IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-電力変換装置 図1
  • 特許-電力変換装置 図2
  • 特許-電力変換装置 図3
  • 特許-電力変換装置 図4
  • 特許-電力変換装置 図5
  • 特許-電力変換装置 図6
  • 特許-電力変換装置 図7
  • 特許-電力変換装置 図8
  • 特許-電力変換装置 図9
  • 特許-電力変換装置 図10
  • 特許-電力変換装置 図11
  • 特許-電力変換装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240903BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M3/155 Y
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021147825
(22)【出願日】2021-09-10
(65)【公開番号】P2023040700
(43)【公開日】2023-03-23
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】福田 好秀
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-303285(JP,A)
【文献】特開2015-089179(JP,A)
【文献】国際公開第2013/001591(WO,A1)
【文献】特開2016-139644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0125440(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を受け入れる受熱面(610a)を有する放熱部材(600)と、
前記受熱面と対向する第1表面(300b,341a)、および、前記第1表面よりも前記受熱面との平行度が低い第2表面(300c,342e)を有する電気部品(300,340,700)と、
前記電気部品と前記受熱面との間に設けられ、前記第1表面および前記受熱面に接触する、前記放熱部材とは異なる材質の第1部材(810)と、
前記電気部品と前記受熱面との間に設けられ、前記第2表面および前記受熱面に接触する、前記第1部材よりも粘度が低い第2部材(820)と、を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記第2表面は複数の第2表面部分(342c,342d)を備え、
前記第1表面が複数の前記第2表面部分の間に配置され、
前記第2部材が複数の前記第2表面部分と前記受熱面とに接触している請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1部材と前記第2部材とが接触している請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1部材の硬さが前記第2部材の硬さよりも硬い請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記放熱部材は前記第2部材が前記受熱面に沿って拡がることを抑制するための突起部(630)を備える請求項1~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電気部品はインダクタ(340)である請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電気部品は前記インダクタを収納するとともに、前記第2部材が前記受熱面に沿って拡がることを抑制するための突起部(740)を有するインダクタケース(700)を備える請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記放熱部材は連結部材(900)を受け入れる基台部(620)を備え、
前記インダクタケースは、前記インダクタを収納する収納部(710)、および、前記基台部に前記連結部材を介して連結される連結部(720)を備える請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記電気部品は電源(200)と負荷(400)とを接続するバスバ(300)であり、
前記バスバの表面(300a)には、前記バスバが屈曲していることにより前記第1表面と前記第2表面が区画されている請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記放熱部材は前記第1表面に向かって隆起する隆起部(640)を備え、
前記第1表面と前記隆起部との間に前記第1部材が設けられ、
