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特許7548200インダクタ部品およびインダクタ部品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】インダクタ部品およびインダクタ部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240903BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240903BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/00 B
H01F17/00 D
H01F17/04 F
H01F41/04 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021202738
(22)【出願日】2021-12-14
(65)【公開番号】P2023088090
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
(72)【発明者】
【氏名】堀 百花
(72)【発明者】
【氏名】東山 知未
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-068805(JP,A)
【文献】特開2007-242800(JP,A)
【文献】特開2017-011185(JP,A)
【文献】特開2017-017103(JP,A)
【文献】特開2020-053636(JP,A)
【文献】特開2020-053651(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0178789(US,A1)
【文献】特開2022-152043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/32、41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、前記素体内に配置されたコイルと、前記コイルの少なくとも一部を覆う非磁性体の絶縁層とを備え、
前記素体は、第1方向に沿って順に積層された第1磁性層および第2磁性層を有し、
前記コイルは、前記第1磁性層と前記第2磁性層の間で前記第1方向に直交する平面に沿って延在するインダクタ配線を有し、
前記インダクタ配線の延在方向に直交する第1断面において、
前記インダクタ配線は、前記第1方向を向く天面と、前記第1方向と逆方向の第2方向を向く底面と、前記第1方向に直交する第3方向を向く第1側面と、前記第3方向と逆方向の第4方向を向く第2側面とを有し、
前記絶縁層は、
前記天面よりも前記第1方向に位置する天面部と、
前記底面よりも前記第2方向に位置する底面部と、
前記第1側面に接触する第1側面部と、
前記第2側面に接触する第2側面部と、
前記天面部から、前記第1側面部よりも前記第3方向に突出する位置と、前記第2側面部よりも前記第4方向に突出する位置と、の少なくとも一方向の位置に設けられた少なくとも一つの天面突出部と、
前記底面部から、前記第1側面部よりも前記第3方向に突出する位置と、前記第2側面部よりも前記第4方向に突出する位置と、の少なくとも一方向の位置に設けられた底面突出部と、を有し、
前記底面突出部は、前記第1磁性層と前記第2磁性層の間に位置し、
前記第1磁性層と前記第2磁性層とが、前記底面突出部の先端で接触し、
前記第3方向または前記第4方向に平行な方向の前記底面突出部の突出長さは、全ての前記天面突出部の前記第3方向または前記第4方向に平行な方向の突出長さに比べて1.8倍以上長い、インダクタ部品。
【請求項2】
前記インダクタ配線は、前記第1方向に沿って複数層存在し、
前記コイルは、前記複数のインダクタ配線が直列に接続されて1ターン以上を構成し、
前記第3方向は、前記コイルの内面方向である、請求項1に記載のインダクタ部品
【請求項3】
前記天面突出部および前記底面突出部は、前記第1断面において3つ以上存在し、
前記第1断面において、前記天面突出部および前記底面突出部のうちの少なくとも3つは、前記第3方向または前記第4方向に平行な方向の突出長さが互いに異なる、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記インダクタ配線は、前記第1方向に沿って複数層存在し、
前記第1断面において、前記第1方向に位置する前記インダクタ配線ほど、前記第3方向または前記第4方向に平行な方向の前記天面突出部の突出長さは短い、請求項1から3の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記インダクタ配線は、前記第1方向に沿って複数層存在し、
前記第1断面において、前記天面突出部は、前記第2方向に傾いている、請求項1から4の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記第1断面において、前記底面突出部は、突出方向が前記第3方向または前記第4方向と平行である、請求項1から5の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記第1断面において、前記底面突出部は、前記第1方向に傾いている、請求項1から6の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記インダクタ配線は、前記第1方向に沿って複数層存在し、
前記コイルは、前記複数のインダクタ配線が直列に接続されて1ターン以上を構成し、
前記第1断面において、全ての前記天面突出部および前記底面突出部は、前記コイルの内磁路および外磁路の何れかに位置する、請求項1から7の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記天面突出部は、前記第3方向に突出する突出部および前記第4方向に突出する突出部を含み、
前記底面突出部は、前記第3方向に突出する突出部および前記第4方向に突出する突出部を含む、請求項1から8の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記天面突出部は、前記第3方向に突出する突出部および前記第4方向に突出する突出部を含み、
前記第1断面において、前記第3方向に突出する突出部の前記第3方向に平行な方向の突出長さは、前記第4方向に突出する突出部の前記第4方向に平行な方向の突出長さと異なる、請求項1から9の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項11】
前記底面突出部は、前記第3方向に突出する突出部および前記第4方向に突出する突出部を含み、
前記第1断面において、前記第3方向に突出する突出部の前記第3方向に平行な方向の突出長さは、前記第4方向に突出する突出部の前記第4方向に平行な方向の突出長さと異なる、請求項1から10の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項12】
前記第1断面において、前記天面突出部は、前記第1方向または前記第2方向に傾いている、請求項1から11の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項13】
前記絶縁層の前記底面部の厚みは、前記天面部の厚みよりも薄い、請求項1から12の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項14】
前記インダクタ配線は、前記第1方向に沿ってn(n:自然数、n≧2)層存在し、
第1層の前記インダクタ配線を覆う前記絶縁層の材料は、第m(m:自然数、2≦m≦n)層の前記インダクタ配線を覆う前記絶縁層の材料と異なる、請求項1から13の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ部品およびインダクタ部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、国際公開第2019/044459号(特許文献1)に記載されたものがある。インダクタ部品は、磁性層を有する素体と、素体内に配置され、軸方向に沿って螺旋状に巻回されたコイルと、素体内に配置され、コイルを覆う非磁性体の絶縁層と、を備える。絶縁層は、コイルを覆う円筒状の第1部分と、第1部分の下端側に接続し、コイルの内磁路および外磁路の全領域を覆う第2部分と、を有する。コイルの軸を含む断面において、第1部分の内周面および外周面は直線状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/044459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインダクタ部品では、コイルの軸を含む断面において、絶縁層の第1部分の内周面および外周面は直線状であるため、絶縁層と素体との密着性が良好ではなかった。また、従来のインダクタ部品では、絶縁層の第2部分がコイルの内磁路および外磁路の全領域を覆うため、インダクタンスの取得効率が低下する虞があった。
【0005】
そこで、本開示は、絶縁層と素体との密着性を向上させると共に、インダクタ特性も向上させることができるインダクタ部品およびインダクタ部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
素体と、前記素体内に配置されたコイルと、前記コイルの少なくとも一部を覆う非磁性体の絶縁層とを備え、
前記素体は、第1方向に沿って順に積層された第1磁性層および第2磁性層を有し、
前記コイルは、前記第1磁性層と前記第2磁性層の間で前記第1方向に直交する平面に沿って延在するインダクタ配線を有し、
前記インダクタ配線の延在方向に直交する第1断面において、
