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特許7548063ロボットハンドの制御装置、及び物品取出システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ロボットハンドの制御装置、及び物品取出システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/00 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
B25J9/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021031801
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022133011
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】角田 旭
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154254(WO,A1)
【文献】特開2000-061875(JP,A)
【文献】特開2017-109271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を回転可能に保持する保持手段を有するロボットハンドの制御装置であって、
前記物品の現在姿勢を検出する姿勢検出部と、
前記物品の前記現在姿勢と、プレイス時の前記物品の目標姿勢と、に基づいて、前記物品に対して、前記物品を前記現在姿勢から前記目標姿勢に変更する際に使用する物品側回転軸と、当該物品側回転軸を基準とした目標回転量を設定する回転軸設定部と、
前記物品側回転軸及び前記目標回転量に係る物品情報と、前記保持手段が前記物品を回転させ得る保持手段側回転軸に係る保持手段情報と、に基づいて、前記物品を前記現在姿勢から前記目標姿勢に変更するための前記保持手段の動作計画を決定する動作計画決定部と、
を備え
前記ロボットハンドは、各別に前記物品を保持し、且つ、互いに異なる方向を向く前記保持手段側回転軸を有する複数の前記保持手段を有し、
前記動作計画決定部は、前記動作計画として、前記物品情報と、前記保持手段情報と、に基づいて、複数の前記保持手段のうち、前記物品を前記現在姿勢から前記目標姿勢に変更するために使用する姿勢変更用保持手段を決定する、
制御装置。
【請求項2】
前記保持手段の前記動作計画は、前記物品が物品載置部に載置されている時に、前記姿勢検出部に検出された前記物品の前記現在姿勢に基づいて決定される、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記保持手段の前記動作計画は、前記物品が前記保持手段にて物品載置部からピックアップされた時に、前記姿勢検出部に検出された前記物品の前記現在姿勢に基づいて決定される、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
複数の前記保持手段は、それぞれの前記保持手段側回転軸が互いに直交する方向を向く3個の保持手段を含む、
請求項に記載の制御装置。
【請求項5】
複数の前記保持手段のうちの少なくとも2つの保持手段は、互いに異なる保持方法で前記物品を保持する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項6】
複数の前記保持手段は、
自身の先端部で前記物品を吸着することにより前記物品を保持し、上下方向を向く前記保持手段側回転軸を有する吸着ヘッドと、
前記物品の両側側面を挟持することにより前記物品を保持し、横方向を向く前記保持手段側回転軸を有する把持部材と、を含む、
請求項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記動作計画決定部は、前記動作計画として、前記物品情報と、複数の前記保持手段のうちの使用予定のピッキング用保持手段及び使用対象として決定した前記姿勢変更用保持手段の前記保持手段情報と、に基づいて、前記ピッキング用保持手段から前記姿勢変更用保持手段に前記物品を受け渡す際における、前記ピッキング用保持手段及び/又は前記姿勢変更用保持手段の動作を決定する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記ピッキング用保持手段から前記姿勢変更用保持手段に前記物品を受け渡す際における、前記ピッキング用保持手段及び/又は前記姿勢変更用保持手段の前記動作は、前記ピッキング用保持手段及び/又は前記姿勢変更用保持手段の回転停止位置及び/又は昇降停止位置に係る動作を含む、
請求項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記動作計画決定部は、前記動作計画として、取り出し対象の前記物品の載置状態、複数の前記保持手段それぞれの前記物品の保持方法、複数の前記保持手段それぞれの前記物品を保持する際の前記物品との接触態様、又は、複数の前記保持手段それぞれの前記物品に対してアプローチする際の可動範囲の少なくともいずれか一つの情報に基づいて、複数の前記保持手段のうちから、品載置部から前記物品をピッキングする際に使用するピッキング用保持手段を決定する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記保持手段は、前記物品を保持した状態で、前記物品の前記物品側回転軸を前記保持手段側回転軸にあわせるように、前記物品の保持位置を所定範囲内で移動可能な物品移動機構を有し、
前記動作計画決定部は、前記動作計画として、前記保持手段にて物品載置部からピックアップしたときに検出される前記物品の前記現在姿勢に基づいて、前記物品移動機構の動作を決定する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記保持手段は、前記物品の両側側面を挟持することにより前記物品を保持し、横方向を向く前記保持手段側回転軸を有する把持部材であって、
前記物品移動機構は、前記把持部材の内側側面の前記物品と接触する位置に設けられた弾性部材付きの球面モータによって構成される、
請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の制御装置を有する物品取出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットハンドの制御装置、及び物品取出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ロボットを用いたシステムとして、物品載置部(例えば、容器)に載置された物品をピックアップし、所定の保持手段にて、当該物品の姿勢を変更した上で、所定の設置対象に設置する物品取出システムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-109271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術に係る物品取出システムの多くは、取り出し対象の物品が、物品載置部に所定の姿勢で整列されていることを前提としており、物品をピックしてから、姿勢変更を行う際の保持手段の動作計画は、予め定まったものとなっている(例えば、特許文献1を参照)。そのため、従来技術に係る物品取出システムは、例えば、多数個の物品が物品載置部にばら積みされたような場面では、適切に稼働することができないという課題がある。
