ハウジング及び第二ハウジングと、シール部材と、前記第一ハウジングに収容され、前記複数の電線のそれぞれの他端に接続される複数の第一端子金具と、前記第一端子金具のそれぞれに電気的に接続される複数の第二端子金具と、を備え、
前記第一ハウジングは、第一嵌合面を有し、
前記第一ハウジングは、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの嵌合状態において、前記第一嵌合面と対向する第二嵌合面を有し、
前記シール部材は、前記第一嵌合面と前記第二嵌合面との間に配置され、
前記第一ハウジングには、前記第一端子金具のそれぞれを収容する第一キャビティが複数設けられ、前記第二ハウジングには、前記第二端子金具のそれぞれを収容する第二キャビティが複数設けられ、
前記第一嵌合面は、前記第一キャビティの開口を個別に囲んで前記シール部材に接触する第一突条部を有し、
前記第二嵌合面は、前記第二キャビティの開口を個別に囲んで前記シール部材に接触する第二突条部を有し、
前記第一嵌合面は、前記シール部材の外形に沿った形状の凹部を備え、
前記シール部材は、シール本体と、前記シール本体の外周面から突出している係止突起とを有し、
前記凹部は、周壁部によって囲まれ、前記周壁部には係止孔が形成され、前記係止突起が前記係止孔に係止することによって、前記シール部材は、前記第一嵌合面に保持されているコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネス及びコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載された防水コネクタが知られている。この防水コネクタは、互いに嵌合可能な雄ハウジング及び雌ハウジングを備えている。雄ハウジングには雄端子金具が保持されている。雄端子金具は、基板に接続されている。雌ハウジングのキャビティには雌端子金具が保持されている。雌端子金具は、電線の端末部に接続されている。
【0003】
雌ハウジングの嵌合面は、格子状のリブを有している。リブは、各キャビティの前端開口を個別に囲んでいる。雌ハウジングの嵌合面は、シール部材によって覆われている。シール部材は、ホルダの前面板の裏面に一体形成されている。ホルダは、雌ハウジングの嵌合面に取り付けられている。
【0004】
雄ハウジングの嵌合面は、シール突部を有している。雄端子金具のタブ部はシール突部を貫通している。シール突部は、シール部材に形成された貫通孔に嵌合する。貫通孔の周面は、リップを有している。
【0005】
雄ハウジングと雌ハウジングとの嵌合状態において、雌ハウジングのリブは、シール部材に食い込む。また、雄ハウジングと雌ハウジングとの嵌合状態において、シール部材の貫通孔のリップは、雄ハウジングのシール突部に密着する。これによって、キャビティは個別に防水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような構成によってキャビティを個別に防水する場合、雄端子金具のタブ部は、ホルダの前面板とシール部材とを貫通するだけの長さ寸法を必要とする。しかしながら、強度や接続作業性を維持するためには、タブ部を短くしたいという要求がある。このため、キャビティを個別に防水可能で、かつタブ部を短くできるワイヤハーネス及びコネクタが望まれた。
【0008】
そこで、本開示は、キャビティを個別に防水可能で、かつタブ部を短くできるワイヤハーネス及びコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のワイヤハーネスは、非防水コネクタと、一端側に前記非防水コネクタが接続される複数の電線と、前記複数の電線の他端側に接続されるコネクタと、を備え、前記コネクタは、互いに嵌合可能な第一ハウジング及び第二ハウジングと、シール部材と、前記第一ハウジングに収容され、前記複数の電線のそれぞれの他端に接続される複数の第一端子金具と、前記第一端子金具のそれぞれに電気的に接続される複数の第二端子金具と、を有し、前記第一ハウジングは、第一嵌合面を有し、前記第二ハウジングは、