前記インダクタ配線は、前記第1方向を向く天面と、前記第1方向と逆方向の第2方向を向く底面と、前記第1方向に直交する第3方向を向く第1側面と、前記第3方向と逆方向の第4方向を向く第2側面とを有し、
前記絶縁層は、
前記天面よりも前記第1方向に位置する天面部と、
前記底面よりも前記第2方向に位置する底面部と、
前記第1側面に接触する第1側面部と、
前記第2側面に接触する第2側面部と、
前記天面部から、前記第1側面部よりも前記第3方向に突出する位置と、前記第2側面部よりも前記第4方向に突出する位置と、の少なくとも一方向の位置に設けられた天面突出部と、
前記底面部から、前記第1側面部よりも前記第3方向に突出する位置と、前記第2側面部よりも前記第4方向に突出する位置と、の少なくとも一方向の位置に設けられた底面突出部と、を有し、
前記底面突出部は、前記第1磁性層と前記第2磁性層の間に位置し、
前記第1磁性層と前記第2磁性層とが、前記底面突出部の先端で接触し、
前記第3方向または前記第4方向に平行な方向の前記底面突出部の突出長さは、前記第3方向または前記第4方向に平行な方向の前記天面突出部の突出長さよりも長い。
【0007】
前記態様によれば、底面突出部が、第1磁性層と第2磁性層の間に位置し、かつ、第3方向または前記第4方向に平行な方向の底面突出部の突出長さが、第3方向または前記第4方向に平行な方向の天面突出部の突出長さよりも長いため、底面突出部を介して、第1磁性層と第2磁性層との密着性を確保できる。また、天面突出部により、絶縁層と素体との接触面積が増加し、さらに、天面突出部が素体内に食い込むことにより、絶縁層と素体との密着性が向上する。以上により、絶縁層と素体との密着性を向上させることができる。また、第1磁性層と第2磁性層とが、底面突出部の先端で接触しているため、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。このように、前記実施形態によれば、絶縁層と素体との密着性を向上させると共に、インダクタ特性も向上させることができる。
【0008】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記インダクタ配線は、前記第1方向に沿って複数層存在し、
前記コイルは、複数のインダクタ配線が直列に接続されて1ターン以上を構成し、
前記第3方向は、前記コイルの内面方向である。
【0009】
本実施形態によれば、第1磁性層と第2磁性層との接触面積が比較的大きい内磁路内に底面突出部が突出するため、絶縁層と素体との密着性を向上させることができる。
【0010】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記天面突出部および前記底面突出部は、前記第1断面において3つ以上存在し、
前記第1断面において、前記天面突出部および前記底面突出部のうちの少なくとも3つは、前記第3方向または前記第4方向に平行な方向の突出長さが互いに異なる。
【0011】
前記実施形態によれば、一部の突出部の突出長さを長くすることで、絶縁層と素体との密着性をより向上させることができる。また、一部の突出部の突出長さを短くすることで、磁路の磁気抵抗を小さくして、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。
【0012】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記インダクタ配線は、前記第1方向に沿って複数層存在し、
前記第1断面において、前記第1方向に位置する前記インダクタ配線ほど、前記第3方向または前記第4方向に平行な方向の前記天面突出部の突出長さは短い。
【0013】
前記実施形態によれば、天面突出部の突出長さは、第1方向に位置するインダクタ配線ほど短いので、第1方向に向かうほどコイルの磁路の面積が広がる。これにより、製造時にコイルの第1方向側から第2磁性層を第2方向に充填する際、コイルへの第2磁性層の充填が容易となり、充填率が向上してインダクタンスを向上させることができる。
【0014】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記インダクタ配線は、前記第1方向に沿って複数層存在し、
前記第1断面において、前記天面突出部は、前記第2方向に傾いている。
【0015】
前記実施形態によれば、天面突出部が第2方向に傾いているので、製造時にコイルの第1方向側から第2磁性層を第2方向に充填する際、コイルへの第2磁性層の充填が円滑となる。また、天面突出部の第2方向への傾きにより、第2磁性層の充填後、第2磁性層の第1方向への抜けに対抗でき、絶縁層と素体との密着性をより向上させることができる。
【0016】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1断面において、底面突出部は、突出方向が前記第3方向または前記第4方向と平行である。
【0017】
前記実施形態によれば、製造時にコイルの第1方向側から第2磁性層を第2方向に充填する際、第1磁性層側が安定した状態で充填されているため、より確実に磁路に磁性層を充填できる。そのため、インダクタンスを高めることができる。
【0018】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1断面において、底面突出部は、前記第1方向に傾いている。
【0019】
前記実施形態によれば、絶縁層と素体との密着性をより向上させることができる。
【0020】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記インダクタ配線は、前記第1方向に沿って複数層存在し、
前記コイルは、前記複数のインダクタ配線が直列に接続されて1ターン以上を構成し、
前記第1断面において、全ての前記天面突出部および前記底面突出部は、前記コイルの内磁路および外磁路の何れかに位置する。
【0021】
前記実施形態によれば、絶縁層と素体との密着性をより向上させることができる。
【0022】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記天面突出部は、前記第3方向に突出する突出部および前記第4方向に突出する突出部を含み、
前記底面突出部は、前記第3方向に突出する突出部および前記第4方向に突出する突出部を含む。
【0023】
前記実施形態によれば、絶縁層と素体との密着性をより向上させることができる。
【0024】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記天面突出部は、前記第3方向に突出する突出部および前記第4方向に突出する突出部を含み、
前記第1断面において、前記第3方向に突出する突出部の前記第3方向に平行な方向の突出長さは、前記第4方向に突出する突出部の前記第4方向に平行な方向の突出長さと異なる。
【0025】
前記実施形態によれば、突出部の一方の長さを長くすることで、絶縁層と素体との密着性をより向上させることができる。また、突出部の他方の長さを短くすることで、磁路の磁気抵抗を小さくして、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。
【0026】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記底面突出部は、前記第3方向に突出する突出部および前記第4方向に突出する突出部を含み、
前記第1断面において、前記第3方向に突出する突出部の前記第3方向に平行な方向の突出長さは、前記第4方向に突出する突出部の前記第4方向に平行な方向の突出長さと異なる。
【0027】
前記実施形態によれば、突出部の一方の長さを長くすることで、絶縁層と素体との密着性をより向上させることができる。また、突出部の他方の長さを短くすることで、磁路の磁気抵抗を小さくして、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。
【0028】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1断面において、前記天面突出部は、前記第1方向または前記第2方向に傾いている。
【0029】
前記実施形態によれば、絶縁層と素体との密着性をより向上させることができる。
【0030】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記絶縁層の前記底面部の厚みは、前記天面部の厚みよりも薄い。
【0031】
前記実施形態によれば、インダクタンスを向上させることができる。
【0032】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記インダクタ配線は、前記第1方向に沿ってn(n:自然数、n≧2)層存在し、
第1層の前記インダクタ配線を覆う前記絶縁層の材料は、第m(m:自然数、2≦m≦n)層の前記インダクタ配線を覆う前記絶縁層の材料と異なる。
【0033】
前記実施形態によれば、設計自由度を高くすることができる。例えば、第1層のインダクタ配線を覆う絶縁層の材料は、ベース基板との剥離や応力を重視して、選択されることが好ましい。一方、第m層のインダクタ配線を覆う絶縁層の材料は、レーザやフォトリソ解像性、段差への被覆性などで選択されることが好ましい。
【0034】
好ましくは、インダクタ部品の製造方法の一実施形態では、
延在方向に直交する第1断面において、第1方向を向く天面と、前記第1方向と逆方向の第2方向を向く底面と、前記第1方向に直交する第3方向を向く第1側面と、前記第3方向と逆方向の第4方向を向く第2側面とを有するインダクタ配線を形成する工程と、
