(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御方法及び制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 10/02 20060101AFI20240903BHJP
B60K 6/387 20071001ALI20240903BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240903BHJP
【FI】
B60W10/02 900
B60K6/387 ZHV
B60K6/48
(21)【出願番号】P 2021053191
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 忠志
(72)【発明者】
【氏名】大佐古 昌和
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-261395(JP,A)
【文献】特開2012-086701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/02
B60K 6/387
B60K 6/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、モータと、前記エンジンと前記モータとの間に断続可能に設けられた摩擦締結要素と、を有するハイブリッド車両の制御方法であって、
前記ハイブリッド車両は、前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサと、前記モータの回転数を検出するモータ回転数センサと、を有し、
前記ハイブリッド車両の走行中において停止している前記エンジンの始動要求が発せられたときに、前記摩擦締結要素を解放状態からスリップ状態を経て締結状態へ移行させるように、当該摩擦締結要素を制御する工程と、
前記摩擦締結要素の制御中に、前記モータのクランキングによって前記エンジンを始動させるように、前記モータ及び前記エンジンを制御する工程と、
前記摩擦締結要素の締結が完了する前において、前記モータと前記エンジンとの差回転が第1閾値より大きい間は、前記エンジンの出力トルクが、前記エンジンと前記モータとの間で前記摩擦締結要素が伝達可能な伝達トルク容量を超えるか否かにかかわらず、前記エンジンの回転数を上昇させるための回転上昇用トルクを前記エンジンが出力するように、前記エンジンを制御する工程と、
前記摩擦締結要素の締結が完了する前において、前記モータと前記エンジンとの差回転が前記第1閾値以下の場合、前記摩擦締結要素の締結が完了するまでの間、前記エンジンの出力トルクが前記伝達トルク容量を超えないように、前記エンジンを制御する工程と、
を有することを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項2】
前記摩擦締結要素は油圧により動作するように構成され、
前記摩擦締結要素の伝達トルク容量は、前記摩擦締結要素に付与する油圧の指示値に基づき取得される、
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項3】
前記エンジンの出力トルクが前記伝達トルク容量を超えないように前記エンジンを制御する工程は、前記摩擦締結要素の締結が完了する前において、前記モータと前記エンジンとの差回転が前記第1閾値以下且つ第2閾値より大きい場合に、前記回転上昇用トルクと前記伝達トルク容量との内の小さい方のトルクを前記エンジンが出力するように、前記エンジンを制御する工程を含む、請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項4】
前記エンジンの出力トルクが前記伝達トルク容量を超えないように前記エンジンを制御する工程は、前記摩擦締結要素の締結が完了する前において、前記モータと前記エンジンとの差回転が前記第2閾値以下の場合、前記ハイブリッド車両の目標駆動力を実現するための駆動力制御用トルクと前記伝達トルク容量との内の小さい方のトルクを前記エンジンが出力するように、前記エンジンを制御する工程を更に有する、請求項3に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項5】
ハイブリッド車両の制御システムであって、
エンジン及びモータと、
前記エンジンと前記モータとの間に断続可能に設けられた摩擦締結要素と、
前記エンジン、前記モータ、及び前記摩擦締結要素を制御するよう構成された制御装置と、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサと、
前記モータの回転数を検出するモータ回転数センサと、を有し、
前記制御装置は、
前記ハイブリッド車両の走行中において停止している前記エンジンの始動要求が発せられたときに、前記摩擦締結要素を解放状態からスリップ状態を経て締結状態へ移行させるように、当該摩擦締結要素を制御し、
前記摩擦締結要素の制御中に、前記モータのクランキングによって前記エンジンを始動させるように、前記モータ及び前記エンジンを制御し、