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの嵌合状態において、前記第一嵌合面と対向する第二嵌合面を有し、前記シール部材は、前記第一嵌合面と前記第二嵌合面との間に配置され、前記第一ハウジングには、前記第一端子金具のそれぞれを収容する第一キャビティが複数設けられ、前記第二ハウジングには、前記第二端子金具のそれぞれを収容する第二キャビティが複数設けられ、前記第一嵌合面は、前記第一キャビティの開口を個別に囲んで前記シール部材に接触する第一突条部を有し、前記第二嵌合面は、前記第二キャビティの開口を個別に囲んで前記シール部材に接触する第二突条部を有しているものである。
【0010】
本開示のコネクタは、一端側に非防水コネクタが接続される複数の電線の他端側に接続されるコネクタであって、互いに嵌合可能な第一ハウジング及び第二ハウジングと、シール部材と、前記第一ハウジングに収容され、前記複数の電線のそれぞれの他端に接続される複数の第一端子金具と、前記第一端子金具のそれぞれに電気的に接続される複数の第二端子金具と、を備え、前記第一ハウジングは、第一嵌合面を有し、前記第一ハウジングは、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの嵌合状態において、前記第一嵌合面と対向する第二嵌合面を有し、前記シール部材は、前記第一嵌合面と前記第二嵌合面との間に配置され、前記第一ハウジングには、前記第一端子金具のそれぞれを収容する第一キャビティが複数設けられ、前記第二ハウジングには、前記第二端子金具のそれぞれを収容する第二キャビティが複数設けられ、前記第一嵌合面は、前記第一キャビティの開口を個別に囲んで前記シール部材に接触する第一突条部を有し、前記第二嵌合面は、前記第二キャビティの開口を個別に囲んで前記シール部材に接触する第二突条部を有しているものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、キャビティを個別に防水可能で、かつタブ部を短くできるワイヤハーネス及びコネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるワイヤハーネスであって、非防水コネクタを接続した状態を示す図である。
【
図4】
図4は、第一ハウジングを示す平面図である。
【
図5】
図5は、シール部材が取り付けられた状態の第一ハウジングを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、シール部材及び第一ハウジングを示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、シール部材が取り付けられた状態の第一ハウジングを示す正面図である。
【
図8】
図8は、第一嵌合面の一部を拡大して示す一部拡大斜視図である。
【
図9】
図9は、第二ハウジングを示す平面図である。
【
図12】
図12は、第二嵌合面の一部を拡大して示す一部拡大斜視図である。
【
図13】
図13は、第一ハウジング及び第二ハウジングの嵌合状態における第一嵌合面及び第二嵌合面の近傍を拡大して示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0014】
本開示のワイヤハーネスは、
(1)非防水コネクタと、一端側に前記非防水コネクタが接続される複数の電線と、前記複数の電線の他端側に接続されるコネクタと、を備え、前記コネクタは、互いに嵌合可能な第一ハウジング及び第二ハウジングと、シール部材と、前記第一ハウジングに収容され、前記複数の電線のそれぞれの他端に接続される複数の第一端子金具と、前記第一端子金具のそれぞれに電気的に接続される複数の第二端子金具と、を有し、前記第一ハウジングは、第一嵌合面を有し、前記第二ハウジングは、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの嵌合状態において、前記第一嵌合面と対向する第二嵌合面を有し、前記シール部材は、前記第一嵌合面と前記第二嵌合面との間に配置され、前記第一ハウジングには、前記第一端子金具のそれぞれを収容する第一キャビティが複数設けられ、前記第二ハウジングには、前記第二端子金具のそれぞれを収容する第二キャビティが複数設けられ、前記第一嵌合面は、前記第一キャビティの開口を個別に囲んで前記シール部材に接触する第一突条部を有し、前記第二嵌合面は、前記第二キャビティの開口を個別に囲んで前記シール部材に接触する第二突条部を有しているものである。