(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240903BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240903BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240903BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240903BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
H01M8/0438
H01M8/04746
(21)【出願番号】P 2021075952
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】草刈 俊明
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】梅原 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】宮下 健丈
(72)【発明者】
【氏名】山口 真也
(72)【発明者】
【氏名】田村 嘉裕
(72)【発明者】
【氏名】日野 海成
(72)【発明者】
【氏名】平磯 亮
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開平7-9672(JP,U)
【文献】特表平8-505583(JP,A)
【文献】特開昭50-26210(JP,A)
【文献】特表2021-535563(JP,A)
【文献】特開平11-152031(JP,A)
【文献】特開2015-74273(JP,A)
【文献】特公平7-941(JP,B2)
【文献】特開昭47-40609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60L 50/00-58/40
B60V 1/00- 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムを搭載した構造体であって、
前記構造体は、前記構造体の下面と地面との間で蓄圧空間を形成する、スカート、
前記蓄圧空間に、前記燃料電池システムから排出されたオフガスを供給する、送気部、
前記蓄圧空間に蓄圧された圧力を前記スカートの下端から前記スカートの外部に排圧する、排圧部と、を備え、
前記スカートは、前記スカートの底面が解放された底抜け構造であり、
前記送気部から
前記蓄圧空間への前記オフガスの所定量の供給により、前記構造体に浮揚力を付与することを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記蓄圧空間の中の圧力をモニターする、圧力測定部と、
制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記送気部からの
前記蓄圧空間への前記オフガスの供給量と、前記排圧部からの前記外部への排圧とを制御することで、前記構造体に浮揚力を付与する、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
燃料電池システムを搭載した構造体であって、
前記構造体は、前記構造体の下面と地面との間で蓄圧空間を形成する、スカート、
前記スカートの内部空間に、前記燃料電池システムから排出されたオフガスを供給する、送気部、
前記蓄圧空間に蓄圧された圧力を前記スカートの下端から前記スカートの外部に排圧する、排圧部と、を備え、
前記スカートは、前記スカートの内部空間に前記オフガスを供給することにより膨張可能な膨張収縮体であり、
前記送気部から前記スカートの内部空間への前記オフガスの所定量の供給により、前記スカートの内部空間が膨張し、前記スカートの内部空間の膨張により、前記蓄圧空間に蓄圧された圧力が所定の圧力以上になることで、前記外部に圧力が排圧されつつ、前記構造体に浮揚力を付与することを特徴とする構造体。
【請求項4】
前記蓄圧空間の中の圧力をモニターする、圧力測定部と、
制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記送気部からの前記スカートの内部空間への前記オフガスの供給量と、前記排圧部からの前記外部への排圧とを制御することで、前記構造体に浮揚力を付与する、請求項3に記載の構造体。
【請求項5】
車両又は貨物運搬用モビリティである、請求項1
~4のいずれか一項に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、1つの単セル(以下、セルと記載する場合がある)又は複数の単セルを積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)で構成され、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化剤ガスとの電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、実際に燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは、酸化・還元に寄与しないガスとの混合物である場合が多い。特に酸化剤ガスは酸素を含む空気である場合が多い。
なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。また、単セル、及び、単セルを積層した燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
【0003】
燃料電池を動力源として適用した主なモビリティとしては車両が挙げられる。車両以外のモビリティも検討されている。
例えば特許文献1では、搭載された電池の特性を十分に発揮させることが可能な飛行体が開示されている。
