(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】車両用ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 65/18 20060101AFI20240903BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240903BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20240903BHJP
F16D 125/06 20120101ALN20240903BHJP
【FI】
F16D65/18
B60T13/74 G
F16D125:40
F16D125:06
F16D125:06 A
(21)【出願番号】P 2021159379
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕紀
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-011848(JP,A)
【文献】特開2020-051596(JP,A)
【文献】特開2018-017300(JP,A)
【文献】特開2008-008476(JP,A)
【文献】特開2004-003526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/18
B60T 13/74
F16D 125/40
F16D 125/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪(2)とともに回転可能に設けられたディスク(3)にパッド(4)を押し付けることで前記車輪の回転を規制可能な車両用ブレーキ装置であって、
ボディ(20)と、
前記ボディに設けられたシリンダ(30)と、
前記シリンダに収容され、前記シリンダ内を移動し、前記パッドを前記ディスクに押し付けるピストン(40)と、
通電により回転するロータ(51)を有するモータ(50)と、
前記ロータの回転と連動して回転する回転部材(60)、
前記回転部材の正転に応じて前記パッドに近付く第1方向(D1)に直動するとともに、前記回転部材の逆転に応じて前記パッドから遠ざかる第2方向(D2)に直動する直動部材(70)、
前記ピストンに設けられ前記直動部材に当接したとき前記直動部材の正転を制限する正転制限部(811)、および、
前記ピストンに設けられ前記直動部材に当接したとき前記直動部材の逆転を制限する逆転制限部(821)を有する回転直動変換部(600)と、
前記ピストンに設けられた第1正転係合部(91)および第1逆転係合部(93)、ならびに、
前記直動部材に設けられた第2正転係合部(92)および第2逆転係合部(94)を有し、
前記正転制限部によって前記直動部材の正転が制限されている状態では前記第1正転係合部と前記第2正転係合部とが前記ピストンの軸方向において重なった正転時係合状態となり、
前記正転時係合状態から前記回転部材が逆転し前記逆転制限部によって前記直動部材の逆転が制限されている状態では前記第1逆転係合部と前記第2逆転係合部とが前記ピストンの軸方向において重なった逆転時係合状態となる係合部(90)と、を備え、
前記第1正転係合部は、前記ピストンの軸に対し傾斜する面である正転傾斜面(911)を有し、
前記第1逆転係合部は、前記ピストンの軸に対し傾斜する面である逆転傾斜面(931)を有し、
前記直動部材が前記正転制限部に当接するとき、前記第2正転係合部が前記正転傾斜面に沿って移動し、
前記直動部材が前記逆転制限部に当接するとき、前記第2逆転係合部が前記逆転傾斜面に沿って移動する車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記直動部材が前記正転制限部に当接するとき、前記第2正転係合部と前記第1正転係合部とが最初に当接する位置である第1当接位置(Pt1)は、前記ピストンの軸方向における前記正転傾斜面の一方の端部と他方の端部との間であり、
前記直動部材が前記逆転制限部に当接するとき、前記第2逆転係合部と前記第1逆転係合部とが最初に当接する位置である第2当接位置(Pt2)は、前記ピストンの軸方向における前記逆転傾斜面の一方の端部と他方の端部との間である請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記正転傾斜面は、前記正転制限部に向かうに従い摩擦係数が増大するよう形成され、
前記逆転傾斜面は、前記逆転制限部に向かうに従い摩擦係数が増大するよう形成されている請求項1または2に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記正転制限部は、前記第2正転係合部に当接可能な弾性部材である正転弾性部材を有し、
前記逆転制限部は、前記第2逆転係合部に当接可能な弾性部材である逆転弾性部材(96)を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項5】