前記第1断面において、前記天面よりも前記第1方向に位置する天面部と、前記底面よりも前記第2方向に位置する底面部と、前記第1側面に接触する第1側面部と、前記第2側面に接触する第2側面部と、前記天面部から、前記第1側面部よりも前記第3方向に突出する位置と、前記第2側面部よりも前記第4方向に突出する位置と、の少なくとも一方向の位置に設けられた天面突出部と、前記底面部から、前記第1側面部よりも前記第3方向に突出する位置と、前記第2側面部よりも前記第4方向に突出する位置と、の少なくとも一方向の位置に設けられた底面突出部と、を有するように絶縁層を形成する工程と、
前記インダクタ配線および前記絶縁層を挟むように、第1磁性層および第2磁性層を前記第1方向に沿って積層して素体を形成する工程と、を備え、
前記絶縁層を形成する工程において、前記底面突出部は、前記第1磁性層と前記第2磁性層の間に位置し、前記第1磁性層と前記第2磁性層とが、前記底面突出部の先端で接触し、前記第3方向または前記第4方向に平行な方向の前記底面突出部の突出長さが、前記第3方向または前記第4方向に平行な方向の前記天面突出部の突出長さよりも長くなるようにする。
【0035】
前記実施形態によれば、絶縁層と素体との密着性を向上させると共に、インダクタ特性も向上させることができる。
【0036】
好ましくは、インダクタ部品の製造方法の一実施形態では、
前記インダクタ配線を形成する工程は、さらに、前記第1方向からみて前記天面突出部と重複可能な位置にダミー配線を形成し、
前記インダクタ配線を形成する工程の後に、さらに、前記ダミー配線を除去する工程を備え、
前記素体を形成する工程は、さらに、前記ダミー配線を除去した位置に前記第1磁性層または前記第2磁性層を充填する。
【0037】
前記実施形態によれば、天面突出部に密着する磁性層を低コストで製造することができる。
【発明の効果】
【0038】
本開示の一態様であるインダクタ部品およびインダクタ部品の製造方法によれば、絶縁層と素体との密着性を向上させると共に、インダクタ特性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】インダクタ部品の第1実施形態を示す平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図2のA部の拡大図である。
図4A】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4B】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4C】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4D】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4E】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4F】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4G】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4H】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4I】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4J】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4K】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4L】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4M】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図4N】インダクタ部品の製法を説明する説明図である。
図5】インダクタ部品の第2実施形態を示す断面図である。
図6】インダクタ部品の第3実施形態を示す断面図である。
図7】インダクタ部品の第4実施形態を示す断面図である。
図8】インダクタ部品の第5実施形態を示す断面図である。
図9】インダクタ部品の第6実施形態を示す平面図である。
図10】インダクタ部品の第6実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品およびインダクタ部品の製造方法を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0041】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す平面図である。図2は、図1のA-A断面図である。図3は、図2のA部の拡大図である。
【0042】
インダクタ部品1は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジタルカメラ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載され、例えば全体として直方体形状の部品である。ただし、インダクタ部品1の形状は、特に限定されず、円柱状や多角形柱状、円錐台形状、多角形錐台形状であってもよい。
【0043】
図1および図2に示すように、インダクタ部品1は、素体10と、素体10内に配置されたコイル15と、コイル15の少なくとも一部を覆う非磁性体の絶縁層60と、素体10の第1主面10aから端面が露出するように素体10内に設けられた第1垂直配線51および第2垂直配線52と、素体10の第1主面10aにおいて露出する第1外部端子41および第2外部端子42と、素体10の第1主面10aに設けられた被覆膜50と、を備える。
【0044】
図中、インダクタ部品1の厚み方向をZ方向とし、順Z方向を上側、逆Z方向を下側とする。インダクタ部品1のZ方向に直交する平面において、インダクタ部品1の長手方向であり、第1外部端子41および第2外部端子42が並ぶ方向である長さ方向をX方向とし、長さ方向に直交する方向であるインダクタ部品1の幅方向をY方向とする。
【0045】
素体10は、第1主面10aおよび第2主面10bと、第1主面10aと第2主面10bの間に位置し第1主面10aと第2主面10bを接続する第1側面10c、第2側面10d、第3側面10eおよび第4側面10fとを有する。
【0046】
第1主面10aおよび第2主面10bは、Z方向に互いに反対側に配置され、第1主面10aは、順Z方向に配置され、第2主面10bは、逆Z方向に配置される。第1側面10cおよび第2側面10dは、X方向に互いに反対側に配置され、第1側面10cは、逆X方向に配置され、第2側面10dは、順X方向に配置される。第3側面10eおよび第4側面10fは、Y方向に互いに反対側に配置され、第3側面10eは、逆Y方向に配置され、第4側面10fは、順Y方向に配置される。
【0047】
素体10は、順Z方向に沿って順に積層された第1磁性層11および第2磁性層12を有する。この「順に」とは、単に第1磁性層11および第2磁性層12の位置関係を示すだけであり、第1磁性層11および第2磁性層12の形成順とは関係ない。
【0048】
第1磁性層11および第2磁性層12は、それぞれ、磁性粉と当該磁性粉を含有する樹脂とを含む。樹脂は、例えば、エポキシ系、フェノール系、液晶ポリマー系、ポリイミド系、アクリル系もしくはそれらを含む混合物からなる有機絶縁材料である。磁性粉は、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、または、それらのアモルファス合金である。したがって、フェライトからなる磁性層と比較して、磁性粉により直流重畳特性を向上でき、樹脂により磁性粉間が絶縁されるので、高周波でのロス(鉄損)が低減される。なお、磁性層は、フェライトや磁性粉の焼結体など、有機樹脂を含まない場合であってもよい。
【0049】
コイル15は、第1インダクタ配線21と第2インダクタ配線22とを有する。第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22の各々は、第1磁性層11と第2磁性層12の間でZ方向に直交する平面に沿って延在する。具体的に述べると、第1磁性層11は、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22の逆Z方向に存在し、第2磁性層12は、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22の順Z方向および順Z方向に直交する方向に存在する。
【0050】
第1インダクタ配線21は、第2インダクタ配線22よりも逆Z方向側に設けられ、素体10の第1主面10aに沿ってスパイラル形状に延びる配線である。第1インダクタ配線21のターン数は、1周を超えることが好ましい。これにより、インダクタンスを向上させることができる。第1インダクタ配線21は、例えば、Z方向からみて、内周端21aから外周端21bに向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。
【0051】
第2インダクタ配線22は、素体10の第1主面10aに沿ってスパイラル形状に延びる配線である。第2インダクタ配線22のターン数は、1周を超えることが好ましい。これにより、インダクタンスを向上させることができる。第2インダクタ配線22は、Z方向からみて、外周端22bから内周端22aに向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。第2インダクタ配線22は、第1インダクタ配線21と第2磁性層12との間に配置されている。これにより、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22の各々は、Z方向に沿って配置されている。