【0004】
特許文献2では、燃料電池は使われていないが、経済的に運転でき、かつ、走行状態がより改善できるホバークラフトと浮揚ブロアーの駆動方法が開示されている。
【0005】
特許文献3では、燃料電池は使われていないが、入渠工事を行うことなく簡易に船尾シールを交換可能なエアクッション艇が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-020719号公報
【文献】特開1996-505583号公報
【文献】特開1999-152031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料電池には発電または冷却のために空気が供給され、燃料電池からは発電後または冷却後のガスが排出される、という使われ方が一般的である。上記特許文献1のような車両以外のモビリティでも同様の使い方がなされ、いずれにしても排出ガス(オフガス)は捨てられるような使われ方をされる。一方、モビリティの動力源として燃料電池およびそのシステムを機能させようとすると、それ自体の重量が制約となって燃費が悪化する。燃料電池をモビリティの動力源として用いるだけでなく、燃費を良好にするために燃料電池からの排出ガスを有効活用するモビリティは、実用化されていない。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、燃料電池の発電もしくは冷却に用いられたガスを、構造体の下面で蓄圧し、その圧力を構造体の浮揚力として利用することができる構造体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の構造体は、燃料電池システムを搭載した構造体であって、
前記構造体は、前記構造体の下面と地面との間で蓄圧空間を形成する、スカート、
前記スカートの内部空間及び前記蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間に、前記燃料電池システムから排出されたオフガスを供給する、送気部、
前記蓄圧空間に蓄圧された圧力を前記スカートの下端から前記スカートの外部に排圧する、排圧部と、を備え、
前記送気部から前記スカートの内部空間及び前記蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間への前記オフガスの所定量の供給により、構造体に浮揚力を付与することを特徴とする。
【0010】
本開示の構造体においては、前記蓄圧空間の中の圧力をモニターする、圧力測定部と、
制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記送気部からの前記スカートの内部空間及び前記蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間への前記オフガスの供給量と、前記排圧部からの前記外部への排圧とを制御することで、前記構造体に浮揚力を付与してもよい。
【0011】
本開示の構造体は、車両又は貨物運搬用モビリティであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の構造体によれば、燃料電池の発電もしくは冷却に用いられたガスを、構造体の下面で蓄圧し、その圧力を構造体の浮揚力として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の構造体の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の構造体の別の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の構造体は、燃料電池システムを搭載した構造体であって、
前記構造体は、前記構造体の下面と地面との間で蓄圧空間を形成する、スカート、
前記スカートの内部空間及び前記蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間に、前記燃料電池システムから排出されたオフガスを供給する、送気部、
前記蓄圧空間に蓄圧された圧力を前記スカートの下端から前記スカートの外部に排圧する、排圧部と、を備え、
前記送気部から前記スカートの内部空間及び前記蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間への前記オフガスの所定量の供給により、構造体に浮揚力を付与することを特徴とする。
【0015】
車両用の燃料電池は発電のため大量の空気を供給する必要がある。燃料電池は、供給された空気の内、全てのN2や未反応のO2を排気ガスとして大量に排気する。
空冷式燃料電池の場合においても、エンジンコンパートメント(エンコパ)内に空冷式燃料電池を配置し、空気をラジエータと同じように使用する。その冷却に使ったオフガスは一部循環させることがあるが、基本、外部に捨てられるよう設計されるため、大流量のガスがそのまま捨てられることとなり、エネルギー損失がある。燃料電池を含む燃料電池システムを搭載した車両では、燃料電池、制御システム、タンク等の部品が多く、車両の重量が重くなりやすく、燃費が悪化する。
本開示によれば、燃料電池の発電もしくは冷却に用いられたオフガスを、構造体の下面で蓄圧し、その圧力を構造体の浮揚力として利用することで、重量物を持ち上げ、構造体の見かけ重量を軽くし、構造体を動かす力を少なくすることができる。本開示は、具体的には、燃料電池を動力源として搭載し、その燃料電池からのオフガスを利用したホバークラフトである。
本開示によれば、燃料電池の発電に使用されたオフガスを用いて構造体の大部分を浮かせつつ燃料電池にて発電した電気を用いて構造体を移動させることができる。
【0016】
構造体は、例えば、車・バイク等の車両、貨物運搬が可能な貨物運搬モビリティ等の移動体(モビリティ)等が挙げられる。