前記第2表面と前記隆起部との間に前記第2部材が設けられている請求項9に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、放熱部材を有する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気素子と、放熱板と、放熱シートと、を備える電気部品が記載されている。放熱板に電気素子が配置されている。電気素子と放熱板の間に放熱シートが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-139644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気素子は、放熱板との平行度が低い低平行度面を有する。低平行度面は、放熱シートとの接触が困難である。この結果、電気素子は、低平行度面からの放熱が困難であった。
【0005】
そこで本開示の目的は、電気部品における、放熱部材との平行度の高い面と放熱部材との低い面の両方から部材を介して放熱部材に放熱可能になった電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による電力変換装置は、
熱を受け入れる受熱面(610a)を有する放熱部材(600)と、
受熱面と対向する第1表面(300b,341a)、および、第1表面よりも受熱面との平行度が低い第2表面(300c,342e)を有する電気部品(300,340,700)と、
電気部品と受熱面との間に設けられ、第1表面および受熱面に接触する、放熱部材とは異なる材質の第1部材(810)と、
電気部品と受熱面との間に設けられ、第2表面および受熱面に接触する、第1部材よりも粘度が低い第2部材(820)と、を備える。
【0007】
これによれば、第1部材(810)と第2部材(820)を介して、第1表面(300b,341a)と第2表面(300c,342e)の両方から電気部品(300,340,700)の熱を放熱部材(600)に放熱可能である。
【0008】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電力変換装置を含む車載システムの回路図である。
図2】第1実施形態の平面図である。
図3図2からインダクタケースを除いた平面図である。
図4図2のIV-IV線における断面図である。
図5】比較例を示す断面図である。
図6】他の比較例を示す断面図である。
図7】第2実施形態の断面図である。
図8】第3実施形態の平面図である。
図9】第4実施形態の断面図である。
図10】第5実施形態の側面図である。
図11】第5実施形態の側面図である。
図12】第6実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。複数の実施形態において、同一、または、対応する構成には、同一の参照符号を付す場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を参照することができる。
【0011】
また、各実施形態で組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
図1において車載システム10は電力変換装置100を備える。車載システム10は電気自動車用のシステムを構成している。車載システム10は電力変換装置100、バッテリ200、モータ400、補機バッテリ1000、補機1100、および、図示しない複数のECUを有する。電力変換装置100はコンバータ310、インバータ320、および、DCDCコンバータ500を有する。コンバータ310とインバータ320を併せて電力変換部330と示す。なお図面においては補機1100を「ACC」と略記して示している。バッテリ200は電源に相当する。モータ400は負荷に相当する。
【0013】
上記した複数のECUはバス配線を介して相互に信号を送受信している。複数のECUは協調して電気自動車を制御している。複数のECUの制御により、バッテリ200のSOCに応じたモータ400の回生と力行が制御される。SOCはstate of chargeの略である。ECUはelectronic control unitの略である。
【0014】
バッテリ200は複数の二次電池を有する。これら複数の二次電池は直列接続された電池スタックを構成している。この電池スタックのSOCがバッテリ200のSOCに相当する。二次電池としてはリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、および、有機ラジカル電池などを採用することができる。
【0015】
電力変換部330はバッテリ200とモータ400との間の電力変換を行う。電力変換部330はバッテリ200の直流電力をモータ400の力行に適した電圧レベルの交流電力に変換する。電力変換部330はモータ400の発電(回生)によって生成された交流電力をバッテリ200の充電に適した電圧レベルの直流電力に変換する。
【0016】
またバッテリ200の直流電力はDCDCコンバータ500を介して低圧の直流電力に変換される。この低圧の直流電力が補機バッテリ1000に充電される。補機バッテリ1000から車両のパワーステアリング装置、投光装置、各種電子制御ユニット等の補機1100へハーネス307を介して低圧の直流電力が供給される。
