(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】分析法開発支援方法及び分析法開発支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/02 20060101AFI20240903BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G01N30/02 Z
G01N30/86 Z
(21)【出願番号】P 2021158880
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 智裕
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-250060(JP,A)
【文献】国際公開第2021/024396(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/110268(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/194827(WO,A1)
【文献】特開平02-300660(JP,A)
【文献】特表2017-534060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00~30/96
B01J 20/281~20/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフ装置での分析結果を利用して、目的とする分析に適した複数の分析条件それぞれのパラメーター値の組合せを決定する作業を支援する分析法開発支援方法であって、
複数の分析条件のパラメーター値の所定の組合せにおいてクロマトグラフ装置により
取得したクロマトグラムデータから求まる解析結果に基いて、該複数の分析条件のパラメーター値
の組合せと解析結果との関係を示すグラフ
を作成し、該グラフを表示部の画面上に表示するグラフ表示ステップと、
ユーザーによる
、解析結果である数値の上限、下限、又は範囲のいずれか一つの制約条件の入力を受け付ける入力受付ステップと、
受け付けた制約条件の下で
解析結果の数値が予め決めた探索条件を満たす前記複数の分析条件のパラメーター値の組合せを探索する探索実行ステップと、
前記探索実行ステップによる探索結果を前記グラフ上に表示する探索結果表示ステップと、
を有する分析法開発支援方法。
【請求項2】
前記探索条件は前記制約条件の下
で解析結果の数値が最大である、請求項1に記載の分析法開発支援方法。
【請求項3】
前記入力受付ステップでは、さらに、ユーザーによる、前記複数の分析条件のパラメーター値それぞれについての許容幅の入力を受け付け、
前記探索実行ステップでは、前記複数の分析条件のパラメーター値がそれぞれ前記許容幅だけ変動した場合であっても
、解析結果の数値が前記制約条件を満たすような前記複数の分析条件のパラメーター値の探索範囲内で、該複数の分析条件のパラメーター値の組合せを探索する、請求項1に記載の分析法開発支援方法。
【請求項4】
前記探索条件は前記探索範囲内
で解析結果の数値が最大である、請求項3に記載の分析法開発支援方法。
【請求項5】
前記グラフ上の任意の位置における前記複数の分析条件のパラメーター値の組合せに対応する実測クロマトグラム又は予測によるクロマトグラムを表示するクロマトグラム表示ステップ、をさらに有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の分析法開発支援方法。
【請求項6】
前記クロマトグラム表示ステップでは、さらに、前記探索実行ステップによる探索結果に対応する実測クロマトグラム又は予測によるクロマトグラムを表示する、請求項5に記載の分析法開発支援方法。
【請求項7】
第1のパラメーター値の組合せの下で前記クロマトグラフ装置により試料を分析して第1のクロマトグラムを取得し、前記第1のパラメーター値の組合せとは異なる第2のパラメーター値の組合せの下で前記クロマトグラフ装置により試料を分析して第2のクロマトグラムを取得するデータ取得ステップ、をさらに有し、
前記グラフ表示ステップでは、前記第1のパラメーター値の組合せと前記第1のクロマトグラム、及び、前記第2のパラメーター値の組合せと前記第2のクロマトグラムを用いた回帰分析を行うことで、前記第1及び第2のパラメーター値の組合せ以外のパラメーター値の組合せにおけるクロマトグラムを予測して解析結果を求めることにより前記グラフを作成する、請求項1に記載の分析法開発支援方法。
【請求項8】
クロマトグラフ装置での分析結果を利用して、目的とする分析に適した複数の分析条件それぞれのパラメーター値の組合せを決定する作業を支援するための分析法開発支援プログラムであって、コンピューターを、
複数の分析条件のパラメーター値の所定の組合せにおいてクロマトグラフ装置により
取得したクロマトグラムデータから求まる解析結果に基いて、該複数の分析条件のパラメーター値
の組合せと解析結果との関係を示すグラフ
を作成し、該グラフを表示部の画面上に表示するグラフ表示機能部と、
ユーザーによる
、解析結果である数値の上限、下限、又は範囲のいずれか一つの制約条件の入力を受け付ける入力受付機能部と、
受け付けた制約条件の下で
、解析結果の数値が予め決めた探索条件を満たす前記複数の分析条件のパラメーター値の組合せを探索する探索実行機能部と、