前記摩擦締結要素の締結が完了する前において、前記モータと前記エンジンとの差回転が第1閾値より大きい間は、前記エンジンの出力トルクが、前記エンジンと前記モータとの間で前記摩擦締結要素が伝達可能な伝達トルク容量を超えるか否かにかかわらず、前記エンジンの回転数を上昇させるための回転上昇用トルクを前記エンジンが出力するように、前記エンジンを制御し、
前記摩擦締結要素の締結が完了する前において、前記モータと前記エンジンとの差回転が前記第1閾値以下の場合、前記摩擦締結要素の締結が完了するまでの間、前記エンジンの出力トルクが前記伝達トルク容量を超えないように、前記エンジンを制御するよう構成される、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源としてのエンジン及びモータと、これらエンジンとモータとの間におけるトルクの伝達と遮断とを切り替える摩擦締結要素(クラッチ)と、を有するハイブリッド車両の制御方法及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン(内燃機関)と、車輪への動力伝達経路上においてエンジンの下流側に設けられたモータと、エンジンとモータとの間に断続可能に設けられた第1クラッチと、モータと車輪(駆動輪)との間に断続可能に設けられた第2クラッチと、を有するハイブリッド車両が知られている。このハイブリッド車両は、エンジンのトルクを用いずにモータのトルクを用いてハイブリッド車両を走行させる走行モード(EV走行モード)と、少なくともエンジンのトルクを用いてハイブリッド車両を走行させる走行モード(エンジン走行モード又はハイブリッド走行モード)と、を切り替え可能に構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、このようなハイブリッド車両に関して、モータ単独での走行中にエンジンを始動させる場合に、第2クラッチ(発進クラッチ)をスリップ制御しながらモータ回転数を上昇させ、モータ回転数が所定回転数に達したときに第1クラッチ(エンジンクラッチ)を締結してエンジンを始動する技術が開示されている。この技術では、モータの回転上昇による車速の変動及び第1クラッチの締結時のショックを抑制しつつ、スムーズなエンジン始動を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなハイブリッド車両では第2クラッチをスリップ制御しているが、これと共に、あるいはこれに代えて、エンジンの始動時のショック抑制のために第1クラッチをスリップ制御することも考えられる。しかしながら、第1のクラッチがモータとエンジンとの間で伝達可能な伝達トルク容量より大きいトルクをエンジンが出力すると、エンジンが空回り状態となって回転数が急上昇し、ドライバに違和感や不安感を与えてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ハイブリッド車両の走行中におけるエンジン始動時に、エンジンとモータとの間に設けられたクラッチを的確に制御することで、車両ショックの発生を抑制しつつエンジンの過剰な回転上昇を防止して、ドライバに違和感や不安感を与えないようにすることができるハイブリッド車両の制御方法及び制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、エンジンと、モータと、エンジンとモータとの間に断続可能に設けられた摩擦締結要素と、を有するハイブリッド車両の制御方法であって、ハイブリッド車両は、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサと、モータの回転数を検出するモータ回転数センサと、を有し、ハイブリッド車両の走行中において停止しているエンジンの始動要求が発せられたときに、摩擦締結要素を解放状態からスリップ状態を経て締結状態へ移行させるように、当該摩擦締結要素を制御する工程と、摩擦締結要素の制御中に、モータのクランキングによってエンジンを始動させるように、モータ及びエンジンを制御する工程と、摩擦締結要素の締結が完了する前において、モータとエンジンとの差回転が第1閾値より大きい間は、エンジンの出力トルクが、エンジンとモータとの間で摩擦締結要素が伝達可能な伝達トルク容量を超えるか否かにかかわらず、エンジンの回転数を上昇させるための回転上昇用トルクをエンジンが出力するように、エンジンを制御する工程と、摩擦締結要素の締結が完了する前において、モータとエンジンとの差回転が第1閾値以下の場合、摩擦締結要素の締結が完了するまでの間、エンジンの出力トルクが伝達トルク容量を超えないように、エンジンを制御する工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明では、エンジンの始動要求が発せられたときに、摩擦締結要素の締結が完了するまでの間、エンジンの出力トルクが、エンジンとモータとの間で摩擦締結要素が伝達可能な伝達トルク容量を超えないように、エンジンを制御するので、摩擦締結要素のスリップ制御中におけるエンジンの過剰な回転上昇を防止することができ、ドライバに違和感や不安感を与えないようにすることができる。また、摩擦締結要素の締結が完了する前において、モータとエンジンとの差回転が第1閾値より大きい間は、エンジンの出力トルクが伝達トルク容量を超えるか否かにかかわらず、エンジン回転数をモータ回転数に向かって迅速に上昇させることができ、エンジンの始動制御の応答性を向上することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、摩擦締結要素は油圧により動作するように構成され、摩擦締結要素の伝達トルク容量は、摩擦締結要素に付与する油圧の指示値に基づき取得される。
