(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】車両充電サービスの提供方法および車両充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240903BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240903BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20240903BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240903BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20240903BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20240903BHJP
【FI】
H02J13/00 301
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J3/14
H02J50/10
H02J13/00 311T
B60L53/12
B60L53/63
(21)【出願番号】P 2021102253
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 勝也
(72)【発明者】
【氏名】村田 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】松盛 裕志
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 直弘
(72)【発明者】
【氏名】楠本 光優
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/176860(WO,A1)
【文献】特開2019-083647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 7/00
H02J 3/14
H02J 50/10
B60L 53/12
B60L 53/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された充電設備による車両の充電に際してサーバを用いて提供される、車両充電サービスの提供方法であって、
前記車両は、前記充電設備から供給される電力を受電可能であるとともに、給電マットから供給される電力を受電可能に構成され、
前記給電マットは、持ち運び可能かつ非接触で送電可能に構成され、
前記提供方法は、
前記充電設備から供給される電力による充電のための渋滞である充電渋滞の発生が検出または予測されたレーンへの前記給電マットの設置を
、前記充電設備に対して、または、前記給電マットが自走式である場合には前記給電マットに対して前記サーバが指示するステップと、
当該指示に従って前記レーンに設置された前記給電マット上に前記車両が検出された場合に前記給電マットから送電する一方で、前記給電マット上に前記車両が検出されていない場合には前記給電マットからの送電を行わないステップとを含む、車両充電サービスの提供方法。
【請求項2】
前記充電渋滞が解消する条件が成立した場合に、前記レーンに設置された前記給電マットの撤去を
、前記充電設備に対して、または、前記給電マットが自走式である場合には前記給電マットに対して前記サーバが指示するステップをさらに含む、請求項1に記載の車両充電サービスの提供方法。
【請求項3】
前記充電渋滞の発生が検出または予測された前記レーンを迂回するルートへの、持ち運び可能かつ非接触で送電可能に構成された他の給電マットの設置を
、前記充電設備に対して、または、前記他の給電マットが自走式である場合には前記他の給電マットに対して前記サーバが指示するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の車両充電サービスの提供方法。
【請求項4】
前記給電マットは、電力系統からマイクログリッドに供給される電力を送電するように構成され、
前記提供方法は、前記電力系統において余剰電力が発生している場合には、前記電力系統において余剰電力が発生していない場合と比べて、前記サーバが前記給電マットからの送電を促進するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両充電サービスの提供方法。
【請求項5】
前記給電マットは、電力系統からマイクログリッドに供給される電力を送電するように構成され、
前記提供方法は、前記電力系統において電力不足が発生している場合には、前記電力系統において電力不足が発生していない場合と比べて、前記サーバが前記給電マットからの送電を抑制するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両充電サービスの提供方法。
