IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アドヴィックスの特許一覧

<>
  • 特許-車両用制動装置 図1
  • 特許-車両用制動装置 図2
  • 特許-車両用制動装置 図3
  • 特許-車両用制動装置 図4
  • 特許-車両用制動装置 図5
  • 特許-車両用制動装置 図6
  • 特許-車両用制動装置 図7
  • 特許-車両用制動装置 図8
  • 特許-車両用制動装置 図9
  • 特許-車両用制動装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】車両用制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/138 20060101AFI20240903BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20240903BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20240903BHJP
   B60T 8/40 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B60T13/138 A
B60T13/68
B60T17/18
B60T8/40 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021038710
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138690
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 康典
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-137084(JP,A)
【文献】特開2003-154930(JP,A)
【文献】特開2002-255021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/138
B60T 13/68
B60T 17/18
B60T 8/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ、及び電気モータの駆動に応じて前記シリンダ内で摺動するピストンを備え、前記シリンダ内には、前記ピストンの前進に応じてフルードをホイルシリンダに供給する液圧室と、前記ピストンの前進に伴い容積が大きくなる背面室と、が形成されている電動シリンダと、
前記電気モータを制御する制御部と、
前記背面室に接続されている背面液路と、
前記背面液路に設けられ、前記ピストンが後退する場合に、前記背面室から前記背面液路を通るフルードの流れに対して抵抗となるように構成されたオリフィスと、
を備える、
車両用制動装置。
【請求項2】
前記オリフィスは、前記背面液路に設けられた電磁弁によって形成され、
前記制御部は、前記ピストンが前進した状態で前記電気モータが制御不能状態となった場合には、前記電気モータが制御可能状態である場合よりも、前記電磁弁の流路が狭くなるように前記電磁弁を制御する、
請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記ピストンを所定量前進させ且つ前記電磁弁が絞り状態となるように制御した上で、前記電気モータへの制御電流の印加を停止し、その後の前記電気モータの回転速度に基づいて前記電磁弁が前記絞り状態であるか否かを判断する異常判断部を備える、
請求項2に記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記異常判断部により前記電磁弁が前記絞り状態であると判断されなかった場合、前記異常判断部により前記電磁弁が前記絞り状態であると判断された場合と比較して、前記電気モータの駆動量を抑制する抑制制御を実行する、
請求項3に記載の車両用制動装置。
【請求項5】
前記電動シリンダとは別に設けられ、前記ホイルシリンダを加圧可能な加圧装置と、
前記抑制制御の実行により、制動要求に対して制動力が不足すると判断した場合に、不足分を補うように前記加圧装置を作動させる特定加圧制御部と、
を備える、
請求項4に記載の車両用制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用制動装置としては、例えば独国特許出願公開第102017211874号明細書に電動シリンダを備えたものが開示されている。この車両用制動装置において、電動シリンダは、弾性セグメントを備えている。弾性セグメントがあることにより、電動シリンダが作動中に電気失陥してピストンが勢いよく初期位置に移動した場合でも、ピストンが弾性セグメントに当接し、ピストンやシリンダの破損が防止される。ピストンやシリンダが破損するとフルードが漏れるおそれがある。