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特許7548069センタ、更新制御方法、更新制御プログラム、OTAマスタ、ソフトウェア更新システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】センタ、更新制御方法、更新制御プログラム、OTAマスタ、ソフトウェア更新システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/65 20180101AFI20240903BHJP
   G06F 11/07 20060101ALI20240903BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G06F8/65
G06F11/07 166
B60R16/02 660U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021035142
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135377
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長光 翔一
【審査官】田中 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-27620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65
G06F 11/07
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が備えるOTAマスタとネットワークを介して通信可能であり、かつ、故障が発生した車両から送信される故障情報コードと当該車両を特定する情報とを対応づけた故障発生情報を記憶する故障発生情報記憶部を少なくとも備える故障管理サーバとネットワークを介して通信可能なセンタであって、
前記故障管理サーバから送信される前記故障発生情報を受信する故障情報受信部と、
前記故障管理サーバから受信した前記故障発生情報を記憶する故障情報記憶部と、
前記OTAマスタから、電子制御装置のソフトウェアの更新有無の問い合わせを受信する問い合わせ受信部と、
前記問い合わせを受信したとき、前記故障発生情報に基づいて、当該問い合わせの送信元である前記車両が故障状態であるか否かを判定する故障状態判定部と、
前記問い合わせの送信元である前記車両が故障状態であると判定された場合、当該車両にかかる前記ソフトウェアの更新処理の実行を制限する更新制限部と、
を備え
前記故障管理サーバに新たな故障発生情報が登録された場合に、当該故障管理サーバから前記故障発生情報が前記センタに送信される、センタ。
【請求項2】
前記センタは、前記問い合わせの送信元の車両が故障していると判定された場合、故障していることを示す情報を当該車両に送信する、請求項1に記載のセンタ。
【請求項3】
プロセッサと、メモリと、車両が備えるOTAマスタとネットワークを介して通信可能であり、かつ、故障が発生した車両から送信される故障情報コードと当該車両を特定する情報とを対応づけた故障発生情報を記憶する故障発生情報記憶部を少なくとも備える故障管理サーバとネットワークを介して通信可能なセンタのコンピュータが実行する更新制御方法であって、
前記故障管理サーバから送信される故障発生情報を受信する故障情報受信ステップと、
前記故障管理サーバから受信した故障発生情報を記憶する故障情報記憶ステップと、
前記OTAマスタから、電子制御装置のソフトウェアの更新有無の問い合わせを受信する問い合わせ受信ステップと、
前記問い合わせを受信したとき、前記故障発生情報に基づいて、当該問い合わせの送信元である車両が故障状態であるか否かを判定する故障状態判定ステップと、
前記問い合わせの送信元の車両が故障状態であると判定された場合、当該車両にかかる前記ソフトウェアの更新処理の実行を制限する更新制限ステップと、
を備え
前記故障管理サーバに新たな故障発生情報が登録された場合に、当該故障管理サーバから前記故障発生情報が前記センタに送信される、更新制御方法。
【請求項4】
プロセッサと、メモリと、車両が備えるOTAマスタとネットワークを介して通信可能であり、かつ、故障が発生した車両から送信される故障情報コードと当該車両を特定する情報とを対応づけた故障発生情報を記憶する故障発生情報記憶部を少なくとも備える故障管理サーバとネットワークを介して通信可能なセンタのコンピュータに実行させる更新制御プログラムであって、
