(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】溶液調製装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61M1/16 163
A61M1/16 173
(21)【出願番号】P 2021032260
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 満隆
(72)【発明者】
【氏名】藤井 篤
(72)【発明者】
【氏名】斎尾 英俊
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-117396(JP,A)
【文献】特開2007-117886(JP,A)
【文献】国際公開第2017/080970(WO,A1)
【文献】国際公開第96/30749(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに、溶媒と、ブドウ糖および電解質を含む溶質とを添加して、溶液を調製するための溶液調製装置であって、
前記タンクに溶質を投入するために駆動する駆動ユニットを備え、
溶質の前記タンクへの投入量は、前記駆動ユニットが駆動される時間に応じて増加し、
前記駆動ユニットの駆動を制御する制御ユニットをさらに備え、
前記制御ユニットは、
前記駆動ユニットの第1モードでの駆動を開始し、
前記タンク内の溶液のブドウ糖濃度が第1閾値に到達したときの前記溶液の電気伝導率である特定電気伝導率の値に基づいて、補正値を特定し、
前記タンク内の溶液の電気伝導率に前記補正値を適用した値が第2閾値に到達したことに応じて、前記駆動ユニットの駆動を、前記第1モードから、前記第1モードよりも単位時間あたりに投入される溶質の量が少ない第2モードへ切替える、溶液調製装置。
【請求項2】
前記補正値は、前記特定電気伝導率が所与の基準値に近づくように、前記特定電気伝導率を補正する、請求項1に記載の溶液調製装置。
【請求項3】
前記補正値は、
前記タンク内の溶液のブドウ糖濃度が前記第1閾値に到達したときの前記タンク内の溶液の温度が所与の温度より高い場合には、前記特定電気伝導率の値が高くなるように、前記特定電気伝導率を補正し、
前記タンク内の溶液のブドウ糖濃度が前記第1閾値に到達したときの前記タンク内の溶液の温度が前記所与の温度より低い場合には、前記特定電気伝導率の値が低くなるように、前記特定電気伝導率を補正する、請求項1に記載の溶液調製装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、
前記駆動ユニットの駆動を前記第2モードへ切替えた後、前記タンク内の溶液の電気伝導率が第3閾値に到達したことに応じて、前記駆動ユニットの駆動を停止し、
前記駆動ユニットの駆動を停止した後の前記タンク内の溶液のブドウ糖濃度を出力する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の溶液調製装置。
【請求項5】
前記ブドウ糖濃度を出力することは、前記駆動ユニットの駆動を停止した後の前記タンク内の溶液のブドウ糖濃度が所与の値に対して一定の値以上の差異を有する場合に、異常報知を出力することを含む、請求項4に記載の溶液調製装置。
【請求項6】
タンクに、溶媒と、ブドウ糖および電解質を含む溶質とを添加して、溶液を調製するための溶液調製装置の制御方法であって、
前記タンクに溶質を投入する駆動ユニットの第1モードでの駆動を開始するステップと、
前記タンク内の溶液のブドウ糖濃度が第1閾値に到達したときの前記溶液の電気伝導率である特定電気伝導率の値に基づいて、補正値を特定するステップと、
前記タンク内の溶液の電気伝導率に前記補正値を適用した値が第2閾値に到達したことに応じて、前記駆動ユニットの駆動を、前記第1モードから、前記第1モードよりも単位時間あたりに投入される溶質の量が少ない第2モードへ切替えるステップと、を備える、溶液調製装置の制御方法。
【請求項7】
前記補正値は、前記特定電気伝導率が所与の基準値に近づくように、前記特定電気伝導率を補正する、請求項6に記載の溶液調製装置の制御方法。
【請求項8】
前記補正値は、
前記タンク内の溶液のブドウ糖濃度が前記第1閾値に到達したときの前記タンク内の溶液の温度が所与の温度より高い場合には、前記特定電気伝導率の値が高くなるように、前記特定電気伝導率を補正し、
前記タンク内の溶液のブドウ糖濃度が前記第1閾値に到達したときの前記タンク内の溶液の温度が前記所与の温度より低い場合には、前記特定電気伝導率の値が低くなるように、前記特定電気伝導率を補正する、請求項6に記載の溶液調製装置の制御方法。
【請求項9】
前記駆動ユニットの駆動を前記第2モードへ切替えた後、前記タンク内の溶液の電気伝導率が第3閾値に到達したことに応じて、前記駆動ユニットの駆動を停止するステップと、
前記駆動ユニットの駆動を停止した後の前記タンク内の溶液のブドウ糖濃度を出力するステップと、をさらに備える、請求項6~請求項8のいずれか1項に記載の溶液調製装置の制御方法。
【請求項10】
前記ブドウ糖濃度を出力するステップは、前記駆動ユニットの駆動を停止した後の前記タンク内の溶液のブドウ糖濃度が所与の値に対して一定の値以上の差異を有する場合に、異常報知を出力することを含む、請求項9に記載の溶液調製装置の制御方法。
【請求項11】