車輪(2)とともに回転可能に設けられたディスク(3)にパッド(4)を押し付けることで前記車輪の回転を規制可能な車両用ブレーキ装置であって、
ボディ(20)と、
前記ボディに設けられたシリンダ(30)と、
前記シリンダに収容され、前記シリンダ内を移動し、前記パッドを前記ディスクに押し付けるピストン(40)と、
通電により回転するロータ(51)を有するモータ(50)と、
前記ロータの回転と連動して回転する回転部材(60)、
前記回転部材の正転に応じて前記パッドに近付く第1方向(D1)に直動するとともに、前記回転部材の逆転に応じて前記パッドから遠ざかる第2方向(D2)に直動する直動部材(70)、
前記ピストンに設けられ前記直動部材に当接したとき前記直動部材の正転を制限する正転制限部(811)、および、
前記ピストンに設けられ前記直動部材に当接したとき前記直動部材の逆転を制限する逆転制限部(821)を有する回転直動変換部(600)と、
前記ピストンに設けられた第1正転係合部(91)および第1逆転係合部(93)、ならびに、
前記直動部材に設けられた第2正転係合部(92)および第2逆転係合部(94)を有し、
前記正転制限部によって前記直動部材の正転が制限されている状態では前記第1正転係合部と前記第2正転係合部とが前記ピストンの軸方向において重なった正転時係合状態となり、
前記正転時係合状態から前記回転部材が逆転し前記逆転制限部によって前記直動部材の逆転が制限されている状態では前記第1逆転係合部と前記第2逆転係合部とが前記ピストンの軸方向において重なった逆転時係合状態となる係合部(90)と、を備え、
前記正転制限部は、前記第2正転係合部に当接可能な弾性部材である正転弾性部材を有し、
前記逆転制限部は、前記第2逆転係合部に当接可能な弾性部材である逆転弾性部材(96)を有する車両用ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータにより駆動される回転部材の回転を直動部材の直動に変換し、当該直動部材の直動によってピストンを介してパッドを車輪のディスクに押し付ける電動の車両用ブレーキ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1の車両用ブレーキ装置では、直動部材は、回転部材が回転するとピストンに対し相対回転し、ピストンに設けられた回転制限部に当接すると回転が制限される。直動部材は、回転制限部により回転が制限されると、直動する。ここで、直動部材が回転を制限されるとき、回転制限部への直動部材の当接によって、異音が発生するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、異音の発生を抑制可能な車両用ブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、車輪(2)とともに回転可能に設けられたディスク(3)にパッド(4)を押し付けることで車輪の回転を規制可能な車両用ブレーキ装置であって、ボディ(20)とシリンダ(30)とピストン(40)とモータ(50)と回転直動変換部(600)と係合部(90)とを備える。シリンダは、ボディに設けられている。ピストンは、シリンダに収容され、シリンダ内を移動し、パッドをディスクに押し付ける。モータは、通電により回転するロータ(51)を有する。
【0007】
回転直動変換部は、回転部材(60)、直動部材(70)、正転制限部(811)、および、逆転制限部(821)を有する。回転部材は、ロータの回転と連動して回転する。直動部材は、回転部材の正転に応じてパッドに近付く第1方向(D1)に直動するとともに、回転部材の逆転に応じてパッドから遠ざかる第2方向(D2)に直動する。正転制限部は、ピストンに設けられ、直動部材に当接したとき、直動部材の正転を制限する。逆転制限部は、ピストンに設けられ、直動部材に当接したとき、直動部材の逆転を制限する。
【0008】
係合部は、第1正転係合部(91)および第1逆転係合部(93)、ならびに、第2正転係合部(92)および第2逆転係合部(94)を有する。第1正転係合部および第1逆転係合部は、ピストンに設けられている。第2正転係合部および第2逆転係合部は、直動部材に設けられている。係合部は、正転制限部によって直動部材の正転が制限されている状態では第1正転係合部と第2正転係合部とがピストンの軸方向において重なった正転時係合状態となる。係合部は、正転時係合状態から回転部材が逆転し逆転制限部によって直動部材の逆転が制限されている状態では第1逆転係合部と第2逆転係合部とがピストンの軸方向において重なった逆転時係合状態となる。
【0009】
正転時係合状態のとき、直動部材が回転部材の正転に応じてパッドに近付く第1方向に直動すると、ピストンは、回転制限部とともに第1方向に付勢され、パッドに押し付けられる。逆転時係合状態のとき、直動部材が回転部材の逆転に応じてパッドから遠ざかる第2方向に直動すると、ピストンは、回転制限部とともに第2方向に付勢され、パッドから遠ざかる。このように、係合部により、ピストンの直動部材の直動への追従性を向上できる。
【0010】