【0005】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、物品載置部に種々に異なる姿勢で載置された物品を、物品載置部から取り出し、目標姿勢に姿勢変更した上で保持することが可能なロボットハンドの制御装置、及び物品取出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
物品を回転可能に保持する保持手段を有するロボットハンドの制御装置であって、
前記物品の現在姿勢を検出する姿勢検出部と、
前記物品の前記現在姿勢と、プレイス時の前記物品の目標姿勢と、に基づいて、前記物品に対して、前記物品を前記現在姿勢から前記目標姿勢に変更する際に使用する物品側回転軸と、当該物品側回転軸を基準とした目標回転量を設定する回転軸設定部と、
前記物品側回転軸及び前記目標回転量に係る物品情報と、前記保持手段が前記物品を回転させ得る保持手段側回転軸に係る保持手段情報と、に基づいて、前記物品を前記現在姿勢から前記目標姿勢に変更するための前記保持手段の動作計画を決定する動作計画決定部と、
を備える制御装置である。
【0007】
又、他の局面では、
上記の制御装置を有する物品取出システムである。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るロボットハンドの制御装置によれば、物品載置部に種々に異なる姿勢で載置された物品を、物品載置部から取り出し、目標姿勢に姿勢変更した上で保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る物品取出システムの全体構成を示す図
図2】第1の実施形態に係る物品取出システムが取り出し対象とする物品の構成を示す図
図3】第1の実施形態に係る物品取出システムの制御系の構成を示す図
図4】第1の実施形態に係るロボットハンドの詳細構成を示す図
図5A】第1の実施形態に係るロボットハンドの吸着ヘッドによる物品の姿勢変更動作の一例を示す図
図5B】第1の実施形態に係るロボットハンドの吸着ヘッドによる物品の姿勢変更動作の一例を示す図
図6】ロボットハンドの把持部材による物品の姿勢変更動作の一例を示す図
図7A】第1の実施形態に係るロボットハンドの吸着ヘッドによる物品のピックアップ動作の一例を示す図
図7B】第1の実施形態に係るロボットハンドの把持部材による物品のピックアップ動作の一例を示す図
図8A】第1の実施形態に係るロボットハンドの吸着ヘッドと把持部材との間での物品の受け渡し動作について説明する図
図8B】第1の実施形態に係るロボットハンドの吸着ヘッドと把持部材との間での物品の受け渡し動作について説明する図
図8C】第1の実施形態に係るロボットハンドの吸着ヘッドと把持部材との間での物品の受け渡し動作について説明する図
図9】第1の実施形態に係る回転軸設定部の処理について説明する図
図10】第1の実施形態に係る制御部が保持手段の動作計画を決定する際の一連の処理を示すフローチャート
図11】第2の実施形態に係るロボットハンドの構成を示す図
図12A】第3の実施形態に係るロボットハンドの構成を示す図
図12B】第3の実施形態に係るロボットハンドの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
尚、各図面において、特に説明を付記しない場合には、図面中の上方向が鉛直上向きの方向を表し、図面中の下方向が鉛直下向きの方向を表し、図面中の横方向が水平方向を表すものとする。以下では、図面中の上方向を「上方向」と称し、図面中の下方向を「下方向」と称し、図面中の横方向を「横方向」と称して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
<物品取出システムの全体構成>
以下、図1図3を参照して、本発明の一実施形態に係る物品取出システムの構成について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る物品取出システム1の全体構成を示す図である。図2は、本実施形態に係る物品取出システム1が取り出し対象とする物品10の構成を示す図である。図3は、本実施形態に係る物品取出システム1の制御系の構成を示す図である。
【0014】
本実施形態に係る物品取出システム1は、物品載置部2(例えば、容器)にばら積みにされた物品群10Wから個別に物品10を取り出し、取り出した物品10を保持して運搬し、設置対象20に整列した状態で設置するためのシステムである。
【0015】
又、本実施形態に係る物品取出システム1では、ボルト部材が、物品載置部2から取り出す対象の物品10(以下、単に「物品10」と称する)となっている。物品10(ボルト部材)は、細長い脚部10aと、脚部10aの一端に形成され、脚部10aよりも幅広な頭部10bと、を有する。尚、設置対象20には、例えば、物品10の脚部10aが挿通可能な複数の穴部21が形成されており、物品取出システム1は、物品載置部2から物品10を取り出した後、物品10の姿勢を、設置対象20の穴部21の穴形状に対応する姿勢に変更した上で、物品10を設置対象20の穴部21に設置する。
【0016】
即ち、物品取出システム1は、物品載置部2に載置された様々な姿勢の物品10を取り出し、設置対象20の穴部21の穴形状に対応する目標姿勢に変更した状態で保持することが可能となっている。
【0017】
本実施形態では、設置対象20の穴部21の穴形状に対応して、頭部10bが上方を向き、脚部10aが下方を向いた姿勢が、物品10の目標姿勢となる(以下、単に、「物品10の目標姿勢」と称する)。又、本実施形態では、物品10の現在姿勢の三次元座標系における傾き度合い等を表現する上で、この目標姿勢に対応する頭部10bが上方を向き、脚部10aが下方を向いた姿勢を、「物品10の基準姿勢」とも称する。
【0018】
本実施形態に係る物品取出システム1では、ボルト部材(物品10)の重心位置を座標の中心位置として、ボルト部材(物品10)の長軸方向(物品10の上下)を、z軸と設定し、ボルト部材(物品10)のz軸に直交する短軸の二方向(物品10の前後及び左右)を、それぞれ、x軸及びy軸と設定し、ロール角(x軸を回転軸とする回転角)、ピッチ角(y軸を回転軸とする回転角)、及び、ヨー角(z軸を回転軸とする回転角)の3軸で、ボルト部材(物品10)の姿勢を表現している(図2を参照)。
【0019】
尚、ボルト部材(物品10)では、その形状特徴から、このx軸、y軸及びz軸が、物品10を安定して回転可能な回転軸(以下、「回転可能軸」とも称する)に相当する。
【0020】
物品取出システム1は、ロボットアーム30と、ロボットハンド40と、撮像部50と、制御部60と、を備える。
【0021】
<ロボットアーム>