構造体は、手動で持ち運ぶことができる固定式でない発電機等を含む。
本開示の構造体によれば、災害時給電機等のシステムと合わせて総重量200kg以上でも浮いているため1人で、手動で運ぶことができる。それにより、人力で給電車やバスや車が入れない場所でも給電機を簡単に持ち込むことができる。専用道路があればバスや電車といった重量物もその重量が浮くことで最小のエネルギーで移動させることができる。本開示の構造体は、避難所内に楽に運搬でき、非常用発電機として雨や人などの外乱を気にすることなく建物に給電することも考えることができるようになる。
本研究者らによれば、本開示の構造体として、重量170kgの車両が、オフガス流量400L/minでしっかりと浮いてほぼ力を入れないで動かせることを実証した。
【0017】
本開示の構造体は、スカートを有する。
本開示の構造体は、スカート下からオフガスが常時微小に外部へ流れることで地面との接地、摩擦がなくなり、浮くことができる。
スカートは、構造体の下面と地面との間で蓄圧空間を形成する。スカートは、構造体下にガスを張ることで構造体の下面にかかるガス圧をコントロールすることができる構造であればよい。スカートは、ガス圧が所定のガス圧未満のときは地面と接地し、所定のガス圧以上になると地面との接地部位から蓄圧空間の外部にオフガス又は蓄圧空間内で圧縮された気体を排出可能な構造であってもよい。
スカートは、底面が解放された底抜け構造であってもよい。この場合ガス圧の供給により蓄圧空間内のガス圧が上昇し、その圧力で構造体を浮かすことができる。
スカートは、オフガスを供給することにより膨張可能な膨張収縮体であってもよい。この場合オフガスの供給によりスカート内が膨張し、スカートにより形成される構造体の下面と地面との間の蓄圧空間が蓄圧され、その蓄圧された圧力の反動で構造体を浮かすことができる。膨張収縮体の膨張時の形状は、例えば、風船状、浮き輪状、ドーナツ状に膨張可能な形状であってもよい。
スカートの材質は、所定のガス圧に耐えうる耐圧性を有するものであれば特に限定されない。スカートの材質は、例えば、炭素材料、樹脂、金属等であってもよい。
【0018】
本開示の構造体は、送気部を有する。
送気部は、スカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間に、燃料電池システムから排出されたオフガスを供給する。
送気部は、スカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間へのオフガスの所定量の供給により、構造体に浮揚力を付与することを可能にする。オフガスの所定量は、構造体に浮揚力を付与することができる量に適宜設定してもよい。
オフガスの主成分は、酸化剤ガスとしての空気、冷媒としての冷却用空気等であってもよく、必要に応じて燃料ガスとしての水素等が含まれていてもよい。
送気部は、送気弁であってもよく、必要に応じて送気用ファンをさらに設けてもよい。
送気弁は、酸化剤オフガス排出弁、燃料オフガス排出弁、冷媒排出弁等であってもよい。所望の浮揚力を確保する観点から、送気弁は、少なくとも酸化剤オフガス排出弁であってもよく、さらに送気弁として燃料オフガス排出弁、冷媒排出弁等を備えていてもよい。
送気弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって送気弁が開弁されることにより、オフガスをスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間へ供給する。
送気用ファンは、オフガスのスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間への供給を促進する。
送気用ファンは、制御部と電気的に接続され、制御部によって送気用ファンの駆動のオン・オフが制御されてもよい。
送気用ファンは、冷却ファンであってもよい。
【0019】
本開示の構造体は、排圧部を有する。
排圧部は、前記蓄圧空間に蓄圧された圧力を前記スカートの下端から前記スカートの外部に排圧する。排圧はオフガスの外部への排気によって達成されてもよい。
排圧部は、オフガスや蓄圧により圧縮された気体を構造体の外部に排出可能な流路構造等であってもよいし、排圧弁等であってもよい。
排圧弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって排圧弁が開弁されることにより、スカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間の外部に蓄圧された圧力を排圧する。
【0020】
構造体を動かす荷重及び/又は負荷は、以下の式(1)で表すことができる。
(1)荷重・負荷=重量-浮力≧0(0の時構造体が浮いている)
浮力は、以下の式(2)で表すことができる。
(2)浮力=構造体の受圧面積×構造体下圧力
構造体下圧力は、以下の式(3)で表すことができる。
(3)構造体下圧力=オフガス流量×スカートと地面の界面の圧損
なお、浮きすぎれば圧損が下がり、浮力が下がるため、ドローンのような飛行体にはならない。
構造体は、オフガス流量が少ない場合、圧力が上がり、一瞬浮くが、圧が抜け、接地する。接地することで圧が上がる。圧力の上昇及び下降の一連の流れを繰り返すことで、構造体を動かす荷重及び/又は負荷は、安定はしないが、低減することができる。構造体が常に浮いていられるだけのオフガスをスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間に流すことでほぼ荷重・負荷がない最適な状態を実現することができる。
【0021】
本開示の構造体は、圧力測定部を備えていてもよい。
圧力測定部は、蓄圧空間の中の圧力をモニターする。
圧力測定部は、制御部と電気的に接続され、制御部は、圧力測定部によって検出された蓄圧空間の中の圧力を検知してもよい。