電動シリンダの電気失陥は、例えば電気モータのハーネスの断線やスイッチング素子の故障等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102017211874号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成では、衝撃吸収性を得るために大型の弾性セグメントが必要となる上、電動シリンダ内に弾性セグメントを設けるためのスペースも必要となる。その結果、電動シリンダが大型化し、当該電動シリンダを含む制動装置の体格が大きくなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、電動シリンダの大型化を抑制しつつ、電気モータ故障時のピストン等の破損を抑制することができる車両用制動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用制動装置は、シリンダ、及び電気モータの駆動に応じて前記シリンダ内で摺動するピストンを備え、前記シリンダ内には、前記ピストンの前進に応じてフルードをホイルシリンダに供給する液圧室と、前記ピストンの前進に伴い容積が大きくなる背面室と、が形成されている電動シリンダと、前記電気モータを制御する制御部と、前記背面室に接続されている背面液路と、前記背面液路に設けられ、前記ピストンが後退する場合に、前記背面室から前記背面液路を通るフルードの流れに対して抵抗となるように構成されたオリフィスと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動シリンダのピストンの後退に伴って背面室の容積が小さくなり、背面室内のフルードが背面液路に流出する。この際、背面液路にオリフィスが設けられているため、背面室から背面液路を通るフルードの流れが抑制される。背面室からフルードが流出し難くなることで、背面室の容積が小さくなりにくく、ピストンは後退し難くなる。そのため、電動シリンダのピストンが前進した状態で電気モータが制御不能となった場合でも、ピストンが勢いよくシリンダに衝突することが抑制される。つまり、電気モータに故障が発生しても、ピストン等の破損は抑制される。また、電動シリンダ内に弾性セグメント等のクッション部材を設ける必要がなく、電動シリンダの大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の車両用制動装置の構成図である。
図2】本実施形態の電動シリンダの構成図(初期位置)である。
図3】本実施形態の電動シリンダの構成図(加圧状態)である。
図4】本実施形態の制御例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態の制御を説明するためのタイムチャートである。
図6】本実施形態の第1チェック制御を示すフローチャートである。
図7】本実施形態の第1チェック制御を説明するためのタイムチャートである。
図8】本実施形態の第2チェック制御を示すフローチャートである。
図9】本実施形態の第2チェック制御を説明するためのタイムチャートである。
図10】本実施形態の変形態様を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。図1に示すように、本実施形態の車両用制動装置1は、上流ユニット11と、下流ユニット3と、第1ブレーキECU901と、第2ブレーキECU902と、を備えている。車両用制動装置1は、車両の車輪に設けられたホイルシリンダ81、82、83、84にフルードを供給可能な装置である。第1ブレーキECU901は、少なくとも上流ユニット11を制御する。第2ブレーキECU902は、少なくとも下流ユニット3を制御する。
【0010】
(上流ユニット)
上流ユニット11は、マスタシリンダ装置4と、ストロークシミュレータ43と、シミュレータカット弁44と、リザーバ45と、第1液路51と、電動シリンダ2と、第2液路52と、連通路53と、リザーバ液路54と、マスタカット弁62と、連通制御弁61と、ストロークセンサ71と、圧力センサ72、73と、を備えている。図1は、車両用制動装置1の非通電状態を示す。
【0011】
マスタシリンダ装置4は、ドライバ操作に応じて液圧を発生可能な装置である。マスタシリンダ装置4は、マスタシリンダ41と、マスタピストン42と、マスタ室41aと、付勢部材41bと、を備えている。マスタシリンダ41は、有底円筒状の部材である。マスタシリンダ41には、入力ポート411と出力ポート412が形成されている。入力ポート411と出力ポート412については後述する。
【0012】
マスタピストン42は、マスタシリンダ41内に配置されたピストン部材であり、ブレーキペダルZと機械的に接続されている。マスタピストン42は、ブレーキペダルZの操作に応じてマスタシリンダ41内で摺動する。マスタピストン42には貫通孔421が形成されている。マスタピストン42は、後述する付勢部材41bによって初期位置に向けて付勢されている。初期位置とは、マスタ室41aの容積が最大となる場合のマスタピストン42の位置である。マスタピストン42が初期位置に位置する場合、貫通孔421と入力ポート411とは連通する。
【0013】
