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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】スイッチの過電流検出装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20240903BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20240903BHJP
   H03K 17/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H02M1/00 H
H02M1/08 A
H03K17/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021051274
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149223
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】杉原 友祐
(72)【発明者】
【氏名】林 慶徳
(72)【発明者】
【氏名】福田 純一
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/125366(WO,A1)
【文献】特開2020-188569(JP,A)
【文献】特開2019-110693(JP,A)
【文献】特開2013-198185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0386654(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00~ 1/44
H02M 7/42~ 7/98
H03K17/00~17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレイン、ソース、ゲート及び第1ボディダイオード(DA1)を有する半導体スイッチであるメインスイッチ(SW1)と、
ドレイン、ソース、ゲート及び第2ボディダイオード(DA2)を有する半導体スイッチであるサブスイッチ(SW2)と、
前記第2ボディダイオードのアノード側に接続された第1電極、及び前記メインスイッチのソース側に接続された第2電極を有するコンデンサ(51)と、
前記コンデンサの端子間電圧を検出する電圧検出部(54)と、
前記コンデンサの第1電極に接続された定電流源(55)と、
過電流判定部(54)と、を備え、
前記サブスイッチのドレインは、前記メインスイッチのドレインに接続されており、
前記サブスイッチは、常時オフ状態に維持されており、
前記過電流判定部は、前記メインスイッチがオン状態にされている場合に検出した前記端子間電圧が過電流閾値よりも大きい場合に、前記メインスイッチに過電流が流れていると判定するスイッチの過電流検出装置。
【請求項2】
前記メインスイッチ及び前記サブスイッチが収容された本体部(BD)、及び前記メインスイッチのゲートに電気的に接続され、前記本体部から突出する制御端子(TS)を有する半導体モジュール(MS)と、
前記制御端子が接続された板面を有する制御基板(KS)と、
を備え、
前記制御端子は、前記制御基板の板面と交差するように該板面に接続されており、
前記コンデンサ、前記電圧検出部及び前記過電流判定部は、前記制御基板の板面に設けられている請求項1に記載のスイッチの過電流検出装置。
【請求項3】
前記メインスイッチの駆動状態を制御し、前記制御基板の板面に設けられた状態制御部(54)を備え、
前記制御基板は、
前記メインスイッチのゲートと前記状態制御部とを接続する制御配線(LS)と、
前記第2ボディダイオードのアノード側と前記コンデンサの第1電極とを接続する検出配線(LD)と、
前記メインスイッチのソース側に接続されるグランド配線(LG)と、を有し、
前記制御配線、前記検出配線、及び前記グランド配線は、前記制御基板において互いに並行するように配置されており、
前記グランド配線は、前記制御基板において前記制御配線と前記検出配線との間に配置されている請求項2に記載のスイッチの過電流検出装置。
【請求項4】
前記サブスイッチのゲートは、前記メインスイッチのソース側に接続されている請求項1から3までのいずれか一項に記載のスイッチの過電流検出装置。
【請求項5】
