(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/271 20210101AFI20240903BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240903BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240903BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240903BHJP
【FI】
H01M50/271 S
H01M50/209
H01M50/204 101
H01M50/342 201
(21)【出願番号】P 2021155440
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 重行
(72)【発明者】
【氏名】矢原 竜馬
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220478(JP,A)
【文献】国際公開第2017/060942(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/059080(WO,A1)
【文献】特開2018-106904(JP,A)
【文献】特開2018-129251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/30-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを含む電池スタックと、
第1本体部と、前記第1本体部から一方向に延出する第1鍔部と、を有する、アッパーケースと、
前記第1本体部とともに前記電池スタックを収容するための内部空間を形成する第2本体部と、前記第2本体部から前記一方向に延出する第2鍔部と、を有する、ロアケースと、
前記第1鍔部と前記第2鍔部との間に設けられ、前記第1鍔部と前記第2鍔部との間に封止構造を形成する、シール材と、を備え、
前記アッパーケースの前記第1本体部は、
前記電池スタックに上方から対向する対向部と、
前記一方向において、前記第1鍔部の位置よりも前記対向部の側の位置であって且つ前記電池スタックに対向しない位置に設けられた、非対向部と、
前記一方向における前記対向部と前記非対向部との間の位置に設けられ、鉛直方向における高さ位置が前記対向部および前記非対向部よりも低くなるように形成された、絞り部と、を有する、
電池パック。
【請求項2】
前記絞り部は、
前記対向部に接続するように設けられ、前記一方向において前記対向部から遠ざかるにつれて前記高さ位置が徐々に低くなるように傾斜する内側傾斜部と、
前記非対向部に接続するように設けられ、前記一方向において前記非対向部から遠ざかるにつれて前記高さ位置が徐々に低くなるように傾斜する外側傾斜部と、
前記内側傾斜部と前記外側傾斜部との間に設けられた底部と、を含む、
請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記底部上に設けられた圧力開放弁をさらに備え、
前記圧力開放弁は、前記内部空間の圧力が所定値を超えた場合に開弁する、
請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記非対向部の前記高さ位置は、前記対向部の前記高さ位置よりも高い、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項5】
前記第1鍔部の前記高さ位置は、前記対向部の前記高さ位置よりも高い、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項6】
前記第1鍔部は、前記一方向に対して直交する方向である直交方向に沿って延在する形状を有しており、
前記直交方向において前記第1鍔部の中央に位置する部分は、前記直交方向において前記第1鍔部の外側に位置する部分に比べて高い位置に設けられている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項7】
前記アッパーケースは、前記第1本体部から前記直交方向に延出する第3鍔部をさらに有し、
前記第1鍔部の中央に位置する部分は、前記第3鍔部よりも高い位置に設けられている、
請求項6に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に開示されているように、複数の電池セルを積層することにより電池スタックが構成される。電池パックは、電池スタックを収容ケース(筐体)の中に配置することにより構成される。一般的に、収容ケースは、アッパーケース、ロアケース、および、これらの間(これらが合わさっている部分の間)に配置されるシール材から構成される。シール材の存在により、収容ケースが封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池セル内で短絡等が発生した場合、電池セルが発熱し、電池セル内部で高温のガスが発生する。電池セルの内圧が所定の閾値を超えた場合、電池セルの開放弁から高温のガスが排出される。ガスは、収容ケースの内圧を上昇させるとともに、アッパーケースとロアケースとの間に配置されているシール材に向かって移動する。高温のガスがシール材に接触すると、シール材が劣化し、ひいてはシール材の封止機能が低下することにつながる。