【請求項6】
固定された充電設備により車両を充電する際に用いられる車両充電システムであって、
移動可能かつ非接触で送電可能に構成された給電マットと、
前記給電マットを制御するサーバとを備え、
前記車両は、前記充電設備から供給される電力を受電可能であるとともに、前記給電マットから送電される電力を受電可能に構成され、
前記サーバは、前記充電設備から供給される電力による充電のための渋滞である充電渋滞の発生が検出または予測されたレーンに移動するように前記給電マットを制御し、
前記給電マットは、前記レーンへの移動後に前記給電マット上に前記車両が検出された場合に非接触で送電する一方で、前記給電マット上に前記車両が検出されていない場合には非接触での送電を行わない、車両充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両充電サービスの提供方法および車両充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-217770号公報(特許文献1)に開示された情報表示装置は、電動車両に搭載された二次電池の充電を行う充電スタンドについての情報を表示する。情報表示装置のナビゲーション部は、電動車両の周辺の渋滞の発生場所が、充電スタンドを経由して目的地に到着するまでの経路上である場合には、経路上および経路の近傍に存在する充電スタンドを検索する。そして、ナビゲーション部は、検索された各充電スタンドについて、その充電スタンドを経由して目的地に到着するまでの時間を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、充電スタンド等に設置された充電設備による充電は、ガソリンスタンドにおける給油と比べて、所要時間が長い。そのため、充電設備またはその周辺には、充電を待つ車両による渋滞が発生し得る。以下、このような渋滞を「充電渋滞」と称する。特許文献1では充電渋滞の緩和については何ら検討されていない。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、充電渋滞を緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示のある局面に係る車両充電サービスの提供方法は、固定された充電設備による車両の充電に際してサーバを用いて提供される。車両は、充電設備から供給される電力を受電可能であるとともに、給電マットから供給される電力を受電可能に構成されている。給電マットは、持ち運び可能かつ非接触で送電可能に構成されている。車両充電サービスの提供方法は、第1および第2のステップを含む。第1のステップは、充電設備から供給される電力による充電のための渋滞である充電渋滞の発生が検出または予測されたレーンへの給電マットの設置をサーバが指示するステップである。第2のステップは、当該指示に従ってレーンに設置された給電マット上に車両が検出された場合に給電マットから送電する一方で、給電マット上に車両が検出されていない場合には給電マットからの送電を行わないステップである。
【0007】
上記(1)の構成においては、充電設備による充電(たとえばプラグイン充電)のための充電渋滞の発生が検出または予測された場合に給電マットが設置される。これにより、充電渋滞のため停車している車両または低速で走行している車両への非接触での送電が行われる。これらの車両が非接触で充電された分だけ、その後の充電設備による充電電力量が低減されるので、充電設備による充電時間を短縮できる。よって、上記(1)の構成によれば、充電渋滞を緩和できる。また、給電マット上に車両が検出されていない場合には非接触での送電を行わないことで、給電マットの周囲に形成される電磁界の影響を低減できる。
【0008】
(2)車両充電サービスの提供方法は、充電渋滞が解消する条件が成立した場合に、レーンに設置された給電マットの撤去をサーバが指示するステップをさらに含む。
【0009】
上記(2)の構成によれば、充電渋滞が解消する条件が成立した場合には給電マットが撤去されるので、撤去された給電マットを別の用途(たとえば他の場所で発生した充電渋滞の緩和)に使用できる。つまり、給電マットの効率的な使用が可能になる。
【0010】
(3)充電渋滞の発生が検出または予測されたレーンを迂回するルートへの、持ち運び可能かつ非接触で送電可能に構成された他の給電マットの設置をサーバが指示するステップをさらに含む。
【0011】
上記(3)の構成によれば、迂回ルートに他の給電マットを設置することで迂回ルートへと車両を誘導できる。よって、充電渋滞をさらに緩和することが可能になる。
【0012】
