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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】車両群の制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240903BHJP
   B60W 30/165 20200101ALI20240903BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240903BHJP
【FI】
G08G1/00 X
B60W30/165
B60W60/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021155926
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023047033
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 彰英
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105878(JP,A)
【文献】特開2009-048406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隊列走行を行う車両群の制御システムであって、
前記車両群を構成する各車両は、制御装置と、通信装置とを備え、
前記各車両の制御装置は、各種情報が格納されたメモリと、前記各種情報を処理するプロセッサとを備え、
前記各種情報は、自車両の速度情報と、前記車両群が隊列走行する道路の前方の走行規制地点に設けられた交通信号機の灯火色情報と、前記自車両から前記走行規制地点の入口までの距離情報とを含み、
前記各制御装置のプロセッサは、
前記自車両の速度情報と、前記灯火色情報と、前記距離情報と、に基づいて、前記走行規制地点の手前での前記自車両の車両状態を予測し、
前記自車両の車両状態は、進入不可能状態と、第1及び第2進入可能状態と、を含み、
前記進入不可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、前記走行規制地点への進入が不可能である状態を示し、前記第1進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミング以降に当該開始タイミングでの前記自車両の速度が維持されることで、前記走行規制地点への進入が可能である状態を示し、前記第2進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミングで前記自車両の減速を開始すると前記走行規制地点に進入してしまうが、当該開始タイミングよりも前に前記自車両の一時的な加速を行えば前記走行規制地点への進入が可能である状態を示し、
前記予測された車両状態の情報を、前記車両群を構成する前記自車両以外の車両に送信し、
前記各制御装置のプロセッサは、更に、
前記予測された車両状態の情報に基づいて、前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれるか否かを判定し、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれると判定された場合、前記自車両が前記走行規制地点に進入しないように前記自車両を制御し、
前記各制御装置のプロセッサは、更に、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれると判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第1又は第2進入可能状態に該当する場合、前記自車両における前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する場合に比べて前記自車両の目標減速度を大きくする
ことを特徴とする車両群の制御システム。
【請求項2】
隊列走行を行う車両群の制御システムであって、
前記車両群を構成する各車両は、制御装置と、通信装置とを備え、
前記各車両の制御装置は、各種情報が格納されたメモリと、前記各種情報を処理するプロセッサとを備え、
前記各種情報は、自車両の速度情報と、前記自車両の外部状況の情報と、前記車両群が隊列走行する道路の前方の走行規制地点に設けられた交通信号機の灯火色情報と、前記自車両から前記走行規制地点の入口までの距離情報とを含み、
前記各制御装置のプロセッサは、
前記自車両の速度情報と、前記灯火色情報と、前記距離情報と、に基づいて、前記走行規制地点の手前での前記自車両の車両状態を予測し、
前記自車両の車両状態は、進入不可能状態と、第1及び第2進入可能状態と、を含み、
前記進入不可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、前記走行規制地点への進入が不可能である状態を示し、前記第1進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミング以降に当該開始タイミングでの前記自車両の速度が維持されることで、前記走行規制地点への進入が可能である状態を示し、前記第2進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミングで前記自車両の減速を開始すると前記走行規制地点に進入してしまうが、当該開始タイミングよりも前に前記自車両の一時的な加速を行えば前記走行規制地点への進入が可能である状態を示し、
前記予測された車両状態の情報を、前記車両群を構成する前記自車両以外の車両に送信し、
前記各制御装置のプロセッサは、更に、
前記予測された車両状態の情報に基づいて、前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれるか否かを判定し、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第1進入可能状態に該当する場合、前記自車両の目標速度を現在速度に維持し、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第2進入可能状態に該当する場合、前記自車両の外部状況の情報に基づいて、前記車両群が隊列走行している第1車線から前記第1車線に隣接する第2車線への車線変更を前記自車両が実行可能か否かを判定し、
前記車線変更を前記自車両が実行可能であると判定された場合は、前記車線変更を実行し、
前記車線変更を前記自車両が実行可能でないと判定された場合は、前記現在速度よりも高く、かつ、許容上限速度よりも低い速度まで前記自車両の目標速度を上昇させる
ことを特徴とする車両群の制御システム。
【請求項3】
隊列走行を行う車両群の制御方法であって、
前記車両群を構成する各車両を示す自車両の速度情報と、前記車両群が隊列走行する道路の前方の走行規制地点に設けられた交通信号機の灯火色情報と、前記自車両から前記走行規制地点の入口までの距離情報と、に基づいて、前記走行規制地点の手前での前記自車両の車両状態を予測するステップと、
前記予測された車両状態の情報を、前記車両群を構成する前記自車両以外の車両に送信するステップと、
を備え、
前記自車両の車両状態は、進入不可能状態と、第1及び第2進入可能状態と、を含み、
前記進入不可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、前記走行規制地点への進入が不可能である状態を示し、前記第1進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミング以降に当該開始タイミングでの前記自車両の速度が維持されることで、前記走行規制地点への進入が可能である状態を示し、前記第2進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミングで前記自車両の減速を開始すると前記走行規制地点に進入してしまうが、当該開始タイミングよりも前に前記自車両の一時的な加速を行えば前記走行規制地点への進入が可能である状態を示し、
前記予測された車両状態の情報に基づいて、前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれるか否かを判定ステップと、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれると判定された場合、前記自車両が前記走行規制地点に進入しないように前記自車両を制御するステップと、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれると判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第1又は第2進入可能状態に該当する場合、前記自車両における前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する場合に比べて前記自車両の目標減速度を大きくするステップと、
を更に備えることを特徴とする車両群の制御方法。
【請求項4】
隊列走行を行う車両群の制御方法であって、