このように構成された本発明によれば、摩擦締結要素の伝達トルク容量を正確に求めることができ、車両ショックの発生を抑制しつつエンジンの過剰な回転上昇を適切に防止することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、エンジンの出力トルクが伝達トルク容量を超えないようにエンジンを制御する工程は、摩擦締結要素の締結が完了する前において、モータとエンジンとの差回転が第1閾値以下且つ第2閾値より大きい場合に、回転上昇用トルクと伝達トルク容量との内の小さい方のトルクをエンジンが出力するように、エンジンを制御する工程を含む。
このように構成された本発明では、モータとエンジンとの差回転がある程度小さくなった場合に、回転上昇中のエンジンの出力トルクに制限をかけることにより、エンジンの出力トルクが摩擦締結要素の伝達トルク容量を超えて空回りすることによるエンジン回転数の過剰な上昇を抑制できる。したがって、ドライバに違和感や不安感を与えないようにすることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、エンジンの出力トルクが伝達トルク容量を超えないようにエンジンを制御する工程は、摩擦締結要素の締結が完了する前において、モータとエンジンとの差回転が第2閾値以下の場合、ハイブリッド車両の目標駆動力を実現するための駆動力制御用トルクと伝達トルク容量との内の小さい方のトルクをエンジンが出力するように、エンジンを制御する工程を更に有する。
このように構成された本発明では、モータとエンジンとの差回転が十分小さくなった場合に、駆動力制御中のエンジンの出力トルクに制限をかけることにより、エンジンの出力トルクが摩擦締結要素の伝達トルク容量を超えて空回りすることによるエンジン回転数の過剰な上昇を抑制できる。したがって、ドライバに違和感や不安感を与えないようにすることができる。
【0013】
他の観点では、上記の目的を達成するために、本発明は、ハイブリッド車両の制御システムであって、エンジン及びモータと、エンジンとモータとの間に断続可能に設けられた摩擦締結要素と、エンジン、モータ、及び摩擦締結要素を制御するよう構成された制御装置と、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサと、前記モータの回転数を検出するモータ回転数センサと、を有し、制御装置は、ハイブリッド車両の走行中において停止しているエンジンの始動要求が発せられたときに、摩擦締結要素を解放状態からスリップ状態を経て締結状態へ移行させるように、当該摩擦締結要素を制御し、摩擦締結要素の制御中に、モータのクランキングによってエンジンを始動させるように、モータ及びエンジンを制御し、摩擦締結要素の締結が完了する前において、モータとエンジンとの差回転が第1閾値より大きい間は、エンジンの出力トルクが、エンジンとモータとの間で摩擦締結要素が伝達可能な伝達トルク容量を超えるか否かにかかわらず、エンジンの回転数を上昇させるための回転上昇用トルクをエンジンが出力するように、エンジンを制御し、摩擦締結要素の締結が完了する前において、モータとエンジンとの差回転が第1閾値以下の場合、摩擦締結要素の締結が完了するまでの間、エンジンの出力トルクが伝達トルク容量を超えないように、エンジンを制御するよう構成される、ことを特徴とする。
このように構成された本発明によっても、車両ショックの発生を抑制しつつエンジンの過剰な回転上昇を防止して、ドライバに違和感や不安感を与えないようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハイブリッド車の制御方法及び制御システムによれば、ハイブリッド車両の走行中におけるエンジン始動時に、エンジンとモータとの間に設けられたクラッチを的確に制御することで、車両ショックの発生を抑制しつつエンジンの過剰な回転上昇を防止して、ドライバに違和感や不安感を与えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態によるハイブリッド車両の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態によるハイブリッド車両の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態による始動制御の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】本発明の実施形態による始動制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるハイブリッド車両の制御方法及び制御システムを説明する。