マスタ室41aは、マスタシリンダ41とマスタピストン42とにより、マスタシリンダ41内に形成されている。本実施形態では、マスタシリンダ41内に形成されたマスタ室41aの数は1つであるが、2つ(タンデム型)であってもよい。マスタ室41aの容積は、マスタピストン42の移動に応じて変化する。マスタピストン42が軸方向一方側に移動すると、マスタ室41aの容積が小さくなり、マスタ室41aの液圧(以下「マスタ圧」という)が増大する。
【0014】
付勢部材41bは、マスタ室41a内に設けられたバネ部材である。マスタピストン42に対して力が作用していない状態では、マスタピストン42は初期位置に位置する。ストロークシミュレータ43は、シミュレータカット弁44を介してマスタシリンダ装置4に接続されている。ストロークシミュレータ43は、ブレーキペダルZの操作に対して反力(負荷)を発生させる装置である。ストロークシミュレータ43は、シリンダ、ピストン、及び付勢部材を含む。ストロークシミュレータ43は液路43aを介してマスタシリンダ41の出力ポート412に接続されている。
【0015】
シミュレータカット弁44は、液路43aに設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。後述するマスタカット弁62が閉弁し且つシミュレータカット弁44が開弁した状態でブレーキペダルZが操作された場合、ストロークシミュレータ43によってペダル反力が発生する。
【0016】
リザーバ45は、フルードを貯留する。リザーバ45内の圧力は大気圧に保たれている。リザーバ45の内部には、各々にフルードが貯留された2つの貯留室451、452が形成されている。
【0017】
貯留室451はマスタシリンダ装置4に接続されている。詳細には、貯留室451はマスタシリンダの入力ポート411と接続されている。マスタピストン42が初期位置に位置する場合、貯留室451は入力ポート411と貫通孔421とを介してマスタ室41aに液圧的に接続される。マスタピストン42が所定量摺動した場合、入力ポート411と貫通孔421とは液圧的に非接続となる。この場合、マスタ室41aとリザーバ45とは液圧的に非接続となる。貯留室452はリザーバ液路54を介して電動シリンダ2に接続されている。リザーバ45は、2つの貯留室でなく、2つの別々のリザーバで構成されてもよい。
【0018】
第1液路51は、マスタシリンダ装置4と下流ユニット3とを接続する液路である。第1液路51は、出力ポート412を介してマスタ室41aに接続されている。マスタ室41aとリザーバ45とが液圧的に非接続な状態で、マスタピストン42がマスタ室41aを小さくするように摺動した場合、マスタ室41aから出力ポート412を介して第1液路51にフルードが供給され、第1液路51に液圧が発生する。マスタ室41aで発生された液圧は第1液路51を介して下流ユニット3に供給される。第1液路51は、後述する連通路53と接続されている接続部50を含む。第1液路51には、マスタカット弁62と圧力センサ72とが設けられている。
【0019】
マスタカット弁62は、第1液路51において、接続部50よりもマスタシリンダ装置4側に設けられたノーマルオープン型の電磁弁である。マスタカット弁62が閉弁されている場合、マスタシリンダ装置4と下流ユニット3とは液圧的に遮断される。
【0020】
圧力センサ72は、第1液路51において、マスタカット弁62よりもマスタシリンダ装置4側に設けられている。圧力センサ72は第1液路51内の圧力を検出する。マスタカット弁62が閉弁されている状態で圧力センサ72が検出する圧力は、マスタ室内で発生している圧力であるマスタ圧に相当する。
【0021】
(電動シリンダ)
電動シリンダ2は、シリンダ21と、電気モータ22と、ピストン23と、液圧室24と、付勢部材25と、背面室26と、背面液路27と、電磁弁28と、を備えている。電動シリンダ2は、出力室として、シリンダ21内に単一の液圧室24が形成されているシングルタイプの電動シリンダである。本開示の電動シリンダ2の説明において、ピストン23が液圧室24を小さくする方向を前方、ピストン23が液圧室24を大きくする方向を後方とする。これは車両の前後方向と対応していなくてよい。
【0022】
シリンダ21は、有底筒状の部分(又は部材)である。シリンダ21には、入力ポート211、出力ポート212、及び背面ポート213が形成されている。図2及び図3に示すように、入力ポート211は開口部であり、シリンダ21に設けられたシール部材X1とシール部材X2との間に形成されている。シール部材X1及びシール部材X2は、環状のカップシールである。出力ポート212は開口部であり、入力ポート211よりも前方に形成されている。背面ポート213は開口部であり、入力ポート211よりも後方に形成されている。背面ポート213は、背面室26と背面液路27とを接続している。
【0023】
電気モータ22は、回転運動を直線運動に変換する直動機構22aを介してピストン23に接続されている。ピストン23は有底円筒状部材であり、電気モータ22の駆動によりシリンダ21内を摺動する。ピストン23には、一端が液圧室24に開口した液路230が形成されている。液路230はピストン23が初期位置に位置する場合、入力ポート211と連通する。