【0052】
第1インダクタ配線21の外周端21bは、その外周端21bの上面に接する第2垂直配線52を介して、第2外部端子42に接続される。第2インダクタ配線22の外周端22bは、その外周端22bの上面に接する第1垂直配線51を介して、第1外部端子41に接続される。第2インダクタ配線22の内周端22aは、その内周端22aの下面に接するビア配線(図示省略)を介して、第1インダクタ配線21の内周端21aに接続される。以上の構成により、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22は、直列に接続されて、第1外部端子41および第2外部端子42と電気的に接続される。
【0053】
なお、本実施形態では、第1接続配線81が、第1インダクタ配線21と同一層に設けられている。第1接続配線81は、第2インダクタ配線22の外周端22bの下側(逆Z方向側)に配置され、ビア配線25を介して、第2インダクタ配線22の下面のみに接続している。第1接続配線81は、第1インダクタ配線21には接続しておらず、電気的に独立している。第1接続配線81を設けることにより、第2インダクタ配線22の外周端22bを、第2インダクタ配線22の巻回部分と同一層に設けることができ、断線などを抑制することができる。
【0054】
第1、第2インダクタ配線21,22の厚みは、例えば、40μm以上120μm以下であることが好ましい。第1、第2インダクタ配線21,22の実施例として、厚みが30μm、配線幅が45μmである。
【0055】
第1、第2インダクタ配線21,22は、導電性材料からなり、例えばCu、Ag、Au、Alなどの低電気抵抗な金属材料からなる。なお、インダクタ配線は、シード層と電解めっき層との2層構成であってもよく、シード層として、TiやNiを含んでいてもよい。
【0056】
第2インダクタ配線22の外周端22bおよび第1接続配線81のそれぞれに、第1引出配線201が接続され、第1引出配線201は、第1側面10cから露出する。第1インダクタ配線21の外周端21bおよび第2垂直配線52(具体的には、後述する第2接続配線82)のそれぞれに、第2引出配線202が接続され、第2引出配線202は、第2側面10dから露出する。
【0057】
第1引出配線201および第2引出配線202は、インダクタ部品1の製造過程において、第1、第2インダクタ配線21,22の形状を形成後、追加で電解めっきを行う際の給電配線と接続される配線である。この給電配線によりインダクタ部品1を個片化する前のインダクタ基板状態において、追加で電解めっきを容易に行うことができ、配線間距離を狭くすることができる。また、追加で電解めっきを行うことで、第1、第2インダクタ配線21,22の配線間距離を狭くすることにより、第1、第2インダクタ配線21,22の磁気結合を高めることができる。また、第1引出配線201および第2引出配線202を設けることで、インダクタ部品1の個片化の際の素体10の切断時に、強度を確保することができ、製造時の歩留まりを向上することができる。
【0058】
第1垂直配線51は、導電性材料からなり、第2インダクタ配線22の上面からZ方向に延在し、第2磁性層12の内部を貫通している。第1垂直配線51は、第2インダクタ配線22の外周端22bの上面に設けられ、絶縁層60の内部を貫通するビア配線25と、該ビア配線25の上面から順Z方向に延在し、第2磁性層12の内部を貫通し、端面が素体10の第1主面10aに露出する第1柱状配線31と、を含む。ビア配線25は、第1柱状配線31よりも線幅(径、断面積)が小さい導体である。
【0059】
第2垂直配線52は、導電性材料からなり、第1インダクタ配線21の上面からZ方向に延在し、絶縁層60および第2磁性層12の内部を貫通している。第2垂直配線52は、第1インダクタ配線21の外周端21bの上面に設けられ、絶縁層60の内部を貫通するビア配線25と、該ビア配線25の上面から順Z方向に延在し、絶縁層60の内部を貫通する第2接続配線82と、該第2接続配線82の上面に設けられ、絶縁層60の内部を貫通するビア配線25と、該ビア配線25の上面から順Z方向に延在し、第2磁性層12の内部を貫通し、端面が素体10の第1主面10aに露出する第2柱状配線32と、を含む。第1,第2垂直配線51,52は、第1インダクタ配線21と同様の材料からなることが好ましい。
【0060】
第1,第2外部端子41,42は、素体10の第1主面10aに設けられている。第1,第2外部端子41,42は、導電性材料からなり、例えば、低電気抵抗かつ耐応力性に優れたCu、耐食性に優れたNi、はんだ濡れ性と信頼性に優れたAuが内側から外側に向かってこの順に並ぶ3層構成である。Cu/Ni/Auの各層の厚みは、例えば、5/5/0.01μmである。
【0061】
第1外部端子41は、第1垂直配線51の素体10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第1垂直配線51と電気的に接続されている。これにより、第1外部端子41は、第2インダクタ配線22の外周端22bに電気的に接続される。第2外部端子42は、第2垂直配線52の素体10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第2垂直配線52と電気的に接続されている。これにより、第2外部端子42は、第1インダクタ配線21の外周端21bに電気的に接続される。
【0062】
絶縁層60は、磁性体を含まない絶縁性材料からなる。絶縁層60は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマーやこれらの組み合わせなどの有機樹脂や、ガラスやアルミナなどの焼結体、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などの薄膜などである。
【0063】
図3に示すように、第1インダクタ配線21の延在方向に直交する第1断面において、第1インダクタ配線21は、それぞれ、順Z方向を向く天面211と、逆Z方向を向く底面212と、順X方向を向く第1側面213と、逆X方向を向く第2側面214とを有する。第1断面において、第2インダクタ配線22は、それぞれ、順Z方向を向く天面221と、逆Z方向を向く底面222と、順X方向を向く第1側面223と、逆X方向を向く第2側面224とを有する。
【0064】
図3において、順Z方向は、特許請求の範囲に記載の「第1方向」に相当し、逆Z方向は、特許請求の範囲に記載の「第1方向と逆方向の第2方向」に相当し、順X方向は、特許請求の範囲に記載の「第1方向に直交する第3方向」に相当し、逆X方向は、特許請求の範囲に記載の「第3方向と逆方向の第4方向」に相当する。本実施形態では、第3方向はコイル15の径方向内側であり、第4方向はコイル15の径方向外側である。以下、第1~第4方向と記載することがある。
【0065】
本実施形態のようにインダクタ配線が1ターンを超える場合、第1断面において、各ターンに対応するインダクタ配線の部分が複数現れる場合がある。この場合、「天面」とは、複数の当該部分における各々の天面から構成される全ての天面を指す。「底面」とは、複数の当該部分における各々の底面から構成される全ての底面を指す。「第1側面」とは、複数の当該部分のうちの最も第3方向側に位置する当該部分における第3方向を向く側面を指す。「第2側面」とは、複数の当該部分のうちの最も第4方向側に位置する当該部分における第4方向を向く側面を指す。
【0066】
絶縁層60は、第1インダクタ配線21の天面211よりも第1方向に位置する第1天面部611と、底面212よりも第2方向に位置する底面部62と、第1側面213に接触する第1側面部63と、第2側面214に接触する第2側面部64と、第1天面部611から、第1側面部63よりも第3方向に突出する位置と、第2側面部64よりも第4方向に突出する位置と、の少なくとも一方向の位置に設けられた1番目の天面突出部65aと、底面部62から、第1側面部63よりも第3方向に突出する位置と、第2側面部64よりも第4方向に突出する位置と、の少なくとも一方向の位置に設けられた底面突出部66と、を有する。
【0067】
また、絶縁層60は、第2インダクタ配線22の天面221よりも第1方向に位置する第2天面部612と、第1側面223に接触する第1側面部63と、第2側面224に接触する第2側面部64と、第2天面部612から、第1側面部63よりも第3方向に突出する位置と、第2側面部64よりも第4方向に突出する位置と、の少なくとも一方向の位置に設けられた2番目の天面突出部65bと、を有する。なお、本実施形態のように複数のインダクタ配線が積層されている場合、天面突出部もZ方向に沿って複数存在する場合がある。この場合、上記のように、各天面突出部は、底面突出部を基準にして、順Z方向に向かうに従って順番に「1番目の天面突出部」、「2番目の天面突出部」・・・「P番目の天面突出部(P:2以上の自然数)」と呼ぶ。
【0068】
本実施形態では、1番目の天面突出部65a、2番目の天面突出部65bおよび底面突出部66の各々は、第1側面部63よりも第3方向に突出する位置に設けられている。1番目の天面突出部65a、2番目の天面突出部65bおよび底面突出部66の各々の突出方向は、第3方向と平行である。第1天面部611は、天面211、第1側面部63、第2側面部64に接触する。第2天面部612は、天面221、第1側面部63、第2側面部64に接触する。底面部62は、底面212、第1側面部63、第2側面部64に接触する。具体的に述べると、1番目の天面突出部65aは、第1天面部611の第3方向側の端面から、第3方向と平行な方向に突出している。2番目の天面突出部65bは、第2天面部612の第3方向側の端面から、第3方向と平行な方向に突出している。底面突出部66は、底面部62の第3方向側の端面から、第3方向と平行な方向に突出している。
