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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】車体後部補強構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/02 20060101AFI20240903BHJP
   B62D 25/06 20060101ALI20240903BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B62D25/02 B
B62D25/06 A
B62D25/04 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021084493
(22)【出願日】2021-05-19
(65)【公開番号】P2022178012
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正和
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-285718(JP,A)
【文献】特開2021-49925(JP,A)
【文献】特開2014-65434(JP,A)
【文献】特開2008-239128(JP,A)
【文献】特開2016-94060(JP,A)
【文献】特開平8-127312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/02-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の上部で前後方向に延びるルーフサイドレールと、
バックドア開口部の側縁部を形成するリヤピラーと、
上部が前記ルーフサイドレールに接続され、かつ後部が前記リヤピラーに接続されたルーフサイドインナパネルと、
前記ルーフサイドインナパネルに車幅方向の外側から接続されたルーフサイドリンフォースパネルと、を備え、
前記車体の後部には、特定部品が前記リヤピラーから前方に離れた位置で前記ルーフサイドインナパネルに前記車幅方向の内側から対向するように配置され、
前記ルーフサイドインナパネルは、前記特定部品を避けるように前記車幅方向の外側に屈曲しており、
前記ルーフサイドリンフォースパネルは、少なくとも前記特定部品と前記リヤピラーとの間で前後方向に延びており、
前記ルーフサイドインナパネル及び前記リヤピラーの少なくとも一方には、前記ルーフサイドリンフォースパネルに前記車幅方向の前記内側から対向する位置で断面略ハット形状をなして前記車幅方向の前記内側に突出し、少なくとも前記特定部品と前記リヤピラーとの間で前後方向に延びる凸部が形成され
前記凸部は、前記ルーフサイドリンフォースパネルと共に閉断面を構成していることを特徴とする車体後部補強構造。
【請求項2】
前記ルーフサイドリンフォースパネルは、断面略ハット形状をなして前記車幅方向の前記外側に突出しており、
前記閉断面は、略六角形状である請求項1記載の車体後部補強構造。
【請求項3】
前記凸部は、少なくとも前記ルーフサイドインナパネルと前記リヤピラーとの接続部分まで延びている請求項1又は2記載の車体後部補強構造。
【請求項4】
前記凸部は、前記ルーフサイドインナパネルに形成された第1凸部であり、
前記第1凸部は、前記リヤピラーの前端縁よりも後方に延出し、前記リヤピラーに前記車幅方向の前記内側から重なる状態で前記リヤピラーに接続された延出部を有している請求項記載の車体後部補強構造。
【請求項5】
前記凸部は、前記リヤピラーに形成された第2凸部であり、
前記第2凸部は、前記ルーフサイドインナパネルに前記車幅方向の前記内側から重なる状態で前記ルーフサイドインナパネルに接続されている請求項記載の車体後部補強構造。
【請求項6】
車体の上部で前後方向に延びるルーフサイドレールと、
バックドア開口部の側縁部を形成するリヤピラーと、
上部が前記ルーフサイドレールに接続され、かつ後部が前記リヤピラーに接続されたルーフサイドインナパネルと、
前記ルーフサイドインナパネルに車幅方向の外側から接続されたルーフサイドリンフォースパネルと、を備え、
前記車体の後部には、特定部品が前記ルーフサイドインナパネルに前記車幅方向の内側から対向するように配置され、