前記故障管理サーバから送信される故障発生情報を受信する故障情報受信ステップと、
前記故障管理サーバから受信した故障発生情報を記憶する故障情報記憶ステップと、
前記OTAマスタから、電子制御装置のソフトウェアの更新有無の問い合わせを受信する問い合わせ受信ステップと、
前記問い合わせを受信したとき、前記故障発生情報に基づいて、当該問い合わせの送信元である車両が故障状態であるか否かを判定する故障状態判定ステップと、
前記問い合わせの送信元の車両が故障状態であると判定された場合、当該車両にかかる前記ソフトウェアの更新処理の実行を制限する更新制限ステップとを前記コンピュータに
実行させ
前記故障管理サーバに新たな故障発生情報が登録された場合に、当該故障管理サーバから前記故障発生情報が前記センタに送信される、更新制御プログラム。
【請求項5】
OTAマスタを備える車両と、
前記OTAマスタとネットワークを介して通信可能なセンタと、
前記センタおよびOTAマスタのそれぞれとネットワークを介して通信可能な故障情報管理サーバとを備えるソフトウェア更新システムであって、
前記車両は、当該車両に発生した故障を検知し、当該車両を特定する情報および当該故障に関する故障情報コードを少なくとも含む故障発生情報を故障管理サーバに送信する故障検知部を備え、
前記故障管理サーバは、
前記車両から送信される故障発生情報を受信する第1受信部と、
前記故障発生情報を前記センタに送信する故障情報送信部とを備え、
前記センタは、
前記故障管理サーバから送信されてきた前記故障発生情報を記憶する故障情報記憶部と、
前記OTAマスタからソフトウェア更新の有無の問い合わせを受信する問い合わせ受信部と、
前記問い合わせを受信したとき、前記故障情報記憶部に記憶されている前記故障発生情報に基づいて、当該問い合わせのあった車両が故障状態であるか否かを判定する故障状態判定部と、
故障していると判定された場合、前記ソフトウェアの更新処理の実行を制限する更新処理制限部とを備え
前記故障管理サーバに新たな故障発生情報が登録された場合に、当該故障管理サーバから前記故障発生情報が前記センタに送信される、ソフトウェア更新システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両が備えるOTAマスタおよび所定のサーバと、ネットワークを介して通信可能なセンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両には、制御機能を実行するための複数の電子制御装置(「ECU」と呼ばれる)が搭載されている。当該電子制御装置は、プロセッサと記憶部とを備え、プロセッサが記憶部に記憶されるソフトウェアを実行することにより電子制御装置の制御機能を実現する。また、各電子制御装置が記憶するソフトウェアは更新可能である。具体的には、整備工場等において、車両に設けられたダイアグ用コネクタを介して接続した外部機器を用いて更新することができる。また、車載ネットワークが備える通信機器とインターネット等の通信ネットワークとを無線で接続し、無線通信を介して更新センタに設けられた配信サーバからダウンロードしたソフトウェアで更新することもできる(例えば特開2020-004245号公報)。この無線通信を介した更新サービスは、OTAサービスと呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-004245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記OTAサービスにおいては、車両が故障している状態(故障状態)であるにも関わらず、ソフトウェアを更新する虞があった。故障状態の車両に対してソフトウェア更新を行うと、適切な更新ができない可能性があり、車両が故障状態のときは、ソフトウェア更新は行わないようにすることが望ましい。ここで、OTAサービスによるソフトウェア更新の実行に際しては、車両とセンタとでコネクションを確立するところ、常に車両側からコネクションを開始する、つまり、車両側が接続開始のトリガとなるような設計となっている。そのため、車両からのアクションがない限り、車両とのコネクションが確立できず、センタは車両の故障状態が把握することできない。
【0005】
上記の点に鑑みて、コネクションの確立後、ソフトウェア更新のためにセンタから車両に故障情報をその都度問い合わせるようにすることも考えられる。しかし、この場合、故障情報の問い合わせの分、センタおよび車両間の通信量が増えてしまい、通信コストが大きくなってしまうという問題もある。
【0006】