(4)給電マットは、電力系統からマイクログリッドに供給される電力を送電するように構成されている。車両充電サービスの提供方法は、電力系統において余剰電力が発生している場合には、電力系統において余剰電力が発生していない場合と比べて、サーバが給電マットからの送電を促進するステップをさらに含む。
【0013】
(5)給電マットは、電力系統からマイクログリッドに供給される電力を送電するように構成されている。車両充電サービスの提供方法は、電力系統において電力不足が発生している場合には、電力系統において電力不足が発生していない場合と比べて、サーバが給電マットからの送電を抑制するステップをさらに含む。
【0014】
上記(4),(5)の構成においては、電力系統において余剰電力が発生している場合には給電マットからの送電が促進され、電力系統において電力不足が発生している場合には給電マットからの送電が抑制される。このように給電マットからの送電を制御することで、電力系統の電力需給バランス調整に貢献できる。
【0015】
(6)本開示の他の局面に係る車両充電システムは、固定された充電設備により車両を充電する際に用いられる。車両充電システムは、移移動可能かつ非接触で送電可能に構成された給電マットと、給電マットを制御するサーバとを備える。車両は、充電設備から供給される電力を受電可能であるとともに、給電マットから送電される電力を受電可能に構成されている。サーバは、充電設備から供給される電力による充電のための渋滞である充電渋滞の発生が検出または予測されたレーンに移動するように給電マットを制御する。給電マットは、レーンへの移動後に給電マット上に車両が検出された場合に非接触で送電する一方で、給電マット上に車両が検出されていない場合には非接触での送電を行わない。
【0016】
上記(6)の方法によれば、上記(1)の構成と同様に充電渋滞を緩和できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、充電渋滞を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る車両充電システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】給電マットの詳細な構成の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態1における充電渋滞の緩和態様の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1における充電渋滞の緩和態様の他の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1における充電渋滞を緩和するための処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態2に係る車両充電システムを含む電力システムの全体構成を概略的に示す図である。
【
図7】実施の形態2における充電渋滞を緩和するための処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0020】
[実施の形態1]
<システム構成>
図1は、本開示の実施の形態1に係る車両充電システムの構成を概略的に示す図である。車両充電システム100は、複数の給電マット1と、複数の充電器2と、サーバ3とを備える。
【0021】
複数の給電マット1の各々は、非接触で送電可能なマット形状の送電装置である。以下、給電マット1による非接触式の充電を「非接触充電」とも称する。給電マット1の詳細な構成については
図2にて説明する。
【0022】
複数の充電器2の各々は、充電ケーブルを介して車両4のインレット42(
図2参照)へと送電可能な充電設備である。各充電器2は、充電スタンド等の敷地内の地面に固定されている。以下、充電器2による接触式の充電を「プラグイン充電」とも称する。
【0023】
サーバ3は、プロセッサと、メモリ(いずれも図示せず)とを含む。プロセッサは、たとえばCPU(Central Processing Unit)であって、プログラムに記述された演算処理を実行するように構成されている。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラムを記憶するとともに、そのプログラムで使用される各種データ(マップ、関係式、パラメータ等)を記憶している。メモリは、演算結果およびデータを一時的に格納する機能も有する。サーバ3は、インターネット等のネットワークを介して各給電マット1と双方向通信が可能に構成されている。サーバ3は、充電器2および車両4ともネットワークを介して双方向通信が可能に構成されている。
【0024】
サーバ3は、給電マット1および充電器2による車両4の充電を管理する。より具体的には、サーバ3は、複数の給電マット1および充電器2の各々について、仕様に関する情報を保持するとともに、使用状況に関する情報を取得する。また、サーバ3は、最新の道路情報、渋滞情報、天気情報等を外部サーバ(図示せず)から取得することも可能に構成されている。この例では、サーバ3は、給電マット1および充電器2を用いた充電料金の精算も管理している。なお、サーバ3は、機能毎に複数のサーバに分割して構成されていてもよい。
