(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】自律走行車
(51)【国際特許分類】
G01C 21/30 20060101AFI20240903BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240903BHJP
G08G 1/0968 20060101ALI20240903BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240903BHJP
【FI】
G01C21/30
G05D1/43
G08G1/0968
G06T7/00 650Z
(21)【出願番号】P 2021046256
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宇野 峰志
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-138282(JP,A)
【文献】特開2016-166853(JP,A)
【文献】特開2017-091128(JP,A)
【文献】特開2019-168432(JP,A)
【文献】特開2014-194698(JP,A)
【文献】特開2010-262599(JP,A)
【文献】特開2005-147713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G05D 1/00- 1/87
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下面に設置され、前記車体の下方の画像である路面画像を取得する路面画像取得装置と、
前記車体の位置座標及び姿勢が対応付けられた地図データを記憶する記憶部と、
前記路面画像取得装置により取得された前記路面画像である走行データから抽出した特徴点と地図画像である前記地図データから抽出した特徴点とを比較することにより自己位置を推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記自己位置の信頼度を判定する判定部と、を備え、
前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記推定部が前記自己位置を推定可能な状態であるかを判定する処理と、推定可能な状態である場合に前記推定部が前記自己位置を推定したときの前記地図データから抽出した特徴点と前記走行データから抽出した特徴点とのマッチング数が予め定めた閾値に達しているかを判定する処理と、
前記推定部がマッチングを行ったときの前記地図画像と前記路面画像の相対距離が予め定めた閾値未満であるかを判定する処理と、を含み、各処理の結果によって前記推定部が推定した前記自己位置の信頼度の高低を判定する自律走行車。
【請求項2】
前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記地図データから抽出した特徴点の分布に偏りがあるかを判定する処理と、前記走行データから抽出した特徴点の分布に偏りがあるかを判定する処理と、をさらに含む請求項1に記載の自律走行車。
【請求項3】
前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記地図画像と前記路面画像の相対距離が予め定めた閾値以上である場合に、前記推定部が推定した前記自己位置と車両オドメトリ情報による自己位置との相対距離が予め定めた閾値未満であるかを判定する処理をさらに含む請求項
1又は請求項2に記載の自律走行車。
【請求項4】
前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記推定部がマッチングを行った前回の時刻と前記推定部がマッチングを行った今回の時刻との差である経過時間が予め定めた閾値未満であるかを判定する処理をさらに含む請求項1~請求項
3の何れか一項に記載の自律走行車。
【請求項5】
前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記推定部が前記自己位置を推定する際にマッチングした前記地図画像が、マッチングするべき地図画像の優先順位において予め定めた閾値未満の地図画像であるかを判定する処理をさらに含む請求項1~請求項
4の何れか一項に記載の自律走行車。
【請求項6】
車体の下面に設置され、前記車体の下方の画像である路面画像を取得する路面画像取得装置と、
前記車体の位置座標及び姿勢が対応付けられた地図データを記憶する記憶部と、
前記路面画像取得装置により取得された前記路面画像である走行データから抽出した特徴点と地図画像である前記地図データから抽出した特徴点とを比較することにより自己位置を推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記自己位置の信頼度を判定する判定部と、を備え、