ロボットアーム30は、例えば、垂直多関節ロボットのロボットアームであり、ロボットハンド40の位置を三次元的に変更する。ロボットアーム30は、床面等に設置される基部31と、基部31に対して直列に連結される複数のリンク32と、連結部位に設けられる複数の関節部33と、関節部33を駆動する複数の関節用モータ34(図2を参照)と、を備える。
【0022】
ロボットアーム30は、例えば、ロボットハンド40を、基準位置から上下方向、左右方向及び前後方向(図1の矢印を参照)に並進移動させ得る構成となっている。尚、ロボットアーム30は、制御部60の制御のもと、動作制御される。
【0023】
<ロボットハンド>
ロボットハンド40は、ロボットアーム30の先端部に設けられており、保持手段41、42にて、物品載置部2に載置された物品群10Wから一個ずつ物品10を取り出し、物品10を保持する。そして、ロボットハンド40は、保持手段41、42にて、物品10の姿勢を目標姿勢に変更した上で、物品10を設置対象20まで運搬して、物品10を設置対象20の穴部21にプレイスする。尚、ロボットハンド40は、制御部60の制御のもと、動作制御される。尚、本実施形態に係るロボットハンド40は、保持手段41、42として、吸着ヘッド41及び把持部材42を有する(図4を参照して後述)。
【0024】
<撮像部>
撮像部50は、例えば、カメラ装置であって、物品載置部2に載置された物品群10Wを撮像し、その撮像により得られた画像データを制御部60へ出力する。尚、撮像部50は、例えば、画像データから、物品載置部2に載置された物品10の3次元空間内での位置及び姿勢を検出し得るように、撮像位置をずらしながら複数回の撮像を実行する。又、撮像部50は、ステレオカメラやレーダ装置等、撮像部50から物品10までの距離データを取得可能な撮像装置で構成されていてもよい。
【0025】
又、撮像部50は、ロボットハンド40に保持された物品10についても、撮像し得るように配設されているのが好ましい。これによって、ロボットハンド40にて、物品載置部2から物品10をピッキングした際の物品10の姿勢の変化等を考慮した上で、ロボットハンド40の保持手段41、42の動作計画を決定することが可能となる(詳細は後述)。
【0026】
<制御部>
制御部60は、物品取出システム1の各部(ロボットアーム30、ロボットハンド40、及び撮像部50)と通信することで、これらを統括制御する。
【0027】
尚、制御部60(本発明の「制御装置」に相当)は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力ポート、及び出力ポート等を含んで構成されるマイコンである。そして、制御部60が有する機能(後述する姿勢検出部61、回転軸設定部62、及び動作計画決定部63)は、例えば、CPUがROMやRAMに格納された制御プログラムや各種データを参照することによって実現される。
【0028】
制御部60は、例えば、撮像部50から画像データを取得し、当該画像データに基づいて、物品載置部2に載置された物品群10Wのうち、一又は複数の物品10の3次元空間内での位置及び姿勢を検出する。そして、制御部60は、例えば、物品載置部2に載置された物品群10Wのうち、上部に存在する物品10を取り出し対象として決定し、当該物品10の位置及び姿勢に基づいて、ロボットアーム30及びロボットハンド40を制御する。即ち、制御部60は、かかる制御によって、ロボットハンド40に物品10を保持させ、保持した物品10を設置対象20の穴部21に設置させる。
【0029】
<ロボットハンドの詳細構成>
次に、図4図8Cを参照して、本実施形態に係るロボットハンド40の詳細構成について、説明する。
【0030】
図4は、本実施形態に係るロボットハンド40の詳細構成を示す図である。尚、図4において、P軸は、物品10を横方向(ここでは、水平方向)の軸回りに回転可能に保持する把持部材42の回転軸を表し、Q軸は、物品10を上下方向(ここでは、鉛直方向)の軸回りに回転可能に保持する吸着ヘッド41の回転軸を表す。
【0031】
ロボットハンド40は、図4に示すように、物品10を各別に回転可能に保持する複数の保持手段41、42を有する。具体的には、本実施形態に係るロボットハンド40は、各別に物品10を保持し、且つ、互いに異なる方向に物品10を回転可能に保持する吸着ヘッド41及び把持部材42を有する。
【0032】
吸着ヘッド41は、真空引き又は磁力を用いてヘッド先端に吸引力を発生させることによって、吸着ヘッド41と対向する位置に存在する物品10を吸着し、物品10を保持する。吸着ヘッド41は、例えば、ノズル状に構成され、ロボットアーム30の先端部に取り付けられたハンド基部40mの中央位置から下方に延在する。
【0033】
吸着ヘッド41は、ハンド基部40mに内蔵された吸着ヘッド旋回機構(図示せず)によって、ハンド基部40mに対して、物品10を吸着する方向の軸回り(典型的には、略上下方向の軸回り)に旋回可能となっている。具体的には、吸着ヘッド41は、ノズルの先端を回転中心として、ノズルの延在方向に沿った回転軸(図4のQ軸を参照。以下、「Q軸」又は「保持手段側回転軸Q軸」とも称する)を有する。又、吸着ヘッド41は、ハンド基部40mに内蔵されたノズル昇降機構によって、ハンド基部40mに対して昇降可能となっている。尚、吸着ヘッド41は、把持部材42を構成する左側のアーム42Aと右側のアーム42Bの間に配設され、これらの間で昇降する。
【0034】
把持部材42は、ハンド基部40mから下方に延在する一対のアーム42A、42Bにより構成され、左側のアーム42Aと右側のアーム42Bとの間で物品10の両側側面を挟持して、物品10を保持する。把持部材42は、左側のアーム42Aと右側のアーム42Bの間の横方向の距離(以下、「部材間距離」と称する)を調整する把持部材駆動機構に接続され、制御部60の制御のもと、横方向(図4のP方向)に開閉動作を行う。即ち、把持部材42は、一対のアーム42A、42Bの間隔が狭まるように動作制御されることで、物品10を両側側面から挟持し、物品10を保持する。又、把持部材42は、一対のアーム42A、42Bの間隔が拡がるように動作制御されることで、物品10の保持状態を解放する。尚、把持部材42を動作させる把持部材駆動機構は、例えば、一対のアーム42A、42Bそれぞれに接続されたリンク機構42As、42Bsと、ハンド基部40mに内蔵されたリンク機構駆動源(例えば、図示しないモータやシリンダ)と、によって構成される。
【0035】
一対のアーム42A、42Bそれぞれの先端部には、把持部材42にて物品10を保持する際に、物品10と当接する接触部42Aa、42Baが設けられている。接触部42Aa、42Baは、把持部材42の開閉方向(即ち、物品10を両側側面から挟持する方向)(図4のP軸を参照。以下、「P軸」又は「保持手段側回転軸P軸」とも称する)が回転軸となるように、アーム42A、42Bに回転自在に軸支されている。そして、接触部42Aa、42Baは、把持部材42にて把持した物品10を、P軸回りに回転させることができるように構成されている。保持手段側回転軸P軸は、例えば、横方向に延在するように設定される。尚、接触部42Aa、42Baは、例えば、一対のアーム42A、42Bそれぞれに配設されたモータ42At、42Btを駆動源として駆動する。