前記サブスイッチは前記メインスイッチよりも電流容量が小さい請求項1から4までのいずれか一項に記載のスイッチの過電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチの過電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチの過電流を検出する装置として、例えば非特許文献1に見られるように、DESAT方式を用いたものが知られている。この装置は、対応するスイッチの主端子間に発生する端子間電圧を検出する電圧検出部と、判定部とを備える。電圧検出部は、カソードが対応するスイッチの高電位側端子に接続されるダイオードを介して端子間電圧を検出する。判定部は、電圧検出部により検出された端子間電圧が閾値電圧を超えたと判定した場合、対応するスイッチに過電流が流れていると判定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「スマートゲートドライバカプラー DESAT検出回路設計のヒント」、東芝デバイス&ストレージ株式会社、2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DESAT方式では、対応するスイッチの端子間電圧を検出するためにダイオードが必要とされる。過電流検出装置にダイオードを設けると、例えばダイオードを搭載するプリントボードが大型化するなど、装置が大型化する。このような問題に対して、過電流検出装置には未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、装置を小型化できるスイッチの過電流検出装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、互いに並列接続されるとともにボディダイオードを有する複数の半導体スイッチと、
複数の前記半導体スイッチのうち、一部の半導体スイッチをサブスイッチとし、残りの半導体スイッチをメインスイッチとする場合、前記サブスイッチを構成する前記ボディダイオードのアノード側に接続された第1電極、及び前記メインスイッチの低電位側端子側に接続された第2電極を有するコンデンサと、
前記コンデンサの端子間電圧を検出する電圧検出部と、
前記メインスイッチがオン状態にされている場合に検出した前記端子間電圧が過電流閾値よりも大きい場合に、前記メインスイッチに過電流が流れていると判定する過電流判定部と、を備える。
【0007】
ボディダイオードを有する複数の半導体スイッチが、互いに並列接続されることがある。これら複数の半導体スイッチのうち、一部の半導体スイッチをサブスイッチとし、残りの半導体スイッチをメインスイッチとした場合に、メインスイッチの過電流をDESAT方式で検出するために、複数の半導体スイッチとは別にダイオードを設けることが考えられる。しかし、複数の半導体スイッチとは別にダイオードを設けると、装置が大型化する問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明では、サブスイッチのボディダイオードを用いてメインスイッチの過電流を検出するようにした。具体的には、サブスイッチのボディダイオードのアノード側に接続された第1電極、及びメインスイッチの低電位側端子側に接続された第2電極を有する第2電極を有するコンデンサを設けるようにした。そして、メインスイッチがオン状態にされている場合に検出したコンデンサの端子間電圧が過電流閾値よりも大きい場合に、メインスイッチに過電流が流れていると判定するようにした。これにより、複数の半導体スイッチに予め設けられていたボディダイオードを用いて、メインスイッチの過電流を検出することができ、装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】システムの全体構成図。
図2】半導体モジュールを示す図。
図3】半導体モジュール及び各接続部を示す図。
図4】駆動回路を示す図。
図5】制御基板を示す図。
図6】半導体モジュールと制御基板との位置関係を示す図。
図7】過電流検出処理のフローチャート。
図8】変形例の制御基板を示す図。
図9】変形例の制御基板を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るスイッチの過電流検出装置を、車載のシステム100に適用した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1に示すように、システム100は、回転電機10、インバータ20及び制御装置50を備えている。本実施形態において、回転電機10は、ブラシレスの同期機であり、例えば永久磁石同期機である。回転電機10は、3相の電機子巻線11を備えている。
【0012】
回転電機10は、インバータ20を介して直流電源としてのバッテリ30に接続されている。インバータ20は、相毎に上アームスイッチ素子部20Hと下アームスイッチ素子部20Lとの直列接続体を備えている。各相の上,下アームスイッチ素子部20H,20Lの接続点には、導電部材21を介して対応する電機子巻線11の第1端が電気的に接続(以下、単に接続)されている。各相の電機子巻線11の第2端は中性点PTで接続されている。
【0013】