前記探索実行機能部による探索結果を前記グラフ上に表示する探索結果表示機能部と、
して動作させる分析法開発支援プログラム。
【請求項9】
前記探索条件は前記制約条件の下
で解析結果の数値が最大である、請求項
8に記載の分析法開発支援プログラム。
【請求項10】
前記入力受付機能部は、さらに、ユーザーによる、前記複数の分析条件のパラメーター値それぞれについての許容幅の入力を受け付け、
前記探索実行機能部は、前記複数の分析条件のパラメーター値がそれぞれ前記許容幅だけ変動した場合であっても
、解析結果の数値が前記制約条件を満たすような前記複数の分析条件のパラメーター値の探索範囲内で、該複数の分析条件のパラメーター値の組合せを探索する、請求項
8に記載の分析法開発支援プログラム。
【請求項11】
前記探索条件は前記探索範囲内
で解析結果の数値が最大である、請求項
10に記載の分析法開発支援プログラム。
【請求項12】
さらに、コンピューターを、前記グラフ上の任意の位置における前記複数の分析条件のパラメーター値の組合せに対応する実測クロマトグラム又は予測によるクロマトグラムを表示するクロマトグラム表示機能部、として動作させる、請求項
8~
11のいずれか1項に記載の分析法開発支援プログラム。
【請求項13】
前記クロマトグラム表示機能部は、さらに、前記探索実行機能部による探索結果に対応する実測クロマトグラム又は予測によるクロマトグラムを表示する、請求項
12に記載の分析法開発支援プログラム。
【請求項14】
さらに、コンピューターを、第1のパラメーター値の組合せの下で前記クロマトグラフ装置により試料を分析して第1のクロマトグラムを取得し、前記第1のパラメーター値の組合せとは異なる第2のパラメーター値の組合せの下で前記クロマトグラフ装置により試料を分析して第2のクロマトグラムを取得するデータ取得機能部、として動作させ、
前記グラフ表示機能部は、前記第1のパラメーター値の組合せと前記第1のクロマトグラム、及び、前記第2のパラメーター値の組合せと前記第2のクロマトグラムを用いた回帰分析を行うことで、前記第1及び第2のパラメーター値の組合せ以外のパラメーター値の組合せにおけるクロマトグラムを予測して解析結果を求めることにより前記グラフを作成する、請求項8に記載の分析法開発支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の分析機器を用いた分析法の開発を支援する方法、及びその支援のために用いられるコンピュータープログラムに関し、特に、クロマトグラフ分析における分析法の開発を支援する方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の開発・製造においては製品の品質評価・品質管理が非常に重要であり、それを担保するための分析法のロバスト性(頑健性、堅牢性)が求められている。近年、ロバスト性の高い分析法を開発するために、AQbD(Analytical Quality by Design、単にQbD(Quality by Design)と呼ばれる場合もある)による手法が注目を集めており(非特許文献1など参照)、AQbDに基く分析法の開発を支援するコンピューターソフトウェアも提供されている(非特許文献2、3等参照)。
【0003】
ここでは、液体クロマトグラフ(LC)を用いた分析を例に挙げる。LC分析には、移動相の流量(流速)、グラジエント溶離における移動相の混合比の時間的変化(タイムプログラム)、カラムオーブン温度、試料注入量等の様々な分析条件がある。分析法を最適化する作業は、それら様々な分析条件についての最適なパラメーター値の組合せを見出す作業である。LC分析における最適な分析法とは、一般には、複数種類の化合物が含まれる試料を分析したときに、できるだけ多くの化合物由来のピークがそれぞれ分離され得る分析法であるが、場合によっては、特定の一又は複数の化合物の分離度が高いことが求められることもある。
【0004】
AQbDによるアプローチでは、各種の分析条件におけるあらゆるパラメーター値の組合せについて実験的な分析を行い、その結果を比較検討することによって最適な分析法を決定するのが理想的である。しかしながら、通常、時間や労力、或いはコスト等の制約から、全てのパラメーター値の組合せについて実験を行うことは不可能である。そのため、限られた数のパラメーター値の組合せについて得られた結果に基いて回帰分析による近似曲線や近似曲面を求め、そうした近似曲線、近似曲面において最適(実際には最適に近い)な条件を探索するのが一般的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】深津、阿形、「分析法開発におけるQuality by Designの実践」、ファルマシア、Vol. 53、No. 5、2017年、pp.440-444
【文献】「ChromSword AutoRobust(クロムソード オートロバスト)」、クロムソードジャパン株式会社、[Online]、[2021年9月14日検索]、インターネット<URL: https://www.chromsword.co.jp/product/product02.html>
【文献】朝日、ほか、「Analytical Quality by Design(AQbD)に基づくFormoterol、Budesonide及びその類縁物質の分析法開発」、The 140th Annual Meeting of the Pharmaceutical Society of Japan (Kyoto). March 25th-28th, 2020