前記車両群を構成する各車両を示す自車両の速度情報と、前記自車両の外部状況の情報と、前記車両群が隊列走行する道路の前方の走行規制地点に設けられた交通信号機の灯火色情報と、前記自車両から前記走行規制地点の入口までの距離情報と、に基づいて、前記走行規制地点の手前での前記自車両の車両状態を予測するステップと、
前記予測された車両状態の情報を、前記車両群を構成する前記自車両以外の車両に送信するステップと、
を備え、
前記自車両の車両状態は、進入不可能状態と、第1及び第2進入可能状態と、を含み、
前記進入不可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、前記走行規制地点への進入が不可能である状態を示し、前記第1進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミング以降に当該開始タイミングでの前記自車両の速度が維持されることで、前記走行規制地点への進入が可能である状態を示し、前記第2進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミングで前記自車両の減速を開始すると前記走行規制地点に進入してしまうが、当該開始タイミングよりも前に前記自車両の一時的な加速を行えば前記走行規制地点への進入が可能である状態を示し、
前記予測された車両状態の情報に基づいて、前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれるか否かを判定するステップと、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第1進入可能状態に該当する場合、前記自車両の目標速度を現在速度に維持するステップと、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第2進入可能状態に該当する場合、前記自車両の外部状況の情報に基づいて、前記車両群が隊列走行している第1車線から前記第1車線に隣接する第2車線への車線変更を前記自車両が実行可能か否かを判定するステップと、
前記車線変更を前記自車両が実行可能であると判定された場合は、前記車線変更を実行するステップと、
前記車線変更を前記自車両が実行可能でないと判定された場合は、前記現在速度よりも高く、かつ、許容上限速度よりも低い速度まで前記自車両の目標速度を上昇させるステップと、
を更に備えることを特徴とする車両群の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隊列走行を行う車両群が交通信号機に差し掛かった場合に、当該車両群を制御するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-140327号公報は、交通信号機の各色のサイクル情報と、車両の走行情報と、に基づいて、交通信号機に差し掛かった車両がジレンマゾーンにあるか否かを判定する装置が開示されている。車両がジレンマゾーンにあるか否は、車両の速度(速度)と、車両から交通信号機までの距離と、に基づいて判定される。ジレンマゾーンとは、黄信号の表示中に交通信号機を通過することができず、かつ、黄信号の表示中に信号機の手前で停止することもできないゾーンを意味する。
【0003】
上記従来の装置では、また、ジレンマゾーンの判定結果が肯定的な場合、ジレンマゾーンを回避するための減速制御を行うか否かが判定される。そして、減速制御を行うと判定された場合、後続車両に対する情報提供が行われる。情報提供は、車両のブレーキランプ、ハザードランプといったランプの点灯、又は、車両と後続車両の間の通信(車車間通信)により行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-140327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の装置の技術を、隊列走行を行う車両群に適用することを考える。車両群の先頭車両のジレンマゾーンの判定結果が肯定的であり、かつ、先頭車両の減速制御を行うと判定された場合は、上記従来の装置による効果と同じ効果が期待される。従ってこの場合は、車両群を構成する全ての車両を、交通信号機の手前で停止させることが可能となる。
【0006】
しかしながら、ジレンマゾーンの判定結果が先頭車両と後続車両の間で異なる場合は、次の問題が生じる。具体的に、先頭車両の判定結果が否定的であり、一方、後続車両の判定結果が肯定的な場合を考える。先頭車両の判定結果が否定的であるということは、青又は黄信号の表示中に先頭車両が交通信号機を通過することができ、又は、黄信号の表示中に先頭車両が信号機の手前で停止することができることを意味する。そのため、先頭車両の判定結果が否定的であり、後続車両の判定結果が肯定的な場合は、先頭車両のみが交通信号機を通過できてしまい、交通信号機の前後で車両群が分断される状況が発生しうる。従って、このような状況を回避するための技術改良が望まれる。
【0007】
本発明の1つの目的は、隊列走行を行う車両群が交通信号機の前後で分断されるのを抑えることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、車両群の制御システムであり、次の特徴を有する。
前記車両群を構成する各車両は、制御装置と、通信装置とを備える。前記各車両の制御装置は、各種情報が格納されたメモリと、前記各種情報を処理するプロセッサとを備える。前記各種情報は、自車両の速度情報と、前記車両群が隊列走行する道路の前方の走行規制地点に設けられた交通信号機の灯火色情報と、前記自車両から前記走行規制地点の入口までの距離情報とを含む。
前記各制御装置のプロセッサは、前記自車両の速度情報と、前記灯火色情報と、前記距離情報と、に基づいて、前記走行規制地点の手前での前記自車両の車両状態を予測する。前記車両状態は、進入不可能状態と、第1及び第2進入可能状態と、を含む。前記進入不可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、前記走行規制地点への進入が不可能である状態を示す。前記第1進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミング以降に当該開始タイミングでの前記自車両の速度が維持されることで、前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。前記第2進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミングで前記自車両の減速を開始すると前記走行規制地点に進入してしまうが、当該開始タイミングよりも前に前記自車両の一時的な加速を行えば前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。
前記各制御装置のプロセッサは、前記予測された車両状態の情報を、前記車両群を構成する前記自車両以外の車両に送信する。
前記各制御装置のプロセッサは、更に、
前記予測された車両状態の情報に基づいて、前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれるか否かを判定し、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれると判定された場合、前記自車両が前記走行規制地点に進入しないように前記自車両を制御する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において更に次の特徴を有する。
前記各制御装置のプロセッサは、更に、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれると判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第1又は第2進入可能状態に該当する場合、前記自車両における前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する場合に比べて前記自車両の目標減速度を大きくする。
【0010】
第3の発明は、車両群の制御システムであり、次の特徴を有する。
前記車両群を構成する各車両は、制御装置と、通信装置とを備える。前記各車両の制御装置は、各種情報が格納されたメモリと、前記各種情報を処理するプロセッサとを備える。前記各種情報は、自車両の速度情報と、前記車両群が隊列走行する道路の前方の走行規制地点に設けられた交通信号機の灯火色情報と、前記自車両から前記走行規制地点の入口までの距離情報とを含む。
前記各制御装置のプロセッサは、前記自車両の速度情報と、前記灯火色情報と、前記距離情報と、に基づいて、前記走行規制地点の手前での前記自車両の車両状態を予測する。前記車両状態は、進入不可能状態と、第1及び第2進入可能状態と、を含む。前記進入不可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、前記走行規制地点への進入が不可能である状態を示す。前記第1進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミング以降に当該開始タイミングでの前記自車両の速度が維持されることで、前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。前記第2進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミングで前記自車両の減速を開始すると前記走行規制地点に進入してしまうが、当該開始タイミングよりも前に前記自車両の一時的な加速を行えば前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。