このような構成によれば、第一突条部及び第二突条部がシール部材に接触することによって、キャビティを個別に防水できる。また、第一端子金具及び第二端子金具のいずれか一方に設けられるタブ部は、ホルダがないから、ホルダを貫通するだけの長さ寸法を必要としない。したがって、キャビティを個別に防水できるためタブ部を短くできる。
(2)前記コネクタは、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとを嵌合状態に保持するロック部を有し、前記ロック部は、前記第一嵌合面及び前記第二嵌合面に平行な方向に相対して一対設けられていることが好ましい。このような構成によれば、一対のロック部は、第一嵌合面及び第二嵌合面に平行な方向に相対する位置において、第一嵌合面と第二嵌合面とが離れる方向の変位を制限する。したがって、第一嵌合面及び第二嵌合面から、シール部材が部分的に離れたりしにくいため、シール性を向上できる。
(3)前記第二端子金具は、前記嵌合状態において、前記第二嵌合面から前記第一キャビティ側に突出するタブ部を有し、前記第二ハウジングは、前記タブ部を囲むフード部を有し、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングとの非嵌合状態において、前記シール部材は、前記第一嵌合面に保持されていることが好ましい。ここで、第二嵌合面にシール部材を保持する場合、フード部が大型化しがちである。しかしながら、第一嵌合面にシール部材を保持するから、フード部の大型化を回避し得る。したがって、コネクタの大型化を回避できる。
(4)前記第一嵌合面は、前記シール部材の外形に沿った形状の凹部を備えていることが好ましい。このような構成によれば、凹部に嵌め込まれたシール部材は、面方向の広がりを抑制されるから、シール性を向上できる。
(5)前記第二嵌合面は、前記嵌合状態において、前記シール部材側に突出する筒状部を有し、前記タブ部は、前記筒状部に形成された貫通孔を貫通し、前記筒状部は、前記シール部材に形成された嵌合穴部に嵌合していることが好ましい。このような構成によれば、第二端子金具のタブ部がシール部材に直接接触しないから、タブ部との接触によるシール部材の損傷を防ぐことができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネス及びコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
ワイヤハーネスHは、
図1に示すように、電線W及び電線Wの一端側に接続されるコネクタ10を備えている。電線Wは、線状の導体を絶縁被覆で包囲したものである。コネクタ10は、第一コネクタ20及び第二コネクタ50を備えている。第一コネクタ20及び第二コネクタ50は、電気的に接続される。第一コネクタ20は、電線Wの端末部に接続されている。第二コネクタ50は、電線100の端末部に接続されている。コネクタ10は、いわゆるワイヤツーワイヤタイプである。
【0017】
ワイヤハーネスHは、二輪自動車に搭載される。ワイヤハーネスHは、FI-ECUに接続される。FI-ECUは、エンジンを制御するコンピュータである。ワイヤハーネスHには、非防水コネクタCが接続される。非防水コネクタCは、電線Wのコネクタ10側とは反対側の端末部に接続される。
【0018】
図2において、X軸方向は、第一ハウジング21と第二ハウジング51との嵌合方向である。Y軸方向は、X軸方向に直交する一方向であり、第一嵌合面28及び第二嵌合面58に平行な方向である(