前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記推定部が前記自己位置を推定可能な状態であるかを判定する処理と、推定可能な状態である場合に前記推定部が前記自己位置を推定したときの前記地図データから抽出した特徴点と前記走行データから抽出した特徴点とのマッチング数が予め定めた閾値に達しているかを判定する処理と、前記推定部がマッチングを行った前回の時刻と前記推定部がマッチングを行った今回の時刻との差である経過時間が予め定めた閾値未満であるかを判定する処理と、を含み、各処理の結果によって前記推定部が推定した前記自己位置の信頼度の高低を判定する自律走行車。
【請求項7】
車体の下面に設置され、前記車体の下方の画像である路面画像を取得する路面画像取得装置と、
前記車体の位置座標及び姿勢が対応付けられた地図データを記憶する記憶部と、
前記路面画像取得装置により取得された前記路面画像である走行データから抽出した特徴点と地図画像である前記地図データから抽出した特徴点とを比較することにより自己位置を推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記自己位置の信頼度を判定する判定部と、を備え、
前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記推定部が前記自己位置を推定可能な状態であるかを判定する処理と、推定可能な状態である場合に前記推定部が前記自己位置を推定したときの前記地図データから抽出した特徴点と前記走行データから抽出した特徴点とのマッチング数が予め定めた閾値に達しているかを判定する処理と、前記推定部が前記自己位置を推定する際にマッチングした前記地図画像が、マッチングするべき地図画像の優先順位において予め定めた閾値未満の地図画像であるかを判定する処理と、を含み、各処理の結果によって前記推定部が推定した前記自己位置の信頼度の高低を判定する自律走行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、路面画像を用いて移動体の自己位置を推定する技術を開示する。この技術において移動体は、その下面に路面を撮影するカメラを搭載する。特許文献1では、予め撮影しておいた画像と現時点で撮影された画像のそれぞれから検出した特徴点を比較することにより、自己位置を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、推定した自己位置が正しいか否かを確認しておらず、推定した自己位置結果の信頼性を保証することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する自律走行車は、車体の下面に設置され、前記車体の下方の画像である路面画像を取得する路面画像取得装置と、前記車体の位置座標及び姿勢が対応付けられた地図データを記憶する記憶部と、前記路面画像取得装置により取得された前記路面画像である走行データから抽出した特徴点と地図画像である前記地図データから抽出した特徴点とを比較することにより自己位置を推定する推定部と、前記推定部が推定した前記自己位置の信頼度を判定する判定部と、を備え、前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記推定部が前記自己位置を推定可能な状態であるかを判定する処理と、推定可能な状態である場合に前記推定部が前記自己位置を推定したときの前記地図データから抽出した特徴点と前記走行データから抽出した特徴点とのマッチング数が予め定めた閾値に達しているかを判定する処理と、を含み、各処理の結果によって前記推定部が推定した前記自己位置の信頼度の高低を判定する。
【0006】
上記構成を備える自律走行車によれば、画像を用いて推定した自己位置の信頼度の高低を、複数の処理を経て判定することになる。このため、自律走行車によって推定する自己位置結果の信頼性を保証し得る。
【0007】
また、自律走行車において、前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記地図データから抽出した特徴点の分布に偏りがあるかを判定する処理と、前記走行データから抽出した特徴点の分布に偏りがあるかを判定する処理と、をさらに含むとよい。
【0008】
また、自律走行車において、前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記推定部がマッチングを行ったときの前記地図画像と前記路面画像の相対距離が予め定めた閾値未満であるかを判定する処理をさらに含むとよい。
【0009】
また、自律走行車において、前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記地図画像と前記路面画像の相対距離が予め定めた閾値以上である場合に、前記推定部が推定した前記自己位置と車両オドメトリ情報による自己位置との相対距離が予め定めた閾値未満であるかを判定する処理をさらに含むとよい。