ところで、車両で故障が発生した場合、通常は、車両はその故障情報を故障管理サーバに送信する。故障管理サーバとは、車両の故障状態を(ほぼリアルタイムに)把握・管理するための故障管理システムが有するサーバである。仮に、上記のようにソフトウェア更新のためにセンタから車両に故障情報をその都度問い合わせるようにした場合、車両側からすれば、すでに故障管理サーバに報告済みのものを再度センタに伝えることになり、いわば二度手間となってしまう。そのため、このような観点でも余計な通信コストがかかるとも言える。
【0007】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、車両に故障情報を問い合わせることなく、車両故障状態に応じたソフトウェア更新の制御が可能なセンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両が備えるOTAマスタとネットワークを介して通信可能であり、かつ、故障が発生した車両から送信される故障情報コードと当該車両を特定する情報とを対応づけた故障発生情報を記憶する故障発生情報記憶部を少なくとも備える故障管理サーバとネットワークを介して通信可能なセンタである。センタは、故障管理サーバから送信される故障発生情報を受信する故障情報受信部と、故障管理サーバから受信した故障発生情報を記憶する故障情報記憶部と、OTAマスタから、電子制御装置のソフトウェアの更新有無の問い合わせを受信する問い合わせ受信部と、当該問い合わせを受信したとき、故障発生情報に基づいて、当該問い合わせの送信元である車両が故障状態であるか否かを判定する故障状態判定部と、問い合わせの送信元の車両が故障状態であると判定された場合、当該車両にかかるソフトウェアの更新処理の実行を制限する更新制限部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示のセンタによれば、センタは、ソフトウェア更新のために車両に故障情報を問い合わせることなく、車両故障状態に応じたソフトウェア更新制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るシステムの全体構成を示すブロック図
図2】センタ1の概略構成を示すブロック図
図3】故障管理サーバ2の概略構成を示すブロック図
図4】OTAマスタ31の概略構成を示すブロック図
図5】センタ1の機能ブロック図
図6】故障管理サーバ2の機能ブロック図
図7】OTAマスタ31の機能ブロック図
図8】故障管理サーバ2の記憶部26に記憶されるデータの一例を示すメモリマップ
図9】故障状況データ52のデータ構成の一例
図10】センタ1の記憶部16に記憶されるデータの一例を示すメモリマップ
図11】故障状況データ62のデータ構成の一例
図12】故障管理処理の詳細を示すフローチャート
図13】故障情報更新処理の詳細を示すフローチャート
図14】更新制御処理の詳細を示すフローチャート
図15】ソフトウェア更新処理の詳細を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
[本実施形態のシステム全体の構成について]
図1は、本実施形態における更新管理システムの全体構成を示すブロック図である。当該更新管理システムは、OTAセンタ(以下、単にセンタと呼ぶ)1、故障管理サーバ2、車両3を備えている。
【0013】
センタ1は、車両3に備えられる車載機器のソフトウェアの更新を管理するためのサーバである(より正確には、センタ1はこのようなサーバを含むセンタシステムであるが、以下では説明の便宜上、サーバとして説明する)。センタ1は、故障管理サーバ2および車両3と通信可能である。
【0014】
故障管理サーバ2は、車両3の故障発生状態を管理するためのサーバである。車両3で故障発生が検知され次第、その故障内容を示す故障コードを含む故障発生情報が車両3から故障管理サーバ2に送信されてくる。故障管理サーバ2では、この故障発生情報が記憶される。そのため、車両3に故障が発生した場合、故障管理サーバ2は、ほぼリアルタイムで、その車両3に故障が発生したという状況を把握することが可能である。また、故障管理サーバ2は、車両3から故障発生情報を受信すれば、センタ1に対して、当該故障発生情報を送信する。なお、本実施形態では、車両3から受信した故障発生情報をそのままセンタ1に送る例を説明するが、他の実施形態では、車両3から受信した故障発生情報を加工したデータをセンタ1に送信するようにしてもよい。更に、故障管理サーバ2は、発生していた故障が解消したことを示す故障解消通知を車両3から受信すれば、これに基づき故障管理サーバ2で記憶している当該車両3に係るデータを、故障が発生していないことを示すように更新する。また、故障管理サーバ2は、センタ1に対して、当該故障解消通知を送信する。