前記ルーフサイドリンフォースパネルは、少なくとも前記特定部品と前記リヤピラーとの間で前後方向に延びており、
前記ルーフサイドインナパネル及び前記リヤピラーの少なくとも一方には、前記ルーフサイドリンフォースパネルに前記車幅方向の前記内側から対向する位置で前記車幅方向の前記内側に突出し、少なくとも前記特定部品と前記リヤピラーとの間で前後方向に延びる凸部が形成され、
前記凸部は、少なくとも前記ルーフサイドインナパネルと前記リヤピラーとの接続部分まで延びており、
前記凸部は、前記リヤピラーに形成された第2凸部であり、
前記第2凸部は、前記ルーフサイドインナパネルに前記車幅方向の前記内側から重なる状態で前記ルーフサイドインナパネルに接続されていることを特徴とする車体後部補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体後部補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の車体後部補強構造が開示されている。この車体後部補強構造は、ルーフサイドレール、リヤピラー及びルーフサイドインナパネルを備えている。
【0003】
ルーフサイドレールは、車体の上部で前後方向に延びている。リヤピラーは、バックドア開口部の側縁部を形成している。ルーフサイドインナパネルは、上部がルーフサイドレールに接続され、かつ後部がリヤピラーに接続されている。
【0004】
この車体後部補強構造は、ルーフサイドインナパネルによって、ルーフサイドを補強している。なお、特許文献1には開示されていないが、この車体後部補強構造は、ルーフサイドインナパネルに車幅方向の外側から接続されたルーフサイドリンフォースパネルをさらに備え得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-63622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車体の後部には、一般的にシートベルトリトラクタやリヤシートバックのスライド&ロック機構等である特定部品がルーフサイドインナパネルに車幅方向の内側から対向するように配置される。そして、車内の空間を広くするため、特定部品を車内においてできるだけ車幅方向の外側に配置することが望まれる。
【0007】
このため、上記従来の車体後部補強構造では、ルーフサイドインナパネルについて、特定部品を避けるように車幅方向の外側に屈曲させることで特定部品の配置スペースを確保することが多い。
【0008】
しかしながら、この車体後部補強構造は、そのような場合にルーフサイドの剛性がルーフサイドインナパネルの屈曲によって低下することを抑制するため、ルーフサイドインナパネルについて板厚を増加させなければならない。また、この車体後部補強構造は、ルーフサイドリンフォースパネルをさらに備える場合、ルーフサイドリンフォースパネルについても板厚を増加させたり、サイズを大きくしたりしなければならなくなるおそれがある。
【0009】
その結果、この車体後部補強構造は、重量増加及び製造コストの高騰を抑制しつつ、特定部品の効率的な配置を実現することが難しい。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、重量増加及び製造コストの高騰を抑制しつつ、特定部品の効率的な配置を実現できる車体後部補強構造を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車体後部補強構造は、車体の上部で前後方向に延びるルーフサイドレールと、
バックドア開口部の側縁部を形成するリヤピラーと、
上部が前記ルーフサイドレールに接続され、かつ後部が前記リヤピラーに接続されたルーフサイドインナパネルと、
前記ルーフサイドインナパネルに車幅方向の外側から接続されたルーフサイドリンフォースパネルと、を備え、
前記車体の後部には、特定部品が前記リヤピラーから前方に離れた位置で前記ルーフサイドインナパネルに前記車幅方向の内側から対向するように配置され、
前記ルーフサイドインナパネルは、前記特定部品を避けるように前記車幅方向の外側に屈曲しており、
前記ルーフサイドリンフォースパネルは、少なくとも前記特定部品と前記リヤピラーとの間で前後方向に延びており、
前記ルーフサイドインナパネル及び前記リヤピラーの少なくとも一方には、前記ルーフサイドリンフォースパネルに前記車幅方向の前記内側から対向する位置で断面略ハット形状をなして前記車幅方向の前記内側に突出し、少なくとも前記特定部品と前記リヤピラーとの間で前後方向に延びる凸部が形成され