前記各制御装置のプロセッサは、前記予測された車両状態の情報を、前記車両群を構成する前記自車両以外の車両に送信する。
前記各制御装置のプロセッサは、更に、
前記予測された車両状態の情報に基づいて、前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれるか否かを判定し、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第1進入可能状態に該当する場合、前記自車両の目標速度を現在速度に維持し、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記ジレンマ状態に該当する場合、前記現在速度よりも高く、かつ、許容上限速度よりも低い速度まで前記自車両の目標速度を上昇させる。
【0011】
第4の発明は、車両群の制御システムであり、次の特徴を有する。
前記車両群を構成する各車両は、制御装置と、通信装置とを備える。前記各車両の制御装置は、各種情報が格納されたメモリと、前記各種情報を処理するプロセッサとを備える。前記各種情報は、自車両の速度情報と、前記自車両の外部状況の情報と、前記車両群が隊列走行する道路の前方の走行規制地点に設けられた交通信号機の灯火色情報と、前記自車両から前記走行規制地点の入口までの距離情報とを含む。
前記各制御装置のプロセッサは、前記自車両の速度情報と、前記灯火色情報と、前記距離情報と、に基づいて、前記走行規制地点の手前での前記自車両の車両状態を予測する。前記車両状態は、進入不可能状態と、第1及び第2進入可能状態と、を含む。前記進入不可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、前記走行規制地点への進入が不可能である状態を示す。前記第1進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミング以降に当該開始タイミングでの前記自車両の速度が維持されることで、前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。前記第2進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミングで前記自車両の減速を開始すると前記走行規制地点に進入してしまうが、当該開始タイミングよりも前に前記自車両の一時的な加速を行えば前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。
前記各制御装置のプロセッサは、前記予測された車両状態の情報を、前記車両群を構成する前記自車両以外の車両に送信する。
前記各制御装置のプロセッサは、更に、
前記予測された車両状態の情報に基づいて、前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれるか否かを判定し、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第1進入可能状態に該当する場合、前記自車両の目標速度を現在速度に維持し、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記ジレンマ状態に該当する場合、前記自車両の外部状況の情報に基づいて、前記車両群が隊列走行している第1車線から前記第1車線に隣接する第2車線への車線変更を前記自車両が実行可能か否かを判定し、
前記車線変更を前記自車両が実行可能であると判定された場合は、前記車線変更を実行し、
前記車線変更を前記自車両が実行可能でないと判定された場合は、前記現在速度よりも高く、かつ、許容上限速度よりも低い速度まで前記自車両の目標速度を上昇させる。
【0012】
第5の発明は、第3又は4の発明において更に次の特徴を有する。
前記各制御装置のプロセッサは、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれると判定された場合、前記自車両が前記走行規制地点に進入しないように前記自車両を制御する。
【0013】
第6の発明は、第5の発明において更に次の特徴を有する。
前記各制御装置のプロセッサは、更に、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれると判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第1又は第2進入可能状態に該当する場合、前記自車両における前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する場合に比べて前記自車両の目標減速度を大きくする。
【0014】
第7の発明は、車両群を構成する各車両の制御装置による車両群の制御方法であり、次の特徴を有する。
前記制御方法は、
前記制御装置が搭載された車両を示す自車両の速度情報と、前記車両群が隊列走行する道路の前方の走行規制地点に設けられた交通信号機の灯火色情報と、前記自車両から前記走行規制地点の入口までの距離情報と、に基づいて、前記走行規制地点の手前での前記自車両の車両状態を予測するステップと、
前記予測された車両状態の情報を、前記車両群を構成する前記自車両以外の車両に送信するステップと、
を備える。
前記車両状態は、進入不可能状態と、第1及び第2進入可能状態と、を含む。前記進入不可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、前記走行規制地点への進入が不可能である状態を示す。前記第1進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミング以降に当該開始タイミングでの前記自車両の速度が維持されることで、前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。前記第2進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミングで前記自車両の減速を開始すると前記走行規制地点に進入してしまうが、当該開始タイミングよりも前に前記自車両の一時的な加速を行えば前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。
前記制御方法は、更に、
前記予測された車両状態の情報に基づいて、前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれるか否かを判定ステップと、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれると判定された場合、前記自車両が前記走行規制地点に進入しないように前記自車両を制御するステップと、
を備える。
【0015】
第8の発明は、車両群を構成する各車両の制御装置による車両群の制御方法であり、次の特徴を有する。
前記制御方法は、
前記制御装置が搭載された車両を示す自車両の速度情報と、前記車両群が隊列走行する道路の前方の走行規制地点に設けられた交通信号機の灯火色情報と、前記自車両から前記走行規制地点の入口までの距離情報と、に基づいて、前記走行規制地点の手前での前記自車両の車両状態を予測するステップと、
前記予測された車両状態の情報を、前記車両群を構成する前記自車両以外の車両に送信するステップと、
を備える。
前記車両状態は、進入不可能状態と、第1及び第2進入可能状態と、を含む。前記進入不可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、前記走行規制地点への進入が不可能である状態を示す。前記第1進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミング以降に当該開始タイミングでの前記自車両の速度が維持されることで、前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。前記第2進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミングで前記自車両の減速を開始すると前記走行規制地点に進入してしまうが、当該開始タイミングよりも前に前記自車両の一時的な加速を行えば前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。
前記制御方法は、更に、
前記予測された車両状態の情報に基づいて、前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれるか否かを判定するステップと、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第1進入可能状態に該当する場合、前記自車両の目標速度を現在速度に維持するステップと、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第2進入可能状態に該当する場合、前記現在速度よりも高く、かつ、許容上限速度よりも低い速度まで前記自車両の目標速度を上昇させるステップと、