【文献】「分離度のはなし その1」、[Online]、[2021年9月14日検索]、株式会社島津製作所、インターネット<URL: https://www.an.shimadzu.co.jp/hplc/support/lib/lctalk/81/81intro.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来提供されている分析法開発支援ソフトウェアでは、回帰分析などの予測演算によって作成された、複数の分析条件のパラメーター値と信号強度値や分離度等の解析結果値との関係を示す等高線グラフ或いはヒートマップなどのグラフが画面上に表示される。こうしたグラフはデザインスペースと呼ばれている。ユーザーは、このデザインスペースを確認することで、複数の分析条件のパラメーター値と解析結果値との関係を把握することができる。また、一部の分析法開発支援ソフトウェアは、デザインスペース上での点で示される特定のパラメーター値の組合せに対応して予測されるクロマトグラムを表示する機能を有している。
【0007】
しかしながら、従来の分析法開発支援ソフトウェアでは、デザインスペースにおいて最も適切であると考えられるパラメーター値の組合せを見出す作業はユーザー自身が試行錯誤的に行う必要がある。特に、高いロバスト性を有するという条件の下で適切であるパラメーター値の組合せを見出す作業は、かなり煩雑で時間が掛かる作業である。また、そうした作業の適否はその作業者の経験や技量、能力等に頼ることになり、個人差が生じることが避けられない。
【0008】
本発明はこうした課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、分析法の開発に際してユーザーの負担を軽減するとともに、作業者の個人の能力や経験等に頼ることなく適切な分析条件を決定することができる分析法開発支援方法、及びそのためのコンピュータープログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分析法開発支援方法の一態様は、クロマトグラフ装置での分析結果を利用して、目的とする分析に適した複数の分析条件それぞれのパラメーター値の組合せを決定する作業を支援する分析法開発支援方法であって、
クロマトグラフ装置により収集されたデータに基いて作成された、複数の分析条件のパラメーター値と該クロマトグラフ装置による分析結果又は該分析結果に基く解析結果との関係を示すグラフ、を表示部の画面上に表示するグラフ表示ステップと、
ユーザーによる、分析結果又は解析結果である数値の上限、下限、又は範囲のいずれか一つの制約条件の入力を受け付ける入力受付ステップと、
受け付けた制約条件の下で、前記分析結果又は解析結果の数値が予め決めた探索条件を満たす前記複数の分析条件のパラメーター値の組合せを探索する探索実行ステップと、
前記探索実行ステップによる探索結果を前記グラフ上に表示する探索結果表示ステップと、
を有する。
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分析法開発支援プログラムの一態様は、クロマトグラフ装置での分析結果を利用して、目的とする分析に適した複数の分析条件それぞれのパラメーター値の組合せを決定する作業を支援するための分析法開発支援プログラムであって、コンピューターを、
クロマトグラフ装置により収集されたデータに基いて作成された、複数の分析条件のパラメーター値と該クロマトグラフ装置による分析結果又は該分析結果に基く解析結果との関係を示すグラフ、を表示部の画面上に表示するグラフ表示機能部と、
ユーザーによる、分析結果又は解析結果である数値の上限、下限、又は範囲のいずれか一つの制約条件の入力を受け付ける入力受付機能部と、
受け付けた制約条件の下で、前記分析結果又は解析結果の数値が予め決めた探索条件を満たす前記複数の分析条件のパラメーター値の組合せを探索する探索実行機能部と、
前記探索実行機能部による探索結果を前記グラフ上に表示する探索結果表示機能部と、
して動作させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記態様では、ユーザーが適切であると想定する分析結果や解析結果の数値の範囲等を指示するだけで、最も適切である又はそれにかなり近い分析条件がユーザーに提示される。これにより、液体クロマトグラフやガスクロマトグラフなどのクロマトグラフ分析法を開発するに際して、ユーザーの負担を軽減するとともに、その作業を担当する個人の能力や経験、技量等に頼ることなく適切な分析条件を効率良く決定することができる。
【0012】
また本発明の上記態様では、自動的に探索された結果がグラフ上に表示されるため、ユーザーは例えば探索結果が局所的な最適解であるか否かを視覚的に確認することができる。それによって、パラメーター値が僅かに変動しただけで分析結果や解析結果が悪化するようなロバスト性の低い分析条件が探索されてしまうことを回避し、ロバスト性が高い分析条件を見つけ得る可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る分析法開発支援方法を実施するための装置を含むLC分析システムの一実施形態の概略構成図。
【
図2】本実施形態のLC分析システムにおける分析条件探索の手順を示すフローチャート。
【
