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特許7548150歩行補助装置、制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】歩行補助装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
A61H3/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021121449
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017293
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小池 宇織
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-000501(JP,A)
【文献】特開2020-175181(JP,A)
【文献】特開2020-137543(JP,A)
【文献】特開2021-007650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの歩行状態に応じて当該ユーザの膝関節の運動に抵抗力を与えて、当該ユーザの歩行動作を補助する歩行補助装置において、
前記ユーザの上腿の長手方向軸と鉛直線との成す上腿姿勢角を取得する上腿姿勢角取得部と、
前記ユーザの歩行状態が立脚期から遊脚期に遷移すると判定した場合、前記ユーザの膝関節の運動に与える抵抗力を減少させる補助力制御部と、
前記上腿姿勢角が上腿遊脚判定閾値以下である場合、前記ユーザの膝関節が前記立脚期において前記ユーザの腰部の前方に位置することを検出することによって、膝折れを検知する膝折れ検知部と、を備え、
前記膝折れ検知部が前記膝折れを検知した場合、前記補助力制御部は、前記抵抗力の減少度合いを小さくする、又は前記抵抗力の減少を停止する、
歩行補助装置。
【請求項2】
前記ユーザの下腿の長手方向軸と鉛直線との成す下腿姿勢角を取得する下腿姿勢角取得部と、
前記取得した下腿姿勢角が下腿遊脚判定閾値を上回る場合、前記ユーザの歩行状態が立脚期から遊脚期に遷移すると判定する歩行状態判定部と、を備え、
前記歩行状態判定部は前記ユーザの歩行状態が立脚期から前記遊脚期に遷移すると判定した場合、前記補助力制御部が前記ユーザの膝関節の運動に与える抵抗力を減少させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項3】
ユーザの歩行状態に応じて当該ユーザの膝関節の運動に抵抗力を与えて、当該ユーザの歩行動作を補助する歩行補助装置において実行される制御方法において、
前記歩行補助装置は、
前記ユーザの上腿の長手方向軸と鉛直線との成す上腿姿勢角を取得する上腿姿勢角取得部と、
補助力制御部と、
膝折れ検知部と、
歩行状態判定部とを備え、
前記歩行状態判定部は、前記ユーザの歩行状態が立脚期から遊脚期に遷移すると判定した場合、前記補助力制御部は、前記ユーザの膝関節の運動に与える抵抗力を減少させるステップと、
前記膝折れ検知部は、前記上腿姿勢角が上腿遊脚判定閾値以下である場合、前記ユーザの膝関節が前記立脚期において前記ユーザの腰部の前方に位置することを検出することによって、膝折れを検知するステップと、を備え、
前記膝折れを検知するステップにおいて前記膝折れ検知部が前記膝折れを検知した場合、前記抵抗力を減少させるステップにおいて、前記補助力制御部が前記抵抗力の減少度合いを小さくする、又は前記抵抗力の減少を停止する、
歩行補助装置の制御方法。
【請求項4】
ユーザの歩行状態に応じて当該ユーザの膝関節の運動に抵抗力を与えて、当該ユーザの歩行動作を補助する歩行補助装置において演算装置として動作するコンピュータに実行される歩行補助装置の制御プログラムにおいて、