【0015】
車両3は、車載ネットワークシステムを搭載している。当該車載ネットワークシステムは、センタ1や故障管理サーバ2と通信可能である。車載ネットワークシステムは、OTAマスタ(ソフトウェア更新装置)31と、通信モジュール32と、複数の電子制御装置33a~33dとを少なくとも備える。また、このうち、電子制御装置33aについては、車両3に故障が発生した際に、故障情報を故障管理サーバ2に送信する機能を有する電子制御装置33aであるとする、以下、当該電子制御装置33aのことを特に、故障管理用制御装置33aと呼ぶ。
【0016】
OTAマスタ31は、バス35を介して通信モジュール32、故障管理用制御装置33a、その他の電子制御装置33b~33dと接続されている。OTAマスタ31は、通信モジュール32を介してセンタ1と無線での通信が可能である。OTAマスタ31は、センタ1との間で所定のデータの送受信を行いながら、各電子制御装置33のソフトウェア更新処理の制御を実行する。すなわち、OTAマスタ31は、ソフトウェア更新機能を有する。通信モジュール32は、所定のネットワーク(電話網やインターネット網等)と接続する通信機器である。
【0017】
故障管理用制御装置33aは、通信モジュール32を介して故障管理サーバ2と無線での通信が可能である。故障管理用制御装置33aは、車両3に故障が発生したことを検知し、その故障に関する情報である故障発生情報を生成して故障管理サーバ2に送信する。故障の検知については、例えば、図示しない車載診断装置から故障管理用制御装置33aに故障コードが出力されたか否かで検知できる。また、当該故障発生情報には、車両3を特定するための車両特定番号、および、上記故障コードが少なくとも含まれている。また、故障管理用制御装置33aは、車両3に発生していた故障が解消した場合は、そのことを検知し、故障が解消した旨の通知である故障解消通知を故障管理サーバ2に送信する。当該故障解消通知には、車両特定番号および故障が解消したことを示す旨のデータが含まれている。
【0018】
また、その他の電子制御装置33b~33dは、車両3の各部の動作を制御する。なお、図1における電子制御装置33の数は一例であることはいうまでもない。
【0019】
[センタ1の構成について]
図2は、上記センタ1の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、センタ1は、プロセッサ11と、RAM12と、記憶装置13と、通信装置14とを備える。記憶装置13は、ハードディスクやSSD等の読み書き可能な記憶媒体を備え、本実施形態に係る処理に必要な各種のプログラムやデータを記憶する。センタ1において、プロセッサ11は、記憶装置13から読み出したプログラムを、RAM12を作業領域として用いて実行することにより、所定の制御処理を実行する。通信装置14は、ネットワークを介して、故障管理サーバ2および車両3と通信を行う機器である。
【0020】
[故障管理サーバ2の構成について]
図3は、上記故障管理サーバ2の概略構成を示すブロック図である。図3に示すように、故障管理サーバ2は、プロセッサ21と、RAM22と、記憶装置23と、通信装置24とを備える。記憶装置23は、ハードディスクやSSD等の読み書き可能な記憶媒体を備え、本実施形態に係る処理に必要な各種のプログラムやデータを記憶する。プロセッサ21は、記憶装置23から読み出したプログラムを、RAM22を作業領域として用いて実行することにより、所定の制御処理を実行する。通信装置24は、ネットワークを介して、センタ1および車両3と通信を行う機器である。
【0021】
[OTAマスタ31の構成について]
図4は、上記OTAマスタ31の概略構成を示すブロック図である。図4に示すように、OTAマスタ31は、プロセッサ41と、RAM42と、ROM43と、記憶装置44とを備えるマイクロコンピュータ45と、通信装置46とを備える。OTAマスタ31において、マイクロコンピュータ45のプロセッサ41は、ROM43から読み出したプログラムを、RAM42を作業領域として用いて実行することにより、所定の制御処理を実行する。通信装置46は、図1に示したバス35を介して、通信モジュール32、電子制御装置33a~33dと通信を行う機器である。
【0022】
[センタ1の機能ブロック図]
図5は、上記センタ1の機能ブロック図である。
【0023】
センタ1は、記憶部16と通信部17と制御部18とを備える。通信部17及び制御部18は、図2に示したプロセッサ11がRAM12を用いて記憶装置13に記憶されるプログラムを実行することにより実現され、記憶部16は、図2に示した記憶装置13により実現される。
