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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】組立手順生成装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20240903BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B23P21/00 307Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021095417
(22)【出願日】2021-06-07
(65)【公開番号】P2022187399
(43)【公開日】2022-12-19
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】蓑谷 顕一
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-152420(JP,A)
【文献】特開2019-63907(JP,A)
【文献】特開平9-57550(JP,A)
【文献】特開2018-140471(JP,A)
【文献】特開平6-320364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B23P 19/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の部品からなる製品をロボットにより組み立てる組立設備に用いられ、前記ロボットによる組立手順を自動生成する組立手順生成装置であって、
製品の組立に関する、採用可能な複数の組立手順を記述したグラフを記憶する記憶部(12)と、
組立済みの製品の数、及び各部品の在庫数を少なくとも含む現在の状況を取得する情報取得部(18)と、
前記記憶部に記憶されたグラフにおける複数の組立手順の中から、前記情報取得部により取得された現在の状況に基づいて、その現在の状況に対して選択可能な組立手順の候補を抽出する候補抽出部(22)と、
前記候補抽出部によって抽出された組立手順の候補の中から、各部品の在庫数の多寡、部品の組立順序に関する設備制約、作業者による組立手順の学習結果、各組立手順を選択した際に費やされる前記ロボットの動作時間、及び、作業者と協働する際の作業者の動作情報から推定される作業者による作業、の少なくとも1つの要因に基づいて、前記ロボットに実行させるべき組立手順を選択して、前記ロボットに提供する選択部(24)と、を備え
前記選択部は、各部品の在庫数の多寡に基づいて前記ロボットに実行させるべき組立手順を選択する場合、在庫数が最も多い部品を組み立てるための組立手順を選択する組立手順生成装置。
【請求項2】
複数種類の部品からなる製品をロボットにより組み立てる組立設備に用いられ、前記ロボットによる組立手順を自動生成する組立手順生成装置であって、
製品の組立に関する、採用可能な複数の組立手順を記述したグラフを記憶する記憶部(12)と、
組立済みの製品の数、及び各部品の在庫数を少なくとも含む現在の状況を取得する情報取得部(18)と、
前記記憶部に記憶されたグラフにおける複数の組立手順の中から、前記情報取得部により取得された現在の状況に基づいて、その現在の状況に対して選択可能な組立手順の候補を抽出する候補抽出部(22)と、
前記候補抽出部によって抽出された組立手順の候補の中から、各部品の在庫数の多寡、部品の組立順序に関する設備制約、作業者による組立手順の学習結果、各組立手順を選択した際に費やされる前記ロボットの動作時間、及び、作業者と協働する際の作業者の動作情報から推定される作業者による作業、の少なくとも1つの要因に基づいて、前記ロボットに実行させるべき組立手順を選択して、前記ロボットに提供する選択部(24)と、を備え、
前記選択部は、在庫数が最も多い部品が複数存在する場合、その複数の部品を組み立てるための組立手順の中から、ランダムに、もしくは在庫数の多寡以外の他の要因に基づいて、前記ロボットに実行させるべき組立手順を選択する組立手順生成装置。
【請求項3】
複数種類の部品からなる製品をロボットにより組み立てる組立設備に用いられ、前記ロボットによる組立手順を自動生成する組立手順生成装置であって、
製品の組立に関する、採用可能な複数の組立手順を記述したグラフを記憶する記憶部(12)と、
組立済みの製品の数、及び各部品の在庫数を少なくとも含む現在の状況を取得する情報取得部(18)と、
前記記憶部に記憶されたグラフにおける複数の組立手順の中から、前記情報取得部により取得された現在の状況に基づいて、その現在の状況に対して選択可能な組立手順の候補を抽出する候補抽出部(22)と、
前記候補抽出部によって抽出された組立手順の候補の中から、各部品の在庫数の多寡、部品の組立順序に関する設備制約、作業者による組立手順の学習結果、各組立手順を選択した際に費やされる前記ロボットの動作時間、及び、作業者と協働する際の作業者の動作情報から推定される作業者による作業、の少なくとも1つの要因に基づいて、前記ロボットに実行させるべき組立手順を選択して、前記ロボットに提供する選択部(24)と、
前記選択部によって選択された組立手順を教師データとして、前記少なくとも1つの要因に基づく組立手順を機械学習する機械学習部(126)と、
前記機械学習部から出力される組立手順の信頼性が所定の基準に達しているかどうかを評価する信頼性評価部(128)と、を備え、
前記信頼性評価部により前記機械学習部から出力される組立手順の信頼性が所定の基準に達していると評価された場合、前記機械学習部が、前記選択部に代わって、実行すべき組立手順をロボットに提供する組立手順生成装置。
【請求項4】
複数種類の部品からなる製品をロボットにより組み立てる組立設備に用いられ、前記ロボットによる組立手順を自動生成する組立手順生成装置であって、
製品の組立に関する、採用可能な複数の組立手順を記述したグラフを記憶する記憶部(12)と、