前記凸部は、前記ルーフサイドリンフォースパネルと共に閉断面を構成していることを特徴とする。
【0012】
本発明の車体後部補強構造では、車内空間を広くするため、特定部品を車内においてできるだけ車幅方向の外側に配置し、ルーフサイドインナパネルについて、特定部品を避けるように車幅方向の外側に屈曲させることで特定部品の配置スペースを確保する。このような構成でも、この車体後部補強構造は、凸部がルーフサイドリンフォースパネルと協働することによって、その屈曲したルーフサイドインナパネルを効果的に補強できる。
【0013】
これにより、この車体後部補強構造は、ルーフサイドの剛性の低下を抑制しつつ、ルーフサイドインナパネルについて板厚の増加を抑制することができるとともに、ルーフサイドリンフォースパネルについて板厚を薄くしたり、サイズを小さくしたりすることができる。
【0014】
したがって、本発明の車体後部補強構造は、重量増加及び製造コストの高騰を抑制しつつ、特定部品の効率的な配置を実現できる。
ルーフサイドリンフォースパネルは、断面略ハット形状をなして車幅方向の外側に突出していることが望ましい。そして、閉断面は、略六角形状であることが望ましい。
【0015】
凸部は、少なくともルーフサイドインナパネルとリヤピラーとの接続部分まで延びていることが望ましい。この場合、凸部がルーフサイドインナパネルとリヤピラーとの接続部分とも協働することによって、ルーフサイドインナパネルを一層効果的に補強できる。その結果、この車体後部補強構造は、重量増加及び製造コストの高騰を確実性高く抑制しつつ、特定部品の効率的な配置を一層実現できる。
【0016】
凸部は、ルーフサイドインナパネルに形成された第1凸部であることが望ましい。そして、第1凸部は、リヤピラーの前端縁よりも後方に延出し、リヤピラーに車幅方向の内側から重なる状態でリヤピラーに接続された延出部を有していることが望ましい。この場合、第1凸部がルーフサイドリンフォースパネルと協働し、かつ第1凸部の延出部がリヤピラーと協働することによって、ルーフサイドインナパネルをより一層効果的に補強できる。その結果、この車体後部補強構造は、重量増加及び製造コストの高騰を一層確実性高く抑制しつつ、特定部品の効率的な配置をより一層実現できる。
【0017】
凸部は、リヤピラーに形成された第2凸部であることが望ましい。そして、第2凸部は、ルーフサイドインナパネルに車幅方向の内側から重なる状態でルーフサイドインナパネルに接続されていることが望ましい。この場合、第2凸部がルーフサイドリンフォースパネルと協働してルーフサイドインナパネルを挟むことによって、ルーフサイドインナパネルをより一層効果的に補強できる。その結果、この車体後部補強構造は、重量増加及び製造コストの高騰を一層確実性高く抑制しつつ、特定部品の効率的な配置をより一層実現できる。
本発明の別の車体後部補強構造は、車体の上部で前後方向に延びるルーフサイドレールと、
バックドア開口部の側縁部を形成するリヤピラーと、
上部が前記ルーフサイドレールに接続され、かつ後部が前記リヤピラーに接続されたルーフサイドインナパネルと、
前記ルーフサイドインナパネルに車幅方向の外側から接続されたルーフサイドリンフォースパネルと、を備え、
前記車体の後部には、特定部品が前記ルーフサイドインナパネルに前記車幅方向の内側から対向するように配置され、
前記ルーフサイドリンフォースパネルは、少なくとも前記特定部品と前記リヤピラーとの間で前後方向に延びており、
前記ルーフサイドインナパネル及び前記リヤピラーの少なくとも一方には、前記ルーフサイドリンフォースパネルに前記車幅方向の前記内側から対向する位置で前記車幅方向の前記内側に突出し、少なくとも前記特定部品と前記リヤピラーとの間で前後方向に延びる凸部が形成され、
前記凸部は、少なくとも前記ルーフサイドインナパネルと前記リヤピラーとの接続部分まで延びており、
前記凸部は、前記リヤピラーに形成された第2凸部であり、
前記第2凸部は、前記ルーフサイドインナパネルに前記車幅方向の前記内側から重なる状態で前記ルーフサイドインナパネルに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車体後部補強構造は、重量増加及び製造コストの高騰を抑制しつつ、特定部品の効率的な配置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例1の車体後部補強構造が適用された車両の車体後部を示す部分側面図である。
