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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
H02M3/28 P
H02M3/28 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021037776
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022138012
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中田 健一
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-005332(JP,A)
【文献】特開2019-041434(JP,A)
【文献】特開2020-150574(JP,A)
【文献】特開2022-124170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側巻線及び2次側巻線を有するトランスと、
前記1次側巻線に接続された回路であって、複数の1次側スイッチング素子及び前記複数の1次側スイッチング素子に並列接続された複数の1次側コンデンサを有する1次側フルブリッジ回路と、
前記2次側巻線に接続された回路であって、複数の2次側スイッチング素子、及び、前記複数の2次側スイッチング素子に並列接続され且つ前記複数の前記1次側コンデンサと異なる容量の複数の2次側コンデンサを有する2次側フルブリッジ回路と、
前記複数の1次側スイッチング素子及び前記複数の2次側スイッチング素子を制御することにより、前記1次側フルブリッジ回路に入力される入力電圧を、前記2次側フルブリッジ回路から出力される出力電圧に変換する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記複数の1次側スイッチング素子及び前記複数の2次側スイッチング素子を周期的に制御する制御モードとして、前記1次側巻線に印加される1次側電圧が正、負、又は0に切り替わり、且つ、前記2次側巻線に印加される2次側電圧が正、負、又は0に切り替わる両側PWM制御モードを備え、
前記両側PWM制御モードは、前記1次側電圧と前記2次側電圧との極性が反転している反転期間を含み、
前記制御回路は、前記両側PWM制御モードでは、前記反転期間の開始タイミングにおいて前記1次側巻線に流れる1次側電流の大きさが1次側閾値以上となり、且つ、前記反転期間の終了タイミングにおいて前記2次側巻線に流れる2次側電流の大きさが、前記1次側閾値とは異なる2次側閾値以上となるように、前記複数の1次側スイッチング素子及び前記複数の2次側スイッチング素子を制御するものである電力変換装置。
【請求項2】
前記複数の1次側コンデンサの容量は、前記複数の2次側コンデンサの容量よりも大きく、
前記1次側閾値は、前記2次側閾値よりも大きい請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記1次側閾値が前記2次側閾値よりも大きい場合には、前記1次側電圧のデューティ比を制御することにより、前記1次側閾値に対応する前記反転期間に設定する請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記複数の2次側コンデンサの容量は、前記複数の1次側コンデンサの容量よりも大きく、
前記2次側閾値は、前記1次側閾値よりも大きい請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記2次側閾値が前記1次側閾値よりも大きい場合には、前記2次側電圧のデューティ比を制御することにより、前記2次側閾値に対応する前記反転期間に設定する請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記両側PWM制御モードにおいて、前記反転期間の開始タイミングにおける前記1次側電流の大きさが前記1次側閾値以上となり、且つ、前記反転期間の終了タイミングにおける前記2次側電流の大きさが前記2次側閾値以上となる範囲内で、前記反転期間を制御することにより、前記2次側フルブリッジ回路からの出力電流を制御する請求項1~5のうちいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、1次側巻線及び2次側巻線を有するトランスを備えた電力変換装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の電力変換装置は、複数の1次側スイッチング素子を有する1次側フルブリッジ回路と、複数の2次側スイッチング素子を有する2次側フルブリッジ回路と、各スイッチング素子を制御する制御回路と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-26961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば電力変換装置が適用される対象や状況に応じて、1次側フルブリッジ回路に入力される入力電圧と、2次側フルブリッジ回路から出力される出力電圧との大小関係が変化する場合がある。