組立済みの製品の数、及び各部品の在庫数を少なくとも含む現在の状況を取得する情報取得部(18)と、
前記記憶部に記憶されたグラフにおける複数の組立手順の中から、前記情報取得部により取得された現在の状況に基づいて、その現在の状況に対して選択可能な組立手順の候補を抽出する候補抽出部(22)と、
前記候補抽出部によって抽出された組立手順の候補の中から、各部品の在庫数の多寡、部品の組立順序に関する設備制約、作業者による組立手順の学習結果、各組立手順を選択した際に費やされる前記ロボットの動作時間、及び、作業者と協働する際の作業者の動作情報から推定される作業者による作業、の少なくとも1つの要因に基づいて、前記ロボットに実行させるべき組立手順を選択して、前記ロボットに提供する選択部(24)と、
各部品の最低在庫数を定める設定部(16)と、を備え、
前記選択部は、前記最低在庫数以上の部品を組み立てるための組立手順の中から、前記在庫数の多寡以外の他の要因に基づいて、前記ロボットに実行させるべき組立手順を選択する組立手順生成装置。
【請求項5】
前記選択部が、最低在庫数以上の部品を組み立てる組立手順を選択したにも拘らず、前記ロボットによる組み立てにより、当該部品の在庫切れが生じて、前記ロボットが所定時間以上待機する事態が発生した場合、前記設定部は、当該部品の最低在庫数を増加させる、請求項4に記載の組立手順生成装置。
【請求項6】
部品の組立順序に関する設備制約は、前記ロボットが、複数の製品を並行して組み立てることができるか、又は1つの製品ごとの組み立てしかできないかを含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組立手順生成装置。
【請求項7】
作業者による組立手順の学習結果は、ユーザによる教示データ、もしくは、作業者による実際の組立作業による組立手順に基づくものである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組立手順生成装置。
【請求項8】
各組立手順を選択した際に費やされる前記ロボットの動作時間は、各部品が置かれた位置、及び部品組み立て後の製品の置き場所を考慮して算出される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組立手順生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数種類の部品からなる製品をロボットにより組み立てる組立設備に用いられ、ロボットによる組立手順を自動生成する組立手順生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットに組立作業を行わせるためには、オペレータがその動作をプログラムにより記述する必要があった。このため、部品点数が多くなるほど、プログラムを作成する工数が膨大となってしまうという問題があった。
【0003】
そのため、例えば、AND/ORグラフやペトリネットなどの、組立手順を記述したグラフ表現を用いて、シミュレータ内の仮想環境において組立作業を実現し、得られた作業コストの合計が最小になるように最適経路を探索することなどにより、ロボットによる組立作業のためのプログラムをオフラインで自動的に生成することが知られている(例えば、非特許文献1、特許文献1、2など)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「ペトリネットを用いた組立作業計画」包原孝英、稲葉昭夫、川瀬俊夫、鈴木達也、大熊繁、計測自動制御学会論文集Vol.29,No.4,461/469(1993)
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-263957号公報
【文献】特開2001-353631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シミュレータ内の仮想環境において、最適な組立手順を決定し、その組立手順を実現するためのプログラムをオフラインで自動的に生成した場合、そのプログラムに従ってロボットが実行する組立手順は、必ずしも実際の製品の組立における最適な組立手順とはなりえない可能性がある。例えば、ロボットによる組立工程への各部品の供給状態に応じて各部品の在庫数が変化するため、最適な組立手順も変化し得る。
【0007】
本開示による組立手順生成装置は、上記の点に鑑みてなされたものであり、実際に製品の組み立てを行う際に、最適となる又は最適に近い組立手順を生成することが可能な組立手順生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示による組立手順生成装置は、複数種類の部品からなる製品をロボットにより組み立てる組立設備に用いられ、ロボットによる組立手順を自動生成するものであって、
製品の組立に関する、採用可能な複数の組立手順を記述したグラフを記憶する記憶部(12)と、
組立済みの製品の数、及び各部品の在庫数を少なくとも含む現在の状況に関する情報を取得する情報取得部(18)と、
記憶部に記憶されたグラフにおける複数の組立手順の中から、情報取得部により取得された現在の状況に関する情報に基づいて、その現在の状況に対して選択可能な組立手順の候補を抽出する候補抽出部(22)と、
候補抽出部によって抽出された組立手順の候補の中から、各部品の在庫数の多寡、部品の組立順序に関する設備制約、作業者による組立手順の学習結果、各組立手順を選択した際に費やされるロボットの動作時間、及び、作業者と協働する際の作業者の動作情報から推定される作業者による作業、の少なくとも1つの要因に基づいて、ロボットに実行させるべき組立手順を選択して、ロボットに提供する選択部(24)と、を備え
選択部は、各部品の在庫数の多寡に基づいてロボットに実行させるべき組立手順を選択する場合、在庫数が最も多い部品を組み立てるための組立手順を選択することを特徴とする。
【0009】