図2図2は、図1のA-A断面を示す部分断面図である。
図3図3は、実施例1の車体後部補強構造の部分斜視図である。
図4図4は、実施例1の車体後部補強構造の部分斜視図である。
図5図5は、実施例1の車体後部補強構造の部分斜視図である。
図6図6は、ルーフサイドインナパネル、リヤピラー及び第1凸部を示す部分側面図である。
図7図7は、図6のB-B断面を示す部分断面図である。
図8図8は、実施例2の車体後部補強構造に係り、ルーフサイドインナパネルと、ルーフサイドインナパネルに接続される前のリヤピラー及び第2凸部とを示す部分側面図である。
図9図9は、ルーフサイドインナパネルと、ルーフサイドインナパネルに接続されたリヤピラー及び第2凸部とを示す部分側面図である。
図10図10は、図9のC-C断面を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施例1)
図1図5に示すように、実施例1の車体後部補強構造1は、本発明の車体後部補強構造の具体的態様の一例であり、乗用自動車の車体9に適用されている。本実施例では、特に説明しない場合、車体9を構成するパネル部材がプレス加工された鋼板製であって、パネル部材同士がスポット溶接によって接続されている。
【0022】
なお、本発明に係るパネル部材は鋼板製には限定されず、例えばアルミ板製等であってもよい。また、パネル部材の接続方法もスポット溶接には限定されず、例えばレーザー溶接等であってもよい。
【0023】
また、車体後部補強構造1は、車体9における右側面側と左側面側で勝手違いの同一構成である。このため、図1図5に示す車体9の右側面側の構成について説明し、車体9の左側面側の構成については説明及び図示を省略する。
【0024】
図1に示すように、車体9は、車体9の上部に位置して車室を覆うルーフパネル8と、車体9の床部分を構成するフロアパネル6と、後輪4Tを収容するリヤホイールハウス4と、を有している。
【0025】
また、車体9は、リヤクォータパネル5を有している。図2に示すように、リヤクォータパネル5は、リヤドア開口部9Dよりも後方において車幅方向の最も外側に位置して外装面を構成している。なお、図3図5では、リヤクォータパネル5が車体9から取り除かれている。
【0026】
図1に示すように、リヤクォータパネル5の上部は、ルーフパネル8に接続されている。リヤクォータパネル5の下部は、フロアパネル6及びリヤホイールハウス4に接続されている。リヤクォータパネル5の上部分には、リヤクォータガラス開口部9Gが開口している。
【0027】
図2及び図3に示すように、車体9の後面には、バックドア開口部7が開口している。バックドア開口部7は、図示しないバックドアによって閉鎖及び開放される。
【0028】
図1及び図3に示すように、車体後部補強構造1は、ルーフサイドレール80を備えている。ルーフサイドレール80は、車体9の上部で前後方向に延びてリヤドア開口部9Dの上縁部を形成し、さらにリヤドア開口部9Dよりも後方まで延びて、ルーフパネル8の側端縁を補強している。
【0029】
図2図5に示すように、車体後部補強構造1は、Cピラー60、リヤピラー70及びルーフサイドインナパネル30をさらに備えている。
【0030】
図2に示すように、Cピラー60は、Cピラーインナパネル61と、Cピラーインナパネル61に対して車幅方向の外側に位置するCピラーアウタパネル62とが接続されることにより閉断面を構成している。リヤクォータパネル5は、その前端部がCピラーアウタパネル62に接続されて、Cピラー60を覆っている。
【0031】
図3に示すように、Cピラー60は、上下方向に延びてリヤドア開口部9Dの後縁部を形成している。Cピラー60の上端は、ルーフサイドレール80に接続されている。Cピラー60の下端は、リヤホイールハウス4に接続されている。
【0032】
図2に示すように、リヤピラー70は、リヤピラーインナパネル71と、リヤピラーインナパネル71に対して車幅方向の外側に位置するリヤピラーアウタパネル72とが接続されることにより閉断面を構成している。リヤクォータパネル5は、その後端部がリヤピラーアウタパネル72に接続されて、リヤピラー70を覆っている。