第1正転係合部は、ピストンの軸に対し傾斜する面である正転傾斜面(911)を有する。第1逆転係合部は、ピストンの軸に対し傾斜する面である逆転傾斜面(931)を有する。直動部材が正転制限部に当接するとき、第2正転係合部が正転傾斜面に沿って移動する。直動部材が逆転制限部に当接するとき、第2逆転係合部が逆転傾斜面に沿って移動する。
【0011】
そのため、直動部材は、第2正転係合部が正転傾斜面に沿って移動し、正転制限部に当接する。また、直動部材は、第2逆転係合部が逆転傾斜面に沿って移動し、逆転制限部に当接する。これにより、直動部材は、第2正転係合部が正転傾斜面に沿って移動するとき、または、第2逆転係合部が逆転傾斜面に沿って移動するとき、ピストンに対する相対回転の角速度が徐々に低下し、比較的低い角速度で正転制限部または逆転制限部に当接する。したがって、正転制限部または逆転制限部への直動部材の当接時の衝撃を緩和し、異音の発生を抑制できる。
【0012】
本発明の第2の態様の車両用ブレーキ装置は、第1の態様と同様、ボディ(20)とシリンダ(30)とピストン(40)とモータ(50)と回転直動変換部(600)と係合部(90)とを備える。正転制限部は、第2正転係合部に当接可能な弾性部材である正転弾性部材を有する。逆転制限部は、第2逆転係合部に当接可能な弾性部材である逆転弾性部材(96)を有する。
【0013】
そのため、直動部材は、正転制限部に当接するとき、第2正転係合部が正転弾性部材に当接する。また、直動部材は、逆転制限部に当接するとき、第2逆転係合部が逆転弾性部材に当接する。したがって、正転制限部または逆転制限部への直動部材の当接時の衝撃を緩和し、異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の車両用ブレーキ装置を示す断面図。
【
図2】第1実施形態の車両用ブレーキ装置の直動部材の正転が制限されているときの状態を示す断面図。
【
図3】第1実施形態の車両用ブレーキ装置の直動部材の逆転が制限されているときの状態を示す断面図。
【
図5】第1実施形態の車両用ブレーキ装置の直動部材が正転制限部に当接するときの状態を示す部分断面図。
【
図6】第1実施形態の車両用ブレーキ装置の直動部材が逆転制限部に当接するときの状態を示す部分断面図。
【
図7】第1実施形態の車両用ブレーキ装置のピストンおよび回転制限部を示す断面図。
【
図8】第1実施形態の車両用ブレーキ装置の一部を示す断面図。
【
図9】比較形態の車両用ブレーキ装置の直動部材の正転が制限されているときの状態を示す断面図。
【
図10】比較形態の車両用ブレーキ装置の直動部材の逆転が制限されているときの状態を示す断面図。
【
図11】比較形態の車両用ブレーキ装置のピストンおよび回転制限部を示す断面図。
【
図12】第1実施形態の車両用ブレーキ装置の作動例を示す図であって、時間の経過に伴う直動部材の角速度の変化を示す図。
【
図13】第2実施形態の車両用ブレーキ装置の一部を示す断面図。
【
図14】第3実施形態の車両用ブレーキ装置の一部を示す断面図。
【
図15】第4実施形態の車両用ブレーキ装置の一部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、複数の実施形態による車両用ブレーキ装置を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態の車両用ブレーキ装置を
図1に示す。車両用ブレーキ装置10は、例えば車両1の車輪2に設けられる。車両用ブレーキ装置10は、車輪2とともに回転可能に設けられたディスク3にパッド4を押し付けることで車輪2の回転を規制可能である。これにより、走行中の車両1を減速または停止させたり、停車中の車両1の停車状態を維持したりできる。
【0017】
車両用ブレーキ装置10は、ボディ20、シリンダ30、ピストン40、モータ50、回転直動変換部600、係合部90等を備える。
【0018】
シリンダ30は、ボディ20に設けられている。ピストン40は、シリンダ30に収容され、シリンダ30内を移動し、パッド4をディスク3に押し付ける。モータ50は、通電により回転するロータ51を有する。
【0019】
より具体的には、ボディ20は、例えばキャリパであって、車両1に設けられる。ボディ20には、パッド4、パッド5が設けられている。パッド4およびパッド5は、ディスク3の外縁部を間に挟むようにしてボディ20に設けられている。
【0020】
シリンダ30は、シリンダ筒部31、シリンダ底部32、シリンダ穴部33を有している。シリンダ筒部31は、筒状に形成されている。シリンダ底部32は、シリンダ筒部31の一方の端部を塞ぐようシリンダ筒部31と一体に形成されている。シリンダ穴部33は、シリンダ底部32の中央を貫くよう形成されている。シリンダ30は、シリンダ筒部31のシリンダ底部32とは反対側の端部がパッド4を向くようボディ20に設けられている。
【0021】