上,下アームスイッチ素子部20H,20Lは、「メインスイッチ」としての第1スイッチSW1と、「サブスイッチ」としての第2スイッチSW2の並列接続体を備えている。本実施形態では、第1,第2スイッチSW1,SW2として、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、より具体的には、SiCデバイスとしてのNチャネルMOSFETが用いられている。第1スイッチSW1には、第1ボディダイオードDA1が逆並列接続されており、第2スイッチSW2には、第2ボディダイオードDA2が逆並列接続されている。
【0014】
第1スイッチSW1と第2スイッチSW2とは、ドレイン-ソース間電圧Vdsとドレイン電流Idとの電圧電流特性が等しく、かつ互いに並列接続された数百個の半導体スイッチング素子により構成されている。これらの半導体スイッチング素子の一部である数個の半導体スイッチング素子により第2スイッチSW2が構成されており、残りの半導体スイッチング素子により第1スイッチSW1が構成されている。そのため、第2スイッチSW2の電流容量は、第1スイッチSW1の電流容量よりも小さくなっている。
【0015】
図2に示すように、各相において、上,下アームスイッチ素子部20H,20Lは、本体部BDに収容されて半導体モジュールMSとして一体化されている。本実施形態において、本体部BDは、扁平な直方体形状をなしている。
【0016】
半導体モジュールMSは、スイッチ高圧端子TP、スイッチ低圧端子TN及び中間端子TOを備えている。スイッチ高圧端子TP、スイッチ低圧端子TN及び中間端子TOは、本体部BDの一方の面CAから突出して設けられている。スイッチ高圧端子TPは、上アームスイッチ素子部20Hにおける各スイッチSW1,SW2の高電位側端子であるドレインに接続されている。スイッチ低圧端子TNは、下アームスイッチ素子部20Lにおける第1スイッチSW1の低電位側端子であるソースに接続されているとともに、図4に示すコンデンサ51を介して下アームスイッチ素子部20Lにおける第2スイッチSW2のソースに接続されている。
【0017】
中間端子TOは、上アームスイッチ素子部20Hにおける第1スイッチSW1のソースに接続されているとともにと、コンデンサ51を介して上アームスイッチ素子部20Hにおける第2スイッチSW2のソースに接続されている。また、中間端子TOは、下アームスイッチ素子部20Lにおける各スイッチSW1,SW2のドレインに接続されている。
【0018】
更に、半導体モジュールMSは、アノード端子TA、カソード端子TK、制御端子TS、検出端子TD及びグランド端子TGを備えている。これらの端子は、本体部BDの面CAに対向する面CBから突出しており、上,下アームスイッチ素子部20H,20L毎に設けられている。なお、これらの端子の接続方法については、後に詳述する。
【0019】
図3に示すように、各半導体モジュールMSのスイッチ高圧端子TPは、導電性の高圧接続部30Pを介して高圧導電部材BPに接続されている。高圧導電部材BPは、バッテリ30の正極端子に接続されている。また、各半導体モジュールMSのスイッチ低圧端子TNは、導電性の低圧接続部30Nを介して低圧導電部材BNに接続されている。低圧導電部材BNは、バッテリ30の負極端子に接続されている。各半導体モジュールMSの中間端子TOは、電機子巻線11の第1端に接続されている。
【0020】
なお、本実施形態において、システム100は、冷却装置40を備えている。冷却装置40は、図3に示すように、一対の冷却管41と、複数の冷却板42とを備えている。半導体モジュールMSは、冷却板42に挟まれた状態で設けられている。冷却管41及び冷却板42により、冷却流体が流れる冷却通路が構成されている。
【0021】
図1に戻り、インバータ20は、その入力側に、インバータ20の入力電圧を平滑化する平滑コンデンサ23を備えている。平滑コンデンサ23の高電位側端子は、バッテリ30の正極端子に接続され、平滑コンデンサ23の低電位側端子は、バッテリ30の負極端子に接続されている。
【0022】
制御装置50は、回転電機10の駆動制御を行うために、回転電機10の制御量を指令値に制御すべく、インバータ20を構成する各スイッチSW1,SW2のスイッチング制御を行う。制御量は例えばトルクである。制御装置50は、デッドタイムDTを挟みつつ、上アームスイッチ素子部20Hに含まれるスイッチと下アームスイッチ素子部20Lに含まれるスイッチとを交互にオン状態とすべく、上,下アームスイッチに対応する駆動指令SAを、各スイッチ素子部20H,20Lに対して個別に設けられた駆動回路Drに出力する。駆動指令SAは、オン指令又はオフ指令のいずれかをとる。
【0023】
駆動回路Drは、制御装置50から入力された駆動指令SAに基づいて、第1,第2スイッチSW1,SW2のうち、第1スイッチSW1の駆動状態を制御するスイッチング制御を行う。また、駆動回路Drは、DESAT方式で第1スイッチSW1の過電流を検出する。以下、図4を用いて、駆動回路Drの構成について説明する。