【0033】
図3図5に示すように、リヤピラー70は、車体9の上部の後端縁側かつ車幅方向の外側に位置する角部から後向きに下り傾斜するように延びて、バックドア開口部7の側縁部を形成している。
【0034】
図2に示すように、ルーフサイドインナパネル30は、リヤクォータパネル5に車幅方向の外側から覆われている。ルーフサイドインナパネル30の前端縁30Fは、Cピラーインナパネル61の後端縁と、Cピラーアウタパネル62の後端縁と、に重なる状態で、Cピラー60に接続されている。ルーフサイドインナパネル30の後縁端30Rは、リヤピラーインナパネル71の前端縁71Fに重なる状態で、リヤピラー70に接続されている。
【0035】
図3に示すように、ルーフサイドインナパネル30の上端縁30Uは、ルーフサイドレール80に接続されている。
【0036】
図4及び図5に示すように、ルーフサイドインナパネル30の下端縁30Dは、リヤホイールハウス4から上向きに延びる下側サイドインナパネル50の上端縁に接続されている。
【0037】
こうして、ルーフサイドインナパネル30は、ルーフサイドにおけるルーフサイドレール80とCピラー60とリヤピラー70とで囲まれた領域を補強している。
【0038】
また、ルーフサイドインナパネル30は、開口部30Gを有している。開口部30Gの位置及び形状は、図1に示すリヤクォータガラス開口部9Gに整合している。
【0039】
図3に示すように、車体後部補強構造1は、ルーフサイドインナパネル30を補強するルーフサイドリンフォースパネル40をさらに備えている。
【0040】
ルーフサイドリンフォースパネル40は、ルーフサイドインナパネル30に対して車幅方向の外側に位置し、かつ上下方向において、ルーフサイドインナパネル30における開口部30Gと下端縁30Dとの間に位置している。
【0041】
ルーフサイドリンフォースパネル40は、断面略ハット形状をなして前後方向に延びており、上端縁及び下端縁がルーフサイドインナパネル30に接続されている。
【0042】
図2及び図3に示すように、ルーフサイドリンフォースパネル40の前端は、Cピラーアウタパネル62に接続されている。ルーフサイドリンフォースパネル40の後端は、リヤピラーアウタパネル72に接続されている。こうして、ルーフサイドリンフォースパネル40は、Cピラー60からリヤピラー70まで前後方向に延びている。
【0043】
図1に示すように、車体9の後部におけるリヤドア開口部9Dよりも後方、かつリヤクォータガラス開口部9Gよりも下方には、シートベルトリトラクタ3が配置されている。シートベルトリトラクタ3は、本発明の「特定部品」の一例である。シートベルトリトラクタ3は、リヤシート9S用の図示しないシートベルトが使用されていないときにそのシートベルトを巻き取る周知の構成である。
【0044】
図2に示すように、シートベルトリトラクタ3は、Cピラー60から後方に離れた位置、かつリヤピラー70から前方に離れた位置にあって、ルーフサイドインナパネル30に車幅方向の内側から対向するように配置されている。また、シートベルトリトラクタ3は、リヤシート9Sとバックドア開口部7との間で荷室の内壁面を構成する樹脂製の内装パネル59によって車幅方向の内側から覆われている。
【0045】
図4及び図5に示すように、シートベルトリトラクタ3は、前後に設けられた固定部3A、3Bが図示しないボルト、ファスナ、ブラケット等である締結部品を用いてルーフサイドインナパネル30等に締結されることにより、車体9に固定されている。
【0046】
図2に示すように、シートベルトリトラクタ3は、車体9の車内空間を広くするため、車内においてできるだけ車幅方向の外側に配置されている。より詳しくは、Cピラー60の後端縁とリヤピラー70の前端縁とを接続する直線を仮想線K1とすると、シートベルトリトラクタ3の一部は、仮想線K1よりも車幅方向の外側にはみ出している。
【0047】
このため、車体9は、ルーフサイドインナパネル30について、シートベルトリトラクタ3を避けるように仮想線K1よりも車幅方向の外側に屈曲させることでシートベルトリトラクタ3の配置スペースを確保している。
【0048】
図2及び図4図7に示すように、車体後部補強構造1は、ルーフサイドインナパネル30の屈曲によるルーフサイドの剛性の低下を抑制するための第1凸部10を有している。第1凸部10は、ルーフサイドインナパネル30に形成されている。第1凸部10は、本発明の「凸部」の一例である。