【0005】
本開示は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、本開示は、高温のガスが電池セルから電池パック内に排出されたとしても、アッパーケースとロアケースとの間に配置されているシール材が劣化することを従来構造に比して抑制可能な電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に基づく電池パックは、複数の電池セルを含む電池スタックと、第1本体部と、上記第1本体部から一方向に延出する第1鍔部と、を有する、アッパーケースと、上記第1本体部とともに上記電池スタックを収容するための内部空間を形成する第2本体部と、上記第2本体部から上記一方向に延出する第2鍔部と、を有する、ロアケースと、上記第1鍔部と上記第2鍔部との間に設けられ、上記第1鍔部と上記第2鍔部との間に封止構造を形成する、シール材と、を備え、上記アッパーケースの上記第1本体部は、上記電池スタックに上方から対向する対向部と、上記一方向において、上記第1鍔部の位置よりも上記対向部の側の位置であって且つ上記電池スタックに対向しない位置に設けられた、非対向部と、上記一方向における上記対向部と上記非対向部との間の位置に設けられ、鉛直方向における高さ位置が上記対向部および上記非対向部よりも低くなるように形成された、絞り部と、を有する。
【0007】
上記構成においては、上記絞り部は、上記対向部に接続するように設けられ、上記一方向において上記対向部から遠ざかるにつれて上記高さ位置が徐々に低くなるように傾斜する内側傾斜部と、上記非対向部に接続するように設けられ、上記一方向において上記非対向部から遠ざかるにつれて上記高さ位置が徐々に低くなるように傾斜する外側傾斜部と、上記内側傾斜部と上記外側傾斜部との間に設けられた底部と、を含んでいてもよい。
【0008】
上記電池パックは、上記底部上に設けられた圧力開放弁をさらに備え、上記圧力開放弁は、上記内部空間の圧力が所定値を超えた場合に開弁してもよい。
【0009】
上記構成においては、上記非対向部の上記高さ位置は、上記対向部の上記高さ位置よりも高くてもよい。
【0010】
上記構成においては、上記第1鍔部の上記高さ位置は、上記対向部の上記高さ位置よりも高くてもよい。
【0011】
上記構成においては、上記第1鍔部は、上記一方向に対して直交する方向である直交方向に沿って延在する形状を有しており、上記直交方向において上記第1鍔部の中央に位置する部分は、上記直交方向において上記第1鍔部の外側に位置する部分に比べて高い位置に設けられていてもよい。
【0012】
上記構成においては、上記アッパーケースは、上記第1本体部から上記直交方向に延出する第3鍔部をさらに有し、上記第1鍔部の中央に位置する部分は、上記第3鍔部よりも高い位置に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、高温のガスが電池セルから電池パック内に排出されたとしても、アッパーケースとロアケースとの間に配置されているシール材が劣化することを抑制可能な電池パックが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係る電池パック100を示す分解斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る電池パック100を示す断面図であり、
図1におけるII-II線に沿った位置における電池パック100の断面構造を示している。
【
図3】実施の形態における電池パック100を示す斜視図であり、収容ケース30の内圧の増加に伴ってアッパーケース10に生じ得る変形の態様を説明するための図である。
【
図4】
図3におけるIV-IV線に沿った矢視断面図である。
【
図5】比較例における電池パック100Zを示す断面図であり、電池セル1から高温のガスが発生した際の収容ケース30の内部の様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態の説明においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0016】
[電池パック100]
図1は、実施の形態に係る電池パック100を示す分解斜視図である。
図1を参照して、実施の形態に係る電池パック100について説明する。電池パック100は、たとえばモータとエンジンとの少なくとも一方の動力を用いて走行可能なハイブリッド車両、または、電気エネルギによって得られた駆動力で走行する電動車両に搭載される。