前記制御ユニットは、前記タンク内の溶液の温度が特定の温度以下である場合には、前記タンク内の溶液の電気伝導率が前記第2閾値に到達したことに応じて、前記駆動ユニットの駆動を、前記第1モードから前記第2モードへ切替える、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の溶液調製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非電解質を含む溶質を利用した電解質溶液の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液の調製において、溶媒を収容するタンクに溶質を徐々に投入して、溶液における溶質の濃度が調節される。たとえば、特開2001-218835号公報(特許文献1)は、スクリューフィーダを利用して、溶質を徐々にタンクに投入する透析液調製装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶質が電解質を含む場合、溶質の投入を停止するタイミングや、単位時間あたりの投入量を低下させるタイミングは、溶液の電気伝導率に基づいて決定され得る。より具体的には、溶液の電気伝導率が予め定められた特定の値に到達したときに、上記タイミングが到来したと判断される。
【0005】
ところで、電解質が溶解すると溶液の電気伝導率は上昇するが、ブドウ糖等の非電解質が溶解すると溶液の電気伝導率は低下する。そして、溶質が電解質だけでなくブドウ糖などの非電解質を含む場合、単純に電気伝導率に基づいて上記タイミングを決定したときに、溶液における最終的な溶質の濃度が所望のものとならない事態が想定される。
【0006】
たとえば、溶質における非電解質の粒径が比較的小さい場合、溶質に含まれる非電解質の溶解は比較的早期に平衡に達する。このような場合、非電解質の溶解が溶液の電気伝導度を低下させるという効果は、溶質の投入から比較的早期に、溶液の電気伝導率の測定値に現れることになる。したがって、溶液の調製において、溶液の電気伝導率が上記特定の値に到達したことに応じて溶質の投入を停止すると、調製された溶液における溶質の濃度が所望の濃度よりも低いという事態が生じ得る。
【0007】
一方、溶質における非電解質の粒径が比較的大きい場合、溶質に含まれる非電解質の溶解が平衡に達するまでには比較的長い時間を要する。このような場合、非電解質の溶解が溶液の電気伝導度を低下させるという効果が溶液の電気伝導率の測定値に現れるタイミングは、遅くなる。したがって、溶液の調製において、溶液の電気伝導率が上記特定の値に到達したことに応じて溶質の投入を停止すると、調製された溶液における溶質の濃度が所望の濃度よりも高いという事態が生じ得る。
【0008】
非電解質の溶解度は温度によって異なる場合もある。これにより、溶質の濃度が同じであっても、溶液の温度が異なれば、溶液の電気伝導率の値に差異が生じ得る。たとえば、0℃から70℃程度の温度範囲において、塩化ナトリウムなどの一般的な電解質の溶解度は大きく変化しない一方で、ブドウ糖の溶解度は溶液の温度が高くなるほど高くなる。これにより、溶質の濃度が同じであっても、溶質の温度が高いほど、当該溶液の電気伝導率は低くなることが想定される。したがって、溶液の温度が変化した場合にも、電気伝導率に基づいて上記タイミングを決定したときに、溶液における最終的な溶質の濃度が所望のものとならない事態が想定される。
【0009】
本開示は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、溶液の調製に利用される溶質が電解質だけでなく非電解質(ブドウ糖)も含む場合に、溶質の投入量を適切に調節するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のある局面に従うと、タンクに、溶媒と、ブドウ糖および電解質を含む溶質とを添加して、溶液を調製するための溶液調製装置であって、タンクに溶質を投入するために駆動する駆動ユニットを備え、溶質のタンクへの投入量は、駆動ユニットが駆動される時間に応じて増加し、駆動ユニットの駆動を制御する制御ユニットをさらに備え、制御ユニットは、駆動ユニットの第1モードでの駆動を開始し、タンク内の溶液のブドウ糖濃度が第1閾値に到達したときの溶液の電気伝導率である特定電気伝導率の値に基づいて、補正値を特定し、タンク内の溶液の電気伝導率に補正値を適用した値が第2閾値に到達したことに応じて、駆動ユニットの駆動を、第1モードから、第1モードよりも単位時間あたりに投入される溶質の量が少ない第2モードへ切替える、溶液調製装置が提供される。
【0011】
補正値は、特定電気伝導率が所与の基準値に近づくように、特定電気伝導率を補正してもよい。
【0012】
補正値は、タンク内の溶液のブドウ糖濃度が第1閾値に到達したときのタンク内の溶液の温度が所与の温度より高い場合には、特定電気伝導率の値が高くなるように、特定電気伝導率を補正し、タンク内の溶液のブドウ糖濃度が第1閾値に到達したときのタンク内の溶液の温度が所与の温度より低い場合には、特定電気伝導率の値が低くなるように、特定電気伝導率を補正してもよい。
【0013】
制御ユニットは、駆動ユニットの駆動を第2モードへ切替えた後、タンク内の溶液の電気伝導率が第3閾値に到達したことに応じて、駆動ユニットの駆動を停止し、駆動ユニットの駆動を停止した後のタンク内の溶液のブドウ糖濃度を出力してもよい。
【0014】
ブドウ糖濃度を出力することは、駆動ユニットの駆動を停止した後のタンク内の溶液のブドウ糖濃度が所与の値に対して一定の値以上の差異を有する場合に、異常報知を出力することを含んでいてもよい。
【0015】
本開示の他の局面に従うと、タンクに、溶媒と、ブドウ糖および電解質を含む溶質とを添加して、溶液を調製するための溶液調製装置の制御方法であって、タンクに溶質を投入する駆動ユニットの第1モードでの駆動を開始するステップと、タンク内の溶液のブドウ糖濃度が第1閾値に到達したときの溶液の電気伝導率である特定電気伝導率の値に基づいて、補正値を特定するステップと、タンク内の溶液の電気伝導率に補正値を適用した値が第2閾値に到達したことに応じて、駆動ユニットの駆動を、第1モードから、第1モードよりも単位時間あたりに投入される溶質の量が少ない第2モードへ切替えるステップと、を備える、溶液調製装置の制御方法が提供される。
【0016】
補正値は、特定電気伝導率が所与の基準値に近づくように、特定電気伝導率を補正してもよい。
