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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】コネクタおよびコネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/91 20110101AFI20240903BHJP
   H01R 13/11 20060101ALI20240903BHJP
   H01R 13/187 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01R12/91
H01R13/11 K
H01R13/187 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021137461
(22)【出願日】2021-08-25
(65)【公開番号】P2022077958
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2020188801
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 徹
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-150071(JP,A)
【文献】特開2017-195114(JP,A)
【文献】特開2020-043002(JP,A)
【文献】特開2015-222621(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043760(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/167434(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/085542(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/91
H01R 13/11
H01R 13/187
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1車載機器の第1端子部と第2車載機器の平板状の相手方電気接触部とを電気的に接続可能なコネクタであって、
第1端子金具と、
前記第1端子金具を収容する第1コネクタハウジングと、を備え、
前記第1端子金具は、前記第1端子部と接続可能であるように前記第1コネクタハウジングから突出長さをもって突出する第1機器側接続部と、前記相手方電気接触部と接続可能であるとともに前記第1端子金具の長さ方向において前記第1機器側接続部と反対側に配置される第1電気接触部と、を有し、
前記第1電気接触部と前記第1機器側接続部とは単一部品によって構成されており、
前記第1電気接触部は、前記第1機器側接続部に対して相対的に変位可能であり、
前記第1電気接触部が前記第1機器側接続部に対して相対的に変位するときに、前記第1コネクタハウジングからの前記第1機器側接続部の前記突出長さは変化せず、かつ、前記第1端子金具の前記第1電気接触部は、前記第1コネクタハウジング内において変位し、
前記コネクタは、前記第1コネクタハウジングに収容される弾性部材を備え、
前記弾性部材は、前記第1電気接触部が前記相手方電気接触部に接触している状態に保持可能であるとともに、前記第1コネクタハウジング内において前記第1電気接触部の変位に伴って変位可能であり、
前記弾性部材は、相互に隙間を隔てて対向配置された一対の平板部と、前記一対の平板部を連結する連結板部と、を有し、
前記弾性部材は、一対の前記平板部によって、接触している状態の前記第1電気接触部と前記相手方電気接触部とを互いに接触している方向に挟持可能であり、
前記一対の前記平板部は、対向方向の内側へ向けて突出する挟持突部をそれぞれ有し、
前記挟持突部は、接触している状態の前記第1電気接触部と前記相手方電気接触部とを互いに接触している方向に挟持可能であり、
前記第1電気接触部は、前記相手方電気接触部と接触可能である、平面視において直径を有する円形ドーム状の突起である接点部を有し、
前記弾性部材の前記一対の平板部の前記挟持突部の各々は、円弧状断面を有する長尺突部であり、
前記弾性部材が前記第1電気接触部と前記相手方電気接触部とを挟持している状態で、前記一対の平板部の前記挟持突部のうちの一方は、前記第1端子金具の前記長さ方向において、前記平板状の相手方電気接触部と接触長さをもって接触するように構成されており、
前記弾性部材が前記第1電気接触部と前記相手方電気接触部とを挟持している状態で、前記弾性部材の前記円弧状断面を有する前記挟持突部と、前記第1電気接触部の前記円形ドーム状の前記接点部とは、前記平板状の相手方電気接触部が当該平板状の相手方電気接触部の面外方向に捩じれ変位するのを許容する、
コネクタ。
【請求項2】
前記第1端子金具は、前記第1機器側接続部と前記第1電気接触部の間に第1伸縮部を有し、
前記第1伸縮部が弾性変形することによって、前記第1電気接触部は、前記第1機器側接続部に対して相対的に変位可能である、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1伸縮部は、前記第1端子金具が屈曲されて形成される、
請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
第1車載機器の第1端子部と第2車載機器の第2端子部とを電気的に接続するコネクタ装置であって、
前記第1車載機器に取り付け可能な第1コネクタと、
前記第2車載機器に取り付け可能な第2コネクタと、を備え、
前記第1コネクタは、第1端子金具と、前記第1端子金具を収容する第1コネクタハウジングと、有し、
前記第2コネクタは、第2端子金具を有し、
前記第2端子金具は、前記第2端子部と接続可能な第2機器側接続部と、前記第1端子金具と接続されるとともに前記第2機器側接続部と反対側に配置される平板状の第2電気接触部と、を有し、
前記第1端子金具は、前記第1端子部と接続可能であるように前記第1コネクタハウジングから突出長さを持って突出する第1機器側接続部と、前記第2電気接触部と接続されるとともに前記第1端子金具の長さ方向において前記第1機器側接続部と反対側に配置される第1電気接触部と、を有し、
前記第1電気接触部と前記第1機器側接続部とは単一部品によって構成されており、
前記第1電気接触部は、前記第1機器側接続部に対して相対的に変位可能であり、
前記第1電気接触部が前記第1機器側接続部に対して相対的に変位するときに、前記第1コネクタハウジングからの前記第1機器側接続部の前記突出長さは変化せず、かつ、前記第1端子金具の前記第1電気接触部は、前記第1コネクタハウジング内において変位し、
前記第1コネクタは、前記第1コネクタハウジングに収容される弾性部材を備え、
前記弾性部材は、前記第1電気接触部が前記第2電気接触部に接触している状態に保持可能であるとともに、前記第1コネクタハウジング内において前記第1電気接触部の変位に伴って変位可能であり、
前記弾性部材は、相互に隙間を隔てて対向配置された一対の平板部と、前記一対の平板部を連結する連結板部と、を有し、
前記弾性部材は、一対の前記平板部によって、接触している状態の前記第1電気接触部と前記第2電気接触部とを互いに接触している方向に挟持可能であり、
前記一対の前記平板部は、対向方向の内側へ向けて突出する挟持突部をそれぞれ有し、
前記挟持突部は、接触している状態の前記第1電気接触部と前記第2電気接触部とを互いに接触している方向に挟持可能であり、
前記第1電気接触部は、前記第2電気接触部と接触可能である、平面視において直径を有する円形ドーム状の突起である接点部を有し、
前記弾性部材の前記一対の平板部の前記挟持突部の各々は、円弧状断面を有する長尺突部であり、
前記弾性部材が前記第1電気接触部と前記第2電気接触部とを挟持している状態で、前記一対の平板部の前記挟持突部のうちの一方は、前記第1端子金具の前記長さ方向において、前記平板状の第2電気接触部と接触長さをもって接触するように構成されており、
前記弾性部材が前記第1電気接触部と前記第2電気接触部とを挟持している状態で、前記弾性部材の前記円弧状断面を有する前記挟持突部と、前記第1電気接触部の前記円形ドーム状の前記接点部とは、前記平板状の第2電気接触部が当該平板状の第2電気接触部の面外方向に捩じれ変位するのを許容する、
コネクタ装置。
【請求項5】
前記第2電気接触部と前記第2機器側接続部とは単一部品によって構成されており、
前記第2電気接触部は、前記第2機器側接続部に対して相対的に変位可能である、
請求項に記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記第2コネクタを前記第2車載機器に取り付けた状態において、