圧力測定部は、従来公知の圧力センサ等であってもよい。
【0022】
本開示の構造体は、制御部を備えていてもよい。
制御部は、送気部からスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間へのオフガスの供給量と、排圧部から外部への排圧とを制御することで、構造体に浮揚力を付与してもよい。
制御部は、物理的には、例えば、CPU(中央演算処理装置)等の演算処理装置と、CPUで処理される制御プログラム及び制御データ等を記憶するROM(リードオンリーメモリー)、並びに、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAM(ランダムアクセスメモリー)等の記憶装置と、入出力インターフェースとを有するものである。また、制御部は、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)等の制御装置であってもよい。
制御部は、移動体に搭載されていてもよいイグニッションスイッチと電気的に接続されていてもよい。制御部はイグニッションスイッチが切られていても外部電源により動作可能であってもよい。
【0023】
本開示の構造体は、燃料電池システムを備える。
燃料電池システムは、燃料電池と、燃料ガス系と、酸化剤ガス系と、冷却系と、を備える。
【0024】
燃料電池は、単セルを1つのみ有するものであってもよいし、単セルを複数個積層した積層体である燃料電池スタックであってもよい。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよく、2~600個であってもよい。
燃料電池スタックは、単セルの積層方向の両端にエンドプレートを備えていてもよい。
【0025】
燃料電池の単セルは、少なくとも膜電極ガス拡散層接合体を備える。
膜電極ガス拡散層接合体は、アノード側ガス拡散層及び、アノード触媒層及び、電解質膜及び、カソード触媒層及び、カソード側ガス拡散層をこの順に有する。
【0026】
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層及びカソード側ガス拡散層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層及びアノード側ガス拡散層を含む。
カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。また、アノード触媒およびカソード触媒としては、例えば、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)などが挙げられ、触媒を担持する母材および導電材としては、例えば、カーボンなどの炭素材料等が挙げられる。
【0027】
カソード側ガス拡散層及びアノード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層と称する。
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0028】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等の電解質ポリマー等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0029】
単セルは、必要に応じて触媒層とガス拡散層の間にマイクロポーラス層(MPL)を有していてもよい。マイクロポーラス層は、PTFE等の撥水性樹脂とカーボンブラック等の導電性材料との混合物を含んでいてもよい。
【0030】
単セルは、必要に応じて膜電極ガス拡散層接合体の両面を挟持する2枚のセパレータを備えてもよい。2枚のセパレータは、一方がアノード側セパレータであり、もう一方がカソード側セパレータである。本開示では、アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータという。
セパレータは、反応ガス、冷媒等の流体を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔を有していてもよい。冷媒としては、空気等の冷却ガス、水、エチレングリコールと水との混合溶液等の冷却水等を用いることができる。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよい。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがアノード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、アノード側セパレータは、アノード側ガス拡散層に接する面に燃料ガス供給孔から燃料ガス排出孔に燃料ガスを流す燃料ガス流路を有していてもよく、アノード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがカソード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、カソード側セパレータは、カソード側ガス拡散層に接する面に酸化剤ガス供給孔から酸化剤ガス排出孔に酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路を有していてもよく、カソード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、チタン、及び、ステンレス等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
【0031】