図3参照)。Z軸方向は、X軸及びY軸と直交する方向である。本実施形態において、「直交」は、厳密に直交な状態に加えて、概ね直交な状態を含む。概ね直交とは、例えば2つの方向のなす角度が85度以上90度未満の状態である。「平行」は、厳密に平行な状態に加えて、概ね平行な状態を含む。概ね平行とは、例えば2つの方向の成す角度が10度以下、好ましくは5度以下の状態である。以下、第一コネクタ20の各構成部材において、X軸の正方向側を前側、X軸の負方向側を後側、Y軸の正方向側を上側、Y軸の負方向側を下側、Z軸の正方向側を左側、Z軸の負方向側を右側として説明する。また、第二コネクタ50の各構成部材において、X軸の正方向側を後側、X軸の負方向側を前側、Y軸の正方向側を上側、Y軸の負方向側を下側、Z軸の正方向側を右側、Z軸の負方向側を左側として説明する。
【0019】
コネクタ10は、
図2に示すように、扁平な形状である。コネクタ10の高さ寸法は、幅寸法よりも小さい。コネクタ10の高さ寸法は、人の指で挟みやすい寸法である。
【0020】
コネクタ10は、
図3に示すように、互いに嵌合可能な第一ハウジング21及び第二ハウジング51を備えている。第一ハウジング21は、第一コネクタ20のハウジングである。第二ハウジング51は、第二コネクタ50のハウジングである。第一ハウジング21と第二ハウジング51とは互いに嵌合可能である。
【0021】
第一ハウジング21には、第一端子金具22を個別に収容する第一キャビティ23が複数設けられている。第一端子金具22は、電線Wの端末部に圧着されている。第一端子金具22は、メッキを施した金属製の板材をプレス加工することにより製造されている。第一端子金具22は、雌型の端子金具である。第一端子金具22は、筒状の本体部24を備えている。
【0022】
第一キャビティ23の周面には、第一ランス25を備えている。第一ランス25は、前方に片持ち状に延びている。第一ランス25は、第一キャビティ23に収容された第一端子金具22を抜け止めする。
【0023】
第一キャビティ23の後側の開口は、第一ゴム栓26によってシールされている。第一ゴム栓26は、すべての第一キャビティ23の後側の開口を一括してシールする。第一ゴム栓26は、各電線Wの外周面に密着している。第一ゴム栓26は、第一リアホルダ27によって第一ハウジング21に保持されている。
【0024】
第二ハウジング51には、第二端子金具52を個別に収容する第二キャビティ53が複数設けられている。第二端子金具52は、電線100の端末部に圧着されている。第二端子金具52は、メッキを施した金属製の板材をプレス加工することにより製造されている。第二端子金具52は、雄型の端子金具である。第二端子金具52は、棒状に形成されたタブ部54を有している。タブ部54は、第一端子金具22と第二端子金具52との接続状態において、第一端子金具22の本体部24の内部に挿入される。第二ハウジング51は、フード部62を備えている。フード部62は、全てのタブ部54を囲む。第一ハウジング21は、フード部62の内側に嵌合する。
【0025】
第二キャビティ53の周面は、第二ランス55を備えている。第二ランス55は、前方に片持ち状に延びている。第二ランス55は、第二キャビティ53に収容された第二端子金具52を抜け止めする。
【0026】
第二キャビティ53の後側の開口は、第二ゴム栓56によってシールされている。第二ゴム栓56は、すべての第二キャビティ53の後側の開口を一括してシールする。第二ゴム栓56は、各電線100の外周面に密着している。第二ゴム栓56は、第二リアホルダ57によって第二ハウジング51に保持されている。第一キャビティ23及び第二キャビティ53は、いずれも左右方向に型抜きするスライド金型を用いないで成形できる。
【0027】
第一ハウジング21の嵌合面(第一嵌合面28と称する。)と、第二ハウジング51の嵌合面(第二嵌合面58と称する。)とは、第一ハウジング21と第二ハウジング51との嵌合状態において、前後方向に対向する。第二嵌合面58は、フード部62の奥面である。第一嵌合面28及び第二嵌合面58は、第一ハウジング21と第二ハウジング51との嵌合状態において、平行に配置される。第一キャビティ23は、第一嵌合面28において開口している。第二キャビティ53は、第二嵌合面58において開口している。