【0024】
記憶部16は、本実施形態に係る処理で使用するプログラムやデータを記憶する。
【0025】
通信部17は、故障管理サーバ2から上記故障発生情報および上記故障解消通知を受信可能である。また、通信部17は、OTAマスタ31から、ソフトウェア更新の有無を問い合わせる旨のデータ(以下、「更新問い合わせ」と呼ぶ)を受信可能である。また、その他、OTAマスタ31との間で、ソフトウェア更新処理を実行するための所定のデータの送受信も可能である。
【0026】
制御部18は、通信部17で受信した上記故障発生情報に基づいて、車両3の故障状態を示すデータを記憶部16に記憶する。また、制御部18は、OTAマスタ31から更新問い合わせを受信したとき、その車両3が故障状態か否かを判定する。そして、制御部18は、当該更新問い合わせを行った車両3が故障状態である場合は、配信すべきソフトウェア更新があっても、更新処理を開始しない(更新処理の開始を制限する)制御を行う。なお、制御部18は、OTAマスタ31からの更新問い合わせを受信しない限りは、ソフトウェア更新処理を開始しないものとする(つまり、センタ1が自発的に上記ソフトウェア更新処理を開始することはない)。
【0027】
[故障管理サーバ2の機能ブロック図]
図6は、上記故障管理サーバ2の機能ブロック図である。
【0028】
故障管理サーバ2は、記憶部26と、通信部27と制御部28とを備える。通信部27及び制御部28は、図3に示したプロセッサ21がRAM22を用いて記憶装置23に記憶されるプログラムを実行することにより実現され、記憶部26は、図3に示した記憶装置23により実現される。
【0029】
記憶部26は、本実施形態に係る処理で使用するプログラムやデータを記憶する。
【0030】
通信部27は、故障発生を検知した車両3(故障管理用制御装置23a)から、上記故障発生情報を受信可能である。また、通信部27は、故障が発生した車両3にかかる上記故障発生情報、および、上記故障解消通知をセンタ1に送信可能である。
【0031】
制御部18は、故障管理用制御装置23aから上記故障発生情報を受信したら、その内容に基づいて故障状況を示すデータを記憶部26に記憶する。更に、制御部18は、故障が発生した車両3にかかる当該故障発生情報を通信部27を介してセンタ1に送信する。また、上記故障解消通知を受信した場合は、制御部18は、これに基づき故障状況を示すデータを更新し、当該故障解消通知をセンタ1に送信する。
【0032】
[OTAマスタ31の機能ブロック図]
図7は、図4に示したOTAマスタ31の機能ブロック図である。
【0033】
OTAマスタ31は、記憶部47と、通信部48と、制御部49とを備える。記憶部47は、図4に示した記憶装置44によって実現され、通信部48と、制御部49とは、図4に示したプロセッサ41がRAM42を用いてROM43に記憶されるプログラムを実行することにより実現される。
【0034】
記憶部47は、ソフトウェア更新処理を実行するための各種プログラムや各種データを記憶する。
【0035】
通信部48は、故障発生が検知されたとき、故障管理用制御装置23aからの命令に基づいて、上記故障発生情報を故障管理サーバ2に送信可能である。また、通信部48は、制御部49からの命令に基づき、上記更新問い合わせ等、ソフトウェア更新処理に必要な各種データの送受信もセンタ1との間で可能である。
【0036】
制御部49は、ソフトウェア更新処理に関する各種の制御を実行する。具体的には、制御部49は、定期的に、センタ1に対して上記更新問い合わせを送信する。その結果、ソフトウェア更新用のデータがセンタ1から配信されてくれば、制御部49は、当該配信データに基づきソフトウェア更新処理を実行する。ここで、当該更新問い合わせを行うタイミングに関して補足する。本実施形態では、一例として、2週間に一度の頻度でセンタ1に更新問い合わせを行う場合を想定する。これは、更新有無の確認頻度を増やすと車両3とセンタ1との通信が増え、通信コストが増大することに鑑みて、なるべく必要最小限の確認頻度にしたいという観点によるものである。
【0037】
以下、本実施形態に係る処理の詳細について説明する。
【0038】
[故障管理サーバ2で用いられるデータについて]
まず、本実施形態の処理において用いられるデータに関して説明する。図8は、故障管理サーバ2の記憶部26に記憶されるデータの一例を示すメモリマップである。記憶部16には、故障管理プログラム51、故障状況データ52が記憶される。
【0039】
故障管理プログラム51は、車両3から送信されてきた上記故障発生情報に基づき、故障状況データ52を更新する処理、および、センタ1に故障発生情報を送信する処理等を実行するためのプログラムである。