【0017】
電池パック100は、複数の電池スタック2、収容ケース30、冷却器40、およびシェアパネル50を備える。収容ケース30は、アッパーケース10とロアケース20とから構成されており、アッパーケース10とロアケース20との間には、シール材26が配置されている。シール材26は、アッパーケース10とロアケース20との間で環状に延在している。図示上の便宜のため、
図1におけるシール材26は、破線を用いて模式的に図示している。
【0018】
[電池スタック2]
複数の電池スタック2は、第1方向DR1(一方向)に並んで配列されている。複数の電池スタック2の各々は、第2方向DR2(直交方向)に延在している。第2方向DR2は、第1方向DR1に対して直交する方向である。
【0019】
複数の電池スタック2の各々は、不図示の接着層によって、ロアケース20(第2本体部20M)の載置部21に固定される。接着層はたとえば、熱伝導性を有する樹脂部材から構成される。接着層としては、たとえば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、または、エポキシ樹脂等を含む接着剤を採用することができる。接着層は、これらの接着剤が硬化することで形成される。
【0020】
ここで、電池パック100を車両に搭載させることを考慮した場合、第1方向DR1は、車両前進方向または車両後退方向に対応させることが可能であり、第2方向DR2は、車幅方向に対応させることが可能である。図中に示している第3方向DR3は、第1方向DR1および第2方向DR2に対して直交する方向であり、たとえば、鉛直方向(高さ方向)に対応させることが可能である。
【0021】
複数の電池スタック2の各々は、複数の電池セル1を含む。電池セル1は、たとえばニッケル水素電池またはリチウムイオン電池等の二次電池である。二次電池は、たとえば、角型形状を有する。二次電池は、液状の電解質を用いるものであってもよいし、固体状の電解質を用いるものであってもよい。電池セル1としては、蓄電可能に構成された単位キャパシタであってもよい。
【0022】
[収容ケース30]
収容ケース30は、複数の電池スタック2を収容する。収容ケース30は、アッパーケース10およびロアケース20を含む。
図2は、電池パック100を示す断面図であり、
図1におけるII-II線に沿った位置における電池パック100の断面構造を示している。詳細は後述するが、アッパーケース10の第1本体部10Mとロアケース20の第2本体部20Mとによって、複数の電池スタック2を収容するための内部空間が形成される。
【0023】
(アッパーケース10)
図1および
図2に示すように、アッパーケース10は、第1本体部10Mと、合わせ部10Tとを含む。第1本体部10Mは、その構成要素として、対向部11、絞り部12、非対向部13、および側壁14a,14b,14c,14dを有する。合わせ部10Tは、その構成要素として、鍔部15a,15b,15c,15dを有する。
【0024】
第1本体部10Mの対向部11、絞り部12、および非対向部13は、アッパーケース10における天板部分を構成しており、側壁14a,14b,14c,14dは、アッパーケース10における周壁部分を構成している。対向部11、絞り部12および非対向部13、ならびに側壁14a,14b,14c,14dにより、第1本体部10Mは、下方に向けて開口する略箱形形状を有している。
【0025】
対向部11は、おおむね板状の形状を有する。対向部11は、電池スタック2の上方に配置され、電池スタック2に上方から対向する。電池スタック2を上方に向かって投影したとすると、その投影像は対向部11に重なる。対向部11には、対向部11の剛性を高めるためのリブやビードなどが(いずれも不図示)、第2方向DR2に沿って延在するように形成されていてもよい。複数のリブなどを、第1方向DR1に相互間に間隔をあけて並べるように、対向部11に設けることができる。
【0026】
絞り部12は、対向部11に対して第1方向DR1(正方向)の側に設けられている。非対向部13は、絞り部12に対して第1方向DR1(正方向)の側に設けられている。絞り部12は、第2方向DR2に沿って帯状に延在する形状を有する。絞り部12は、第1本体部10Mの天板部分の一部が下方(ロアケース20に接近する方向)に向かって凹むようにして形成されており、絞り部12の鉛直方向における高さ位置が、対向部11および非対向部13よりも低くなるように形成されている(詳細は後述する)。
【0027】
本実施の形態においては(
図2参照)、絞り部12は、内側傾斜部12a、底部12b、および外側傾斜部12cを有している。内側傾斜部12aは、対向部11に接続するように設けられ、第1方向DR1(正方向)において対向部11から遠ざかるにつれて、高さ位置が徐々に低くなるように傾斜している。外側傾斜部12cは、非対向部13に接続するように設けられ、第1方向DR1(負方向)において非対向部13から遠ざかるにつれて、高さ位置が徐々に低くなるように傾斜している。底部12bは、内側傾斜部12aと外側傾斜部12cとの間に設けられている。