【0025】
<充電マットの構成>
図2は、給電マット1の詳細な構成の一例を示す図である。給電マット1は、地上ユニット11と、センサユニット12と、電力変換ユニット13と、コントローラ14とを含む。
【0026】
地上ユニット11は、マット形状を有し、車両4の走行レーンの路面に配置される。地上ユニット11は、路面に固定されるのに代えて持ち運び可能に構成されている。地上ユニット11は、たとえば、一定の知識または資格を有する作業員によって保管場所から取り出されて路面に設置される。この際の持ち運びを容易にするため、地上ユニット11が柔軟性を有し、持ち運び時には巻回されるように構成されていてもよい。あるいは、地上ユニット11の路面側に設けられた複数の駆動輪(図示せず)によって地上ユニット11自身が移動(自走)可能に構成されていてもよい。
【0027】
地上ユニット11は、複数の送電コイルユニット111を含む。複数の送電コイルユニット111の各々は、その上方に車両4が位置する場合に、コントローラ14からの制御信号に従って車両4に非接触で送電可能に構成されている。なお、
図2には送電コイルユニット111が縦方向に10台配置され、横方向に5台配置された例が示されているが、地上ユニット11に含まれる送電コイルユニットの台数および配置は特に限定されるものではない。
【0028】
センサユニット12は、地上ユニット11上を通過する車両4の位置を検出し、その検出信号をコントローラ14に出力する。センサユニット12は、たとえば、カメラ、レーダー(Radar)およびライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)(いずれも図示せず)のうちの少なくとも1つを含む。なお、地上ユニット11に対して1台のセンサユニット12が設けられるのに代えて、複数の送電コイルユニット111の各々に車両4の位置を検出するためのセンサ(光学センサ、重量センサ等)が設けられていてもよい。
【0029】
電力変換ユニット13は、外部の交流電源9(典型的には商用電源)に電気的に接続されている。交流電源9は、後述する例ではマイクログリッドMG(
図6参照)に電気的に接続されている。電力変換ユニット13は、交流電源9から供給される交流電力の電圧を適切な値に変換する。そして、電力変換ユニット13は、変換後の交流電力を、地上ユニット11に含まれる複数の送電コイルユニット111のうちの選択された送電コイルユニットに出力する。
【0030】
コントローラ14は、図示しない通信モジュールを介してサーバ3(
図1参照)と双方向通信が可能に構成され、サーバ3からの指令に従って電力変換ユニット13を制御する。より具体的には、センサユニット12からの検出信号に基づいて、車両4の位置を特定する。そして、コントローラ14は、複数の送電コイルユニット111のうち車両4の下方に位置している送電コイルユニットに交流電力が出力されるように、電力変換ユニット13を制御する。たとえば、ある送電コイルユニットの上方に車両4が検出された場合、コントローラ14は、当該送電コイルユニットを選択する。そうすると、当該送電コイルユニット内の送電コイルに交流電流が流れることで、送電コイルの周囲に電磁界が形成される。これにより、車両4の受電装置43(後述)内の受電コイルに電力が伝送される(非接触充電)。その後、当該送電コイルユニットの上方に車両4が検出されなくなると、コントローラ14は、当該送電コイルユニットを非選択とすることで、当該送電コイルユニットへの交流電力の出力を停止させる。このような一連の制御が送電コイルユニット毎に行われることで、車両4が走行中であっても非接触で電力を伝送できる。車両4が停止している場合にも当然ながら非接触での電力伝送が可能である。
【0031】
車両4は、プラグイン充電および非接触充電の両方が可能に構成された車両であって、
図2に示す例では電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)またはプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)である。ただし、車両4の種類はこれに限定されず、車両4は、たとえば定員1,2名の小型モビリティであってもよい。車両4は、無人での荷物の運搬等に用いられる自動運転車両であってもよい。車両4は、バッテリ41と、インレット42と、受電装置43とを含む。
【0032】