を備える。
【0016】
第9の発明は、車両群を構成する各車両の制御装置による車両群の制御方法であり、次の特徴を有する。
前記制御方法は、
前記制御装置が搭載された車両を示す自車両の速度情報と、前記自車両の外部状況の情報と、前記車両群が隊列走行する道路の前方の走行規制地点に設けられた交通信号機の灯火色情報と、前記自車両から前記走行規制地点の入口までの距離情報と、に基づいて、前記走行規制地点の手前での前記自車両の車両状態を予測するステップと、
前記予測された車両状態の情報を、前記車両群を構成する前記自車両以外の車両に送信するステップと、
を備える。
前記車両状態は、進入不可能状態と、第1及び第2進入可能状態と、を含む。前記進入不可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、前記走行規制地点への進入が不可能である状態を示す。前記第1進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミング以降に当該開始タイミングでの前記自車両の速度が維持されることで、前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。前記第2進入可能状態は、前記交通信号機が青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミングで前記自車両の減速を開始すると前記走行規制地点に進入してしまうが、当該開始タイミングよりも前に前記自車両の一時的な加速を行えば前記走行規制地点への進入が可能である状態を示す。
前記制御方法は、更に、
前記予測された車両状態の情報に基づいて、前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれるか否かを判定するステップと、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記第1進入可能状態に該当する場合、前記自車両の目標速度を現在速度に維持するステップと、
前記予測された車両状態が前記進入不可能状態に該当する車両が前記車両群に含まれないと判定され、かつ、前記自車両における前記予測された車両状態が前記ジレンマ状態に該当する場合、前記自車両の外部状況の情報に基づいて、前記車両群が隊列走行している第1車線から前記第1車線に隣接する第2車線への車線変更を前記自車両が実行可能か否かを判定するステップと、
前記車線変更を前記自車両が実行可能であると判定された場合は、前記車線変更を実行するステップと、
前記車線変更を前記自車両が実行可能でないと判定された場合は、前記現在速度よりも高く、かつ、許容上限速度よりも低い速度まで前記自車両の目標速度を上昇させるステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0017】
第1又は7の発明によれば、車両群を構成する各車両の車両状態が予測され、車両群の間で共有される。また、この共有情報に基づいて、予測された車両状態が進入不可能状態に該当する車両が車両群に含まれると判定された場合、自車両が走行規制地点に進入しないように自車両が制御される。つまり、車両群を構成する各車両が走行規制地点に進入しないように制御される。従って、走行規制地点で車両群が分断されるのを抑えることが可能となる。
【0018】
第2又は6の発明によれば、予測された車両状態が進入不可能状態に該当する車両が車両群に含まれると判定され、かつ、自車両における予測された車両状態が第1又は第2進入可能状態に該当する場合、自車両における予測された車両状態が進入不可能状態に該当する場合に比べて急減速が行われる。従って、自車両における予測された車両状態が第1又は第2進入可能状態に該当する場合においても、自車両を走行規制地点に進入させずに走行規制地点の手前で停止させることが可能となる。
【0019】
第3又は8の発明によれば、車両群を構成する各車両の車両状態が予測され、車両群の間で共有される。また、この共有情報に基づいて、予測された車両状態が進入不可能状態に該当する車両が車両群に含まれるか否かが判定される。そして、予測された車両状態が進入不可能状態に該当する車両が車両群に含まれないと判定された場合は、自車両における予測された車両状態に応じて、自車両の目標速度が現在速度に維持され、又は、自車両の目標速度が上昇させられる。つまり、車両群を構成する各車両が走行規制地点に進入するように制御される。従って、走行規制地点で車両群が分断されるのを抑えることが可能となる。
【0020】
第4又は9の発明によれば、車両群を構成する各車両の車両状態が予測され、車両群の間で共有される。また、この共有情報に基づいて、予測された車両状態が進入不可能状態に該当する車両が車両群に含まれるか否かが判定される。また、予測された車両状態が進入不可能状態に該当する車両が車両群に含まれないと判定された場合は、自車両における予測された車両状態に応じて、自車両の目標速度が現在速度に維持され、自車両の車線変更が実行され、又は、自車両の目標速度が上昇させられる。何れの場合においても、車両群を構成する各車両が走行規制地点に進入するように制御される。従って、走行規制地点で車両群が分断されるのを抑えることが可能となる。
【0021】
第5の発明によれば、予測された車両状態が進入不可能状態に該当する車両が車両群に含まれると判定された場合、自車両が走行規制地点に進入しないように自車両が制御される。つまり、車両群を構成する各車両が、走行規制地点に進入しないように制御される。従って、走行規制地点で車両群が分断されるのを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の概要を説明する図である。
図2】黄信号の開始タイミングでの自車両の位置から停止線までの距離と、車速との関係の一例を示した図である。
図3図1に示した交差点の手前での先頭車両の車両状態を説明する図である。
図4】先頭車両を交差点に進入させるための自動運転制御例を説明する図である。
図5】先頭車両の車両状態が進入不可能状態と予測される場合を説明する図である。
図6】交差点の手前での自動運転制御の第1の例を説明する図である。
図7】交差点の手前での自動運転制御の第2の例を説明する図である。
図8】交差点の手前での自動運転制御の第3の例を説明する図である。
図9】交差点の手前での自動運転制御の第4の例を説明する図である。
図10】第1実施形態に係る制御システムの構成例を示すブロック図である。
図11】車両群を構成する各車両の制御装置が行う車車間通信に関連する処理の流れを説明するフローチャートである。
図12】車両群を構成する各車両の制御装置が行う自動運転制御に関連する処理の流れを説明するフローチャートである。
図13】車車間通信情報に予測された車両情報が含まれる場合に各車両の制御装置が行う処理の流れを説明するフローチャートである。
図14】第2実施形態の概要を説明する図である。
図15】交差点の手前での自動運転制御の第5の例を説明する図である。
図16】交差点の手前での自動運転制御の第6の例を説明する図である。
図17】車車間通信情報に予測された車両情報が含まれる場合に各車両の制御装置が行う処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両群の制御システム(以下、単に「制御システム」とも称す。)について説明する。尚、実施形態に係る車両群の制御方法は、実施形態に係る制御システムにおいて行われるコンピュータ処理により実現される。また、各図において、同一又は相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化し又は省略する。
【0024】
第1実施形態
まず、図1~12を参照しながら第1実施形態について説明する。
【0025】
1.第1実施形態の概要
1-1.前提
図1は、第1実施形態の概要を説明する図である。図1には、車線LN上を同一の方向に走行する車両群MGが描かれている。車両群MGは、3台の車両M1~M3から構成されている。車両M1は車両群MGの先頭車両であり、車両M3は車両群MGの末尾車両である。ただし、車両群MGは、2台の車両から構成されていてもよいし、4以上の車両から構成されていてもよい。
【0026】
車両群MGの前方には、交差点PIが位置している。交差点PIには交通信号機TSが設けられている。交通信号機TSが設けられた交差点PIは、車両群MGの走行を規制する「走行規制地点」の一例である。「走行規制地点」の別の例としては、交差点以外の道路であって、交通信号機が路肩に設けられた道路の地点が挙げられる。図1に示す交差点PIの入口付近には、停止線SLが設けられている。停止線SLは、交通信号機TSが赤信号を表示する間、交差点PIへの進入を待機する目標位置を示す線である。尚、停止線SLから車両M1までの間に、車両群MGを構成する車両以外の車両は存在していない。
【0027】
車両M1~M3の各車両は、制御装置を備えている。車両M1~M3の各制御装置は、自車両の「自動運転制御」を行う。ここでいう「自車両」とは、制御装置の搭載先の車両を意味している。自動運転制御は、自車両を自律的に走行させるための車両制御である。自動運転制御では、自車両の操舵、加速及び減速が制御される。