図3】本実施形態のLC分析システムにおける分析条件探索に際してのメイン表示画面の一例を示す図。
【
図4】
図3中のグラフ表示領域に表示されるグラフ(2次元等高線図)の一例を示す図。
【
図5】
図3中のグラフ表示設定領域に表示されるX-Y軸テーブルの一例を示す図。
【
図6】
図3中のグラフ表示設定領域に表示される応答設定テーブルの一例を示す図。
【
図7】本実施形態のLC分析システムにおける分析条件探索に際しての最適条件探索設定画面の一例を示す図。
【
図8】グラジエント溶離におけるタイムプログラムの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る分析法開発支援方法及び分析法開発支援プログラムの上記態様において、「クロマトグラフ装置」は典型的には、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、超臨界流体クロマトグラフなどである。
【0015】
クロマトグラフ装置が液体クロマトグラフである場合、上記「複数の分析条件」は、移動相の流量(流速)、移動相の混合比の時間的変化(グラジエント溶離の場合)、移動相のpH値(又はpH値の時間的変化)、カラムオーブン温度、試料の注入量などを含むものとすることができる。もちろん、分析結果又は解析結果に影響を与え得るものであれば、分析条件はこれらに限るものではない。
【0016】
また、上記「クロマトグラフ装置による分析結果」とは例えば信号強度値などであり、「分析結果に基く解析結果」とは例えば、クロマトグラムデータに対するピーク検出などを含む所定の解析処理によって求まる、ピーク本数、ピークの分離度などである。
【0017】
以下、本発明に係る分析法開発支援方法及び分析法開発支援プログラムの一例について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一例である分析法開発支援方法を実施する装置を用いたLC分析システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【0018】
このLC分析システムは、LC測定部1、データ処理部2、分析法開発支援部3、入力部4、及び表示部5、を含む。
【0019】
LC測定部1は、図示しないものの、移動相容器、移動相を吸引し送給する一以上の送液ポンプ、移動相中に試料を注入するインジェクター、試料中の成分(化合物)を分離するカラム、カラムが収納されるカラムオーブン、検出器などを含む。また、必要に応じて、複数の移動相を混合するミキサーなどを含むことができる。検出器は、フォトダイオードアレイ検出器、紫外可視分光検出器などの光学的な検出器のほか、質量分析計などを用いることもできる。
【0020】
データ処理部2は、LC測定部1に含まれる検出器からの検出信号を受け、その検出信号をデジタル化して保存するとともに、該データに対して所定の波形処理を行うことでクロマトグラムを作成する機能を有する。また、クロマトグラムにおいて試料中の成分に対応するピークを検出し、ピークの保持時間等に基いて成分同定を行ったり、ピークの面積値に基いて定量を行ったりする機能を有していてもよい。
【0021】
分析法開発支援部3は、機能ブロックとして、分析条件設定部30、分析制御部31、データ格納部32、デザインスペース構築部33、入力受付部34、探索実行部35、及び表示処理部36を有する。この分析法開発支援部3は、本実施形態のLC分析システムにおいて分析法開発支援方法を実施するための中心的な構成要素である。
【0022】
データ処理部2及び分析法開発支援部3は、パーソナルコンピューター又はワークステーションと呼ばれるより高性能のコンピューターをハードウェア資源とし、そうしたコンピューターにインストールされた専用のソフトウェア(コンピュータープログラム)を該コンピューター上で動作させることにより、それぞれの機能を実現するものとすることができる。
【0023】
このコンピュータープログラムは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、メモリーカード、USBメモリー(ドングル)などの、コンピューター読み取り可能である非一時的な記録媒体に格納されてユーザーに提供されるものとすることができる。また、上記プログラムは、インターネットなどの通信回線を介したデータ転送の形式で、ユーザーに提供されるようにすることもできる。さらにまた、上記プログラムは、ユーザーがシステムを購入する時点で、予めシステムの一部であるコンピューター(厳密にはコンピューターの一部である記憶装置)にプリインストールしておくこともできる。
【0024】
次に、本実施形態のLC分析システムにおいて分析法を開発する、即ち、複数の分析条件におけるパラメーター値の適切な組合せを探索する際のユーザーの作業手順及び本システムの動作について説明する。
図2は、分析条件探索の際の手順及び処理の流れを示すフローチャートである。
【0025】
LC分析システムでは、典型的な分析条件として、 移動相の流量(流速)、移動相の混合比の時間的変化、カラムオーブン温度、試料の注入量などがある。近年のLC分析では多くの場合、グラジエント溶離が行われており、その場合、複数の移動相の混合比の時間的な変化(タイムプログラム)が重要である。ここでは一例として、移動相A、移動相Bを用いたグラジエント溶離において、移動相Bの比率が