前記ユーザの歩行状態が立脚期から遊脚期に遷移すると判定した場合、前記ユーザの膝関節の運動に与える抵抗力を減少させるステップと、
前記ユーザの上腿の長手方向軸と鉛直線との成す上腿姿勢角が上腿遊脚判定閾値以下である場合、前記ユーザの膝関節が前記立脚期において前記ユーザの腰部の前方に位置することを検出することによって、膝折れを検知するステップと、を実行させ、
前記膝折れを検知するステップにおいて前記膝折れを検知した場合、前記抵抗力を減少させるステップにおいて、前記抵抗力の減少度合いを小さくする、又は前記抵抗力の減少を停止すること、を実行させる、
歩行補助装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歩行補助装置、制御方法、及び制御プログラムに関し、特に、ユーザの膝周りに抵抗力を与える歩行補助装置、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の体動検出装置は、上腿正面部及び下腿正面部にそれぞれ配置された2つの変位センサを用いて、ユーザの歩行動作における立脚期及び遊脚期の各期間をさらに詳細な区間に判別する。このような体動検出装置は、歩行補助装置に取り付けて利用することができる。このような歩行補助装置は、この判別した区間に基づいて、ユーザの膝周りに与える抵抗力を増減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5927552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者等は、以下の課題を発見した。
ユーザが歩行動作をしている間、膝折れが発生することがある。膝折れが発生すると、このような体動検出装置は、ユーザの歩行動作における立脚期及び遊脚期の各期間を誤って判別するおそれがあった。そのため、このような歩行補助装置は、ユーザの膝周りに与える抵抗力を適切に増減できず、ユーザの歩行動作を適切に補助できないおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述の課題を鑑み、ユーザの歩行動作において、膝折れを検知することによって、当該歩行動作を適切に補助する歩行補助装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行補助装置は、
ユーザの歩行状態に応じて当該ユーザの膝関節の運動に抵抗力を与えて、当該ユーザの歩行動作を補助する歩行補助装置において、
前記ユーザの歩行状態が立脚期から遊脚期に遷移すると判定した場合、前記ユーザの膝関節の運動に与える抵抗力を減少させる補助力制御部と、
前記ユーザの膝関節が前記立脚期において前記ユーザの腰部の前方に位置することを検出することによって、膝折れを検知する膝折れ検知部と、を備え、
前記膝折れ検知部が前記膝折れを検知した場合、前記補助力制御部は、前記抵抗力の減少度合いを小さくする、又は前記抵抗力の減少を停止する。
【0007】
このような構成によれば、膝折れが発生しても、膝関節の運動に与える抵抗力の減少度合いを小さくする、又は、抵抗力の減少を停止する。そのため、膝折れが発生したユーザの膝関節の運動に、十分な抵抗力を与えることができる。よって、ユーザの歩行動作において、膝折れを検知して、ユーザの歩行動作を適切に補助することができる。
【0008】
または、前記ユーザの上腿の長手方向軸と鉛直線との成す上腿姿勢角を取得する上腿姿勢角取得部をさらに備え、
前記膝折れ検知部は、前記取得した上腿姿勢角に基づいて、前記ユーザの膝関節が前記立脚期において前記ユーザの腰部の前方に位置することを判定することを特徴としてもよい。
【0009】
このような構成によれば、上腿姿勢角を用いて、膝折れを検知することができる。
【0010】
または、前記ユーザの膝関節に対する腰部の位置を検出できる膝位置センサをさらに備え、
前記膝折れ検知部は、前記膝位置センサを用いて、前記ユーザの膝関節が前記立脚期において前記ユーザの腰部の前方に位置することを判定することを特徴としてもよい。