【0017】
[装置構成]
図1は、本発明の実施形態によるハイブリッド車両の制御方法及び制御システムが適用されるハイブリッド車両の概略構成図である。
【0018】
図1に示すように、ハイブリッド車両1は、主に、ハイブリッド車両1を駆動するためのトルクを発生するエンジン2(例えばガソリンエンジン)と、ハイブリッド車両1の動力伝達経路上においてエンジン2よりも下流側に設けられ、ハイブリッド車両1を駆動するためのトルクを発生するモータ4と、図示しないインバータ等を介してモータ4との間で電力の授受を行うバッテリ5と、ハイブリッド車両1の動力伝達経路上においてモータ4よりも下流側に設けられ、エンジン2及び/又はモータ4による回転速度を変速する変速機6と、変速機6からのトルクを下流側に伝達する動力伝達系8と、動力伝達系8からのトルクによって車輪12を駆動するドライブシャフト10と、当該車輪(駆動輪)12と、を有する。
【0019】
エンジン2の出力軸とモータ4の回転軸とは、油圧により断続(断接)可能な第1クラッチCL1(摩擦締結要素)を介して軸AX1によって同軸状に連結されている。この第1クラッチCL1により、エンジン2とモータ4との間におけるトルクの伝達と遮断とを切り替えられるようになっている。例えば、第1クラッチCL1は、図示しないモータやソレノイドにより、クラッチ作動油流量及び/又はクラッチ作動油圧を連続的又は段階的に制御して、伝達トルク容量を変更可能な乾式多板クラッチや湿式多板クラッチなどによって構成されている。
【0020】
モータ4の回転軸と変速機6の回転軸とは、軸AX2によって同軸状に連結されている。変速機6は、典型的には、サンギヤS1、リングギヤR1、ピニオンギヤP1(遊星歯車)及びキャリアC1を含む1つ以上のプラネタリギヤセットと、クラッチやブレーキ等の摩擦締結要素とを内部に備えており、車速やエンジン回転数などに応じてギヤ段(変速比)を自動的に切り替える機能を備えた自動変速機である。リングギヤR1はサンギヤS1と同心円上に配置され、ピニオンギヤP1はサンギヤS1及びリングギヤR1に噛み合うようにサンギヤS1とリングギヤR1との間に配置されている。キャリアC1は、ピニオンギヤP1を自転可能且つサンギヤS1の周りを公転可能に保持する。
【0021】
また、変速機6は、断続(断接)な第2クラッチCL2を内部に備え、この第2クラッチCL2により、変速機6の上流側(エンジン2及びモータ4)と変速機6の下流側(車輪12など)との間におけるトルクの伝達と遮断とを切り替えられるようになっている。例えば、第2クラッチCL2も、図示しないモータやソレノイドにより、クラッチ作動油流量及び/又はクラッチ作動油圧を連続的又は段階的に制御して、伝達トルク容量を変更可能な乾式多板クラッチや湿式多板クラッチなどによって構成されている。
なお、第2クラッチCL2は、実際には、変速機6において種々のギヤ段を切り替えるために用いられる多数のクラッチによって構成される。また、
図1では単純化のためプラネタリギヤセットを1つだけ示しているが、実際には変速機6は複数のプラネタリギヤセットを備えている。第2クラッチCL2により代表される複数のクラッチや図示しない複数のブレーキ等の摩擦締結要素を選択的に締結して、各プラネタリギヤセットを経由する動力伝達経路を切り換えることにより、例えば複数の前進変速段と1段の後退速段とを実現可能となっている。
【0022】
動力伝達系8は、変速機6の出力軸AX3を介してトルクが入力される。動力伝達系8は、駆動力を左右一対の車輪12に対して分配するデファレンシャルギヤや、ファイナルギヤなどを含んで構成されている。
【0023】
上記のハイブリッド車両1は、第1クラッチCL1の締結と解放とを切り替えることで、走行モードを切り替えることができる。すなわち、ハイブリッド車両1は、第1クラッチCL1を解放状態に設定して、エンジン2のトルクを用いずにモータ4のトルクを用いてハイブリッド車両1を走行させる第1走行モードと、第1クラッチCL1を締結状態に設定して、少なくともエンジン2のトルクを用いてハイブリッド車両1を走行させる第2走行モードと、を有する。第1走行モードは、所謂EV走行モードであり、第2走行モードは、エンジン2のトルクのみを用いてハイブリッド車両1を走行させるエンジン走行モード、及びエンジン2及びモータ4の両方のトルクを用いてハイブリッド車両1を走行させるハイブリッド走行モードを含む。
【0024】
なお、第1及び第2クラッチCL1、CL2は、それぞれ、本発明における「第1摩擦締結要素」及び「第2摩擦締結要素」の一例に相当する。ただし、このような第1及び第2摩擦締結要素としてクラッチを用いることに限定はされない。
【0025】
次に、