【0028】
コネクタ10は、第一ハウジング21と第二ハウジング51とを嵌合状態に保持するロック部13を有している。ロック部13は、コネクタ10の上面及び下面に設けられている。上下のロック部13は、上下方向(第一嵌合面28及び第二嵌合面58に平行な方向)に相対している。ロック部13は、ロックアーム29及びロック突起59を備えている。ロックアーム29は、第一ハウジング21に設けられている。ロック突起59は、第二ハウジング51に設けられている。
【0029】
ロックアーム29は、第一ハウジング21の上面及び下面に設けられている。上面のロックアーム29と下面のロックアーム29とは、上下方向の中央位置を基準に上下対称な形状である。
【0030】
ロックアーム29は、上下方向に弾性変位する。ロックアーム29の前端部は、ロック突起59に係止し得る(
図2参照)。ロックアーム29の後端部は、解除操作部31である。上下の解除操作部31を人差し指と親指とで同時に挟んで押すことによって、上下のロック部13の係止状態を容易に解除できる。
【0031】
第一ハウジング21は、ロック保護部32を備えている。ロック保護部32は、意図しないロックアーム29の弾性変位を防止し得る。ロック保護部32は、第一ハウジング21の上面及び下面に設けられている。
【0032】
ロック保護部32は、
図4に示すように、前保護部33及び横保護部34を備えている。前保護部33は、ロックアーム29の前側に配置される。横保護部34は、ロックアーム29の左右両側に配置される。横保護部34は、前後方向に延びている。
【0033】
横保護部34には、
図5に示すように、ガイド溝部35が形成されている。ガイド溝部35は、上側の横保護部34の下面及び下側の横保護部34の上面に設けられている。ガイド溝部35は、前後方向に延びている。
【0034】
コネクタ10は、
図3に示すように、第一嵌合面28と第二嵌合面58との間に配置されるシール部材80を備えている。第一キャビティ23及び第二キャビティ53は、第一ゴム栓26、第二ゴム栓56及びシール部材80によって、個別に防水される。
【0035】
シール部材80は、
図5及び
図6に示すように、第一ハウジング21と第二ハウジング51とが嵌合していない非嵌合状態において、第一嵌合面28に保持されている。第一嵌合面28は、
図6に示すように、凹部36を備えている。凹部36は、シール部材80の外形に沿った形状である。全ての第一キャビティ23の前側の開口は、凹部36内に位置している。
【0036】
凹部36は、周壁部37によって囲まれている。周壁部37は、第一嵌合面28の全周に形成されている。周壁部37の内周側の角部は、円弧状である。
【0037】
周壁部37には、複数の係止孔38が形成されている。係止孔38は、第一嵌合面28の上下両側及び左右両側に設けられている。各係止孔38は、周壁部37の内側(凹部36側)から外側まで貫通している。各係止孔38は、周壁部37の周方向に長い四角形状である。
【0038】
第一嵌合面28は、
図6及び
図7に示すように、第一突条部40を有している。第一突条部40は、第一キャビティ23の前側の開口を個別に囲んでいる。第一突条部40は、格子状である。第一突条部40は、第一縦リブ41と第一横リブ42とを有している。第一縦リブ41と第一横リブ42とは直交している。第一縦リブ41は、各第一キャビティ23の左右両側に配置される。第一横リブ42は、各第一キャビティ23の上下両側に配置される。
【0039】
第一突条部40は、
図8に示すように、第一隔壁43の前面に設けられている。第一突条部40は、第一隔壁43の前面において一段前側に突出している。第一隔壁43は、隣接する第一キャビティ23の間を仕切る。
【0040】
第一隔壁43は、縦隔壁44と横隔壁45とを備えている。縦隔壁44は、左右の第一キャビティ23の間を仕切る。横隔壁45は、上下の第一キャビティ23の間を仕切る。第一縦リブ41は、縦隔壁44の前面に設けられている。第一縦リブ41の幅寸法(左右方向の寸法)は、縦隔壁44の壁厚寸法(左右方向の寸法)よりも小さい。第一横リブ42の幅寸法(上下方向の寸法)は、横隔壁45の壁厚寸法(上下方向の寸法)よりも小さい。