上記のように、本開示による組立手順生成装置は、組立済みの製品の数、及び各部品の在庫数を少なくとも含む現在の状況に関する情報を取得し、その取得された現在の状況に関する情報に基づいて、記憶部に記憶されたグラフにおける複数の組立手順の中から、現在の状況に対して選択可能な組立手順の候補を抽出する。そして、抽出された組立手順の候補の中から、各部品の在庫数の多寡、部品の組立順序に関する設備制約、作業者による組立手順の学習結果、各組立手順を選択した際に費やされるロボットの動作時間、及び、作業者と協働する際の作業者の動作情報から推定される作業者による作業、の少なくとも1つの要因に基づいて、ロボットに実行させるべき組立手順を選択する。
【0010】
これにより、ロボットに実行させるべき組立手順を選択する際に、製品の組み立てに関する現在の状況を考慮した上で、上述した少なくとも1つの要因に基づいてロボットに実行させる組立手順を選択することが可能となるため、本開示による生産手順生成装置は、実際に製品の組み立てを行う際に、最適となるか又は最適に近い組立手順を生成することができる。
【0011】
上記括弧内の参照番号は、本開示の理解を容易にすべく、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、なんら本開示の範囲を制限することを意図したものではない。
【0012】
また、上述した特徴以外の、特許請求の範囲の各請求項に記載した技術的特徴に関しては、後述する実施形態の説明及び添付図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る組立手順生成装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2】第1実施形態に係る組立手順生成装置において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。
図3】各部品の在庫数の多寡に基づいて組立手順を選択する一例を説明するための説明図である。
図4】採用可能な組立手順を表現するAND/ORグラフの一例を示す図である。
図5】各部品の在庫数の多寡に基づいて組立手順を選択する別の例を説明するための説明図である。
図6】第2実施形態に係る組立手順生成装置において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。
図7】(a)は、ロボットを含む組立設備の制約により、1つの製品ごとの組み立てしかできない場合の組立手順の順序の一例を示す図であり、(b)は、複数の製品を並行して組み立てることができる場合の組立手順の順序の一例を示す図である。
図8】第3実施形態に係る組立手順生成装置において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。
図9】第3実施形態に係る組立手順生成装置により選択される組立手順の順序の一例を示す図である。
図10】第4実施形態に係る組立手順生成装置において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。
図11】ロボットの動作時間に基づいて組立手順を選択する一例を説明するための説明図である。
図12】第5実施形態に係る組立手順生成装置において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。
図13】作業者と協働する際の作業者の動作情報から推定される作業者による作業に基づいて組立手順を選択する一例を説明するための説明図である。
図14】第6実施形態に係る組立手順生成装置において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。
図15】第7実施形態に係る組立手順生成装置の構成を示す機能ブロック図である。
図16】第7実施形態に係る組立手順生成装置において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の複数の実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る組立手順生成装置10の構成を示す機能ブロック図である。組立手順生成装置10は、複数種類の部品からなる製品をロボットにより組み立てる組立設備に用いられ、ロボットによる組立手順を自動生成するものである。
【0016】
図1に示すように、組立手順生成装置10は、製品の複数の組立手順を記述したグラフ表現(例えば、AND/ORグラフやペトリネットなど)を記憶する記憶部12を有する。この記憶部12として、各種の記憶媒体(揮発性メモリ、不揮発性メモリ、光ディスク、磁気ディスクなど)を用いることができる。記憶部12は、図1に示す例では、組立手順生成装置10内に設けられているが、必ずしも組立手順生成装置10内に設けられていなくてもよい。例えば、記憶部12は、外部サーバーに設けられてもよい。この場合、組立手順生成装置10は、その外部サーバーにアクセスして、記憶部12からグラフ表現を取得することができる。
【0017】
また、組立手順生成装置10は、制御部14を備える。この制御部14は、図1に示すように、設定部16、現在状況取得部18、及び組立手順生成部20を含む。さらに、組立手順生成部20は、候補抽出部22と手順選択部24を備える。制御部14は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信回路を含むI/O回路などを備えた一般的な構成を有するマイコンによって構成することができる。
【0018】
設定部16は、例えば、図示しない生産管理サーバーから製品の組立数の目標値を取得して、目標組立数を設定する。また、設定部16は、記憶部12から組み立てる製品のAND/ORグラフを読み込んで、AND/ORグラフを利用可能とする。なお、AND/ORグラフについては、後で詳しく説明する。
【0019】
現在状況取得部18は、図示しないセンサやコンピュータとの通信を介して、各部品の現在の在庫数、組立中の製品の進捗状況、及び組立済みの製品の数などの、製品の組み立てに関する現在の状況を取得する。