図8に示すように変化するタイムプログラムを想定し、最終的な移動相Bの比率Cb(%)と移動相Bが変化する期間の時間t2(min)の二つのパラメーター値を最適化するものとする。
【0026】
まず、ユーザーは上記複数の分析条件のそれぞれについて、実測に使用するパラメーター値を決定し入力部4から入力する。入力された情報は分析条件設定部30に保存される。ここでは一例として、移動相B比率Cb(%)は25、50、75の3段階、時間t2(min)は20~60(min)の範囲で5min間隔の9段階であるとする。従って、実測に使用するパラメーター値の組合せは27である。なお、この分析条件以外の分析条件のパラメーター値は、全て所定の値に固定されているものとする。
【0027】
分析制御部31は、分析条件設定部30に保存されているパラメーター値の組合せを順番に変えながら、それぞれ同じ試料に対するLC分析が実施されるようにLC測定部1を制御する。データ処理部2は各LC分析により取得されたデータを処理し、クロマトグラムにおいて観測される全ての有意なピーク(例えばピーク信号強度が所定の閾値以上であるピーク)についてのピーク本数を計数するとともにピークの分離度を計算する。こうしてデータ処理部2で得られたクロマトグラムデータ及びピーク本数、ピーク分離度などの解析結果は分析法開発支援部3に送られ、データ格納部32に保存される。上述したように、ここでは二つのパラメーター値の組合せは27であるので、その27のそれぞれについてクロマトグラムデータ及び解析結果が求まり、データ格納部32に保存される。
【0028】
なお、ピークの分離度は、クロマトグラム上で時間的に隣接する2本のピーク毎に、例えば非特許文献4等に記載されている周知の方法で計算することができる。一つのクロマトグラムに3以上のピークが観測される場合、複数の分離度が計算可能であるが、実際に必要な数値は、その複数の分離度の中の最小の分離度、つまりは最も分離が悪い2本のピークについての分離度である。従って、実質的にはクロマトグラム毎に、最小分離度のみを算出するようにしてもよい。
【0029】
次に、デザインスペース構築部33において予測演算部330は、データ格納部32に保存された二つの分析条件についての特定のパラメーター値の組合せに対応するクロマトグラムデータに基く回帰分析を行うことにより、当該二つのパラメーター値についてのあらゆる(実際には所定の数値間隔の離散的な)組合せに対応するクロマトグラムを予測する。さらに、その予測クロマトグラムにおいて観測されるピークを検出し、ピーク本数、ピーク分離度等の解析結果を算出する。こうして求まった予測クロマトグラムを構成するデータやその解析結果は、予測結果保存部331に保存される。グラフ作成部332は、予測結果保存部331に保存された情報を利用して、デザインスペースに表示するグラフとして、パラメーター値と解析結果値との関係を示すグラフを作成する。本実施形態のLC分析システムでは、このグラフは、例えば2次元等高線図、3次元等高線図、ヒートマップであるが、これに限るものではない。
【0030】
なお、ここまで述べた、複数の分析条件におけるパラメーター値の組合せの下で実測により得られた解析結果に基いて、実測されていない様々なパラメーター値の組合せに対応する解析結果を予測してデザインスペースを構築する処理は、既存の分析法開発支援ソフトウェアを用いても実現可能である。
【0031】
ユーザーが入力部4で所定の操作を行うと、表示処理部36は、
図3に示すような分析条件探索用のメイン表示画面10を表示部5に表示する(ステップS1)。
図3に示すように、このメイン表示画面10には、大別して、ボタン表示領域100、グラフ表示領域110、グラフ表示設定領域120、及びクロマトグラム表示領域130、が配置されている。
【0032】
ボタン表示領域100には、様々な作業を行うためにクリック操作される複数のボタンが配置されている。このボタンには「条件探索」ボタン101が含まれる。
【0033】
グラフ表示領域110には、デザインスペースとして、分析条件であるパラメーター値と解析結果(又は分析結果)との関係を示すグラフ111、即ち、2次元等高線図、3次元等高線図、又はヒートマップのうちのいずれか一つが選択的に表示される。ここでは、グラフ111は
図4に示すような2次元等高線
図111Aである。詳しくは後述する。
【0034】
グラフ表示設定領域120には、X-Y軸設定テーブル121及び応答設定テーブル122が配置されている。ここでは、X-Y軸設定テーブル121は
図5に示すものであり、応答設定テーブル122は
図6に示すものである。X-Y軸設定テーブル121は、グラフ表示領域110に表示されるグラフ111のX軸及びY軸にそれぞれ対応するパラメーター(
図5では「因子」)を設定するためのテーブルである。応答設定テーブル122は、グラフ表示領域110に表示されるグラフ111上の各点に対応する解析結果(等高線図における等高線の高さやヒートマップにおける色や濃淡で表されるデータ値)の種類とその数値の許容範囲とを設定するためのテーブルである。
【0035】
クロマトグラム表示領域130には、グラフ111上における特定の点に対応するクロマトグラムが表示される。この特定の点が、実測点でない場合には、上述したように回帰分析により予測されるクロマトグラムが表示される。また、その特定の点に最も近い実測点における実測クロマトグラムを予測クロマトグラムと同時に表示することもできる。
図3には、実測クロマトグラムと予測クロマトグラムとが上下に並べて表示されている。なお、