【0017】
モータ400は図示しない電気自動車の出力軸に連結されている。モータ400の回転エネルギーは出力軸を介して電気自動車の走行輪に伝達される。逆に、走行輪の回転エネルギーは出力軸を介してモータ400に伝達される。
【0018】
モータ400は電力変換部330から供給される交流電力によって力行する。これにより走行輪への推進力の付与が成される。またモータ400は走行輪から伝達される回転エネルギーによって回生する。この回生によって発生した交流電力は、電力変換部330によって直流電力に変換されるとともに降圧される。この直流電力がバッテリ200に供給される。
【0019】
<電力変換部>
電力変換部330はコンバータ310とインバータ320を備えている。コンバータ310とバッテリ200とは、第1給電バスバ301と第2給電バスバ302とを介して電気的に接続されている。インバータ320とコンバータ310とは、第2給電バスバ302と第3給電バスバ303とを介して電気的に接続されている。
【0020】
図1に示すようにコンバータ310はインダクタ340、第1コンデンサ350、および、第1ハイサイドスイッチ311と第1ローサイドスイッチ312から成るA相レグ313を有している。第1ハイサイドスイッチ311に第1ハイサイドダイオード311aが逆並列接続されている。第1ローサイドスイッチ312に第1ローサイドダイオード312aが逆並列接続されている。
【0021】
第1コンデンサ350は第1給電バスバ301と第2給電バスバ302に接続されている。A相レグ313は第3給電バスバ303と第2給電バスバ302に接続されている。第1ハイサイドスイッチ311と第1ローサイドスイッチ312が第3給電バスバ303と第2給電バスバ302の間で直列接続されている。インダクタ340が第1ハイサイドスイッチ311と第2ハイサイドスイッチ321の間と第1コンデンサ350との間に連結バスバ304を介して接続されている。
【0022】
第1ハイサイドスイッチ311と第1ローサイドスイッチ312は上記したECUによって開閉制御される。これによりECUはコンバータ310に入力される直流電力の電圧レベルを昇降圧している。
【0023】
インバータ320は第2コンデンサ360とU相レグ323~W相レグ325を有している。U相レグ323~W相レグ325は第2ハイサイドスイッチ321と第2ローサイドスイッチ322それぞれを有している。U相レグ323~W相レグ325の第2ハイサイドスイッチ321に第2ハイサイドダイオード321aが逆並列接続されている。U相レグ323~W相レグ325の第2ローサイドスイッチ322に第2ローサイドダイオード322aが逆並列接続されている。
【0024】
第2コンデンサ360は第3給電バスバ303と第2給電バスバ302に接続されている。U相レグ323~W相レグ325それぞれは第3給電バスバ303と第2給電バスバ302に接続されている。第2ハイサイドスイッチ321と第2ローサイドスイッチ322は第3給電バスバ303と第2給電バスバ302の間で直列接続されている。
【0025】
U相レグ323が備える第2ハイサイドスイッチ321と第2ローサイドスイッチ322との間にU相バスバ361が接続されている。U相バスバ361がモータ400のU相ステータコイルに接続されている。
【0026】
V相レグ324が備える第2ハイサイドスイッチ321と第2ローサイドスイッチ322との間にV相バスバ362が接続されている。V相バスバ362がモータ400のV相ステータコイルに接続されている。
【0027】
W相レグ325が備える第2ハイサイドスイッチ321と第2ローサイドスイッチ322の間にW相バスバ363が接続されている。W相バスバ363がモータ400のW相ステータコイルに接続されている。
【0028】
またU相レグ323~W相レグ325が備える第2ハイサイドスイッチ321と第2ローサイドスイッチ322それぞれのゲート電極にECUの制御信号が入力されている。これによりECUはコンバータ310に入力された直流電力をモータ400の力行に適した電圧レベルの交流電力に変換する。
【0029】
このようにしてコンバータ310およびインバータ320それぞれは電力変換を行っている。そのためにコンバータ310およびインバータ320は発熱しやすい。コンバータ310に含まれるインダクタ340が発熱しやすい。
【0030】
<DCDCコンバータ>
DCDCコンバータ500は第5給電バスバ305と第6給電バスバ306を介してバッテリ200と並列接続されている。上記したようにDCDCコンバータ500はハーネス307を介して補機バッテリ1000に接続されている。
【0031】
DCDCコンバータ500はトランス510、および、図示しないスイッチ素子やコンデンサなど複数の電気部品を有している。DCDCコンバータ500はこれら複数の電気部品によってバッテリ200の電圧を降圧する。なお、図面においてはトランス510を「TR」と略記して示している。
【0032】