【0020】
組立手順生成部20は、AND/ORグラフと、現在状況取得部18によって取得された製品の組み立てに関する現在の状況とに基づいて、ロボットに実行させるべき組立手順を選択する。選択された組立手順は、ロボットを制御するロボット制御装置30に提供される。
【0021】
組立手順生成部20の候補抽出部22は、AND/ORグラフにおける採用可能である複数の組立手順の中から、現在状況取得部18によって取得された組立に関する現在の状況に基づいて、その現在の状況に対して選択可能な組立手順の候補を抽出する。組立手順生成部20の手順選択部24は、候補抽出部22によって抽出された組立手順の候補の中から、各部品の在庫数の多寡に基づいて、ロボットに実行させるべき組立手順を選択して、ロボット制御装置30に提供する。
【0022】
このため、本実施形態に係る組立手順生成装置10は、ロボットに実行させるべき組立手順を選択する際に、製品の組み立てに関する現在の状況を考慮することが可能となる。従って、本実施形態に係る生産手順生成装置は、実際に製品の組み立てを行う際に、最適であるか、又は最適に近い組立手順を選択して、ロボット制御装置30へ提供することができる。さらに、最終的な組立手順は、各部品の在庫数の多寡に基づいて、組立手順の候補の中から選択されるので、在庫数に応じた最適な組立手順を選択することができる。
【0023】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る組立手順生成装置10において実行される組立手順生成処理について説明する。
【0024】
最初のステップS100では、製品の目標組立数が設定される。次に、ステップS110では、製品の採用可能な複数の組立手順を記述したAND/ORグラフの読み込みが行われる。ステップS120では、各種のセンサやコンピュータとの通信を介して、製品の組み立てに関する現在の状況が取得される。この現在の状況には、少なくとも各部品の現在の在庫数及び組立済みの製品の数が含まれる。
【0025】
ステップS130では、ステップS100にて設定された目標組立数に基づいて、組み立て済みの製品の数が、目標数に到達したか否かを判定する。ステップS130において、目標数に到達したと判定されると、図2の組立手順生成処理は終了される。一方、ステップS130において、まだ目標数に到達していないと判定されると、ステップS140の処理が実行される。
【0026】
ステップS140では、AND/ORグラフにおける採用可能である複数の組立手順の中から、取得された製品の組み立てに関する現在の状況に基づいて、その現在の状況に対して選択可能な組立手順の候補が抽出される。
【0027】
例えば、図3は、A部品、B部品、及びC部品からなる製品であって、当該製品は、A部品に対して、B部品を組み付けた後に、C部品を組み付けることで組み立てることができ、或いは、A部品に対して、C部品を組み付けた後に、B部品を組み付けることで組み立てることができることを示している。また、図3は、部品A1を二重線で囲むことにより、部品A1が、部品置き場から組み立て作業位置までロボットにより移動済みであることも示している。さらに、図3は、完成品の置き場が複数(例えば、3)設けられているとともに、ロボットは、複数の製品を並行して組み立てることができる、すなわち、組み立て途中の製品があっても、他の製品の組立手順を実行することができることも示している。
【0028】
図3に示すように、部品A1を組み立て作業位置まで移動させた後、A部品の在庫数が1、B部品の在庫数が4、C部品の在庫数が2であるとすると、この現在の状況に対して選択可能な組立手順の候補は、点線で囲った、部品A1に部品B1を組み付ける手順、部品A1に部品C1を組み付ける手順、部品A2を部品置き場から組み立て作業位置まで移動させる手順、及び部品A3を部品置き場から組み立て作業位置まで移動させる手順となる。また、別の例として、部品Aの在庫数が0である場合には、現在の状況に対して選択可能な組立手順の候補は、部品A1に部品B1を組み付ける手順、及び部品A1に部品C1を組み付ける手順だけとなる。このように、製品の組み立てに関する現在の状況に基づき、その現在の状況に対して選択可能な組立手順の候補を抽出することができる。
【0029】
ステップS150では、抽出された組立手順の候補の中から、各部品の在庫数の多寡に基づいて、ロボットに実行させるべき組立手順を選択する。例えば、図3に示す例では、部品Bの在庫数が最も多いため、ロボットに実行させるべき組立手順として、部品A1に部品B1を組み付ける手順が選択される。ステップS160では、選択した組立手順をロボット制御装置30に提供し、ステップS120の処理に戻る。
【0030】
部品の在庫数の多寡に基づいて、ロボットに実行させるべき組立手順を選択することにより、どのようなメリットが得られるかを、図4、5に示す例を参照して、より具体的に説明する。
【0031】
図4は、部品A、B、C、及びDから構成される製品ABCDのAND/ORグラフを示している。さらに、図4は、各部品A、B、C、及びDの在庫数も示している。
【0032】
図4において、製品ABCDから矢印を逆に辿ると、製品ABCDは、組立途中の製品ABCに部品Dを組み付けることよって完成させることもできるし、組立途中の製品BCDに部品Aを組み付けることによって完成させることもできるし、或いは、組立途中の製品ABに組立途中の製品CDを組み付けることによって完成させることもできることが読み取れる。同様に、例えば、組立途中の製品BCDは、組立途中製品BCに部品Dを組み付けることによって得られるし、組立途中製品BDに部品Cを組み付けることによって得られることが分かる。
【0033】
このように、AND/ORグラフは、完成品としての製品及び/又は組立途中製品を得るために、どのような選択肢が存在するか(OR条件)、及び各選択肢がいずれの部品及び/又は組立途中製品の組み合わせにより実現されるか(AND条件)、を示したものである。なお、複数の組立手順を記述したグラフは、AND/ORグラフに限られるものではなく、例えば、ペトリネットなど、他の形式のグラフを採用しても良い。