【0069】
ここで、本実施形態のように複数のインダクタ配線が積層されている場合、底面部とは、第1層のインダクタ配線の底面よりも第2方向に位置する絶縁層の部分を指す。本明細書では、第2層以降のインダクタ配線の底面よりも第2方向に位置する絶縁層の部分は、底面部とは言わず、1層下に存在するインダクタ配線に対応する天面部とする。そのため、本実施形態では、第2インダクタ配線22の底面222よりも第2方向に位置する絶縁層60の部分は、第2インダクタ配線22に対応する底面部とは言わず、第1インダクタ配線21に対応する第1天面部611である。
【0070】
底面突出部66は、第1磁性層11と第2磁性層12の間に位置する。第1磁性層11と第2磁性層12とは、底面突出部66の先端で接触する。言い換えると、底面突出部66は、第1磁性層11と第2磁性層12の間に位置し、かつ、第2方向側の下面が、第1磁性層11における第2磁性層12との接触面に接触し、かつ、先端が第2磁性層12に接触する。第3方向に平行な方向の底面突出部66の突出長さL1は、第3方向に平行な方向の1番目の天面突出部65aの突出長さL2、および第3方向に平行な方向の2番目の天面突出部65bの突出長さL3よりも長い。突出長さL1は、好ましくは10μm以上100μm以下であり、一例として45μmである。突出長さL2およびL3は、好ましくは5μm以上40μm以下であり、一例として25μmである。
【0071】
インダクタ部品1によれば、底面突出部66が、第1磁性層11と第2磁性層12の間に位置し、かつ、第3方向に平行な方向の底面突出部66の突出長さL1が、第3方向に平行な方向の1番目の天面突出部65aの突出長さL2、および第3方向に平行な方向の2番目の天面突出部65bの突出長さL3よりも長い。このため、底面突出部66を介して、第1磁性層11と第2磁性層12との密着性を確保できる。また、1番目の天面突出部65aおよび2番目の天面突出部65bにより、絶縁層60と素体10との接触面積が増加し、さらに、1番目の天面突出部65aおよび2番目の天面突出部65bが素体10内に食い込むことにより、絶縁層60と素体10との密着性が向上する。以上により、絶縁層60と素体10との密着性を向上させることができる。
【0072】
さらに、インダクタ部品1によれば、第1磁性層11と第2磁性層12とが、底面突出部66の先端で接触している。これにより、底面突出部66がコイル15の中心に向かって延びて、コイル15の内磁路の全領域を覆っている場合と比較して、第2磁性層12の体積を増大させることができる。その結果、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。このように、インダクタ部品1によれば、絶縁層60と素体10との密着性を向上させることができると共に、インダクタ特性も向上させることができる。
【0073】
好ましくは、インダクタ配線は、第1方向に沿って複数層存在し、コイル15は、複数のインダクタ配線が直列に接続されて1ターン以上を構成し、第3方向は、コイル15の内面方向である。
【0074】
上記構成によれば、第1磁性層11と第2磁性層12との接触面積が比較的大きい内磁路内に底面突出部66が突出するため、絶縁層60と素体10との密着性を向上させることができる。
【0075】
好ましくは、天面突出部65および底面突出部66は、第1断面において3つ以上存在し、第1断面において、天面突出部65および底面突出部66のうちの少なくとも3つは、前記第3方向または前記第4方向に平行な方向の突出長さが互いに異なる。例えば、図2に示した第1断面では、天面突出部65および底面突出部66は、逆X方向側に位置する1番目の天面突出部65a、逆X方向側に位置する2番目の天面突出部65b、逆X方向側に位置する底面突出部66、順X方向側に位置する1番目の天面突出部65a、順X方向側に位置する2番目の天面突出部65bおよび順X方向側に位置する底面突出部66の6つが存在する。
【0076】
上記構成によれば、天面突出部65および底面突出部66のうちの一部の突出部の突出長さを長くすることで、絶縁層60と素体10との密着性をより向上させることができる。また、天面突出部65および底面突出部66のうちの一部の突出部の突出長さを短くすることで、磁路の磁気抵抗を小さくして、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。
【0077】
好ましくは、第1断面において、底面突出部66は、突出方向が第3方向または第4方向と平行である。
【0078】
上記構成によれば、製造時にコイル15の第1方向側から第2磁性層12を第2方向に充填する際、第1磁性層11側が安定した状態で充填されているため、より確実に磁路に磁性層を充填できる。そのため、インダクタンスを高めることができる。
【0079】
好ましくは、インダクタ配線は、第1方向に沿って複数層存在し、コイル15は、複数のインダクタ配線が直列に接続されて1ターン以上を構成し、第1断面において、全ての天面突出部65および底面突出部66は、コイル15の内磁路および外磁路の何れかに位置する。
【0080】
上記構成によれば、絶縁層60と素体10との密着性をより向上させることができる。
【0081】
好ましくは、図3に示すように、絶縁層60の底面部62の厚みt1は、第1天面部611の厚みt2および第2天面部612の厚みt3よりも薄い。
【0082】
上記構成によれば、インダクタンスを向上させることができる。なお、層間絶縁層は、下層のインダクタ配線の凹凸などの影響を受けるため、厚みを相対的に厚くする必要がある。一方、絶縁層60の最下層となる底面部62は、研磨などにより厚みを相対的に薄くすることが容易である。また、インダクタ部品1の製造時において、平坦なベース基板上に絶縁層60を形成すれば、絶縁層60の最下層となる底面部62の厚みを薄くすることはさらに容易となる。
【0083】
インダクタ配線は、第1方向に沿ってn(n:自然数、n≧2)層存在し、第1層のインダクタ配線を覆う絶縁層の材料は、第m(m:自然数、2≦m≦n)層のインダクタ配線を覆う絶縁層の材料と異なる。
【0084】
ここで、「第1層のインダクタ配線を覆う絶縁層」とは、第1層のインダクタ配線の天面側、第1側面側および第2側面側に位置する絶縁層のみならず、底面側に位置する絶縁層も含む。上記構成によれば、設計自由度を高くすることができる。例えば、第1層のインダクタ配線を覆う絶縁層の材料は、ベース基板との剥離や応力を重視して、選択されることが好ましい。一方、第m層のインダクタ配線を覆う絶縁層の材料は、レーザやフォトリソ解像性、段差への被覆性などで選択されることが好ましい。具体的に述べると、例えば、第1層のインダクタ配線の下部にある絶縁層(底面部)の材料は非感光性ポリイミドを使用し、第m層のインダクタ配線の絶縁層の材料は感光性ポリイミドを使用してもよい。このように樹脂種が同じであっても添加物や重合材が異なっていれば異なるとしている。また、第1層のインダクタ配線を覆う絶縁層の材料がポリイミドで、第m層のインダクタ配線の絶縁層の材料がレーザ加工性と絶縁性に優れたフィラー入りエポキシ樹脂との組み合わせであってもよい。
【0085】
第1実施形態では、インダクタ配線は2層であるが、3層以上であってもよい。3層以上あればインダクタ配線の巻数を増やすことができるので、インダクタンスを高くすることができる。
【0086】
ここで、例えばインダクタ配線を増やすとき、インダクタ配線は、1層、2層と順にm層(mは3以上の自然数)まで積層すればよい。このとき、第1方向(積層方向)は配線形状などによって決定できる。例えば、インダクタ配線はその製造プロセス上、底面は平面、天面は曲面となることが一般的である。そのため、インダクタ配線の曲面側に対して次の層が順に積層されるため、第1方向はインダクタ配線の平面側から曲面側に向かう方向と言える。例えば、インダクタ配線同士を接続するビア配線の径は、その製造プロセス上、天面側の径が底面側の径よりも大きい。そのため、ビア配線の径が大きい方へ積層されるため、第1方向はビア配線の径が小さい側の接続面から径が大きい側の接続面へ向かう方向と言える。例えば、インダクタ配線がシード層を用いて形成される場合は、第1方向はシード層が存在する側からシード層が存在しない側に向かう方向と言える。なお、上記の第1方向の決定方法は1層の場合でも適用することができる。
【0087】
第1実施形態では、図2に示したように、天面突出部65および底面突出部66がコイル15の内磁路内に突出していたが、コイル15の外磁路内にも突出していることが好ましい。具体的に述べると、第1断面を例えばコイル15の軸を含むYZ平面としたときに、絶縁層60は、第1断面において、第1天面部から、第2側面部よりも第4方向に突出する位置に設けられた1番目の天面突出部と、第2天面部から、第2側面部よりも第4方向に突出する位置に設けられた2番目の天面突出部と、底面部から、第2側面部よりも第4方向に突出する位置に設けられた底面突出部と、をさらに有することが好ましい。上記構成によれば、天面突出部65および底面突出部66が、外磁路内にも突出しているため、絶縁層60と素体10との密着性がさらに向上する。
【0088】
(製造方法)
次に、インダクタ部品1の製造方法について説明する。図4Aから図4Nは、図1のA-A断面(図2)に対応する。
【0089】
図4Aに示すように、ベース基板70を準備する。ベース基板70は、例えば、セラミックやガラス、シリコンなどの無機材料からなる。ベース基板70の主面上に銅箔80を設け、さらに、銅箔80上に第1絶縁層71を塗布して、第1絶縁層71を硬化する。
【0090】
図4Bに示すように、第1絶縁層71上に、スパッタ法もしくは蒸着法などの公知の方法により、図示しないシード層(Ti/Cu)を形成する。その後、DFR(ドライフィルムレジスト)75を貼付け、フォトリソグラフィ工法を用いてDFR75に所定パターンを形成する。