【0024】
図4に、上,下アームスイッチ素子部20H,20Lに対応する駆動回路Drの構成を示す。まず、上アームスイッチ素子部20Hに対応する駆動回路Drについて説明する。駆動回路Drは、コンデンサ51、コンパレータ52、定圧電源53、制御回路54、及び定電流源55を備えている。定電流源55は、コンデンサ51の第1電極に接続されており、DESAT方式で過電流を検出するために、コンデンサ51に充電電流を出力する。本実施形態では、定電流源55の充電電流が大電流となることが抑制されており、具体的には例えば、充電電流は数100μAである。コンデンサ51の第2電極は、第1スイッチSW1のソース及び導電部材21に接続されている。
【0025】
コンデンサ51の第1電極には、第2ボディダイオードDA2のアノードが接続されている。第2ボディダイオードDA2のカソードは、第1スイッチSW1のドレインに接続されている。つまり、第2ボディダイオードDA2は、コンデンサ51から第1スイッチSW1のドレインに向かう方向が順方向となるように接続されている。そのため、コンデンサ51には、(式1)に示すように、第1スイッチSW1のドレイン-ソース間電圧Vdsに、第2ボディダイオードDA2の順方向電圧Vfを加算した電圧である判定電圧Vjdが端子間電圧として印加される。
【0026】
Vjd=Vds+Vf・・・(式1)
コンデンサ51の第1電極は、コンパレータ52の非反転入力端子52Aに接続されている。コンパレータ52の反転入力端子52Bは、定圧電源53の正極端子に接続されている。定圧電源53の負極端子は、第1スイッチSW1のソースに接続されている。定圧電源53は、第1スイッチSW1のソースに対して過電流閾値Vthだけ大きい電圧を、コンパレータ52の反転入力端子52Bに出力する。コンパレータ52は、一対の入力端子52A,52Bから入力される判定電圧Vjdと過電流閾値Vthとを比較し、これらの大小関係を示す信号を出力端子52Cから出力する。
【0027】
制御回路54は、制御配線LSを介して第1スイッチSW1のゲートに接続されている。第2スイッチSW2のゲートは、第1スイッチSW1のソースに接続されている。そのため、第2スイッチSW2は、常時オフ状態に維持される。また、制御回路54は、第1スイッチSW1のソースに接続されている。さらに、制御回路54は、コンパレータ52の出力端子52Cに接続されており、出力端子52Cから出力される信号に基づいて、第1スイッチSW1の過電流を検出する。
【0028】
本実施形態では、半導体モジュールMSに各アームスイッチ素子部20H,20LにおけるスイッチSW1,SW2の温度を検出する感温ダイオードDKがそれぞれ設けられている。制御回路54は、対応する感温ダイオードDKのアノード及びカソードにそれぞれ接続されている。
【0029】
下アームスイッチ素子部20Lに対応する駆動回路Drの構成は、上アームスイッチ素子部20Hに対応する駆動回路Drの構成と同一であり、重複した説明を省略する。下アームスイッチ素子部20Lに対応する駆動回路Drでは、コンデンサ51の第2電極には、第1スイッチSW1のソース及びバッテリ30の負極端子に接続されている。
【0030】
本実施形態では、駆動回路Drを構成する定電流源55、コンデンサ51、コンパレータ52、定圧電源53及び制御回路54が、1チップ化された半導体集積回路ICにより構成されている。図5に示すように、半導体集積回路ICは制御基板KSの搭載面CDに搭載されている。なお、本実施形態において、搭載面CDが「板面」に相当する。
【0031】
制御基板KSの搭載面CDには、半導体モジュールMSのアノード端子TA、カソード端子TK、制御端子TS、検出端子TD及びグランド端子TGに接続する複数のスルーホール電極が設けられている。複数のスルーホール電極は、アノードホールHA、カソードホールHK、制御ホールHS、検出ホールHD及びグランドホールHGを含む。アノードホールHAは、アノード端子TAに接続されており、アノード端子TAを介して感温ダイオードDKのアノードに接続されている。カソードホールHKは、カソード端子TKに接続されており、カソード端子TKを介して感温ダイオードDKのカソードに接続されている。
【0032】
制御ホールHSは、制御端子TSに接続されており、制御端子TSを介して第1スイッチSW1のゲートに接続されている。検出ホールHDは、検出端子TDに接続されており、検出端子TDを介して第2スイッチSW2のソース(第2ボディダイオードDA2のアノード)に接続されている。グランド端子TGは、グランド端子TGに接続されており、グランド端子TGを介して第1スイッチSW1のソースに接続されている。
【0033】