バッテリ41は、複数のセルを含む組電池である。各セルは、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池である。バッテリ41は、車両4の駆動力を発生させるための電力をモータジェネレータ(図示せず)に供給する。また、バッテリ41は、モータジェネレータにより発電された電力を蓄える。バッテリ41に代えて電気二重層キャパシタ等のキャパシタが採用されてもよい。
【0033】
インレット42は、充電器2から延びる充電ケーブル21(
図3参照)のコネクタを挿入可能に構成されている。コネクタがインレット42に挿入されると、インレット42と充電器2とが電気的に接続される。これにより、充電器2から車両4への電力供給が可能になる(プラグイン充電)。
【0034】
受電装置43は、
図3に示す例では、車両4の底面を形成するフロアパネルの下面に配置されている。受電装置43内には受電コイルが収容されている。受電コイルは、給電マット1から送電される電力を非接触で受電する。受電装置43により受電された交流電力は、インバータ(図示せず)により直流電力に変換されてバッテリ41に充電される(非接触充電)。
【0035】
<充電渋滞の緩和>
多くの場合、充電器2による充電は、ガソリンスタンドにおける給油と比べて、所要時間が長い。たとえば給油が通常は数分しか要さないのに対し、充電は数十分~数時間を要し得る。そのため、充電器2が設置された充電スタンドまたはその周辺には充電を待つ車両の車列である「充電渋滞」が発生し得る。
【0036】
そこで、本実施の形態においては、充電渋滞が発生した場合に給電マット1を設置し、充電渋滞に巻き込まれた車両4に対して給電マット1を用いて非接触充電を行う。また、その時点では充電渋滞が発生していなくても充電渋滞の発生が予測される場合にも給電マット1を設置し、充電渋滞に巻き込まれ得る車両4に対して給電マット1を用いて非接触充電を行ってもよい。このように本実施の形態では、充電渋滞の発生の有無に応じて設置/撤去が可能な「動的な充電インフラ」として給電マット1を使用する。これにより、以下に説明するように充電渋滞を緩和できる。なお、本開示において「充電渋滞を緩和」とは、充電渋滞の発生を抑制したり、発生した充電渋滞を解消したりすることも含み得る。
【0037】
図3は、実施の形態1における充電渋滞の緩和態様の一例を示す図である。ここでは、3台の車両4に対する充電が行われる状況を想定する。3台の車両を4A,4B,4Cと記載して互いに区別する。先頭の車両4Aに対しては既に充電器2によるプラグイン充電が行われている。一方、後方の2台の車両4B,4Cは、車両4Aのプラグイン充電が完了して自身の順番が来るまで待機している。
【0038】
このような場合に、車両4B,4Cの各々の下方に給電マット1が設置される。給電マット1は、たとえば充電スタンドの作業員によって手動で設置されてもよい。駆動輪が設けられている場合、給電マット1が車両4B,4Cの下方へと自走してもよい。
【0039】
サーバ3は、車両4B,4Cのドライバに対し、給電マット1から非接触で送電される電力によりバッテリ41を充電することを希望するかどうかを問い合わせる。ドライバが充電を希望する旨を回答すると、充電時間または充電電力量に応じた料金がドライバに課金される。料金の支払いは前払いでも後払いであってもよい。給電マット1による非接触充電が有償であることは必須ではなく、無償であってもよい。
【0040】
その後、待機中の各車両4B,4Cが給電マット1により非接触充電される。これにより、給電マット1が設置されない場合と比べて、車両4Aのプラグイン充電の完了後に行われる車両4Bのプラグイン充電の所要時間が短縮される。さらに、車両4Bのプラグイン充電中にも車両4Cの非接触充電が行われることで、車両4Bのプラグイン充電の完了後に行われる車両4Cのプラグイン充電の所要時間も同様に短縮される。
【0041】
このように、本実施の形態においては、プラグイン充電を待つ車両4に対して給電マット1を用いて非接触充電を行うことで、非接触充電による充電電力量をプラグイン充電により充電するのに要する時間だけ、プラグイン充電の所要時間が短縮される。これにより、充電渋滞が緩和される。言い換えると、充電渋滞の発生が抑制されたり、発生した充電渋滞が解消されるまでの時間が短縮されたりする。その結果、車両4のドライバの待ち時間を減らし、充電スタンドの利便性を向上させることができる。
【0042】
図4は、実施の形態1における充電渋滞の緩和態様の他の一例を示す図である。給電マット1の設置場所は、
図3にて説明したような充電渋滞の発生場所に限られない。
図4に示すように充電器2を迂回可能な走行ルート(迂回ルート)に給電マット1を設置してもよい。充電器2の使用を予定している一部の車両4は、迂回ルートを走行した場合、迂回ルートに設置された給電マット1からの非接触充電によってバッテリ41のSOC(State Of Charge)が回復することで、充電器2を使用しなくて済んだり、
図4に示す充電器2よりも先に設置された他の充電器を使用可能になったりする。これらの車両4を迂回ルートに誘導して充電器2を使用する車両4を減らすことで、充電器2における充電渋滞を緩和できる。