【0010】
また、自律走行車において、前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記推定部がマッチングを行った前回の時刻と前記推定部がマッチングを行った今回の時刻との差である経過時間が予め定めた閾値未満であるかを判定する処理をさらに含むとよい。
【0011】
また、自律走行車において、前記判定部が前記自己位置の信頼度を判定する処理には、前記推定部が前記自己位置を推定する際にマッチングした地図画像が、マッチングするべき地図画像の優先順位において予め定めた閾値未満の地図画像であるかを判定する処理をさらに含むとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、推定した自己位置結果の信頼性を保証し得る仕組みを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】信頼度を判定する処理を説明するフローチャート。
【
図4】信頼度を判定する処理を説明するフローチャート。
【
図5】信頼度を判定する処理を説明するフローチャート。
【
図6】信頼度を判定する処理を説明するフローチャート。
【
図7】信頼度を判定する処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、自律走行車を具体化した一実施形態を
図1~
図7にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施形態の自律走行車10は、四輪車両であって、車体11と、車体11の下部に配置された駆動輪12と、車体11の下部に配置された操舵輪13と、を備える。自律走行車10は、駆動輪12の回転により走行されるとともに操舵輪13の向きの変更により操舵される。
【0015】
図2に示すように、自律走行車10は、制御装置20と、モータドライバ21,22と、走行モータ23と、操舵モータ24と、を備える。制御装置20は、モータドライバ21を介して走行モータ23を制御して駆動輪12を駆動する。制御装置20は、モータドライバ22を介して操舵モータ24を制御して操舵輪13を駆動する。
【0016】
図2に示すように、制御装置20は、処理部30と、記憶部40と、を備える。記憶部40には、自律走行車10を制御するための種々のプログラムが記憶されている。
制御装置20は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路:ASICを備えていてもよい。制御装置20は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU、並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0017】
制御装置20は、記憶部40に記憶されたプログラムにしたがい、走行モータ23及び操舵モータ24を制御することで、自律走行車10を動作させる。本実施形態の自律走行車10は、搭乗者による操作が行われることなく、制御装置20による制御によって自動で走行と操舵の各動作を行う車両である。
【0018】
図1に示すように、自律走行車10は、自己位置推定するためのデータ取得装置として、Lidar(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Ranging)スキャナ50と、路面画像取得装置としての路面撮影カメラ60と、GPS(Global Positioning System)アンテナ70を備える。
【0019】
Lidarスキャナ50は車体11の上面に設置されている。Lidarスキャナ50は、レーザを自律走行車10の周囲に照射する照射部と、その反射光を受光する受光部を有している。レーザの照射は自律走行車10の進行方向を基準として例えば右側に135度、左側に135度の計270度の範囲にわたり、スキャンしながら、その角度に対応付けて物体までの距離が測定される。Lidarスキャナ50は、水平方向での物体検出を行う2次元方式のものでも、水平方向及び上下方向での物体検出を行う3次元方式のものでもよい。
【0020】
図2に示すように、制御装置20には、Lidarスキャナ50が接続されている。制御装置20には、Lidarスキャナ50による測定データが取り込まれる。これにより、制御装置20は、レーザの照射から受光までの時間を計測することにより周囲に存在する物体までの距離を検出できる。つまり、制御装置20は、自律走行車10の周囲環境を把握できる。
【0021】
図1及び