図2は、本発明の実施形態によるハイブリッド車両の電気的構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に示すように、コントローラ20には、エンジン2の回転数を検知するエンジン回転数センサSN1からの信号と、モータ4の回転数を検知するモータ回転数センサSN2からの信号と、ドライバによるアクセルペダルの踏込み量に対応するアクセル開度を検知するアクセル開度センサSN3からの信号と、ハイブリッド車両1の車速を検知する車速センサSN4からの信号と、ハイブリッド車両1の前後方向の加速度を検知する加速度センサSN5からの信号と、バッテリ5の充電状態を示すSOC(State of Charge)を検知するSOCセンサSN6からの信号と、が入力されるようになっている。
【0027】
コントローラ20は、1つ以上のプロセッサ20a(典型的にはCPU)と、当該プロセッサ上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)や各種のデータを記憶するROMやRAMなどのメモリ20bと、を備えるコンピュータにより構成される。コントローラ20は、本発明における「制御装置」に相当し、また、本発明における「ハイブリッド車両の制御方法」を実行する。
【0028】
具体的には、コントローラ20は、上述したセンサSN1~SN6からの検知信号に基づき、主に、エンジン2、モータ4、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2に対して制御信号を出力し、これらを制御する。例えば、コントローラ20は、エンジン2の点火時期、燃料噴射時期、燃料噴射量を調整する制御や、モータ4の回転数、トルクを調整する制御や、第1及び第2クラッチCL1、CL2の状態(締結状態、解放状態、スリップ状態)を切り替える制御などを行う。実際には、コントローラ20は、エンジン2の点火プラグや燃料噴射弁やスロットル弁などを制御し、インバータを介してモータ4を制御し、油圧制御回路を介して第1及び第2クラッチCL1、CL2を制御する。
【0029】
[ハイブリッド車両の制御]
次に、本実施形態においてコントローラ20が行う制御内容について説明する。本実施形態では、コントローラ20は、エンジン2を停止した状態での走行中に、このエンジン2の始動要求が発せられたときに、エンジン2とモータ4との間に設けられた第1クラッチCL1を解放状態から所定のスリップ状態を経て締結状態へと移行させる。こうすることで、第1クラッチCL1を介してモータ4のトルクをエンジン2に伝達して、モータ4によってエンジン2をクランキングすることでエンジン2を始動させるようにする。また、コントローラ20は、このようなエンジン2の始動時に、モータ4と車輪12との間に設けられた第2クラッチCL2を締結状態から所定のスリップ状態へと移行させる。こうすることで、動力源(特にエンジン2)と車輪12との間の第2クラッチCL2を介したトルク伝達をできるだけ低減させて、このトルク伝達によりハイブリッド車両1に発生するショック(車両ショック)を抑制するようにする。例えば、車両ショックには、走行しているハイブリッド車両1の運動エネルギーがエンジン2側に伝達されてエンジン始動に用いられることによる車両の減速がある。
【0030】
特に、本実施形態では、コントローラ20は、第1クラッチCL1を解放状態から所定のスリップ状態を経て締結状態へと移行させるときに、第1クラッチCL1の締結が完了するまでの間、エンジン2の出力トルクが、エンジン2とモータ4との間で第1クラッチCL1が伝達可能な伝達トルク容量を超えないように、エンジン2を制御する。これにより、車両ショックの発生を抑制しつつエンジン2の過剰な回転上昇を防止することができる。
【0031】
次に、
図3を参照して、本実施形態においてエンジン2の始動時に行われる種々の制御(以下では単に「始動制御」と呼ぶ。)について具体的に説明する。
図3は、本実施形態による始動制御の一例を示すタイムチャートである。
【0032】
図3において、グラフG1aはモータ回転数を示し、グラフG1bは車輪回転数(換言するとドライブシャフト10の回転数)を示し、グラフG1cはエンジン回転数を示し、グラフG1dは第1クラッチCL1の伝達トルク容量を示し、グラフG1eは第2クラッチCL2の伝達トルク容量を示し、グラフG1fはモータ4の出力トルクを示し、グラフG1gはエンジン2の出力トルクを示し、グラフG1hは第1クラッチCL1の伝達トルク容量を超えないようにエンジン2を制御しなかった場合のエンジン2の出力トルクを示している。
ここでは、モータ4の余裕駆動力があり(換言するとモータ4がエンジン2を始動させるのに十分なトルクを発生可能な状態にある)、且つ、ハイブリッド車両1が始動要求後に加速状態となる場合に行われる制御を例に挙げて説明する。
【0033】
エンジン2の始動要求が発せられると、コントローラ20は、締結状態にある第2クラッチCL2の作動油圧を低下させることにより、第2クラッチCL2の伝達トルク容量を低下させる(時刻t11)。その結果、第2クラッチCL2が所定のスリップ状態へと移行する。
【0034】
この後、コントローラ20は、第1クラッチCL1の作動油圧を徐々に上昇させる(時刻t12~)。これにより、第1クラッチCL1の伝達トルク容量が上昇し、解放状態にある第1クラッチCL1が所定のスリップ状態へと移行する。