降圧されたバッテリ200の直流電力が補機バッテリ1000に供給される。補機バッテリ1000に、降圧された低圧の直流電力が充電される。補機バッテリ1000から補機1100へ低圧の直流電力が供給されている。
【0033】
このようにしてDCDCコンバータ500は直流電力を降圧する機能を有している。そのためにDCDCコンバータ500は発熱しやすい。DCDCコンバータ500に含まれるトランス510が発熱しやすい。
【0034】
<電力変換装置の構成要素>
以下において直交の関係にある3方向をx方向、y方向、z方向とする。なお図面において「方向」の記載を省略している。
【0035】
図2図4においては電力変換装置100に含まれる機械的構成要素が図示されている。電力変換装置100は、放熱部材600、インダクタケース700、第1部材810、および、第2部材820を有する。インダクタケース700にインダクタ340が収納されている。インダクタ340はコア343とコア343の周りに巻かれたコイル344を有する。コイル344はy軸を中心にコア343を囲むように巻かれている。
【0036】
放熱部材600は電力変換装置100の構成要素を固定するとともにこれらの構成要素の熱を放熱する機能を有している。放熱部材600はインダクタ340を固定するとともに、熱を放熱する機能を有している。放熱部材600としては例えば金属製のケースなどが挙げられる。他の一例として金属製の放熱フィンなどが挙げられる。
【0037】
インダクタケース700はインダクタ340を収納するとともに、インダクタ340を放熱部材600に固定するための樹脂製のケースである。インダクタケース700はインダクタ340を収納する収納部710と、後述の基台部620に連結部材900を介して連結される連結部720を有している。連結部720は収納部710から離間するように延びている。
【0038】
第1部材810は電気部品を放熱部材600に固定するとともに電気部品の熱を放熱させるための放熱シートである。例えば第1部材810はインダクタ340を放熱部材600に固定するとともにインダクタ340の熱を放熱させる。第1部材810は例えばゴムやシリコーンを含む部材から構成されている。
【0039】
第1部材810の粘度は第2部材820の粘度よりも高い。第1部材810の硬さは第2部材820の硬さよりも硬い。第1部材810の流動性は第2部材820の流動性よりも低い。第1部材810の材質と第2部材820の材質とが異なる。第1部材810の熱伝導性と第2部材820の熱伝導性はほとんど等しい。第1部材810は第2部材820よりも変形しにくい。第1部材810に外力が加えられると第1部材810は塑性変形もしくは弾性変形する。
【0040】
第2部材820は電気部品を放熱部材600に固定するとともに電気部品の熱を放熱させるための放熱ゲルである。例えば第2部材820はインダクタ340を放熱部材600に固定するとともにインダクタ340の熱を放熱させる。第2部材820は例えばシリコーンゲルやシリコーングリスを含む部材から構成されている。第2部材820には酸化アルミやグラフェンなどが含まれていても良い。なお、第2部材820はゲルでなくともよい。第2部材820はグリスであってもよい。
【0041】
第2部材820の粘度は第1部材810の粘度よりも低い。さらに第2部材820の硬さは第1部材810の硬さよりも柔らかい。第2部材820の流動性は第1部材810の流動性よりも高い。第2部材820は第1部材810よりも変形しやすい。第2部材820は弾性変形可能になっている。
【0042】
<放熱部材とインダクタ>
図2図4に示すように、放熱部材600はインダクタケース700を配置するとともにインダクタ340の熱を受熱する受熱面610aを有する配置部610を備えている。受熱面610aにはインダクタケース700の連結部720に連結される複数の基台部620が形成されている。基台部620は受熱面610aから遠ざかるように延びている。
【0043】
図2図4に示すように連結部720と基台部620とが連結部材900を介して互いに連結されている。これによってインダクタケース700が放熱部材600に固定されている。
【0044】
上記したようにインダクタケース700はインダクタ340を収納するとともに、インダクタ340を放熱部材600に固定するための樹脂製のケースである。インダクタケース700はインダクタ340の一部が露出する開口を有している。インダクタ340の一部が開口を通って収納部710から配置部610に向かって露出している。インダクタケース700が放熱部材600に固定された状態において、インダクタ340と配置部610とがz方向で離間している。
【0045】
上記したようにコイル344はy軸を中心にコア343を囲むように巻かれている。コア343におけるコイル344が巻かれている部位は略直方体形状を成している。コイル344と受熱面610aとの離間距離は、コア343の中心付近で短く、コア343の端側で長い。インダクタ340と受熱面610aとの離間距離が、インダクタ340の中心付近で短く、インダクタ340の端側で長い。