【0024】
液圧室24は、シリンダ21とピストン23により区画されており、ピストン23の移動に応じて容積が変化する。ピストン23の初期位置は、液圧室24の容積が最大となる位置である(図2参照)。ピストン23が前進するほど、液圧室24の容積は減少する。
【0025】
液圧室24は、入力ポート211を介してリザーバ45と連通可能である。詳細には、ピストン23が初期位置に位置する場合、液路230と入力ポート211とリザーバ液路54とを介してリザーバ45に液圧的に接続される。液路230と入力ポート211とが連通していない場合、液圧室24とリザーバ45とは液圧的に遮断される。液圧室24は、出力ポート212を介して第2液路52に接続されている。
【0026】
ピストン23が初期位置に位置する場合、液圧室24は入力ポート211と液路230とリザーバ液路54とを介してリザーバ45に接続される。電気モータ22の駆動によりピストン23が前方に所定量移動した場合、入力ポート211と液路230との連通は遮断される。この場合、液圧室24はリザーバ45と液圧的に遮断される。液圧室24とリザーバ45とが液圧的に遮断された状態でピストン23が液圧室24を小さくするように摺動した場合、液圧室24から出力ポート212を介してフルードが第2液路52に供給され、第2液路52に液圧が発生する。
【0027】
付勢部材25は、液圧室24に配置され、ピストン23を初期位置に向けて付勢するバネである。電気モータ22が駆動していない場合、付勢部材25の付勢力によりピストン23は初期位置に位置する。
【0028】
背面室26は、シリンダ21内に形成され、ピストン23の前進に伴い容積が大きくなるように構成されている。背面室26は、液圧室24に対してシールされ且つフルードが流入出可能に構成されている。背面室26と液圧室24とは、ピストン23を介して対向配置されている。シリンダ21内において、ピストン23の前面側に液圧室24が形成され、ピストン23の後面(背面)側に背面室26が形成されている。したがって、ピストン23が前進するほど、液圧室24の容積は小さくなり、背面室26の容積は大きくなる。
【0029】
より詳細に、背面室26は、シリンダ21とピストン23とシール部材X3とにより区画されている。シール部材X3は、環状のカップシールであって、背面室26とその後方の空間との間をシールしている。ピストン23は、前方部位を構成する相対的に大径の大径部231と、後方部位を構成する相対的に小径の小径部232と、を備えている。
【0030】
大径部231は、シール部材X1、X2に対して摺動可能に配置されている。小径部232は、シール部材X3に対して摺動可能に配置されている。背面室26は、シリンダ21、大径部231の後端面、小径部232の外周面、及びシール部材X3により区画されている。背面ポート213は、前後方向(軸方向)において、大径部231の後端面とシール部材X3との間に位置している。
【0031】
背面液路27は、背面ポート213を介して背面室26に接続された液路であって、背面室26とリザーバ45とを接続している。背面液路27は、一端が背面ポート213に接続され、他端がリザーバ液路54に接続された液路である。図3に示すように、ピストン23が前進し大径部231が前進すると、背面室26の容積が大きくなるとともに、リザーバ45内のフルードがリザーバ液路54及び背面液路27を介して背面室26に流入する。ピストン23が後退すると、背面室26の容積が小さくなるとともに、背面室26内のフルードが背面液路27及びリザーバ液路54を介してリザーバ45に向けて流出する。
【0032】
電磁弁28は、背面液路27に設けられている。電磁弁28は、非通電状態で閉弁するノーマルクローズ型の電磁弁である。この電磁弁28における閉弁状態は、流路を完全には遮断せず、電磁弁28内の流路が最も狭くなった状態(以下「絞り状態」という)を意味する。つまり、電磁弁28は、完全に開弁した全開状態(流路断面積最大)と、絞り状態(流路断面積最小>0)とを切替可能に構成されている。
【0033】
電磁弁28の絞り状態は、例えば、ボール弁が弁座に当接(着座)して主液路を閉鎖している状態で、主液路の縁部に設けられたスリット(小溝)により電磁弁28の内外を連通させている状態である。電磁弁28は、絞り状態において、オリフィスとして機能する。つまり、絞り状態の電磁弁28は、ピストン23が後退する場合に、背面室26から背面液路27を通るフルードの流れに対して抵抗となるように構成されたオリフィスに相当する。電磁弁28は、抵抗切替弁ともいえる。オリフィス性能は、全開状態よりも絞り状態のほうが大きい。
【0034】
このように電動シリンダ2は、シリンダ21、及び電気モータ22の駆動に応じてシリンダ21内で摺動するピストン23を備えている。シリンダ21内には、ピストン23の前進に応じてフルードをホイルシリンダ81~84に供給する液圧室24と、液圧室24に対してシールされ且つフルードが流入出可能に構成された部分であってピストン23の前進に伴い容積が大きくなる背面室26と、が形成されている。背面室26には、フルードが充填されているといえる。
【0035】