【0028】
車両M1~M3の各車両の自動運転制御には、自車両の速度を許容上限速度以下の設定速度に維持する制御が含まれる。車両M1~M3の各車両の自動運転制御には、また、各車両にとっての先行車両の走行に追従する制御も含まれる。ここでいう「先行車両」とは、自車両から見て1台前を走行する車両である。車両M1~M3の各車両の自動運転制御には、更に、自車両の前方障害物との衝突を回避する制御も含まれる。
【0029】
車両M1~M3の各車両は、また、通信装置を備えている。車両M1~M3の各通信装置は、「車車間通信(以下、「V2V通信」とも称す。)」を行う。V2V通信において、車両M1の通信装置は、車両M2及びM3に各種情報を送信する。車両M1の通信装置は、また、車両M2及びM3から各種情報を受信する。車両M2の通信装置は、車両M1及びM3に各種情報を送信し、これらの車両から各種情報を受信する。車両M3の通信装置は、車両M1及びM2に各種情報を送信し、これらの車両から各種情報を受信する。
【0030】
車両間でやり取りされる各種情報には、各車両の車両状態の情報が含まれる。車両状態の情報としては、車両の速度情報及び位置情報(例えば、緯度及び経度情報)が例示される。車両状態の情報には、後述する「予測された車両状態」の情報も含まれる。
【0031】
車両M1~M3の各通信装置は、また、「路車間通信(以下、「V2I通信」とも称す。)」を行う。V2I通信において、車両M1~M3の各通信装置は、交通信号機TSの通信機CDから各種情報を受信する。
【0032】
通信機CDからの各種情報には、交通信号機TS又は交通信号機TSに対応する停止線SLの位置情報(例えば、緯度及び経度情報)及び灯火色情報が含まれる。灯火色情報としては、現在灯火されている信号の色(例えば、青又は赤)の情報と、その色が別の色に変わるまでの残り時間の情報とが例示される。尚、通信機CDからの各種情報は、V2I通信を行う車両(例えば、車両M1)から他の車両(例えば、車両M2及びM3)に、V2V通信によって提供されてもよい。
【0033】
1-2.交差点PIの手前での自動運転制御
1-2-1.黄信号時の車両状態
まず、図2を参照して、交通信号機TSが青信号から黄信号の開始タイミングの自車両の車両状態を説明する。図2は、黄信号の開始タイミングでの自車両の位置から停止線までの距離と、車速との関係の一例を示した図である。図2に示される曲線L1は、黄信号の開始タイミングから自車両に許容される減速度(以下、「許容減速度C0」とも称す。)で減速し始めたときに、停止線SLの位置で停止することのできる車両状態(停止線までの距離及び車速)を表している。直線L2は、黄信号の開始タイミングから赤信号の開始タイミングまでの間、黄信号の開始タイミングでの自車両の速度を維持して走行したときに、停止線SLの位置に到達できる車両状態を表している。
【0034】
曲線L1の右側に示される領域(i)の車両状態は、黄信号の開始タイミングから許容減速度C0以下で減速することで、停止線SLよりも手前の位置で停止することができる状態を意味する。直線L2の左側に示される領域(ii)の車両状態は、黄信号の開始タイミングから赤信号の開始タイミングまでの間、黄信号の開始タイミングでの自車両の速度を維持して走行したときに、停止線SLの位置を越えて交差点PIに進入することができる状態を意味する。
【0035】
曲線L1の左側、かつ、直線L2の右側に示される領域(iii)の車両状態は、黄信号の開始タイミングから許容減速度C0で減速した場合、停止線SLの位置を越えてしまう状態を意味する。領域(iii)の車両状態は、また、黄信号の開始タイミングから赤信号の開始タイミングまでの間、黄信号の開始タイミングでの自車両の速度を維持して走行した場合、赤信号の開始タイミング後に停止線SLの位置を越えてしまう状態を意味する。つまり、領域(iii)の車両状態では、車速を維持して進めば信号無視となり、許容減速度C0で走行すれば停止線SLの位置を越えてしまう。故に、領域(iii)は、ジレンマゾーンとも呼ばれる。
【0036】
曲線L1の右側、かつ、直線L2の左側に示される領域(iv)は、領域(i)と領域(ii)が重複する領域である。領域(iv)の車両状態では、黄信号の開始タイミングでの自車両の速度を維持して走行すれば、赤信号の開始タイミングまでに交差点PIに進入することができ、かつ、許容減速度C0で走行すれば停止線SLの位置で停止することもできる。故に、領域(iv)は、オプションゾーンとも呼ばれる。
【0037】
1-2-2.交差点PIの手前での車両状態
図2で説明した車両状態は、黄信号の開始タイミングよりも前に予測することが可能である。実施形態では、車両M1~M3の各制御装置が、各種情報に基づいて、交差点PIの手前での自車両の車両状態を予測する。予測された車両状態(以下、「予測状態PS」とも称す。)は、進入不可能状態SUA、第1進入可能状態SAB1及び第2進入可能状態SAB2に区別される。以下、説明の便宜上、進入不可能状態SUAを「状態SUA」とも称す。また、第1進入可能状態SAB1を「状態SAB1」とも称し、第2進入可能状態SAB2を「状態SAB2」とも称す。
【0038】
状態SUAは、交通信号機TSが青信号から黄信号に変わった場合、交差点PIへの進入が不可能である状態を示す。状態SAB1は、交通信号機TSが青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミング以降に当該開始タイミングでの自車両の速度が維持されることで、交差点PIへの進入が可能である状態を示す。状態SAB2は、交通信号機TSが青信号から黄信号に変わった場合、黄信号の開始タイミングで自車両の減速を開始すると交差点PIに進入してしまうが、当該開始タイミングよりも前に自車両の一時的な加速を行えば交差点PIへの進入が可能である状態を示す。
【0039】
図3は、図1に示した交差点PIの手前での車両M1の車両状態の一例を説明する図である。図3に示されるように、交差点PIの手前での車両M1の車両状態は、車両M1から交差点PIの入口(即ち、停止線SL)までの距離dと、車両M1がこの入口に到達するまでの所要時間tと、によって予測することができる。尚、所要時間tは、距離dと、車両M1の現在速度と、を用いて計算される。また、距離dは、交通信号機TS又は停止線SLの位置情報と、車両M1の位置情報と、を用いて計算される。
【0040】
図3に示される「G」、「Y」及び「R」は、交通信号機TSの灯火色を示している。図3に示されるように、交通信号機TSでは、「G」、「Y」、「R」の順に灯火色が遷移する。図3の時間軸方向に延びる灯火色の幅は、各色の灯火時間の長さの一例を示している。灯火時間の例として、図3には、灯火例C1及びC2が示されている。これらの例では、車両M1が停止線SLに近づく間に灯火色が「G」から「Y」に変わっている。
【0041】
車両M1が一定速度で走行する間は、時間tの経過に伴い車両M1が停止線SLに徐々に近づく。車両M1が停止線SLに到達すると距離dがゼロになる。灯火例C1は、灯火色が「G」から「Y」に変わるタイミングt1の前後において車両M1の速度が維持されている。この結果、車両M1は、灯火色が「Y」から「R」に変わるタイミング以前に停止線SLの位置を通過する。タイミングt1での車両M1の車両状態は、「状態SAB1」の一例に相当する。
【0042】
一方、灯火例C2は、灯火色が「G」から「Y」に変わるタイミングt2において目標減速度を減速度G1(例えば、許容減速度C0以下の減速度)とする減速を開始すると、停止線SLの手前で車両M1を停止させることができる例である。つまり、タイミングt2よりも後のタイミングでの車両M1の車両状態は、「状態SUA」の一例に相当する。
【0043】
尚、図3で説明した車両M1の車両状態は、車両M2及びM3の車両状態の説明にも適用することができる。
【0044】
1-2-3.路車間通信情報を用いた車両状態の予測
ここで、灯火例C1におけるタイミングt1での車両M1の予測状態PSをS1(t1,d1)と表す。交通信号機TSからの各種情報は、タイミングt1よりも前に取得される。そのため、車両M1の制御装置は、タイミングt1での車両M1の予測状態PSの計算を、タイミングt1よりも前に行う。つまり、灯火例C1の場合、車両M1の予測状態PSが車両状態S1(t1,d1)となることは、タイミングt1よりも前に計算される。
【0045】
車両M1の予測状態PSが図3で説明した車両状態S1(t1,d1)である場合、交差点PIの手前での車両M1の車両状態は上記「状態SAB1」に該当すると言える。よって、この場合、車両M1の制御装置は、タイミングt1での車両M1の予測状態PSの計算前後において車両M1の現在速度を維持する自動運転制御を行う。これにより、車両M1は交差点PIに進入し、交差点PIを通過する。
【0046】
またここで、灯火例C2におけるタイミングt2での車両M1の予測状態PSをS2(t2,d2)と表す。上述したタイミングt1での計算同様、タイミングt2での車両M1の予測状態PSの計算も、タイミングt2よりも前に行われる。つまり、灯火例C2の場合、車両M1の予測状態PSが車両状態S2(t2,d2)となることは、タイミングt2よりも前に計算される。そのため、この場合、車両M1の制御装置は、目標減速度を減速度G1に設定して自車両を減速させる自動運転制御を行う。これにより、車両M1は停止線SLの手前で停止する。