【0091】
図4Cに示すように、シード層に給電しつつ、電解めっき法を用いて第1絶縁層71上に第1インダクタ配線21と第1接続配線81と第1ダミー配線91とを形成する。その後、DFR75を剥離し、シード層をエッチングする。これにより、第1インダクタ配線21、第1接続配線81および第1ダミー配線91の間に隙間を設ける。
【0092】
図4Dに示すように、第1インダクタ配線21、第1接続配線81および第1ダミー配線91の上に第2絶縁層72を塗布して硬化する。このとき、第2絶縁層72は、上記隙間にも充填される。その後、第1ダミー配線91と、第1接続配線81の上面のうちのビア配線25が接続される部分と、第1インダクタ配線21の上面のうちのビア配線25が接続される部分と、が露出するように、第2絶縁層72をレーザ照射して開口部72aを形成する。このとき、第2絶縁層72の一部が第1ダミー配線91に重複するようにする。この第2絶縁層72の重複部分が、1番目の天面突出部に相当する。ここで、第1ダミー配線91上の第2絶縁層72の中央部は除去しなくてもよく、例えば、第1ダミー配線91の外周に沿ってレーザ照射して環状の開口部を形成してもよい。これによりレーザ照射の時間を短縮できる。なお、第1ダミー配線91上の第2絶縁層72の中央部は、第1ダミー配線91を除去する際にリフトオフされることで除去できる。
【0093】
図4Eに示すように、第2絶縁層72上に、スパッタ法もしくは蒸着法などの公知の方法により、図示しないシード層(Ti/Cu)を形成する。その後、DFR(ドライフィルムレジスト)75を貼付け、フォトリソグラフィ工法を用いてDFR75に所定パターンを形成する。シード層に給電しつつ、電解めっき法を用いて、開口部72a内および第2絶縁層72上にビア配線25と第2インダクタ配線22と第2接続配線82と第2ダミー配線92とを形成する。その後、DFR75を剥離し、シード層をエッチングする。これにより、第2インダクタ配線22、第2接続配線82および第2ダミー配線92の間に隙間を設ける。
【0094】
図4Fに示すように、第2インダクタ配線22、第2接続配線82および第2ダミー配線92の上に第3絶縁層73を塗布して硬化する。このとき、第3絶縁層73は、上記隙間にも充填される。その後、第2ダミー配線92と、第2接続配線82の上面のうちのビア配線25が接続される部分と、第2インダクタ配線22の上面のうちのビア配線25が接続される部分と、が露出するように、第3絶縁層73をレーザ照射して開口部73aを形成する。このとき、第3絶縁層73の一部が第2ダミー配線92に重複するようにする。この第3絶縁層73の重複部分が、2番目の天面突出部に相当する。その後、第3絶縁層73上にシード層を形成する。再度、DFRを貼付け、フォトリソグラフィ工法を用いてDFRに所定パターンを形成する。所定パターンは、第2インダクタ配線22および第2接続配線82上の第1柱状配線31および第2柱状配線32を設ける位置に対応した貫通孔である。電解めっきを用いて第2インダクタ配線22および第2接続配線82上に、ビア配線25、第1柱状配線31および第2柱状配線32を形成する。その後、DFRを剥離し、シード層をエッチングする。
【0095】
図4Gに示すように、第1柱状配線31および第2柱状配線32を保護するようにDFR75を設ける。
【0096】
図4Hに示すように、第1ダミー配線91および第2ダミー配線92をエッチングする。これにより、絶縁層60の1番目の天面突出部65a、2番目の天面突出部65bおよび第1側面部63を形成する。
【0097】
図4Iに示すように、DFR75を剥離し、第1絶縁層71の一部をレーザ照射して開口部71aを形成する。これにより、絶縁層60の底面突出部66を形成する。このとき、銅箔80をレーザのストップ層として用いている。なお、銅箔80を設けないで、ベース基板の一部分ごとにレーザで第1絶縁層71を開口してもよく、または、初めからレーザやフォトリソなどのパターン加工によって第1絶縁層71をパターニングしていてもよい。
【0098】
図4Jに示すように、第2磁性層12となる磁性シートを、ベース基板70の主面の上方から第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22に向けて圧着して、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22と第1柱状配線31および第2柱状配線32を第2磁性層12により覆う。その後、第2磁性層12の上面を研削し、第1柱状配線31および第2柱状配線32の端面を第2磁性層12の上面から露出させる。その後、第2磁性層12の上面に被覆膜50となる絶縁層を塗布する。そして、フォトリソグラフィ工法を用いて当該絶縁層を所定パターンに形成して硬化する。所定パターンは、被覆膜50が、第2磁性層12の上面のうち、第1,第2外部端子41,42が形成される領域を除いた領域を覆うことができるパターンである。
【0099】
図4Kに示すように、ベース基板70および銅箔80を研磨により除去する。このとき、第1絶縁層71の一部も除去してもよい。
【0100】
図4Lに示すように、第1インダクタ配線21の下方から第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22に向けて第1磁性層11となる他の磁性シートを圧着して、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22を第1磁性層11により覆う。その後、第1磁性層11を所定の厚みに研削する。
【0101】
図4Mに示すように、第1主面10aから露出する第1,第2柱状配線31,32の端面を覆うように、第1,第2外部端子41,42を無電解めっきにより形成する。第1,第2外部端子41,42は、例えば、第1主面10a側から順に積層されたCu/Ni/Auである。なお、第1,第2外部端子41,42を形成する前に、第1,第2外部端子41,42と、素体10の上面および第1,第2柱状配線31,32の端面と、が接触する部分に、図示しないPdなどの触媒を適用してもよい。
【0102】
図4Nに示すように、切断線Dにてインダクタ部品1を個片化する。以上のようにして、インダクタ部品1を製造する。
【0103】
以上、インダクタ部品の製造方法は、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22を形成する工程と、絶縁層60を形成する工程と、素体10を形成する工程とを備える。
【0104】
第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22を形成する工程では、延在方向に直交する第1断面において、天面と底面と第1側面と第2側面とを有する第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22を形成する。
【0105】
絶縁層60を形成する工程では、第1断面において、第1天面部611と第2天面部612と底面部62と第1側面部63と第2側面部64と1番目の天面突出部65aと2番目の天面突出部65bと底面突出部66とを有するように、絶縁層60を形成する。
【0106】
素体10を形成する工程では、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22を挟むように、第1磁性層11および第2磁性層12を第1方向に沿って積層して素体10を形成する。
【0107】
さらに、絶縁層60を形成する工程では、底面突出部66が、第1磁性層11と第2磁性層12の間に位置し、第1磁性層11と第2磁性層12とが、底面突出部66の先端で接触し、第3方向または第4方向に平行な方向の底面突出部66の突出長さが、第3方向または第4方向に平行な方向の1番目の天面突出部65aの突出長さ、および第3方向または第4方向に平行な方向の2番目の天面突出部65bの突出長さよりも長くなるようにする。
【0108】
上記構成によれば、絶縁層60と素体10との密着性を向上させることができると共に、インダクタ特性も向上させることができる。
【0109】
好ましくは、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22を形成する工程は、さらに、第1方向からみて、1番目の天面突出部65aと重複可能な位置に第1ダミー配線91を形成し、2番目の天面突出部65bと重複可能な位置に第2ダミー配線92を形成する。第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22を形成する工程の後に、さらに、第1ダミー配線91および第2ダミー配線92を除去する工程を備える。素体10を形成する工程は、さらに、第1ダミー配線91および第2ダミー配線92を除去した位置に第2磁性層12を充填する。なお、第2磁性層12でなく、第1磁性層11を充填してもよい。
【0110】
上記構成によれば、1番目の天面突出部65aおよび2番目の天面突出部65bに密着する磁性層を低コストで製造することができる。
【0111】
<第2実施形態>
図5は、インダクタ部品の第2実施形態を示す断面図である。図5は、図2に対応する断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、天面突出部の突出長さが相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0112】
図5に示すように、第1断面において、第1方向(順Z方向)に位置するインダクタ配線ほど、第3方向に平行な方向の天面突出部65Aの突出長さは短い。具体的に述べると、第2インダクタ配線22は、第1インダクタ配線21よりも第1方向側に位置する。そして、第2インダクタ配線22に対応する2番目の天面突出部65bAにおける第3方向に平行な方向の突出長さは、第1インダクタ配線21に対応する1番目の天面突出部65aAにおける第3方向に平行な方向の突出長さよりも短い。