図2に示すように、路面撮影カメラ60は、車体11の下面に設置され、車体11の下方の路面Srを撮影する。また、自律走行車10は、照明用の光源61,62と、照明ドライバ63と、を備える。光源61,62は、車体11の下面であって、路面撮影カメラ60を囲むように設置されている。光源61,62は、例えば、発光ダイオードである。制御装置20は、照明ドライバ63を介して光源61,62を制御する。光源61,62は、路面撮影カメラ60の撮影タイミングに同期して点灯する。点灯した光源61,62は、路面撮影カメラ60の撮影領域を照射する。
【0022】
図1に示すように、GPSアンテナ70は、車体11の上面に設置されている。GPSアンテナ70は、人工衛星から電波を受信する。
図2に示すように、自律走行車10にはGPS受信機71が搭載されている。GPSアンテナ70は、GPS受信機71を介して制御装置20と接続されている。制御装置20は、GPSアンテナ70による測量情報を取り込む。
【0023】
図2に示すように、制御装置20の処理部30は、Lidar用自己位置推定部31と、路面撮影カメラ用自己位置推定部32と、GPS用自己位置推定部33と、を備える。
記憶部40には、地図データ41として、周辺環境データが記憶されている。周辺環境データは、地理的位置情報が対応付けられた状態で作成されている。また、記憶部40には、地図データ41として、予め路面Srを撮影しておいた地図画像が記憶されている。地図画像は、地理的位置情報が対応付けられた状態で作成されている。このように、自律走行車10は、車体11に設置され、車体11の位置座標及び姿勢が対応付けられた地図データ41を記憶する記憶部40を備える。
【0024】
Lidar用自己位置推定部31は、Lidarスキャナ50により計測された周辺環境データから抽出された特徴点と、記憶部40の地図データ41から抽出された特徴点とを比較することにより自律走行車10の自己位置を推定する。自己位置とは、車体11の位置座標及び姿勢である。車体11の位置座標は、車体11の一点を示す座標であり、例えば、車体11の水平方向におけるLidarスキャナ50の設置位置での座標である。詳しくは、現時点の周辺環境から特徴点を検出するとともに、その特徴点についての特徴量、即ち、特徴点に対する周りでの輝度の大きさの程度を表す特徴量を検出する。同様に、予め求めておいた地図データ41から特徴点を検出するとともに、その特徴点についての特徴量、即ち、特徴点に対する周りの輝度の大きさの程度を表す特徴量を検出する。そして、現時点の周辺環境における各特徴点の特徴量と、予め求めておいた地図データ41における各特徴点の特徴量を比較することにより自律走行車10の自己位置を推定する。
【0025】
地図データ41を予め記憶部40に記憶する場合、周辺環境の座標を環境地図として記憶する。環境地図は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)によるマッピングにより作成される。SLAMは、移動体の自己位置推定と環境地図作成を同時に行うものであり、移動体が未知の環境下で環境地図を作成できる。構築した地図情報を使って特定のタスクを遂行する。自己位置推定の際、Lidarスキャナ50で取得した周辺環境と事前に取得した地図データ41を比較することで自律走行車10の自己位置を推定する。
【0026】
路面撮影カメラ用自己位置推定部32は、路面撮影カメラ60により撮影された路面Srの画像である走行データから抽出された特徴点と、記憶部40の地図データ41から抽出された特徴点とを比較することにより自律走行車10の自己位置を推定する。自己位置とは、車体11の位置座標及び姿勢である。車体11の位置座標は、車体11の一点を示す座標であり、例えば、車体11の水平方向における路面撮影カメラ60の設置位置での座標である。詳しくは、現時点の路面画像である画像から特徴点を検出するとともに、その特徴点についての特徴量、即ち、特徴点のあるピクセルに対する周りのピクセルでの輝度の大きさの程度を表す特徴量を検出する。同様に、予め撮影しておいた地図画像から特徴点を検出するとともに、その特徴点についての特徴量、即ち、特徴点のあるピクセルに対する周りのピクセルでの輝度の大きさの程度を表す特徴量を検出する。そして、現時点の路面画像における各特徴点の特徴量と、予め撮影しておいた地図画像における各特徴点の特徴量を比較することにより自律走行車10の自己位置を推定する。
【0027】
地図データ(地図画像)41を予め記憶部40に記憶する場合、路面Srの模様の座標を環境地図として記憶する。環境地図は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)によるマッピングにより作成される。SLAMは、移動体の自己位置推定と環境地図作成を同時に行うものであり、移動体が未知の環境下で環境地図を作成できる。構築した地図情報を使って特定のタスクを遂行する。自己位置推定の際、カメラで取得した路面画像と事前に取得した地図画像を比較することで自律走行車10の自己位置を推定する。
【0028】