ピストン40は、ピストン筒部41、ピストン底部42を有している。ピストン筒部41は、略円筒状に形成されている。ピストン底部42は、ピストン筒部41の一方の端部を塞ぐようピストン筒部41と一体に形成されている。ピストン底部42のピストン筒部41側の面は、中央が円形の平面状に形成され、その周囲がテーパ面状に形成されている。ピストン40は、ピストン筒部41のピストン底部42とは反対側の端部がシリンダ底部32を向くよう、シリンダ筒部31の内側に収容されている。
【0022】
シリンダ筒部31とピストン筒部41との間には、シール部材11が設けられている。シール部材11は、例えばゴム等の弾性部材により環状に形成されている。シール部材11は、シリンダ筒部31の内周壁に形成された環状の溝に設けられている。シール部材11は、内縁部がピストン筒部41の外周壁に摺動可能に接することにより、シリンダ筒部31とピストン筒部41との間を気密または液密に保持可能である。
【0023】
ピストン40は、シリンダ30内をピストン40の軸Ax1方向に往復移動可能である。これにより、ピストン底部42は、パッド4に当接したり、パッド4から離間したりすることができる。ピストン40は、パッド4に近付く方向に移動するとき、パッド4をディスク3に押し付ける。これにより、ディスク3の外縁部がパッド4とパッド5とに挟まれ、車輪2の回転が規制される。
【0024】
モータ50は、ロータ51、モータシャフト52を有している。モータシャフト52は、ロータ51の回転中心に設けられ、ロータ51とともに回転可能である。モータ50に通電すると、ロータ51が回転し、モータシャフト52からトルクが出力される。
【0025】
モータ50は、図示しないECUにより通電が制御される。ECUは、モータ50の通電を制御することで、ロータ51が正転方向または逆転方向に回転するようモータ50の作動を制御可能である。
【0026】
回転直動変換部600は、回転部材60、直動部材70、正転制限部811、および、逆転制限部821を有する。回転部材60は、ロータ51の回転と連動して回転する。直動部材70は、回転部材60の正転に応じてパッド4に近付く第1方向D1に直動するとともに、回転部材60の逆転に応じてパッド4から遠ざかる第2方向D2に直動する。正転制限部811は、ピストン40に設けられ、直動部材70に当接したとき、直動部材70の正転を制限する。逆転制限部821は、ピストン40に設けられ、直動部材70に当接したとき、直動部材70の逆転を制限する。
【0027】
より具体的には、回転部材60は、回転シャフト部61、回転フランジ部62を有している。回転シャフト部61は、例えば円柱状に形成されている。回転シャフト部61の外周壁の軸方向の一部には、雄ねじ部601が形成されている。回転フランジ部62は、回転シャフト部61の一方の端部と雄ねじ部601との間の外周壁から径方向外側に突出するよう略円環の板状に形成されている。回転部材60は、回転シャフト部61の一方の端部がシリンダ穴部33に挿通し、回転フランジ部62がシリンダ筒部31の内側に位置し、回転シャフト部61の他方の端部側がピストン筒部41の内側に位置するようシリンダ30に設けられている。
【0028】
回転フランジ部62とシリンダ底部32との間には、スラスト軸受12が設けられている。スラスト軸受12は、回転フランジ部62からスラスト方向の荷重を受けながら回転部材60を回転可能に支持する。
【0029】
シリンダ30のシリンダ底部32側の端部には、回転伝達部500が設けられている。回転伝達部500は、減速機53、出力部54を有している。減速機53は、例えば複数のギヤを有し、モータシャフト52から出力されたモータ50のトルクを減速し出力する。出力部54は、減速機53と回転シャフト部61の一方の端部とを接続するよう設けられている。出力部54は、減速機53で減速されたモータ50のトルクを回転部材60に出力する。これにより、モータ50のロータ51が正転方向に回転すると、回転部材60が正転方向に回転し、ロータ51が逆転方向に回転すると、回転部材60が逆転方向に回転する。このように、回転部材60は、ロータ51の回転と連動して回転する。
【0030】
直動部材70は、直動筒部71、直動フランジ部72を有している。直動筒部71は、筒状に形成されている。直動筒部71の内周壁には、雄ねじ部601に螺合可能な雌ねじ部701が形成されている。直動筒部71の一方の端面の外縁部は、テーパ面状に形成されている。直動フランジ部72は、直動筒部71の一方の端部側の外周壁から径方向外側に突出するよう形成されている。直動フランジ部72は、直動筒部71の周方向に等間隔で2つ形成されている(
図1~3参照)。
【0031】
直動部材70は、雌ねじ部701が回転部材60の雄ねじ部601に螺合し、直動筒部71の一方の端部がピストン底部42を向くよう回転シャフト部61の径方向外側に設けられている。直動部材70は、回転部材60が正転方向R1に回転すると、回転部材60の回転とともに正転方向R1に回転する(
図2参照)。また、直動部材70は、回転部材60が逆転方向R2に回転すると、回転部材60の回転とともに逆転方向R2に回転する(
図3参照)。
【0032】