【0036】
接触部42Aa、42Baは、物品10の保持状態の安定性を確保するため、物品10の脚部10a側面と嵌合する凹形状(例えば、半円筒の凹形状)を呈している。そして、把持部材42が物品10を保持する際には、把持部材42は、接触部42Aa、42Baの凹形状に、物品10の脚部10aの側面を嵌め合わせるように、物品10を挟持する(図6を参照)。但し、この際、物品10の保持状態の安定性の観点から、把持部材42における物品10の挟持位置は、把持部材42の回転軸(ここでは、P軸)と物品10の回転可能軸(ここでは、x軸又はy軸)とが揃った状態となる位置となるのが好ましい。
【0037】
ここで、図5A図8Cを参照して、ロボットハンド40の吸着ヘッド41及び把持部材42を用いた物品10の姿勢変更動作について説明する。
【0038】
図5A図5Bは、本実施形態に係るロボットハンド40の吸着ヘッド41による物品10の姿勢変更動作の一例を示す図である。図6は、本実施形態に係るロボットハンド40の把持部材42による物品10の姿勢変更動作の一例を示す図である。
【0039】
図7Aは、本実施形態に係るロボットハンド40の吸着ヘッド41による物品10のピックアップ動作の一例を示す図である。図7Bは、本実施形態に係るロボットハンド40の把持部材42による物品10のピックアップ動作の一例を示す図である。
【0040】
図8A図8B図8Cは、本実施形態に係るロボットハンド40の吸着ヘッド41と把持部材42との間での物品10の受け渡し動作について説明する図である。
【0041】
ロボットハンド40は、吸着ヘッド41を用いて物品10の姿勢変更を行う際には、吸着ヘッド41のヘッド先端に物品10を保持した状態で、吸着ヘッド41をハンド基部40mに対してQ軸回りに回転させる(図5A図5Bを参照)。
【0042】
吸着ヘッド41は、ヘッド先端に発生させた吸引力により、物品10を吸着して、物品10を保持する。そのため、吸着ヘッド41を用いて物品10の姿勢変更を行う際には、物品10の保持状態は、図5Aのように、吸着ヘッド41のヘッド先端が物品10の平坦面(ここでは、物品10の頭部10bの上端面又は脚部10aの下端面)と対向し、且つ、吸着ヘッド41の回転軸(Q軸)が物品10の回転可能軸(ここでは、z軸)と一致した状態となっていることが好ましい。この場合には、物品10を途中で落下させたりするおそれなく、安定して、物品10の姿勢変更を行うことが可能である。
【0043】
但し、吸着ヘッド41は、吸引力の調整(即ち、吸引力を増大させる)によって、比較的物品10の姿勢による制約なく、物品10を保持することが可能であり、例えば、図5Bのように、吸着ヘッド41のヘッド先端が物品10の側面と対向した状態等においても、物品10を保持し、当該保持状態で物品10をQ軸回りに回転させることが可能である。
【0044】
吸着ヘッド41は、物品載置部2に載置された物品群10Wから一個ずつ物品10を取り出すことが可能に構成されている(図7Aを参照)。吸着ヘッド41にて、物品載置部2から物品10を取り出す際には、制御部60は、吸着ヘッド41をハンド基部40mから下降させ、取り出し対象の物品10に対して、吸着ヘッド41のヘッド先端をアプローチする。そして、制御部60は、吸着ヘッド41のヘッド先端と取り出し対象の物品10が対向した状態で、吸着ヘッド41の吸引力を発生させ、吸着ヘッド41に物品10を吸着させる。
【0045】
尚、吸着ヘッド41にて、物品載置部2から物品10を取り出す際には、上記したように、物品10を保持する状態の安定性の観点から、制御部60は、可能な限り、吸着ヘッド41のヘッド先端が物品10の平坦面(ここでは、物品10の頭部10bの上端面又は脚部10aの下端面)と対向し、且つ、吸着ヘッド41の回転軸(Q軸)が物品10の回転可能軸(z軸)と一致した状態となるように、吸着ヘッド41を物品10にアプローチさせる。
【0046】
一方、ロボットハンド40は、把持部材42を用いて物品10の姿勢変更を行う際には、把持部材42の回転軸(ここでは、P軸)と物品10の回転可能軸(ここでは、x軸又はy軸)とを揃えるように、把持部材42で物品10を挟持した状態で、把持部材42の接触部42Aa、42BaをP軸(ここでは、水平方向の軸)回りに回転させる(図6を参照)。
【0047】
又、把持部材42は、吸着ヘッド41と同様に、物品載置部2に載置された物品群10Wから一個ずつ物品10を取り出すことが可能に構成されている(図7Bを参照)。把持部材42にて、物品載置部2から物品10を取り出す際には、制御部60は、左側のアーム42Aと右側のアーム42Bを開いた状態として、取り出し対象の物品10に対して、左側のアーム42Aと右側のアーム42Bをアプローチする。そして、制御部60は、取り出し対象の物品10の左右両側に、左側のアーム42Aと右側のアーム42Bとが来るように、左側のアーム42Aと右側のアーム42Bを移動させる(即ち、ロボットアーム30を動作させる)。かかる状態で、制御部60は、把持部材42を閉じることで、把持部材42に物品10を把持させる。尚、把持部材42にて、物品載置部2から物品10を取り出す際には、上記したように、物品10を保持する状態の安定性の観点から、制御部60は、把持部材42の回転軸(ここでは、P軸)と物品10の回転可能軸(ここでは、x軸又はy軸)とが揃うように、把持部材42を物品10にアプローチさせる。
【0048】
尚、制御部60は、物品載置部2(容器)から物品10を取り出す際には、ばら積みされた物品群10Wから一個の物品10を、物品載置部2の平坦面に落下させ、落下させた物品10をピックアップしてもよい。
【0049】
本実施形態に係るロボットハンド40においては、吸着ヘッド41と把持部材42との間で、相互に物品10の受け渡しが可能となっている(図8A図8Cを参照)。具体的には、吸着ヘッド41は、把持部材42を構成する左側のアーム42Aと右側のアーム42Bの間に配設され、これらの間で昇降する。そして、把持部材42が物品10を保持した際には、物品10の保持位置は、吸着ヘッド41の昇降可動領域内となる。吸着ヘッド41の回転軸であるP軸と、把持部材42の回転軸であるQ軸とは、例えば、左側のアーム42Aと右側のアーム42Bの間の中心位置において、互いに交差するように設定されている。これにより、吸着ヘッド41と把持部材42との間で、相互に物品10の受け渡しが可能となっている。
【0050】
但し、吸着ヘッド41と把持部材42との間で物品10の受け渡しを行う際には、吸着ヘッド41及び把持部材42それぞれの保持方法の相違を考慮して、吸着ヘッド41及び把持部材42それぞれの動作が制御されることになる。
【0051】