また、制御基板KSの搭載面CDには、これらのスルーホール電極と半導体集積回路ICとを接続する複数の接続配線が設けられている。複数の接続配線は、アノード配線LA、カソード配線LB、制御配線LS、検出配線LD及びグランド配線LGを含む。アノード配線LAは、アノードホールHAと半導体集積回路ICとを接続する。カソード配線LBは、カソードホールHKと半導体集積回路ICとを接続する。制御配線LSは、制御ホールHSと半導体集積回路ICとを接続する。検出配線LDは、検出ホールHDと半導体集積回路ICとを接続する。グランド配線LGは、グランドホールHGと半導体集積回路ICとを接続する。
【0034】
制御基板KSの搭載面CDにおいて、アノード配線LA、カソード配線LB、制御配線LS、検出配線LD及びグランド配線LGは、この順に互いに並行するように配置されている。これらの経路上又はこれらの経路間には、チップ抵抗又はチップコンデンサ等の電子部品DBが配置されている。
【0035】
図6に示すように、本実施形態において、半導体モジュールMSと制御基板KSとは、互いに直交するように配置されつつ、互いに接続されている。具体的には、半導体モジュールMSの各端子は、制御基板KSの搭載面CDと交差するように制御基板KSの対応するスルーホール電極に挿入され、搭載面CDに接続されている。その結果、半導体モジュールMSと制御基板KSとのそれぞれは、互いに離間して配置されている。そして、半導体モジュールMSと制御基板KSとにより、本実施形態の「過電流検出装置」が構成されている。
【0036】
次に、制御回路54における過電流の判定方法について説明する。第1スイッチSW1に過電流が流れていない場合、第1スイッチSW1がオン状態に切り替えられると、第1スイッチSW1のドレイン-ソース間電圧Vdsは、飽和電圧まで減少した状態で保持される。ここで、飽和電圧とは、第1スイッチSW1に流れるドレイン電流Idを増加させていった場合に、ドレイン-ソース間電圧Vdsが減少しなくなったときの電圧をいう。第1スイッチSW1に過電流が流れていない場合、ドレイン-ソース間電圧Vdsが飽和電圧で保持されるため、判定電圧Vjdは過電流閾値Vthよりも小さい値に保持される。
【0037】
一方、上下アームの短絡等により第1スイッチSW1に閾値電流以上の過電流が流れると、ドレイン-ソース間電圧Vdsは、飽和電圧まで減少しない。そのため、判定電圧Vjdが過電流閾値Vthよりも大きくなり、制御回路54は、第1スイッチSW1に過電流が流れていると判定する。
【0038】
ところで、DESAT方式で第1スイッチSW1の過電流を検出するためにはダイオードが必要とされ、第1,第2スイッチSW1,SW2及び第1,第2ボディダイオードDA1,DA2とは別にダイオードを設けることが考えられる。この場合、制御基板KSにダイオードを搭載する必要があり、制御基板KSが大型化する問題が生じる。また、DESAT方式で用いられるダイオードは、第2スイッチSW2の高電位側端子であるドレインに接続されるため、制御基板KSにおけるダイオードと他の電子部品DBとの間の絶縁距離を確保しておく必要があり、制御基板KSのアートワーク性が低下する問題が生じる。
【0039】
本実施形態では、第2スイッチSW2の第2ボディダイオードDA2を用いて、第1スイッチSW1の過電流を検出する。そのため、制御基板KSにダイオードを搭載する必要がない。その結果、装置を小型化しつつ、アートワーク性の向上を図ることができる。
【0040】
次に、図7を用いて、制御回路54により行われる過電流検出処理について説明する。この処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0041】
ステップS10では、第1スイッチSW1をオン状態に切り替える。続くステップS11では、コンパレータ52を用いて、第1スイッチSW1の判定電圧(以下、単に判定電圧)Vjdを検出し、ステップS12に進む。なお、本実施形態において、ステップS12の処理が「電圧検出部」に相当する。
【0042】
ステップS12では、ステップS11で検出された判定電圧Vjdが過電流閾値Vthよりも大きいかを判定する。具体的には、制御回路54は、コンパレータ52の出力端子52Cから出力される信号に基づいて、判定電圧Vjdが過電流閾値Vthよりも大きいか否かを判定する。
【0043】
第1スイッチSW1に過電流が流れていない場合、判定電圧Vjdは過電流閾値Vth以下となり、ステップS12で否定判定する。この場合、過電流検出処理を終了する。一方、対向アームスイッチ素子部の第1スイッチSW1がショート故障して第1スイッチSW1に過電流が流れている場合、判定電圧Vjdは過電流閾値Vthよりも大きくなり、ステップS12で肯定判定する。この場合、ステップS13に進む。
【0044】
ステップS13では、第1スイッチSW1に過電流が流れていると判定する。続くステップS14において、第1スイッチSW1をオフ状態に切り替え、過電流検出処理を終了する。なお、本実施形態において、ステップS12,S13の処理が「過電流判定部」に相当し、ステップS10,S14の処理が「状態制御部」に相当する。