【0035】
他方で、コントローラ20は、エンジン2の始動要求が発せられたときに(時刻t11以降)、目標駆動力に対応する目標加速度を実現すべく、モータ目標回転数を上昇させる。特に、コントローラ20は、動力伝達系8内のギヤ(典型的にはデファレンシャルギヤ)の状態を所定のガタ詰め状態(動力源側から車輪側へと動力が伝達されるような加速側のガタ詰め状態)に維持するために、モータ回転数が車輪回転数よりも高い差回転の状態が維持されるようにモータ目標回転数を設定してモータ4を制御する。
上述したように第1クラッチCL1が所定のスリップ状態に移行すると(時刻t12~)、モータ4の出力トルクの一部は第1クラッチCL1を介してエンジン2に伝達され、エンジン2のクランキングに用いられる。このとき、エンジン2のクランキングを行いながらモータ回転数がモータ目標回転数に追従するように、コントローラ20はモータ4の出力トルクを上昇させる。
【0036】
コントローラ20は、モータ4とエンジン2との差回転が第1閾値Aより大きい間は(時刻t12からt13の間)、エンジン2の回転数を上昇させるための回転上昇用トルクをエンジン2が出力するように、エンジン2を制御する。この場合、エンジン回転数をモータ回転数に向かって迅速に上昇させるため、コントローラ20は、エンジン2の出力トルクに制限を設けない。即ち、時刻t12以降、モータ4のトルクによりクランキングされたエンジン2の出力トルクは、まず着火前の圧縮反力により負値になった後、各シリンダーの着火により予め定められた変化率で上昇し、第1クラッチCL1の伝達トルク容量よりも大きくなる。その結果、エンジン回転数が上昇し、時刻t13においてモータ4とエンジン2との差回転が第1閾値Aまで減少する。
【0037】
時刻t13以降、モータ4とエンジン2との差回転が第1閾値A以下且つ第2閾値Bより大きい間は(時刻t13からt15の間)、コントローラ20は、回転上昇用トルクと第1クラッチCL1の伝達トルク容量との内の小さい方のトルクをエンジン2が出力するように、エンジン2を制御する。つまり、エンジン2が出力するトルクが第1クラッチCL1の伝達トルク容量を超えないようにする。第1クラッチCL1の伝達トルク容量は、第1クラッチCL1に付与する油圧の指示値に基づき取得される。具体的には、コントローラ20は、第1クラッチCL1の摩擦材の摩擦係数、有効半径、摩擦面数、油圧を乗算することにより、伝達トルク容量を算出する。あるいは指示油圧と伝達トルク容量との関係を規定したマップ(予めメモリ等に記憶されている)を参照して、伝達トルク容量を取得しても良い。
また、コントローラ20は、エンジン2が完爆状態に達すると、時刻t14より、第1クラッチCL1を締結状態に設定すべく第1クラッチCL1の指示油圧を上昇させる。これにより第1クラッチCL1の伝達トルク容量が上昇する。
したがって、時刻t13からt14の間において、エンジン2の出力トルクは第1クラッチCL1の伝達トルク容量まで減少し、時刻t14以降は伝達トルク容量と共に上昇する。これにより、エンジン2が出力するトルクが第1クラッチCL1の伝達トルク容量を超えないように制御されない場合(G1h)と比べて、エンジン2の空回りによる回転数の急上昇が抑制される。
【0038】
この後、時刻t15以降にモータ4とエンジン2の差回転が第2閾値B未満になると、第1クラッチCL1の締結が完了するまでの間は(時刻t15からt16までの間)、コントローラ20は、駆動力制御用トルクと第1クラッチCL1の伝達トルク容量との内の小さい方のトルクをエンジン2が出力するように、エンジン2を制御する。つまり、エンジン2が出力するトルクが第1クラッチCL1の伝達トルク容量を超えないようにする。駆動力制御用トルクは、ハイブリッド車両1の目標駆動力を実現するためにエンジン2が出力すべきトルクであり、目標駆動力やモータ4の出力トルクから算出される。
したがって、時刻t15からt16の間において、駆動力制御用トルクが伝達トルク容量より大きい場合はエンジン2の出力トルクは伝達トルク容量と共に上昇し、駆動力制御用トルクが伝達トルク容量より小さくなると駆動力制御用トルクに従って変化する。これにより、エンジン2が出力するトルクが第1クラッチCL1の伝達トルク容量を超えないように制御されない場合(G1h)と比べて、エンジン2の空回りによる回転数の急上昇が抑制される。
【0039】
この後、時刻t16において第1クラッチCL1の締結が完了すると、コントローラ20は、駆動力制御用トルクをエンジン2が出力するようにエンジン2を制御する。つまり、エンジン2が出力するトルクが第1クラッチCL1の伝達トルク容量を超えないようにする制御を終了する。この後、コントローラ20は、時刻t16において第1クラッチCL1の締結が完了し、エンジン回転数がモータ回転数と等しくなると、時刻t16からt17において、第2クラッチCL2を締結状態に設定すべく第2クラッチCL2の指示油圧を上昇させる。そして、時刻t17において第2クラッチCL2の締結が完了すると、コントローラ20は始動制御を終了する。