GPS用自己位置推定部33は、GPSアンテナ70による測量情報から自律走行車10の自己位置を推定する。自己位置とは、車体11の位置座標及び姿勢である。車体11の位置座標は、車体11の一点を示す座標であり、例えば、車体11の水平方向におけるGPSアンテナ70の設置位置での座標である。
【0029】
制御装置20は、地図上での自律走行車10の位置を推定する自己位置推定を行いながら走行モータ23及び操舵モータ24を制御することで、所望の位置に自律走行車10を移動させることが可能である。
【0030】
本実施形態の自律走行車10は、推定した自己位置の信頼度を判定する機能を搭載している。本実施形態において自律走行車10は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32で推定した自己位置の信頼度を判定する。自己位置の信頼度は、処理部30が備える判定部34で行う。
【0031】
以下、
図3~
図7にしたがって、本実施形態の自律走行車10に搭載されている自己位置の信頼度を判定する機能についてその作用とともに説明する。
ステップS10において判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が自己位置を推定可能な状態で推定しているかを判定する。この判定は、路面Srの画像から抽出された特徴点と地図データ41から抽出された特徴点との比較後、すなわち特徴点のマッチング処理後、外れ値を除去したマッチング数が所定数以上であるか否かによって判定する。外れ値除去は、例えば、LMedS(Least Median of Squares)及びRANSAC(Random Sample Consensus)などにより行なってもよい。判定部34は、マッチング数が所定数以上の場合、自己位置推定可能としてステップS11へ移行する。一方、判定部34は、マッチング数が所定数未満の場合、自己位置推定不能としてステップS24aへ移行する。
【0032】
ステップS24aへ移行した判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度を信頼度MINと判定する。本実施形態において信頼度MINは、判定部34が判定する信頼度の段階として最も低い信頼度である。ステップS24aにおいて信頼度MINと判定した判定部34は、自己位置の信頼度を判定する処理を終了する。
【0033】
ステップS11へ移行した判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が自己位置を推定したときのマッチング数が予め定めた閾値以上であるかを判定する。ステップS11で用いる閾値は、他のステップの処理で用いる閾値とは別に定められる値であり、走行や停止の精度の目標値を満たすマッチング数に定められている。なお、目標値は、自律走行車10の種類や自律走行車10の走行場所などに依存して定められる値である。判定部34は、マッチング数が閾値以上である場合、ステップS12へ移行する。一方、判定部34は、マッチング数が閾値未満の場合、ステップS24bへ移行して推定された自己位置の信頼度を信頼度MIN+1と判定する。信頼度MIN+1は、信頼度MINよりも1段階高い信頼度である。ステップS24bの処理後、判定部34は、自己位置の信頼度を判定する処理を終了する。
【0034】
ステップS12へ移行した判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が自己位置を推定する際に特徴点を抽出した地図データ41の特徴点の分布を算出する。続いて、ステップS13において判定部34は、算出した地図データ41の特徴点の分布に偏りがないかを判定する。ステップS12,S13の処理は、特徴点の分布に偏りがある場合、誤った特徴点とマッチングしている可能性があることから、その偏りを判定する処理である。判定部34は、特徴点の分布に偏りがない場合、ステップS14へ移行する。判定部34は、地図データ41である地図画像の画素値が低い部分に特徴点が偏って検出されていない場合、分布に偏りがないと判定する。一方、判定部34は、特徴点の分布に偏りがある場合、ステップS24cへ移行して推定された自己位置の信頼度を信頼度MIN+2と判定する。信頼度MIN+2は、信頼度MIN+1よりも1段階高い信頼度である。判定部34は、地図データ41である地図画像の画素値が低い部分に特徴点が偏って検出されている場合、分布に偏りがあると判定する。ステップS24cの処理後、判定部34は、自己位置の信頼度を判定する処理を終了する。
【0035】