【0043】
<処理フロー>
図5は、実施の形態1における充電渋滞を緩和するための処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、たとえば予め定められた条件成立時にサーバ3にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。各ステップは、サーバ3またはコントローラ14によるソフトウェア処理により実現されるが、サーバ3またはコントローラ14内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0044】
S101において、サーバ3は、充電器2において充電渋滞が発生しているかどうかを判定する。サーバ3は、たとえば、各車両4に搭載されたGPS(Global Pointing System)受信機(図示せず)から外部サーバに収集される位置情報に基づいて、充電渋滞の発生の有無を判定できる。充電渋滞が発生した場合(S101においてYES)、サーバ3は、処理をS103に進める。
【0045】
現時点では充電渋滞が発生していない場合(S101においてNO)であっても、サーバ3は、近い将来(たとえば数十分以内)に充電器2の周辺に充電渋滞が発生するかどうかを予測する(S102)。サーバ3は、過去の充電渋滞の発生履歴を基に、たとえば時間帯、曜日、平日/休日の別、天候等に応じて、充電渋滞が発生するかどうかを予測できる。充電渋滞の発生が予測される場合(S102においてYES)にもサーバ3は、処理をS103に進める。
【0046】
S103において、サーバ3は、充電器2における充電渋滞の発生場所(または充電渋滞の発生が予測される場所)に給電マット1を設置するように、充電スタンドの作業員または自走式の給電マット1に指示する。たとえば、充電スタンド内のモニタ(図示せず)に表示された指示を確認した作業員が指示された場所に給電マット1を設置できる。給電マット1がサーバ3からの指示に従って自動で移動してもよい。
【0047】
S104において、コントローラ14は、給電マット1の上方に車両4が検出されたかどうかを判定する。前述のように、コントローラ14は、センサユニット12からの検出信号に基づいて車両4の検出の有無を判定できる。車両4が検出された場合(S104においてYES)、コントローラ14は、電力変換ユニット13を動作させる。これにより、給電マット1から車両4への送電が行われる(S105)。一方、車両4が検出されない場合(S104においてNO)、コントローラ14は、電力変換ユニット13を停止させる。これにより、給電マット1から車両4への送電が中断(停止)される(S106)。
【0048】
充電渋滞が発生しておらず(S101においてNO)、かつ、充電渋滞の発生も予測されていない場合(S102においてNO)、コントローラ14は、処理をS107に進め、充電渋滞の解消する条件が成立しているかどうかを判定する。コントローラ14は、たとえば、充電スタンドの営業終了時刻が到来した場合(間もなく営業終了時刻が到来する場合であってもよい)に充電渋滞の解消条件が成立していると判定できる。コントローラ14は、時間帯に代えてまたは加えて、曜日、平日/休日の別、天候等を考慮して充電渋滞の解消条件の成否を判定してもよい。
【0049】
充電渋滞の解消条件が成立している場合(S107においてYES)、サーバ3は、充電渋滞の発生場所に設置された給電マット1を回収(撤去)するように作業員または給電マット1に指示する(S108)。この指示に従って、たとえば作業員が給電マット1を回収して保管場所に移動させることができる。給電マット1がサーバ3からの指示に従って自動で保管場所へと移動してもよい。
【0050】
以上のように、実施の形態1においては、充電スタンド等に設けられた充電器2によるプラグイン充電を待つ車両4によって充電渋滞が発生した場合(または充電渋滞の発生が予測される場合)に、充電渋滞の車列に給電マット1が設置される。これにより、停車している車両4または低速でしか走行できない車両4が非接触で充電される。車両4が給電マット1により非接触で充電された分だけ、その後にプラグイン充電が要求される電力量が低減されるので、プラグイン充電の時間を短縮できる。よって、実施の形態1によれば、充電渋滞を緩和できる。
【0051】
充電渋滞を緩和すべく、従来型の非接触式の送電装置を固定的に設置することも考えられる。しかし、その場合、充電渋滞の様々な発生状況に対応することは難しい。たとえば、長期休暇等に発生する長い充電渋滞に対応するために広範囲に送電装置を設置するには、大きな設備投資を要し得る。しかし、閑散期には広範囲に設置された送電装置を十分に活用できない可能性がある。これに対し、給電マット1は持ち運び可能(移動可能)であるため、所望の場所、範囲、時期に給電マット1を設置できる。すなわち、充電渋滞の発生状況に応じて、給電マット1の設置場所、設置範囲および設置時期を適宜変更可能である。よって、実施の形態1によれば、設備投資を抑制しつつ効果的に充電渋滞を緩和できる。