【0034】
図5は、図4のAND/ORグラフによる組立手順に従って組み立てられる製品ABCDを、各部品の在庫数の多寡を考慮せずに、事前に設定された組立手順に従って各部品を組み付けたケースと、各部品の在庫数の多寡に基づいて、最適な又は最適に近い組立手順を選択して部品を組み付けたケースと、を対比して示したものである。なお、各部品の在庫数は、図4に示されているように、A部品、B部品、及びD部品がそれぞれ2、C部品が1である。
【0035】
図5(a)は、各部品の在庫数の多寡を考慮せずに、事前に設定された組立手順に従って各部品を組み付けた場合の一例を示している。図5(a)に示されるように、組立途中製品BC、BDを組み立てる2つの組立手順を実施した後、次に実行されるべき組立手順が、組立途中製品CDを組み立てる組立手順であった場合、部品Cの在庫数が0であるため、部品Cの供給を待機するため待ち時間が発生する。
【0036】
図5(b)は、各部品の在庫数の多寡に基づいて、各部品の組立手順を選択した場合の一例を示している。図5(b)の例では、最初に、組立手順の候補としての部品Aと部品Bを組み立てる組立手順、部品Bと部品Cを組み立てる組立手順、部品Bと部品Dを組み立てる組立手順、及び部品Cと部品Dを組み立てる組立手順の中から、在庫数が最も多い2つの部品A、Bを組み付ける組立手順が選択される。最初の組立手順実施後の各部品の在庫数は、部品A、B、Cがそれぞれ1で、部品Dが2である。そのため、2番目の組立手順は、部品Dを組み付けるための組立手順が選択される。図5(b)に示す例では、2番目の組立手順として、部品Dと部品Cとを組み付ける組立手順が選択されているが、部品Dに組み付け可能な他の部品(図4の例では、部品B)が選択されても良い。この際、部品Dと組み付ける部品を特定する手法として、ランダムに定めても良いし、後述の各実施形態に記載の要因に基づいて定めても良い。
【0037】
2番目の組立手順を実施した後の、各部品の在庫数は、部品A、B、Dがそれぞれ1で、部品Cが0である。このため、3番目の組立手順として、部品Aと部品Bを組み立てる組立手順が選択される。この際、部品Bと部品Dを組み立てる組立手順も選択可能である。部品Aと部品Bを組み立てるか、部品Bと部品Dを組み立てるかは、ランダムに決定しても良いし、後述の各実施形態に記載の要因に基づいて決定しても良い。
【0038】
部品Aと部品Bとを組み立てた時点で、残りの部品は部品Dのみである。そのため、4番目の組立手順として、組立途中製品ABとCDとを組み立てる組立手順が選択される。さらに、5番目の組立手順として、組立途中製品ABと部品Dとを組み立てる組立手順が選択される。なお、4番目の組立手順と、5番目の組立手順とは、入れ替え可能である。
【0039】
このように、各部品の在庫数の多寡に基づいて、各部品の組立手順を選択することにより、各部品の在庫数が限られている中でも、より多くの組立手順を実施することができ、待ち時間を極力低減することができる、従って、実際に製品を組み立てる際に、最適な又は最適に近い組立手順を選択することが可能になる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係る組立手順生成装置10に関して、図面を参照して説明する。本実施形態に係る組立手順生成装置10の構成は、上述した第1実施形態に係る組立手順生成装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
第1実施形態に係る組立手順生成装置10は、各部品の在庫数の多寡に基づいて、各部品の組立手順を選択するものであったが、本実施形態に係る組立手順生成装置10は、各部品の組立順序に関する設備制約に基づいて、各部品の組立手順を選択する。
【0042】
例えば、各部品の組立順序に関する設備制約の例として、図6(a)に示すように、ロボットが、1つの製品ごとの組み立てしかできないか、又は、図6(b)に示すように、ロボットが複数の製品を並行して組み立てることができるか、ということが挙げられる。
【0043】
図6(a)に示す例では、ロボットは、1つの製品ごとの組み付けしかできないので、手順選択部24は、例えば、部品A1と部品B1とを組み立て、さらに部品C1を組み立てるための組立手順を選択して、ロボット制御装置30に提供する。この際、部品A1に対して部品B1と部品C1のどちらを先に組み立てるかは、他の実施形態に記載の要因に基づいて決定されても良い。また、製品A1B1C1の組立が完了した後、製品A2B2C2と製品A3B3C3のどちらを先に組み立てるかについても、他の実施形態に記載の要因に基づいて決定されても良い。
【0044】
図6(b)に示す例では、ロボットが複数の製品を並行して組み立てるため、手順選択部24は、例えば、部品A1、部品A2、部品A3をそれぞれ組み立て作業位置まで移動し、その後、部品B1、B2、B3、及び部品C1、C2、C3を組み立てるための組立手順を選択して、ロボット制御装置30に提供する。この際、部品A1、A2、A3を組み立て作業位置に移動させる順番、部品B1、B2、B3を組み付ける順番、及び部品C1、C2、C3を組み付ける順番は、ランダムに決定されても良いし、他の実施形態に記載の要因に基づいて決定されても良い。また、部品B1、B2、B3と部品C1、C2、C3とのどちらを先に組み付けるかについて、設備制約上の問題がなければ、ランダムに決定されても良いし、他の実施形態に記載の要因に基づいて決定されても良い。
【0045】
図7は、本実施形態に係る組立手順生成装置10において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。図7のフローチャートのステップS200~S240及びS260は、図2のフローチャートのステップS100~S140及びS160と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