ピストン40には、回転制限部800が設けられている。回転制限部800は、回転制限部本体80、正転制限突部81、逆転制限突部82を有している。回転制限部本体80は、略円筒状に形成されている。回転制限部本体80の外径は、ピストン筒部41の内径と略同じに設定されている。回転制限部800は、回転制限部本体80の外周壁がピストン筒部41の内周壁に対向するようピストン40に設けられている。そのため、回転制限部800は、ピストン40とともに回転可能である。
【0033】
正転制限突部81は、回転制限部本体80の内周壁から径方向内側に突出するとともに回転制限部本体80の軸方向に延びるよう形成されている。正転制限突部81は、回転制限部本体80の周方向に等間隔で2つ形成されている(
図2、3参照)。逆転制限突部82は、回転制限部本体80の内周壁から径方向内側に突出するとともに回転制限部本体80の軸方向に延びるよう形成されている。逆転制限突部82は、回転制限部本体80の周方向に等間隔で2つ形成されている(
図2、3参照)。正転制限突部81および逆転制限突部82は、回転制限部本体80の周方向において交互に等間隔で配置されている。
【0034】
正転制限部811は、回転制限部本体80の周方向の一方側を向くよう正転制限突部81に形成されている(
図1~7参照)。逆転制限部821は、回転制限部本体80の周方向の他方側を向くよう逆転制限突部82に形成されている(
図1~7参照)。ここで、ピストン40の軸Ax1方向から見たとき、直動部材70は、直動フランジ部72が回転制限部本体80の周方向において正転制限部811と逆転制限部821との間に位置するよう設けられている(
図2、3参照)。
【0035】
正転制限部811は、直動部材70の直動フランジ部72に当接したとき、直動部材70の正転を制限する。逆転制限部821は、直動部材70の直動フランジ部72に当接したとき、直動部材70の逆転を制限する。
【0036】
図2に示すように、回転部材60が正転すなわち正転方向R1に回転し、直動部材70も正転し、直動フランジ部72が正転制限部811に当接すると、直動部材70は、正転すなわち正転方向R1の回転が制限される。雄ねじ部601と雌ねじ部701とが螺合しているため、直動部材70の正転が制限されている状態で回転部材60がさらに正転すると、直動部材70は、回転部材60に対し、パッド4に近付く方向である第1方向D1に相対移動する(
図1参照)。すなわち、直動部材70は、回転部材60の正転に応じてパッド4に近付く第1方向D1に直動する。
【0037】
図3に示すように、回転部材60が逆転すなわち逆転方向R2に回転し、直動部材70も逆転し、直動フランジ部72が逆転制限部821に当接すると、直動部材70は、逆転すなわち逆転方向R2の回転が制限される。雄ねじ部601と雌ねじ部701とが螺合しているため、直動部材70の逆転が制限されている状態で回転部材60がさらに逆転すると、直動部材70は、回転部材60に対し、パッド4から遠ざかる方向である第2方向D2に相対移動する(
図1参照)。すなわち、直動部材70は、回転部材60の逆転に応じてパッド4から遠ざかる第2方向D2に直動する。
【0038】
なお、ピストン筒部41の外周壁がシール部材11と摺動可能に接し、ピストン底部42がパッド4に当接し得るため、ピストン40は、シール部材11またはパッド4との摩擦により、シリンダ30に対する相対回転が規制される。そのため、回転制限部800のシリンダ30に対する相対回転も規制される。
【0039】
係合部90は、第1正転係合部91および第1逆転係合部93、ならびに、第2正転係合部92および第2逆転係合部94を有する。第1正転係合部91および第1逆転係合部93は、ピストン40に設けられている。第2正転係合部92および第2逆転係合部94は、直動部材70に設けられている。係合部90は、正転制限部811によって直動部材70の正転が制限されている状態では第1正転係合部91と第2正転係合部92とがピストン40の軸方向において重なった正転時係合状態となる。係合部90は、正転時係合状態から回転部材60が逆転し逆転制限部821によって直動部材70の逆転が制限されている状態では第1逆転係合部93と第2逆転係合部94とがピストン40の軸方向において重なった逆転時係合状態となる。
【0040】
より具体的には、第1正転係合部91は、ピストン40に設けられた回転制限部800の正転制限突部81に形成されている。第1正転係合部91は、ピストン底部42とは反対側を向くよう形成されている(
図1~7参照)。第1逆転係合部93は、ピストン40に設けられた回転制限部800の逆転制限突部82に形成されている。第1逆転係合部93は、ピストン底部42を向くよう形成されている(
図1~7参照)。
【0041】
第2正転係合部92は、直動フランジ部72の直動筒部71の周方向の一方の端部に形成されている。第2逆転係合部94は、直動フランジ部72の直動筒部71の周方向の他方の端部に形成されている(
図2、3参照)。
【0042】
図2に示すように、係合部90は、正転制限部811によって直動部材70の正転が制限されている状態では、第1正転係合部91と第2正転係合部92とがピストン40の軸Ax1方向において重なった正転時係合状態となる。このとき、第1正転係合部91と第2正転係合部92とは、当接すなわち係合する(