第2液路52は、電動シリンダ2と下流ユニット3とを接続する液路である。液圧室24で発生された液圧は、第2液路52を介して下流ユニット3に供給される。第2液路には圧力センサ73が設けられている。なお、第1液路51及び第2液路52は、マスタシリンダ装置4と下流ユニット3とを接続する液路のうち、上流ユニット11内に配置された部分である。
【0036】
圧力センサ73は、第2液路52内の圧力を検出するセンサである。車両用制動装置1の制御モードが後述するブレーキバイワイヤモード(以下「バイワイヤモード」という)である状態において、圧力センサ73が検出する液圧は、電動シリンダ2の出力圧に相当する。
【0037】
連通路53は、第1液路51と第2液路52とを接続する液路である。連通路53は接続部50で第1液路51と接続されている。連通路53には連通制御弁61が設けられている。
【0038】
連通制御弁61はノーマルクローズ型の電磁弁である。連通制御弁61の弁体は、弁座よりも第1液路51側に配置されている。そのため連通路53において、第1液路51側の圧力が第2液路52側の圧力よりも高い場合、連通制御弁61に対しては閉弁方向に力が作用する。これにより、連通制御弁61閉弁時にホイルシリンダ81、82の液圧が電動シリンダ2の出力圧よりも高くなっても、弁体には弁座に押し付けられる方向に力が加わるため(セルフシールされ)、閉弁が維持される。
【0039】
ストロークセンサ71は、ブレーキペダルZのストロークを検出する。本実施形態では、2つのストロークセンサ71が設けられている。2つのストロークセンサ71によって検出されたデータは、各ブレーキECU901、902に送信される。ブレーキECU901、902は、それぞれ対応するストロークセンサ71からストローク情報を取得する。
【0040】
(下流ユニット)
下流ユニット3は、いわゆるESCアクチュエータであって、各ホイルシリンダ81~84の液圧を独立に調圧することができる。下流ユニット3は、図示しないが、複数の電磁弁、ポンプ、モータ、及びリザーバ等を備えている。下流ユニット3は、ホイルシリンダ81、82を調圧可能に構成された第1液圧出力部31と、ホイルシリンダ83、84を調圧可能に構成された第2液圧出力部32と、を備えている。下流ユニット3は、電動シリンダ2とは別に設けられた、ホイルシリンダ81~84を加圧可能な加圧装置といえる。下流ユニット3の詳細構成については、公知のアクチュエータであるため説明を省略する。
【0041】
(ブレーキECU)
第1ブレーキECU901及び第2ブレーキECU902(以下「ブレーキECU901、902」ともいう)は、それぞれCPUやメモリを備える電子制御ユニットである。各ブレーキECU901、902は、各種制御を実行する1つ又は複数のプロセッサを備えている。第1ブレーキECU901と第2ブレーキECU902とは、別個のECUであって、互いに情報(制御情報等)を通信可能に接続されている。
【0042】
第1ブレーキECU901は、上流ユニット11を制御可能に構成されている。詳細には、第1ブレーキECU901は、上流ユニットの複数のセンサ71、72、73によって検出されたデータに基づいて、電動シリンダ2及び各電磁弁61、62、44、28を制御可能である。第1ブレーキECU901は、圧力センサ72、73の検出結果及び下流ユニット3の制御状態に基づいて、各ホイル圧を演算することができる。
【0043】
第2ブレーキECU902は、ストロークセンサ71及び内部の圧力センサ(図示略)によって検出されたデータに基づいて、下流ユニット3を制御可能に構成されている。また第2ブレーキECU902は、車両に設けられた車輪速度センサ(図示略)や加速度センサ(図示略)等によって検出されたデータも受信する。第2ブレーキECU902は、下流ユニット3を制御(加圧制御、減圧制御、及び保持制御)して、各ホイルシリンダ81~84の液圧を調整することができる。第2ブレーキECU902は、アンチスキッド制御(ABS制御)や横滑り防止制御等を実行可能に構成されている。
【0044】
車両用制動装置1は、通常制御を実行可能に構成されている。通常制御は、バイワイヤモードとも呼ばれる。通常制御において、上流ユニット11の出力圧は、電動シリンダ2で出力した液圧である。下流ユニット3は、上流ユニット11の出力圧に基づいて、ホイルシリンダ81~84に液圧を出力可能である。以下、通常制御について説明する。
【0045】
(通常制御)
通常制御は、マスタシリンダ装置4とホイルシリンダ81~84とを液圧的に遮断し、電動シリンダ2と下流ユニット3との少なくとも一方によってホイルシリンダ81~84を加圧する制御である。通常制御は、準備制御と通常加圧制御とを含む。
【0046】
準備制御は、いわゆるバイワイヤモードを形成する制御である。準備制御では、制御部91は、マスタカット弁62を閉弁し、連通制御弁61及びシミュレータカット弁44を開弁させる。準備制御は、車両用制動装置1が設けられている車両が発進可能な状態になった場合に実行される。発進可能な状態になった場合とは、例えば、車両のイグニッションがオンされた場合や、電気自動車が起動された場合である。