【0041】
シール部材80は、
図6に示すように、シール本体81と係止突起82とを備えている。シール本体81は、左右方向に長い四角形状である。シール本体81は、全ての第一キャビティ23の前側を一括して覆う大きさである。
【0042】
シール本体81には、複数の嵌合穴部83が形成されている。嵌合穴部83の数は、第一キャビティ23の数と同じである。各嵌合穴部83は、円形状をなしている。各嵌合穴部83は、シール本体81を前後方向に貫通している。各嵌合穴部83の内周面には、リップ84が一ずつ設けられている。
【0043】
係止突起82は、シール部材80の上下左右に一ずつ設けられている。係止突起82は、シール本体81の外周面から突出している。係止突起82は、シール本体81の周方向に長い形状である。係止突起82は、係止孔38に嵌合する。係止突起82が係止孔38に嵌合した状態において、係止突起82の突出端は、周壁部37の外周面から外側に突出しない(
図7参照)。係止突起82が係止孔38に係止することによって、シール部材80は、接着剤やホルダ等によらずとも第一嵌合面28に保持される。
【0044】
第二ハウジング51は、
図9に示すように、ロック突起59を備えている。ロック突起59は、左右に並んで一対設けられている。一対のロック突起59は、第二ハウジング51の左右方向中央部に配置されている。一対のロック突起59は、フード部62の外周面に設けられている。
【0045】
一対のロック突起59の左右両側には、ガイド突部61が設けられている。ガイド突部61は、前後方向に延びている。ガイド突部61は、第一ハウジング21のガイド溝部35に嵌まる。左右のガイド突部61は、平行である。
【0046】
一対のロック突起59及び一対のガイド突部61は、
図11に示すように、第二ハウジング51の上面及び下面に設けられている。上側のロック突起59及びガイド突部61と、下側のロック突起59及びガイド突部61とは、上下方向中央位置を基準に上下対称である。
【0047】
第二嵌合面58は、
図11及び
図12に示すように、第二突条部70を有している。第二突条部70は、第二キャビティ53の前側の開口を個別に囲む。第二突条部70は、格子状である。第二突条部70は、第二縦リブ71と第二横リブ72とを有している。第二縦リブ71と第二横リブ72とは直交している。第二縦リブ71は、各第二キャビティ53の左右両側に配置される。第二横リブ72は、各第二キャビティ53の上下両側に配置される。
【0048】
第二突条部70は、
図12に示すように、第二隔壁73の前面に設けられている。第二隔壁73は、隣接する第二キャビティ53の間を仕切る。第二隔壁73は、縦隔壁74と横隔壁75とを備えている。縦隔壁74は、左右の第二キャビティ53の間を仕切る。横隔壁75は、上下の第二キャビティ53の間を仕切る。第二縦リブ71は、縦隔壁74の前面に、第二横リブ72は、横隔壁75の前面に設けられている。
【0049】
縦隔壁74には、側壁部76が設けられている。側壁部76は、縦隔壁74の壁面から突出している。側壁部76は、
図11に示すように、第二ランス55の左右両側に配置されている。側壁部76は、各第二キャビティ53の左右角部に設けられている。第二突条部70は、
図12に示すように、側壁部76の前面から前側に突出している。第一ハウジング21と第二ハウジング51との嵌合状態において、第二突条部70と第一突条部40との前後方向の距離は、側壁部76の前面と第一突条部40との前後方向の距離よりも小さい。
【0050】
横隔壁75には、前壁部77が設けられている。前壁部77は、横隔壁75の壁面から突出している。前壁部77は、各第二キャビティ53の下側に位置している。第二突条部70は、前壁部77の前面よりも一段前側に突出している。
【0051】
第二嵌合面58は、
図11及び
図12に示すように、筒状部78を有している。筒状部78の外周面は、円筒状である。筒状部78の中心部は、貫通孔である。貫通孔は、前後方向に貫通している。貫通孔を前側から見ると、四角形状である。筒状部78は、各第二キャビティ53の下側に配置されている。筒状部78は、前壁部77の前面から前方に突出している。各筒状部78の下端部は、各第二キャビティ53の下側の横隔壁75に繋がっている。筒状部78の前端は、第二突条部70の前面よりも前側に位置する。