前記第2電気接触部は、前記第2車載機器の外部に突出している、
請求項に記載のコネクタ装置。
【請求項7】
前記第1端子金具は、前記第1機器側接続部と前記第1電気接触部の間に第1伸縮部を有し、
前記第1伸縮部が弾性変形することによって、前記第1電気接触部は、前記第1機器側接続部に対して相対的に変位可能であり、
前記第1伸縮部は、前記第1端子金具が屈曲されて形成される、
請求項から請求項のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【請求項8】
前記第1端子金具は、前記第2端子金具よりも薄い、
請求項に記載のコネクタ装置。
【請求項9】
前記第1電気接触部と前記第2電気接触部との間の保持力は、前記第1伸縮部の弾性変形に必要な力よりも大きく設定されている、
請求項または請求項に記載のコネクタ装置。
【請求項10】
前記第1電気接触部と前記第2電気接触部との間の保持力は、前記第1端子金具の長さ方向と交差する方向に接触している部材同士の摩擦力を含む、
請求項に記載のコネクタ装置。
【請求項11】
前記第1電気接触部及び前記第2電気接触部のいずれか一方は、嵌合部を有し、
前記第1電気接触部及び前記第2電気接触部のいずれか他方は、被嵌合部を有し、
前記嵌合部は、前記被嵌合部に対して前記第1端子金具の長さ方向と交差する方向に嵌まるものであり、
前記第1電気接触部と前記第2電気接触部との間の保持力は、前記第1端子金具の長さ方向に係合する前記嵌合部と前記被嵌合部との係合力を含む、
請求項または請求項10に記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタおよびコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータやインバータ等の車載機器同士を電気接続するために、一方の機器に設けられた外部接続用のコネクタと他方の機器に設けられた外部接続用のコネクタとを、ワイヤハーネスを介して接続する構造が採用されている。近年では、部品点数の削減や省スペース等の要求に対応するために、両機器の外部接続用のコネクタ同士を直接接続するようにしたコネクタ装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されるコネクタ装置では、一方の機器に設けられたコネクタが、端子金具とコネクタハウジングと支持部材とを備え、端子金具が、相手方のコネクタと接続する電気接触部と、車載機器と接続する機器側接続部と、それらを連結する電気連結部と、を備えている。支持部材は、電気接触部をコネクタハウジング内で変位可能に支持している。それゆえ、コネクタの電気接触部が相手方のコネクタの電気接触部と位置ずれしていても、支持部材に支持された電気接触部がコネクタハウジング内で変位して電気連結部を撓ませることで、位置ずれを吸収して両コネクタの電気接触部同士が電気的に接続されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-225488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のコネクタ装置では、一方の機器のコネクタに設けられた端子金具が、編組線等から構成される電気連結部を含む複数の部材を接合して設けられている。さらに、電気接触部を支持する支持部材をコネクタハウジング内に変位可能に保持する構造も必要となる。その結果、部品点数が多く構造が複雑でコストアップが避けられないという問題を内在していた。
【0006】
そこで、部品点数の削減と構造の簡素化や低コスト化が可能な、新規な構造のコネクタおよびコネクタ装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコネクタは、第1車載機器の第1端子部と第2車載機器の相手方電気接触部とを電気的に接続可能なコネクタであって、第1端子金具と、前記第1端子金具を収容する第1コネクタハウジングと、を備え、前記第1端子金具は、前記第1端子部と接続可能な第1機器側接続部と、前記相手方電気接触部と接続可能であるとともに前記第1端子金具の長さ方向において前記第1機器側接続部と反対側に配置される第1電気接触部と、を有し、前記第1電気接触部と前記第1機器側接続部とは単一部品によって構成されており、前記第1電気接触部は、前記第1機器側接続部に対して相対的に変位可能である。
【0008】
本開示のコネクタ装置は、第1車載機器の第1端子部と第2車載機器の第2端子部とを電気的に接続するコネクタ装置であって、前記第1車載機器に取り付け可能な第1コネクタと、前記第2車載機器に取り付け可能な第2コネクタと、を備え、前記第1コネクタは、第1端子金具と、前記第1端子金具を収容する第1コネクタハウジングと、有し、前記第2コネクタは、第2端子金具を有し、前記第2端子金具は、前記第2端子部と接続可能な第2機器側接続部と、前記第1端子金具と接続されるとともに前記第2機器側接続部と反対側に配置される第2電気接触部と、を有し、前記第1端子金具は、前記第1端子部と接続可能な第1機器側接続部と、前記第2電気接触部と接続されるとともに前記第1端子金具の長さ方向において前記第1機器側接続部と反対側に配置される第1電気接触部と、を有し、前記第1電気接触部と前記第1機器側接続部とは単一部品によって構成されており、前記第1電気接触部は、前記第1機器側接続部に対して相対的に変位可能である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のコネクタおよびコネクタ装置によれば、部品点数の削減と構造の簡素化や低コスト化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係るコネクタ装置を示す全体斜視図である。
図2図2は、図1に示すコネクタ装置の縦断面図である。
図3図3は、図1に示すコネクタ装置の分解斜視図である。
図4図4は、図3に示すコネクタ装置の分解斜視図であって、第1端子金具と第2端子金具の接続状態を示した図である。
図5図5は、図1に示すコネクタ装置の一部断面図である。
図6図6は、図1に示すコネクタ装置の一部断面図である。
図7図7は、図1に示すコネクタ装置の一部断面図である。
図8図8は、図1に示すコネクタ装置の一部断面図である。
図9図9は、図1に示すコネクタ装置の一部断面図である。
図10図10は、図1に示すコネクタ装置の一部断面図である。
図11図11は、別例に係るコネクタ装置の一部断面図である。
図12図12は、別例に係るコネクタ装置の一部分解斜視図である。
図13図13は、別例に係るコネクタ装置の縦断面図である。
図14図14は、別例に係るコネクタ装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)第1車載機器の第1端子部と第2車載機器の相手方電気接触部とを電気的に接続可能なコネクタであって、第1端子金具と、前記第1端子金具を収容する第1コネクタハウジングと、を備え、前記第1端子金具は、前記第1端子部と接続可能な第1機器側接続部と、前記相手方電気接触部と接続可能であるとともに前記第1端子金具の長さ方向において前記第1機器側接続部と反対側に配置される第1電気接触部と、を有し、前記第1電気接触部と前記第1機器側接続部とは単一部品によって構成されており、前記第1電気接触部は、前記第1機器側接続部に対して相対的に変位可能である。
【0012】
本開示のコネクタによれば、第1機器側接続部に対する第1電気接触部の変位を利用して相手方電気接触部との位置ずれを吸収することができる。そして、第1電気接触部と第1機器側接続部とは単一部品によって構成されている。それゆえ、編組線等を含む複数の部材を接合して端子金具を構成する必要があるとともに、電気接触部を支持する支持部材や支持部材をコネクタハウジング内に変位可能に保持する機構が必要であった従来構造に比して、部品点数の削減や構造の簡素化を有利に図ることができる。
【0013】
(2)前記第1端子金具は、前記第1機器側接続部と前記第1電気接触部の間に第1伸縮部を有し、前記第1伸縮部が弾性変形することによって、前記第1電気接触部は、前記第1機器側接続部に対して相対的に変位可能である、ことが好ましい。第1端子金具の長さ方向の中間領域に弾性変形する第1伸縮部を有していることから、第1電気接触部と相手方電気接触部の位置ずれを、一層有利に吸収することができる。
【0014】
(3)前記第1伸縮部は、前記第1端子金具が屈曲されて形成される、ことが好ましい。第1伸縮部は、第1端子金具を屈曲することにより容易に設けることができ、部品点数の増加なく構成することができる。
【0015】