【0047】
ただし、灯火例C2の場合は、車両M1を交差点PIに進入させることもできる。この場合の自動運転制御例について、図4を参照しながら説明する。既に説明したように、タイミングt2での車両M1の予測状態PSの計算は、タイミングt2よりも前に行われている。この計算が完了したタイミングをt3とする。図4に示す例では、このタイミングt3以降、かつ、タイミングt2以前に、車両M1を一時的に加速させる自動運転制御が行われる。そうすると、車両M1が交差点PIに進入することが許される状況に変わる可能性がある。この場合は、灯火例C1の場合と同様の考え方により、車両M1は交差点PIに進入することが可能となる。
【0048】
ここで、車両M1の許容上限速度を考える。そうすると、車両M1の一時的な加速によって車両M1の速度を許容上限速度まで上昇させ、これにより、車両M1が交差点PIに進入することが許される状況に変えることのできるタイミングt4を特定できる。そして、このタイミングt4の特定は、タイミングt2よりも前に行うことができる。そうすると、図3で説明したタイミングt2よりも後のタイミングでの車両M1の車両状態と、図4で説明したタイミングt4での車両M1の予測状態PS(車両状態S4(t4,d4))との間の車両状態は、「状態SAB2」に該当すると言える。

【0049】
許容上限速度は、例えば、車両M1の自動運転制御における車両M1の上限速度である。故に、タイミングt4よりも前に車両M1の速度を許容上限速度まで上昇させる必要がある車両状態は、「状態SUA」にあると言える。また、上記「状態SAB1」又は「SAB2」にあると予測されうる場合であっても、車両M1の外部状況によっては「状態SUA」と予測されることがある。この場合について、図5を参照しながら説明する。
【0050】
図5は、車両M1の予測状態PSが「状態SUA」と計算される場合について説明する図である。図1の説明では、停止線SLから車両M1までの間に、車両群MGを構成する車両以外の車両は存在していないことを前提とした。しかしながら、停止線SLから車両M1までの間に減速要因(例えば、車両M1にとっての先行車両)が存在するときがある。この場合は、タイミングt3よりも後において、車両M1を減速させる自動運転制御が開始される可能性がある。そうすると、タイミングt2での車両M1の車両状態が変わり、車両M1は交差点PIに進入することが不可能となる。この場合の車両状態は「状態SUA」にあると言える。
【0051】
図4及び5で説明した車両M1の予測状態PSの計算は、車両M2及びM3の予測状態PSの計算の説明にも適用することができる(ただし、減速要因が存在する場合の予測状態PSの計算は除く)。このように、第1実施形態では、交差点PIの手前での自車両の予測状態PSの計算が車両M1~M3の各制御装置によって行われる。
【0052】
1-2-4.予測された車両状態を利用した各車両の自動運転制御
第1実施形態では、また、車両M1~M3の各制御装置が、これらの車両の予測状態PSに基づいて、交差点PIの手前での自動運転制御を個別に実行する。ただし、交差点PIで車両群GMが分断されるのを避けるため、第1実施形態では、交差点PIへの進入に関する車両群MGの動作(具体的には交差点PIへの進入、非進入)が同じ動作となるように自動運転制御が実行される。このような自動運転制御の例について、以下説明する。
【0053】
(1)第1の例
図6は、交差点PIの手前での自動運転制御の第1の例を説明する図である。第1の例では、車両M1~M3の予測状態PSが全て「状態SAB1」と計算されている。また、第1の例では、停止線SLから車両M1までの間に減速要因が存在していない。よって、第1の例では、車両M1~M3の各制御装置は、自車両の目標速度を現在速度に設定して自車両の現在速度を維持する自動運転制御を行う。これにより、車両M1~M3の全ての車両は交差点PIに進入し、交差点PIを通過する。
【0054】
(2)第2の例
図7は、交差点PIの手前での自動運転制御の第2の例を説明する図である。第2の例では、車両M1~M3の予測状態PSが全て「状態SUA」と計算されている。また、第2の例では、停止線SLから車両M1までの間に減速要因が存在していない。よって、第2の例では、車両M1~M3の各制御装置は、目標減速度を減速度G1に設定して自車両を減速させる自動運転制御を行う。これにより、車両M1は交差点PIに進入せず、停止線SLの手前で停止する。また、車両M2は車両M1の後方で停止し、車両M3は車両M2の後方で停止する。
【0055】
第2の例において、タイミングt51では車両M1の減速が開始され、タイミングt52では車両M2の減速が開始され、タイミングt53では車両M3の減速が開始される。このように減速の開始タイミングを変える理由は、次のとおりである。即ち、車両M3の減速の開始タイミングがタイミングt51の場合は、早過ぎる減速の開始が車両M3の後続車両のドライバに違和感を与える可能性があるためである。
【0056】
ただし、タイミングt51それ自体を遅くすることで上記の問題は解消し得る。この場合は、車両M1~M3の各車両の減速の開始タイミングを揃えてもよい。この場合は、各車両の自動運転制御における目標減速度を減速度G2(ただし、G1<G2<G0)に設定すればよい。目標減速度を減速度G2に設定すれば、目標減速度を減速度G1に設定する場合に比べて急減速が行われるので、車両M1~M3を停止線SLの手前で停止させることが可能となる。
【0057】
(3)第3の例
図8は、交差点PIの手前での自動運転制御の第3の例を説明する図である。第3の例では、車両M1の予測状態PSが「状態SAB1」又は「状態SAB2」と計算されている。一方、車両M3の予測状態PSは「状態SUA」と計算されている。そこで、第3の例では、車両M1~M3の各車両を停止線SLの手前で停止させるための自動運転制御が行われる。具体的に、車両M1の制御装置は、目標減速度を減速度G3(ただし、G1<G3<G0)に設定して自車両を減速させる自動運転制御を行う。また、車両M3の制御装置は、目標減速度を減速度G1に設定して自車両を減速させる自動運転制御を行う。
【0058】
車両M2の制御装置は、車両M2の予測状態PSの結果に応じて自車両を減速させる自動運転制御を行う。即ち、車両M2の予測状態PSが「状態SAB1」又は「状態SAB2」と計算された場合は、自動運転制御における目標減速度が減速度G3に設定される。車両M3の予測状態PSが「状態SUA」と計算された場合は、この目標減速度が減速度G1に設定される。なお、後者の場合は、目標減速度が減速度G3に設定されてもよい。
【0059】
何れにせよ、第3の例では、車両M1の目標減速度が減速度G3に設定される。つまり、第3の例では、車両M1の目標減速度が、第2の例でのそれよりも大きな値に設定される。
【0060】
(4)第4の例
図9は、交差点PIの手前での自動運転制御の第4の例を説明する図である。第4の例では、車両M1の予測状態PSが「状態SAB1」又は「状態SAB2」と計算されている。一方、車両M3の予測状態PSは「状態SAB2」と計算されている。そこで、第4の例では、車両M1~M3の全ての車両を交差点PIに進入させるための自動運転制御が行われる。具体的に、車両M1~M3の各制御装置は、自車両を一時的に加速させる自動運転制御を行う。この自動運転制御中の目標加速度は、現在速度と目標速度(<許容上限速度)とに基づいて、車両ごとに設定される。
【0061】
このように、第1実施形態によれば、交差点PIの手前においてに取得された各種情報に基づいて車両M1~M3の各車両の予測状態PSが計算され、この予測状態PSの情報が車両M1~M3の間で共有される。そして、この共有情報を利用して、交差点PIへの進入に関する車両群MGの動作を揃えるように車両M1~M3の各車両の自動運転制御が行われる。従って、交差点PIで車両群GMが分断されるのを抑えることが可能となる。
【0062】
以下、第1実施形態に係る制御システムについて詳細に説明する。
【0063】
2.制御システム
2-1.全体構成例
図10は、第1実施形態に係る制御システムの構成例を示すブロック図である。図10に示されるように、制御システム100は、車両システム10と、車両システム20と、車両システム30と、を備えている。車両システム10は、車両M1に搭載される。車両システム20は、車両M2に搭載される。車両システム30は、車両M3に搭載される。
【0064】
車両システム10は、自動運転制御を行うための構成として、外界センサ11と、内界センサ12と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機13と、地図データベース14と、を備えている。車両システム10は、また、各種アクチュエータ15と、通信装置16と、制御装置17と、を備えている。
【0065】
外界センサ11は、車両M1の外部状況を検出する機器である。外界センサ11としては、レーダセンサ及びカメラが例示される。レーダセンサは、電波(例えば、ミリ波)又は光を利用して、車両M1の周辺の物標を検出する。物標には、静的物標と動的物標が含まれる。静的物標としては、ガードレール、建物が例示される。動的物標としては、歩行者、自転車、オートバイ及び車両M1以外の車両が含まれる。カメラは、車両M1の外部の状況を撮像する。
【0066】