この場合、上記大小関係に応じて、各スイッチング素子を制御する制御モードを変更すると、制御が煩雑になるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する電力変換装置は、1次側巻線及び2次側巻線を有するトランスと、前記1次側巻線に接続された回路であって、複数の1次側スイッチング素子及び前記複数の1次側スイッチング素子に並列接続された複数の1次側コンデンサを有する1次側フルブリッジ回路と、前記2次側巻線に接続された回路であって、複数の2次側スイッチング素子、及び、前記複数の2次側スイッチング素子に並列接続され且つ前記1次側コンデンサとは異なる容量の複数の2次側コンデンサを有する2次側フルブリッジ回路と、前記各スイッチング素子を制御することにより、前記1次側フルブリッジ回路に入力される入力電圧を、前記2次側フルブリッジ回路から出力される出力電圧に変換する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記各スイッチング素子を周期的に制御する制御モードとして、前記1次側巻線に入力される1次側電圧が正、負、又は0に切り替わり、且つ、前記2次側巻線に入力される2次側電圧が正、負、又は0に切り替わる両側PWM制御モードを備え、前記両側PWM制御モードは、前記1次側電圧と前記2次側電圧との極性が反転している反転期間を含み、前記制御回路は、前記両側PWM制御モードでは、前記反転期間の開始タイミングにおいて前記1次側巻線に流れる1次側電流の大きさが1次側閾値以上となり、且つ、前記反転期間の終了タイミングにおいて前記2次側巻線に流れる2次側電流の大きさが、前記1次側閾値とは異なる2次側閾値以上となるように、前記各スイッチング素子を制御するものである。
【0006】
かかる構成によれば、制御モードとして両側PWM制御モードを採用することにより、入力電圧と出力電圧との大小関係に関わらず、電圧変換を行うことができる。これにより、入力電圧と出力電圧との大小関係に応じて異なる制御モードを切り替える必要がないため、入力電圧と出力電圧との大小関係の変化に伴う制御の煩雑さを低減できる。
【0007】
また、1次側コンデンサの容量と2次側コンデンサの容量とが異なることに対応させて1次側閾値と2次側閾値とが異なっている。そして、制御回路が、反転期間の開始タイミングにおいて1次側巻線に流れる1次側電流の大きさが1次側閾値以上となり、且つ、反転期間の終了タイミングにおいて2次側巻線に流れる2次側電流の大きさが2次側閾値以上となるように各スイッチング素子を制御することにより、ソフトスイッチングが行われる。これにより、1次側コンデンサの容量と2次側コンデンサの容量とが異なる条件下での両側PWM制御モードにおいてソフトスイッチングを行うことができる。
【0008】
上記電力変換装置について、前記1次側コンデンサの容量は、前記2次側コンデンサの容量よりも大きく、前記1次側閾値は、前記2次側閾値よりも大きいとよい。
かかる構成によれば、1次側コンデンサの容量が2次側コンデンサの容量よりも大きいことに対応させて、1次側閾値が2次側閾値よりも大きくなっている。これにより、反転期間の開始タイミングにおいて1次側コンデンサの充放電を行うことができる1次側電流を確保することができるため、ソフトスイッチングを実現できる。
【0009】
上記電力変換装置について、前記制御回路は、前記1次側閾値が前記2次側閾値よりも大きい場合には、前記1次側電圧のデューティ比を制御することにより、前記1次側閾値に対応する前記反転期間に設定するとよい。
【0010】
かかる構成によれば、1次側電圧のデューティ比を制御することにより、1次側閾値に対応する反転期間が設定される。これにより、反転期間の開始タイミングにおける1次側電流の大きさを1次側閾値以上にすることができる。したがって、上述した効果を得ることができる。
【0011】
上記電力変換装置について、前記2次側コンデンサの容量は、前記1次側コンデンサの容量よりも大きく、前記2次側閾値は、前記1次側閾値よりも大きいとよい。
かかる構成によれば、2次側コンデンサの容量が1次側コンデンサの容量よりも大きいことに対応させて、2次側閾値が1次側閾値よりも大きくなっている。これにより、反転期間の終了タイミングにおいて2次側コンデンサの充放電を行うことができる2次側電流を確保することができるため、ソフトスイッチングを実現できる。
【0012】
上記電力変換装置について、前記制御回路は、前記2次側閾値が前記1次側閾値よりも大きい場合には、前記2次側電圧のデューティ比を制御することにより、前記2次側閾値に対応する前記反転期間に設定するとよい。
【0013】
かかる構成によれば、2次側電圧のデューティ比を制御することにより、2次側閾値に対応する反転期間が設定される。これにより、反転期間の終了タイミングにおける2次側電流の大きさを2次側閾値以上にすることができる。したがって、上述した効果を得ることができる。
【0014】
上記電力変換装置について、前記制御回路は、前記両側PWM制御モードにおいて、前記反転期間の開始タイミングにおける前記1次側電流の大きさが前記1次側閾値以上となり、且つ、前記反転期間の終了タイミングにおける前記2次側電流の大きさが前記2次側閾値以上となる範囲内で、前記反転期間を制御することにより、前記2次側フルブリッジ回路からの出力電流を制御するとよい。
【0015】
かかる構成によれば、ソフトスイッチングを行いつつ出力電流を制御できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、入力電圧と出力電圧との大小関係の変化に伴う制御の煩雑さを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電力変換装置及び電源システムの電気的構成を示す回路図。
図2】(a)1次側電圧を示すグラフ、(b)2次側電圧を示すグラフ。
図3】両側PWM制御モードにおける各スイッチング素子のスイッチングパターンを示す図。
図4】両側PWM制御モード処理を示すフローチャート。
図5】(a)1次側電圧を示すグラフ、(b)2次側電圧を示すグラフ、(c)1次側電流及び2次側電流を示すグラフ、(d)出力電流を示すグラフ。