(4)前記第1コネクタハウジングに収容される弾性部材を備え、前記弾性部材は、前記第1電気接触部が前記相手方電気接触部に接触している状態に保持可能であるとともに、前記第1電気接触部の変位に伴って変位可能である、ことが好ましい。第1電気接触部が相手方電気接触部に接触している状態に保持可能な弾性部材を備えることにより、両電気接触部間の導通安定性を一層確実に保持することができる。さらに、弾性部材が第1電気接触部の変位に伴って変位可能な状態で第1コネクタハウジング内に収容されていることから、弾性部材により第1電気接触部の変位による位置ずれ吸収機能が阻害されることも有利に阻止されている。
【0016】
(5)前記弾性部材は、相互に隙間を隔てて対向配置された一対の平板部と、前記一対の平板部を連結する連結板部と、を有し、前記弾性部材は、一対の前記平板部によって、接触している状態の前記第1電気接触部と前記相手方電気接触部とを互いに接触している方向に挟持可能である、ことが好ましい。これにより、コネクタの一層の構造の簡素化を図ることができる。
【0017】
(6)前記一対の前記平板部は、対向方向の内側へ向けて突出する挟持突部をそれぞれ有し、前記挟持突部は、接触している状態の前記第1電気接触部と前記相手方電気接触部とを互いに接触している方向に挟持可能であり、前記挟持突部は、円弧状断面を有している、ことが好ましい。第1電気接触部と相手方電気接触部とを挟持する挟持突部が円弧状断面を有していることから、第1電気接触部又は相手方電気接触部と平板部との傾斜が許容される。
【0018】
(7)前記第1電気接触部は、ドーム状に突出する接点部を有し、前記接点部は、前記相手方電気接触部と接触可能である、ことが好ましい。第1電気接触部に設けられた接点部がドーム状であることから、第1電気接触部に重ね合される相手方電気接触部がローリング等のねじれ変位を起こしても、両電気接触部間の接触状態を安定して保持することができる。
【0019】
本開示のコネクタ装置は、
(8)第1車載機器の第1端子部と第2車載機器の第2端子部とを電気的に接続するコネクタ装置であって、前記第1車載機器に取り付け可能な第1コネクタと、前記第2車載機器に取り付け可能な第2コネクタと、を備え、前記第1コネクタは、第1端子金具と、前記第1端子金具を収容する第1コネクタハウジングと、有し、前記第2コネクタは、第2端子金具を有し、前記第2端子金具は、前記第2端子部と接続可能な第2機器側接続部と、前記第1端子金具と接続されるとともに前記第2機器側接続部と反対側に配置される第2電気接触部と、を有し、前記第1端子金具は、前記第1端子部と接続可能な第1機器側接続部と、前記第2電気接触部と接続されるとともに前記第1端子金具の長さ方向において前記第1機器側接続部と反対側に配置される第1電気接触部と、を有し、前記第1電気接触部と前記第1機器側接続部とは単一部品によって構成されており、前記第1電気接触部は、前記第1機器側接続部に対して相対的に変位可能である。
【0020】
本開示のコネクタ装置によれば、第1機器側接続部に対する第1電気接触部の変位を利用して第2電気接触部との位置ずれを吸収することができる。そして、第1電気接触部と第1機器側接続部とは単一部品によって構成されている。それゆえ、編組線等を含む複数の部材を接合して端子金具を構成する必要があるとともに、電気接触部を支持する支持部材や支持部材をコネクタハウジング内に変位可能に保持する機構が必要であった従来構造に比して、部品点数の削減や構造の簡素化を有利に図ることができる。
【0021】
(9)前記第2電気接触部と前記第2機器側接続部とは単一部品によって構成されており、前記第2電気接触部は、前記第2機器側接続部に対して相対的に変位可能である、ことが好ましい。第2機器側接続部に対する第2電気接触部の変位を利用して第1電気接触部との位置ずれを吸収することができる。そして、第2電気接触部と第2機器側接続部とは単一部品によって構成されている。それゆえ、部品点数の削減や構造の簡素化を一層有利に図ることができる。
【0022】
(10)前記第2コネクタを前記第2車載機器に取り付けた状態において、前記第2電気接触部は、前記第2車載機器の外部に突出している、ことが好ましい。第2電気接触部が第2機器側接続部に対して相対的に変位可能な状態で第2車載機器の外部に突出していることから、第1コネクタと第2コネクタの嵌合時に、第1,第2電気接触部の両方の変位を利用して、第1コネクタと第2コネクタのそれぞれの電気接触部間の位置ずれを一層有利に吸収して、両電気接触部間の接続を安定して実現することができる。
【0023】
(11)前記第1端子金具は、前記第1機器側接続部と前記第1電気接触部の間に第1伸縮部を有し、前記第1伸縮部が弾性変形することによって、前記第1電気接触部は、前記第1機器側接続部に対して相対的に変位可能であり、前記第1伸縮部は、前記第1端子金具が屈曲されて形成される、ことが好ましい。第1端子金具の長さ方向の中間領域に弾性変形する第1伸縮部を有していることから、第1電気接触部と第2電気接触部の位置ずれを、一層有利に吸収することができる。第1伸縮部は、第1端子金具を屈曲することにより容易に設けることができ、部品点数の増加なく構成することができる。
【0024】
(12)前記第1端子金具は、前記第2端子金具よりも薄い、ことが好ましい。第1端子金具が第2端子金具よりも薄いため、第1伸縮部が弾性変形し易い。
(13)前記第1電気接触部と前記第2電気接触部との間の保持力は、前記第1伸縮部の弾性変形に必要な力よりも大きく設定されている、ことが好ましい。例えば、車両の走行による振動等によって第1車載機器と第2車載機器とが相対的に変位した際に、第1電気接触部と第2電気接触部とが第1端子金具の長さ方向に相対的にずれるよりも先に第1伸縮部が弾性変形する。よって、第1電気接触部と第2電気接触部とが摩耗してしまうことが抑えられる。
【0025】
(14)前記第1電気接触部と前記第2電気接触部との間の保持力は、前記第1端子金具の長さ方向と交差する方向に接触している部材同士の摩擦力を含む、ことが好ましい。摩擦力を利用して第1電気接触部と第2電気接触部との間の保持力を、第1伸縮部の弾性変形に必要な力よりも大きく設定することができる。
【0026】
(15)前記第1電気接触部及び前記第2電気接触部のいずれか一方は、嵌合部を有し、前記第1電気接触部及び前記第2電気接触部のいずれか他方は、被嵌合部を有し、前記嵌合部は、前記被嵌合部に対して前記第1端子金具の長さ方向と交差する方向に嵌まるものであり、前記第1電気接触部と前記第2電気接触部との間の保持力は、前記第1端子金具の長さ方向に係合する前記嵌合部と前記被嵌合部との係合力を含む、ことが好ましい。第1端子金具の長さ方向に係合する嵌合部と被嵌合部との係合力を利用して第1電気接触部と第2電気接触部との間の保持力を、第1伸縮部の弾性変形に必要な力よりも大きく設定することができる。嵌合部と被嵌合部との係合力を利用しない場合に比べて、第1電気接触部と第2電気接触部との間の保持力を安定して大きく設定することができる。
【0027】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示のコネクタおよびコネクタ装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1のコネクタ装置10について、図1から図10を用いて説明する。図1図2に示すように、コネクタ装置10は、第1車載機器12に設けられたコネクタとしての第1コネクタ14と、第2車載機器16に設けられた第2コネクタ18と、を備えている。コネクタ装置10は、任意の向きで配置することができるが、以下では、上方向,左方向,前方向を、図中に示す上方向,左方向および前方向を基準として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0029】
<第1端子金具20>
第1コネクタ14は、2つの第1端子金具20,20が第1コネクタハウジング22に収容された構造を有している。すなわち、第1コネクタ14は、2つの第1端子金具20,20と、第1端子金具20,20を収容する第1コネクタハウジング22とを備えている。第1端子金具20は、図3にも示すように、板状の導電性金属材によって構成されたバスバーとされている。第1端子金具20は、厚さ方向の弾性的な撓み変形が許容される弾性材とされている。第1端子金具20は、前後方向が長手とされており、前端部が第1機器側接続部24とされていると共に、後端部が第1電気接触部26とされている。すなわち、第1端子金具20は、第1機器側接続部24と、第1端子金具20の長さ方向において第1機器側接続部24と反対側に配置される第1電気接触部26とを有している。第1機器側接続部24は、円環板形状とされており、厚さ方向である上下方向に貫通する第1ボルト穴28を備えている。第1電気接触部26は、上方へ向けてドーム状に突出する接点部30を備えている。接点部30は、第1電気接触部26を部分的に厚肉とすることで形成してもよいが、例えば、部分的に上方へ向けて凸となるようにプレス加工することによって形成され、下面が凹状にへこんでいる。第1電気接触部26の後端縁部は、後方に向けて下傾する案内部32とされている。