【0017】
補正値は、タンク内の溶液のブドウ糖濃度が第1閾値に到達したときのタンク内の溶液の温度が所与の温度より高い場合には、特定電気伝導率の値が高くなるように、特定電気伝導率を補正し、タンク内の溶液のブドウ糖濃度が第1閾値に到達したときのタンク内の溶液の温度が所与の温度より低い場合には、特定電気伝導率の値が低くなるように、特定電気伝導率を補正してもよい。
【0018】
溶液調製装置の制御方法は、駆動ユニットの駆動を第2モードへ切替えた後、タンク内の溶液の電気伝導率が第3閾値に到達したことに応じて、駆動ユニットの駆動を停止するステップと、駆動ユニットの駆動を停止した後のタンク内の溶液のブドウ糖濃度を出力するステップと、をさらに備えていてもよい。
【0019】
ブドウ糖濃度を出力するステップは、駆動ユニットの駆動を停止した後のタンク内の溶液のブドウ糖濃度が所与の値に対して一定の値以上の差異を有する場合に、異常報知を出力することを含んでいてもよい。
【0020】
制御ユニットは、タンク内の溶液の温度が特定の温度以下である場合には、タンク内の溶液の電気伝導率が第2閾値に到達したことに応じて、駆動ユニットの駆動を、第1モードから第2モードへ切替えてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、溶液の調製において、駆動ユニットの駆動を第1モードから第2モードに切替えるタイミングの決定に利用される電気伝導率(ブドウ糖濃度が第1閾値に到達したときの溶液の電気伝導度の検出値)が補正される。これにより、溶質に含まれるブドウ糖の溶解のし易さが粒径や温度によって影響を受けたとしても、補正によって、当該影響が抑える得る。したがって、単位時間あたりの溶質の投入量を低下させるタイミングが適切に調節され、これにより、最終的な溶質の投入量が適切に調節され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】溶液調製装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】溶液調製装置100のブロック構成を示す図である。
【
図3】溶液調製装置100において、タンク150に薬剤を投入するための制御のタイムチャートの一例を示す図である。
【
図4】タンク150への薬剤の投入量と、タンク150内の溶液の電気伝導率との関係の一例を示す図である。
【
図5】タンク150への薬剤の投入量と、タンク150内の溶液の電気伝導率との関係の他の例を示す図である。
【
図6】タンク150への薬剤の投入量と、タンク150内の溶液の電気伝導率との関係のさらに他の例を示す図である。
【
図7】タンク150における溶液の調製のために実行される処理の一例のフローチャートである。
【
図8】電気伝導率の補正値の特定の一例を説明するための図である。
【
図9】タンク150における溶液の調製のために実行される処理の他の例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る溶液調製装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0024】
本明細書では、溶液調製装置の一例として、透析治療に利用されるA液を調製する装置が説明されるが、本開示にかかる溶液調製装置によって調製され得る電解液はA液に限定せれない。本開示に係る溶液調製装置は、ブドウ糖を含む電解液であればいかなる電解液の調製にも利用され得る。
【0025】
[溶液調製装置の構成]
図1は、溶液調製装置の構成を模式的に示す図である。溶液調製装置100は、制御ユニット110と、ホッパ120と、薬剤供給装置130と、タンク150と、グルコースセンサ160と、電気伝導率計170と、ポンプ180とを含む。
【0026】
制御ユニット110は、溶液調製装置100の動作を制御する。
【0027】
ホッパ120は、タンク150に投入される薬剤(A液を調製するためのA剤)を格納する。薬剤(A剤)は、塩化ナトリウムなどの電解質とともに、非電解質としてのブドウ糖を含む。ホッパ120には、ホッパ120内の薬剤の塊を粉砕する等の目的により、ホッパ120内を撹拌する撹拌子と、当該撹拌子を駆動するモータ(たとえば、
図2を参照して後述される、クランクモータ132)とを含んでいてもよい。
【0028】
薬剤供給装置130は、ホッパ120内の薬剤をタンク150に投入する。より具体的には、薬剤供給装置130は、たとえばスクリューフィーダによって実現され、スクリューフィーダの回転のために駆動する切出しモータ131を含む。
【0029】
制御ユニット110は、切出しモータ131を駆動させることによってスクリューフィーダのスクリューを回転させ、これにより、ホッパ120内の薬剤がタンク150へ投入される。すなわち、タンク150への薬剤の投入量は、切出しモータ131の駆動時間に従い得る。
【0030】
タンク150は、調製される溶液を保持する。タンク150には、溶媒としての水が導入される。タンク150において、水に薬剤が投入されることにより、電解液が調製される。タンク150には、撹拌子と、当該撹拌子を動作させるためのモータ(後述する撹拌モータ190)とが設けられていてもよい。
【0031】
グルコースセンサ160は、タンク150内の溶液のブドウ糖濃度を検出する。グルコースセンサ160には、タンク150内の溶液の循環流路から当該溶液の一部が提供されてもよい。溶液調製装置100は、タンク150内の溶液の一部をグルコースセンサ160に提供する要素を含んでいてもよい。
【0032】
電気伝導率計170は、タンク150内の溶液の電気伝導度を検出する。電気伝導率計170には、タンク150内の溶液の循環流路から当該溶液の一部が提供されてもよい。溶液調製装置100は、タンク150内の溶液の一部を電気伝導率計170に提供する要素を含んでいてもよい。
【0033】