【0011】
このような構成によれば、ユーザの膝関節に対する腰部の位置を用いて、膝折れを検知することができる。
【0012】
本発明に係る歩行補助装置の制御方法は、
ユーザの歩行状態に応じて当該ユーザの膝関節の運動に抵抗力を与えて、当該ユーザの歩行動作を補助する歩行補助装置において実行される制御方法において、
前記ユーザの歩行状態が立脚期から遊脚期に遷移すると判定した場合、前記ユーザの膝関節の運動に与える抵抗力を減少させるステップと、
前記ユーザの膝関節が前記立脚期において前記ユーザの腰部の前方に位置することを検出することによって、膝折れを検知するステップと、を備え、
前記膝折れを検知するステップにおいて前記膝折れを検知した場合、前記抵抗力を減少させるステップにおいて、前記抵抗力の減少度合いを小さくする、又は前記抵抗力の減少を停止する。
【0013】
このような構成によれば、膝折れが発生しても、膝関節の運動に与える抵抗力の減少度合いを小さくする、又は、抵抗力の減少を停止する。そのため、膝折れが発生したユーザの膝関節の運動に、十分な抵抗力を与えることができる。よって、ユーザの歩行動作において、膝折れを検知して、ユーザの歩行動作を適切に補助することができる。
【0014】
本発明に係る歩行補助装置の制御プログラムは、
ユーザの歩行状態に応じて当該ユーザの膝関節の運動に抵抗力を与えて、当該ユーザの歩行動作を補助する歩行補助装置において演算装置として動作するコンピュータに実行される歩行補助装置の制御プログラムにおいて、
前記ユーザの歩行状態が立脚期から遊脚期に遷移すると判定した場合、前記ユーザの膝関節の運動に与える抵抗力を減少させるステップと、
前記ユーザの膝関節が前記立脚期において前記ユーザの腰部の前方に位置することを検出することによって、膝折れを検知するステップと、を実行させ、
前記膝折れを検知するステップにおいて前記膝折れを検知した場合、前記抵抗力を減少させるステップにおいて、前記抵抗力の減少度合いを小さくする、又は前記抵抗力の減少を停止すること、を実行させる。
【0015】
このような構成によれば、膝折れが発生しても、膝関節の運動に与える抵抗力の減少度合いを小さくする、又は、抵抗力の減少を停止する。そのため、膝折れが発生したユーザの膝関節の運動に、十分な抵抗力を与えることができる。よって、ユーザの歩行動作において、膝折れを検知して、ユーザの歩行動作を適切に補助することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ユーザの歩行動作において、膝折れを検知することによって、当該歩行動作を適切に補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1に係る歩行補助装置を示す模式図である。
図2】実施の形態1に係る歩行補助装置の制御構成を示すブロック図である。
図3】上腿姿勢角θt及び下腿姿勢角θsを示す模式図である。
図4】ユーザの歩行動作の一例における立脚期と遊脚期とを示す模式図である。
図5】膝折れ状態、及び遊脚遷移状態を示す模式図である。
図6】実施の形態1に係る歩行補助装置の制御方法のフローチャートである。
図7】ユーザの歩行動作の一例における下腿姿勢角θsの変化を示すグラフである。
図8】歩行補助装置に含まれるハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0019】
(実施の形態1)
図1~5を参照して実施の形態1について説明する。なお、当然のことながら、図1及びその他の図面に示した右手系XYZ座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、Z軸プラス向きが鉛直上向き、XY平面が水平面であり、図面間で共通である。
【0020】