【0030】
第1端子金具20における第1機器側接続部24と第1電気接触部26の間には、第1伸縮部34が設けられている。第1伸縮部34は、第1端子金具20が板厚方向に屈曲されて形成されている。言い換えると、第1伸縮部34は、第1端子金具20が第1端子金具20の幅方向に沿った軸中心で屈曲されて形成されている。なお、第1端子金具20の幅方向は、左右方向である。また、第1端子金具20の幅方向は、第1端子金具20の長さ方向と直交する方向である。また、第1端子金具20の幅方向は、第1端子金具20の板厚方向と直交する方向である。より詳細には、第1伸縮部34は、上方へ向けて開口するU字断面の溝状とされており、当該溝状の開口端部において第1機器側接続部24と第1電気接触部26につながっている。要するに、第1端子金具20は、第1伸縮部34と、第1伸縮部34よりも前方に位置して第1機器側接続部24を備える機器側部分36と、第1伸縮部34よりも後方に位置して第1電気接触部26を備える接触側部分38と、を備えている。換言すれば、第1端子金具20は、第1機器側接続部24と第1電気接触部26とをつなぐ中間領域である電気連結部において、第1伸縮部34を備えている。機器側部分36における第1機器側接続部24と第1伸縮部34の間には、一対の位置決め片42,42が左右方向の各外側へ向けて突出している。
【0031】
本実施形態の第1伸縮部34は、前後方向に対して直交して広がる一対の縦壁と、それら縦壁を下端において連続させる底壁とを備えており、それら縦壁と底壁がそれぞれ平板状とされていることから、4か所に屈曲部分40を備えている。しかしながら、第1伸縮部34の具体的な形状は限定されるものではなく、例えば、左右方向視において、縦壁と底壁が角をなさずに滑らかに連続する湾曲形状や、縦壁間の対向距離が上下方向で変化する拡開形状又は収縮形状、底壁のないV字形状などであってもよい。一対の縦壁は、上下方向の高さ寸法が相互に異なっていてもよく、その場合には、例えば、外力の作用による変形がない第1端子金具20の初期形状において、第1機器側接続部24と第1電気接触部26が上下方向において相互に異なる位置に配置される。なお、第1端子金具20が屈曲するとは、必ずしも第1端子金具20が角をなして折れ曲がっている場合だけに限定されず、例えば、角のない滑らかな湾曲によっても第1端子金具20の屈曲が実現される。従って、第1伸縮部は、例えば、山形の湾曲形状や、山形と谷形が連続する波形の湾曲形状とされていてもよい。
【0032】
第1端子金具20は、第1伸縮部34の弾性変形によって、第1機器側接続部24と第1電気接触部26の離間方向である前後方向の距離が変化するように伸縮可能とされている。即ち、第1端子金具20が厚さ方向で弾性変形可能な板材とされていることによって、第1伸縮部34における4か所の屈曲部分40の角度が弾性的に変化可能とされている。屈曲部分40の角度変化によって、第1伸縮部34は、上開口の前後方向の幅寸法が変化するように伸縮することから、第1伸縮部34の上端縁につながる第1機器側接続部24と第1電気接触部26の前後方向の距離が変化する。すなわち、第1電気接触部26は、第1伸縮部34が弾性変形することによって、第1機器側接続部24に対して相対的に変位可能である。
【0033】
第1端子金具20において、機器側部分36と接触側部分38との相対的な角度変化を伴う第1機器側接続部24と第1電気接触部26の上下方向の相対移動も、第1伸縮部34の変形によって許容される。なお、第1機器側接続部24と第1電気接触部26の上下方向の相対移動は、機器側部分36と接触側部分38の厚さ方向の弾性変形によっても許容され得る。
【0034】
第1伸縮部34は、平板状の一対の縦壁と横壁によって構成されており、4か所の屈曲部分40がそれぞれ略直角をなす折れ形状とされている。それゆえ、第1伸縮部の全体が滑らかに湾曲する場合に比して、縦壁と横壁の角度変化、或いは縦壁と機器側部分36又は接触側部分38との角度変化によって、第1伸縮部34の伸縮が生じ易くなっている。
【0035】
上述のような第1機器側接続部24と第1電気接触部26の前後方向および上下方向の相対変位を許容する第1伸縮部34は、単一部品であるバスバーによって構成された第1端子金具20を板厚方向に屈曲することによって、簡単に設けることができる。しかも、第1伸縮部34は、第1端子金具20の一部によって一体で設けられることから、部品点数の増加も回避され、コストの低減も期待できる。
【0036】
<板ばねクリップ44>
第1端子金具20の第1電気接触部26には、弾性部材としての板ばねクリップ44が取り付けられている。板ばねクリップ44は、上下方向で隙間を持って対向する矩形板状の一対の平板部46,46と、それら一対の平板部46を左右方向の一方の側縁部(第1側縁部)において相互に連結する連結板部48とを有している。板ばねクリップ44は、金属等の弾性材によって形成されている。板ばねクリップ44は、第1側縁部から離れた位置において一対の平板部46,46の対向間距離が、平板部46,46と連結板部48の弾性的な角度変化によって変化可能とされている。板ばねクリップ44は、電気絶縁性の材料で形成されていてもよいが、好適には導電性材料によって形成される。
【0037】
一対の平板部46,46は、対向方向の内側へ向けて突出する挟持突部50をそれぞれ備えている。挟持突部50は、円弧状断面で前後方向に延びている。挟持突部50は、例えば、第1端子金具20の接点部30と同様に、平板部46をプレス加工で部分的に凹ませて形成することができる。上側の平板部46は、前後方向の外側へ突出する一対のガイド片52,52が設けられている。ガイド片52,52は、平板部46からの突出先端に向けて上方へ傾斜している。ガイド片52は、後述する第2端子金具92の誘い込み機能を得るためには、平板部46の後側だけに設けられていてもよい。ガイド片52は、平板部46の前後両側に設けてもよい。ガイド片52が平板部46の前後両側に設けている場合、左右一対が配される板ばねクリップ44を共通化することができる。
【0038】
板ばねクリップ44は、一対の平板部46,46の対向間に第1端子金具20の第1電気接触部26が挿入されて、第1端子金具20の第1電気接触部26に組み付けられている。板ばねクリップ44は、例えば下側の平板部46が第1電気接触部26の下面に固着される等して、第1端子金具20に対して固定されていてもよい。本実施形態では、板ばねクリップ44は、第1端子金具20に対して特に位置決め等されていない。板ばねクリップ44は、後述する第1コネクタハウジング22への収容によって第1端子金具20からの離脱が防止される。
【0039】
<第1コネクタハウジング22>
第1コネクタハウジング22は、全体として中空箱状であって、第1部材54と第2部材56が上下方向に組み合わされた構造とされている。第1部材54は、全体として上方へ向けて開口する有底筒状であって、矩形筒状の周壁58を有すると共に、左右方向の中央に左右方向と直交して広がる仕切壁部60を備えている。第1部材54は、仕切壁部60に関する左右対称形状とされていることから、ここでは仕切壁部60に対する左右一方の構造について説明する。第1部材54の周壁58と仕切壁部60との左右対向間の距離は、第1端子金具20の左右方向の幅寸法よりも大きくされている。
【0040】
第1部材54は、第1端子金具20の第1伸縮部34を収容する第1収容凹所62を備えている。第1収容凹所62の前端部には、第1部材54の底壁から周壁58に沿って上方へ突出する位置決め凸部64が、左右方向の両端部分に設けられている。第1収容凹所62の一対の位置決め凸部64,64の左右方向の対向間距離は、第1伸縮部34の左右方向の幅寸法と略同じとされている。
【0041】
図2に示すように、第1部材54における第1収容凹所62よりも前方には、第1収容凹所62の上端において前方へ向けて突出する端子受部66が設けられている。図3に示すように、第1部材54の周壁58の前側部分は、端子受部66の前端から上方へ突出する突出部67を有している。換言すれば、端子受部66は、第1部材54の周壁58の前側部分において上下方向の中間部分に段差状に設けられている。周壁58において端子受部66から上方へ突出する部分である突出部67は、第1収容凹所62の位置決め凸部64に対して前方に対向している。突出部67と位置決め凸部64の前後方向の対向間距離は、第1端子金具20の位置決め片42の前後幅寸法と略同じとされている。突出部67は、第1部材54の左右方向の両端と中央に部分的に設けられており、前後方向に貫通する溝状の機器側挿通部68を構成している。
【0042】