【0049】
図6に示すように、第1凸部10は、ルーフサイドインナパネル30の開口部30Gよりも下方、かつルーフサイドインナパネル30の下端縁30Dよりも上方に位置して、前後方向に延びている。
【0050】
図7に示すように、第1凸部10は、ルーフサイドリンフォースパネル40に車幅方向の内側から対向する位置で、断面略ハット形状をなして車幅方向の内側に突出している。第1凸部10は、ルーフサイドリンフォースパネル40と共に略六角形状の閉断面を構成している。
【0051】
図4図6に示すように、第1凸部10の前端は、シートベルトリトラクタ3から僅かに後方に離れた位置にある。第1凸部10は、その前端から、ルーフサイドインナパネル30とリヤピラー70との接続部分J1まで前後方向に延びる本体部11と、本体部11よりも後方に位置する延出部17と、を有している。
【0052】
図6に示すように、延出部17は、リヤピラーインナパネル71の前端縁71Fよりも後方に延出している。リヤピラーインナパネル71の前端縁71Fは、本発明の「リヤピラーの前端縁」の一例である。
【0053】
延出部17の上端縁、下端縁及び後端縁は、リヤピラーインナパネル71に車幅方向の内側から重なる状態でリヤピラーインナパネル71に接続されている。
【0054】
<作用効果>
実施例1の車体後部補強構造1では、図2に示すように、車内空間を広くするため、シートベルトリトラクタ3を車内においてできるだけ車幅方向の外側に配置し、ルーフサイドインナパネル30について、シートベルトリトラクタ3を避けるように車幅方向の外側に屈曲させることでシートベルトリトラクタ3の配置スペースを確保している。
【0055】
ここで、この車体後部補強構造1において、図7に示すように、ルーフサイドインナパネル30に形成された第1凸部10は、ルーフサイドリンフォースパネル40と共に略六角形状の閉断面を構成している。そして、第1凸部10は、ルーフサイドリンフォースパネル40と協働することによって、その屈曲したルーフサイドインナパネル30を効果的に補強できる。
【0056】
これにより、この車体後部補強構造1は、ルーフサイドの剛性の低下を抑制しつつ、ルーフサイドインナパネル30について板厚の増加を抑制することができるとともに、ルーフサイドリンフォースパネル40について板厚を薄くしたり、サイズを小さくしたりすることができる。
【0057】
したがって、実施例1の車体後部補強構造1は、重量増加及び製造コストの高騰を抑制しつつ、シートベルトリトラクタ3の効率的な配置を実現できる。
【0058】
また、この車体後部補強構造1において、第1凸部10は、図6に示すように、少なくともルーフサイドインナパネル30とリヤピラー70との接続部分J1まで延びている。このため、第1凸部10がルーフサイドインナパネル30とリヤピラー70との接続部分J1とも協働することによって、ルーフサイドインナパネル30を一層効果的に補強できる。その結果、この車体後部補強構造1は、重量増加及び製造コストの高騰を確実性高く抑制しつつ、シートベルトリトラクタ3の効率的な配置を一層実現できる。
【0059】
さらに、この車体後部補強構造1において、第1凸部10の延出部17は、リヤピラーインナパネル71に車幅方向の内側から重なる状態でリヤピラーインナパネル71に接続されている。このため、第1凸部10の本体部11がルーフサイドリンフォースパネル40と協働し、かつ第1凸部10の延出部17がリヤピラー70と協働することによって、ルーフサイドインナパネル30をより一層効果的に補強できる。その結果、この車体後部補強構造1は、重量増加及び製造コストの高騰を一層確実性高く抑制しつつ、シートベルトリトラクタ3の効率的な配置をより一層実現できる。
【0060】
(実施例2)
図8図10に示すように、実施例2の車体後部補強構造では、実施例1の車体後部補強構造1に係る第1凸部10の代わりに、リヤピラーインナパネル71に形成された第2凸部20を採用している。第2凸部20は、本発明の「凸部」の一例である。
【0061】
図8に示すように、第2凸部20は、リヤピラーインナパネル71の前端縁71Fよりも後方の位置から断面略ハット形状をなして車幅方向の内側に突出し、リヤピラーインナパネル71の前端縁71Fを越えて前向きに突出している。
【0062】