図1に示すように、歩行補助装置10は、上腿側リンク1と、下腿側リンク2とを備える。歩行補助装置10は、ユーザU1の脚部に取り付けて利用される。上腿側リンク1は、ユーザU1の上腿U1bに着脱可能に取り付けられている。下腿側リンク2は、ユーザU1の下腿U1dに着脱可能に取り付けられている。上腿側リンク1と下腿側リンク2とは、ユーザU1の膝関節U1c周りに互いに回動する。ユーザU1は、多くの場合、膝関節を自由に動かすことが困難な者である。ユーザU1は、膝関節の運動機能を回復させることを目的として、歩行補助装置10を自己の脚部に取り付けて、トレーニングとして歩行動作を行うことが多い。歩行補助装置10は、ユーザU1の歩行状態に応じてユーザU1の膝関節の運動に抵抗力を与えて、ユーザU1の歩行動作を補助する。
【0021】
図2に示すように、歩行補助装置10は、上腿姿勢角取得部3と、下腿姿勢角取得部4と、制御部5と、アクチュエータ6とを備える。
【0022】
上腿姿勢角取得部3は、図3に示す上腿姿勢角θtを検出するものであればよく、例えば、上腿姿勢角センサである。図3に示すユーザU1は、足U1eを歩行面G1に置いた状態である。上腿姿勢角θtは、鉛直線Z1と、上腿U1bの長手方向軸T1とが交差して成す角度である。鉛直線Z1は、重力方向(ここでは、Z軸方向)に延びる直線である。ユーザU1の膝関節U1cが、ユーザU1の腰部U1aの前方(ここでは、X軸方向プラス側)に位置する場合、上腿姿勢角θtは、負の値である。膝関節U1cが、腰部U1aの後方(ここでは、X軸方向マイナス側)に位置する場合、上腿姿勢角θtは、正の値である。上腿姿勢角取得部3は、上腿側リンク1、又は下腿側リンク2に取り付けられているとよい。上腿姿勢角取得部3は、ユーザU1の膝関節U1cに対するユーザU1の腰部U1aの位置を検出可能なセンサを用いて求めてもよい。上腿姿勢角取得部3は、例えば、IMU(慣性計測ユニット)等である。
【0023】
下腿姿勢角取得部4は、図3に示す下腿姿勢角θsを検出するものであればよく、例えば、下腿姿勢角センサである。下腿姿勢角θsは、鉛直線Z2と、下腿U1dの長手方向軸T2とが交差して成す角度の大きさである。鉛直線Z2は、鉛直線Z1と同様に、重力方向(ここでは、Z軸方向)に延びる直線である。下腿姿勢角取得部4は、上腿側リンク1、又は下腿側リンク2に取り付けられているとよい。ユーザU1の膝関節U1cが、ユーザU1の腰部U1aの前方(ここでは、X軸方向プラス側)に位置する場合、下腿姿勢角θsは、負の値である。膝関節U1cが、腰部U1aの後方(ここでは、X軸方向マイナス側)に位置する場合、下腿姿勢角θsは、正の値である。
【0024】
制御部5は、上腿姿勢角θt、及び下腿姿勢角θs等を取得して、アクチュエータ6に制御信号を送信する。制御部5は、演算装置51と、メモリ52とを備える。
【0025】
演算装置51は、歩行状態判定部51aと、膝折れ検知部51bと、補助力制御部51cとを備える。
【0026】
歩行状態判定部51aは、下腿姿勢角θs等に基づいて、ユーザU1の歩行状態を推定する。図4に示すように、ユーザU1の歩行状態は、立脚期及び遊脚期を含み、歩行動作中において、立脚期及び遊脚期を交互に繰り返す。具体的には、歩行状態判定部51aは、下腿姿勢角θsを、下腿遊脚判定閾値ThSw_sや下腿立脚判定閾値ThSt_sと時々刻々と比較することによって、ユーザU1の歩行状態を推定する。より具体的には、歩行状態判定部51aは、下腿姿勢角θsが下腿遊脚判定閾値ThSw_sを上回る場合、歩行状態が立脚期から遊脚期に遷移したと判定する。なお、下腿遊脚判定閾値ThSw_sや下腿立脚判定閾値ThSt_sは、任意に定めることができ、例えば、ユーザU1の歩容に合わせて定めてもよい。歩行状態判定部51aは、下腿姿勢角θsが下腿立脚判定閾値ThSt_sを下回る場合、歩行状態が立脚期から遊脚期に遷移したと判定する。
【0027】
膝折れ検知部51bは、歩行状態が立脚期である場合、上腿姿勢角θtに基づいて、膝折れ状態か否かを検知する。
【0028】