【0045】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0046】
DESAT方式で第1スイッチSW1の過電流を検出するためには、ダイオードが必要となる。本実施形態では、第2スイッチSW2の第2ボディダイオードDA2を用いて、第1スイッチSW1の過電流を検出するようにした。そのため、第1,第2スイッチSW1,SW2とは別にダイオードを設ける必要がなく、装置を小型化することができる。
【0047】
本実施形態では、半導体モジュールMSと制御基板KSとは、互いに直交するように配置され、互いに離間して配置されるようにした。そのため、制御基板KSに半導体集積回路IC及び電子部品DBを搭載することで、これらを第2スイッチSW2の第2ボディダイオードDA2に対して離間して配置することができ、制御基板KSにおいて絶縁距離を確保する必要がない。これにより、装置をより小型化することができるとともに、制御基板KSのアートワーク性をより向上させることができる。
【0048】
第2スイッチSW2の第2ボディダイオードDA2を用いて、第1スイッチSW1の過電流を検出する場合、回転電機10の駆動制御を行うために第2スイッチSW2のスイッチング制御が行われると、第2スイッチSW2を介して第2ボディダイオードDA2のアノードとカソードとの間に意図しない電流が流れる。これにより、第1スイッチSW1の過電流の検出精度が低下する。本実施形態では、第2ボディダイオードDA2のゲートを第1スイッチSW1のソースに接続し、第2スイッチSW2を常時オフ状態に維持するようにした。その結果、第1スイッチSW1の過電流の検出精度の向上を図ることができる。
【0049】
第2スイッチSW2の第2ボディダイオードDA2を用いて、第1スイッチSW1の過電流を検出する場合、第2スイッチSW2におけるスイッチング機能は失われる。本実施形態では、第2スイッチSW2の電流容量を、第1スイッチSW1の電流容量よりも小さくした。これにより、電流容量の大きい第1スイッチSW1におけるスイッチング機能を確保しつつ、電流容量の小さい第2スイッチSW2の第2ボディダイオードDA2を用いて、第1スイッチSW1を過電流から保護することができる。
【0050】
本実施形態では、比較的小さい第2スイッチSW2の電流容量に対応して、定電流源55の充電電流が大電流とならないように抑制するようにした。そのため、第1スイッチSW1の過電流の検出精度の向上を図ることができる。
【0051】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0052】
・上記実施形態では、制御基板KSの搭載面CDにおいて、アノード配線LA、カソード配線LB、制御配線LS、検出配線LD及びグランド配線LGが、この順に互いに並行するように配置されている例を用いて説明を行った。しかし、これらの配線の並び順は上記に限られない。この場合に、制御配線LSと検出配線LDとの間にグランド配線LGが配置されるようにしてもよい。
【0053】
検出配線LDは、DESAT方式による過電流検出に用いられる第2ボディダイオードDA2やコンデンサ51に接続されている。そのため、検出配線LDは、インピーダンスが高く、隣接する配線における信号の切り替えに起因してノイズが生じやすい。したがって、図5に示すように、制御配線LSと検出配線LDとが隣接して配置されていると、第1スイッチSW1のゲートに入力される駆動信号がオン電圧とオフ電圧とで切り替えられるのに起因して、過電流を誤検出するおそれがある。
【0054】
図8に示すように、半導体集積回路ICにおける端子配置を変更し、制御配線LSと検出配線LDとの間にグランド配線LGが配置されるようにしてもよい。これにより、過電流の誤検出を抑制することができる。
【0055】
なお、半導体モジュールMSにおける端子配置を変更可能である場合には、図9に示すように、制御基板KSにおけるスルーホール電極の配置を変更してもよい。具体的には、制御ホールHSと検出ホールHDとの間にグランドホールHGが配置されるようにしてもよい。これにより、過電流の誤検出を適正に抑制することができる。また、スルーホール電極と半導体集積回路ICとの間の経路の引き回しのために、制御基板KSが大型化することを抑制することができる。
【0056】
・上記実施形態において、各アームスイッチ素子部20H,20Lにそれぞれ3つ以上のスイッチが互いに並列接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
51…コンデンサ、54…制御回路、SW1…第1スイッチ、SW2…第2スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9