【0028】
電池パック100は、絞り部12の上に設けられた圧力開放弁18をさらに備えていてもよい。圧力開放弁18は、たとえば底部12bの上に載置される。圧力開放弁18は、収容ケース30の内部空間の圧力が所定値を超えた場合に開弁する。
【0029】
非対向部13は、絞り部12に対して第1方向DR1(正方向)の側に設けられている。非対向部13は、絞り部12に対して対向部11とは反対側に設けられている。すなわち、第1方向DR1において、対向部11と非対向部13との間の位置に絞り部12が設けられている。非対向部13も、絞り部12と同様に、第2方向DR2に沿って帯状に延在する形状を有する。
【0030】
非対向部13の高さ位置は、電池スタック2よりも高いが、非対向部13は、電池スタック2の上方には位置しておらず、非対向部13は、電池スタック2に上方から対向しない位置に設けられている。電池スタック2を上方に向かって投影したとしても、その投影像は非対向部13には重ならない。
【0031】
非対向部13の高さ位置を、非対向部13の下面の鉛直方向における高さ位置H13(
図2)と定義し、対向部11の高さ位置を、対向部11の下面の鉛直方向における高さ位置H11(
図2)と定義したとする。この場合には、絞り部12は、絞り部12の鉛直方向における高さ位置が、高さ位置H13よりも低くなり、かつ、高さ位置H11よりも低くなるように設けられている。
【0032】
ここでは、絞り部12の底部12bの下面の高さ位置H12bが、高さ位置H13よりも低く、かつ、高さ位置H11よりも低い。非対向部13の高さ位置H13は、対向部11の高さ位置H11よりも高く設定されている。
【0033】
図1に示すように、第1本体部10Mの側壁14a,14b,14c,14dは、第1本体部10Mの天板部分(対向部11、絞り部12および非対向部13)の周囲を取り囲むように環状に配置されており、天板部分の周囲から垂れ下がるように設けられている。
【0034】
側壁14aおよび側壁14cは、第1方向DR1の間隔をあけて相互に対向しており、いずれも第2方向DR2に対して平行に延在している。側壁14bおよび側壁14dは、第2方向DR2の間隔をあけて相互に対向しており、いずれも第1方向DR1に対して平行に延在している。
【0035】
合わせ部10Tの鍔部15a,15b,15c,15dは、それぞれ第1本体部10Mの側壁14a,14b,14c,14dに設けられている。鍔部15a,15b,15c,15dは、全体として環形状を呈しており、水平方向においていずれも第1本体部10Mの内側から外側に向かって延出する形状を有している。
【0036】
より具体的には、鍔部15a(第1鍔部)は、側壁14aの下端から第1方向DR1(正方向)に延出しており、鍔部15cは、側壁14cの下端から第1方向DR1(負方向)に延出している。同様に、鍔部15bは、側壁14bの下端から第2方向DR2(正方向)に延出しており、鍔部15dは、側壁14dの下端から第2方向DR2(負方向)に延出している。鍔部15aは、中央の部分15a1が上方に向かって凸状に湾曲するように形成されており、鍔部15b,15c,15dは、おおむね平板の形状に形成されている。
【0037】
非対向部13と鍔部15a(第1鍔部)との位置関係については、非対向部13が、第1方向DR1(一方向)において、鍔部15aの位置よりも対向部11の側の位置であって、且つ、電池スタック2に対向しない位置に設けられている。さらに、対向部11、絞り部12、および非対向部13の位置関係については、絞り部12が、第1方向DR1(一方向)における対向部11と非対向部13との間の位置に設けられ、絞り部12は、鉛直方向における高さ位置が、対向部11および非対向部13よりも低くなるように形成されている。
【0038】
本実施の形態においてはさらに、鍔部15a(第1鍔部)の高さ位置H15a(
図2)は、対向部11の高さ位置H11よりも高く設定されている。さらに、
図1に示すように、鍔部15aは、第1方向DR1(一方向)に対して直交する方向である第2方向DR2(直交方向)に沿って延在する形状を有しており、第2方向DR2において鍔部15aの中央に位置する部分15a1は、第2方向DR2において鍔部15aの外側に位置する部分15a2,15a3に比べて高い位置に設けられている。また、第1本体部10Mの鍔部15b(第3鍔部)について言えば、鍔部15a(第1鍔部)の中央に位置する部分15a1は、鍔部15b(第3鍔部)よりも高い位置に設けられている。
【0039】
(ロアケース20)