具体的には、図5に示すように、腰折れ状態では、上腿U1bが膝関節U1cの後方へ傾く。言い換えると、膝関節U1cが立脚期において腰部U1aの前方(ここでは、X軸方向プラス側)に位置する。膝折れ検知部51bは、膝関節U1cが立脚期において腰部U1aの前方に位置することを検出することによって、膝折れを検知する。
【0029】
また、立脚期から遊脚期へ遷移する遊脚遷移状態では、上腿U1bが膝関節U1cの前方へ傾く。言い換えると、膝関節U1cが立脚期において腰部U1aの後方(ここでは、X軸方向プラス側)に位置する。膝折れ検知部51bは、膝関節U1cが立脚期において腰部U1aの後方に位置することを検出した場合、立脚期から遊脚期へ遷移する遊脚遷移状態であると検知する。
【0030】
より具体的には、膝折れ検知部51bは、上腿姿勢角θtに基づいて、ユーザU1の膝関節U1cが立脚期においてユーザU1の腰部U1aの前方に位置するか否かを判定する。膝折れ検知部51bは、上腿姿勢角θtが上腿遊脚判定閾値ThSw_t以下である場合、ユーザU1の膝関節U1cが立脚期においてユーザU1の腰部U1aの前方に位置すると判定し、膝折れを検知する。膝折れ検知部51bは、上腿姿勢角θtが上腿遊脚判定閾値ThSw_tを上回る場合、ユーザU1の膝関節U1cが立脚期においてユーザU1の腰部U1aの後方に位置すると判定し、膝折れを検知しない。本実施形態に係る上腿遊脚判定閾値ThSw_tは、0(零)であるが、上腿遊脚判定閾値ThSw_tは、任意に定めてもよく、例えば、ユーザU1の歩容に合わせて定めてもよい。
【0031】
なお、上腿姿勢角取得部3は、膝関節U1cに対する腰部U1aの位置を検出可能なセンサを用いた場合、膝折れ検知部51bは、ユーザU1の膝関節U1cに対するユーザU1の腰部U1aの位置に基づいて、膝折れを検知してもよい。例えば、上腿姿勢角取得部3が、ユーザU1の膝関節U1cが立脚期においてユーザU1の腰部U1aの前方に位置すると検出した場合、膝折れ検知部51bは、膝折れを検知する。
【0032】
補助力制御部51cは、アクチュエータ6が上腿側リンク1と下腿側リンク2との回動に対して与える抵抗力を調節する。
【0033】
歩行状態判定部51aが、ユーザU1の歩行状態が立脚期から遊脚期に遷移すると判定した場合、補助力制御部51cは、ユーザU1の膝関節U1cの運動に与える抵抗力を減じる。具体的には、補助力制御部51cは、膝折れ検知部51bが膝折れを検知した場合、抵抗力の減少度合いを小さくする、又は、抵抗力を維持する。
【0034】
言い換えると、補助力制御部51cは、ユーザU1の歩行状態に応じて、アクチュエータ6の与える抵抗力を変化させる。補助力制御部51cが制御する抵抗力の制御状態は、補助期と、フリー期とを含む。
【0035】
補助期は、遊脚期の中途、又は、遊脚期から立脚期に遷移した時点から開始し、立脚期から遊脚期に遷移した時点において終了するとよい。補助期は、遊脚期の中途から開始すると、遊脚期から立脚期に遷移した時点において、アクチュエータ6の与える抵抗力を確保でき、ユーザU1の歩行動作の適切な補助を確実に行うことができてよい。フリー期は、立脚期から遊脚期に遷移した時点から開始し、遊脚期の中途、又は、遊脚期から立脚期に遷移した時点において終了するとよい。
【0036】
補助力制御部51cは、補助期において、アクチュエータ6の与える抵抗力を所定の値に設定する。これは、ユーザU1の歩行状態の立脚期に主に対応すべく、ユーザU1の歩行動作を適切に補助するためである。
【0037】
補助力制御部51cは、フリー期において、アクチュエータ6の与える抵抗力を上記所定の値よりも低い値、又は、0(零)に設定するとよい。これは、ユーザU1の歩行状態の遊脚期に主に対応すべく、ユーザU1の歩行動作への補助を弱める、又は、当該補助を停止するためである。
【0038】
メモリ52は、所定のプログラムを記録する。演算装置51は、このプログラムを読み込んで実行して、歩行状態判定部51aと、膝折れ検知部51bと、補助力制御部51cとして機能する。