【0047】
通常加圧制御は、バイワイヤモード(準備制御完了状態)でホイルシリンダ81~84を加圧する制御である。通常加圧制御において、第1ブレーキECU901は、ストロークセンサ71及び圧力センサ72が検出したデータを基に、目標出力圧を設定する。設定された目標出力圧に基づいて、電動シリンダ2を制御する。第2ブレーキECU902は、アンチスキッド制御等の実行に際して下流ユニット3を作動させる。このように通常制御では、設定された目標値を基に、電動シリンダ2と第1液圧出力部31と第2液圧出力部32とが制御されることで、ホイルシリンダ81~84の液圧が調整可能となる。
【0048】
(電磁弁28に対する制御)
第1ブレーキECU901は、電気モータ22及び電磁弁28を制御する制御部91を備えている。制御部91は、電動シリンダ2のピストン23が前進した状態で電気モータ22が制御不能状態となった場合には、電気モータ22が制御可能状態である場合よりも、電磁弁28の流路が狭くなるように電磁弁28を制御する。
【0049】
具体例として、制御部91は、電気モータ22が正常である場合、電磁弁28を全開状態とし、電気モータ22が異常である場合、電磁弁28を絞り状態とする。制御部91は、電動シリンダ2が加圧状態(ピストン23が前進した状態)において、例えば電気モータ22の所定量以上の逆回転を検出した場合又は制御電流の異常を検出した場合、電気モータ22の失陥と判断する。電気モータ22の回転は、回転角センサ(図示略)により検出される。また、制御部91は、例えば、電気モータ22への制御電流値(制御出力圧)と圧力センサ73の検出値との比較に基づいて、電気モータ22の異常の有無を判断可能である。
【0050】
制御の一例を説明すると、図4に示すように、通常制御が開始されると(S101)、制御部91は電磁弁28を全開状態とする(S102)。制御部91は、電気モータ22の異常(電気失陥)の有無を監視する(S103)。電気モータ22の異常が検出された場合(S103:Yes)、制御部91は、電磁弁28を絞り状態とする(S104)。
【0051】
図5に示すように、液圧室24が加圧された状態において、時間t1で電気モータ22に電気失陥が発生すると、電気モータ22が停止し、ピストン23が後退し始める。つまり、液圧室24の液圧が低下し始め、ピストン23の後退速度が増大し始める。背面室26及び電磁弁28等を備えない従来の構成では、時間t1で電気モータ22に異常が発生した後、ピストン23の後退が抑制されず、高い後退速度のまま時間t21で初期位置に戻ることとなる(二点鎖線参照)。これにより、ピストン23は高い速度でシリンダ21構成部分と当接し、破損するおそれがある。
【0052】
一方、本実施形態では、時間t2において、制御部91が、電気モータ22の逆回転(ピストン23の後退速度)又は制御圧と実圧との差を検出して電気モータ22が異常であると判断し、電磁弁28を全開状態から絞り状態に移行させる。これにより、背面室26から背面液路27を介してリザーバ45に向かうフルードの流れに対して電磁弁28がオリフィスとして機能し(すなわち背面室26からのフルード流出に対する抵抗値が増大し)、フルードが背面室26から流出しにくくなる。時間t2からピストン23が初期位置に戻る時間t3まで、背面室26が縮小しにくくなり、ピストン23の後退速度及び液圧室24の液圧の低下速度は従来よりも低くなる。ピストン23は、抑制された後退速度で初期位置に戻るため、破損は抑制される。
【0053】
(第1チェック制御)
第1ブレーキECU901は、電磁弁28の異常の有無をチェックする制御を実行する異常判断部92を備えている。異常判断部92は、電磁弁28が全開状態となるか否か、すなわち電磁弁28の閉故障(絞り状態で維持される故障)の有無を判断する第1チェック制御を実行する。第1チェック制御は、例えばイグニッションがオフされた際に実行される。
【0054】
具体的に、第1チェック制御は、ピストン23を所定量前進させ且つ電磁弁28が全開状態となるように制御した上で、電気モータ22への制御電流の印加を停止し、その後の電気モータ22の回転速度に基づいて電磁弁28が全開状態であるか否かを判断する制御である。異常判断部92は、電気モータ22駆動停止後の電気モータ22の回転速度が所定範囲内であれば(例えば回転速度が第1閾値以上であれば)、電磁弁28が全開状態であると判断する。なお、液圧室24の液圧が電気モータ22の回転速度は、回転角センサ(図示略)の検出値を用いて演算されてもよいし、圧力センサ73の検出値(例えば液圧低下速度)を用いて演算されてもよい。
【0055】
ピストン23の前進量(所定量)は、電磁弁28が全開状態で加圧状態から電気モータ22を停止させても、ピストン23等が破損しない値に設定されている。換言すると、第1チェック制御における加圧後の液圧室24の液圧は、電気モータ22の停止によりピストン23が後退しても破損が生じない値に制御される。
【0056】
制御例を説明すると、図6に示すように、第1チェック制御が開始されると(S201)、異常判断部92は、電磁弁28が全開状態になるように制御すなわち電磁弁28に制御電流を印加し(S202)、電気モータ22を駆動させてピストン23を所定量前進させる(S203)。ステップS202、S203の実行順は任意で設定できる。