【0040】
故障状況データ52は、車両3の故障状態を示すデータである。図9は、故障状況データ52のデータ構成の一例である。故障状況データ52は、車両特定番号53、故障状態54、および故障ログ55という項目を少なくとも有するテーブル形式のデータである。車両特定番号53は、各車両を一意に識別するための番号である。故障状態54は、その車両3が故障状態であるか否かを示すデータである。本実施形態では、故障状態54には、その車両3が故障中の場合は「故障中」、故障中ではない場合は「正常」を示すデータが設定されるものとする。故障ログ55は、車両3から送信されてきた上記故障コードをログとして記録したものである。
【0041】
[センタ1で用いられるデータについて]
次に、センタ1の処理で用いられるデータについて説明する。図10は、センタ1の記憶部16に記憶されるデータの一例を示すメモリマップである。記憶部16には、更新制御プログラム61、故障状況データ62が記憶される。また、図示は省略するが、その他、OTAサービスを実現するための各種プログラムやデータも記憶部16に記憶される。
【0042】
更新制御プログラム61は、上記ソフトウェア更新の処理を制御するためのプログラムである。
【0043】
故障状況データ62は、車両3が故障状態であるか否かを判定するために用いられるデータである。図11は、故障状況データ62のデータ構成の一例である。故障状況データ62は、車両特定番号63、故障状態64、故障ログ65の項目を有するテーブル形式のデータである。車両特定番号63は、上記故障管理サーバ2における故障状況データ52のものと同様、各車両を一意に識別するための番号である。故障状態64も、上記故障管理サーバ2のものと同様、その車両3が故障状態であるか否かを示すデータである。故障ログ65は、上記故障コードをログとして記録したものである。
【0044】
なお、本実施形態では、故障ログ65をセンタ1で記憶する構成を例示するが、他の実施形態では、故障ログ65はセンタ1で記憶させないようにしてもよい。この場合は、故障管理サーバ2からは、例えば車両特定番号53のみを上記故障発生情報として送信すればよい。故障ログ65をセンタ1で記憶させる場合は、センタ1側でも車両故障についてのより具体的な内容を把握することが可能となる。故障ログ65をセンタ1で記憶させない場合は、故障管理サーバ2とセンタ1との間の通信量を削減することが可能となる。
【0045】
[故障管理サーバ2で実行される処理について]
次に、故障管理サーバ2で実行される処理の詳細を説明する。図12は、故障管理サーバ2の制御部28が実行する故障管理処理の詳細を示すフローチャートである。この処理は、車両3から送信されてくる故障発生情報を故障状況データ52に登録したり、その内容を更新したりするための処理である。
【0046】
まず、ステップS1で、制御部28は、所定の車両3から送信された故障発生情報を受信したか否かを判定する。当該判定の結果、受信していない場合は、後述のステップS4に処理が進められる。
【0047】
一方、故障発生情報を受信した場合は、次に、ステップS2で、制御部28は、上記受信した故障発生情報に基づき、上記故障状況データ52を更新する(新規の故障発生情報の場合は、新規登録する)。具体的には、制御部28は、故障発生情報に含まれる車両特定番号に対応する故障状態54に「故障中」を示す値を設定する。更に、制御部28は、故障発生情報に含まれている故障コードを故障ログ55に追加する。
【0048】
次に、ステップS3で、制御部28は、上記受信した故障発生情報をセンタ1に送信する。
【0049】
次に、ステップS4で、制御部28は、車両3から送信された上記故障解消通知を受信したか否かを判定する。当該判定の結果、受信していない場合は(ステップS4でNO)、上記ステップS1に戻り、処理を繰り返す。つまり、故障発生通知および故障解消通知を待ち受ける処理が継続される。
【0050】
一方、上記故障解消通知を受信した場合は(ステップS4でYES)、ステップS5で、制御部28は、当該故障解消通知に基づいて故障状況データ52を更新する。具体的には、制御部28は、故障解消通知に含まれる車両特定番号に対応する故障状態54に「正常」を示す値を設定する。
【0051】
次に、ステップS6で、制御部28は、上記故障解消情報をセンタ1に送信する。
【0052】
以上で、故障管理サーバ2の制御部28が実行する故障管理処理の説明を終了する。
【0053】
[センタ1で実行される処理について]