図7のフローチャートのステップS250では、組立手順の候補の中から、部品の組立順序に関する設備制約に従って最適な組立手順を選択する。これにより、設備制約に応じて適切な組立手順を選択することが可能となる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態に係る組立手順生成装置10に関して、図面を参照して説明する。本実施形態に係る組立手順生成装置10の構成は、上述した第1実施形態に係る組立手順生成装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
上記の第2実施形態に係る組立手順生成装置10は、各部品の組立順序に関する設備制約に基づいて各部品の組立順序を選択したが、本実施形態に係る組立手順生成装置10は、その組立設備において、実際に作業者が実施している若しくは実施していた組立手順を学習し、その学習結果に基づいて各部品の組立手順を選択する。
【0049】
作業者が実行している若しくは実行していた組立手順は、手順選択部24において、例えば、作業者が実際に実施していた組立手順に従って、開発者又はユーザによって作成される教示データから学習することができる。他の例として、組立設備において、少なくとも一人の作業者が組立作業を実施している場合には、手順選択部24は、作業者が実施している組立作業の順序をセンサ等によって取得し、その取得結果に基づいて、作業者の組立手順を学習しても良い。
【0050】
図8は、作業者の組立手順の学習結果に基づいて選択される組立手順の順序の一例を示している。この図8に示す例では、部品A1と部品B1、部品A2と部品B2、及び部品A3と部品B3がそれぞれ組み立てられ、その後、組立途中製品A1B1、A2B2、A3B3に、部品C1、C2、C3がそれぞれ組み付けられる。この場合、学習結果が、部品Aと部品Bとを組み立てた後に部品Cを組み付けるというものであれば、組立途中製品A1B1、A2B2、A3B3の組み立ての順序、及びそれぞれの組立途中製品A1B1、A2B2、A3B3への部品C1、C2、C3の組み付けの順序は、ランダムに決定されても良いし、他の実施形態の要因に基づいて決定されても良い。
【0051】
図9は、本実施形態に係る組立手順生成装置10において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。図9のフローチャートのステップS300~S340及びS360は、図2のフローチャートのステップS100~S140及びS160と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
図9のフローチャートのステップS350では、組立手順の候補の中から、作業者の組立手順の学習結果に基づいて組立手順を選択する。これにより、組立手順を決定する際に、作業者による組立作業のノウハウを活かすことが可能になる。
【0053】
(第4実施形態)
次に、本開示の第4実施形態に係る組立手順生成装置10に関して、図面を参照して説明する。本実施形態に係る組立手順生成装置10の構成は、上述した第1実施形態に係る組立手順生成装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係る組立手順生成装置10は、各組立手順を選択した際に費やされるロボットの動作時間に基づいて組立手順を選択する。各部品の置かれた位置や組み立てが完了した製品の置き場などのレイアウトにより、各組立手順を選択した際に費やされるロボットの動作時間は異なることがある。そのため、各組立手順を選択した際に費やされるロボットの動作時間は、手順選択部24において、少なくとも各部品が置かれた位置、及び部品組み立て後の製品の置き場所を考慮して算出される。なお、各組立手順を選択した際に費やされるロボットの動作時間には、ロボットが各関節を動かす時間に加え、ロボットによる各部品の把持や、組付け作業、加工機への部品の出し入れなどに要する時間も含まれる。
【0055】
図10には、部品A1を組立作業位置まで移動させた後、選択可能な組立手順の候補が、部品A1に部品B1を組み付ける手順、部品A1に部品C1を組み付ける手順、部品A2を部品置き場から組み立て作業位置まで移動させる手順、及び部品A3を部品置き場から組み立て作業位置まで移動させる手順となる状況が示されている。さらに、図10には、各組立手順を選択した際に費やされるロボットの動作時間(動作コスト)もそれぞれ示されている。
【0056】
図10に示す例では、選択可能な組立手順の候補の中で部品A2、A3を組立作業位置まで移動させるロボットの動作時間が最も小さい。従って、手順選択部24は、各組立手順を選択した際に費やされるロボットの動作時間に基づいて、部品A2又は部品A3を組立作業位置まで移動させる組立手順を選択しても良い。或いは、部品Cの組み付けまで考慮したときのロボットの動作時間の合計は、部品A1に部品C1を組み付けてから部品B1を組み付けるケースが最も短くなる。そのため、図10に示す例において、手順選択部24は、各組立手順を選択した際に費やされるロボットの動作時間に基づいて、部品A1に部品C1を組み付ける組立手順を選択しても良い。
【0057】
図11は、本実施形態に係る組立手順生成装置10において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。図11のフローチャートのステップS400~S440及びS460は、図2のフローチャートのステップS100~S140及びS160と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
図11のフローチャートのステップS450では、組立手順の候補の中から、各組立手順を選択した際に費やされるロボットの動作時間に基づいて組立手順を選択する。これにより、組立手順を決定する際に、効率的に製品を組み立てることが可能な組立手順を選択することが可能になる。
【0059】
(第5実施形態)