ステップS14へ移行した判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が自己位置を推定する際に特徴点を抽出した走行データの特徴点の分布を算出する。続いて、ステップS15において判定部34は、算出した走行データの特徴点の分布に偏りがないかを判定する。ステップS14,S15の処理は、特徴点の分布に偏りがある場合、誤った特徴点とマッチングしている可能性があることから、その偏りを判定する処理である。判定部34は、特徴点の分布に偏りがない場合、ステップS16へ移行する。判定部34は、走行データである路面Srの画像の画素値が低い部分に特徴点が偏って検出されていない場合、分布に偏りがないと判定する。一方、判定部34は、特徴点の分布に偏りがある場合、ステップS24dへ移行して推定された自己位置の信頼度を信頼度MIN+3と判定する。信頼度MIN+3は、信頼度MIN+2よりも1段階高い信頼度である。判定部34は、走行データである路面Srの画像の画素値が低い部分に特徴点が偏って検出されている場合、分布に偏りがあると判定する。ステップS24dの処理後、判定部34は、自己位置の信頼度を判定する処理を終了する。
【0036】
ステップS16へ移行した判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32がマッチング処理を行ったときの路面画像と地図画像との相対距離を算出する。続いて、判定部34は、ステップS17において算出した相対距離が閾値未満であるかを判定する。ステップS17で用いる閾値は、他のステップの処理で用いる閾値とは別に定められる値であり、画像の有効範囲の半分以上の値に定められる距離に相当する値である。判定部34は、相対距離が閾値未満である場合、ステップS18へ移行する。一方、判定部34は、相対距離が閾値以上の場合、
図5のステップS29へ移行する。相対距離が閾値未満であるとは路面画像と地図画像の相対距離が短いことに相当する。
【0037】
ステップS18へ移行した判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32による最新のマッチング時刻を確認する。続いて、ステップS19において判定部34は、前回のマッチング処理の時刻と最新のマッチング処理の時刻との差である経過時間が閾値未満であるかを判定する。前回のマッチング処理の時刻は記憶部40に記憶されている。ステップS19で用いる閾値は、他のステップの処理で用いる閾値とは別に定められる値であり、前回のマッチング処理の時刻と最新のマッチング処理の時刻との差を、路面画像を取得したときのサンプリング時間と比較して算出した時間に相当する値である。判定部34は、経過時間が閾値未満である場合、ステップS20へ移行する。一方、判定部34は、経過時間が閾値以上の場合、
図4のステップS25へ移行する。
【0038】
ステップS20へ移行した判定部34は、マッチングした地図画像に付されたソート番号を確認する。続いて、ステップS21において判定部34は、確認したソート番号が閾値未満であるかを判定する。地図データ41として記憶されている地図画像は複数枚あり、画像を識別するための識別番号が付されている。判定部34は、最新の自己位置に近い順に地図画像を並び替える。この地図画像の並べ替えにより、自己位置を推定する場合のマッチング処理において比較する地図画像の優先順位が決められる。また、並べ替え後の地図画像には優先順位にしたがってソート番号が付される。
【0039】
ステップS20において判定部34は、並べ替え後の地図画像の優先順位においてマッチングする地図画像のソート番号を確認する。判定部34は、ステップS21においてマッチングする地図画像のソート番号が閾値未満のソート番号である場合はステップS22へ移行する。一方、判定部34は、ステップS21においてマッチングする地図画像のソート番号が閾値以上のソート番号である場合はステップS23へ移行する。ステップS21で用いる閾値は、他のステップの処理で用いる閾値とは別に定められる値であり、例えばソート番号として3の値であり、優先順位の最も高い地図画像の近くでマッチングしているかを確認できるように定められる順位に相当する値である。ステップS21において判定部34は、並べ替え後の地図画像のうち3番目までの地図画像にマッチングする場合は優先順位の高い地図画像にマッチングしていると判定し、信頼度が高いとする。一方、ステップS21において判定部34は、並べ替え後の地図画像のうち3番目までの地図画像にマッチングしない場合は優先順位の低い地図画像にマッチングしていると判定し、信頼度が低いとする。なお、地図画像を並べ替えたが優先順位の高い地図画像にマッチングしない場合は、最新の自己位置に誤差がある、あるいは地図画像に対応付けた位置に誤差があることが考えられる。
【0040】
ステップS22へ移行した判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度を信頼度MAXと判定する。本実施形態において信頼度MAXは、判定部34が判定する信頼度の段階として最も高い信頼度である。一方、ステップS23へ移行した判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度を信頼度MAXよりも1段階低い信頼度MAX-1と判定する。ステップS22又はステップS23の処理後、判定部34は、自己位置の信頼度を判定する処理を終了する。