第1部材54における第1収容凹所62よりも後方には、第1端子金具20の第1電気接触部26を収容する第2収容凹所70が形成されている。第1収容凹所62は、第1電気接触部26よりも下方へ突出する第1伸縮部34を収容可能とするために、第2収容凹所70よりも上下方向の深さ寸法が大きくされている。第1収容凹所62と第2収容凹所70の境界部分には、第1部材54の周壁58と仕切壁部60の左右対向面に突出する一対の第1位置規定部72,72が設けられている。第1位置規定部72,72の左右方向の距離は、第1端子金具20における接触側部分38の左右幅寸法と略同じとされている。また、第1位置規定部72よりも後方には、第2収容凹所70において周壁58と仕切壁部60の左右対向面に突出する一対の第2位置規定部74,74が設けられている。第2位置規定部74,74の左右方向の距離は、第1位置規定部72,72の左右方向の距離と略同じとされている。
【0043】
周壁58において第2収容凹所70の後側の壁部を構成する部分には、前後方向に貫通する一対の挿通窓76,76が形成されている。挿通窓76は、後述する第2端子金具92の前端部分が挿通可能な開口形状とされている。挿通窓76は、第2端子金具92の前後直交方向の断面よりも上下方向および左右方向において大きな孔断面を有している。一対の挿通窓76,76は、仕切壁部60に対して左右外側に位置している。第2収容凹所70は挿通窓76を通じて外部に開放されている。
【0044】
周壁58における左右方向の外面には、係止爪78が形成されている。係止爪78は、周壁58から左右方向の外側へ向けて突出している。係止爪78は、下面が上下方向に対して略直交する直角三角形断面を有している。係止爪78は、上方に向けて突出高さが小さくなっている。本実施形態では、係止爪78は、前後方向に離れた位置に2つ配されている。それら2つの係止爪78は、第1部材54の左右両側にそれぞれ設けられている。係止爪78の数や配置は特に限定されない。
【0045】
図2に示すように、第2部材56は、第1部材54の上開口を覆い得る板状とされており、下方に突出する第3位置規定部77を備えている。図3に示すように、第2部材56の左右方向の両端には、下方へ向けて突出する係止片80が設けられている。係止片80は、板状とされて、厚さ方向である左右方向において撓み変形が許容されている。係止片80には、第1部材54の係止爪78に対応する爪挿通孔82が左右方向に貫通して形成されている。本実施形態では、係止片80は、前後方向に離れた位置に2つ配されている。それら2つの係止片80は、第2部材56の左右両側にそれぞれ設けられている。係止片80の数や配置は係止爪78に対応して適宜に変更され得る。
【0046】
第2部材56が第1部材54の上面に重ね合わされることにより、第1部材54の上開口が第2部材56によって塞がれて、内部に空間を備える中空構造の第1コネクタハウジング22が構成される。第2部材56の係止片80が第1部材54の係止爪78に係止されることにより、第1部材54と第2部材56が相互に位置決めされる。
【0047】
<第1コネクタ14の組立て>
第1コネクタハウジング22には、一対の第1端子金具20,20および一対の板ばねクリップ44,44が収容される。即ち、第1端子金具20の第1伸縮部34が第1部材54の第1収容凹所62に上方から差し入れられると共に、第1端子金具20の接触側部分38が第1部材54の第2収容凹所70に上方から差し入れられる。第1端子金具20の機器側部分36は、後端部分が第1部材54の機器側挿通部68において端子受部66の上面に重ね合わされて支持されていると共に、第1機器側接続部24が機器側挿通部68を通じて第1部材54よりも前方に位置している。板ばねクリップ44は、第1端子金具20の第1電気接触部26に取り付けられた状態で、第1部材54の第2収容凹所70に収容されている。そして、第1端子金具20と板ばねクリップ44を収容した第1部材54の上開口を塞ぐようにして、第2部材56が第1部材54に固定される。これにより、第1端子金具20および板ばねクリップ44が第1コネクタハウジング22に収容された構造を有する第1コネクタ14が構成される。
【0048】
第1端子金具20は、第1伸縮部34が一対の位置決め凸部64,64の左右間に配されることにより、第1部材54に対して左右方向で位置決めされている。また、第1端子金具20は、機器側部分36が機器側挿通部68に挿通されていることによって、第1部材54に対して左右方向で位置決めされている。機器側部分36に設けられた位置決め片42が、突出部67と位置決め凸部64との前後方向の対向間に挿し入れられることにより、第1端子金具20は、第1部材54に対して前後方向で位置決めされている。また、第1端子金具20は、接触側部分38が一対の第1位置規定部72,72の左右間に配されることにより、第1部材54に対して左右方向で位置決めされている。更に、第1端子金具20は、接触側部分38が一対の第2位置規定部74,74の左右間に配されることにより、第1部材54に対して左右方向で位置決めされている。
【0049】
なお、上述のように第1端子金具20が第1コネクタハウジング22に対して位置決めされた状態において、第1収容凹所62に収容された第1端子金具20の第1伸縮部34は、図2に示すように、第1収容凹所62の内面から離れている。これにより、第1伸縮部34は、第1コネクタハウジング22内での変形および変位が許容されている。これにより、第1伸縮部34の伸縮は、第1コネクタハウジング22によって制限されていない。また、第1端子金具20の接触側部分38は、第1コネクタハウジング22に対して左右方向で位置決めされていると共に、上下方向および前後方向では変形および変位を許容されている。これらによって、第1コネクタハウジング22に収容された第1電気接触部26は、第1コネクタハウジング22内において、上下方向および前後方向の変位を許容されている。
【0050】
板ばねクリップ44は、第1コネクタハウジング22に対して固定されておらず、第1電気接触部26の変位に伴って、第1コネクタハウジング22内で変位可能とされている。板ばねクリップ44は、第2位置規定部74よりも後方に配されており、第1端子金具20に対する前後方向および左右方向の変位量が、第1部材54によって制限されている。これにより、板ばねクリップ44の第1端子金具20からの脱落が防止されている。第2部材56に設けられた第3位置規定部77に対する板ばねクリップ44の当接によっても、板ばねクリップ44の第1コネクタハウジング22に対する前方向の変位量が制限される。
【0051】
<第1車載機器12>
かくの如き構造とされた第1コネクタ14は、図2に示すように、第1車載機器12に設けられている。第1車載機器12は、例えば自動車のモータであって、第1ケース84の内部に第1端子部としての第1接続端子86が収容された構造を有している。第1ケース84には、後側の壁部を前後方向に貫通する第1窓部88が形成されている。そして、第1ケース84には、第1コネクタハウジング22の前側部分が収容されている。第1コネクタハウジング22から前方へ突出した第1端子金具20の第1機器側接続部24は、第1接続端子86に対して重ね合わされる。重ね合わされた第1機器側接続部24と第1接続端子86は、第1機器側接続部24の第1ボルト穴28に挿通される第1ボルト90によって、電気的な接続状態で固定される。これにより、第1コネクタ14は、第1端子金具20が第1車載機器12の第1接続端子86に導通された状態で、第1車載機器12に設けられている。第1コネクタハウジング22は、第1窓部88を通じて第1ケース84から後方へ突出している。
【0052】
<第2コネクタ18(第2端子金具92)>
第2コネクタ18は、第2端子金具92を備えている。第2端子金具92は、図3にも示すように、第1端子金具20と同様に、板状で導電性を有する金属等で形成されたバスバーとされている。なお、第2端子金具92は、第1端子金具20よりも厚さが厚い。言い換えると、第1端子金具20は、第2端子金具92よりも厚さが薄い。また、第2端子金具92は、第1端子金具20よりも前後方向の長さが長い。第2端子金具92は、厚さ方向である上下方向の弾性的な撓み変形が許容されている。このように、第2端子金具92は、単一部品であるバスバーによる簡単な構成によって、厚さ方向の変形が許容されている。第2端子金具92は、後端部分が第2機器側接続部94を備え、前端部分が相手方電気接触部としての第2電気接触部96を備えている。第2機器側接続部94は、第2端子金具92の他の部分よりも左右方向で幅広とされており、上下方向に貫通する第2ボルト穴98を備えている。第2電気接触部96は、前端部が前方へ向けて左右方向で幅狭となる先細形状とされている。なお、第2電気接触部96の前端部は、前方へ向けて上下方向で薄肉となっていてもよい。
【0053】
<第2車載機器16>