ポンプ180は、タンク150内の溶液を外部の貯蔵装置に供給するための駆動される。
【0034】
[溶液調製装置のブロック構成]
図2は、溶液調製装置100のブロック構成を示す図である。
【0035】
(制御ユニット110)
制御ユニット110は、プロセッサ111と、記憶装置112と、入力装置113と、出力装置114と、入出力インターフェース115とを含む。
【0036】
プロセッサ111は、記憶装置112に格納されたプログラムを実行する。記憶装置112は、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブなどによって構成される。記憶装置112は、プログラムの実行に利用される種々のデータを格納していてもよい。なお、プロセッサ111は、制御ユニット110外の記憶装置に格納されたプログラムを実行してもよい。
【0037】
入力装置113は、ユーザが溶液調製装置100に情報を入力するために利用され、たとえば、キーボード、マウス、ハードウェアボタン、および/または、タッチセンサによって実現される。
【0038】
出力装置114は、溶液調製装置100から情報を出力するために利用され、たとえば、ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ランプ、および/または、スピーカによって実現される。
【0039】
入出力インターフェース115は、溶液調製装置100内の各要素から制御ユニット110へのデータの出力、および、制御ユニット110から溶液調製装置100内の各要素へのデータの出力のための、インターフェースである。
【0040】
入出力インターフェース115は、制御ユニット110を溶液調製装置100のと通信させるための要素(たとえば、ネットワークカード)であってもよい。制御ユニット110は、出力装置114で情報を出力(画面出力および/または音声出力)する代わりに、または、出力装置114で情報を出力することに加えて、外部の出力装置に向けて情報を出力してもよい。
【0041】
(制御ユニット110と各要素との通信)
溶液調製装置100において、制御ユニット110は、切出しモータ131、クランクモータ132、ポンプ180、および、撹拌モータ190を駆動する。制御ユニット110は、また、グルコースセンサ160および電気伝導率計170のそれぞれから検出出力を取得する。
【0042】
[粉末切出し制御のタイムチャート]
図3は、溶液調製装置100において、タンク150に薬剤を投入するための制御のタイムチャートの一例を示す図である。
図3のタイムチャート300は、「A剤粉末切出し」との用語を含む。本明細書では、薬剤供給装置130によってホッパ120内の薬剤をタンク150に投入することを「A剤粉末切出し」とも称する。
【0043】
タイムチャート300は、4つの領域310,320,330,340を含む。領域310は、切出しモータ131のON/OFF状態を表す。ON状態は、切出しモータ131が通電されており、切出しモータ131が駆動されている状態を示す。OFF状態は、切出しモータ131に通電されておらず、切出しモータ131が駆動されていない状態を示す。
【0044】
領域310に示されるように、切出しモータ131について2種類の動作モード(連続切出し、間欠切出し)が示されている。
【0045】
制御ユニット110は、「連続切出し」では、切出しモータ131を連続的に駆動し、「間欠切出し」では、切出しモータ131を間欠的に駆動する。「間欠切出し」では、「連続切出し」よりも、単位時間あたりでの切出しモータ131が駆動する時間が短く、これにより、「連続切出し」よりも、単位時間あたりにタンク150に投入される薬剤の量は少ない。「連続切出し」は第1モードの一例であり、「間欠切出し」は第2モードの一例である。
【0046】
制御ユニット110は、タンク150への薬剤の投入を「連続切出し」で開始する。
【0047】
ある程度の量の薬剤がタンク150へ投入されると、制御ユニット110は、切出しモータ131の駆動モードを、「連続切出し」から「間欠切出し」へと切替える。その後、制御ユニット110は、タンク150への薬剤の投入量が適量に達したと判断すると、切出しモータ131の駆動を終了する。
【0048】
制御ユニット110は、タンク150への薬剤の投入量の推定に、タンク150内の溶液の電気伝導率の検出値を利用する。
【0049】
タイムチャート300では、溶液における薬剤の濃度が最終生成物として適切な濃度であるときの電気伝導率が、「目標値」として示されている。より具体的には、「目標値」として、「V(1)[mS/cm]」が示されている。
【0050】
また、タイムチャート300では、「連続切出し停止値」(V(2)[mS/cm])として、切出しモータ131の駆動を「連続切出し」から「間欠切出し」へ切替えるための条件を既定する値が示されている。制御ユニット110は、「目標値」と「連続切出し停止値」とに基づいて、切出しモータ131の駆動を「連続切出し」から「間欠切出し」へ切替えるための電気伝導率の検出値を設定してもよい。より具体的には、制御ユニット110は、「連続切出し」で切出しモータ131の駆動を開始した後、電気伝導率計170の検出値が「V(1)-V(2)」に到達したことに応じて、切出しモータ131の駆動モードを「間欠切出し」へ切替えても良い。
【0051】
また、タイムチャート300では、「間欠切出し制御値」(R(1)[%])として、切出しモータ131の単位時間あたりの駆動時間について、「間欠切出し」での駆動時間の「連続切出し」での駆動時間に対する割合を示す。R(1)は、100を下回る正の値である。すなわち、「連続切出し」と「間欠切出し」との間の、単位時間あたりの切出しモータ131の駆動時間の比は、「100:R(1)」で表され得る。
【0052】