【0041】
また、ステップS19から
図4のステップS25へ移行した判定部34は、ステップS25,S26の処理を行う。ステップS25,S26の処理は、
図3のステップS20,S21の処理と同じ処理である。そして、ステップS27へ移行した判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度を信頼度MAXよりも2段階低い信頼度MAX-2と判定する。一方、ステップS28へ移行した判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度を信頼度MAXよりも3段階低い信頼度MAX-3と判定する。ステップS27又はステップS28の処理後、判定部34は、自己位置の信頼度を判定する処理を終了する。
【0042】
また、ステップS17から
図5のステップS29へ移行した判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置と車両オドメトリ情報と、を比較する。車両オドメトリ情報は、走行モータ23の回転数を用いて自己移動量を推定することで算出される。車両オドメトリ情報は、処理部30が算出する。続いて、ステップS30において判定部34は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置と車両オドメトリ情報による自己位置との相対距離が予め定めた閾値未満であるかを判定する。ステップS30で用いる閾値は、同様に相対距離を比較するステップS17で用いる閾値とは別に定められる値であり、画像の有効範囲以上の値に定められる距離に相当する値である。判定部34は、相対距離が閾値未満である場合、ステップS31へ移行する。一方、判定部34は、相対距離が閾値以上の場合、ステップS30aへ移行する。ステップS30aにおいて判定部34は、推定された自己位置の信頼度を信頼度MAXよりも8段階低い信頼度MAX-8と判定する。信頼度MAX-8は、信頼度MIN+3よりも信頼度が高い。ステップS30aの処理後、判定部34は、自己位置の信頼度を判定する処理を終了する。
【0043】
ステップS31へ移行した判定部34は、誤差評価を行う。誤差評価は、地図測定の精度ばらつきと相対距離とによって自己位置の精度を算出して行う。続いて、ステップS32において判定部34は、誤差評価の評価値が閾値未満であるか判定する。ステップS32で用いる閾値は、他のステップの処理で用いる閾値とは別に定められる値であり、目標とする自己位置の精度を任意に設定すればよい。判定部34は、評価値が閾値未満である場合、
図3のステップS18へ移行してその後の処理を行う。ステップS29~S32を経てステップS18へ移行する場合は、車両オドメトリによる自己位置を推定した結果、その結果が良好に得られており、画像を用いた自己位置の推定結果の誤差は小さいと判定できる場合である。一方、判定部34は、評価値が閾値以上である場合、
図6のステップS33へ移行する。
【0044】
図6のステップS33へ移行した判定部34は、その後の処理を行う。ステップS33~S36の処理は、
図1のステップS18~S21の処理と同じである。そして、判定部34は、ステップS36を経てステップS37へ移行すると、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度を信頼度MAXよりも4段階低い信頼度MAX-4と判定する。一方、判定部34は、ステップS36を経てステップS38へ移行すると、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度を信頼度MAXよりも5段階低い信頼度MAX-5と判定する。ステップS37又はステップS38の処理後、判定部34は、自己位置の信頼度を判定する処理を終了する。
【0045】
また、ステップS34から
図7のステップS39へ移行した判定部34は、その後の処理を行う。ステップS39,S40の処理は、
図1のステップS20,S21の処理と同じである。そして、判定部34は、ステップS40を経てステップS41へ移行すると、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度を信頼度MAXよりも6段階低い信頼度MAX-6と判定する。一方、判定部34は、ステップS40を経てステップS42へ移行すると、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度を信頼度MAXよりも7段階低い信頼度MAX-7と判定する。ステップS41又はステップS42の処理後、判定部34は、自己位置の信頼度を判定する処理を終了する。
【0046】