【0040】
次に、
図4を参照して、本実施形態によるエンジン2の始動制御の全体的な流れについて説明する。
図4は、本実施形態による始動制御を示すフローチャートである。このフローは、コントローラ20によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0041】
まず、ステップS100において、コントローラ20は、各種情報を取得する。具体的には、コントローラ20は、少なくとも上記したセンサSN1~SN6から検出信号を取得する。
【0042】
次いで、ステップS101において、コントローラ20は、現在停止しているエンジン2の始動要求が発せられているか否かを判定する。例えば、この始動要求は、ドライバがEVモードにおいて比較的大きな加速を要求している場合(つまり走行モードをEVモードからHVモードに切り替える必要があるような加速度をドライバが要求している場合)に発せられる。加えて、始動要求は、このようなドライバ要求以外に、パワートレイン等を含む制御システムから発せられる(以下では、この始動要求を適宜「システム要求」と呼ぶ)。このシステム要求は、車速や負荷やバッテリ状態やエンジン温度などに応じて、ハイブリッド車両1の走行モードをEVモードからHVモードに切り替えるべきである場合に発せられる。例えば、目標駆動力を実現するためにはモータ4の駆動力だけでは不足する場合や、バッテリ5を充電すべき場合(バッテリ5のSOCが所定値未満である場合)や、減速時にエンジン2によるエンジンブレーキを付与すべき場合などにおいて、システム要求が発せられる。
【0043】
ステップS101において、始動要求が発せられたと判定されなかった場合(ステップS101:No)、コントローラ20は、本始動制御に係る処理を終了する。これに対して、始動要求が発せられたと判定された場合(ステップS101:Yes)、コントローラ20は、ステップS102に進む。ステップS102において、コントローラ20は、エンジン2の出力トルクの指示値(以下「エンジン指示トルク」という)として、回転上昇用トルクを設定する。
また、コントローラ20は、第2クラッチCL2の作動油圧を制御するための指示油圧を低下させて第2クラッチCL2の締結状態から所定のスリップ状態への移行を開始し、その後、第1クラッチCL1の作動油圧を制御するための指示油圧を上昇させて、第1クラッチCL1の解放状態から所定のスリップ状態への移行を開始する。
【0044】
次いで、ステップS103において、コントローラ20は、モータ4とエンジン2との差回転(モータ回転数-エンジン回転数)が第1閾値A以下か否かを判定する。その結果、コントローラ20は、モータ4とエンジン2との差回転が第1閾値A以下と判定されなかった場合(ステップS103:No)、つまりモータ4とエンジン2との差回転が第1閾値Aより大きい場合は、ステップS102に戻る。この場合、コントローラ20は、モータ4とエンジン2との差回転が第1閾値Aより大きい間は、ステップS102の処理とS103の判定を繰り返す。
【0045】
これに対して、コントローラ20は、モータ4とエンジン2との差回転が第1閾値A以下と判定された場合(ステップS103:Yes)、ステップS104に進み、回転上昇用トルクと第1クラッチCL1の伝達トルク容量との内の小さい方のトルクを、エンジン指示トルクとして設定する。上述したように、回転上昇用トルクエンジン2の回転数を上昇させるためのトルク値であり、例えば所定の変化率で上昇するように予め設定されメモリ等に記憶されている。また、第1クラッチCL1の伝達トルク容量は、第1クラッチCL1に付与する油圧の指示値に基づき取得される。
また、コントローラ20は、エンジン2が完爆状態に達すると、第1クラッチCL1の作動油圧を制御するための指示油圧を上昇させて、第1クラッチCL1の所定のスリップ状態から締結状態への移行を開始する。その後、コントローラ20は、スリップ状態にある第2クラッチCL2を締結状態に移行するように、第2クラッチCL2の作動油圧を制御するための指示油圧を上昇させる。
【0046】
次いで、ステップS105において、コントローラ20は、モータ4とエンジン2との差回転が第2閾値B以下か否かを判定する。この第2閾値Bは第1閾値Aより小さい値である。その結果、コントローラ20は、モータ4とエンジン2との差回転が第2閾値B以下と判定されなかった場合(ステップS105:No)、つまりモータ4とエンジン2との差回転が第1閾値A以下且つ第2閾値Bより大きい場合は、ステップS104に戻る。この場合、コントローラ20は、モータ4とエンジン2との差回転が第1閾値Aより大きい間は、ステップS104の処理とS105の判定を繰り返す。
【0047】
これに対して、コントローラ20は、モータ4とエンジン2との差回転が第2閾値B以下と判定された場合(ステップS105:Yes)、ステップS106に進み、駆動力制御用トルクと第1クラッチCL1の伝達トルク容量との内の小さい方のトルクを、エンジン指示トルクとして設定する。上述したように、駆動力制御用トルクは、ハイブリッド車両1の目標駆動力を実現するためにエンジン2が出力すべきトルクであり、目標駆動力やモータ4の出力トルクから算出される。