例えば、本実施形態に係るロボットハンド40は、吸着ヘッド41から把持部材42に物品10を受け渡す際には、把持部材42の回転軸(ここでは、P軸)と物品10の回転可能軸(ここでは、x軸又はy軸)とが揃うように、吸着ヘッド41及び把持部材42を適切な位置に動作させた上で、物品10の受け渡し動作を行う(図6を参照)。そのため、制御部60は、例えば、吸着ヘッド41が保持する物品10の向きが上向きか又は下向きかで、図8A及び図8Bに示すように、吸着ヘッド41の昇降位置停止を変化させる(図8A及び図8Bを参照)。又、制御部60は、例えば、吸着ヘッド41が保持する物品10の向きが横向きである場合には、把持部材42の接触部42Aa、42Baの向きを回転させて、接触部42Aa、42Baの凹形状が物品10の向きに沿うようにする(図8Cを参照)。
【0052】
一方、本実施形態に係るロボットハンド40は、把持部材42から吸着ヘッド41に物品10を受け渡す際には、吸着ヘッド41の回転軸(ここでは、Q軸)と物品10の回転可能軸(ここでは、z軸)とが揃うように、吸着ヘッド41及び把持部材42を適切な位置に動作させた上で、物品10の受け渡し動作を行う(図示せず)。
【0053】
[ロボットハンドの制御方法]
次に、図4図10を参照して、ロボットハンド40の制御方法について、説明する。ロボットハンド40の動作は、上記したように制御部60により行われる。
【0054】
制御部60は、姿勢検出部61、回転軸設定部62、及び動作計画決定部63を有し、これらの機能を発現することでロボットハンド40の有する保持手段(本実施形態では、吸着ヘッド41及び把持部材42)の動作計画を決定し、当該動作計画に基づいて、ロボットハンド40を動作させる。
【0055】
図9は、本実施形態に係る回転軸設定部62の処理について説明する図である。
【0056】
図10は、本実施形態に係る制御部60が保持手段41、42の動作計画を決定する際の一連の処理を示すフローチャートである。
【0057】
姿勢検出部61は、例えば、撮像部50から取得する画像データに基づいて、物品10の現在姿勢を検出する。この際、姿勢検出部61は、例えば、物品載置部2に載置されている物品群10Wのうちから、保持手段41、42にて保持可能な位置に存在する物品10(例えば、最上部に存在する物品10)を、取り出し対象の物品10として特定し、取り出し対象の物品10の姿勢を検出する。そして、姿勢検出部61は、検出された物品10の現在姿勢に係る情報を、回転軸設定部62(及び動作計画決定部63)に受け渡す。
【0058】
但し、物品10は、保持手段41、42にて物品載置部2からピックアップされた時(特に、吸着ヘッド41を用いた場合)に、姿勢変化する場合がある。又、物品10の姿勢は、物品10がばら積み状態で載置されているときには、周囲物体の存在により、正確に検出できない場合がある。かかる観点から、姿勢検出部61は、保持手段41、42にて物品載置部2から物品10をピックアップしたときの物品10の現在姿勢を検出し、回転軸設定部62及び動作計画決定部63は、保持手段41、42にて物品載置部2からピックアップされたときの物品10の現在姿勢に基づいて、保持手段41、42の動作計画を決定する処理を実行してもよい。
【0059】
尚、物品載置部2に載置されている状態における物品10の姿勢を正確に検出できない場合には、制御部60は、例えば、物品10の一部の位置(例えば、物品10の上面の位置)の位置情報のみに基づいて、物品10を、吸着ヘッド41にてピックアップしてもよい。
【0060】
回転軸設定部62は、姿勢検出部61に検出された物品10の現在姿勢と、プレイス時の物品10の目標姿勢と、に基づいて、物品10に対して、物品10を現在姿勢から目標姿勢に変更するために使用する回転軸(以下、「使用回転軸」又は「物品側回転軸」と称する)を設定する。又、回転軸設定部62は、この使用回転軸を基準に、物品10を現在姿勢から目標姿勢に変更するために物品10を回転させる目標回転量を設定する。
【0061】
一般に、物品10を安定して回転可能な回転軸(即ち、回転可能軸)の位置及び方向は、物品10の形状と、物品10の重心位置に依拠して定まる。例えば、本実施形態の取り出し対象の物品10であるボルトについては、物品10の軸芯位置における物品10の長軸方向(z軸)と、物品10の重心位置における物品10の短軸方向(x軸、y軸)と、が回転可能軸となる(図2を参照)。かかる物品10の回転可能軸は、例えば、予め物品10の種別毎に、ユーザによって設定される。そのため、本実施形態に係る回転軸設定部62は、例えば、物品10の現在姿勢と、プレイス時の物品10の目標姿勢と、に基づいて、物品10に予め設定された回転可能軸のうちから、物品10の姿勢変更のために使用する使用回転軸を選択して、当該使用回転軸を回転中心とした目標回転量を設定する構成となっている。
【0062】
ここで、「プレイス時の物品10の目標姿勢」とは、上記したように、例えば、ロボットハンド40にて物品10を設置対象20にプレイスする際の姿勢である。本実施形態に係る目標姿勢は、上記したように、物品10の長軸が鉛直方向に沿った方向であり、且つ、物品10の頭部10bが鉛直上方向を向いた姿勢(即ち、物品10に設定されたz軸のプラス方向が鉛直上向きを向く姿勢)である。
【0063】
尚、物品10は、物品載置部2に載置されているときには、取り出し対象の物品10毎に、種々に異なる姿勢を取っている。そのため、物品10を、物品載置部2からピッキングしてから、目標姿勢に変更する際には、取り出し対象の物品10毎に、保持手段41、42にて、異なる方向に異なる回転量分を回転させる必要がある。
【0064】
そこで、回転軸設定部62は、例えば、物品10のxyzの回転3軸について、現在姿勢と目標姿勢との差(即ち、ロール角、ピッチ角、及びヨー角の差)を算出することで、使用回転軸及び当該使用回転軸を回転中心とした必要な目標回転量を設定する。例えば、図9の態様では、物品10の現在姿勢においては、物品10のz軸のプラス方向が鉛直方向からy軸回りに傾いた状態となっているため、回転軸設定部62は、y軸を使用回転軸として設定すると共に、物品10のz軸のプラス方向のy軸回りのその傾き角を目標回転量として設定する。
【0065】
動作計画決定部63は、回転軸設定部62に設定された使用回転軸及び当該使用回転軸を基準とした目標回転量に係る物品10の情報と、ロボットハンド40が有する保持手段41、42が物品10を回転させ得る保持手段側回転軸(ここでは、P軸及びQ軸)に係る保持手段41、42の情報(ここでは、吸着ヘッド41及び把持部材42に係る情報)と、に基づいて、物品10を現在姿勢から目標姿勢に変更するまでの間の保持手段41、42の動作計画を決定する。
【0066】
尚、動作計画決定部63が参照する保持手段情報は、予め制御部60が有する記憶部(例えば、ROM)に記憶されている。かかる保持手段情報としては、複数の保持手段41、42それぞれの回転軸(ここでは、P軸及びQ軸)の回転方向、複数の保持手段41、42それぞれの物品10の保持方法、複数の保持手段41、42それぞれに所望の動作を実行させるために必要な機構情報、複数の保持手段41、42それぞれの物品10を保持する際の物品10との接触態様(例えば、接触面積及び接触角度)、及び、複数の保持手段41、42それぞれの物品10に対してアプローチする際の可動範囲等、種々の情報が含まれていてよい。又、制御部60が有する記憶部には、その他、物品10の情報として、物品10のサイズや形状の情報等が含まれていてもよい。
【0067】