【0046】
以下説明を簡便とするために、インダクタ340におけるx方向に離間する2つの端の部位をそれぞれ端部342と示す。インダクタ340における2つの端部342の間に設けられた部位を中央部341と示す。なお、図面においては中央部341と端部342の境界を破線で示している。端部342と受熱面610aとの離間距離は、中央部341と受熱面610aとの離間距離よりも長い。
【0047】
なお、インダクタケース700がインダクタ340の外形に沿うようにしてインダクタ340を覆っていてもよい。その場合、インダクタケース700が中央部341と端部342を有する。この場合の中央部341とは上記したインダクタ340の中央部341を覆う部位のことである。端部342とは上記したインダクタ340の端部342を覆う部位のことである。
【0048】
また中央部341の受熱面610aに対向する面を第1表面341aと示す。端部342における受熱面610aに対向する面を端面342aと示す。端面342aに連結されるとともに受熱面610aから遠ざかるように延びる面を側面342b示す。x方向に離間する2つの端面342aと、x方向に離間する2つの側面342bそれぞれの一部と、を併せて第2表面342eと示す。なお、第2表面342eには2つの第2表面部分342c、342dが含まれている。1つの第2表面部分342cとは、x方向の一端に設けられる1つの端面342aとx方向の一端に設けられる1つの側面342bである。もう1つの第2表面部分342dとは、x方向の他端に設けられる1つの端面342aとx方向の他端に設けられる1つの側面342bである。
【0049】
図4に示すように第2表面342eと受熱面610aとの平行度が、中央第1表面341aと受熱面610aとの平行度よりも低い。図3および図4に示すように第1表面341aはx方向に離間する2つの第2表面部分342c、342dの間に設けられている。なお、図3においてはインダクタ340の外形および、第1表面341aと第2表面342eの境界を破線で示している。
【0050】
また端面342aと受熱面610aとの平行度が、第1表面341aと受熱面610aとの平行度よりも低い。側面342bと受熱面610aとの平行度が、第1表面341aと受熱面610aとの平行度よりも低い。側面342bと受熱面610aとの平行度が、端面342aと受熱面610aとの平行度よりも低い。
【0051】
<第1部材および第2部材とインダクタ>
図4に示すように放熱部材600とインダクタ340の間に第1部材810と第2部材820が設けられている。
【0052】
より詳しく言えば第1部材810が中央部341と配置部610の間に設けられている。第2部材820が中央部341と配置部610の間、および、2つの端部342と配置部610の間に設けられている。図3に示すように第2部材820が第1部材810を囲むように環状に配置部610に設けられている。
【0053】
第1部材810が第1表面341aと受熱面610aに接触している。図3に示すように第1部材810は第1表面341aの受熱面610aへの投影領域内に含まれている。
【0054】
第2部材820が第1表面341a、2つの第2表面部分342c、342d、および、受熱面610aに接触している。また第1部材810と第2部材820は互いに接触している。
【0055】
上記したように第2部材820が第1部材810よりも変形しやすい。第2部材820が第2表面342eに沿って変形しやすい。第2部材820は第1部材810よりも流動しやすい。
【0056】
<第1部材および第2部材と突起部>
図3および図4に示すように配置部610には基台部620の他に、受熱面610aから突起する突起部630が形成されている。突起部630は第1部材810および第2部材820を囲むように環状を成している。突起部630は第2部材820が拡がることを抑制している。なお、突起部630は環状でなくてもよい。突起部630は第2部材820が拡がることを抑制できる形状になっていればよい。
【0057】
<製造方法>
以下に電力変換装置100の製造方法を説明する。準備工程として、放熱部材600を準備する。インダクタ340とインダクタケース700を準備する。インダクタケース700にインダクタ340を収納する。インダクタケース700にインダクタ340を固定する。
【0058】
準備工程の後に、配置工程として受熱面610aにおける第1表面341aの投影領域に第1部材810を配置する。受熱面610aにおける第1部材810の配置される領域の周りに第2部材820を配置する。基台部620に形成された孔と連結部720に形成された孔とが連通するようにインダクタケース700を放熱部材600に配置する。
【0059】
配置工程の後に、連結工程として基台部620に形成された孔と連結部720に形成された孔とが連通した連通孔に連結部材900の軸部を通す。連結部材900の軸部を基台部620に形成された孔に固定する。
【0060】