また、タイムチャート300では、「切出し停止値」(V(3)[mS/cm])として、切出しモータ131の駆動を終了させるための条件を既定する値が示されている。制御ユニット110は、「目標値」と「切出し停止値」とに基づいて、切出しモータ131の駆動を終了させるための電気伝導率の検出値を設定してもよい。より具体的には、制御ユニット110は、切出しモータ131の駆動モードを「間欠切出し」に切替えた後、電気伝導率計170の検出値が「V(1)-V(3)」に到達したことに応じて、切出しモータ131の駆動を終了させてもよい。
【0053】
タイムチャート300の領域320は、クランクモータ132のON/OFF状態を表す。ON状態は、クランクモータ132が通電されており、クランクモータ132が駆動されている状態を示す。OFF状態は、クランクモータ132に通電されておらず、クランクモータ132が駆動されていない状態を示す。
【0054】
タイムチャート300では、「V(4)」として、クランクモータ132の駆動を停止させるための条件を既定する値が示されている。制御ユニット110は、切出しモータ131の駆動開始とともにクランクモータ132の駆動を開始してもよい。そして、制御ユニット110は、電気伝導率計170の検出値が「V(1)-V(4)」に到達したことに応じて、クランクモータ132の駆動を終了させてもよい。
【0055】
タイムチャート300の領域330は、溶液調製装置100の動作情報を表す。領域330に示されるように、タイムチャート300に示された期間(運転期間)は、「調製中/粉末切出し中」「調製中/Sタンク移送待機」「調製中/Sタンク移送中」を含むように定義されている。
【0056】
「調製中/粉末切出し中」は、切出しモータ131の駆動の開始から撹拌モータ190の駆動の終了までの期間に対応する。より具体的には、制御ユニット110は、切出しモータ131の駆動の開始とともに、クランクモータ132に加えて、撹拌モータ190の駆動を開始させてもよい。そして、制御ユニット110は、切出しモータ131の(連続切出しおよび間欠切出しの)駆動を終了した後、一定時間(たとえば、1分間)の経過後、撹拌モータ190の駆動を終了してもよい。
【0057】
「調製中/Sタンク移送待機」は、撹拌モータ190の駆動の終了からポンプ180の駆動の開始までの期間に対応する。
【0058】
「調製中/Sタンク移送中」は、ポンプ180の駆動により、タンク150内の溶液を外部の貯蔵装置に移送する期間に対応する。制御ユニット110は、撹拌モータ190の駆動を終了させた後、たとえば、外部からの指示の入力に応じて、ポンプ180の駆動を開始し、これにより、タンク150内の溶液を外部の貯蔵装置に移送させる。
【0059】
タイムチャート300の領域340は、電気伝導率計170の検出値の変化を表す線LXを含む。時刻TXは、切出しモータ131の駆動が「連続切出し」から「間欠切出し」へ切替えられたタイミングを表す。時刻TYは、切出しモータ131の駆動が終了されたタイミングを表す。時刻TZは、撹拌モータ190の駆動が終了されたタイミングを表す。溶液調製装置100は、切出しモータ131の駆動を終了させた後、タンク150において、投入された薬剤を溶液(溶媒)に確実に溶解させるための予め定められた時間(以下、「撹拌時間」ともいう)だけ撹拌モータ190を駆動させてもよい。すなわち、時刻TYから時刻TZまでの時間が「撹拌時間」であってもよい。
【0060】
電気伝導率計170の検出値(すなわち、タンク150内の溶液の電気伝導率)は、「連続切出し」では大きく上昇する。「間欠切出し」での当該検出値の上昇率は「連続切出し」での当該検出値の上昇率よりも小さい。「間欠切出し」の終了後、当該検出値は、わずかに上昇した後、一定の値(上記V(1))に到達する。
【0061】
[投入量と電気伝導率との関係の具体例]
次に、
図4~
図6を参照して、タンク150への薬剤の投入量と、タンク150内の溶液の電気伝導率との関係として想定される具体例を説明する。
【0062】
図4は、タンク150への薬剤の投入量と、タンク150内の溶液の電気伝導率との関係の一例を示す図である。
【0063】
図4のグラフG1では、線LNは電気伝導率を表し、線ANは薬剤の投入量の累積値を表す。グラフG1の横軸は、「連続切出し」の開始からの経過時間を表す。時刻T1は、「連続切出し」から「間欠切出し」へ切り替えられたタイミングを表す。時刻T2は、「間欠切出し」が終了されたタイミングを表す。値Q1は、タンク150への薬剤の投入量の基準値を表す。
【0064】
グラフG1では、電気伝導率は、薬剤の投入量の上昇とともに上昇している。そして、「間欠切出し」が時刻T2で終了されることにより、薬剤の投入量が値Q1となる。
【0065】
図5は、タンク150への薬剤の投入量と、タンク150内の溶液の電気伝導率との関係の他の例を示す図である。
図5の例では、「連続切出し」および「間欠切出し」のそれぞれにおいて単位時間あたりにタンク150に投入される薬剤の量は、
図4と同じであるとする。そして、
図5の例では、タンク150へ投入される薬剤において、ブドウ糖の粒径が
図4の例より小さいとする。本明細書では、
図4の例を「粒径標準」と称し、
図5の例(ブドウ糖の粒径が小さい例)を「粒径小」と称する場合がある。
【0066】
図5のグラフG2では、線LSは電気伝導率を表し、線ASは薬剤の投入量の累積値を表す。グラフG2の横軸は、「連続切出し」の開始からの経過時間を表す。時刻T1Aは、「連続切出し」から「間欠切出し」へ切り替えられたタイミングを表す。時刻T2Aは、「間欠切出し」が終了されたタイミングを表す。
【0067】
図5では、
図4の例との比較のために、
図4の線LN,ANが破線で示され、さらに、
図4の時刻T1,T2が示される。
【0068】
時刻T0から時刻T1までの線LSと線LNとを比較すると、線LSは、線LNよりも、時間の経過に従った電気伝導率の上昇が小さい。これは、線LSの例、線LNの例よりも、ブドウ糖の粒径が小さく、ブドウ糖がより早期に溶液に溶解し、これにより、ブドウ糖の溶解による電気伝導率の低下の効果が早期に出現したことによると想定される。