図3では、図面が煩雑になるのを避けるために、クロマトグラムの縦軸及び横軸の目盛りの記載を省略している。
【0036】
グラフ表示設定領域120のX-Y軸設定テーブル121には、予め設定された最適化対象であるパラメーターの種類、つまりは実測の際に複数段階に変化されたパラメーター値の種類が表示される。この例では、最適化対象であるパラメーターは移動相Bの比率Cbと時間t2の二つのみであるので、
図5に示すX-Y軸設定テーブル121にはその二つだけが示されているが、より多くのパラメーターを最適化する際にはX-Y軸設定テーブル121に表示される因子の数も増加する。ユーザーは、X-Y軸設定テーブル121中のラジオボタンをクリック操作しオン又はオフ状態とすることで、グラフ111のX軸、Y軸を適宜に決めることができる。また、グラフ111の応答の種類は、応答設定テーブル122のチェックボックス1220にチェックマークを入れることで指定することができる。
【0037】
図5及び
図6に示すような設定状態では、移動相Bの比率CbをX軸、時間t2をY軸とし、応答が最小分離度である2次元等高線
図111Aが、グラフ表示領域110に表示される。
図4において、点1112、1113は実測点、つまり実測されたパラメーター値の組合せに相当する点である。但し、
図4では等高線自体の記載は省略している。また、符号1114、1115で示すマークは最適条件の探索が実行される前には表示されない。
【0038】
ユーザーは、応答設定テーブル122において、応答の上限値及び下限値をそれぞれ入力設定する(ステップS2)。この上限値及び下限値で決まる範囲が、最適な条件が探索される応答の制約条件である。なお、ここでは上限値及び下限値の両方を入力するが、一方のみの入力も可能として、下限値以上又は上限値以下を探索の際の応答の制約条件としてもよい。
【0039】
そのあとユーザーは、「条件探索」ボタン101をクリック操作する。この操作を受けて、入力受付部34は、
図7に示すような最適条件探索設定画面20をメイン表示画面10の上に重ねて開く。最適条件探索設定画面20は、最適な分析条件を探索する際の探索条件を指定するための画面である。
【0040】
最適条件探索設定画面20において探索応答選択部200は、最適点を探索する対象の応答の種類を選択するものであり、選択し得る応答の種類がドロップダウンメニューで表示される。具体的には、ここでは、以下のような応答の種類のいずれかを選択可能である。
・クロマトグラム中の全てのピークの最小分離度
・クロマトグラム中の特定の化合物の分離度
・クロマトグラム中の複数の特定の化合物の間(例えば化合物Aと化合物Bとの間)の分離度
・クロマトグラムにおいて検出されるピークの本数
・クロマトグラムにおいて検出されるピークの本数とピークの分離度とに基いて計算される指標値
【0041】
また、探索方法選択部201は、最適点を探索する方法を次の二つから選択するものである。
・「最適点を探索」:応答設定テーブル122において指定された応答値の上下限の範囲の中で、応答値が最大となる点(つまりはパラメーター値の組合せ)を探索する。
・「頑健性を満たす点を探索」:指定された因子(分析条件)が許容値設定テーブル202中の「許容値」に設定された分だけ変動すると仮定した場合に、応答値が応答の上下限の範囲に収まる点をリストアップし、その中で応答が最大となる点を探索する。
【0042】
ユーザーは入力部4を操作することで、上述した応答種類及び探索方法をそれぞれ選択し、「頑健性を満たす点を探索」を選択する場合には、許容値設定テーブル202において各因子の変動の許容値を設定する(ステップS4、S5、S6)。そのうえで、ユーザーが「実行」ボタン203をクリック操作すると、入力受付部34はこの操作を受け付ける(ステップS7)。これに応じて探索実行部35は、設定された制約条件及び探索条件の下で最適点を探索する(ステップS8)。
【0043】
図6及び
図7に示した例では、具体的に次のように探索を実施する。
ここでは、グラフ111上で最小分離度が7~9の範囲にあることを応答の制約条件とする。
図4の例では、グラフ111上において符号1110で示す色付けしていない領域が最小分離度が7~9の範囲内であり、符号1111で示す色付けした領域が最小分離度が7~9の範囲外である。
【0044】
上記制約条件(最小分離度が7~9の範囲)の下で、移動相Bの比率Cbの変動の範囲が3、時間t2の変動の範囲も3である条件で以て最小分離度が最大になる点を探索する。グラフ111上の或る1点に対して二つの因子が変動した際の範囲つまりロバスト性確認範囲は、その1点を中心とする矩形状の範囲で示される。そこで探索実行部35は、そのロバスト性確認範囲の全体が上記制約条件である色付けしていない領域1110に含まれるように、該ロバスト性確認範囲をグラフ111上でX軸及びY軸方向に少しずつ移動させながら、それぞれ異なる位置のロバスト性確認範囲における中心点の最小分離度が最大になる点(但し、最小分離度が7~9の範囲)を探索する。こうして見つかった点は、上記二つの因子がロバスト性確認範囲内でばらついたとしても応答が上下限の範囲内に収まり、且つ、その応答が最大である点である。
【0045】
なお、探索方法として「頑健性を満たす点を探索」ではなく「最適点を探索」が選択された場合には、ロバスト性確認範囲を用いることなく、グラフ111上の色付けしていない領域1110に存在する点の中で、応答が最大になる点を探索すればよい。