これよればインダクタ340が第1部材810と第2部材820に接触するようになる。インダクタ340の熱が第1部材810と第2部材820を介して放熱部材600に放熱可能になる。
【0061】
<製造時における課題>
図5において、比較例では、インダクタ340と配置部610の間に第1部材810のみが配置される。上記したように第1部材810は第2部材820よりも変形しにくい。そのために第1部材810が第2表面342eに接触しにくい。これによればインダクタ340の放熱性が低下しやすい。
【0062】
また上記した製造方法に基づいてインダクタケース700を放熱部材600に固定させる際、第1表面341aおよび受熱面610aと第1部材810との接触面積が小さくなりやすくなる。この場合インダクタ340の放熱性が低下する虞がある。第1表面341aおよび受熱面610aと第1部材810との接触面積が小さくなることを解消するには、インダクタケース700を放熱部材600に向かって加圧した状態でこれらを連結させる必要が生じる。
【0063】
図6において、他の比較例では、インダクタ340と配置部610の間に第2部材820のみが配置される。上記したように第2部材820は第1部材810よりも変形しやすくい。
【0064】
インダクタ340と配置部610の間に第2部材820のみが配置される場合、一例として車両走行時にインダクタケース700が振動しやすい。その場合、連結部720と収納部710との境界に応力が集中しクラックが発生する懸念がある。
【0065】
<作用効果>
本実施形態ではインダクタ340と配置部610の間に第1部材810と第2部材820が設けられている。第1部材810が中央部341と配置部610の間に設けられている。第2部材820が端部342と配置部610の間に設けられている。
【0066】
これまでに説明したように第1部材810の粘度は第2部材820の粘度よりも高い。第1部材810が第1表面341aと受熱面610aとに接触している。第2部材820が第2表面342eと受熱面610aに接触している。
【0067】
これによれば、第1表面341aと第2表面342eの両方からインダクタ340の熱を放熱部材600に放熱可能である。
【0068】
これまでに説明したように第2部材820が第2表面342e、および、受熱面610aの他に第1表面341aに接触している。第1部材810と第2部材820が互いに接触している。
【0069】
これによれば、第2部材820におけるインダクタ340との接触面積が増大している。インダクタ340の熱が放熱部材600に放熱されやすい。
【0070】
これまでに説明したように、第1部材810の硬さが第2部材820の硬さよりも硬い。第1部材810が第2部材820よりも変形しにくい。
【0071】
これによれば一例として車両走行時にインダクタケース700が振動したとしても、インダクタケース700が所定の位置から動くことが抑制されやすい。それに伴って連結部720と収納部710との境界に応力が集中しクラックが発生することが抑制されやすい。放熱性と耐振性とが両立可能である。
【0072】
これまでに説明したように配置部610の受熱面610aには、第2部材820が拡がることを抑制する突起部630が形成されている。突起部630は第2部材820を囲むように環状を成している。これによれば、第2部材820が拡がり、周囲の電気部品に第2部材820が付着することが抑制される。
【0073】
これまでに説明したように、連結部720と基台部620とが連結部材900を介して互いに連結されている。これによればインダクタケース700に配置部610に向かう外力が与えられる。そのために第1部材810における第1表面341aおよび受熱面610aとの接触面積が増大しやすい。第2部材820における第2表面342eとの接触面積が増大しやすい。これによればインダクタ340が第1部材810および第2部材820を介して効率的に放熱部材600に放熱可能である。
【0074】
(第2実施形態)
電力変換装置100には第1給電バスバ301~第6給電バスバ306が含まれている。以下説明を簡便とするために、第1給電バスバ301~第6給電バスバ306をまとめてバスバ300と示す。
【0075】
図7に示すように配置部610は受熱面610aから隆起する隆起部640を有している。バスバ300は、比較的広い主面と比較的狭い側面とを有する板状部材である。バスバ300は、主面の一部に表面300aを有している。表面300aは、バスバ300の長手方向に沿って広がっている場合がある。
【0076】
バスバ300は隆起部640に向かって一部屈曲している。表面300aは、1つの第1バスバ面300bと、2つの第2バスバ面300cとを含む。第1バスバ面300bは、隆起部640に対向するように位置づけられている。第1バスバ面300bは、隆起部640と平行であって、隆起部640に近接している。第2バスバ面300cは、隆起部640の両側に位置づけられている。2つの第2バスバ面300cは、表面300aの中に、第1バスバ面300bを区画している。第1バスバ面300bが第1実施形態における第1表面341aに相当する。第2バスバ面300cが第1実施形態における第2表面342eに相当する。