内界センサ12は、車両M1の走行状態を検出する機器である。内界センサ12としては、車速センサ、加速度センサ及びヨーレートセンサが例示される。車速センサは、車両M1の走行速度を検出する。加速度センサは、車両M1の加速度を検出する。ヨーレートセンサは、車両M1の重心の鉛直軸周りのヨーレートを検出する。
【0067】
GNSS受信機13は、3個以上の人工衛星からの信号を受信する装置である。GNSS受信機13は、車両M1の位置の情報を取得する装置でもある。GNSS受信機13は、受信した信号に基づいて、車両M1の位置及び姿勢(方位)を算出する。
【0068】
地図データベース14は、地図情報を記憶するデータベースである。地図情報としては、道路の位置情報、道路形状の情報(例えば、カーブ、直線の種別)、交差点、交差点に対応する停止線及び構造物の位置情報が例示される。地図情報には、交通規制情報も含まれている。地図データベース14は、車載の記憶装置(例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ)内に形成されている。地図データベース14は、車両M1と通信可能な施設(例えば、管理センタ)のコンピュータ内に形成されていてもよい。
【0069】
各種アクチュエータ15は、車両M1の走行装置が備えるアクチュエータである。各種アクチュエータ15としては、駆動アクチュエータ、制動アクチュエータ及び操舵アクチュエータが例示される。駆動アクチュエータは、車両M1を駆動する。制動アクチュエータは、車両M1に制動力を付与する。操舵アクチュエータは、車両M1のタイヤを転舵する。
【0070】
通信装置16は、車両M2、車両M3や、通信機CDと無線通信(即ち、V2V及びV2I通信)を行うための送信アンテナ及び受信アンテナを備えている。無線通信は、例えば、指向性の送信アンテナによって形成した狭ビームからなる指向性ビームを用いて行われる。狭ビームを用いてV2V通信を行う場合、パイロット信号を用いてビーム合わせを行う同期システムが用いられてもよい。無線通信の周波数は、例えば、1GHzよりも低い数百MHzでもよいし、1GHz以上の高周波数帯であってもよい。
【0071】
狭ビームを用いてV2V通信を行う場合、パイロット信号を用いてビームを同期させてもよい。例えば、車両M1からパイロット信号を車両M2及びM3に対して送信し、その狭ビームのパイロット信号を車両M2及びM3が広いビームモード又は無指向性ビームモードで検知し、その検知結果に基づいてこれらの車両の狭ビームの方向を調整する。
【0072】
制御装置17は、少なくとも1つのプロセッサ17aと、少なくとも1つのメモリ17bと、を有するマイクロコンピュータから構成される。メモリ17bには、少なくとも1つのプログラムが記憶されている。V2V及びV2I通信により取得された各種情報も、メモリ17bに格納される。メモリ17bに記憶されているプログラムが読み出されてプロセッサ17aで実行されることにより、制御装置17の各種の機能が実現される。この機能には、上述した車両M1の予測状態PSの計算が含まれる。この機能には、各種アクチュエータ15を用いた車両M1の自動運転制御を行う機能も含まれる。
【0073】
車両システム20は、外界センサ21と、内界センサ22と、GNSS受信機23と、地図データベース24と、を備えている。車両システム20は、また、各種アクチュエータ25と、通信装置26と、制御装置27と、を備えている。車両システム30は、外界センサ31と、内界センサ32と、GNSS受信機33と、地図データベース34と、を備えている。車両システム30は、また、各種アクチュエータ35と、通信装置36と、制御装置37と、を備えている。つまり、車両システム20及び30の基本的な構成は、車両システム10のそれと共通する。そのため、車両システム20及び30の個々の構成要素の例については、車両システム10の説明を参照されたい。
【0074】
2-2.各制御装置で行われる処理例
2-2-1.V2V通信に関連する処理例
図11は、車両M1~M3の各制御装置(各プロセッサ)が行うV2V通信に関連する処理の流れを説明するフローチャートである。図11に示されるルーチンは、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0075】
図11に示されるルーチンでは、まず、自車両の各種情報の取得が行われる(ステップS1)。ステップS1の処理で取得される各種情報としては、外界センサからの外部状況情報、内界センサからの走行状態情報、GNSS受信機からの位置及び姿勢情報、通信装置からのV2I通信情報が例示される。
【0076】
ステップS1の処理に続いて、V2V通信情報の生成が行われる(ステップS2)。V2V通信情報としては、自車両の速度情報及び位置情報が例示される。速度情報は、例えば、走行状態情報(車速センサ情報)に基づいて生成される。位置情報は、例えば、自車両の緯度及び経度情報と、地図情報と、に基づいて生成される。V2V通信情報には、予測状態PSも含まれる。予測状態PSは、自車両が交通規制地点に近づいたときに生成される。予測状態PSは、例えば、自車両の速度情報と、自車両の緯度及び経度情報と、交通信号機TSの緯度及び経度情報と、地図情報と、灯火色情報とに基づいて生成される。
【0077】
ステップS2の処理に続いて、ステップS2で生成したVSV通信情報の送信が行われる(ステップS3)。V2V通信情報の送信先は、車両群MGを構成する車両のうち、自車両以外の車両である。
【0078】
2-2-2.自動運転制御に関連する処理例
図12は、車両M1~M3の各制御装置(各プロセッサ)が行う自動運転制御に関連する処理の流れを説明するフローチャートである。図12に示されるルーチンは、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0079】
図12に示されるルーチンでは、まず、自車両の各種情報の取得が行われる(ステップS4)。ステップS4の処理で取得される各種情報としては、外界センサからの外部状況情報、内界センサからの走行状態情報、GNSS受信機からの位置及び姿勢情報、通信装置からのV2I及びV2V通信情報が例示される。
【0080】
ステップS4の処理に続いて、自車両の自動運転制御が行われる(ステップS5)。自動運転制御の処理の内容は、V2V通信情報に予測状態PSの情報が含まれるか否かで変わる。まず、V2V通信情報に予測状態PSの情報が含まれない場合の処理について説明する。この場合、プロセッサは、ステップS4で取得された各種情報に基づいて、自車両の目標軌道を生成する。この目標軌道は、自車両が到達すべき目標位置の集合である。目標軌道は、例えば、目標位置ごとの自車両の目標速度を含んでいる。プロセッサは、自車両と目標軌道の偏差(例えば、横偏差、ヨー角偏差および速度偏差)を計算し、この偏差が減少するように自車両の操舵、加速及び減速を制御する。
【0081】
V2V通信情報に予測状態PSの情報が含まれる場合の処理について、図13を参照しながら説明する。図13に示されるルーチンでは、まず、予測状態PSの情報に基づいて、予測状態PSが状態SAB2に該当する車両が車両群MGに含まれるか否かが判定される(ステップS51)。既に説明したように、状態SAB2は、自車両の一時的な加速を行えば交通信号機が黄信号に変わる前の走行規制地点への進入が可能である状態を示す。ステップS51の判定結果が否定的な場合、後述するステップS56に進む。
【0082】
ステップS51の判定結果が肯定的な場合、予測状態PSが状態SUAに該当する車両が車両群MGに含まれるか否かが判定される(ステップS52)。既に説明したように、状態SUAは、交通信号機が黄信号に変わる前の走行規制地点への進入が不可能である状態を示す。ステップS52の判定結果が否定的な場合、後述するステップS57に進む。
【0083】
ステップS52の判定結果が肯定的な場合は、交通信号機TSが黄信号に変わる前の交差点PIへの進入が不可能な車両が車両群MGに含まれると判断できる。そのため、この場合は、走行規制地点で車両群MGが分断されるのを避けるため、この走行規制地点に進入しないための制御が行われる。具体的には、自車両の予測状態PSが状態SAB1又はSAB2であるか否かが判定される(ステップS53)。既に説明したように、状態SAB1は、自車両の速度が現在速度に保たれた場合に、交通信号機が黄信号に変わる前の走行規制地点への進入が可能である状態を示す。
【0084】
ステップS53の判定結果が否定的な場合は、自車両の予測状態PSが状態SUAであることを意味する。従ってこの場合は、減速度G1での減速を実行する。具体的に、プロセッサは、図12のステップS4で取得した各種情報に基づいて自車両の目標停止位置を設定する。プロセッサは、また、この目標停止位置で自車両を停止させるための減速の開始タイミングを計算する(ステップS54)。そして、この開始タイミングが到来したら、目標減速度を減速度G1に設定して自車両の減速を行う(ステップS54)。
【0085】
一方、ステップS53の判定結果が肯定的な場合は、自車両が走行規制地点に進入する可能性があることを意味する。従ってこの場合は、減速度G3(>G1)での減速を即時に実行する。具体的に、プロセッサは、図12のステップS4で取得した各種情報に基づいて自車両の目標停止位置を設定する。そして、プロセッサは、また、この目標停止位置で自車両を停止させるために、目標減速度を減速度G3に設定して自車両の減速を行う(ステップS55)。尚、図8で説明した第3の例は、ステップS53の判定を経てステップS54又はS55の処理が行われた場合に対応している。