【0046】
最適点の探索が終了すると、表示処理部36は、その探索によって求まった最適点をグラフ111上に表示する(ステップS9)。
図4では、この最適点1115が実測点1112、1113とは視覚上区別可能であるように、最適点1115を正方形、実測点1112、1113を円形の点で示している。また、「頑健性を満たす点を探索」した場合には、最適点1115に対するロバスト性確認範囲を示す矩形状の枠1114をグラフ111上に表示する(ステップS10)。さらに、表示処理部36は、グラフ111上で最適点1115と最も近い実測点1113の表示の態様を他の実測点1112とは異なるように変更する。ここでは、実測点の形状は同じ(円形)で表示色を変更しているが、これに限るものではない。
【0047】
グラフ111上の最適点1115は実質的に選択状態であり、ユーザーが入力部4の操作によって該最適点1115を指示すると、表示処理部36はその最適点1115に対応する予測クロマトグラムのデータを予測結果保存部331から読み出して予測クロマトグラムをクロマトグラム表示領域130に表示する(ステップS11)。また、
図3に示すように、実測クロマトグラム表示の設定にチェックマークが付されている場合には、最適点1115と最も近い実測点1113に対応する実測クロマトグラムのデータも取得し、実測クロマトグラムをクロマトグラム表示領域130に表示する。
【0048】
以上のようして本実施形態のLC分析システムでは、実測結果に基いて構築されたデザインスペース上で、ユーザーが設定した条件を満足する最適なパラメーター値の組合せを簡便に知ることができる。また、ユーザーは、その最適なパラメーター値の組合せの下で予測されるクロマトグラムを確認することもできる。これによって、目的に適合するLC分析法の開発作業を効率良く行うことができる。
【0049】
上記説明においては、デザインスペースにおける応答が最小分離度であるが、上述したように、それ以外の応答を用いた最適点の探索も可能である。但し、特定の化合物の分離度や特定の化合物間の分離度の予測値はデザインスペースの構築の際に計算されないので、探索に使用する応答としてそれらが選択された場合には、探索実行時に予測クロマトグラムから計算される。また、特定の化合物の選択は、別の画面上で設定される。一例としては、実測のクロマトグラムにおいて観測される各ピークについてそれぞれ化合物同定が行われたあと、同定された化合物を一覧にした化合物テーブルが作成され、その化合物テーブル上で特定の化合物を指定できるようにすることができる。
【0050】
また、上記説明は、本発明をLC分析に適用したものであるが、LC分析と同様にクロマトグラムが作成され得る、ガスクロマトグラフ分析や超臨界クロマトグラフ分析などのクロマトグラフ分析一般に、本発明を適用可能であることは明らかである。クロマトグラフ分析の種類の相違に応じて、最適化される分析条件がそれぞれ異なることは言うまでもない。
【0051】
また、上記実施形態や上述した各種の変形例はいずれも本発明の一例であるから、本発明の趣旨の範囲で適宜修正や変更、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【0052】
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0053】
(第1項)本発明に係る分析法開発支援方法の一態様は、クロマトグラフ装置での分析結果を利用して、目的とする分析に適した複数の分析条件それぞれのパラメーター値の組合せを決定する作業を支援する分析法開発支援方法であって、
クロマトグラフ装置により収集されたデータに基いて作成された、複数の分析条件のパラメーター値と該クロマトグラフ装置による分析結果又は該分析結果に基く解析結果との関係を示すグラフ、を表示部の画面上に表示するグラフ表示ステップと、
ユーザーによる、分析結果又は解析結果である数値の上限、下限、又は範囲のいずれか一つの制約条件の入力を受け付ける入力受付ステップと、
受け付けた制約条件の下で前記分析結果又は解析結果の数値が予め決めた探索条件を満たす前記複数の分析条件のパラメーター値の組合せを探索する探索実行ステップと、
前記探索実行ステップによる探索結果を前記グラフ上に表示する探索結果表示ステップと、
を有する。
【0054】
(第7項)本発明の係る分析法開発支援プログラムの一態様は、クロマトグラフ装置での分析結果を利用して、目的とする分析に適した複数の分析条件それぞれのパラメーター値の組合せを決定する作業を支援するための分析法開発支援プログラムであって、コンピューターを、
クロマトグラフ装置により収集されたデータに基いて作成された、複数の分析条件のパラメーター値と該クロマトグラフ装置による分析結果又は該分析結果に基く解析結果との関係を示すグラフ、を表示部の画面上に表示するグラフ表示機能部と、
ユーザーによる、分析結果又は解析結果である数値の上限、下限、又は範囲のいずれか一つの制約条件の入力を受け付ける入力受付機能部と、
受け付けた制約条件の下で、前記分析結果又は解析結果の数値が予め決めた探索条件を満たす前記複数の分析条件のパラメーター値の組合せを探索する探索実行機能部と、
前記探索実行機能部による探索結果を前記グラフ上に表示する探索結果表示機能部と、
して動作させる。
【0055】