【0052】
筒状部78は、
図13に示すように、第一ハウジング21と第二ハウジング51との嵌合状態において、シール部材80の嵌合穴部83に嵌まる。嵌合穴部83のリップ84は、筒状部78の外周面に線接触する。これによって、嵌合穴部83の周面と筒状部78とが面接触する場合よりも、筒状部78を嵌合穴部83に挿入するために必要な挿入力を小さくできる。タブ部54は、筒状部78の貫通孔を貫通し、筒状部78の前端よりも前方に突出する。タブ部54は、筒状部78を貫通しているから、第一コネクタ20と第二コネクタ50とを接続する際に、シール部材80に直接接触しにくい。したがって、タブ部54がシール部材80に直接接触して、シール部材80が切れる等の損傷を防ぎ得る。
【0053】
第一突条部40は、第一コネクタ20と第二コネクタ50との接続状態において、シール部材80のうち第一嵌合面28に臨む面に接触する。第二突条部70は、第一コネクタ20と第二コネクタ50との接続状態において、シール部材80のうち第二嵌合面58に臨む面に接触する。シール部材80の前後両面に第一突条部40及び第二突条部70が接触することによって、第一キャビティ23の前側の開口の間、第二キャビティ53の前側の開口の間が面シールされる。
【0054】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。ワイヤハーネスHは、電線W及びコネクタ10を備えている。電線Wの一端側にコネクタ10が接続され、電線Wの他端側に非防水コネクタCが接続される。コネクタ10は、第一ハウジング21及び第二ハウジング51と、シール部材80と、を有している。第一ハウジング21及び第二ハウジング51は、互いに嵌合可能である。シール部材80は、第一嵌合面28と第二嵌合面58との間に配置される。第一ハウジング21には、第一端子金具22を収容する第一キャビティ23が複数設けられている。第二ハウジング51には、第二端子金具52を収容する第二キャビティ53が複数設けられている。第一嵌合面28は、第一キャビティ23の開口を個別に囲む第一突条部40を有している。第二嵌合面58は、第二キャビティ53の開口を個別に囲む第二突条部70を有している。第一ハウジング21と第二ハウジング51との嵌合状態において、第一突条部40及び第二突条部70は、シール部材80に接触している。
【0055】
この構成によれば、第一突条部40及び第二突条部70がシール部材80に接触することによって、第一キャビティ23及び第二キャビティ53を個別に防水できる。ここで、ワイヤハーネスHの電線Wは、非防水コネクタCに接続されている。非防水コネクタCにおいて、水はキャビティ内に浸入し得る。非防水コネクタCのキャビティ内に浸入した水は、電線Wの端末部において絶縁被覆の内部に入り込み、電線Wの内部を伝わって、コネクタ10側に到達し得る。コネクタ10側に到達した水は、第一キャビティ23内に到達し得る。しかしながら、コネクタ10は、個別防水されているから、一つの第一キャビティ23内に到達した水が、他の第一キャビティ23に浸入することを防ぐことができる。
【0056】
コネクタ10は、シール部材80を保持するフロントホルダを備えていない構成になっているから、フロントホルダを備える場合よりも部品点数を削減できる。タブ部54は、フロントホルダを貫通する必要がないから、ホルダを貫通する場合よりも長さ寸法を小さくできる。タブ部54の長さ寸法を小さくできるから、金属板材を屈曲して形成する第二端子金具52であっても、タブ部54の強度を確保しやすい。したがって、コネクタ10は、電線100に接続される第二端子金具52に対応できる。
【0057】
加えて、タブ部54の長さ寸法を小さくできるから、長いタブ部を第一端子金具22の本体部24に挿入する場合と比べて、挿入作業を容易に行うことができる。したがって、第一コネクタ20と第二コネクタ50との接続にかかる作業性を良くできる。