【0113】
本実施形態によれば、天面突出部65Aの突出長さが、第1方向に位置するインダクタ配線ほど短いので、第1方向に向かうほどコイル15の磁路の面積が広がる。これにより、製造時にコイル15の第1方向側から第2磁性層12を第2方向に充填する際、コイル15への第2磁性層12の充填が容易となり、充填率が向上してインダクタンスを向上させることができる。
【0114】
<第3実施形態>
図6は、インダクタ部品の第2実施形態を示す断面図である。図6は、図2に対応する断面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、天面突出部の傾きが相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0115】
図6に示すように、第1断面において、天面突出部65Bは、第2方向(逆Z方向)に傾いている。具体的に述べると、1番目の天面突出部65aBおよび2番目の天面突出部65bBの各々は、第2方向に傾いている。1番目の天面突出部65aBは、第1インダクタ配線21の天面211よりも第2方向に位置している。2番目の天面突出部65bBは、第2インダクタ配線22の天面221よりも第2方向に位置している。なお、第1断面において、1番目の天面突出部65aBおよび2番目の天面突出部65bBの各々は、第1方向に傾いていてもよい。これにより、第1インダクタ配線21および第2インダクタ配線22の径方向外側への素体10からの抜けを抑制できる。
【0116】
本実施形態によれば、天面突出部65Bが第2方向に傾いているので、製造時にコイル15の第1方向側から第2磁性層12を第2方向に充填する際、コイル15への第2磁性層の充填が円滑となる。また、天面突出部65Bの第2方向への傾きにより、第2磁性層12の充填後、第2磁性層12の第1方向への抜けに対抗でき、絶縁層60Bと素体10との密着性をより向上できる。
【0117】
<第4実施形態>
図7は、インダクタ部品の第4実施形態を示す断面図である。図7は、図2に対応する断面図である。第4実施形態は、第3実施形態とは、底面突出部の傾きが相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第3実施形態と同じ構成であり、第3実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0118】
図7に示すように、第1断面において、底面突出部66Cは、第1方向(順Z方向)に傾いている。底面突出部66Cは、第1インダクタ配線21の底面212よりも第1方向に位置している。なお、第1実施形態と同様に、第3方向に平行な方向の底面突出部66Cの突出長さL1は、第3方向に平行な方向の1番目の天面突出部65aBの突出長さL2、および第3方向に平行な方向の2番目の天面突出部65bBの突出長さL3よりも長い。これにより、底面突出部66Cを介して、第1磁性層11と第2磁性層12との密着性を確保できる。
【0119】
本実施形態によれば、底面突出部66Cが第1方向に傾いているので、製造時にコイル15の第2方向側から第1磁性層11を第1方向に充填する際、コイル15への第1磁性層11の充填が円滑となる。また、底面突出部66Cの第1方向への傾きにより、第1磁性層11の充填後、第1磁性層11の第2方向への抜けに対抗でき、絶縁層60Cと素体10との密着性をより向上させることができる。
【0120】
<第5実施形態>
図8は、インダクタ部品の第5実施形態を示す断面図である。図8は、図2に対応する断面図である。第6実施形態は、第1実施形態とは、絶縁層および垂直配線の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0121】
図8に示すように、本実施形態に係るインダクタ部品1Dは、第1実施形態に係るインダクタ部品1から、第2天面部、第2インダクタ配線22の第1側面223に接触する第1側面部および2番目の天面突出部を主に除いた構成である。具体的に述べると、第2インダクタ配線22の天面221および第1側面223は、絶縁層60Dに覆われずに、第2磁性層12に接触している。言い換えると、絶縁層60Dは、第2インダクタ配線22の天面221および第1側面223と、第2接続配線82の上面の一部に設けられていない。さらに、第2接続配線82の上面のうち、第2垂直配線52Dが設けられる領域を除いた領域は、絶縁層60Dに覆われずに、第2磁性層12に接触している。言い換えると、絶縁層60Dは、第2接続配線82の上面のうち、第2垂直配線52Dが設けられる領域を除いた領域に設けられていない。第1垂直配線51Dは、第1柱状配線31のみから構成されている。第1柱状配線31は、第2インダクタ配線22の上面に直接接続している。第2垂直配線52Dは、第2柱状配線32と第2接続配線82とビア配線25とから構成されている。第2柱状配線32は、第2接続配線82の上面に直接接続している。
【0122】
本実施形態によれば、第2インダクタ配線22の天面221および第1側面223に絶縁層を設ける必要がないため、製造工程を簡略化できる。また、天面221および第1側面223に絶縁層を設ける場合と比較して、磁性層の体積を増大させることができるため、L値を向上させることができる。
【0123】
<第6実施形態>
図9は、インダクタ部品の第6実施形態を示す平面図である。図10は、図9のA-A断面図である。第6実施形態は、第1実施形態とは、主に、コイルおよび絶縁層の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0124】
図9図10に示すように、インダクタ部品1Eは、素体10と、素体10内に配置されたコイル15Eと、コイル15Eの少なくとも一部を覆う非磁性体の絶縁層60Eと、素体10の第1主面10aから端面が露出するように素体10内に設けられた第1垂直配線51、第2垂直配線52および第3垂直配線53と、素体10の第1主面10aにおいて露出する第1外部端子41、第2外部端子42および第3外部端子43とを備える。図1では、便宜上、第1から第3外部端子41~43を二点鎖線で示す。
【0125】
コイル15Eは、第1インダクタ配線21Eと第2インダクタ配線22Eとを有する。第1インダクタ配線21Eおよび第2インダクタ配線22Eは、第1磁性層11と第2磁性層12の間で順Z方向に直交する平面に沿って延在する。具体的に述べると、第1磁性層11は、第1インダクタ配線21Eおよび第2インダクタ配線22Eの逆Z方向に存在し、第2磁性層12は、第1インダクタ配線21Eおよび第2インダクタ配線22Eの順Z方向および順Z方向に直交する方向に存在する。
【0126】
第1インダクタ配線21Eは、Z方向から見たときに、X方向に沿って直線状に延在している。第2インダクタ配線22Eは、Z方向から見たときに、一部分がX方向に沿って直線状に延在し、その他の部分がY方向に沿って直線状に延在し、つまり、L字状に延在している。
【0127】
第1インダクタ配線21Eの第1端部21aは、第1垂直配線51に電気的に接続され、第1インダクタ配線21Eの第2端部21bは、第2垂直配線52に電気的に接続される。つまり、第1インダクタ配線21Eは、第1、第2端部21a,21bに線幅の大きいパッド部を有し、パッド部において、第1、第2垂直配線51,52と直接接続されている。
【0128】
第2インダクタ配線22Eの第1端部22aは、第3垂直配線53に電気的に接続され、第2インダクタ配線22Eの第2端部22bは、第2垂直配線52に電気的に接続される。つまり、第2インダクタ配線22Eは、第1端部22aにパッド部を有し、パッド部において、第3垂直配線53と直接接続されている。第2インダクタ配線22Eの第2端部22bは、第1インダクタ配線21Eの第2端部21bと共通である。
【0129】
第1インダクタ配線21Eの第1端部21aと第2インダクタ配線22Eの第1端部22aとは、Z方向から見たときに、素体10の第1側面10c側に位置する。第1インダクタ配線21Eの第2端部21bと第2インダクタ配線22Eの第2端部22bとは、Z方向から見たときに、素体10の第2側面10d側に位置する。
【0130】
第1から第3垂直配線51~53は、各インダクタ配線21E,22EからZ方向に延在し、第2磁性層12の内部を貫通している。第1垂直配線51は、第1インダクタ配線21Eの第1端部21aの上面から素体10の第1主面10aまで延在し、第1垂直配線51の端面は、素体10の第1主面10aから露出する。第2垂直配線52は、第1インダクタ配線21Aの第2端部21bの上面から素体10の第1主面10aまで延在し、第2垂直配線52の端面は、素体10の第1主面10aから露出する。第3垂直配線53は、第2インダクタ配線22Eの第1端部22aの上面から素体10の第1主面10aまで延在し、第3垂直配線53の端面は、素体10の第1主面10aから露出する。
【0131】
したがって、第1垂直配線51、第2垂直配線52、第3垂直配線53は、第1インダクタ配線21E、第2インダクタ配線22Eから上記第1主面10aから露出する端面まで、第1主面10aに直交する方向に直線状に伸びる。これにより、第1外部端子41、第2外部端子42、第3外部端子43と、第1インダクタ配線21E、第2インダクタ配線22Eとをより短い距離で接続することができ、インダクタ部品1Eの低抵抗化や高インダクタンス化を実現できる。
【0132】
第1垂直配線51は、絶縁層60の内部を貫通する図示しないビア配線と、該ビア配線から上側に延在し、第2磁性層12の内部を貫通する第1柱状配線31とを有する。第2垂直配線52は、絶縁層60の内部を貫通する図示しないビア配線と、該ビア配線から上側に延在し、第2磁性層12の内部を貫通する第2柱状配線32とを有する。第3垂直配線53は、絶縁層60の内部を貫通する図示しないビア配線と、該ビア配線から上側に延在し、第2磁性層12の内部を貫通する第3柱状配線33とを有する。
