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  • 特許-台車用分離式乗せ台 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】台車用分離式乗せ台
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/38 20060101AFI20240903BHJP
   F16B 2/10 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B65D85/38
F16B2/10 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021205239
(22)【出願日】2021-12-17
(65)【公開番号】P2023090321
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 直
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086133(JP,A)
【文献】特開平05-170102(JP,A)
【文献】特開平10-184922(JP,A)
【文献】実公昭46-021305(JP,Y1)
【文献】特開2021-060332(JP,A)
【文献】特開2010-122035(JP,A)
【文献】特開2008-281176(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108584152(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/38
F16B 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗せ台本体と、
前記乗せ台本体に防振部材を介して設置されたトレイと、
前記乗せ台本体の側面部に取り付けられ、前記乗せ台本体を台車の荷台に置いた状態で、前記乗せ台本体との間に前記台車の荷台を挟んで固定でき、かつ固定された状態を解除できる開閉式固定具と、を備え、
前記開閉式固定具は、
前記乗せ台本体の側面部に取り付けられた第1羽根部と、前記第1羽根部とバネを介して回転可能に連結する第2羽根部とを有し、前記バネの復元力により前記第2羽根部を前記乗せ台本体の下面に向かって回動させて自閉するバネ付きヒンジと、
前記バネ付きヒンジを開いて前記バネを変形させた状態で前記第2羽根部の位置を固定可能な締結具と、を有し、
前記バネ付きヒンジは、前記締結具による固定が解除された状態で前記バネの復元力により前記第2羽根部で前記台車の荷台を押し上げて、前記第2羽根部と前記乗せ台本体との間に前記台車の荷台を挟んで固定すること、
を特徴とする台車用分離式乗せ台。
【請求項2】
前記第1羽根部を前記乗せ台本体に取り付ける位置は上下方向に変更可能であること、
を特徴とする請求項に記載の台車用分離式乗せ台。
【請求項3】
前記第2羽根部は、前記台車の荷台と接触する部分に滑り止め用の弾性部材を有すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の台車用分離式乗せ台。
【請求項4】
前記トレイに取り付けられ、振動を計測し記録する加速度記録装置を備えること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の台車用分離式乗せ台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車用分離式乗せ台に係り、特に精密機器の運搬に適した台車用分離式乗せ台に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な台車で精密機器を運搬する場合、精密機器の内部に損傷を与える可能性がある。そのため、従来は緩衝材等を使用し防振対策を施した精密機器運搬台車を別途準備して用いていた。
【0003】
例えば特許文献1には、緩衝装置付輸送台車が開示されている。この緩衝装置付輸送台車は、電子部品や精密機器部品など振動を嫌う製品を搬送する場合に、振動による損傷を防止することができる。
尚、出願人は、本発明に関連するものとして、上記の文献を含めて、以下に記載する文献を認識している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-30858号公報
【文献】特開平5-170102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、精密機器を運搬するために、一般的な台車とは別に精密機器運搬用の専用台車を準備するのはコスト面で不利である。
【0006】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、一般的な台車との着脱が容易であり、一般的な台車と組み合わせて使用することで精密機器を安全に運搬可能な台車用分離式乗せ台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点は、台車用分離式乗せ台に関連する。
前記台車用分離式乗せ台は、乗せ台本体と、前記乗せ台本体に防振部材を介して設置されたトレイと、前記乗せ台本体の側面部に取り付けられた開閉式固定具と、を備える。
前記開閉式固定具は、前記乗せ台本体を台車の荷台に置いた状態で、前記開閉式固定具と前記乗せ台本体との間に前記台車の荷台を挟んで固定でき、かつ固定された状態を解除できる。
【0008】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記開閉式固定具は、バネ付きヒンジと締結具とを有する。