動作計画決定部63が決定する保持手段41、42の動作計画としては、例えば、(1)ロボットハンド40が有する複数の保持手段41、42(ここでは、吸着ヘッド41及び把持部材42)のうち、物品10を現在姿勢から目標姿勢に変更するために使用する姿勢変更用保持手段(以下、「姿勢変更用保持手段」と略称する)を特定する情報、(2)ロボットハンド40が有する複数の保持手段41、42(ここでは、吸着ヘッド41及び把持部材42)のうち、物品載置部2に載置された物品10をピッキングするために使用するピッキング用保持手段(以下、「ピッキング用保持手段」と略称する)を特定する情報、(3)ピッキング用保持手段から姿勢変更用保持手段に受け渡す際における、ピッキング用保持手段及び/又は姿勢変更用保持手段の動作に係る情報、等を含む。
【0068】
動作計画決定部63は、物品載置部2に載置されている物品10の姿勢が種々に異なることを考慮して、例えば、取り出し対象の物品10の現在姿勢(物品載置部2に載置されているときの物品10の現在姿勢、又は、物品載置部2からピックアップしたときの物品10の現在姿勢)に応じて、これらの動作計画を毎回決定する。
【0069】
ここで、動作計画決定部63が、毎回の動作計画として、複数の保持手段41、42のうちから姿勢変更用保持手段を決定するのは、物品載置部2に載置されている物品10の姿勢が種々に異なり、且つ、複数の保持手段41、42それぞれで物品10を回転可能な方向が異なるためである。本実施形態に係るロボットハンド40では、吸着ヘッド41は、鉛直方向の軸回り(Q軸回り)に、物品10を回転させる機構であるのに対して、把持部材42は、水平方向の軸回り(P軸回り)に、物品10を回転させる機構である(図5A図5B図6を参照)。そのため、動作計画決定部63は、回転軸設定部62に設定された使用回転軸に対応させて、複数の保持手段41、42のうちから姿勢変更用保持手段を決定することになる。
【0070】
例えば、図9のように、回転軸設定部62に設定された使用回転軸がy軸である場合には、物品10を現在姿勢から目標姿勢に変更するためには、水平方向の軸回りに物品10を回転させる必要がある。そのため、動作計画決定部63は、図9の態様では、把持部材42を、姿勢変更用保持手段として決定すると共に、把持部材42を用いた回転量を回転軸設定部62に設定された目標回転量に決定する。
【0071】
又、ここで、動作計画決定部63が、毎回の動作計画として、複数の保持手段41、42のうちからピッキング用保持手段を決定するのは、物品10の載置状態等に応じて、複数の保持手段41、42それぞれで、ピッキング時の失敗率が変化するためである。例えば、把持部材42は、物品10を両側側面から挟持することで物品10を保持するため(図7Bを参照)、物品10を安定した状態で保持できる反面、把持部材42が可動し得る領域、把持部材42が取り得る姿勢、及び、把持部材42そのものが占有する領域等の関係から、物品載置部2からピッキングし得る対象の物品10には制限がある。この点、吸着ヘッド41は、ヘッド先端で物品10の一側面を吸着することにより、物品載置部2から物品10をピッキングすることが可能であるため(図7Aを参照)、物品10の姿勢によらず、比較的自由に物品載置部2から物品10をピッキングし得る。但し、吸着ヘッド41は、保持した状態の物品10の姿勢によっては、保持状態の安定性に欠くことになる。
【0072】
かかる観点から、動作計画決定部63は、例えば、物品載置部2に載置された物品10の載置状態(例えば、物品10の姿勢及び物品10の周囲物体の存在)、複数の保持手段41、42それぞれの物品10の保持方法、複数の保持手段41、42それぞれの物品10を保持する際の物品10との接触態様(例えば、接触面積及び接触角度)、及び、複数の保持手段41、42それぞれの物品10に対してアプローチする際の可動範囲等に基づいて、複数の保持手段41、42のうちから、ピッキング用保持手段を決定する。但し、動作計画決定部63は、必ずしも上記要素の全部を考慮して、ピッキング用保持手段を決定する必要はなく、上記要素のうちの少なくともいずれかの要素のみを考慮して、ピッキング用保持手段を決定してもよい。そして、動作計画決定部63は、決定したピッキング用保持手段と、物品載置部2に載置された物品10の位置及び姿勢に基づいて、決定したピッキング用保持手段の物品10へのアプローチ方法(例えば、ロボットハンド40の位置)を決定する。
【0073】
例えば、図9のように、物品10の現在姿勢が、物品10の基準姿勢から大きく傾いた状態である場合、把持部材42でのピッキングは、把持部材42(接触部42Aa、42Ba)との接触態様の点で困難性を伴う。そのため、動作計画決定部63は、図9の態様では、吸着ヘッド41をピッキング用保持手段として決定する。そして、動作計画決定部63は、例えば、吸着ヘッド41のノズル先端が物品10の側面の重心位置に対向するように、ロボットハンド40を移動させる、という動作計画を決定することになる。
【0074】
又、ここで、動作計画決定部63が、毎回の動作計画として、ピッキング用保持手段から姿勢変更用保持手段に受け渡す際における、ピッキング用保持手段及び/又は姿勢変更用保持手段の動作を決定するのは、上記のように、毎回、姿勢変更用保持手段、ピッキング用保持手段、及び、ピッキングされた際の物品10の姿勢等が異なるためである。
【0075】
尚、ピッキング用保持手段から姿勢変更用保持手段に物品10を受け渡す際における、ピッキング用保持手段及び/又は姿勢変更用保持手段の動作に係る情報は、例えば、ピッキング用保持手段及び/又は姿勢変更用保持手段の回転停止位置及び/又は昇降停止位置に係る情報を含む(図8A図8Cを参照)。
【0076】
例えば、図9の態様では、上記したように、吸着ヘッド41がピッキング用保持手段として決定され、把持部材42が姿勢変更用保持手段として決定される。この際、動作計画決定部63は、吸着ヘッド41から把持部材42に対して、物品10を受け渡すための動作を決定することになる。動作計画決定部63は、例えば、図8Cに示すように、吸着ヘッド41にて物品10を所定量回転させた後、把持部材42の接触部42Aa、42Baを所定量回転させ、物品10の保持位置が把持部材42の接触部42Aaと接触部42Baの間に位置するように、吸着ヘッド41を所定量下降させる、という動作計画を決定することになる。
【0077】
尚、動作計画決定部63が、毎回の動作計画として、決定する対象等は、種々に変更可能である。
【0078】
動作計画決定部63は、例えば、毎回の動作計画として、複数の保持手段41、42のうち、物品載置部2に載置された物品10をピッキングした後、設置対象20に設置するために使用する設置用保持手段についても、決定してもよい。但し、本実施形態に係る物品取出システム1では、物品10を上方から下方に押し込むプッシャーとしての動作は、吸着ヘッド41のみが可能な動作であるため、設置用保持手段としては、吸着ヘッド41が一意に決定される。
【0079】
又、動作計画決定部63は、例えば、毎回の動作計画として、ピッキング用保持手段としては、吸着ヘッド41を選択してもよい。これは、吸着ヘッド41は、物品10の姿勢によらず、比較的安定に物品10をピッキングし得るためである。