【0039】
制御部5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、インタフェース(I/F)等からなるマイクロコンピュータを中心にして、ハードウェア構成されている。CPU、ROM、RAM及びインタフェースは、データバス等を介して相互に接続されている。
【0040】
アクチュエータ6は、制御部5から受信した制御信号に基づいて、上腿側リンク1と下腿側リンク2との回動に対する抵抗力を与える。アクチュエータ6は、例えば、流体シリンダ等である。
【0041】
(制御方法)
次に、図6及び図7を参照して、実施の形態1に係る歩行補助装置の制御方法について説明する。図6は、実施の形態1に係る歩行補助装置の制御方法のフローチャートである。
図7は、ユーザの歩行動作の一例における下腿姿勢角θsの変化を示すグラフである。
【0042】
歩行補助装置10の制御を開始する時点において、制御状態は補助期に設定されている。現時点における下腿姿勢角θs及び上腿姿勢角θtを取得する(ステップST1)。続いて、現時点における制御状態を確認する(ステップST2)。
【0043】
現時点における制御状態が補助期であれば(ステップST2:補助期)、下腿姿勢角θsと下腿遊脚判定閾値ThSw_sとの大きさを比較する(ステップST31)。
【0044】
下腿姿勢角θsが下腿遊脚判定閾値ThSw_s未満である場合(ステップST31:YES)、歩行状態が立脚期であると判定し、制御状態が補助期であることを維持する。さらに、ステップST6に進む。
【0045】
一方、下腿姿勢角θsが下腿遊脚判定閾値ThSw_s以上である場合(ステップST31:NO)、上腿姿勢角θtと上腿遊脚判定閾値ThSw_tとの大きさを比較する(ステップST4)。
【0046】
上腿姿勢角θtが上腿遊脚判定閾値ThSw_t以下である場合(ステップST4:NO)、歩行状態が立脚期であり、かつ、膝折れが発生したと判定し、制御状態が補助期であることを維持する(ステップST51)。さらに、ステップST6に進む。
【0047】
一方、上腿姿勢角θtが上腿遊脚判定閾値ThSw_tを上回る場合(ステップST4:YES)、歩行状態が立脚期から遊脚期へ遷移したと判定し、制御状態が補助期からフリー期へ遷移する(ステップST52)。さらに、ステップST6に進む。
【0048】
一方、現時点における制御状態がフリー期であれば(ステップST2:フリー期)、下腿姿勢角θsと下腿立脚判定閾値ThSt_sとの大きさを比較する(ステップST32)。
【0049】
下腿姿勢角θsが下腿立脚判定閾値ThSt_s未満である場合(ステップST32:YES)、歩行状態が遊脚期から立脚期に遷移し、又は立脚期に近くなったと判定し、制御状態がフリー期から補助期へ遷移する(ステップST53)。さらに、ステップST6に進む。
【0050】
一方、下腿姿勢角θsが下腿立脚判定閾値ThSt_s以上である場合(ステップST32:NO)、歩行状態が遊脚期であると判定し、制御状態がフリー期であることを維持する。さらに、ステップST6に進む。
【0051】
最後に、歩行補助装置10の制御を継続するか否かを確認する(ステップST6)。つまり、歩行補助装置10の制御の継続を停止する(ステップST6:NO)まで、上記したステップST1、ST2、ST31、ST32、ST4、ST51、ST52、ST53を繰り返す。
【0052】
ここで、図4及び図7に示すユーザU1の歩行動作中の所定の時点P1、P2、P3、P4において、歩行補助装置10による制御例について説明する。
【0053】
時点P1では、下腿姿勢角θs及び上腿姿勢角θtを取得した後(ステップST1)、制御状態が補助期であり(ステップST2:補助期)、下腿姿勢角θsが下腿遊脚判定閾値ThSw_s未満である(ステップST31:YES)。そのため、制御状態が補助期のままである。時点P4においても、時点P1と同様に、歩行補助装置10の制御状態が補助期のままである。