【0133】
第1から第3外部端子41~43は、素体10の第1主面10aに設けられている。第1外部端子41は、第1垂直配線51の素体10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第1垂直配線51と電気的に接続されている。これにより、第1外部端子41は、第1インダクタ配線21Eの第1端部21aに電気的に接続される。第2外部端子42は、第2垂直配線52の素体10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第2垂直配線52と電気的に接続されている。これにより、第2外部端子42は、第1インダクタ配線21Eの第2端部21bおよび第2インダクタ配線22Eの第2端部22bに電気的に接続される。第3外部端子43は、第3垂直配線53の端面に接触し、第3垂直配線53と電気的に接続されて、第2インダクタ配線22Eの第1端部22aに電気的に接続される。
【0134】
図10に示すように、第1インダクタ配線21Eおよび第2インダクタ配線22Eの延在方向に直交する第1断面において、第1インダクタ配線21Eおよび第2インダクタ配線22Eは、それぞれ、順Z方向を向く天面211と、逆Z方向を向く底面212と、逆Y方向を向く第1側面213と、順Y方向を向く第2側面214とを有する。
【0135】
図10において、順Z方向は、特許請求の範囲に記載の「第1方向」に相当し、逆Z方向は、特許請求の範囲に記載の「第1方向と逆方向の第2方向」に相当し、逆Y方向は、特許請求の範囲に記載の「第1方向に直交する第3方向」に相当し、順Y方向は、特許請求の範囲に記載の「第3方向と逆方向の第4方向」に相当する。以下、第1~第4方向と記載することがある。
【0136】
絶縁層60Eは、天面211よりも第1方向に位置する天面部61と、底面212よりも第2方向に位置する底面部62と、第1側面213に接触する第1側面部63と、第2側面214に接触する第2側面部64と、天面部61から、第1側面部63よりも第3方向に突出する位置に設けられた第1天面突出部651と、天面部61から、第2側面部64よりも第4方向に突出する位置に設けられた第2天面突出部652と、底面部62から、第1側面部63よりも第3方向に突出する位置に設けられた第1底面突出部661と、底面部62から、第2側面部64よりも第4方向に突出する位置に設けられた第2底面突出部662と、を有する。天面部61は、天面211、第1側面部63、第2側面部64に接触し、底面部62は、底面212、第1側面部63、第2側面部64に接触する。
【0137】
第1底面突出部661および第2底面突出部662は、第1磁性層11と第2磁性層12の間に位置する。第1磁性層11と第2磁性層12とは、第1底面突出部661の先端および第2底面突出部662の先端で接触する。言い換えると、第1底面突出部661および第2底面突出部662の各々は、第1磁性層11と第2磁性層12の間に位置し、かつ、第2方向側の下面が、第1磁性層11における第2磁性層12との接触面に接触し、かつ、先端が第2磁性層12に接触する。第3方向に平行な方向の第1底面突出部661の突出長さは、第1天面突出部651の第3方向に平行な方向の突出長さ、および第2天面突出部652の第4方向に平行な方向の突出長さよりも長い。第3方向に平行な方向の第2底面突出部662の突出長さは、第1天面突出部651の第3方向に平行な方向の突出長さ、および第2天面突出部652の第4方向に平行な方向の突出長さよりも長い。
【0138】
本実施形態によれば、相対的に突出長さが長い第1底面突出部661および第2底面突出部662により、第1磁性層11と第2磁性層12との密着性を確保できる。また、第1天面突出部651および第2天面突出部652により、絶縁層60Eと素体10との接触面積が増加し、さらに、第1天面突出部651および第2天面突出部652が素体10内に食い込むことにより、絶縁層60Eと素体10との密着性が向上する。以上により、絶縁層60Eと素体10との密着性を向上させることができる。さらに、本実施形態によれば、第1磁性層11と第2磁性層12とが、第1底面突出部661の先端および第2底面突出部662の先端で接触している。これにより、第1底面突出部661の先端と第2底面突出部662の先端とが接触して、第1底面突出部661と第2底面突出部662とが繋がっている場合と比較して、第2磁性層12の体積を増大させることができる。その結果、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。このように、インダクタ部品1Eによれば、絶縁層60Eと素体10との密着性を向上させることができると共に、インダクタ特性も向上させることができる。
【0139】
また、第1,第2天面突出部651,652および第1,第2底面突出部661,662を有するので、絶縁層60Eと素体10との接触面積をより効果的に増加でき、また、第1,第2天面突出部651,652および第1,第2底面突出部661,662を素体10内により食い込ませることができる。これにより、絶縁層60Eと素体10との密着性をより向上させることができる。
【0140】
好ましくは、第1断面において、第1天面突出部651の第3方向に平行な方向の突出長さは、第2天面突出部652の第4方向に平行な方向の突出長さと異なる。
【0141】
上構成によれば、第1天面突出部651および第2天面突出部652の一方の長さを長くすることで、絶縁層60Eと素体10との密着性をより向上させることができる。また、第1天面突出部651および第2天面突出部652の他方の長さを短くすることで、磁路の磁気抵抗を小さくして、インダクタンスの取得効率を向上させることができる。
【0142】
好ましくは、第1断面において、第1底面突出部661の第3方向に平行な方向の突出長さは、第2天面突出部652の第4方向に平行な方向の突出長さと異なる。
【0143】
上構成によれば、第1底面突出部661および第2底面突出部662の一方の長さを長くすることで、絶縁層60Eと素体10との密着性をより向上させることができる。また、第1底面突出部661および第2底面突出部662の他方の長さを短くすることで、磁路の磁気抵抗を小さくして、インダクタンスの取得効率を向上することができる。
【0144】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第6実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0145】
前記実施形態では、「インダクタ配線」とは、電流が流れた場合に磁性層に磁束を発生させることによって、インダクタ部品にインダクタンスを付与させるものであって、その構造、形状、材料などに特に限定はない。特に、実施形態のような平面上を延びる直線や曲線(スパイラル=二次元曲線)に限られず、ミアンダ配線などの公知の様々な配線形状を用いることができる。
【0146】
第1から第5実施形態では、インダクタ配線は2層であったが、1層であってもよい。第6実施形態では、インダクタ配線は1層であったが、2層以上であってもよい。1層であればインダクタ部品の厚みを薄くできる。2層以上あればインダクタ配線の巻数を増やすことができるので、インダクタンスを高くすることができる。
【0147】
第1から第5実施形態では、天面突出部および底面突出部の各々は、第1側面部よりも第3方向に突出する位置に設けられていたが、第1側面部よりも第3方向に突出する位置と、第2側面部よりも第4方向に突出する位置と、の少なくとも一方向の位置に設けられていればよい。言い換えると、第1実施形態では、天面突出部および底面突出部の各々は、コイルの内磁路内に突出するように設けられていたが、コイルの内磁路内および外磁路内の何れか一方に突出するように設けられていればよい。
【0148】
第6実施形態では、天面突出部および底面突出部の各々は、第1側面部よりも第3方向に突出する位置と、第2側面部よりも第4方向に突出する位置と、の両方の位置に設けられていたが、第1側面部よりも第3方向に突出する位置と、第2側面部よりも第4方向に突出する位置と、の少なくとも一方向の位置に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0149】
1、1A、1B、1C、1D、1E インダクタ部品
10 素体
10a 第1主面
10b 第2主面
11 第1磁性層
12 第2磁性層
15、15E コイル
21、21E 第1インダクタ配線
211 天面
212 底面
213 第1側面
214 第2側面
22、22E 第2インダクタ配線
221 天面
222 底面
223 第1側面
224 第2側面
25 ビア配線
31、32、33 第1、第2、第3柱状配線
41、42、43 第1、第2、第3外部端子
50 被覆膜
51、52、53 第1、第2、第3垂直配線
60、60A、60B、60C、60D、60E 絶縁層
61 天面部
611、612 第1、第2天面部
62 底面部
63、64 第1、第2側面部
65 天面突出部
65a、65aA、65aB 1番目の天面突出部
65b、65bA、65bB 2番目の天面突出部
651、652 第1、第2天面突出部
66、66C 底面突出部
661、662 第1、第2底面突出部
81、82 第1、第2接続配線
91、92 第1、第2ダミー配線
L1、L2、L3 突出部の長さ
t1、t2、t3 絶縁層の厚み
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図4L
図4M
図4N
図5
図6
図7
図8
図9
図10