燃料電池スタックは、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等のマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、アノード入口マニホールド、カソード入口マニホールド、及び、冷媒入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、アノード出口マニホールド、カソード出口マニホールド、及び、冷媒出口マニホールド等が挙げられる。
【0032】
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、水素であってもよい。酸化剤ガスは酸素、空気、乾燥空気等であってもよい。
【0033】
燃料ガス系は、燃料電池のアノードに燃料ガスを供給する。燃料ガス系は、燃料ガス供給部を備えていてもよく、燃料ガス供給流路を備えていてもよく、燃料オフガス排出流路を備えていてもよい。
燃料ガス供給部としては、例えば、燃料タンク等が挙げられ、具体的には、液体水素タンク、圧縮水素タンク等が挙げられる。
燃料ガス供給部は、制御部と電気的に接続される。燃料ガス供給部は、制御部からの制御信号に従って、燃料ガス供給部の主止弁の開閉が制御されることにより燃料ガスの供給のON/OFFが制御されてもよい。
燃料ガス供給流路は、燃料電池の燃料ガス入口と燃料ガス供給部とを接続する。燃料ガス供給流路は、燃料ガスの燃料電池のアノードへの供給を可能にする。燃料ガス入口は、燃料ガス供給孔、アノード入口マニホールド等であってもよい。
燃料オフガス排出流路は、スカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間及び構造体外部の少なくともいずれか一方と燃料電池の燃料ガス出口とを接続してもよい。燃料オフガス排出流路は、燃料電池のアノードから排出された燃料ガスである燃料オフガスをスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間に供給するか又は構造体外部に排出する。燃料ガス出口は、燃料ガス排出孔、アノード出口マニホールド等であってもよい。
燃料オフガス排出流路には、燃料オフガス排出弁(排気排水弁)が備えられていてもよい。
燃料オフガス排出弁は、燃料オフガス及び水分等をスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間に供給するか又は構造体外部に排出することを可能にする。
燃料オフガス排出弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって燃料オフガス排出弁の開閉を制御されることにより、燃料オフガスのスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間への供給流量及び構造体外部への排出流量等を調整してもよい。また、燃料オフガス排出弁の開度を調整することにより、アノードに供給される燃料ガス圧力(アノード圧力)を調整してもよい。
燃料オフガス排出流路は、燃料オフガス排出弁よりも下流で酸化剤オフガス排出流路と合流していてもよい。
燃料オフガスは、アノードにおいて未反応のまま通過した燃料ガス及び、カソードで生成した生成水がアノードに到達した水分等を含んでいてもよく、触媒層及び電解質膜等で生成した腐食物質及び、掃気時にアノードに供給されてもよい酸化剤ガス等を含む場合がある。
【0034】
酸化剤ガス系は、燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する。酸化剤ガス系は、酸化剤ガス供給部、酸化剤ガス供給流路、酸化剤オフガス排出流路等を備えていてもよい。
酸化剤ガス供給部は、燃料電池に酸化剤ガスを供給する。具体的には、酸化剤ガス供給部は、燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する。
酸化剤ガス供給部としては、例えば、エアコンプレッサー等を用いることができる。
酸化剤ガス供給部は、制御部と電気的に接続される。酸化剤ガス供給部は、制御部からの制御信号に従って駆動される。酸化剤ガス供給部は、制御部によって酸化剤ガス供給部からカソードに供給される酸化剤ガスの流量及び圧力からなる群より選ばれる少なくとも1つを制御されてもよい。
酸化剤ガス供給流路は、酸化剤ガス供給部と燃料電池の酸化剤ガス入口とを接続する。酸化剤ガス供給流路は、酸化剤ガス供給部から燃料電池のカソードへの酸化剤ガスの供給を可能にする。酸化剤ガス入口は、酸化剤ガス供給孔、カソード入口マニホールド等であってもよい。
酸化剤オフガス排出流路は、スカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間並びに必要に応じて構造体外部と燃料電池の酸化剤ガス出口とを接続する。酸化剤オフガス排出流路は、燃料電池のカソードから排出される酸化剤ガスである酸化剤オフガスのスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間への供給及び必要に応じて構造体外部への排出を可能にする。酸化剤ガス出口は、酸化剤ガス排出孔、カソード出口マニホールド等であってもよい。
酸化剤オフガス排出流路には、酸化剤オフガス排出弁(酸化剤ガス圧力調整弁)が設けられていてもよい。
酸化剤オフガス排出弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって酸化剤オフガス排出弁が開弁されることにより、反応済みの酸化剤ガスである酸化剤オフガスを酸化剤オフガス排出流路からスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間へ供給するか又は必要に応じて構造体外部へ排出する。また、酸化剤オフガス排出弁の開度を調整することにより、カソードに供給される酸化剤ガス圧力(カソード圧力)を調整してもよい。
酸化剤オフガス排出流路は、酸化剤オフガス排出弁よりも下流で冷媒排出流路と合流していてもよい。