次に、本開示の第5実施形態に係る組立手順生成装置10に関して、図面を参照して説明する。本実施形態に係る組立手順生成装置10の構成は、上述した第1実施形態に係る組立手順生成装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
本実施形態に係る組立手順生成装置10は、ロボットと作業者とが協働して製品の組立作業を行う際に、作業者の動作情報(目線、体の向き、手や体の動き、過去に作業者が行った組立手順の履歴情報など)から作業者が次に行う組立手順や作業を推定し、その推定した組立手順と競合しない組付手順を選択したり、作業者の作業をサポートする手順を選択したりする。
【0061】
例えば、図12には、部品A1を組立作業位置まで移動させた後、選択可能な組立手順の候補が、部品A1に部品B1を組み付ける手順、部品A1に部品C1を組み付ける手順、部品A2を部品置き場から組み立て作業位置まで移動させる手順、及び部品A3を部品置き場から組み立て作業位置まで移動させる手順となる状況が示されている。さらに、図12には、このときの作業者の動作情報から推定される、作業者が次に実施する組立手順の確率も示されている。
【0062】
図12に示す例では、作業者は、次に、部品A2を組立作業位置まで移動させる手順を実施する確率が最も高くなっている。このため、手順選択部24は、部品A2を組立作業位置まで移動させる手順を除外した残りの手順の中から、ランダムに組立手順を選択するか、競合する確率の最も低い組立手順を選択するか、若しくは他の実施形態に記載の要因に基づいて1つの組立手順を選択しても良い。或いは、手順選択部24は、作業者が実施しようとしている組立手順をサポートする作業を組立手順として選択しても良い。
【0063】
図13は、本実施形態に係る組立手順生成装置10において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。図13のフローチャートのステップS500~S540及びS560は、図2のフローチャートのステップS100~S140及びS160と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
図13のフローチャートのステップS550では、組立手順の候補の中から、作業者が次に行う組立手順や作業の推定結果に基づいて、ロボットに実行させるべき組立手順を選択する。これにより、組立手順を決定する際に、作業者と協働して製品の組立作業を行い得るロボットの組立手順を選択することが可能になる。
【0065】
(第6実施形態)
次に、本開示の第6実施形態に係る組立手順生成装置10に関して、図面を参照して説明する。本実施形態に係る組立手順生成装置10の構成は、上述した第1実施形態に係る組立手順生成装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
上述した第1実施形態から第5実施形態で説明した、各部品の在庫数の多寡、部品の組立順序に関する設備制約、作業者による組立手順の学習結果、各組立手順を選択した際に費やされる前記ロボットの動作時間、及び、作業者と協働する際の作業者の動作情報から推定される作業者による作業、の各要因は、それぞれ、ロボットに実行させるべき組立手順を選択するために単独で用いられても良いし、任意に組み合わせて用いられてもよい。
【0067】
本実施形態では、複数の要因の組み合わせとして、各部品の在庫数の多寡と各組立手順を選択した際に費やされる前記ロボットの動作時間とに基づいて、ロボットに実行させる組立手順を選択する例について説明する。
【0068】
図14は、本実施形態に係る組立手順生成装置10において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。図14のフローチャートのステップS600~S630及びS660は、図2のフローチャートのステップS100~S130及びS160と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
図14のフローチャートのステップS605では、設定部16が、各部品の最低在庫数Nと、部品の供給を待機するためのロボットの最大待ち時間Mを設定する。各部品の最低在庫数Nは、各部品ごとに個別に設定しても良いし、各部品で同じ最低在庫数Nを設定しても良い。
【0070】
図14のフローチャートのステップS640では、候補抽出部22が、AND/ORグラフにおける採用可能である複数の組立手順の中から、取得された製品の組み立てに関する現在の状況に基づいて、在庫数が最低在庫数N以上の部品の組立手順を、組立手順の候補として抽出する。つまり、本実施形態では、各部品の在庫数の多寡を判定する基準として最低在庫数Nを用い、最低在庫数N以上の在庫数がある部品を、十分な在庫数がある部品とみなし、当該部品の組立手順を、組立手順の候補とするのである。
【0071】
そして、ステップS650では、組立手順の候補の中から、各組立手順を選択した際に費やされるロボットの動作時間に基づいて組立手順を選択する。この結果、十分な在庫数があるとみなされる部品の組立手順の候補の中から、在庫数の多寡以外の要因であるロボットの動作時間に基づいて、最適な組立手順を選択することができる。従って、効率的に製品を組み立てることが可能な組立手順を選択することが可能になる。
【0072】
図14のフローチャートのステップS670では、部品の供給を待機するため、ロボットに組立手順を実施させることができず、待ち時間が発生した場合、その待ち時間を、過去に発生した待ち時間の平均待ち時間Tと平均処理して平均待ち時間Tを更新する。そして、更新した平均待ち時間Tと最大待ち時間Mとを比較し、平均待ち時間Tが最大待ち時間Mよりも大きい場合、最低在庫数Nを増加する(例えば、N=N+1)。なお、発生した待ち時間により平均待ち時間Tを更新することなく、発生した待ち時間そのものを最大待ち時間Mと比較するようにしても良い。
【0073】