【0086】
ステップS56の処理では、車両群MGを構成する全ての車両の予測状態PSが状態SUAであるか否かが判定される。ステップS56の判定結果が肯定的な場合は、ステップS54に進み、減速度G1での減速が実行される。尚、図7で説明した第2の例は、ステップS56の判定を経てステップS54の処理が行われた場合に対応している。
【0087】
一方、ステップS56の判定結果が否定的な場合は、車両群MGを構成する全ての車両の予測状態PSが状態SAB1であることを意味する。従ってこの場合は、自車両の目標速度を現在速度に設定し、自車両の速度を現在速度に維持する制御が実行される(ステップS58)。尚、図6で説明した第1の例は、ステップS56の判定を経てステップS58の処理が行われた場合に対応している。
【0088】
ステップS52の判定結果が否定的な場合は、自車両の予測状態PSが、状態SAB1又はSAB2であることを意味する。そのため、この予測状態PSを特定すべく、ステップS57の処理では、自車両の予測状態PSが状態SAB2であるか否かが判定される。ステップS57の判定結果が肯定的であるということは、自車両の予測状態PSが状態SAB2に該当することを意味する。この場合は、自車両を走行規制地点に進入させるため、自車両の一時的な加速が行われる(ステップS59)。尚、図9で説明した第4の例は、ステップS59の処理が行われた場合に対応している。
【0089】
一方、ステップS57の判定結果が否定的であるということは、自車両の予測状態PSが状態SAB1に該当することを意味する。この場合は、ステップS58の処理が行われる。即ち、自車両の目標速度が現在速度に設定され、自車両の速度を現在速度に維持する制御が実行される。
【0090】
3.効果
以上説明した第1実施形態によれば、走行規制地点の手前において取得された各種情報に基づいて各車両の予測状態PSが計算され、この予測状態PSの情報が車両群MGの間で共有される。そしてこの共有情報を利用して、走行規制地点への進入に関する車両群MGの動作を揃えるように各車両の自動運転制御が行われる。従って、走行規制地点で車両群GMが分断されるのを抑えることが可能となる。
【0091】
第2実施形態
次に、図14~17を参照しながら第2実施形態について説明する。尚、第2実施形態に係る制御システムの構成例は、第1実施形態のそれと基本的に共通する。そのため、構成例の説明については省略される。その他、第1実施形態の説明と共通する説明についても適宜省略される。
【0092】
1.第2実施形態の概要
図14は、第2実施形態の概要を説明する図である。図14の上段には、同一の方向に走行する車両群MGが描かれている。車両群MGは、車両M1~M3から構成されている。ここまでは、図1の説明と同じである。図1の説明と異なる点は、車両群MGが走行可能な車線LNが、車線L1と車線L2を含んでいることにある。例えば、車線L1は走行車線であり、車線L2は追い越し車線である。図14に示される例では、車両群MGが車線L1を走行している。
【0093】
図9の第4の例で説明したように、第1実施形態では、車両M1及びM2の予測状態PSが「状態SAB1」又は「状態SAB2」であり、かつ、車両M3の予測状態PSが「状態SAB2」である場合、車両M1~M3の各車両を一時的に加速させる自動運転制御が行われた。これに対し、第2実施形態では、車両M3の制御装置が自車両の走行車線を車線L1から車線L2に変更する自動運転制御を行う。
【0094】
車両M3の車線変更は、車両M3を一時的に加速させる自動運転制御の代わりに行われる。車両M3の車線変更は、例えば、車線L2上に車両M3の減速要因が存在していないことを条件として行われる。車両M3の車線変更中は、車両M3を一時的に加速させる。これにより、車両M3は車両M1又はM2と並走しながら交差点PIに進入する。
【0095】
図15は、交差点PIの手前での自動運転制御の第5の例を説明する図である。第5の例では、車両M1及びM2の予測状態PSが「状態SAB1」と計算されている。一方、車両M3の予測状態PSは「状態SAB2」と計算されている。第5の例では、車両M1~M3の全ての車両を交差点PIに進入させるための自動運転制御が行われる。具体的に、車両M1及びM2の各制御装置は、自車両の現在速度を維持する自動運転制御を行う。一方、車両M3の制御装置は、走行車線を変更する自動運転制御を行う。車線変更中の目標加速度は、現在速度と目標速度とに基づいて設定される。
【0096】
図16は、交差点PIの手前での自動運転制御の第6の例を説明する図である。第6の例では、車両M1~M3の予測状態PSが全て「状態SAB2」と計算されている。図15に示した第5の例と異なり、第6の例では、車両M1及びM2の各制御装置が、自車両を一時的に加速させる自動運転制御を行う。この自動運転制御中の目標加速度は、現在速度と目標速度とに基づいて、車両ごとに設定される。車両M3の制御装置が走行車線を変更する自動運転制御を行う点は、図15に示した第5の例と同じである。
【0097】
既に説明したように、V2I通信を用いた予測状態PSの計算は、灯火色が「G」から「Y」に変わるタイミングよりも前に行われる。そのため、車両M3の予測状態PSが「状態SAB2」に該当する場合に車両M3の車線変更を検討することは、車両M3を交差点PIに進入させる選択肢が増えることになる。従って、交通信号機TSが黄信号に変わる前に車両群MGの全ての車両を交差点PIに進入させる確率を高めて、車両群MGの分断を良好に抑えることが可能となる。
【0098】
車両M3の車線変更は、車両M2の自動運転制御にも適用することができる。更に、車両M3の車線変更は、車両M1の自動運転制御にも適用することができる。このように、第2実施形態では、車両M1~M3の予測状態PSが全て「状態SAB2」と計算されている場合において、車線変更の実行条件が満たされるときには、少なくとも車両M3の車線変更が行われる。
【0099】
第2実施形態の自動運転制御は、停止線SLから車両M1までの間に減速要因が存在する場合に有効である。何故なら、第1実施形態では、停止線SLから車両M1までの間に減速要因が存在する場合は、一時的な加速の開始後に車両M1~M3を減速させる自動運転制御が開始される可能性がある。この点、第2実施形態によれば、車線L1上に減速要因が存在していたとしても、車線L2上に減速要因が存在していなければ、車両M1~M3の車線変更が可能となる。従って、交通信号機TSが黄信号に変わる前に、車両M1~M3の全ての車両を交差点PIに進入させることが可能となる。
【0100】
2.自動運転制御に関連する処理例
図17は、車両M1~M3の各制御装置(各プロセッサ)が行う自動運転制御に関連する処理の流れを説明するフローチャートである。図17に示されるルーチンの処理は、図13に示したルーチンの処理の代わりに実行される。つまり、図17に示されるルーチンの処理は、図12に示したステップS5の処理において、V2V通信情報に予測状態PSの情報が含まれる場合に実行される。
【0101】
図17に示されるルーチンでは、ステップS57の判定結果が肯定的な場合、車線変更が実行可能であるか否かが判定される(ステップS61)。車線変更が実行可能であるか否かは、例えば、現在走行中の車線の隣に車線が存在すること、及び、この隣接車線上に自車両の減速要因が存在していないことが挙げられる。これらの条件が満たされるか否かは、例えば、外部状況の情報に基づいて判定される。
【0102】
ステップS61の判定結果が肯定的な場合、車線変更の開始タイミングを計算する(ステップS62)。そして、この開始タイミングが到来したら、自車両の車線変更を行う(ステップS62)。車線変更中の目標加速度は、現在速度と目標速度とに基づいて設定される。一方、ステップS61の判定結果が否定的な場合、自車両を走行規制地点に進入させるため、自車両の一時的な加速が行われる(ステップS63)。
【0103】
3.効果
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態による効果に加えて次の効果が得られる。即ち、予測状態PSが「状態SAB2」に該当する場合、自車両の車線変更を検討することができる。従って、予測状態PSが「状態SAB2」に該当する車両を走行規制地点に進入させる選択肢が増えることになる。従って、交通信号機TSが黄信号に変わる前に車両群MGの全ての車両を交差点PIに進入させる確率を高めて、車両群MGの分断を良好に抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0104】
10,20,30 車両システム
16,26,36 通信装置
17,27,37 制御装置
17a,27a,37a プロセッサ
17b,27b,37b メモリ
100 制御システム
CD 通信機
LN,L1,L2 車線
M1,M2,M3 車両
MG 車両群
PI 交差点
PS 予測された車両状態
SL 停止線
TS 交通信号機
SAB1 第1進入可能状態
SAB2 第2進入可能状態
SUA 進入不可能状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17