以上のように、本実施形態では、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度を段階的に判定する。具体的に言えば、地図データ41と走行データから信頼度を算出する指標を求め、閾値と比較して条件を満たす項目の組み合わせによって信頼度を段階的に判定する。本実施形態の信頼度は、信頼度MAX、信頼度MAX-1、・・・信頼度MAX-8,信頼度MIN+3,信頼度MIN+2,信頼度MIN+1,信頼度MINというように13段階である。信頼度MIN+3は信頼度MAXよりも9段階低い。信頼度MIN+2は信頼度MAXよりも10段階低い。信頼度MIN+1は信頼度MAXよりも11段階低い。信頼度MINは信頼度MAXよりも12段階低い。
【0047】
処理部30では、判定した信頼度を自己位置推定に反映させる。反映させる方法としては次に説明する2つが考えられる。処理部30は、判定した信頼度を何れかの方法で反映させるように構成されている。
【0048】
第1の方法は、信頼度をもとに他の計測結果及び推定値と統合するための重み付けパラメータを調整する。本実施形態における他の計測結果及び推定値は、Lidar用自己位置推定部31の計測結果及び推定値や、GPS用自己位置推定部33の計測結果や推定値である。処理部30は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度が高いほど、路面撮影カメラ用自己位置推定部32における自己位置推定の結果の重み付けを重くする。一方で、処理部30は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度が低い場合、Lidar用自己位置推定部31における自己位置推定の結果やGPS用自己位置推定部33における自己位置推定の結果の重み付けを重くする。第2の方法は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度が低い場合、自律走行車10の走行時に参照する自己位置をLidar用自己位置推定部31やGPS用自己位置推定部33が推定した自己位置に切り替える。
【0049】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)自律走行車10の処理部30は、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度の高低を、複数の処理を経て判定する。このため、自律走行車10によって推定する自己位置結果の信頼性を保証し得る仕組みを提供できる。
【0050】
(2)また、自己位置の信頼度を段階的に判定するとともに、その判定結果によって信頼度の高低を段階的に算出することから、路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度をより細かく算出することができる。
【0051】
(3)路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度を、自律走行車10における自己位置推定に反映させる。つまり、例えば路面撮影カメラ用自己位置推定部32が推定した自己位置の信頼度が低い場合には、Lidar用自己位置推定部31やGPS用自己位置推定部33の推定結果が自律走行車10における自己位置推定に反映される。したがって、自律走行車10によって推定する自己位置結果の信頼性をトータル的に向上させることができる。その結果、自律走行に係るシステムの誤動作防止や制御性能を向上させることができ、システム全体の信頼性を向上させることができる。
【0052】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・信頼度を判定する各ステップの判定順序は任意に変更してもよい。
【0053】
・信頼度を判定する際に用いる閾値は任意に変更してもよい。つまり、閾値は、目標とする自己位置精度をもとに定められていればよい。
・ステップS17の処理において相対距離が閾値以上の場合、ステップS30aへ移行して信頼度MAX-8と判定してもよい。
【0054】
・路面画像取得装置として路面撮影カメラ60を用いたが、カメラ以外の機器を路面画像取得装置として用いてもよい。路面画像取得装置として、例えばリニアセンサ(リニアイメージセンサ)を用いることができる。
【0055】
・信頼度に基づいたマージ方法(統合する方法)は問わない。重み和以外にも、例えば、カルマンフィルタ等でもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…自律走行車、11…車体、20…制御装置、30…処理部、31…Lidar用自己位置推定部、32…路面撮影カメラ用自己位置推定部、33…GPS用自己位置推定部、34…判定部、40…記憶部、41…地図データ、50…Lidarスキャナ、60…路面撮影カメラ、70…GPSアンテナ。