図6】(a)1次側電圧を示すグラフ、(b)2次側電圧を示すグラフ、(c)1次側電流及び2次側電流を示すグラフ、(d)出力電流を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、電力変換装置及び当該電力変換装置を備えた電源システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、電源システム100は、直流電源110と、負荷120と、電力変換装置10と、を備える。直流電源110は、直流電圧を出力する電圧源である。負荷120は、例えば、直流電力を充放電可能な蓄電装置であり、一例としては二次電池である。二次電池とは、例えば、リチウムイオン蓄電池や鉛蓄電池である。
【0019】
本実施形態の電力変換装置10は、いわゆるデュアルアクティブブリッジ方式のDC/DCコンバータである。電力変換装置10は、直流電源110と負荷120との間に設けられている。電力変換装置10は、直流電源110の電力を変換して負荷120に出力可能である。また、電力変換装置10は、負荷120の電力を変換して直流電源110に出力可能である。以下の説明では、1次側を入力、2次側を出力として取り扱う。すなわち、電力変換装置10は、直流電源110から入力された直流電圧を変換して負荷120に出力するものとする。
【0020】
電力変換装置10は、トランス20と、1次側フルブリッジ回路30と、2次側フルブリッジ回路40と、制御回路50と、を備える。
トランス20は、磁性体のコア21と、コア21に巻きつけられた1次側巻線22及び2次側巻線23と、を有する。すなわち、トランス20は、所謂絶縁型である。トランス20は、リアクトルLを有する。リアクトルLは、チョークコイルなどの素子であってもよいし、1次側巻線22及び2次側巻線23の漏れインダクタンスであってもよい。
【0021】
1次側フルブリッジ回路30は、複数の1次側スイッチング素子として、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2と、第3スイッチング素子Q3と、第4スイッチング素子Q4と、を有する。また、1次側フルブリッジ回路30は、複数の1次側ダイオードD1~D4と、複数の1次側コンデンサC1~C4と、を有する。
【0022】
本実施形態では、1次側スイッチング素子Q1~Q4としてn型のMOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorが用いられている。ただし、これに限られず、p型のMOSFETやIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor等の他のスイッチング素子を用いてもよい。
【0023】
4つの1次側スイッチング素子Q1~Q4は、第1レグ31と、第2レグ32とを構成する。第1レグ31は、第1スイッチング素子Q1のソースと第2スイッチング素子Q2のドレインとを第1接続線33で接続した直列接続体である。第2レグ32は、第3スイッチング素子Q3のソースと第4スイッチング素子Q4のドレインとを第2接続線34で接続した直列接続体である。第1レグ31及び第2レグ32は、互いに並列に接続されるように1次側端子35,36に接続されている。すなわち、1次側フルブリッジ回路30は、1次側端子35,36に接続されているといえる。このとき、第1スイッチング素子Q1及び第3スイッチング素子Q3が上アームを構成し、第2スイッチング素子Q2及び第4スイッチング素子Q4が下アームを構成する。
【0024】
1次側ダイオードD1~D4及び1次側コンデンサC1~C4は、それぞれ1次側スイッチング素子Q1~Q4に並列接続されている。1次側ダイオードD1~D4は、寄生ダイオードであってもよいし、素子であってもよい。1次側ダイオードD1~D4は、1次側スイッチング素子Q1~Q4に対して逆接続されている。1次側コンデンサC1~C4は、寄生容量、素子、あるいは寄生容量と素子の組み合わせであってもよい。
【0025】
1次側フルブリッジ回路30は、トランス20の1次側巻線22に接続されている。詳細には、1次側フルブリッジ回路30の第1接続線33及び第2接続線34は、それぞれ1次側巻線22に接続されている。そのため、1次側巻線22には、第2接続線34と第1接続線33との電位差と等しい電圧V1がかかる。以下の説明では、1次側巻線22に印加される電圧V1を「1次側電圧V1」と称することがある。なお、1次側電圧V1は、第1接続線33の電位が第2接続線34の電位より高い場合を正とする。
【0026】
なお、直流電源110は、1次側端子35,36に接続されている。したがって、1次側フルブリッジ回路30は、1次側端子35,36を介して直流電源110に接続される。
【0027】
1次側電圧センサ37は、1次側フルブリッジ回路30に入力される入力電圧Vinを測定するための電圧計である。1次側電圧センサ37は、1次側フルブリッジ回路30に対して並列となるように1次側端子35,36に接続されている。
【0028】
1次側電流センサ38は、直流電源110から1次側フルブリッジ回路30への入力電流Iinを測定するための電流計である。1次側電流センサ38としては、シャント抵抗、ホール素子など任意の形態を採用することができる。
【0029】
2次側フルブリッジ回路40は、複数の2次側スイッチング素子として、第5スイッチング素子Q5と、第6スイッチング素子Q6と、第7スイッチング素子Q7と、第8スイッチング素子Q8と、を有する。また、2次側フルブリッジ回路40は、複数の2次側ダイオードD5~D8と、複数の2次側コンデンサC5~C8と、を有する。
【0030】
本実施形態では、2次側スイッチング素子Q5~Q8としてn型のMOSFETが用いられているが、p型のMOSFETやIGBT等の他のスイッチング素子を用いてもよい。
【0031】