図2、4、5参照)。そのため、正転時係合状態のとき、直動部材70が回転部材60の正転に応じてパッド4に近付く第1方向D1に直動すると、ピストン40は、回転制限部800とともに第1方向D1に付勢され、パッド4に押し付けられる。これにより、パッド4がディスク3に押し付けられ、ディスク3がパッド4とパッド5とに挟まれた状態となり、車輪2の回転が規制される。
【0043】
図3に示すように、係合部90は、正転時係合状態から回転部材60が逆転し逆転制限部821によって直動部材70の逆転が制限されている状態では、第1逆転係合部93と第2逆転係合部94とがピストン40の軸Ax1方向において重なった逆転時係合状態となる。このとき、第1逆転係合部93と第2逆転係合部94とは、当接すなわち係合する(
図3、6参照)。そのため、逆転時係合状態のとき、直動部材70が回転部材60の逆転に応じてパッド4から遠ざかる第2方向D2に直動すると、ピストン40は、回転制限部800とともに第2方向D2に付勢され、パッド4から遠ざかる。これにより、ディスク3へのパッド4の押し付けが解除され、車輪2の回転の規制が解除される。
【0044】
第1正転係合部91は、ピストン40の軸Ax1に対し傾斜する面である正転傾斜面911を有する。第1逆転係合部93は、ピストン40の軸Ax1に対し傾斜する面である逆転傾斜面931を有する。直動部材70が正転制限部811に当接するとき、第2正転係合部92が正転傾斜面911に沿って移動する。直動部材70が逆転制限部821に当接するとき、第2逆転係合部94が逆転傾斜面931に沿って移動する。
【0045】
より具体的には、正転傾斜面911は、ピストン40の軸Ax1に対し傾斜するよう第1正転係合部91に形成されている(
図4~7参照)。逆転傾斜面931は、ピストン40の軸Ax1に対し傾斜するよう第1逆転係合部93に形成されている(
図4~8参照)。
【0046】
図5に示すように、直動部材70が正転制限部811に当接する方向すなわち正転方向R1に回転するとき、第2正転係合部92が正転傾斜面911に沿って移動する。その結果、第2正転係合部92が正転制限部811に当接する(
図2参照)。
【0047】
図6に示すように、直動部材70が逆転制限部821に当接する方向すなわち逆転方向R2に回転するとき、第2逆転係合部94が逆転傾斜面931に沿って移動する。その結果、第2逆転係合部94が逆転制限部821に当接する(
図3参照)。
【0048】
<2>本実施形態では、直動部材70が正転制限部811に当接するとき、第2正転係合部92と第1正転係合部91とが最初に当接する位置である第1当接位置Pt1は、ピストン40の軸Ax1方向における正転傾斜面911の一方の端部と他方の端部との間である。直動部材70が逆転制限部821に当接するとき、第2逆転係合部94と第1逆転係合部93とが最初に当接する位置である第2当接位置Pt2は、ピストン40の軸Ax1方向における逆転傾斜面931の一方の端部と他方の端部との間である。
【0049】
より具体的には、
図5に示すように、直動部材70が正転制限部811に当接する方向すなわち正転方向R1に回転するとき、第2正転係合部92は、最初に、第1当接位置Pt1で、第1正転係合部91の正転傾斜面911に当接する。また、
図6に示すように、直動部材70が逆転制限部821に当接する方向すなわち逆転方向R2に回転するとき、第2逆転係合部94は、最初に、第2当接位置Pt2で、第1逆転係合部93の逆転傾斜面931に当接する。
【0050】
ここで、比較形態の問題点について説明する。比較形態は、第1正転係合部91が正転傾斜面911を有しない点、および、第1逆転係合部93が逆転傾斜面931を有しない点等が本実施形態と異なる。
【0051】
比較形態では、第1正転係合部91が正転傾斜面911を有しないため(
図9~11参照)、直動部材70が正転制限部811に当接する方向すなわち正転方向R1に回転するとき、第2正転係合部92は、角速度が低下することなく、正転制限部811に当接する(
図9参照)。そのため、第2正転係合部92と正転制限部811との当接時の衝撃により、異音が発生するおそれがある。
【0052】
また、第1逆転係合部93が逆転傾斜面931を有しないため(
図9~11参照)、直動部材70が逆転制限部821に当接する方向すなわち逆転方向R2に回転するとき、第2逆転係合部94は、角速度が低下することなく、逆転制限部821に当接する(
図10参照)。そのため、第2逆転係合部94と逆転制限部821との当接時の衝撃により、異音が発生するおそれがある。
【0053】
一方、本実施形態では、上述したように、直動部材70が正転制限部811に当接する方向すなわち正転方向R1に回転するとき、第2正転係合部92は、最初に、第1当接位置Pt1で、第1正転係合部91の正転傾斜面911に当接し、正転傾斜面911に沿って移動し、その後、正転制限部811に当接する。そのため、