前記バネ付きヒンジは前記乗せ台本体の側面部に取り付けられた第1羽根部と、前記第1羽根部とバネを介して回転可能に連結する第2羽根部とを有する。前記バネ付きヒンジは、前記バネの復元力により前記第2羽根部を前記乗せ台本体の下面に向かって回動させて自閉する。
前記締結具は、前記バネ付きヒンジを開いて前記バネを変形させた状態で前記第2羽根部の位置を固定可能である。
前記バネ付きヒンジは、前記締結具による固定が解除された状態で前記バネの復元力により前記第2羽根部で前記台車の荷台を押し上げて、前記第2羽根部と前記乗せ台本体との間に前記台車の荷台を挟んで固定する。
【0009】
第3の観点は、第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記第1羽根部を前記乗せ台本体に取り付ける位置は上下方向に変更可能である。
【0010】
第4の観点は、第2又は第3の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記第2羽根部は、前記台車の荷台と接触する部分に滑り止め用の弾性部材を有する。
【0011】
第5の観点は、第1乃至第4の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記台車用分離式乗せ台は、前記トレイに取り付けられ、振動を計測し記録する加速度記録装置を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る台車用分離式乗せ台は、防振機構と脱着機構を備え、一般的な台車との着脱(接続と分離)が容易であり、一般的な台車と組み合わせて使用することで精密機器を安全に運搬することができる。精密機器以外の運搬に使用される一般的な台車を流用できるため、精密機器運搬用の専用台車を準備する必要がなく、コストメリットがある。また、台車用分離式乗せ台は、防振機構を有しているため、精密機器を積んだ乗せ台を台車から分離させて、乗せ台ごとトラックの荷台に搭載して輸送可能である。そのため精密機器の載せ替えが不要である。また、乗せ台を台車から分離させた後、精密機器を乗せ台に積んだまま精密機器を使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る台車用分離式乗せ台を、台車に取り付けた状態を説明するための斜視図である。
図2】実施の形態に係る台車用分離式乗せ台について説明するための斜視図である。
図3】実施の形態に係る台車用分離式乗せ台の開閉式固定具について説明するための拡大図である。
図4】実施の形態に係る台車用分離式乗せ台の開閉式固定具の動作について説明するための拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0015】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る台車用分離式乗せ台を、台車に取り付けた状態を説明するための斜視図である。
台車1は、荷台10、複数のキャスター11、ハンドル12を備える。荷台10は、例えば矩形の板状部材である。複数のキャスター11は、荷台10の下に取り付けられている。ハンドル12は、折りたたみ可能に荷台10の後端部に取り付けられている。
【0016】
1.台車用分離式乗せ台
図1および図2を参照して台車用分離式乗せ台20について説明する。
台車用分離式乗せ台20は、乗せ台本体21、防振部材22、トレイ23、開閉式固定具30を備える。台車用分離式乗せ台20は、開閉式固定具30を用いて荷台10と着脱自在である。
【0017】
乗せ台本体21は、幅が荷台10の幅と略同じであり、長さが荷台10よりも短い矩形の板状部材である。好ましくは、乗せ台本体21の下面には、滑り止めとして機能するゴムなどの摩擦係数の高い弾性部材24が貼り付けられている。また、弾性部材の為、荷台10の凹凸の影響を軽減可能である。
【0018】
防振部材22は、防振ゴムや免振ゴムなど振動を抑制可能な弾性体あるいはバネとダンパー等の組み合わせによる防振機構あるいは免振機構である。防振部材22は、乗せ台本体21の上面に設けられている。
【0019】
トレイ23は、乗せ台本体21に防振部材22を介して設置される。トレイ23には精密機器を積載可能である。精密機器は、例えば計測器(オシロスコープ、メモリレコーダ、アナログメータなど)を含む。なお、トレイ23に、トレイ23の加速度を時刻とともに計測し記録する加速度記録装置(図示省略)を取り付けてもよい。トレイ23に加速度記録装置を取り付けることにより、トレイ23の積載物が破損した場合に、どの様な時点で破損したかを調査する一助とすることが出来、再発防止に役立つ。更に、後述の様に乗せ台本体21を分離して使用する場合でもトレーサビリティが有効になる。
【0020】
開閉式固定具30は、乗せ台本体21の側面部に取り付けられている。開閉式固定具30は、乗せ台本体21を台車1の荷台10に置いた状態で、開閉式固定具30と乗せ台本体21との間に台車1の荷台10を挟んで固定でき、かつ固定された状態を解除できる。すなわち、開閉式固定具30は、乗せ台本体21を荷台10と接続する機能と、乗せ台本体21を荷台10から分離する機能を担う。
【0021】
2.開閉式固定具の構造
図3を参照して乗せ台本体21の側面部に取り付けられた開閉式固定具30の構造について説明する。図3の(a)は、乗せ台本体21の開閉式固定具30付近の正面図である。図3の(b)は、乗せ台本体21の開閉式固定具30付近の側面図である。
【0022】
開閉式固定具30は、バネ付きヒンジ31、ねじ等の締結具32を備える。本明細書においてバネ付きヒンジ31は、第1羽根部41と第2羽根部42とバネ43とを含む。
【0023】
バネ43は、例えば、ねじりコイルばね(トーションばね)や板ばねである。バネ43は、その復元力により第2羽根部42を乗せ台本体21の下面に接する位置まで閉じさせるように構成されている。すなわち、バネ付きヒンジ31は、バネ43の復元力により第2羽根部42を乗せ台本体21の下面(第1羽根部41)に向かって回動させて自閉する。