4つの2次側スイッチング素子Q5~Q8は、第3レグ41と、第4レグ42とを構成する。第3レグ41は、第5スイッチング素子Q5のソースと第6スイッチング素子Q6のドレインとを第3接続線43で接続した直列接続体である。第4レグ42は、第7スイッチング素子Q7のソースと第8スイッチング素子Q8のドレインとを第4接続線44で接続した直列接続体である。第3レグ41及び第4レグ42は、互いに並列に接続されるように2次側端子45,46に接続されている。すなわち、2次側フルブリッジ回路40は、2次側端子45,46に接続されているといえる。このとき、第5スイッチング素子Q5及び第7スイッチング素子Q7が上アームを構成し、第6スイッチング素子Q6及び第8スイッチング素子Q8が下アームを構成する。
【0032】
2次側ダイオードD5~D8及び2次側コンデンサC5~C8は、それぞれ2次側スイッチング素子Q5~Q8に並列接続されている。2次側ダイオードD5~D8は、寄生ダイオードであってもよいし、素子であってもよい。2次側ダイオードD5~D8は、2次側スイッチング素子Q5~Q8に対して逆接続されている。2次側コンデンサC5~C8は、寄生容量、素子、あるいは寄生容量と素子の組み合わせであってもよい。すなわち、複数のコンデンサC1~C8は、それぞれ、複数の1次側スイッチング素子Q1~Q4及び複数の2次側スイッチング素子Q5~Q8に対して並列に接続されている。
【0033】
ここで、本実施形態では、1次側コンデンサC1~C4の容量と、2次側コンデンサC5~C8の容量とが異なっている。例えば、1次側コンデンサC1~C4の容量は、2次側コンデンサC5~C8の容量よりも大きくてもよい。また、これに代えて、2次側コンデンサC5~C8の容量は、1次側コンデンサC1~C4の容量よりも大きくてもよい。
【0034】
1次側コンデンサC1~C4の容量と、2次側コンデンサC5~C8の容量とが異なる要因の一例について説明する。例えばトランス20の巻数比が1以外である場合、1次側フルブリッジ回路30に流れる電流と、2次側フルブリッジ回路40に流れる電流とが異なる場合が生じ得る。この場合、当該巻数比に対応させて、1次側スイッチング素子Q1~Q4と2次側スイッチング素子Q5~Q8とで、異なる仕様の素子を採用する場合があり得る。すると、1次側コンデンサC1~C4の容量と、2次側コンデンサC5~C8の容量とが異なる場合が生じ得る。なお、異なる仕様とは、例えば1次側スイッチング素子Q1~Q4と2次側スイッチング素子Q5~Q8とで定格電流が異なるといったことが考えられる。
【0035】
2次側フルブリッジ回路40の第3接続線43及び第4接続線44は、それぞれ2次側巻線23に接続されている。そのため、2次側巻線23には、第3接続線43と第4接続線44との電位差と等しい電圧V2がかかる。以下の説明では、2次側巻線23に印加される電圧V2を「2次側電圧V2」と称することがある。なお、2次側電圧V2は、第3接続線43の電位が第4接続線44の電位より高い場合を正とする。
【0036】
2次側端子45,46は、電力変換装置10と負荷120とを接続するのに用いられる。負荷120が2次側端子45,46に接続されることにより、2次側フルブリッジ回路40が2次側端子45,46を介して負荷120に接続される。なお、電力変換装置10は、負荷120と接続可能であればよい。ただし、これに限らず、電力変換装置10が負荷120を備える構成でもよい。
【0037】
2次側電圧センサ47は、2次側フルブリッジ回路40から出力される出力電圧Voutを測定するための電圧計である。2次側電圧センサ47は、2次側フルブリッジ回路40に対して並列となるように2次側端子45,46に接続されている。
【0038】
なお、負荷120が蓄電装置である場合、負荷120が2次側端子45,46に接続されると、2次側電圧センサ47によって、出力電圧Voutとして負荷120の電圧が検出される。
【0039】
2次側電流センサ48は、2次側フルブリッジ回路40から出力される出力電流Ioutを測定するための電流計である。2次側電流センサ48としては、シャント抵抗、ホール素子など任意の形態を採用することができる。
【0040】
制御回路50は、両電圧センサ37,47と接続されているとともに、両電流センサ38,48と接続されている。制御回路50は、1次側電圧センサ37から入力電圧Vinを、2次側電圧センサ47から出力電圧Voutを、それぞれ取得する。制御回路50は、1次側電流センサ38から入力電流Iinを、2次側電流センサ48から出力電流Ioutを、それぞれ取得する。
【0041】
制御回路50は、複数の1次側スイッチング素子Q1~Q4及び複数の2次側スイッチング素子Q5~Q8を周期的に制御することにより、入力電圧Vinを出力電圧Voutに変換するものである。本実施形態では、1次側スイッチング素子Q1~Q4及び2次側スイッチング素子Q5~Q8は、ともに所定の周期Tでスイッチング制御される。
【0042】
なお、制御回路50の具体的なハードウェア構成は任意である。例えば、制御回路50は、スイッチング制御を行うための専用のハードェア回路を有する構成でもよい。例えば、制御回路50は、スイッチング制御を行うための制御プログラムや必要な情報が記憶されたメモリと、制御プログラムに基づいてスイッチング制御を行うCPUとを有する構成でもよい。
【0043】
次に、1次側スイッチング素子Q1~Q4及び2次側スイッチング素子Q5~Q8を制御する制御モードについて説明する。以下の説明では、各ダイオードD1~D8をそれぞれ「第nダイオードDn」と、各コンデンサC1~C8をそれぞれ「第nコンデンサCn」と称することがある。なお、nは1~8の自然数である。
【0044】
本実施形態の制御回路50は、各スイッチング素子Q1~Q8を制御する制御モードとして、両側PWM制御モードを備えている。両側PWM制御モードについて説明する。
図2(a)及び図2(b)に示すように、両側PWM制御モードは、1次側電圧V1及び2次側電圧V2の双方が正、負、又は「0」に切り替わるモードである。この場合、1次側電圧V1及び2次側電圧V2は、所定のデューティ比で、正、負又は0に周期的に切り替わっているといえる。