図12に示すように、直動部材70の角速度は、時刻t1で第2正転係合部92が正転傾斜面911に当接した後、徐々に低下し、時刻t2で第2正転係合部92が正転制限部811に当接するとき、比較的低くなる。これにより、直動部材70は、比較的低い角速度で正転制限部811に当接する。したがって、正転制限部811への直動部材70の当接時の衝撃を緩和し、異音の発生を抑制できる。
【0054】
また、本実施形態では、上述したように、逆転制限部821に当接する方向すなわち逆転方向R2に回転するとき、第2逆転係合部94は、最初に、第2当接位置Pt2で、第1逆転係合部93の逆転傾斜面931に当接し、逆転傾斜面931に沿って移動し、その後、逆転制限部821に当接する。これにより、直動部材70は、比較的低い角速度で逆転制限部821に当接する。したがって、逆転制限部821への直動部材70の当接時の衝撃を緩和し、異音の発生を抑制できる。
【0055】
以上説明したように、<1>本実施形態では、係合部90は、第1正転係合部91および第1逆転係合部93、ならびに、第2正転係合部92および第2逆転係合部94を有する。第1正転係合部91および第1逆転係合部93は、ピストン40に設けられている。第2正転係合部92および第2逆転係合部94は、直動部材70に設けられている。係合部90は、正転制限部811によって直動部材70の正転が制限されている状態では第1正転係合部91と第2正転係合部92とがピストン40の軸方向において重なった正転時係合状態となる。係合部90は、正転時係合状態から回転部材60が逆転し逆転制限部821によって直動部材70の逆転が制限されている状態では第1逆転係合部93と第2逆転係合部94とがピストン40の軸方向において重なった逆転時係合状態となる。
【0056】
正転時係合状態のとき、直動部材70が回転部材60の正転に応じてパッド4に近付く第1方向D1に直動すると、ピストン40は、回転制限部800とともに第1方向D1に付勢され、パッド4に押し付けられる。逆転時係合状態のとき、直動部材70が回転部材60の逆転に応じてパッド4から遠ざかる第2方向D2に直動すると、ピストン40は、回転制限部800とともに第2方向D2に付勢され、パッド4から遠ざかる。このように、係合部90により、ピストン40の直動部材70の直動への追従性を向上できる。
【0057】
第1正転係合部91は、ピストン40の軸Ax1に対し傾斜する面である正転傾斜面911を有する。第1逆転係合部93は、ピストン40の軸Ax1に対し傾斜する面である逆転傾斜面931を有する。直動部材70が正転制限部811に当接するとき、第2正転係合部92が正転傾斜面911に沿って移動する。直動部材70が逆転制限部821に当接するとき、第2逆転係合部94が逆転傾斜面931に沿って移動する。
【0058】
そのため、直動部材70は、第2正転係合部92が正転傾斜面911に沿って移動し、正転制限部811に当接する。また、直動部材70は、第2逆転係合部94が逆転傾斜面931に沿って移動し、逆転制限部821に当接する。これにより、直動部材70は、第2正転係合部92が正転傾斜面911に沿って移動するとき、または、第2逆転係合部94が逆転傾斜面931に沿って移動するとき、ピストン40に対する相対回転の角速度が徐々に低下し、比較的低い角速度で正転制限部811または逆転制限部821に当接する。したがって、正転制限部811または逆転制限部821への直動部材70の当接時の衝撃を緩和し、異音の発生を抑制できる。
【0059】
また、<2>本実施形態では、直動部材70が正転制限部811に当接するとき、第2正転係合部92と第1正転係合部91とが最初に当接する位置である第1当接位置Pt1は、ピストン40の軸Ax1方向における正転傾斜面911の一方の端部と他方の端部との間である。直動部材70が逆転制限部821に当接するとき、第2逆転係合部94と第1逆転係合部93とが最初に当接する位置である第2当接位置Pt2は、ピストン40の軸Ax1方向における逆転傾斜面931の一方の端部と他方の端部との間である。
【0060】
そのため、直動部材70の正転時、まず、第2正転係合部92を第1正転係合部91の正転傾斜面911に確実に当接させ、第2正転係合部92を正転傾斜面911に沿って移動させてから、直動部材70を正転制限部811に当接させることができる。また、直動部材70の逆転時、まず、第2逆転係合部94を第1逆転係合部93の逆転傾斜面931に確実に当接させ、第2逆転係合部94を逆転傾斜面931に沿って移動させてから、直動部材70を逆転制限部821に当接させることができる。したがって、正転制限部811または逆転制限部821への直動部材70の当接時の衝撃を確実に緩和し、異音の発生を抑制できる。
【0061】
(第2実施形態)
第2実施形態の車両用ブレーキ装置の一部を
図13に示す。第2実施形態は、正転傾斜面911および逆転傾斜面931の構成が第1実施形態と異なる。
【0062】
<3>本実施形態では、正転傾斜面911は、正転制限部811に向かうに従い摩擦係数が増大するよう形成されている。逆転傾斜面931は、逆転制限部821に向かうに従い摩擦係数が増大するよう形成されている(
図13参照)。
【0063】