【0054】
時点P2では、下腿姿勢角θs及び上腿姿勢角θtを取得した後(ステップST1)、歩行状態が補助期であり(ステップST2:補助期)、下腿姿勢角θsが下腿遊脚判定閾値ThSw_s以上である(ステップST31:NO)。上腿姿勢角θtが上腿遊脚判定閾値ThSw_tを上回る場合(ステップST4:YES)、膝折れが発生してないと判定し、歩行状態が補助期からフリー期へ遷移する(ステップST52)。一方、上腿姿勢角θtが上腿遊脚判定閾値ThSw_t以下である場合(ステップST4:NO)、歩行状態が膝折れ状態にあると判定し、制御状態は補助期のままである(ステップST51)。
【0055】
時点P3では、下腿姿勢角θs及び上腿姿勢角θtを取得した後(ステップST1)、制御状態がフリー期であり(ステップST2:フリー期)、下腿姿勢角θsが下腿立脚判定閾値ThSt_s以上である場合(ステップST32:NO)、制御状態はフリー期のままである。
【0056】
以上より、ユーザU1の歩行動作において、膝折れを検知することができる。そのため、ユーザU1の歩行動作を適切に補助することができる。
【0057】
(他の実施の形態等)
なお、上記実施の形態に係る歩行補助装置は、次のようなハードウェア構成を備えることができる。図8は、歩行補助装置に含まれるハードウェア構成の一例を示す図である。上述した様々な実施の形態において、歩行補助装置における処理の手順を説明したように、本開示は処理方法としての形態も採り得る。
【0058】
図8に示す歩行補助装置200は、インタフェース203とともに、プロセッサ201及びメモリ202を備える。上述した実施の形態で説明した歩行補助装置10の制御構成(図2参照)は、プロセッサ201がメモリ202に記憶された制御プログラムを読み込んで実行することにより実現される。つまり、このプログラムは、プロセッサ201を歩行補助装置10、又はその一部として機能させるためのプログラムである。
【0059】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本発明は、上記実施の形態やその一例を適宜組み合わせて実施してもよい。
【0061】
例えば、歩行補助装置10は、膝角度センサをさらに備えてもよい。膝角度センサは、ユーザU1の膝関節U1cにおける膝角度θcを検出する。図3に示すように、膝角度θcは、例えば、上腿U1bの長手方向軸T1と下腿U1dの長手方向軸T2とが交差して成す角度である。歩行補助装置10は、上腿姿勢角θt及び膝角度θcを用いて、下腿姿勢角θsを算出してもよい。また、歩行補助装置10は、下腿姿勢角θs及び膝角度θcを用いて、上腿姿勢角θtを算出してもよい。
【0062】
また、歩行補助装置10は、足裏荷重センサ、床反力計、及び関節角度センサ等を備えてもよい。歩行補助装置10は、足裏荷重センサ、床反力計、及び関節角度センサがそれぞれ検出したデータに基づいて、歩行状態を推定してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 歩行補助装置
1 上腿側リンク 2 下腿側リンク
3 上腿姿勢角取得部 4 下腿姿勢角取得部
5 制御部 6 アクチュエータ
51 演算装置
51a 歩行状態判定部 51b 膝折れ検知部
51c 補助力制御部
52 メモリ
G1 歩行面 P1、P2、P3、P4 時点
ST1、ST2、ST31、ST32、ST4、ST51~ST53、ST6 ステップ
ThSt_s 下腿立脚判定閾値 ThSw_s 下腿遊脚判定閾値
ThSw_t 上腿遊脚判定閾値
U1 ユーザ
U1a 腰部 U1b 上腿
U1c 膝関節 U1d 下腿
T1、T2 長手方向軸 Z1、Z2 鉛直線
θc 膝角度 θs 下腿姿勢角
θt 上腿姿勢角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8