ロアケース20は、第2本体部20Mと、合わせ部20Tとを含む。第2本体部20Mは、アッパーケース10の第1本体部10Mとともに、複数の電池スタック2を収容するための内部空間を形成する部材である。第2本体部20Mは、その構成要素として、載置部21、区画部材22、および側壁24a,24b,24c,24dを有する。合わせ部20Tは、その構成要素として、鍔部25a,25b,25c,25dを有する。
【0040】
第2本体部20Mの載置部21は、ロアケース20における底板部分を構成しており、側壁24a,24b,24c,24dは、ロアケース20における周壁部分を構成している。載置部21および側壁24a,24b,24c,24dにより、第2本体部20Mは、上方に向けて開口する略箱形形状を有している。
【0041】
載置部21は、おおむね板状の形状を有する。載置部21の表面は、略平坦となるように設けられている。載置部21の表面は、複数の区画部材22によって、第1方向DR1に複数に区画されている。複数の区画部材22によって形成された複数の区画領域の各々の内側に、複数の電池スタック2の各々が配置される。載置部21は、電池スタック2の下方に位置しており、不図示の接着層を介して電池スタック2を下方から支持する。
【0042】
第2本体部20Mの側壁24a,24b,24c,24dは、第2本体部20Mの底板部分(載置部21)の周囲を取り囲むように環状に配置されており、載置部21の周囲から立ち上がるように設けられている。側壁24aおよび側壁24cは、第1方向DR1の間隔をあけて相互に対向しており、いずれも第2方向DR2に対して平行に延在している。側壁24bおよび側壁24dは、第2方向DR2の間隔をあけて相互に対向しており、いずれも第1方向DR1に対して平行に延在している。
【0043】
図2に示すように、側壁24aの第1方向DR1(正方向)の側には、ジャンクションボックス28が設けられていてもよい。ジャンクションボックス28をここに配置することは必須ではなく、他の位置に設けられていてもよい。ジャンクションボックス28は、
図1には図示しておらず、
図2にのみ図示している。
【0044】
合わせ部20Tの鍔部25a,25b,25c,25dは、それぞれ第2本体部20Mの側壁24a,24b,24c,24dに設けられている。鍔部25a,25b,25c,25dは、全体として環形状を呈しており、水平方向においていずれも第2本体部20Mの内側から外側に向かって延出する形状を有している。
【0045】
より具体的には、鍔部25a(第2鍔部)は、側壁24aの上端から第1方向DR1(正方向)に延出しており、鍔部25cは、側壁24cの上端から第1方向DR1(負方向)に延出している。同様に、鍔部25bは、側壁24bの上端から第2方向DR2(正方向)に延出しており、鍔部25dは、側壁24dの上端から第2方向DR2(負方向)に延出している。
【0046】
(シール材26)
図1および
図2に示すように、アッパーケース10とロアケース20との間に、シール材26が配置される。シール材26は、アッパーケース10の合わせ部10Tおよびロアケース20の合わせ部20Tの形状に対応するように、たとえば環状の形状を有している。シール材26は、アッパーケース10とロアケース20との間で環状に延在し、合わせ部10T,20Tの間に封止構造を形成する。
【0047】
すなわち、シール材26は、少なくとも鍔部15a,25aの間に配置される部分を有しており、シール材26におけるこの部分によって、鍔部15a,25aの間に封止構造が形成される(
図2参照)。シール材26の一部は、収容ケース30の内側に形成された、複数の電池スタック2を収容するための内部空間に露出している。
【0048】
(冷却器40)
冷却器40(
図1)は、複数の電池スタック2を冷却するための機器である。冷却器40は、収容ケース30の外側に配置される。冷却器40は、ロアケース20の載置部21の下方に配置されている。冷却器40は、アルミニウム等の金属材料によって構成されてる。冷却器40は、複数の冷却部42と、保持枠部44とを含む。
【0049】
複数の冷却部42は、第1方向DR1に間隔をあけて並んで配置されている。複数の冷却部42の各々は、載置部21を介して電池スタック2と対向する位置に配置されている。冷却部42には、電池スタック2を冷却するための冷却媒体(水等)が流れる冷却流路が形成されている。保持枠部44は、各冷却部42を保持する。保持枠部44は、複数の冷却部42を囲む環状に形成されている。
【0050】
本実施形態では、保持枠部44は、略矩形状に形成されている。各冷却部42は、第2方向DR2における両端部で保持枠部44に接続されている。冷却部42によって載置部21を効率良く冷却することができ、載置部21上に配置された不図示の接着層を介して、電池スタック2を効率よく冷却することができる。
【0051】
電池スタック2の底部には、複数の電池セル1の底面部の高さ位置がずれることで凹凸が形成される場合がある。このような場合であっても、電池スタック2を載置部21に押し付けることにより、接着層を上記凹凸に追従するように変形させることができる。これにより、接着層を電池スタック2の底部に密着させることができ、良好な熱伝導性を確保することができる。