より具体的には、正転傾斜面911は、例えば正転制限部811に向かうに従い面粗度が大きくなるよう形成されることで、正転制限部811に向かうに従い摩擦係数が増大するよう形成されている。また、逆転傾斜面931は、逆転制限部821に向かうに従い面粗度が大きくなるよう形成されることで、逆転制限部821に向かうに従い摩擦係数が増大するよう形成されている。
【0064】
そのため、本実施形態では、第2正転係合部92が正転傾斜面911に沿って移動するとき、または、第2逆転係合部94が逆転傾斜面931に沿って移動するとき、直動部材70のピストン40に対する相対回転の角速度をより一層低減させることができる。したがって、正転制限部811または逆転制限部821への直動部材70の当接時の衝撃をより一層緩和し、異音の発生をより一層抑制できる。
【0065】
(第3実施形態)
第3実施形態の車両用ブレーキ装置の一部を
図14に示す。第3実施形態は、第1正転係合部91および第1逆転係合部93、ならびに、正転制限部811および逆転制限部821の構成が第1実施形態と異なる。
【0066】
本実施形態では、第1正転係合部91は、正転傾斜面911を有していない。第1逆転係合部93は、逆転傾斜面931を有していない(
図14参照)。
【0067】
<5>本実施形態では、正転制限部811は、第2正転係合部92に当接可能な弾性部材である正転弾性部材(図示せず)を有している。逆転制限部821は、第2逆転係合部94に当接可能な弾性部材である逆転弾性部材96を有する。
【0068】
より具体的には、正転弾性部材および逆転弾性部材96は、例えばゴム等により弾性変形可能に形成されている。
【0069】
本実施形態では、直動部材70は、正転制限部811に当接するとき、第2正転係合部92が正転弾性部材に当接する。また、直動部材70は、逆転制限部821に当接するとき、第2逆転係合部94が逆転弾性部材96に当接する。したがって、正転制限部811または逆転制限部821への直動部材70の当接時の衝撃を緩和し、異音の発生を抑制できる。
【0070】
(第4実施形態)
第4実施形態の車両用ブレーキ装置の一部を
図15に示す。第4実施形態は、正転制限部811および逆転制限部821の構成が第1実施形態と異なる。
【0071】
<4>本実施形態では、正転制限部811は、第2正転係合部92に当接可能な弾性部材である正転弾性部材(図示せず)を有している。逆転制限部821は、第2逆転係合部94に当接可能な弾性部材である逆転弾性部材96を有する。
【0072】
より具体的には、正転弾性部材および逆転弾性部材96は、第3実施形態と同様、例えばゴム等により弾性変形可能に形成されている。
【0073】
本実施形態では、第1実施形態における正転傾斜面911および逆転傾斜面931による効果と、第3実施形態における正転弾性部材および逆転弾性部材96による効果とを奏することができ、正転制限部811または逆転制限部821への直動部材70の当接時の衝撃をより一層効果的に緩和し、異音の発生をより一層効果的に抑制できる。
【0074】
(他の実施形態)
本発明は、構成上の阻害要因がない限り、上述の実施形態を組み合わせることができる。例えば第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせ、正転傾斜面911を正転制限部811に向かうに従い摩擦係数が増大するよう形成し、逆転傾斜面931を逆転制限部821に向かうに従い摩擦係数が増大するよう形成するとともに、第2正転係合部92に当接可能な弾性部材である正転弾性部材、および、第2逆転係合部94に当接可能な弾性部材である逆転弾性部材96を設けるといった具合である。
【0075】
また、上述の実施形態では、雄ねじ部601と雌ねじ部701との螺合により、回転部材60の回転を直動部材70の直動に変換する例を示した。これに対し、他の実施形態では、例えば回転部材60と直動部材70の間にボールねじを設け、回転部材60の回転を直動部材70の直動に変換することとしてもよい。
【0076】
また、他の実施形態では、例えばピストン40の内側に作動油を供給し、油圧によりピストン40をパッド4に押し付けてもよい。
【0077】
本発明の車両用ブレーキ装置は、車両の複数の車輪のうちすべての車輪に適用してもよいし、一部の車輪のみに適用してもよい。
【0078】
本発明の車両用ブレーキ装置は、走行中の車両を減速または停止させる制動用ブレーキとして用いることができる他、パーキングブレーキとして用いることができる。
【0079】
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0080】
2 車輪、3 ディスク、4 パッド、10 車両用ブレーキ装置、20 ボディ、30 シリンダ、40 ピストン、50 モータ、51 ロータ、60 回転部材、70 直動部材、90 係合部、91 第1正転係合部、92 第2正転係合部、93 第1逆転係合部、94 第2逆転係合部、600 回転直動変換部、811 正転制限部、821 逆転制限部、911 正転傾斜面、931 逆転傾斜面、D1 第1方向、D2 第2方向