つまり、ステップS670では、手順選択部24が、最低在庫数N以上の在庫数がある部品を組み立てる組立手順を選択したにも拘らず、ロボットによる組み立てにより、当該部品の在庫切れが生じて、ロボットが所定時間以上待機する事態が発生した場合に、設定部16は、当該部品の最低在庫数Nを増加させる。この最低在庫数Nの増加により、当該部品は増加された最低在庫数N以上の在庫数が蓄積されるまで、当該部品は組立手順の候補となることはない。このため、当該部品の在庫切れによるロボットの待ち時間の発生を抑制することができる。
【0074】
なお、上述した第6実施形態では、最低在庫数Nを実際の設備の稼働状況に合わせて調整する例について説明した。しかしながら、その他のパラメータに関しても、実際の状況に合わせて調整するようにしても良い。例えば、ロボットの動作時間を算出するためのパラメータとしての、ロボットの作業時間や加工機への部品の出し入れ周期などは、設定した初期値を実際の作業時間や出し入れ周期に応じて変更しても良い。
【0075】
(第7実施形態)
次に、本開示の第7実施形態に係る組立手順生成装置110に関して、図面を参照して説明する。図15は、本実施形態に係る組立手順生成装置110の構成を示す機能ブロック図である。また、図16は、本実施形態に係る組立手順生成装置110において実行される組立手順生成処理を示すフローチャートである。
【0076】
図15に示すように、本実施形態に係る組立手順生成装置110は、記憶部112と制御部114とを備える。制御部114は、設定部116、現在状況取得部118、候補抽出部122と手順選択部124とを含む組立手順生成部120、機械学習部126、及び信頼性評価部128を備える。つまり、本実施形態に係る組立手順生成装置110は、第1~第6実施形態において説明した組立手順生成装置10に対して、機械学習部126と信頼性評価部128とを追加した構成となっている。本実施形態における、記憶部112、設定部116、現在状況取得部118、及び候補抽出部122と手順選択部124とを含む組立手順生成部120は、第1~第6実施形態のいずれかの組立手順生成装置10の記憶部12、設定部16、現在状況取得部18、及び候補抽出部22と手順選択部24とを含む組立手順生成部20と同様に構成され得る。なお、図16のフローチャートでは、第1実施形態において説明した各部品の在庫数の多寡に基づいて組立手順を選択する例を示している。
【0077】
機械学習部126は、例えばDNNなどの人工知能を用い、手順選択部124によって選択された組立手順を教師データとして、製品の組立に関する現在の状況と、第1~第6実施形態において説明した、各部品の在庫数の多寡、部品の組立順序に関する設備制約、作業者による組立手順の学習結果、各組立手順を選択した際に費やされる前記ロボットの動作時間、及び、作業者と協働する際の作業者の動作情報から推定される作業者による作業、の少なくとも1つの要因とに基づいて、ロボットに実行させるべき組立手順を学習する。この処理は、図16のフローチャートのステップS760に相当する。
【0078】
信頼性評価部128は、機械学習部126の学習が進んで、機械学習部126から出力される組立手順の信頼性が、所定の基準に達しているかどうかを評価する。この処理は、図16のフローチャートのステップS770に相当する。例えば、信頼性評価部128は、教師データとの誤差に基づいて平均正答率を算出し、この平均正答率が所定の閾値を超えていれば、機械学習部126から出力される組立手順の信頼性が所定の基準に達していると判定することができる。それに加えて、信頼性評価部128は、機械学習部126が出力する組立手順が、設備や他の部品等との接触により部品を損傷させるものでないことを、組み立て後の製品の検査により確認しても良い。
【0079】
そして、信頼性評価部128により機械学習部126から出力される組立手順の信頼性が所定の基準に達していると評価された場合、図16のフローチャートのステップS790に示すように、機械学習部126が、手順選択部124に代わって、ロボットが実行すべき組立手順をロボット制御装置30に提供する。これにより、製品の組立に関する種々の状況にも柔軟に対応可能な組立手順を出力する組立手順生成装置110を実現することができる。なお、図16のフローチャートに示すように、信頼性評価部128により機械学習部126から出力される組立手順の信頼性が所定の基準に達していないと評価された場合、ステップS780において、手順選択部124によって選択された組立手順がロボット制御装置30に提供される。
【0080】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は上述した各実施形態になんら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において、様々に変形して実施することが可能である。
【0081】
例えば、本明細書に記載の組立手順生成装置10、110及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化される一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより実現され得る。あるいは、本明細書に記載の組立手順生成装置10、110及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本明細書に記載の組立手順生成装置10、110及びその手法は、コンピュータプログラムを実行する一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10:組立手順生成装置、12:記憶部、14:制御部、16:設定部、18:現在状況取得部、20:組立手順生成部、22:候補抽出部、24:手順選択部、30:ロボット制御装置、110:組立手順生成装置、112:記憶部、114:制御部、116:設定部、118:現在状況取得部、120:組立手順生成部、122:候補抽出部、124:手順選択部、126:機械学習部、128:信頼性評価部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16