次に、センタ1で実行される処理の詳細を説明する。図13は、センタ1の制御部18が実行する、故障情報更新処理の詳細を示すフローチャートである。この処理は、故障管理サーバ2から送信されてくるデータに基づいて故障状況データ62の内容を更新するための処理である。
【0054】
まず、ステップS11で、制御部18は、故障管理サーバ2から送信された故障発生情報を受信したか否かを判定する。当該判定の結果、受信していない場合は、後述のステップS13に処理が進められる。
【0055】
一方、故障発生情報を受信した場合は、次に、ステップS12で、制御部18は、上記受信した故障発生情報に基づき、上記故障状況データ62を更新する(新規の故障発生情報の場合は、新規登録する)。具体的には、制御部18は、故障発生情報に含まれる車両特定番号に対応する故障状態64に「故障中」を示す値を設定する。また、当該故障発生情報に含まれる故障コードを故障ログ65に追加する。
【0056】
次に、ステップS13で、制御部18は、故障管理サーバ2から上記故障解消通知を受信したか否かを判定する。当該判定の結果、受信していない場合は(ステップS13でNO)、上記ステップS11に戻り、処理を繰り返す。
【0057】
一方、上記故障解消通知を受信した場合は(ステップS13でYES)、ステップS14で、制御部18は、当該故障解消通知に基づいて故障状況データ62を更新する。具体的には、制御部18は、故障解消通知に含まれる車両特定番号に対応する故障状態64に「正常」を示す値を設定する。
【0058】
以上で、故障情報更新処理の説明は終了する。
【0059】
次に、図14は、センタ1の制御部18が実行する、更新制御処理の詳細を示すフローチャートである。当該処理は、OTAマスタ31からソフトウェア更新の問い合わせがあった際に、そのOTAマスタ31に係る車両3が故障中であるか否かを判定し、故障中の場合は、(更新があっても)更新処理を開始しないよう制御する処理である。
【0060】
図14において、まず、ステップS21で、制御部18は、OTAマスタ31から上記更新問い合わせを受信したか否かを判定する。当該判定の結果、受信していない場合は(ステップS21でNO)、当該更新問い合わせの待ち受けを継続する。
【0061】
一方、上記更新問い合わせを受信した場合は(ステップS21でYES)、次に、ステップS22で、制御部18は、故障状況データ62を参照して、当該更新問い合わせに含まれている車両特定番号に対応する車両3の故障状態64が「故障中」であるか否かを判定する。つまり、制御部18は、問い合わせをしてきた車両3が故障状態であるか否かを判定する。当該判定の結果、故障状態64が「故障中」の場合は(ステップS22でYES)、ステップS23で、制御部18は、更新問い合わせを送信してきたOTAマスタ31に、問い合わせ結果として、車両3が故障中である旨を示す通知(以下、故障通知)を送信する。当該故障通知には、例えば、車両3が故障しているため、車両販売整備業者に車両3を整備してもらうことを促すメッセージ等が含まれていてもよい。そして、当該更新制御処理は終了する。
【0062】
一方、故障状態64が「故障中」ではない場合は(ステップS22でNO)、次に、ステップS24で、制御部18は、配信すべきソフトウェア更新があるか否かを判定する。当該判定の結果、配信すべきソフトウェア更新がある場合は(ステップS24でYES)、ステップS25で、制御部18、当該ソフトウェア更新を車両3に適用させるための所定の更新処理(更新データのOTAマスタ31への送信等)を開始する。その後、更新処理が完了すれば、当該更新制御処理は終了する。一方、ソフトウェア更新がない場合は(ステップS24でNO)、ステップS26で、制御部18は、ソフトウェア更新は無い旨の通知をOTAマスタ31に送信する。そして、更新制御処理は終了する。
【0063】
以上で、センタ1の制御部18が実行する更新制御処理の説明を終了する。
【0064】
[OTAマスタ31で実行される処理について]
次に、OTAマスタ31で実行される処理の詳細を説明する。図15は、OTAマスタ31の制御部49が実行するソフトウェア更新処理の詳細を示すフローチャートである。本実施形態では、当該処理は、上記のように、例えば2週間に一度の頻度で定期的に実行される。
【0065】
まず、ステップS31で、制御部49は、上記更新問い合わせのためのデータを生成し、センタ1に、更新問い合わせを送信する。当該更新問い合わせには、車両特定番号や車両構成情報が含まれている。
【0066】