【0035】
冷却系は、燃料電池を冷却する。冷却系は、冷媒が冷却水の場合は、冷媒供給部、冷媒循環流路等を備えていてもよい。
冷媒循環流路は、燃料電池に設けられる冷媒供給孔及び冷媒排出孔に連通し、冷媒供給部から供給される冷媒を燃料電池内外で循環させることを可能にする。
冷媒供給部は、制御部と電気的に接続される。冷媒供給部は、制御部からの制御信号に従って駆動される。冷媒供給部は、制御部によって冷媒供給部から燃料電池に供給される冷媒の流量を制御される。これにより燃料電池の温度が制御されてもよい。
冷媒供給部は、例えば、冷却水ポンプ等が挙げられる。
冷媒循環流路には、冷却水の熱を放熱するラジエータが設けられていてもよい。
冷媒循環流路には、冷媒を蓄えるリザーブタンクが設けられていてもよい。
【0036】
冷却系は、冷媒が空気の場合は、冷媒供給流路、冷媒排出流路等を備えていてもよい。
冷媒供給流路は、構造体外部と燃料電池の冷媒入口とを接続する。冷媒供給流路は、構造体外部から燃料電池の冷媒入口への冷媒の供給を可能にする。冷媒入口は、冷媒供給孔、冷媒入口マニホールド等であってもよい。
冷媒供給流路には、空気中に含まれる不純物等を除去するフィルター等の圧損体が設けられていてもよい。
冷媒排出流路は、スカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間と燃料電池の冷媒出口とを接続する。冷媒排出流路は、燃料電池の冷媒出口から排出される冷媒のスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間への供給を可能にする。冷媒出口は、冷媒排出孔、冷媒出口マニホールド等であってもよい。
冷媒排出流路には、冷媒排出弁が設けられていてもよい。
冷媒排出弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって冷媒排出弁が開弁されることにより、冷媒であるオフガスを冷媒排出流路からスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間へ供給する。
冷媒排出流路には、冷媒である空気を構造体外部からの吸気及びスカートの内部空間及びスカートにより形成される地面と構造体下面との間の蓄圧空間からなる群より選ばれる少なくとも一種の空間への供給を促進する冷却ファンが配置されていてもよい。
冷却ファンは、制御部と電気的に接続され、制御部によって冷却ファンの駆動のオン・オフが制御されてもよい。
【0037】
燃料電池システムは、二次電池を備えていてもよい。
二次電池(バッテリ)は、充放電可能なものであればよく、例えば、ニッケル水素二次電池、及び、リチウムイオン二次電池等の従来公知の二次電池が挙げられる。また、二次電池は、電気二重層コンデンサ等の蓄電素子を含むものであってもよい。二次電池は、複数個を直列に接続した構成であってもよい。二次電池は、酸化剤ガス供給部等に電力を供給する。二次電池は、例えば、家庭用電源等の燃料電池システムの外部の電源から充電可能になっていてもよい。二次電池は、燃料電池の出力により充電されてもよい。二次電池の充放電は、制御部によって制御されてもよい。
【0038】
本開示の構造体は、胴体を備えていてもよい。
胴体は構造体の主体となる部分であってもよい。胴体は、構造体が車両の場合は、車体であってもよい。
胴体は、スカートの面上に配置されていてもよい。換言すると、スカートは、胴体の下面に配置されていてもよい。
燃料電池システムは、胴体上に配置されていてもよく、胴体内に収容されていてもよい。
【0039】
図1は、本開示の構造体の一例を示す模式図である。なお、
図1において、Fはオフガス流れ、Pはガス圧を示す。
構造体100は、燃料電池システム10、胴体11、スカート20、送気部30、排圧部40、圧力測定部50、図示しない制御部を備える。
燃料電池システム10は、胴体11上に配置され、スカート20は胴体11の下面に配置されている。
スカート20により、構造体の下面と地面Eとの間で蓄圧空間21が形成されている。
送気部30は、燃料電池から排出されるオフガスを蓄圧空間21に供給する。
排圧部40は、構造体100の外部にオフガスを排出する。
圧力測定部50は、蓄圧空間21内の圧力を測定する。
制御部は、圧力測定部50が測定した蓄圧空間21内の圧力を検知し、蓄圧空間21内が所定の圧力となるように、送気部30から蓄圧空間21へのオフガスの供給量を制御し、さらに排圧部40から構造体100の外部へのオフガスの排出量を制御することで蓄圧空間21内の内圧を制御する。これにより構造体100は地面Eに対して浮揚力が付与される。
所定の圧力は、上記式(1)~(3)を考慮して浮力が構造体の重量と等しくなるように適宜設定することができる。
【0040】
図2は、本開示の構造体の別の一例を示す模式図である。なお、
図2において、
図1と同じ構成については、その説明を省略する。
図2において、スカート20はオフガスの供給によりスカート20の内部空間22が膨張可能となっている。スカート20の内部空間22の膨張により、蓄圧空間21に蓄圧された圧力が所定の圧力以上になることで、外部に圧力が排圧されつつ、構造体200に浮揚力が付与される。
図示しない制御部は、圧力測定部50が測定した蓄圧空間21内の圧力を検知し、蓄圧空間21内が所定の圧力となるように、送気部30からスカート20の内部空間22へのオフガスの供給量を制御し、さらに排圧部40から構造体200の外部への排圧を制御することで蓄圧空間21内の内圧を制御してもよい。これにより構造体200には地面Eに対して精度良く浮揚力が付与される。
【符号の説明】
【0041】
10 燃料電池システム
11 胴体
20 スカート
21 蓄圧空間
22 内部空間
30 送気部
40 排圧部
50 圧力測定部
100 構造体
200 構造体
E 地面
F オフガス流れ
P ガス圧