図9に示すように、第2凸部20の上端縁、下端縁及び前端縁は、ルーフサイドインナパネル30に車幅方向の内側から重なる状態でルーフサイドインナパネル30に接続されている。第2凸部20の前端は、シートベルトリトラクタ3から僅かに後方に離れた位置にある。第2凸部20は、その前端から、ルーフサイドインナパネル30とリヤピラー70との接続部分J1よりも後方に位置する後端まで前後方向に延びている。
【0063】
図10に示すように、第2凸部20は、ルーフサイドリンフォースパネル40に車幅方向の内側から対向する位置で、断面略ハット形状をなして車幅方向の内側に突出している。第2凸部20は、ルーフサイドリンフォースパネル40と共にルーフサイドインナパネル30を挟んで、中仕切りのある略六角形状の閉断面を構成している。
【0064】
このような構成である実施例2の車体後部補強構造において、第2凸部20は、ルーフサイドリンフォースパネル40と協働することによって、屈曲したルーフサイドインナパネル30を効果的に補強できる。
【0065】
したがって、実施例2の車体後部補強構造は、実施例1の車体後部補強構造1と同様に、重量増加及び製造コストの高騰を抑制しつつ、シートベルトリトラクタ3の効率的な配置を実現できる。
【0066】
また、この車体後部補強構造において、第2凸部20は、ルーフサイドリンフォースパネル40と協働してルーフサイドインナパネル30を挟み、中仕切りのある略六角形状の閉断面を構成することによって、ルーフサイドインナパネル30をより一層効果的に補強できる。その結果、この車体後部補強構造は、重量増加及び製造コストの高騰を一層確実性高く抑制しつつ、シートベルトリトラクタ3の効率的な配置をより一層実現できる。
【0067】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0068】
実施例1、2では、特定部品がシートベルトリトラクタ3であるが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、特定部品は、リヤシートバックのスライド&ロック機構であってもよい。また、特定部品は、電気自動車の給電ポートの近傍に配置される電気部品や、給電ポートに差し込まれたアダプタを保持するロック機構等であってもよい。
【0069】
実施例1、2では、ルーフサイドリンフォースパネル40は、Cピラー60からリヤピラー70まで前後方向に延びているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、ルーフサイドリンフォースパネル40の前端の位置を後方に移動させたり、ルーフサイドリンフォースパネル40の後端の位置を前方に移動させたりして、ルーフサイドリンフォースパネル40が少なくともシートベルトリトラクタ3とリヤピラー70との間で前後方向に延びるように変更した構成も本発明に含まれる。
【0070】
実施例1では、第1凸部10の前端がシートベルトリトラクタ3よりも後方に位置しているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、第1凸部10の前端は、シートベルトリトラクタ3よりも前方に位置していてもよい。実施例2に係る第2凸部20も同様である。
【0071】
実施例1では、第1凸部10の後端がルーフサイドインナパネル30とリヤピラー70との接続部分J1よりも後方に位置しているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、第1凸部10の後端は、接続部分J1よりも前方に位置していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、乗用自動車の他、運送車両や産業車両等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…車体後部補強構造
9…車体
80…ルーフサイドレール
7…バックドア開口部
70…リヤピラー
30…ルーフサイドインナパネル
40…ルーフサイドリンフォースパネル
3…特定部品(シートベルトリトラクタ)
10、20…凸部(10…第1凸部、20…第2凸部)
J1…ルーフサイドインナパネルとリヤピラーとの接続部分
71F…リヤピラーの前端縁(リヤピラーインナパネルの前端縁)
17…延出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10