次に、ステップS32で、制御部49は、上記更新問い合わせの送信の結果、センタ1から上記故障通知を受信したか否かを判定する。当該判定の結果、故障通知を受信していた場合は(ステップS32でのYES)、ステップS36で、制御部49は、車両3が故障中である旨をユーザに通知する。例えば、制御部49は、所定の表示装置(図示は省略するが、例えばナビゲーション装置のモニタ)に、車両3が故障中のため更新処理が実行できない旨を示すメッセージを表示する。またこの場合、制御部49は、最寄りの車両販売整備業者までのルートを検索してナビゲーション装置のモニタに表示する制御を行ってもよい。そして、制御部49は、当該ソフトウェア更新処理を終了する。これにより、車両3が故障中である場合における、ソフトウェア更新の実行を抑制できる。
【0067】
一方、ステップS32の判定の結果、上記故障通知を受信していない場合は(ステップS32でNO)、ステップS33で、制御部49は、上記更新問い合わせの送信の結果、ソフトウェア更新があるか否かを判定する。当該判定の結果、ソフトウェア更新がある場合は(ステップS33でYES)、ステップS34で、制御部49は、ソフトウェアを更新するための処理を開始する。具体的には、制御部49は、センタ1から送信されてくる更新用データを受信し、対象となる電子制御装置33のソフトウェアを更新するための処理を開始する。
【0068】
次に、ステップS35で、制御部49は、更新処理が完了したか否かを判定する。当該判定の結果、更新処理が未完了であれば(ステップS35でNO)、制御部49は、更新処理の実行を継続する。更新処理が完了すれば(ステップS35でYES)、制御部49は、当該ソフトウェア更新処理を終了する。
【0069】
一方、上記ステップS33の判定の結果、ソフトウェア更新が無い場合は(ステップS33でNO)、上記ステップS34~S35の処理は行われず、制御部49は、当該ソフトウェア更新処理を終了する。
【0070】
以上で、ソフトウェア更新処理の説明を終了する。
【0071】
[効果]
このように、本実施形態では、故障管理サーバ2において車両3の故障発生情報が送られてくれば、その情報をセンタ1に送信するようにしている。そして、センタ1においては、当該情報を記憶しておき、OTAマスタ31からソフトウェア更新の有無の問い合わせが来たタイミングで、その車両3が故障しているか否かをセンタ1で記憶している当該情報に基づいて判定する。つまり、この時点で、センタ1は車両3に故障情報をわざわざ問い合わせる必要が無い。そして、この判定の結果、故障中の車両3に対しては、ソフトウェア更新がある場合でも、更新処理が実行されないように制御している。これにより、センタ1と車両3の間の通信量を増大させることなく、故障中の状態である車両3に対してソフトウェア更新が行われることを防ぐことができる。
【0072】
[変形例]
なお、上記実施形態では、故障状態の車両3に対してはセンタ1がその旨を知らせるメッセージ等を送るようにしている。このような場合、当該メッセージの他、例えば、その車両3から最寄りの車両販売整備業者の連絡先情報や、その業者の店舗等へのナビゲーション情報がユーザに提示されるようにしてもよい。これにより、車両3の故障状態を解消させることについて、ユーザが行動を起こしやすくすることができる。
【0073】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、センタだけでなく、プロセッサと、メモリと、車両が備えるOTAマスタおよび所定のサーバとネットワークを介して通信可能な通信装置とを備えるセンタのコンピュータが実行する更新制御方法、その方法の制御プログラム、その制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記録媒体、センタとネットワークを介して通信可能OTAマスタ、OTAマスタを備える車両と、センタと、故障情報管理サーバとを備えるソフトウェア更新システム等として捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示技術は、OTAマスタによるソフトウェア更新機能を制御するためのセンタに利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 センタ
2 故障管理サーバ
3 車両
11 プロセッサ
12 RAM
13 記憶装置
14 通信装置
21 プロセッサ
22 RAM
23 記憶装置
24 通信装置
31 OTAマスタ
32 通信モジュール
33 電子制御装置
35 バス
41 プロセッサ
42 RAM
43 ROM
44 記憶装置
46 通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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