【0045】
ちなみに、2次側電圧V2が「0」である場合、出力電流Ioutが「0」となる。したがって、両側PWM制御モードは、1周期内において出力電流Ioutが「0」となる期間を有する制御モードの一種であるともいえる。
【0046】
図3に示すように、両側PWM制御モードでは、各スイッチング素子Q1~Q8のスイッチングパターンとして、例えば、第1パターンP1、第2パターンP2、第3パターンP3、第4パターンP4、第5パターンP5、第6パターンP6、第7パターンP7、第8パターンP8が設定されている。なお、以下の説明では、各スイッチング素子Q1~Q8のスイッチングパターンを単に「スイッチングパターン」と称することがある。
【0047】
図3に示すように、第1パターンP1は、スイッチング素子Q1,Q4,Q6,Q7がON状態であり、スイッチング素子Q2,Q3,Q5,Q8がOFF状態のスイッチングパターンである。この場合、図2に示すように、1次側電圧V1が正となり、2次側電圧V2が負となる。
【0048】
図3に示すように、第2パターンP2は、スイッチング素子Q1,Q4,Q6,Q8がON状態であり、スイッチング素子Q2,Q3,Q5,Q7がOFF状態のスイッチングパターンである。この場合、図2に示すように、1次側電圧V1が正となり、2次側電圧V2が「0」となる。
【0049】
図3に示すように、第3パターンP3は、スイッチング素子Q1,Q4,Q5,Q8がON状態であり、スイッチング素子Q2,Q3,Q6,Q7がOFF状態のスイッチングパターンである。この場合、図2に示すように、1次側電圧V1が正となり、2次側電圧V2が正となる。
【0050】
図3に示すように、第4パターンP4は、スイッチング素子Q1,Q3,Q5,Q8がON状態であり、スイッチング素子Q2,Q4,Q6,Q7がOFF状態のスイッチングパターンである。この場合、図2に示すように、1次側電圧V1が「0」となり、2次側電圧V2が正となる。
【0051】
図3に示すように、第5パターンP5は、スイッチング素子Q2,Q3,Q5,Q8がON状態であり、スイッチング素子Q1,Q4,Q6,Q7がOFF状態のスイッチングパターンである。この場合、図2に示すように、1次側電圧V1が負となり、2次側電圧V2が正となる。
【0052】
図3に示すように、第6パターンP6は、スイッチング素子Q2,Q3,Q5,Q7がON状態であり、スイッチング素子Q1,Q4,Q6,Q8がOFF状態のスイッチングパターンである。この場合、図2に示すように、1次側電圧V1が負となり、2次側電圧V2が「0」となる。
【0053】
図3に示すように、第7パターンP7は、スイッチング素子Q2,Q3,Q6,Q7がON状態であり、スイッチング素子Q1,Q4,Q5,Q8がOFF状態のスイッチングパターンである。この場合、図2に示すように、1次側電圧V1が負となり、2次側電圧V2が負となる。
【0054】
図3に示すように、第8パターンP8は、スイッチング素子Q2,Q4,Q6,Q7がON状態であり、スイッチング素子Q1,Q3,Q5,Q8がOFF状態のスイッチングパターンである。この場合、図2に示すように、1次側電圧V1が「0」となり、2次側電圧V2が負となる。
【0055】
制御回路50は、両側PWM制御モードにおいて、スイッチングパターンを、P1→P2→P3→P4→P5→P6→P7→P8の順に順次切り替える動作を1単位として、その単位動作を周期Tで繰り返し実行する。これにより、1次側電圧V1と2次側電圧V2とが所定の位相差で順次変化し、電圧変換(換言すれば電力変換)が行われる。この場合、制御回路50は、位相差を設けた状態で1次側フルブリッジ回路30と2次側フルブリッジ回路40とを制御するものともいえる。
【0056】
特に、両側PWM制御モードでは、各スイッチング素子Q1~Q8を制御することにより、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの大小関係に関わらず、電圧変換を行うことができる。すなわち、両側PWM制御モードは、昇降圧が可能な制御モードである。
【0057】
ここで、両側PWM制御モードでは、パターンP1~P4までが半周期(T/2)であり、パターンP5~P8までが半周期(T/2)である。そして、パターンP1~P4とパターンP5~P8とは、極性が反転している点を除いて同一態様となっている。このため、以下では、パターンP1~P4について詳細に説明し、パターンP5~P8の具体的な制御態様については説明を省略する。
【0058】
図2に示すように、両側PWM制御モードは、1次側電圧V1と2次側電圧V2との極性が反転している反転期間Φを含む。詳細には、両側PWM制御モードは、反転期間Φと伝送期間Wとによって構成されている。伝送期間Wは、半周期における反転期間Φ以外の期間である。本実施形態では、反転期間Φは、第1パターンP1が設定されている期間であり、伝送期間Wは、パターンP2~P4が設定されている期間である。
【0059】
伝送期間Wは、1次側電圧V1が正となっている入力期間T1と、2次側電圧V2が正となっている出力期間T2とを含む。入力期間T1は、パターンP2,P3が設定されている期間であり、出力期間T2は、パターンP3,P4が設定されている期間である。つまり、第3パターンP3が設定されている期間は、入力期間T1及び出力期間T2の双方に含まれる。
【0060】