【0077】
第1バスバ面300bと隆起面630aとの平行度は、第2バスバ面300cと隆起面630aとの平行度よりも高い。第2バスバ面300cと隆起面630aとの平行度は、第1バスバ面300bと隆起面630aとの平行度よりも低い。
【0078】
また図7に示すように第1バスバ面300bおよび第2バスバ面300cと隆起部640との間に第1部材810と第2部材820が設けられている。第1部材810が隆起面630aと第1バスバ面300bに接触している。第2部材820が隆起面630aと第1バスバ面300bと第2バスバ面300cに接触している。これによれば、バスバ300の熱が放熱部材600に効率的に放熱可能である。
【0079】
(第3実施形態)
第1実施形態においては、第1部材810のすべてが第1表面341aの受熱面610aへの投影領域内に含まれている。これに代えて、図8に示すように第1部材810が第1表面341aの受熱面610aへの投影領域と第2表面342eの受熱面610aへの投影領域内の両方に含まれていてもよい。図8においてはインダクタ340の外形および、第1表面341aと第2表面342eの境界を破線で示している。
【0080】
(第4実施形態)
第1実施形態においては、第2部材820が第2表面342eと受熱面610aに接触している。これに代えて図9に示すように第2部材820が第2表面342eのうち端面342aと側面342bのどちらか一方と受熱面610aに接触していてもよい。
【0081】
また第1実施形態に示したように第1部材810と第2部材820が接触していなくてもよい。第1部材810と第2部材820との間に空隙が設けられていても良い。
【0082】
(第5実施形態)
第1実施形態においては、配置部610に第2部材820が拡がることを抑制する突起部630が形成されている。これに代えて図10に示すようにインダクタケース700が、第2部材820が拡がることを抑制する突起部740を有していても良い。突起部740が収納部710に一体的に連結され、受熱面610aに向かって突起することで第2部材820が拡がることを抑制する機能を有していても良い。図示しないが突起部740がインダクタ340を囲むようにして環状にインダクタケース700に形成されていてもよい。
【0083】
また図11に示すように、突起部630と突起部740の両方によって第2部材820が拡がることが抑制されていてもよい。
【0084】
(第6実施形態)
第1実施形態においては、インダクタケース700が収納部710と連結部720を有する。これに代えて図12に示すようにインダクタケース700は収納部710と連結部720とを連結するリブ730を有していてもよい。
【0085】
これによれば収納部710と連結部720の境界に応力が集中したとしてもクラックが生じることが抑制されやすくなる。
【0086】
(他の実施形態)
これまでに説明したように電力変換装置100はトランス510を含むDCDCコンバータ500を有している。トランス510は電力変換に伴い発熱しやすい。トランス510は一例としてこれまでに説明したインダクタ340と同様の形態を成している。トランス510は例えばDCDCコンバータケースに収納されている。トランス510の第1表面341aに相当する面とDCDCコンバータケースとの間に第1部材810が設けられていても良い。トランス510の第2表面342eに相当する面とDCDCコンバータケースとの間に第2部材820が設けられていても良い。
【0087】
また他にも、DCDCコンバータ500と補機バッテリ1000とを接続するハーネス307と配置部610の間に第1部材810と第2部材820が設けられていても良い。
【0088】
図示しないが、耐振性を高めるために連結部720と基台部620との連結部位のピッチを狭くするなどの工夫が電力変換装置100に施されていても良い。図示しないブッシュが連結部720と基台部620の連通孔に設けられていても良い。第1部材810が放熱シートでなくてもよい。第1部材810が例えば第2部材820とは異なる粘度と硬度を有する放熱ゲルであってもよい。
【0089】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範ちゅうや思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0090】
200…バッテリ、300…バスバ、300a…表面、300b…第1バスバ面、300c…第2バスバ面、340…インダクタ、341a…第1表面、342c…第2表面部分、342d…第2表面部分、342e…第2表面、400…モータ、600…放熱部材、610a…受熱面、620…基台部、630…突起部、640…隆起部、700…インダクタケース、710…収納部、720…連結部、740…突起部、810…第1部材、820…第2部材、900…連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12