【0057】
異常判断部92は、上記所定の加圧状態において、電気モータ22の駆動を停止させる(S204)。異常判断部92は、電気モータ22停止後のピストン23の後退速度を検出し、後退速度が所定範囲内であるか否かを判断する(S205)。後退速度が所定範囲内である場合(S205)、異常判断部92は、電磁弁28が全開状態である(すなわち正常)と判断する(S206)。後退速度が所定範囲外である場合、例えば後退速度が第1閾値未満である場合(S205:No)、異常判断部92は、電磁弁28が全開状態でない(すなわち異常)と判断する(S207)。
【0058】
異常判断部92は、電磁弁28が閉故障である(全開状態にできない)と判断した場合、例えば異常ランプを点灯させる等により乗員に異常を伝える。電磁弁28が閉故障である場合、電磁弁28が常にオリフィスとして機能することになるが、ピストン23が後退しにくくなる(液圧室24の液圧が低下しにくくなる)だけで、制動装置としての機能は維持される。この場合、加圧時(ピストン23前進時)にも、オリフィス(電磁弁28)によりフルードが背面室26に流入しにくくなるが、背面室26が一時的に若干の負圧状態となるだけで、ピストン23の前進にほとんど影響はない。
【0059】
図7に示すように、異常判断部92は、液圧室24を所定圧まで加圧した状態で、時間t4に電気モータ22を停止し、ピストン23を後退させる。異常判断部92は、電気モータ22の回転速度が所定範囲内であるか否かを判断する。時間t5においてピストン23が初期位置に到達する。チェック制御では、ピストン23の前進量が制限されているため、電磁弁28がオリフィスとして機能しなくても破損は生じない。
【0060】
(第2チェック制御)
異常判断部92は、電磁弁28が絞り状態となるか否か、すなわち電磁弁28の開故障(全開状態で維持される故障)の有無を判断する第2チェック制御を実行する。第2チェック制御は、例えばイグニッションがオフされた際に(例えば第1チェック制御と連続で)実行される。
【0061】
具体的に、第2チェック制御は、ピストン23を所定量前進させ且つ電磁弁28が絞り状態となるように制御した上で、電気モータ22への制御電流の印加を停止し、その後の電気モータ22の回転速度に基づいて電磁弁28が絞り状態であるか否かを判断する制御である。異常判断部92は、電気モータ22駆動停止後の電気モータ22の回転速度が所定範囲内であれば(例えば回転速度が第2閾値以下であれば)、電磁弁28が絞り状態であると判断する。
【0062】
制御例を説明すると、図8に示すように、第2チェック制御が開始されると(S301)、異常判断部92は、電磁弁28が絞り状態になるように制御し(S302)、電気モータ22を駆動させてピストン23を所定量前進させる(S303)。ステップS302、S303の実行順は任意で設定できる。
【0063】
異常判断部92は、上記所定の加圧状態において、電気モータ22の駆動を停止させる(S304)。異常判断部92は、電気モータ22停止後のピストン23の後退速度を検出し、後退速度が所定範囲内であるか否かを判断する(S305)。後退速度が所定範囲内である場合(S305)、異常判断部92は、電磁弁28が絞り状態である(すなわち正常)と判断する(S306)。後退速度が所定範囲外である場合、例えば後退速度が第2閾値より大きい場合(S305:No)、異常判断部92は、電磁弁28が絞り状態でない(すなわち異常)と判断する(S307)。
【0064】
異常判断部92は、電磁弁28が開故障である(絞り状態にできない)と判断した場合、例えば異常ランプを点灯させる等により乗員に異常を伝える。また、制御部91は、異常判断部92により電磁弁28が絞り状態であると判断されなかった場合(すなわち開故障である場合)、異常判断部92により電磁弁28が絞り状態であると判断された場合(すなわち正常である場合)と比較して、電気モータ22の駆動量を抑制する抑制制御を実行する。
【0065】
抑制制御が実行されると、例えば、液圧室24の目標液圧が所定の閾圧以上となっても、液圧室24の液圧が閾圧以下となるように制御される。閾圧は、例えば、電気モータ22が故障してもピストン23が破損しないと推定される最大圧に相当する。あるいは、抑制制御が実行されると、目標液圧に対して係数(係数<1)が乗算されてもよい。電磁弁28がオリフィスとして機能できない状態において、電気モータ22に電気失陥が発生した場合でも、ピストン23等の破損が発生しないように、制御部91は、ピストン23の前進量を正常時よりも制限する。
【0066】
第2ブレーキECU902は、特定加圧制御部93を備えている。特定加圧制御部93は、抑制制御の実行により、制動要求(要求値)に対して実際の制動力が不足すると判断した場合、当該不足分を補うように下流ユニット3を作動させる。つまり、制御部91及び特定加圧制御部93は、連動して、抑制制御を実行するとともに、下流ユニット3の加圧制御を実行し、制動力の不足分だけホイルシリンダ81~84の液圧を増大させる。
【0067】