両側PWM制御モードにおいて、出力電流Ioutは、反転期間Φと、両期間T1,T2とに依存する。このため、制御回路50は、反転期間Φ及び両期間T1,T2を制御することにより、出力電流Ioutを制御することができる。反転期間Φ及び両期間T1,T2は、例えば、1次側フルブリッジ回路30及び2次側フルブリッジ回路40の位相差(換言すれば1次側電圧V1と2次側電圧V2との位相差)、1次側スイッチング素子Q1~Q4のデューティ比、及び2次側スイッチング素子Q5~Q8のデューティ比に依存する。したがって、制御回路50は、例えば上記パラメータを制御することによって反転期間Φ及び両期間T1,T2を制御し、それを通じて出力電流Ioutを制御してもよい。なお、反転期間Φ及び両期間T1,T2を制御するパラメータは、上記に限られず、例えば第1レグ31及び第2レグ32間の位相差、又は、第3レグ41及び第4レグ42間の位相差でもよい。
【0061】
なお、パターンP5~P8における反転期間Φは、第5パターンP5が設定されている期間であり、伝送期間Wは、パターンP6~P8が設定されている期間である。そして、パターンP1~P4とパターンP5~P8とは極性が反転しているため、パターンP5~P8において、入力期間T1は、1次側電圧V1が負となっている期間であり、出力期間T2は、2次側電圧V2が負となっている期間である。
【0062】
図1に示すように、制御回路50は、負荷120を制御する負荷制御装置121と通信可能に構成されている。制御回路50は、負荷制御装置121から要求電力Prを受信した場合に、両側PWM制御モードにおいて要求電力Prを負荷120に供給できるように両側PWM制御モード処理を実行する。
【0063】
図4を用いて両側PWM制御モード処理について説明する。
図4に示すように、制御回路50は、ステップS101にて、要求電力Pr及び2次側電圧センサ47の検出結果に基づいて、目標電流Itを設定する。その後、制御回路50は、ステップS102にて、目標電流Itとソフトスイッチング条件を満たす反転期間Φ及び両期間T1,T2を導出する。
【0064】
ここで、図5を用いてソフトスイッチング条件について説明する。図5(a)は1次側電圧V1の波形を示し、図5(b)は2次側電圧V2の波形を示し、図5(c)は1次側電流IL及び2次側電流ISの波形を示し、図5(d)は出力電流Ioutの波形を示す。1次側電流ILは1次側巻線22に流れる電流であり、2次側電流ISは2次側巻線23に流れる電流である。本実施形態では、説明の便宜上、1次側電流ILと2次側電流ISとが同一であるとする。
【0065】
図5(c)に示すように、両側PWM制御モードにおけるソフトスイッチング条件は、(A)反転期間Φの開始タイミングにおいて1次側電流ILの大きさが1次側閾値ILmin以上となることを含む。換言すれば、ソフトスイッチング条件は、1次側電流ILの大きさが1次側閾値ILmin以上となっている状態で、スイッチングパターンが第8パターンP8から第1パターンP1に切り替わることを含む。1次側閾値ILminは、例えば1次側コンデンサC1~C4の容量に基づいて設定されるものであり、例えば1次側電流ILを用いて1次側コンデンサC1~C4の充放電を行うために必要な電流の大きさである。なお、反転期間Φの開始タイミングにおいて1次側電流ILは負であるため、(A)の条件は、1次側電流ILが-ILmin以下となることともいえる。
【0066】
両側PWM制御モードにおけるソフトスイッチング条件は、(B)反転期間Φの終了タイミングにおいて2次側電流ISの大きさが2次側閾値ISmin以上となることを含む。換言すれば、ソフトスイッチング条件は、2次側電流ISの大きさが2次側閾値ISmin以上となっている状態で、スイッチングパターンが第1パターンP1から第2パターンP2に切り替わることを含む。2次側閾値ISminは、例えば2次側コンデンサC5~C8の容量に基づいて設定されるものであり、例えば2次側電流ISを用いて2次側コンデンサC5~C8の充放電を行うために必要な電流の大きさである。なお、反転期間Φの終了タイミングにおいて2次側電流ISは正であるため、(B)の条件は、2次側電流ISが2次側閾値ISmin以上となることともいえる。
【0067】
本実施形態の制御回路50は、ステップS102では、(A)及び(B)の条件を満たしつつ目標電流Itを実現することができる反転期間Φ及び両期間T1,T2を導出する。詳細には、制御回路50は、(A)及び(B)の条件を満たす範囲内で目標電流Itに対応する反転期間Φを導出することにより、出力電流Ioutが目標電流Itとなるように制御する。すなわち、制御回路50は、(A)及び(B)の条件を満たす範囲内で反転期間Φを制御することにより出力電流Ioutを制御しているといえる。
【0068】
なお、反転期間Φ及び両期間T1,T2の具体的な導出態様は任意であり、例えば目標電流Itと、反転期間Φ及び両期間T1,T2とが対応付けられたテーブルを参照することによって導出する構成でもよいし、計算によって導出する構成でもよい。
【0069】
図4に示すように、制御回路50は、ステップS102の処理の実行後、ステップS103に進み、ステップS102にて導出された反転期間Φ及び両期間T1,T2に基づいて、各スイッチング素子Q1~Q8のスイッチング態様を決定する。詳細には、制御回路50は、ステップS102にて導出された反転期間Φ及び両期間T1,T2となるように、両フルブリッジ回路30,40間の位相差と、両スイッチング素子Q1~Q4,Q5~Q8のデューティ比とを決定する。なお、制御回路50は、ステップS102にて導出された反転期間Φ及び両期間T1,T2となるように各スイッチングパターンの設定期間を決定しているとも言える。
【0070】
そして、制御回路50は、ステップS104にて、決定されたスイッチング態様で各スイッチング素子Q1~Q8のスイッチング制御を行う。
次に図5及び図6を用いて本実施形態の作用について説明する。
【0071】
まず、図5を用いて、1次側コンデンサC1~C4の容量が2次側コンデンサC5~C8の容量よりも大きい場合について説明する。図5は、1次側コンデンサC1~C4の容量が2次側コンデンサC5~C8の容量よりも大きい状況下における各電圧V1,V2及び各電流IL,IS,Ioutの一例を示すグラフである。なお、図5の二点鎖線は、比較対象として1次側閾値ILminが2次側閾値ISminと同一である場合の各電圧V1,V2及び各電流IL,IS,Ioutの波形を示す。