【0080】
ここで、図10を参照して、制御部60が保持手段41、42の動作計画を決定する際の一連の処理について、説明する。
【0081】
ステップS1において、制御部60は、まず、初期設定を行う。このステップS1においては、制御部60は、例えば、ユーザの入力内容に基づいて、プレイス時の物品10の目標姿勢、及び、ロボットハンド40が有する保持手段41、42の情報等を設定する。
【0082】
ここで、プレイス時の物品10の目標姿勢は、例えば、設置対象20の穴部21(即ち、物品10を載置する部位)の形状に対応したものであり、物品10に設定されたz軸のプラス方向が鉛直上向きを向く姿勢に設定される。又、ロボットハンド40が有する保持手段41、42の情報は、例えば、ロボットハンド40が有する保持手段41、42の保持方法や、保持手段41、42が物品10を回転させることが可能な保持手段側回転軸(例えば、P軸及びQ軸)に係る情報等を含む。又、この際、ユーザの入力内容に基づいて、物品10の形状等を考慮した物品10の回転可能軸(例えば、本実施形態では、ボルト部材の重心位置を中心とするxyzの3軸)が設定されてもよい。
【0083】
ステップS2において、制御部60は、撮像部50から取得する画像データに基づいて、物品載置部2に載置された物品10の現在姿勢を検出する。
【0084】
ステップS3において、制御部60は、物品10のxyzの回転3軸について、現在姿勢と目標姿勢との差(即ち、ロール角、ピッチ角、及びヨー角の差)を算出する。
【0085】
ステップS4において、制御部60は、現在姿勢と目標姿勢との差から、物品10を現在姿勢から目標姿勢に姿勢変更するために使用する使用回転軸を設定すると共に、当該使用回転軸を基準とした目標回転量を設定する。
【0086】
ステップS5において、制御部60は、物品10の姿勢を特定する座標系(ここでは、物品10のxyzの回転3軸)とロボットハンド40の保持手段側回転軸を特定する座標系(ここでは、P軸及びQ軸の向く方向を特定するワールド座標系)とを合致させる。
【0087】
ステップS6において、制御部60は、回転軸設定部62にて設定された使用回転軸と、保持手段41、42それぞれが物品10を回転させ得る保持手段側回転軸との対応関係を特定することで、保持手段41、42のうちから姿勢変更用保持手段を決定する。又、この際、制御部60は、姿勢変更用保持手段を用いた回転量を、回転軸設定部62に設定された目標回転量に決定する。
【0088】
ステップS7において、制御部60は、物品載置部2に載置された物品10の載置状態、保持手段41、42それぞれの物品10の保持方法、保持手段41、42それぞれの物品10を保持する際の物品10との接触態様、及び、複数の保持手段41、42それぞれの物品10に対してアプローチする際の可動範囲等の情報に基づいて、ピックアップ用保持手段を決定する。
【0089】
ステップS8において、制御部60は、ピックアップ用保持手段から姿勢変更用保持手段への物品10の受け渡し動作を決定する。この受け渡し動作は、例えば、ピッキング用保持手段及び/又は姿勢変更用保持手段の回転及び/又は昇降に係る動作である(図8A図8Cを参照)。
【0090】
ステップS9において、制御部60は、姿勢変更用保持手段からプレイス用保持手段への物品10の受け渡し動作を決定する。この受け渡し動作は、例えば、ピックアップ用保持手段から姿勢変更用保持手段への物品10の受け渡し動作と同様に、姿勢変更用保持手段及び/又はプレイス用保持手段の回転及び/又は昇降に係る動作である。
【0091】
尚、ステップS9の後、制御部60は、プレイス用保持手段にて物品10を設置対象20に設置する際の動作を決定する処理を行ってもよい。
【0092】
以上のような制御部60の一連の処理にて、物品取出システム1は、物品載置部2に載置された物品群10Wから物品10を取り出し、物品10の姿勢を変更して、物品10を設置対象20に設置する。
【0093】
[効果]
以上のように、本実施形態に係るロボットハンド40の制御装置60は、
物品10の現在姿勢を検出する姿勢検出部61と、
姿勢検出部61に設定された物品10の現在姿勢と、プレイス時の物品10の目標姿勢と、に基づいて、物品10に対して、物品10を現在姿勢から目標姿勢に変更する際に使用する物品側回転軸と、当該物品側回転軸を基準とした目標回転量を設定する回転軸設定部62と、
回転軸設定部62に設定された物品側回転軸及び目標回転量に係る物品情報と、保持手段41、42が物品10を回転させ得る保持手段側回転軸に係る保持手段情報と、に基づいて、物品10を現在姿勢から目標姿勢に変更するための保持手段41、42の動作計画を決定する動作計画決定部63と、
を有する。
【0094】
従って、本実施形態に係るロボットハンド40の制御装置60によれば、物品10が、物品載置部2にばら積み状態で載置されていた場合であっても、物品載置部2から物品10を1つずつ取り出し、目標姿勢に変更した上で、設置対象20にプレイスすることが可能である。
【0095】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係るロボットハンド40の構成を示す図である。
【0096】
本実施形態に係るロボットハンド40は、物品10を回転可能に保持する保持手段41、42として、吸着ヘッド41と把持部材42(以下では、「第1把持部材42」と称する)に加えて、第2把持部材43を有する点で、第1の実施形態に係るロボットハンド40と相違する。尚、第1の実施形態と共通する構成については、説明を省略する(以下、他の実施形態についても同様)。
【0097】
第1の実施形態に係るロボットハンド40では、保持手段41、42として、吸着ヘッド41と第1把持部材42のみを有する構成であったため、物品10の姿勢を変更する際の回転方向がQ軸回り及びP軸回りに制限されるものとなっている。又、第1の実施形態に係るロボットハンド40では、把持部材42にて、物品10を物品載置部2からピックアップする際にも、水平方向のうち、P軸の軸線方向と異なる方向については、ピックアップするのが困難である。
【0098】
かかる観点から、本実施形態に係るロボットハンド40は、Q軸及びP軸と異なる方向を向く回転軸を有する保持手段41、42として、第2把持部材43を有する。第2把持部材43は、例えば、Q軸及びP軸と直交する方向を向くR軸を回転軸とする把持部材である。第2把持部材43は、例えば、第1把持部材42と同様に、一対のアーム43A、43Bによって構成される。そして、第2把持部材43は、第1把持部材42と同様に、一対のアーム43A、43Bの先端に回転可能に軸支された接触部を有し、当該接触部を回転軸として、物品10を回転可能に保持する。
【0099】
又、本実施形態に係る物品取出システム1では、制御部60は、ロボットハンド40が吸着ヘッド41、第1把持部材42及び第2把持部材43の3つの保持手段41、42、43を有するものとして認識し、これら3つの保持手段41、42、43を用いた動作計画を決定し得るように構成されている。即ち、制御部60が有する記憶部(例えば、ROM)には、保持手段情報として、吸着ヘッド41、第1把持部材42及び第2把持部材43それぞれの情報が記憶され、制御部60(動作計画決定部63)は、当該情報に基づいて、姿勢変更用保持手段を決定し、ピックアップ用保持手段を決定し、加えて、姿勢変更用保持手段からピックアップ用保持手段への物品10の受け渡し動作を決定する。