第2コネクタ18を構成する第2端子金具92は、図2に示すように、第2機器側接続部94が第2車載機器16に接続されている。第2車載機器16は、第1車載機器12と電気的に接続されるデバイスであって、例えば自動車のインバータやECU(Electric Control Unit)等である。第2車載機器16は、筐体としての第2ケース100の内部に第2端子部としての第2接続端子102が収容された構造を有している。第2ケース100には、前側の壁部を前後方向に貫通する挿通孔としての第2窓部104が形成されている。そして、第2端子金具92は第2車載機器16の第2ケース100の第2窓部104に挿通されている。第2端子金具92の第2機器側接続部94は第2接続端子102に対して重ね合わされる。第2機器側接続部94と第2接続端子102は、第2ボルト穴98に挿通される第2ボルト106によって電気的な接続状態で固定される。これにより、第2コネクタ18は、第2端子金具92が第2車載機器16の第2接続端子102に導通された状態で、第2車載機器16に設けられている。第2電気接触部96は、第2窓部104を通じて第2ケース100から前方へ向けて外部へ突出している。第2電気接触部96は、第2機器側接続部94と第2電気接触部96の間に位置する第2端子金具92の中間領域が撓む弾性変形によって、上下方向に変位可能な状態とされている。言い換えると、第2電気接触部96は、第2端子金具92が弾性変形することによって、第2機器側接続部94に対して相対的に変位可能である。
【0054】
<第1コネクタ14と第2コネクタ18の接続>
第2車載機器16の第2ケース100から第2窓部104を通じて前方へ延び出した第2端子金具92の前端部分は、第1コネクタハウジング22の挿通窓76に挿通される。第1コネクタハウジング22の内部へ挿入された第2端子金具92の第2電気接触部96は、図2図4に示すように、板ばねクリップ44の上側の平板部46と第1端子金具20の第1電気接触部26との上下間に挿し入れられる。そして、第1電気接触部26と第2電気接触部96は板ばねクリップ44の弾性によって相互に押し当てられた状態に保持される。言い換えると、第1電気接触部26と第2電気接触部96とは、板ばねクリップ44の弾性によって接触している状態に保持される。詳しくは、上下方向に接触している状態の第1電気接触部26と第2電気接触部96とは、一対の平板部46によって、上下方向に挟持される。より詳しくは、図5に示すように、上下方向に接触している状態の第1電気接触部26と第2電気接触部96とは、一対の平板部46の挟持突部50によって、上下方向に挟持される。これにより、第1端子金具20と第2端子金具92は導通状態で接続される。これにより、第1車載機器12と第2車載機器16は第1コネクタ14と第2コネクタ18からなるコネクタ装置10によって電気的に接続される。
【0055】
また、上記のように保持された第1電気接触部26と第2電気接触部96との間の保持力は、第1伸縮部34の弾性変形に必要な力よりも大きく設定されている。言い換えると、互いに組み付けられた状態の第1車載機器12と第2車載機器16とが振動等によって相対的に変位した際、第1電気接触部26と第2電気接触部96とが前後方向に相対的にずれるよりも先に第1伸縮部34が弾性変形するように設定されている。第1電気接触部26と第2電気接触部96との間の保持力は、第1端子金具20の長さ方向と交差する方向に接触している部材同士の摩擦力を含んでいる。詳しくは、第1電気接触部26と第2電気接触部96との間の保持力は、第1電気接触部26と第2電気接触部96との摩擦力と、第1電気接触部26と下側の平板部46との摩擦力と、第2電気接触部96と上側の平板部46との摩擦力とを含んでいる。なお、図4では、第1コネクタハウジング22の第2部材56が第1部材54から外された状態で、一方の第1,第2端子金具20,92が接続されている。また、図4において、他方の第1,第2端子金具20,92と板ばねクリップ44は、分解状態で示されている。
【0056】
板ばねクリップ44の後端面は、ガイド片52と挟持突部50によって構成されている。板ばねクリップ44の後端面は、後方へ向けて上下方向に拡開する傾斜面とされている。これにより、第2端子金具92が板ばねクリップ44に対して後方から接触すると、板ばねクリップ44に当接反力の分力が上向きに作用し、上側の平板部46が第1端子金具20の第1電気接触部26に対して上方へ移動する。その結果、板ばねクリップ44の上側の平板部46と第1電気接触部26との間に隙間が形成されて、当該隙間へ第2端子金具92の第2電気接触部96を挿入することができる。
【0057】
第1コネクタ14が設けられた第1車載機器12と第2コネクタ18が設けられた第2車載機器16が接続される際に、第1車載機器12と第2車載機器16の間に寸法誤差などによる位置のずれが生じる場合、当該位置のずれがコネクタ装置10によって許容される。
【0058】
すなわち、第1車載機器12と第2車載機器16の位置が上下方向でずれている場合には、第1コネクタ14における第1端子金具20が第1伸縮部34において弾性変形することにより、第1電気接触部26と第2電気接触部96の接続が可能になる位置まで、第1電気接触部26が第1機器側接続部24に対して上下方向で相対的に移動する。なお、第1端子金具20の機器側部分36と接触側部分38の少なくとも一方が厚さ方向に撓み変形することによっても、上下方向の位置ずれが許容される。更に、第2端子金具92がバスバーとされていることから、第2端子金具92が厚さ方向に撓み変形することによっても、第1車載機器12と第2車載機器16の上下方向の位置ずれが許容される。
【0059】
また、第1車載機器12と第2車載機器16の相対位置が前後方向でずれている場合には、第1端子金具20が第1伸縮部34において弾性変形することにより、第1機器側接続部24と第1電気接触部26の前後方向の距離が変化して、第1車載機器12と第2車載機器16の前後方向の位置ずれが許容される。また、第2端子金具92が前後方向に延びており、第1コネクタ14に対して前後方向で挿入されていることから、第2端子金具92の第1コネクタ14への挿入量が変化することによっても、第1車載機器12と第2車載機器16の前後方向の位置ずれが許容される。
【0060】
また、第2端子金具92の第2電気接触部96が平板状とされていることにより、第1車載機器12と第2車載機器16の位置が左右方向でずれたとしても、第1電気接触部26と第2電気接触部96が第2電気接触部96の幅によって接続可能とされる。
【0061】
例えば、図6に示すように、第1電気接触部26と第2電気接触部96とは、互いの左右方向の中心位置がずれている場合でも、接続状態が維持される。
また、第1車載機器12と第2車載機器16が前後方向に延びる中心軸回りで周方向に傾斜している場合には、第1電気接触部26の接点部30がドーム状とされていることから、第2電気接触部96が接点部30に対して接触可能とされて、第1電気接触部26と第2電気接触部96が接続可能とされる。例えば、図7に示すように、第2電気接触部96は、第1電気接触部26に対して前後方向に延びる中心軸回りで傾斜している場合でも、第1電気接触部26の接点部30との接続状態が維持される。本実施形態では、板ばねクリップ44の挟持突部50が円弧状断面を有していることから、第1電気接触部26又は第2電気接触部96と板ばねクリップ44との傾斜が許容されており、それによっても、第1電気接触部26と第2電気接触部96を前後方向に延びる中心軸回りで傾斜した接触状態とすることができる。
【0062】
このように、コネクタ装置10によれば、第1コネクタ14の第1端子金具20がバスバーとされていることによって、第1車載機器12と第2車載機器16の車両装着状態での相対位置のずれが、第1端子金具20の変形等によって許容される。また、本実施形態では、第2コネクタ18の第2端子金具92もバスバーとされていることによって、第1車載機器12と第2車載機器16の車両装着状態での相対位置のずれが、第2端子金具92の変形等によっても許容される。しかも、上述のように、接点部30や板ばねクリップ44の挟持突部50等によって、第1車載機器12と第2車載機器16の相対的な位置ずれが、ねじれ等も含むより大きな自由度で許容される。それゆえ、位置ずれに伴う応力の継続的な作用によるコネクタ装置10や第1車載機器12、第2車載機器16等の損傷、第1コネクタ14と第2コネクタ18の接続不良などが防止される。
【0063】
コネクタ装置10が第1車載機器12と第2車載機器16の相対的な変位を許容することから、車両の走行による振動等が第1車載機器12と第2車載機器16の間へ入力される際にも、第1車載機器12と第2車載機器16の相対的な変位がコネクタ装置10によって許容される。それゆえ、走行時の入力によるコネクタ装置10や第1車載機器12、第2車載機器16の損傷等が回避される。特に、第1伸縮部34を備える本実施形態の構造では、第1伸縮部34の変形によって、第1車載機器12と第2車載機器16の相対変位をより許容し易く、振動入力に対する追従性の向上が図られ得る。
【0064】