【0069】
時間の経過に従った電気伝導率の上昇が小さいため、線LSは、線LNよりも、遅いタイミングで値「V(1)-V(3)」に到達する。これにより、線LSの例では、線LNの例よりも「連続切出し」の継続時間が長い。すなわち、時刻T0から時刻T1Aまでの期間は、時刻T0から時刻T1までの期間より長い。
【0070】
図5の例では、タンク150への薬剤の投入量が値Q1を超えている。これは、
図5の例では、
図4の例よりも早いタイミングで「間欠切出し」が終了したとしても(時刻T2Aが時刻T2より先であったとしても)、「連続切出し」の期間がより長かったことに起因する。
【0071】
図6は、タンク150への薬剤の投入量と、タンク150内の溶液の電気伝導率との関係のさらに他の例を示す図である。
図6の例では、「連続切出し」および「間欠切出し」のそれぞれにおいて単位時間あたりにタンク150に投入される薬剤の量は、
図4と同じであるとする。そして、
図6の例では、タンク150へ投入される薬剤において、ブドウ糖の粒径が
図4の例より大きいとする。本明細書では、
図4の例を「粒径標準」と称し、
図6の例(ブドウ糖の粒径が大きい例)を「粒径大」と称する場合がある。
【0072】
図6のグラフG3では、線LLは電気伝導率を表し、線ALは薬剤の投入量の累積値を表す。グラフG3の横軸は、「連続切出し」の開始からの経過時間を表す。時刻T1Bは、「連続切出し」から「間欠切出し」へ切り替えられたタイミングを表す。時刻T2Bは、「間欠切出し」が終了されたタイミングを表す。
【0073】
図6では、
図4の例との比較のために、
図4の線LN,ANが破線で示され、さらに、
図4の時刻T1,T2が示される。
【0074】
時刻T0から時刻T1までの線LSと線LNとを比較すると、線LSは、線LNよりも、時間の経過に従った電気伝導率の上昇が大きい。これは、線LLの例、線LNの例よりも、ブドウ糖の粒径が大きく、ブドウ糖の溶解がより遅く、これにより、ブドウ糖の溶解による電気伝導率の低下の効果の出現が遅れていることによると想定される。
【0075】
時間の経過に従った電気伝導率の上昇が大きいため、線LLは、線LNよりも、早いタイミングで値「V(1)-V(3)」に到達する。これにより、線LLの例では、線LNの例よりも「連続切出し」の継続時間が短い。すなわち、時刻T0から時刻T1Bまでの期間は、時刻T0から時刻T1までの期間より短い。
【0076】
図6の例では、タンク150への薬剤の投入量が値Q1より少ない。これは、タンク150に投入された薬剤の中のブドウ糖が溶解により溶液の電気伝導率を低下させる、という効果の出現が遅いことに基づくと想定される。
【0077】
より具体的には、薬剤におけるブドウ糖の粒径が大きくなると、ブドウ糖の投入から溶解までの時間が長くなり、これにより、ブドウ糖の投入による電気伝導率の低下の効果が見られるのにより長い時間が必要とされる。
【0078】
薬剤におけるブドウ糖が比較的大きいな粒径を持つ場合と、薬剤におけるブドウ糖が一般的な粒径を持つ場合とを比較すると、前者の場合は、後者の場合よりも、薬剤の投入量が少ない時点で、溶液の電気伝導率が「V(1)-V(2)」に到達することが想定される。これは、薬剤が投入された時点では、薬剤の中の電解質の溶解による電気伝導率の上昇が薬剤の中のブドウ糖の溶解によって阻害される、という影響が、後者の場合には前者の場合よりも現れにくいと考えられるからである。
【0079】
[処理の流れ(1)]
図7は、タンク150における溶液の調製のために実行される処理の一例のフローチャートである。溶液調製装置100では、たとえば、プロセッサ111が所与のプログラムを実行することによって、
図7の処理が実施され得る。
【0080】
ステップS100にて、溶液調製装置100は、「連続切出し」で、切出しモータ131の駆動を開始する。
【0081】
ステップS102にて、溶液調製装置100は、グルコースセンサ160の検出値を読み出すことにより、タンク150内の溶液のブドウ糖濃度を取得する。
【0082】
ステップS104にて、溶液調製装置100は、ステップS102にて取得されたブドウ糖濃度が第1閾値に到達したか否かを判断する。第1閾値は、切出しモータ131の駆動が「連続切出し」から「間欠切出し」へと切り替えられるべき時点での溶液のブドウ糖濃度の一例であってもよい。
【0083】
溶液調製装置100は、ステップS102にて取得されたブドウ糖濃度が第1閾値に到達していれば(ステップS104にてYES)、ステップS106へ制御を進め、そうでなければ(ステップS104にてNO)、ステップS102へ制御を戻す。
【0084】
ステップS106にて、溶液調製装置100は、電気伝導率計170の検出値を読み出すことにより、タンク150内の溶液の電気伝導率を取得する。
【0085】
ステップS108にて、溶液調製装置100は、ステップS106にて取得された電気伝導率と所与の基準値との差異が一定値以上であるか否かを判断する。ステップS108における「基準値」は、たとえば、薬剤の中のブドウ糖が一般的な有形を有するときに、上記「第1閾値」のブドウ糖濃度に相当する量の薬剤を投入されたときの溶液の電気伝導率であってもよい。一定値は、後述する補正をするか否かを判断するための、差異に関する閾値であり、溶液調製装置100を利用する者によって適宜設定され得る。
【0086】
溶液調製装置100は、ステップS106にて取得された電気伝導率と上記「基準値」との差異が一定値以上であれば(ステップS108にてYES)、ステップS109へ制御を進め、そうでなければ(ステップS108にてNO)、ステップS112へ制御を進める。
【0087】
ステップS109にて、溶液調製装置100は、ステップS108において導出された差異に基づいて、電気伝導率の補正値を特定する。
【0088】