【0058】
コネクタ10は、第一ハウジング21と第二ハウジング51とを嵌合状態に保持するロック部13を有している。ロック部13は、上下方向(第一嵌合面28及び第二嵌合面58に平行な方向)に相対して一対設けられている。この構成によれば、第一ハウジング21及び第二ハウジング51は、上下のロック部13によって正規の嵌合状態に保持され、第一嵌合面28及び第二嵌合面58は、上下両側において相手側から離れる方向の変位を制限される。したがって、使用時にコネクタ10が傾いたり、振動し続けたりしても、第一突条部40の全体及び第二突条部70の全体がシール部材80に接触した状態に保持され、個別防水は維持されるから、シール性を向上できる。
【0059】
第二端子金具52は、第一ハウジング21と第二ハウジング51との嵌合状態に置いて、第二嵌合面58から第一キャビティ23側に突出するタブ部54を有している。第二ハウジング51は、タブ部54を囲むフード部62を有している。第一ハウジング21と第二ハウジング51との非嵌合状態において、シール部材80は、第一嵌合面28に保持されている。ここで、第二嵌合面にシール部材を保持する場合、フード部は大型化しがちである。防水コネクタのフード部には、シール部材の係止構造として内外に貫通する穴を形成できないからである。つまり、フード部に設ける係止構造は、外周側が塞がれた形態の凹部にする必要があるため、フード部は大型化しがちである。しかしながら、コネクタ10は、第一嵌合面28にシール部材80を保持するから、フード部62の大型化を回避し得る。したがって、コネクタ10の大型化を回避できる。
【0060】
第一嵌合面28は、シール部材80の外形に沿った形状の凹部36を備えている。この構成によれば、凹部36に嵌め込まれたシール部材80は、面方向の広がりを抑制されるから、シール性を向上できる。
【0061】
第二嵌合面58は、筒状部78を有している。筒状部78は、第一ハウジング21と第二ハウジング51との嵌合状態において、シール部材80側に突出する。タブ部54は、筒状部78に形成された貫通孔を貫通し、筒状部78は、シール部材80に形成された嵌合穴部83に嵌合している。この構成によれば、第二端子金具52のタブ部54がシール部材80に直接接触しないから、タブ部54との接触によるシール部材80の損傷を防ぐことができる。
【0062】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態の場合、ワイヤハーネスHは、二輪自動車に搭載される。他の実施形態として、ワイヤハーネスは、四輪自動車に搭載されても良い。
上記実施形態では、ワイヤツーワイヤタイプのコネクタ10を例示した。他の実施形態として、コネクタは、機器に直結されるタイプであっても良い。
上記実施形態の場合、第一コネクタ20側の電線Wの端末部に、非防水コネクタCが接続される。他の実施形態として、第二コネクタ側の電線の端末部に、非防水コネクタが接続されても良い。
【符号の説明】
【0063】
C…非防水コネクタ
H…ワイヤハーネス
W…電線
10…コネクタ
13…ロック部
20…第一コネクタ
21…第一ハウジング
22…第一端子金具
23…第一キャビティ
24…本体部
25…第一ランス
26…第一ゴム栓
27…第一リアホルダ
28…第一嵌合面
29…ロックアーム
31…解除操作部
32…ロック保護部
33…前保護部
34…横保護部
35…ガイド溝部
36…凹部
37…周壁部
38…係止孔
40…第一突条部
41…第一縦リブ
42…第一横リブ
43…第一隔壁
44…縦隔壁
45…横隔壁
50…第二コネクタ
51…第二ハウジング
52…第二端子金具
53…第二キャビティ
54…タブ部
55…第二ランス
56…第二ゴム栓
57…第二リアホルダ
58…第二嵌合面
59…ロック突起
61…ガイド突部
62…フード部
70…第二突条部
71…第二縦リブ
72…第二横リブ
73…第二隔壁
74…縦隔壁
75…横隔壁
76…側壁部
77…前壁部
78…筒状部
80…シール部材
81…シール本体
82…係止突起
83…嵌合穴部
84…リップ
100…電線