第1端子金具20の第1電気接触部26と第2端子金具92の第2電気接触部96とを接触状態に保持する板ばねクリップ44は、第1コネクタハウジング22の内部において変位可能とされている。これにより、第1機器側接続部24と第1電気接触部26の相対変位および第2機器側接続部94と第2電気接触部96の相対変位が、板ばねクリップ44によって阻害されることなく許容される。それゆえ、第1車載機器12と第2車載機器16の位置ずれや振動入力に伴う相対変位を、コネクタ装置10によって有効に許容することができる。また、板ばねクリップ44を第1コネクタハウジング22内に隙間をもって配する簡単な構造によって、第1電気接触部26と第2電気接触部96の接触状態を安定して維持しながら、それら第1電気接触部26と第2電気接触部96の相対変位を許容することができる。
【0065】
次に、上記実施形態の効果について補足する。
第1電気接触部26は、第1機器側接続部24に対して相対的に変位可能である。
例えば、図8に示すように、第1端子金具20は、第1伸縮部34の4か所の屈曲部分40の角度が弾性変形によって変化可能とされている。これにより、第1電気接触部26は、第1機器側接続部24に対して前後方向に相対的に変位可能とされている。
【0066】
また、例えば、図9及び図10に示すように、第1端子金具20は、第1伸縮部34と接触側部分38との境目にある屈曲部分40の角度が弾性変形によって変化可能とされている。なお、図9及び図10では、第1伸縮部34と接触側部分38との境目にある屈曲部分40のみが弾性変形する様子を模式的に図示している。これにより、第1電気接触部26は、第1機器側接続部24に対して上下方向に相対的に変位可能とされている。
【0067】
また、第1端子金具20は、左右方向から見て、直線状の各部位が弾性変形によって湾曲形状に撓むことが可能とされている。
第1電気接触部26は、上記した各弾性変形が組み合わさることで、第1機器側接続部24に対して前後方向及び上下方向に相対的に変位可能とされている。
【0068】
また、第2端子金具92は、左右方向から見て、弾性変形によって湾曲形状に撓むことが可能とされている。よって、第2電気接触部96は、第2機器側接続部94に対して上下方向に相対的に変位可能とされている。
【0069】
よって、第1車載機器12と第2車載機器16の位置が前後方向にずれている場合や上下方向にずれている場合や前後方向にずれつつ上下方向にずれている場合でも第1電気接触部26と第2電気接触部96とを良好に接続することができる。また、第1電気接触部26と第1伸縮部34と第1機器側接続部24とは単一部品によって構成されている。また、第2端子金具92は単一部品によって構成されている。なお、ここで言う単一部品は、複数の部材を接合してなるものを除く。よって、編組線等を含む複数の部材を接合して端子金具を構成した従来構造に比して、部品点数の削減や構造の簡素化を有利に図ることができる。
【0070】
また、第1電気接触部26と第2電気接触部96との間の保持力は、第1伸縮部34の弾性変形に必要な力よりも大きく設定されている。よって、例えば、車両の走行による振動等によって第1車載機器12と第2車載機器16とが相対的に変位した際に、第1電気接触部26と第2電気接触部96とが前後方向に相対的にずれるよりも先に第1伸縮部34が弾性変形する。よって、第1電気接触部26と第2電気接触部96とが摩耗してしまうことが抑えられる。なお、本実施形態では、第1電気接触部26と第2電気接触部96との間の保持力は、第1端子金具20の長さ方向と交差する方向に接触している部材同士の摩擦力を利用しているため、例えば、摩擦力以外の力を生じさせる特別な構造が不要となる。よって、第1端子金具20や第2端子金具92を特別な構造とする設計や加工が不要となる。
【0071】
第1端子金具20は第2端子金具92よりも厚さが薄いため、第1伸縮部34が弾性変形し易い。また、第2端子金具92は、第1端子金具20よりも厚さが厚いため、曲がり難い。特に、本実施形態の第2電気接触部96は、第2車載機器16の外部に突出しているため、第1電気接触部26と接続する前の状態で他の部材に衝突してしまう虞があるが、第2端子金具92は第1端子金具20よりも厚いため曲がってしまうことが抑えられる。
【0072】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0073】
(1)第1端子金具20に複数の第1伸縮部34を設けてもよい。また、第1端子金具20において第1伸縮部34はなくてもよい。第1伸縮部は、例えば、機器側部分36と接触側部分38をつなぐ1つの縦壁によって構成することもできる。この場合に、例えば、第1端子金具はクランク状(段差状)とされ、第1端子金具の初期形状において、第1機器側接続部24と第1電気接触部26が上下方向においてずれていてもよい。
【0074】
(2)第2端子金具92に第1端子金具20の第1伸縮部34と同様の第2伸縮部が設けられて、第2端子金具92が第2機器側接続部94と第2電気接触部96の離隔方向で伸縮可能な構造とされていてもよい。なお、第2伸縮部を設ける場合には、第1伸縮部34と同様に、各種の形状が採用され得る。また、第2端子金具92に複数の第2伸縮部を設けることもできる。
【0075】
(3)第1端子金具20は、幅寸法や厚さ寸法が途中で変化していてもよい。例えば、第1端子金具20において、第1伸縮部34の幅寸法を機器側部分36および接触側部分38よりも小さくして、第1伸縮部34の変形剛性を小さくすることもできる。また、例えば、第1端子金具20に位置決め片42のような部分的な突出部分、或いは側面に開口する部分的な凹部が設けられて、突出部分や凹部を利用して第1端子金具20が第1コネクタハウジング22に位置決めされるようにもできる。上述のような端子金具の断面形状の変化は、第1端子金具20だけでなく、第2端子金具92においても許容される。
【0076】
(4)弾性部材は、前記実施形態に示した板ばねクリップ44に限定されない。例えば、重ね合わされた第1電気接触部26と第2電気接触部96を上下方向の接近側へそれぞれ付勢する上下のコイルスプリングを設けて、それらコイルスプリングの弾性によって第1電気接触部26と第2電気接触部96を接触状態に保持することもできる。この場合には、弾性部材が上下のコイルスプリングを含んで構成される。
【0077】
(5)弾性部材は必須ではなく、例えば、第1電気接触部26と第2電気接触部96の何れか一方がオス端子とされ、何れか他方がメス端子とされて、それらオス端子とメス端子の嵌め合わせによって第1,第2電気接触部26,96が接続される構造であれば、別部品の弾性部材を設ける必要はない。
【0078】
(6)前記実施形態では、第2コネクタ18が2つの第2端子金具92,92によって構成されていたが、第2コネクタは、第2端子金具92,92が中空構造の第2コネクタハウジングに収容された構造であってもよい。第2コネクタハウジングを設けることによって、2つの第2端子金具92,92を第2コネクタとして一体的に取り扱い易くなる。
【0079】
(7)第1コネクタ14の第1コネクタハウジング22は、前記実施形態のように少なくとも一部が第1ケース84に収容されていてもよいし、全体が第1車載機器12の第1ケース84外に配されていてもよい。
【0080】
(8)前記実施形態では、第1電気接触部26と第2電気接触部96との間の保持力は、第1端子金具20の長さ方向と交差する方向に接触している部材同士の摩擦力を利用しているとしたが、摩擦力以外の力を含んでいてもよい。
【0081】
例えば、図11及び図12に示すように、第1電気接触部26と第2電気接触部96の形状を変更して、第1電気接触部26と第2電気接触部96との間の保持力を設定してもよい。この例では、第1電気接触部26は嵌合部110を有し、第2電気接触部96は被嵌合部112を有する。
【0082】
嵌合部110は、第1電気接触部26の上面に設けられた凸部である。嵌合部110は、第1電気接触部26の左右方向、すなわち幅方向の全体に形成されている。嵌合部110は、第1電気接触部26の幅方向から見て円弧形状である。嵌合部110は、第1電気接触部26を部分的に上方へ向けて凸となるようにプレス加工することによって形成されている。よって、第1電気接触部26は、嵌合部110と対応した下面に凹部114を有している。
【0083】
被嵌合部112は、第2電気接触部96の下面に設けられた凹部である。被嵌合部112は、第2電気接触部96において左右方向、すなわち幅方向の全体に形成されている。被嵌合部112は、第2電気接触部96を部分的に上方へ向けて凸となるようにプレス加工することによって形成されている。よって、第2電気接触部96は、被嵌合部112と対応した上面に凸部116を有している。
【0084】