【0052】
なお、本実施の形態においては充電器2によるプラグイン充電が行われる例について説明した。しかし、本開示に係る「固定された充電設備による車両の充電」はプラグイン充電に限られず、地面に埋設された非接触式の送電装置による充電であってもよい。この場合、車両4は、非接触式の送電装置からの受電と、給電マット1からの受電とを共通の受電装置43により行うことができる。
【0053】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、電力系統の電力需給バランスを調整するためのデマンドレスポンス(DR:Demand Response)に給電マット1を使用する構成について説明する。
【0054】
図6は、実施の形態2に係る車両充電システムを含む電力システムの全体構成を概略的に示す図である。電力システム200は、たとえばCEMSであって、給電マット1、充電器2、サーバ3および車両4に加えて、発電機51と、自然変動電源52と、電力貯蔵システム53とを備える。CEMSとは、コミュニティエネルギー管理システム(Community Energy Management System)または街エネルギー管理システム(City Energy Management System)を意味する。
【0055】
給電マット1と充電器2と車両4と発電機51と自然変動電源52と電力貯蔵システム53とは、マイクログリッドMGを構築している。なお、
図6では、マイクログリッドMGの構成要素が主に1つずつ図示されているが、実際のマイクログリッドMGは各構成要素を複数含み得る。
【0056】
発電機51は、気象条件に依存しない発電設備であり、発電された電力をマイクログリッドMGに出力する。発電機51は、蒸気タービン発電機、ガスタービン発電機、ディーゼルエンジン発電機、ガスエンジン発電機、バイオマス発電機、定置式の燃料電池などを含み得る。発電機51は、発電時に発生する熱を活用するコージェネレーションシステムを含んでもよい。
【0057】
自然変動電源52は、気象条件によって発電出力が変動する発電設備であり、発電された電力をマイクログリッドMGに出力する。
図6には太陽光発電設備(太陽光パネル)が例示されているが、自然変動電源52は、太陽光発電設備に代えてまたは加えて、風力発電設備を含んでもよい。
【0058】
電力貯蔵システム53は、自然変動電源52などにより発電された電力を蓄える定置式電源である。電力貯蔵システム53は、二次電池であり、たとえば車両で使用された中古のリチウムイオン電池またはニッケル水素電池である。ただし、電力貯蔵システム53は、二次電池に限られず、余剰電力を用いて気体燃料(水素、メタン等)を製造するパワー・ツー・ガス(Power to Gas)機器等であってもよい。
【0059】
マイクログリッドMGは受変電設備6および電力系統7に接続されている。受変電設備6は、マイクログリッドMGの受電点(連系点)に設けられ、マイクログリッドMGと電力系統7との並列(接続)/解列(切り離し)を切り替え可能に構成されている。受変電設備6は、いずれも図示しないが、高圧側(一次側)の開閉装置、変圧器、保護リレー、計測機器および制御装置を含む。
【0060】
電力系統7は、発電所および送配電設備によって構築された電力網である。この実施の形態では、電力会社が発電事業者と送配電事業者とを兼ねる。電力会社は、一般送配電事業者に相当するとともに電力系統7の管理者に相当し、電力系統7を保守管理する。
【0061】
送配電事業者サーバ8は、電力会社に帰属し、電力系統7の電力需給を管理するコンピュータである。送配電事業者サーバ8とサーバ3とは双方向通信が可能に構成されている。電力系統7において余剰電力が発生している場合、送配電事業者サーバ8は、サーバ3に対して余剰電力の消費を要求する。電力系統7において電力不足が発生している場合、送配電事業者サーバ8は、サーバ3に対して電力消費の抑制を要求する。サーバ3は、送配電事業者サーバ8からの要求に応じてマイクログリッドMGの消費電力量を調整する。
【0062】
図7は、実施の形態2における充電渋滞を緩和するための処理手順を示すフローチャートである。S201~S203の処理は、実施の形態1におけるS101~S103の処理(
図5参照)と同様である。また、紙面の都合上、充電渋滞の発生が予測されない場合(S202においてNO)に実行される処理が省略されているが、これらの処理も実施の形態1におけるS107,S108の処理と同様である。
【0063】