【0052】
(シェアパネル50)
シェアパネル50は、冷却器40を下方側から覆うように配置される。シェアパネル50は、冷却器40を保護する。シェアパネル50は、金属材料によって構成されている。
【0053】
[作用および効果]
冒頭でも述べたように、電池セル1内で短絡等が発生した場合、電池セル1が発熱し、電池セル1内部で高温のガスが発生する。電池セル1の内圧が所定の閾値を超えた場合、電池セル1の開放弁(図示せず)から高温のガスが排出される。ガスは、収容ケース30の内圧を上昇させる。
【0054】
図3は、収容ケース30の内圧の増加に伴ってアッパーケース10に生じ得る変形の態様を説明するための図である。
図4は、
図3におけるIV-IV線に沿った矢視断面図である。
【0055】
電池セル1から収容ケース30の内部空間に向けて排出されたガスは、電池セル1の周辺に広がろうとして移動する。電池パック100に圧力開放弁18が設けられている場合には、ガスは、圧力開放弁18に向かって移動する(
図4の矢印AR1参照)。圧力開放弁18の周辺空間は、排出ガスによって高温に晒される。さらには、ガスは、アッパーケース10とロアケース20との間に配置されているシール材26に向かって移動しようとする。高温のガスがシール材26に接触すると、シール材26が劣化し、ひいてはシール材26の封止機能が低下することにつながる。
【0056】
これに対して本実施の形態においては、絞り部12が、第1本体部10Mの天板部分の一部が下方(ロアケース20に接近する方向)に向かって凹むようにして形成されており、絞り部12の鉛直方向における高さ位置が、対向部11および非対向部13よりも低くなるように形成されている。たとえば第1方向DR1(正方向)に移動するガスから見た場合には、絞り部12は、対向部11から鍔部15aに向かうにつれて、絞り部12の下方で内部空間(流路断面積)が狭くなり、非対向部13の下方で内部空間(流路断面積)が広くなる。
【0057】
上記のように構成することにより、高温のガスが排出された場合に、圧力が絞り部12(特に、底部12b)に大きく作用することとなり、絞り部12の根元P1を起点にして、アッパーケース10の第1本体部10Mが上方に向けて膨張するように変形しやすくなる(
図3,
図4における矢印AR2参照)。
図3,
図4中の破線LNは、アッパーケース10の第1本体部10Mが上方に向けて膨張する様子を模式的に示している。
【0058】
電池セル1から排出されたガスの圧力ないしエネルギーは、アッパーケース10の第1本体部10M(特に、対向部11および絞り部12)が上方に変形することに利用されるため、ガスが、
図4に示す矢印AR3のようにシール材26側に移動することが抑制される。この結果、シール材26の劣化を抑制することができる。
【0059】
[比較例]
図5は、比較例における電池パック100Zを示す断面図であり、電池セル1から高温のガスが発生した際の収容ケース30の内部の様子を説明するための図である。電池パック100Zの場合には、アッパーケース10の第1本体部10Mの天板部が平坦に形成されており、この平坦な部分は、電池セル1の上方に位置する部分の高さ位置Haで、一定の高さを有して広く延在している。この平坦な部分に、上述の実施の形態における絞り部12のような部位は形成されていない。鍔部15aの高さ位置Hbは、高さ位置Haよりも低い。
【0060】
高温のガスが排出された場合、圧力が第1本体部10Mの天板部に作用するものの、電池セル1から排出されたガスの圧力ないしエネルギーは、アッパーケース10の第1本体部10Mが上方に変形することにはさほど利用されることなく、ガスは、
図5に示す矢印AR4のようにシール材26側に移動する。この結果、シール材26は、上述の実施形態の場合に比べて劣化しやすくなる。
【0061】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 電池セル、2 電池スタック、10 アッパーケース、10M 第1本体部、10T,20T 合わせ部、11 対向部、12 絞り部、12a 内側傾斜部、12b 底部、12c 外側傾斜部、13 非対向部、14a,14b,14c,14d,24a,24b,24c,24d 側壁、15a1,15a2,15a3 部分、15a 鍔部(第1鍔部)、15b,15c,15d,25b,25c,25d 鍔部、25a 鍔部(第2鍔部)、18 圧力開放弁、20 ロアケース、20M 第2本体部、21 載置部、22 区画部材、26 シール材、28 ジャンクションボックス、30 収容ケース、40 冷却器、42 冷却部、44 保持枠部、50 シェアパネル、100,100Z 電池パック、AR1,AR2,AR3,AR4 矢印、DR1 第1方向(一方向)、DR2 第2方向(直交方向)、DR3 第3方向、H11,H12b,H13,H15a,Ha,Hb 高さ位置、LN 破線、P1 根元。