第1項に記載の方法及び第7項に記載のプログラムでは、ユーザーが適切であると想定する分析結果や解析結果の数値の範囲等を指示するだけで、最も適切である又はそれにかなり近い分析条件がユーザーに提示される。これにより、LC分析やGC分析などのクロマトグラフ分析法を開発するに際して、ユーザーの負担を軽減するとともに、その作業を担当する個人の能力や経験、技量等に頼ることなく適切な分析条件を効率良く決定することができる。
【0056】
また第1項に記載の方法及び第7項に記載のプログラムでは、自動的に探索された結果がグラフ上に表示されるため、ユーザーは例えば探索結果が局所的な最適解であるか否かを視覚的に確認することができる。それによって、パラメーター値が僅かに変動しただけで分析結果や解析結果が悪化するようなロバスト性の低い分析条件が探索されてしまうことを回避し、ロバスト性が高い分析条件を見つける得る可能性を高めることができる。
【0057】
(第2項)第1項に記載の分析法開発支援方法において、前記探索条件は前記制約条件の下で分析結果又は解析結果の数値が最大であるものとすることができる。
【0058】
(第8項)同様に第7項に記載の分析法開発支援プログラムにおいて、前記探索条件は前記制約条件の下で分析結果又は解析結果の数値が最大であるものとすることができる。
【0059】
第2項に記載の方法及び第8項に記載のプログラムによれば、ユーザーにより入力された、分析結果又は解析結果の数値の制約の下でその数値が最も大きくなる分析条件を簡便に見出すことができる。
【0060】
(第3項)第1項に記載の分析法開発支援方法において、前記入力受付ステップでは、さらに、ユーザーによる、前記複数の分析条件のパラメーター値それぞれについての許容幅の入力を受け付け、前記探索実行ステップでは、前記複数の分析条件のパラメーター値がそれぞれ前記許容幅だけ変動した場合であっても、分析結果又は解析結果の数値が前記制約条件を満たすような前記複数の分析条件のパラメーター値の探索範囲内で、該複数の分析条件のパラメーター値の組合せを探索するものとすることができる。
【0061】
(第4項)第3項に記載の分析法開発支援方法において、前記探索条件は前記探索範囲内で分析結果又は解析結果の数値が最大であるものとすることができる。
【0062】
(第9項)同様に第7項に記載の分析法開発支援プログラムにおいて、前記入力受付機能部は、さらに、ユーザーによる、前記複数の分析条件のパラメーター値それぞれについての許容幅の入力を受け付け、前記探索実行機能部は、前記複数の分析条件のパラメーター値がそれぞれ前記許容幅だけ変動した場合であっても、分析結果又は解析結果の数値が前記制約条件を満たすような前記複数の分析条件のパラメーター値の探索範囲内で、該複数の分析条件のパラメーター値の組合せを探索するものとすることができる。
【0063】
(第10項)第9項に記載の分析法開発支援プログラムにおいて、前記探索条件は前記探索範囲内で分析結果又は解析結果の数値が最大であるものとすることができる。
【0064】
第3項及び第4項に記載の方法並びに第9項及び第10項に記載のプログラムによれば、分析条件のパラメーター値がばらついた場合であっても所望の性能を確保することができるような適切なパラメーター値の組合せ、つまりは高いロバスト性を有するパラメーター値の組合せを的確に且つ簡便に見つけることができる。
【0065】
(第5項)第1項~第4項のいずれか1項に記載の分析法開発支援方法は、前記グラフ上の任意の位置における前記複数の分析条件のパラメーター値の組合せに対応する実測クロマトグラム又は予測によるクロマトグラムを表示するクロマトグラム表示ステップ、をさらに有することができる。
【0066】
(第11項)同様に第7項~第10項のいずれか1項に記載の分析法開発支援プログラムでは、さらに、コンピューターを、前記グラフ上の任意の位置における前記複数の分析条件のパラメーター値の組合せに対応する実測クロマトグラム又は予測によるクロマトグラムを表示するクロマトグラム表示機能部、として動作させることができる。
【0067】
第5項に記載の方法及び第11項に記載のプログラムによれば、ユーザーは、最適化対象である分析条件についてのあらゆるパラメーター値の組合せに対するクロマトグラムも視覚的に確認することができる。
【0068】
(第6項)第5項に記載の分析法開発支援方法において、前記クロマトグラム表示ステップでは、さらに、前記探索実行ステップによる探索結果に対応する実測クロマトグラム又は予測によるクロマトグラムを表示するものとすることができる。
【0069】
(第12項)同様に第11項に記載の分析法開発支援プログラムにおいて、前記クロマトグラム表示機能部は、さらに、前記探索実行機能部による探索結果に対応する実測クロマトグラム又は予測によるクロマトグラムを表示するものとすることができる。
【0070】
第6項に記載の方法及び第12項に記載のプログラムによれば、ユーザーは、最適であるとして探索されたパラメーター値の組合せの下でのクロマトグラムを視覚的に確認することができる。これにより、例えばピークの分離が満足できるものであるのかをクロマトグラム上で確認することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…LC測定部
2…データ処理部
3…分析法開発支援部
30…分析条件設定部
31…分析制御部
32…データ格納部
33…デザインスペース構築部
330…予測演算部
331…予測結果保存部
332…グラフ作成部
34…入力受付部
35…探索実行部
36…表示処理部
4…入力部
5…表示部