【0072】
図5に示すように、1次側コンデンサC1~C4の容量が2次側コンデンサC5~C8の容量よりも大きい場合、1次側閾値ILminの大きさは2次側閾値ISminの大きさよりも大きくなる。かかる構成においては、(A)及び(B)の条件を満たす反転期間Φとなるように各スイッチング素子Q1~Q8が制御される。これにより、(A)及び(B)の条件を満たす。この場合、反転期間Φの開始タイミングの1次側電流ILの大きさが、反転期間Φの終了タイミングの2次側電流ISの大きさよりも大きくなる。
【0073】
ここで、図5の実線及び二点鎖線に示すように、1次側閾値ILminが2次側閾値ISminと同一である場合と比較して、反転期間Φが大きくなっており、当該反転期間Φに対応させて1次側電圧V1の波形(詳細にはデューティ比)が変化している。
【0074】
すなわち、本実施形態の制御回路50は、1次側閾値ILminが2次側閾値ISminよりも大きい場合、両閾値ILmin,ISminの違いに対応させて1次側電圧V1のデューティ比を制御することにより、1次側閾値ILminに対応する反転期間Φに設定しているといえる。詳細には、制御回路50は、(A)及び(B)の条件を満たす反転期間Φとなるように、両閾値ILmin,ISminの違いに対応させて1次側電圧V1のデューティ比を制御している。なお、1次側電圧V1のデューティ比は、上述したとおり、各スイッチング素子Q1~Q8のデューティ比、各レグ31,32間の位相差又は各41,42間の位相差などによって制御されるパラメータである。
【0075】
次に図6を用いて、2次側コンデンサC5~C8の容量が1次側コンデンサC1~C4の容量よりも大きい場合について説明する。図6は、2次側コンデンサC5~C8の容量が1次側コンデンサC1~C4の容量よりも大きい状況下における各電圧V1,V2及び各電流IL,IS,Ioutの一例を示すグラフである。詳細には、図6(a)は1次側電圧V1の波形を示し、図6(b)は2次側電圧V2の波形を示し、図6(c)は1次側電流IL及び2次側電流ISの波形を示し、図6(d)は出力電流Ioutの波形を示す。なお、図6の二点鎖線は、比較対象として2次側閾値ISminが1次側閾値ILminと同一である場合の各電圧V1,V2及び各電流IL,IS,Ioutの波形を示す。
【0076】
図6に示すように、2次側コンデンサC5~C8の容量が1次側コンデンサC1~C4の容量よりも大きい場合、2次側閾値ISminの大きさは1次側閾値ILminの大きさよりも大きくなる。かかる構成においては、(A)及び(B)の条件を満たす反転期間Φとなるように各スイッチング素子Q1~Q8が制御される。これにより、(A)及び(B)の条件を満たす。例えば、反転期間Φの終了タイミングの2次側電流ISの大きさが、反転期間Φの開始タイミングの1次側電流ILの大きさよりも大きくなる。
【0077】
ここで、図6の実線及び二点鎖線に示すように、2次側閾値ISminが1次側閾値ILminと同一である場合と比較して、反転期間Φが大きくなっており、当該反転期間Φに対応させて2次側電圧V2の波形(詳細にはデューティ比)が変化している。
【0078】
すなわち、本実施形態の制御回路50は、2次側閾値ISminが1次側閾値ILminよりも大きい場合、両閾値ILmin,ISminの違いに対応させて2次側電圧V2のデューティ比を制御することにより、2次側閾値ISminに対応する反転期間Φに設定しているといえる。詳細には、制御回路50は、(A)及び(B)の条件を満たす反転期間Φとなるように、両閾値ILmin,ISminの違いに対応させて2次側電圧V2のデューティ比を制御している。なお、2次側電圧V2のデューティ比は、上述したとおり、各スイッチング素子Q1~Q8のデューティ比、各レグ31,32間の位相差又は各41,42間の位相差などによって制御されるパラメータである。
【0079】
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)電力変換装置10は、1次側巻線22及び2次側巻線23を有するトランス20と、1次側フルブリッジ回路30と、2次側フルブリッジ回路40と、制御回路50と、を備えている。
【0080】
1次側フルブリッジ回路30は、1次側巻線22に接続されている。1次側フルブリッジ回路30は、複数の1次側スイッチング素子Q1~Q4と、1次側スイッチング素子Q1~Q4に並列接続された1次側コンデンサC1~C4と、を備えている。
【0081】
2次側フルブリッジ回路40は、2次側巻線23に接続されている。2次側フルブリッジ回路40は、複数の2次側スイッチング素子Q5~Q8と、2次側スイッチング素子Q5~Q8に並列接続された2次側コンデンサC5~C8と、を備えている。
【0082】
制御回路50は、各スイッチング素子Q1~Q8を周期的に制御する制御モードとして両側PWM制御モードを備えている。両側PWM制御モードは、1次側巻線22に入力される1次側電圧V1が正、負、又は0に切り替わり、且つ、2次側巻線23に入力される2次側電圧V2が正、負、又は0に切り替わるモードである。両側PWM制御モードは、1次側電圧V1と2次側電圧V2との極性が反転している反転期間Φを含む。
【0083】
1次側コンデンサC1~C4の容量と2次側コンデンサC5~C8の容量とは異なっている。これに対応させて、1次側閾値ILminと2次側閾値ISminとは異なっている。そして、制御回路50は、両側PWM制御モードでは、(A)及び(B)の条件を満たすように各スイッチング素子Q1~Q8を制御する。(A)の条件は、反転期間Φの開始タイミングにおいて1次側巻線22に流れる1次側電流ILの大きさが1次側閾値ILmin以上であり、(B)の条件は、反転期間Φの終了タイミングにおいて2次側巻線23に流れる2次側電流ISの大きさが2次側閾値ISmin以上である。