(本実施形態の効果のまとめ)
本実施形態によれば、電動シリンダ2のピストン23の後退に伴って背面室26の容積が小さくなり、背面室26内のフルードが背面液路27に流出する。この際、背面液路27にオリフィス(本実施形態では絞り状態の電磁弁28)が設けられているため、背面室26から背面液路27を通るフルードの流れが抑制される。背面室26からフルードが流出し難くなることで、背面室26の容積が小さくなりにくく、ピストン23は後退し難くなる。そのため、電動シリンダ2のピストン23が前進した状態で電気モータ22が制御不能となった場合でも、ピストン23が勢いよくシリンダ21に衝突することが抑制される。つまり、電気モータ22に故障が発生しても、ピストン23等の破損は抑制される。また、電動シリンダ2内に弾性セグメント等のクッション部材を設ける必要がなく、電動シリンダ2の大型化を抑制することができる。例えば、既存の電動シリンダ2の後端部にチャンバ(背面室26)を設けることができる。
【0068】
本実施形態では、オリフィスが電磁弁28によって形成される。このため、電磁弁28の状態を切り替えることで、必要なときだけ(すなわち電気モータ22が故障したときだけ)オリフィス機能を発揮させることができる。つまり、制御部91は、電気モータ22が正常であるときは、電磁弁28を開弁させ流路を広くし、電気モータ22が異常であるときは、電磁弁28を閉弁させて流路を狭くする。これにより、通常時には抵抗なくピストン23を移動させることができ、異常時にはピストン23の後退速度を抑制することができる。電磁弁28は、通常時には応答性に影響を与えず、異常時には部材破損抑制効果を発揮する。
【0069】
また、本実施形態によれば、第1チェック制御及び第2チェック制御により、電磁弁28の動作がチェックされる。例えば第2チェック制御によれば、電磁弁28の開故障(開固着)の有無を判断でき、開故障の場合に抑制制御を実行できる。開故障時の抑制制御により、液圧室24の液圧の増大が抑制されることで、電磁弁28を絞り状態にできなくても、電気モータ22故障時のピストン23等の破損を抑制することができる。また、抑制制御により不足した制動力は、下流ユニット3の作動で補われるため、制動力不足も生じない。
【0070】
(その他)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、上記構成において、図10に示すように、背面液路27には電磁弁28でなくオリフィス(オリフィス部材)29が設けられてもよい。この構成によれば、背面液路27には常時抵抗が発生することになり、電気モータ22に故障が発生したとしても、ピストン23等の破損は抑制される。また、この構成は、本実施形態の構成(電磁弁28)に比べて、部品コスト低減や制御の単純化の面で有利である。ただし、この構成では、電気モータ22が正常であるときも、液圧室24を減圧する際の抵抗が大きくなるため、減圧応答性の観点では本実施形態の構成のほうが優れている。
【0071】
また、背面液路27には、ノーマルクローズ型のオンオフ弁(全開と全閉との切替)とオリフィス29とが並列に接続された液路部品が配置されてもよい。オンオフ弁が全閉状態である場合、フルードはオリフィス29を通過し、オンオフ弁が全開状態である場合、フルードはオンオフ弁を通過する。これによっても、本実施形態同様の効果が発揮される。
【0072】
また、電磁弁28は、本実施形態ではオンオフ弁(全開と絞りとの切替)であるが、リニア弁(リニアソレノイドバルブ)であってもよい。電磁弁28は、リニア弁である場合、背面室26側の液圧がリザーバ45側の液圧よりも高くなるように差圧を制御することができる。したがって、電磁弁28に目標差圧を設定(制御電流を印加)することで、フルードが流通しにくくなり、絞り状態と同様に電磁弁28はオリフィスとして機能する。目標差圧が0である場合、電磁弁28は全開状態となる。「電磁弁28の流路を狭くする」とは、電磁弁28がリニア弁である場合、目標差圧を大きくすることに相当する。
【0073】
また、電動シリンダ2は、付勢部材25を備えなくてもよい。また、抑制制御時に制動力を補う手段としては、下流ユニット3に限らず、例えば電動パーキングブレーキ(EPB)であってもよい。また、制御部91が取得する制動要求は、ドライバによるブレーキペダルZの操作に基づく制動要求に限らず、自動ブレーキ制御・自動運転の制御にかかる制動要求や、他の装置(ECU)からの制動要求であってもよい。また、本発明は、例えば、回生制動装置を含む車両(ハイブリッド車や電気自動車)、自動ブレーキ制御を実行する車両、又は自動運転車両にも適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1…車両用制動装置、2…電動シリンダ、21…シリンダ、22…電気モータ、23…ピストン、24…液圧室、26…背面室、27…背面液路、28…電磁弁(オリフィス)、29…オリフィス、81~84…ホイルシリンダ、91…制御部、92…異常判断部、93…特定加圧制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10