充電渋滞の発生場所への給電マット1の設置後、サーバ3は、電力系統7において余剰電力が発生しているかどうかを判定する(S204)。サーバ3は、送配電事業者サーバ8からの要求に基づいて余剰電力の発生の有無を判定できる。電力系統7において余剰電力が発生していない場合(S204においてNO)、サーバ3は、電力系統7において電力不足が発生しているかどうかを判定する(S207)。サーバ3は、電力不足の発生の有無についても送配電事業者サーバ8からの要求に基づいて判定できる。
【0064】
電力系統7において余剰電力が発生している場合(S204においてYES)には、コントローラ14は、給電マット1の上方に車両4が検出されると(S205においてYES)、サーバ3からの指令に従って電力変換ユニット13を動作させ、給電マット1から車両4への送電を行う(S206)。また、電力系統7において電力不足が発生していない場合(S207においてNO)にも、コントローラ14は、給電マット1の上方に車両4が検出されると(S208においてYES)、電力変換ユニット13を動作させ、給電マット1から車両4への送電を行う(S209)。
【0065】
一方、電力系統7において電力不足が発生している場合(S207においてYES)、コントローラ14は、サーバ3からの指令に従って電力変換ユニット13を停止させる(S210)。すなわち、車両4が検出されたかどうかに拘わらず、給電マット1から車両4への送電は行われない。
【0066】
なお、電力系統7において余剰電力が発生していても給電マット1の上方に車両4が検出されていない場合(S204においてYESかつS205においてNO)には、コントローラ14は、電力変換ユニット13を停止させる。同様に電力系統7において電力不足が発生していなくても給電マット1の上方に車両4が検出されていない場合(S207においてNOかつS208においてNO)にも、コントローラ14は、電力変換ユニット13を停止させる。いずれの場合にも給電マット1から車両4への送電は行われない。
【0067】
ここで、給電マット1から車両4への送電が行われる場合同士を比較すると、サーバ3は、電力系統7において余剰電力が発生している場合(S206)には、余剰電力が発生していない場合(S209)と比べて、給電マット1からの送電を促進する。より具体的には、サーバ3は、余剰電力が発生している場合には、余剰電力が発生していない場合と比べて、充電料金を割引できる。たとえば、サーバ3は、余剰電力が発生していない場合には非接触充電を有償で行うのに対し、余剰電力が発生している場合には非接触充電を無償にしてもよい。このように料金を設定することで、非接触充電を希望するドライバが増加して余剰電力が積極的に消費されることを期待できる。
【0068】
あるいは、サーバ3は、余剰電力が発生していない場合には、ドライバに希望を確認した上で給電マット1から送電させるに対し、余剰電力が発生している場合には、ドライバへの問い合わせを省略して自動的に給電マット1から送電させるようにしてもよい。
【0069】
また、電力系統7の電力不足が発生していない場合(S209)には給電マット1からの送電が行われるのに対し、電力不足が発生している場合(S210)には給電マット1からの送電は行われない。言い換えると、電力系統7の電力不足が発生している場合には、電力不足が発生していない場合と比べて、給電マット1からの送電が抑制される。これにより、電力系統7の電力不足が発生している場合にマイクログリッドMGの消費電力が低減されるので、電力系統7の電力不足を緩和できる。図示しないが、サーバ3は、電力系統7の電力不足が発生している場合には、電力不足が発生していない場合と比べて、充電料金を増大させてもよい。
【0070】
以上のように、実施の形態2においても実施の形態1と同様に、充電器2による充電を待つ車両4によって充電渋滞が発生した場合に、充電渋滞の車列に給電マット1が設置される。これにより、プラグイン充電の時間を短縮し、充電渋滞を緩和できる。
【0071】
さらに、実施の形態2では、電力系統7の余剰電力が発生している場合には、余剰電力が発生していない場合と比べて、給電マット1から車両4への送電が促進される。また、電力系統7の電力不足が発生している場合には、電力不足が発生していない場合と比べて、給電マット1から車両4への送電が抑制される。よって、実施の形態2によれば、給電マット1の使用によって電力系統7の電力需給バランス調整にも貢献できる。
【0072】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 給電マット、11 地上ユニット、111 送電コイルユニット、12 センサユニット、13 電力変換ユニット、14 コントローラ、2 充電器、3 サーバ、4,4A,4B,4C 車両、41 バッテリ、42 インレット、43 受電装置、51 発電機、52 自然変動電源、53 電力貯蔵システム、6 受変電設備、7 電力系統、8 送配電事業者サーバ、9 交流電源、21 充電ケーブル、100 車両充電システム、200 電力システム。