【0084】
かかる構成によれば、制御モードとして両側PWM制御モードを採用することにより、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの大小関係に関わらず、電圧変換を行うことができる。これにより、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの大小関係に応じて異なる制御モードを切り替える必要がないため、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの大小関係の変化に伴う制御の煩雑さを低減できる。
【0085】
また、1次側コンデンサC1~C4の容量と2次側コンデンサC5~C8の容量とが異なることに対応させて1次側閾値ILminと2次側閾値ISminとが異なっている。そして、制御回路50が(A)及び(B)の条件を満たすように各スイッチング素子Q1~Q8を制御することにより、1次側コンデンサC1~C4の容量と2次側コンデンサC5~C8の容量が異なる場合であってもソフトスイッチングが行われる。これにより、1次側コンデンサC1~C4の容量と2次側コンデンサC5~C8の容量とが異なる条件下での両側PWM制御モードにおいてソフトスイッチングを行うことができる。
【0086】
(2)1次側コンデンサC1~C4の容量は、2次側コンデンサC5~C8の容量よりも大きい。1次側閾値ILminは、2次側閾値ISminよりも大きい。
かかる構成によれば、1次側コンデンサC1~C4の容量が2次側コンデンサC5~C8の容量よりも大きいことに対応させて、1次側閾値ILminが2次側閾値ISminよりも大きくなっている。これにより、反転期間Φの開始タイミングにおいて1次側コンデンサC1~C4の充放電を行うことができる1次側電流ILを確保することができるため、ソフトスイッチングを実現できる。
【0087】
(3)制御回路50は、1次側閾値ILminが2次側閾値ISminよりも大きい場合には、1次側電圧V1のデューティ比を制御することにより、1次側閾値ILminに対応する反転期間Φに設定する。
【0088】
かかる構成によれば、1次側電圧V1のデューティ比を制御することにより、1次側閾値ILminに対応する反転期間Φが設定される。これにより、反転期間Φの開始タイミングにおける1次側電流ILの大きさを1次側閾値ILmin以上にすることができる。したがって、(2)の効果を得ることができる。
【0089】
(4)2次側コンデンサC5~C8の容量は、1次側コンデンサC1~C4の容量よりも大きい。2次側閾値ISminは、1次側閾値ILminよりも大きい。
かかる構成によれば、2次側コンデンサC5~C8の容量が1次側コンデンサC1~C4の容量よりも大きいことに対応させて、2次側閾値ISminが1次側閾値ILminよりも大きくなっている。これにより、反転期間Φの終了タイミングにおいて2次側コンデンサC5~C8の充放電を行うことができる2次側電流ISを確保することができるため、ソフトスイッチングを実現できる。
【0090】
(5)制御回路50は、2次側閾値ISminが1次側閾値ILminよりも大きい場合には、2次側電圧V2のデューティ比を制御することにより、2次側閾値ISminに対応する反転期間Φに設定する。
【0091】
かかる構成によれば、2次側電圧V2のデューティ比を制御することにより、2次側閾値ISminに対応する反転期間Φが設定される。これにより、反転期間Φの終了タイミングにおける2次側電流ISの大きさを2次側閾値ISmin以上にすることができる。したがって、(4)の効果を得ることができる。
【0092】
(6)制御回路50は、(A)及び(B)の条件を満たす範囲内で反転期間Φを制御することにより出力電流Ioutを制御する。
かかる構成によれば、ソフトスイッチングを行いつつ出力電流Ioutを制御できる。これにより、目標電流Itを出力することができる。
【0093】
上記実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態及び以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
○ 電力変換装置10は、双方向の電圧変換を行ってもよい。この場合、2次側フルブリッジ回路40に入力される電圧を入力電圧Vin、1次側フルブリッジ回路30から出力される電圧を出力電圧Voutとしてもよい。このとき、例えば、パターンP1~P8として、1次側スイッチング素子Q1~Q4と2次側スイッチング素子Q5~Q8とを入れ替えたものを用いればよい。
【0094】
○ 負荷120は、蓄電装置に限られず任意であり、例えば目標電圧で駆動する駆動装置でもよい。この場合、負荷制御装置121は、要求電流と要求電圧とを制御回路50に送信する。制御回路50は、出力電圧Voutが要求電圧となり且つ出力電流Ioutが要求電流となる範囲内でソフトスイッチング条件を満たすように各スイッチング素子Q1~Q8を制御するとよい。
【符号の説明】
【0095】
10…電力変換装置、20…トランス、22…1次側巻線、23…2次側巻線、30…1次側フルブリッジ回路、40…2次側フルブリッジ回路、50…制御回路、V1…1次側電圧、V2…2次側電圧、IL…1次側電流、ILmin…1次側閾値、ISmin…2次側閾値、IS…2次側電流、Iout…出力電流、Q1~Q4…1次側スイッチング素子、Q5~Q8…2次側スイッチング素子、C1~C4…1次側コンデンサ、C5~C8…2次側コンデンサ、W…伝送期間、T1…入力期間、T2…出力期間、Φ…反転期間、Vin…入力電圧、Vout…出力電圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6