図8は、電気伝導率の補正値の特定の一例を説明するための図である。
図8のグラフG4は、2本の線L10,L11を含む。線L10は、薬剤の投入量に応じたブドウ糖濃度の変化に対応する、電気伝導率の変化を表す。線L11は、ブドウ糖濃度の変化と電気伝導率の変化の関係の比較的を表す。
図8において、ブドウ糖濃度の値D2は、ステップS104における「第1閾値」に相当する。
【0089】
ステップS109では、ブドウ糖濃度と電気伝導率とが線L10で示された関係を有するように、補正値が特定されてもよい。たとえば、線L10では、ステップS106で示された電気伝導率は、理想的には、ブドウ糖濃度が値D2であるときの線L10上の値、すなわち、値R2である。一方、点P2で示される場合、ブドウ糖濃度が値D2であるときの電気伝導率は値R2Xである。値R2と値R2Xの差は、値C2として示される。したがって、点P2で示される場合、電気伝導率の補正値として値C2が特定される。
【0090】
なお、第1閾値が値D1である場合の補正値の特定についても
図8によって説明され得る。線L10では、ブドウ糖濃度が値D1であるときの電気伝導率は、理想的には、値R1である。一方、点P1で示される場合、ブドウ糖濃度が値D1であるときの電気伝導率は値R1Xである。値R1と値R1Xの差は、値C1として示される。したがって、点P1で示される場合、電気伝導率の補正値として値C1が特定される。
【0091】
図7に戻って、ステップS110では、ステップS109において特定された補正値を利用して、電気伝導率の検出値を補正する。
【0092】
図8で説明されたように、本実施の形態では、ブドウ糖濃度が第1閾値のときの電気伝導率の検出値と基準値(
図8中の値R2)との差異(値C2)が、補正値として特定される。そして、電気伝導率の検出値は、その検出値が基準値になるように補正される。すなわち、補正値が正の値として特定された場合、電気伝導率の検出値は、ブドウ糖濃度が第1閾値のときの溶液の電気伝導率が基準値より低いときには補正値を加えられるように補正され、ブドウ糖濃度が第1閾値のときの溶液の電気伝導率が基準値より高いときには補正値を差し引かれるように補正される。
【0093】
ステップS111にて、溶液調製装置100は、補正後の検出値が第2閾値に到達したか否かを判断する。第2閾値は、
図3等の「V(1)-V(3)」として表されても良い。溶液調製装置100は、補正後の検出値が第2閾値にまだ到達していないと判断すると(ステップS111にてNO)、ステップS110へ制御を戻す。その後、溶液調製装置100は、たとえば一定時間ごとにステップS110を繰り返し、ステップS110を実行するたびに電気伝導率の新たな検出値を取得し、取得された検出値を、ステップS109にて特定された補正値を利用して補正する。溶液調製装置100は、補正後の検出値が第2閾値に到達したと判断すると(ステップS111にてYES)、ステップS114へ制御を進める。
【0094】
ステップS112にて、溶液調製装置100は、電気伝導率の検出値が第2閾値に到達したか否かを判断する。溶液調製装置100は、当該検出値が第2閾値にまだ到達していないと判断すると(ステップS112にてNO)、ステップS112に制御を留める。その後、溶液調製装置100は、一定時間ごとにステップS112の制御を繰り返す。より具体的には、ステップS112の制御を実行するたびに電気伝導率の新たな検出値を取得し、第2閾値と比較する。溶液調製装置100は、当該検出値が第2閾値に到達したと判断すると(ステップS112にてYES)、ステップS114へ制御を進める。
【0095】
ステップS114にて、溶液調製装置100は、切出しモータ131の駆動モードを「連続切出し」から「間欠切出し」へと切り替える。
【0096】
ステップS116にて、溶液調製装置100は、タンク150内の溶液の電気伝導率の検出値が第3閾値に到達したか否かを判断する。第3閾値とは、たとえば、
図3等の「V(1)-V(2)」であってもよい。溶液調製装置100は、当該検出値が第3閾値に到達したと判断するまで(ステップS116にてNO)、ステップS116に制御を留める。その後、溶液調製装置100は、たとえば一定時間ごとにステップS116を繰り返し、ステップS116を実行するたびに電気伝導率の新たな検出値を取得し、第3閾値と比較する。溶液調製装置100は、当該検出値が第3閾値に到達したと判断すると(ステップS116にてYES)、ステップS120へ制御を進める。
【0097】
ステップS120にて、溶液調製装置100は、切出しモータ131の駆動を終了させる。これにより、「間欠切出し」が終了する。
【0098】
ステップS122にて、溶液調製装置100は、その時点でのタンク150内の溶液のブドウ糖濃度を表示し、その後、
図7の処理を終了させる。
【0099】
溶液調製装置100は、ステップS100にて、切出しモータ131の駆動を開始するのと同時に撹拌モータ190の駆動を開始してもよい。そして、溶液調製装置100は、ステップS120において切出しモータ131の駆動を終了させてから「撹拌時間」(
図3)の経過後に撹拌モータ190の駆動を終了させ、そのときのブドウ糖濃度をステップS122にて表示してもよい。すなわち、ステップS122にて表示されるブドウ糖濃度は、切出しモータ131の駆動の終了から「撹拌時間」が経過した後のブドウ糖濃度であってもよい。
【0100】
溶液調製装置100は、ステップS122にて表示されるブドウ糖濃度を、所与の基準値と比較し、当該比較の結果をステップS122においてさらに表示してもよい。ステップS122における「基準値」は、溶液において最終的に求められるブドウ糖濃度であってもよい。
【0101】