【0048】
次いで、ステップS107において、コントローラ20は、第1クラッチCL1の締結が完了したか否かを判定する。例えば、コントローラ20は、第1クラッチCL1の作動油圧が最大値に達した場合に、第1クラッチCL1の締結が完了したと判定する。その結果、コントローラ20は、第1クラッチCL1の締結が完了したと判定されなかった場合(ステップS107:No)、ステップS106に戻る。この場合、コントローラ20は、第1クラッチCL1の締結が完了するまで、ステップS106の処理とS107の判定を繰り返す。
【0049】
これに対して、コントローラ20は、第1クラッチCL1の締結が完了したと判定された場合(ステップS107:Yes)、ステップS108に進み、駆動力制御用トルクを、エンジン指示トルクとして設定する。つまり、エンジン2の出力トルクが第1クラッチCL1の伝達トルク容量を超えないようにする制御を終了する。
【0050】
次いで、ステップS109において、コントローラ20は、エンジン2の始動制御が完了したか否かを判定する。例えば、コントローラ20は、第2クラッチCL2の作動油圧が最大値に達し、第2クラッチCL2の締結が完了した場合に、エンジン2の始動制御が完了したと判定する。その結果、コントローラ20は、エンジン2の始動制御が完了したと判定されなかった場合(ステップS109:No)、ステップS108に戻る。この場合、コントローラ20は、エンジン2の始動制御が完了するまで、ステップS108の処理とS109の判定を繰り返す。
【0051】
これに対して、コントローラ20は、エンジン2の始動制御が完了したと判定された場合(ステップS109:Yes)、本始動制御に係る処理を終了する。
【0052】
[作用及び効果]
次に、本発明の実施形態によるハイブリッド車両の制御方法及び制御システムの作用及び効果について説明する。
【0053】
本実施形態によれば、コントローラ20は、第1クラッチCL1の締結が完了するまでの間、エンジン2の出力トルクが、エンジン2とモータ4との間で第1クラッチCL1が伝達可能な伝達トルク容量を超えないように、エンジン2を制御する。これにより、第1クラッチCL1のスリップ制御中におけるエンジン2の過剰な回転上昇を防止することができ、ドライバに違和感や不安感を与えないようにすることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、第1クラッチCL1は油圧により動作するように構成され、第1クラッチCL1の伝達トルク容量は、第1クラッチCL1に付与する油圧の指示値に基づき取得されるので、第1クラッチCL1の伝達トルク容量を正確に求めることができ、車両ショックの発生を抑制しつつエンジン2の過剰な回転上昇を適切に防止することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、コントローラ20は、第1クラッチCL1の締結が完了する前において、モータ4とエンジン2との差回転が第1閾値Aより大きい間は、エンジン2の出力トルクが伝達トルク容量を超えるか否かにかかわらず、エンジン2の回転数を上昇させるための回転上昇用トルクをエンジン2が出力するように、エンジン2を制御する。これにより、モータ4とエンジン2との差回転が第1閾値Aより大きい間は、エンジン回転数をモータ回転数に向かって迅速に上昇させることができ、エンジン2の始動制御の応答性を向上することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、コントローラ20は、第1クラッチCL1の締結が完了する前において、モータ4とエンジン2との差回転が第1閾値A以下且つ第2閾値Bより大きい場合に、回転上昇用トルクと第1クラッチCL1の伝達トルク容量との内の小さい方のトルクをエンジン2が出力するように、エンジン2を制御する。これにより、回転上昇中のエンジン2の出力トルクが第1クラッチCL1の伝達トルク容量を超えて空回りすることによるエンジン回転数の過剰な上昇を抑制でき、ドライバに違和感や不安感を与えないようにすることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、コントローラ20は、第1クラッチCL1の締結が完了する前において、モータ4とエンジン2との差回転が第2閾値B以下の場合、駆動力制御用トルクと第1クラッチCL1の伝達トルク容量との内の小さい方のトルクをエンジン2が出力するように、エンジン2を制御する。これにより、駆動力制御中のエンジン2の出力トルクが第1クラッチCL1の伝達トルク容量を超えて空回りすることによるエンジン回転数の過剰な上昇を抑制でき、ドライバに違和感や不安感を与えないようにすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ハイブリッド車両
2 エンジン
4 モータ
5 バッテリ
6 変速機
8 動力伝達系
12 車輪
20 コントローラ(制御装置)
CL1 第1クラッチ(摩擦締結要素)
CL2 第2クラッチ