嵌合部110は、被嵌合部112に対して第1端子金具20の長さ方向と交差する方向である上方に嵌まる。これにより、第1電気接触部26と第2電気接触部96との間の保持力は、第1端子金具20の長さ方向に係合する嵌合部110と被嵌合部112との係合力を含んでいる。そして、嵌合部110と被嵌合部112との係合力を含んだ第1電気接触部26と第2電気接触部96との間の保持力は、第1伸縮部34の弾性変形に必要な力よりも大きく設定されている。
【0085】
このようにしても、例えば、車両の走行による振動等によって第1車載機器12と第2車載機器16とが相対的に変位した際に、第1電気接触部26と第2電気接触部96とが前後方向に相対的にずれるよりも先に第1伸縮部34が弾性変形する。よって、第1電気接触部26と第2電気接触部96とが摩耗してしまうことが抑えられる。また、この例では、第1端子金具20の長さ方向に係合する嵌合部110と被嵌合部112との係合力を利用して第1電気接触部26と第2電気接触部96との間の保持力を、第1伸縮部34の弾性変形に必要な力よりも大きく設定することができる。よって、嵌合部110と被嵌合部112との係合力を利用しない場合の例えば上記実施形態に比べて、第1電気接触部26と第2電気接触部96との間の保持力を安定して大きく設定することができる。
【0086】
(9)前記実施形態では、第1ケース84と第2ケース100とは前後方向に離れて配置される構成としたが、これに限定されず、第1ケース84と第2ケース100とは前後方向に近接して配置される構成としてもよい。
【0087】
例えば、図13に示すように、第1ケース120は、第1コネクタハウジング22の全体を収容する構成としてもよい。
また、例えば、図14に示すように、第2ケース122は、第2電気接触部96の略全体を収容するとともに、第1コネクタハウジング22の後側部分を収容可能な構成としてもよい。
【0088】
これらのようにすると、コネクタ装置10の露出を防ぐことができる。
以下に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)バスバーによって構成されており、一端側に設けられて第1車載機器の端子部に接続される第1機器側接続部と、他端側に設けられて相手方電気接触部と接続する第1電気接触部と、を有する第1端子金具と、前記第1端子金具を収容する第1コネクタハウジングと、を備え、前記第1電気接触部は、変位可能に前記第1コネクタハウジング内に収容されている、コネクタである。
【0089】
本開示のコネクタによれば、第1端子金具が単一部品であるバスバーによって構成されている。さらに、第1電気接触部を変位可能に第1コネクタハウジング内に収容するという簡素な構造により、第1電気接触部の変位を利用して相手方電気接触部との位置ずれを吸収することができる。それゆえ、編組線等を含む複数の部材を接合して端子金具を構成する必要があり、電気接触部を支持する支持部材や支持部材をコネクタハウジング内に変位可能に保持する機構が必要であった従来構造に比して、部品点数の削減や構造の簡素化を有利に図ることができる。
【0090】
(2)前記第1端子金具は、前記第1機器側接続部と前記第1電気接触部の間の部位を板厚方向に屈曲されてなり、前記第1機器側接続部と前記第1電気接触部の離隔方向に伸縮可能な第1伸縮部を有し、前記第1伸縮部は、伸縮可能に前記第1コネクタハウジング内に収容されている、ことが好ましい。第1端子金具の長さ方向の中間領域に伸縮可能な第1伸縮部を有していることから、第1電気接触部と相手方電気接触部の位置ずれを、一層有利に吸収することができる。しかも、第1伸縮部は、バスバーによって構成された第1端子金具を板厚方向に屈曲することにより容易に設けることができ、部品点数の増加なく構成することができる。さらに、第1伸縮部が伸縮可能に第1コネクタハウジング内に収容されることで、第1伸縮部の伸縮が第1コネクタハウジングによって制限されることも阻止されている。
【0091】
(3)前記第1電気接触部を前記相手方電気接触部に接触状態に保持する弾性部材を備え、前記弾性部材は、前記第1電気接触部の変位に伴って変位可能な状態で前記第1コネクタハウジング内に収容されている、ことが好ましい。バスバーにより構成された平板状の第1電気接触部を相手方電気接触部に対して接触状態に保持する弾性部材を備えることにより、両電気接触部間の導通安定性を一層確実に保持することができる。さらに、弾性部材が第1電気接触部の変位に伴って変位可能な状態で第1コネクタハウジング内に収容されていることから、弾性部材により第1電気接触部の変位による位置ずれ吸収機能が阻害されることも有利に阻止されている。
【0092】
(4)上記(3)において、前記弾性部材が、相互に隙間を隔てて対向配置された一対の平板部と、前記一対の平板部の第1側縁部同士を連結する連結板部とを有する板ばねクリップによって構成されており、前記板ばねクリップは、前記一対の平板部間に前記第1電気接触部が挿し入れられて、前記一対の平板部の一方が前記第1電気接触部の底面に重ね合された状態で、前記第1電気接触部に組み付けられており、前記相手方電気接触部が前記一対の平板部の間へ挿し入れられて前記第1電気接触部に重ね合わされるようになっている、ことが好ましい。これにより、板ばねクリップを利用して弾性部材を設けることができる。しかも、板ばねクリップを第1電気接触部に組み付けるだけで、弾性部材を第1電気接触部の変位に伴って変位可能な状態で第1コネクタハウジング内に収容する構造を構築することができる。それゆえ、コネクタの一層の構造の簡素化を図ることができる。
【0093】
(5)前記第1電気接触部は、前記相手方電気接触部に向かってドーム状に突出する接点部を有している、ことが好ましい。第1電気接触部に設けられた接点部がドーム状であることから、第1電気接触部に重ね合される相手方電気接触部がローリング等のねじれ変位を起こしても、両電気接触部間の接触状態を安定して保持することができる。
【0094】
本開示のコネクタ装置は、
(6)第1車載機器に設けられた第1コネクタと、第2車載機器に設けられて前記第1コネクタに接続される第2コネクタと、を含むコネクタ装置であって、前記第1コネクタが、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載のコネクタによって構成されている、コネクタ装置である。
【0095】
本開示のコネクタ装置によれば、第1コネクタが本開示の(1)~(5)のいずれかに記載のコネクタによって構成されていることから、第1コネクタと第2コネクタの位置ずれを吸収して両コネクタの接続を確実に行うことができ、本開示のコネクタによる上述の作用効果を同様に享受し得る。
【0096】
(7)上記(6)において、前記第2コネクタがバスバーによって構成された第2端子金具を有し、前記第2端子金具が、一端側に設けられて前記第2車載機器の端子部に接続される第2機器側接続部と、他端側に設けられて前記第1電気接触部と接続する第2電気接触部と、を有しており、前記第2電気接触部は、前記第2車載機器の筐体に設けられた挿通孔から変位可能な状態で外部に突出している、ことが好ましい。第2コネクタの第2端子金具もバスバーによって構成され、第2電気接触部が変位可能な状態で第2車載機器から外部に突出していることから、第1コネクタと第2コネクタの嵌合時に、第1,第2電気接触部の両方の変位を利用して、第1コネクタと第2コネクタのそれぞれの電気接触部間の位置ずれを一層有利に吸収して、両電気接触部間の接続を安定して実現することができる。しかも、第2端子金具も単一部品であるバスバーにより構成されていることから、コネクタ装置における部品点数の削減や構造の簡素化も一層有利に図ることができる。
【符号の説明】
【0097】
10 コネクタ装置
12 第1車載機器
14 第1コネクタ(コネクタ)
16 第2車載機器
18 第2コネクタ
20 第1端子金具
22 第1コネクタハウジング
24 第1機器側接続部
26 第1電気接触部
28 第1ボルト穴
30 接点部
32 案内部
34 第1伸縮部
36 機器側部分
38 接触側部分
40 屈曲部分
42 位置決め片
44 板ばねクリップ(弾性部材)
46 平板部
48 連結板部
50 挟持突部
52 ガイド片
54 第1部材
56 第2部材
58 周壁
60 仕切壁部
62 第1収容凹所
64 位置決め凸部
66 端子受部
67 突出部
68 機器側挿通部
70 第2収容凹所
72 第1位置規定部
74 第2位置規定部
76 挿通窓
77 第3位置規定部
78 係止爪
80 係止片
82 爪挿通孔
84 第1ケース
86 第1接続端子(第1端子部)
88 第1窓部
90 第1ボルト
92 第2端子金具
94 第2機器側接続部
96 第2電気接触部(相手方電気接触部)
98 第2ボルト穴
100 第2ケース(筐体)
102 第2接続端子(第2端子部)
104 第2窓部(挿通孔)
106 第2ボルト
110 嵌合部
112 被嵌合部
114 凹部
116 凸部
120 第1ケース
122 第2ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14