溶液調製装置100は、ステップS122において、ブドウ糖濃度の代わりに、または、ブドウ糖濃度に加えて、ブドウ糖濃度の検出値と上記基準値との関係を表す情報を表示してもよい。たとえば、溶液調製装置100は、ステップS122において表示されるべきブドウ糖濃度と基準値との間の差異が一定値以内である場合には、「合格」等の、ブドウ糖濃度と基準値との間の差異が一定値以内であることを表す情報を表示してもよい。一方、溶液調製装置100は、ステップS122において表示されるべきブドウ糖濃度と基準値との間の差異が一定値を超える場合には、警告(異常報知)を表す情報を表示してもよい。
【0102】
[処理の流れ(2)]
図9は、タンク150における溶液の調製のために実行される処理の他の例のフローチャートである。
図9の処理では、タンク150内の溶液の温度が利用される。すなわち、この例では、溶液調製装置100は、タンク150内の溶液の温度を検出するためのセンサを備えているか、または、当該センサにアクセス可能に構成されている。溶液調製装置100では、たとえば、プロセッサ111が所与のプログラムを実行することによって、
図9の処理が実施され得る。
図9の処理は、
図7の処理と共通部分を有する。以下に、
図9の処理について、
図7の処理に対する差異を中心に説明する。
【0103】
図9の処理は、
図7の処理と同様に、ステップS100~ステップS104の制御を含む。より具体的には、溶液調製装置100は、切出しモータ131の駆動を「連続切出し」で開始した後、タンク150内の溶液のブドウ糖濃度の検出値が第1閾値に到達したか否かを判断する。当該検出値が第1閾値に到達したと判断すると、溶液調製装置100は、ステップS104からステップS1060へ制御を進める。
【0104】
ステップS1060にて、溶液調製装置100は、タンク150内の溶液の温度を取得する。
【0105】
ステップS1062にて、溶液調製装置100は、電気伝導率の検出値を取得し、当該検出値をステップS1060にて取得された温度に従って補正する。
【0106】
たとえば、溶液調製装置100は、ステップS1060にて取得された温度でのブドウ糖の水への溶解度の、所与の基準温度でのブドウ糖の水への溶解度に対する割合を取得し、当該割合の逆数を掛け合わせることにより、電気伝導率の検出値を補正する。基準温度とは、
図3のV(1)~V(4)が取得された温度であってもよい。
【0107】
たとえば、基準温度における溶解度がS(S)であり、取得された温度における溶解度がS(X)である場合、上記割合は「S(X)/S(S)」である。したがって、電気伝導率の検出値の補正は、「S(S)/S(X)」を掛け合わせることであってもよい。すなわち、電気伝導率の検出値R(D)の補正後の値は、「{R(D)・S(S)}/S(X)」であってもよい。
【0108】
ステップS1064にて、溶液調製装置100は、補正後の電気伝導率が第2閾値に到達したか否かを判断する。溶液調製装置100は、補正後の電気伝導率が第2閾値に到達すると判断するまでステップS1064に制御を留め(ステップS1064にてNO)、補正後の電気伝導率が第2閾値に到達したと判断すると(ステップS1064にてYES)、ステップS114へ制御を進める。
【0109】
ステップS114にて、溶液調製装置100は、切出しモータ131の駆動モードを、「連続切出し」から「間欠切出し」へと切り替える。
【0110】
ステップS1160にて、溶液調製装置100は、タンク150内の溶液の温度を取得する。
【0111】
ステップS1162にて、溶液調製装置100は、電気伝導率の検出値を取得し、当該検出値をステップS1160にて取得された温度に従って補正する。ステップS1162における補正は、ステップS1062における補正と同様に、ステップS1160にて取得された温度でのブドウ糖の水への溶解度の所与の基準温度でのブドウ糖の水への溶解度に対する割合が利用されてもよい。
【0112】
ステップS1164にて、溶液調製装置100は、ステップS1162における補正後の電気伝導率が第3閾値に到達したか否かを判断する。溶液調製装置100は、ステップS1162における補正後の電気伝導率が第3閾値に到達したと判断すると(ステップS1164にてYES)、ステップS120へ制御を進め、そうでなければ(ステップS1164にてNO)、ステップS1160へ制御を戻す。
【0113】
溶液調製装置100は、ステップS120にて、切出しモータ131の駆動を終了させ、ステップS122にて、タンク150内の溶液のブドウ糖濃度を表示し、その後、
図9の処理を終了させる。
【0114】
以上、
図9を参照して説明された処理では、ステップS1060,S1160のそれぞれで検出された溶液の温度に基づいて、ステップS1062,S1162のそれぞれで補正された電気伝導率の値を、ステップS1064,S1164のそれぞれにおける判断に利用する。
【0115】
なお、溶液調製装置100は、連続切出しの開始時、または、溶液のブドウ糖濃度が特定の濃度に達したときに、溶液の温度を測定し、当該溶液の温度が特定の温度以下である場合には、ステップS1062およびステップS1162の制御を省略してもよい。すなわち、溶液調製装置100は、溶液の温度が低い場合には、電気伝導率の検出値を、補正することなく、ステップS1064,S1164のそれぞれにおける判断に利用してもよい。この場合、ステップS1064では、電気伝導率の検出値が第2閾値に到達していなければステップS1060へ制御が戻され、到達していればステップS114へ制御が進められる。また、ステップS1164では、電気伝導率の検出値が第3閾値に到達していなければステップS1160へ制御が戻され、到達していればステップS120へ制御が進められる。
【0116】
今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
100 溶液調製装置、110 制御ユニット、111 プロセッサ、120 ホッパ、130 薬剤供給装置、131 切出しモータ、132 クランクモータ、150 タンク、160 グルコースセンサ、170 電気伝導率計、180 ポンプ、190 撹拌モータ、300 タイムチャート。