【0100】
以上のように、本実施形態に係る物品取出システム1によれば、より柔軟に物品10の姿勢を変更することが可能であり、又、本実施形態に係る物品取出システム1によれば、より多様な保持手段から物品10のピックアップを行う際に有効な保持手段(例えば、物品10を保持した際の脱落率が低い保持手段)や、姿勢変更を行う際に有効な保持手段(例えば、ロボットアーム30及びロボットハンド40の不要な動作を少なくすることが可能な保持手段)を選択することが可能である。
【0101】
これによって、物品10を物品載置部2からピックアップしてから目標姿勢に変更して、設置対象20にプレイスするまでの工程の作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0102】
(第3の実施形態)
図12A図12Bは、第3の実施形態に係るロボットハンド40の構成を示す図である。尚、図12A図12Bは、把持部材42が有する物品移動機構44の構成を拡大図により示している。
【0103】
本実施形態に係るロボットハンド40は、保持手段41、42(ここでは、把持部材42)が、物品10を保持した状態で、物品10の使用回転軸を保持手段側回転軸にあわせるように、物品10の保持位置を所定範囲内で移動可能な物品移動機構44を有する点で、第1の実施形態に係るロボットハンド40と相違する。
【0104】
第1の実施形態に係るロボットハンド40では、保持手段41、42の回転軸(P軸及びQ軸)が固定されており、物品載置部2に載置された物品10の姿勢が、P軸及び/又はQ軸の軸線方向に沿ったものでない場合には、保持手段41、42にて物品10を保持した際の物品10の姿勢が、保持手段41、42の回転軸の軸線方向から傾いたものとなるおそれがある。その結果、保持手段41、42で物品10を保持した際に、保持手段41、42の回転軸(P軸又はQ軸)と物品10側の使用回転軸(x軸、y軸又はz軸)とが位置ずれしてしまうおそれがある(例えば、図12Aを参照)。
【0105】
かかる観点から、本実施形態に係るロボットハンド40は、把持部材42が、物品10の保持位置をオフセットするための物品移動機構44を有する構成となっている。物品移動機構44は、任意の構成であってよいが、例えば、弾性部材44Aa、44Ba付きの球面モータ44A、44Bによって構成される。
【0106】
より詳細には、本実施形態に係る物品移動機構44は、把持部材42を構成する一対のアーム42A、42Bそれぞれの接触部42Aa、42Baの内側に設けられた弾性部材44Aa、44Ba付きの球面モータ44A、44Bによって実現されている。ここでは、球面モータ44A、44Bは、物品10と当接させる部材たる弾性部材44Aa、44Baを上下にずらすことが可能となっている。
【0107】
つまり、一対のアーム42A、42Bそれぞれの接触部42Aa、42Baは、弾性部材44Aa、44Baを介して、物品10を両側から挟持する。物品移動機構44は、この状態で、例えば、一方のアーム42Aの球面モータ44Aが、弾性部材44Aaの位置を上方向に移動させ、他方のアーム42Bの球面モータ44Bが、弾性部材44Baの位置を下方向に移動させる。これによって、弾性部材44Aa及び44Baが弾性変形し、弾性部材44Aa及び44Baの間に保持された物品10の保持角度が元の状態(図12A)から、水平方向側に傾くことになる(図12B)。即ち、これによって、物品10の使用回転軸(ここでは、x軸)の位置を、把持部材42の回転軸の位置(ここでは、P軸)に揃えることが可能となる。
【0108】
物品移動機構44は、ロボットハンド40の他の構成と同様に、制御部60のもと、動作制御される。制御部60は、例えば、撮像部50から得られる画像データに基づいて、保持手段41、42に保持された物品10の姿勢を検出し、保持手段側回転軸と使用回転軸とが位置ずれしているか否かを判定する。そして、制御部60は、保持手段側回転軸と使用回転軸とが位置ずれしている場合には、使用回転軸を保持手段側回転軸にあわせるように、物品移動機構44を動作させる(図12Bを参照)。そして、制御部60は、使用回転軸を保持手段側回転軸にあわせた状態で、保持手段41、42における物品10の姿勢変更動作を実行する。尚、制御部60が有する記憶部(例えば、ROM)には、予め物品移動機構44の機構情報について記憶され、制御部60は、かかる機構情報に基づいて、物品移動機構44を動作制御する。
【0109】
以上のように、本実施形態に係る物品取出システム1によれば、より柔軟に物品10の姿勢を変更することが可能となる。これによって、保持手段41、42にて姿勢変更した際の物品10の姿勢を、より正確に目標姿勢に一致させることが可能となる。又、これによって、保持手段41、42での物品10の保持状態の安定性を向上することも可能である。
【0110】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形態様が考えられる。
【0111】
上記実施形態では、物品10の一例として、ボルト部材を示したが、本発明において、物品10は、ボルト部材以外の任意の物品であってよく、例えば、L字状の留具、キャップ、棒状部材の一部に筒状部材を取り付けたもの、キャップ等であってもよい。
【0112】
又、上記実施形態では、ロボットハンド40が有する保持手段の一例として、吸着ヘッド41と把持部材42とを示したが、本発明において、ロボットハンド40が有する保持手段の構成は、種々に変更可能である。例えば、ロボットハンド40は、複数の把持部材のみで構成されてもよい。他方、ロボットハンド40が有する保持手段は、複数個に限らず、一個のみであってもよい。ロボットハンド40が有する保持手段が一個のみであっても、制御部60は、物品10の現状姿勢に応じて、保持手段のアプローチ方法等に関する動作計画を決定する必要があるためである。
【0113】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示に係るロボットハンドの制御装置によれば、物品載置部に種々に異なる姿勢で載置された物品を、物品載置部から取り出し、目標姿勢に姿勢変更した上で保持することが可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 物品取出システム
2 物品載置部
10 物品
10W 物品群
20 設置対象
30 ロボットアーム
40 ロボットハンド
40m ハンド基部
41 吸着ヘッド(保持手段)
42 第1把持部材(保持手段)
42A、42B アーム
43 第2把持部材(保持手段)
44 物品移動機構
50 撮像部
60 制御部
61 姿勢検出部
62 回転軸設定部
63 動作計画決定部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12A
図12B