【0024】
第1羽根部41は、乗せ台本体21の側面部に取り付けられている。第1羽根部41は、第1羽根41aと第1板材41bとを備える。第1板材41bの上部は、ねじ等の締結具44により乗せ台本体21の側面部に締結されている。図3の(b)に示すように、第1羽根部41の第1板材41bには上下に伸びた長孔45が形成されており、第1羽根部41を乗せ台本体21に取り付ける位置は上下方向に変更可能である。これによれば、台車1の荷台10の厚さの違いに対応することができる。また、第1板材41bの長孔45は2つ平行に形成されているので、締結具44により2か所で締結することにより、第1板材41bが台本体21に対し、回転や、緩みの助長を低減できる。
【0025】
第2羽根部42は、第1羽根部41とバネ43を介して回転可能に連結している。第2羽根部42は、第2羽根42aと第2板材42bとを備える。第2羽根42aはバネ43を介して第1羽根41aと連結している。好ましくは、第2板材42bは、台車1の荷台10と接触する部分に滑り止めとして機能するゴムなどの摩擦係数の高い弾性部材47を有する。また、弾性部材の為、荷台10の凹凸の影響を軽減可能である。
【0026】
締結具32は、バネ付きヒンジ31を開いてバネ43を変形させた状態で第2羽根部42の位置を固定可能である。板材46は、図3の(a)に示すように、第1板材41bの側面に固定され、鉛直下方向に第2板材42bの側面まで延びた部材である。締結具32は、第1羽根部41と第2羽根部42が縦一列に並んだ状態において板材46と第2板材42bとを締結することにより第2羽根部42を固定できる。
【0027】
3.開閉式固定具の動作
次に、図4を参照して乗せ台本体21の側面部に取り付けられた開閉式固定具30の動作について説明する。図4において、乗せ台本体21は台車1の荷台10に置かれている。図4の(a)は、台車1の荷台10と乗せ台本体21とが分離可能な状態を示す図である。図4の(b)は、開閉式固定具30により乗せ台本体21が台車1の荷台10に固定された状態を示す図である。
【0028】
図4の(a)には、第1羽根部41と第2羽根部42が縦一列に並ぶようにバネ付きヒンジ31が開かれた状態が示されている。図4の(a)において、締結具32による固定が解除されると、図4の(b)に示すように、第2羽根部42は、バネ43の復元力により乗せ台本体21の下面(第1羽根部41)に向かって回動する。そして、バネ付きヒンジ31は、バネ43の復元力により第2羽根部42で台車1の荷台10の下面を押し上げる。これにより、バネ付きヒンジ31は、第2羽根部42と乗せ台本体21との間に台車1の荷台10を挟んで固定する。このとき、荷台10の下面に押し当てられた第2羽根部42の弾性部材47は滑り止めとして機能する。このように台車1の荷台10に乗せ台本体21が固定された状態において、精密機器をトレイ23に乗せて安全に運搬することができる。
【0029】
また、第2羽根部42を図4の(b)の状態から手動で図4の(a)の状態まで回動させた位置において、第2羽根部42を締結具44で固定することができる。これにより、乗せ台本体21を台車1の荷台10から分離させることができる。なお、精密機器をトレイ23に乗せたまま分離可能である。
【0030】
図1および図2では開閉式固定具30を乗せ台本体21の左右の側面に各々2個ずつとしているが、開閉式固定具30の固定力が十分である場合は、台本体21の左右の側面に各々1個ずつとしてもよい。あるいは、開閉式固定具30を乗せ台本体21の左右の側面に各々1個ずつとし、さらに開閉式固定具30を乗せ台本体21の正面側に1個配置し、合計3個としてもよい。開閉式固定具30を正面と側面の合計3個とすることにより、荷台10にゆがみがあっても、がたつきを抑制することができる。さらにトレイ23にはトレイ23に積載する精密機械を固定するための図示されないベルト等を備えるか、任意のベルトを容易に取り付けするための図示されないベルト取り付け具(例えば貫通孔)を設けてもよい。
【0031】
4.効果
以上説明したように、本実施の形態に係る台車用分離式乗せ台20は、防振機構と脱着機構を備え、一般的な台車1との着脱(接続と分離)が容易であり、一般的な台車1と組み合わせて使用することで精密機器を安全に運搬することができる。精密機器以外の運搬に使用される一般的な台車1を流用できるため、精密機器運搬用の専用台車を準備する必要がなく、コストメリットがある。また、台車用分離式乗せ台20は、防振機構を有しているため、精密機器を積んだ乗せ台を台車1から分離させて、乗せ台ごとトラックの荷台に搭載して輸送可能である。そのため精密機器の載せ替えが不要である。また、乗せ台を台車から分離させた後、精密機器を乗せ台に積んだまま精密機器を使用可能である。また、分離して使用し、輸送車両に精密機械をトレイ23に搭載したまま運搬することができるので、精密機器の運搬にエアサスペンション車等の防振機能のある車両を使用せず、一般車両で輸送可能となり、運搬コストの低減に貢献することが出来る。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、上述した実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0033】
1 台車
10 荷台
11 キャスター
12 ハンドル
20 台車用分離式乗せ台
21 乗せ台本体
22 防振部材
23 トレイ
24,47 弾性部材
30 開閉式固定具
31 バネ付きヒンジ
32,44 締結具
41 第1羽根部
41a 第1羽根
41b 第1板材
42 第2羽根部
42a 第2羽根
42b 第2板材
43 バネ
45 長孔
46 板材
図1
図2
図3
図4