(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】透明電極及びそれを具備した電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20240903BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01B5/14 A
B32B15/04 Z
(21)【出願番号】P 2021516006
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2020016330
(87)【国際公開番号】W WO2020218067
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019084978
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 隼
(72)【発明者】
【氏名】大津 信也
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/151141(WO,A1)
【文献】特開2014-032792(JP,A)
【文献】国際公開第2006/104118(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
B32B 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、
前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、
前記金属ナノワイヤー層に隣接して、下記一般式(1)で表される構造
と、下記一般式(2)で表される構造とを有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする透明電極。
【化1】
(一般式(1)中、A1及びA2は、窒素原子とともに6員の含窒素芳香族複素環を形成する残基を表し、当該6員の含窒素芳香族複素環は縮環を形成してもよい。Lは、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。n1は、1~4の整数を表す。なお、前記一般式(1)における連結基Lとの連結位置は、Ra、Rb及びRcで表される置換基における置換可能な位置、又は、キナゾリン環において置換基としてRa、Rb及びRcが存在する位置以外の置換可能な位置である。)
【請求項2】
透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、
前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、
前記金属ナノワイヤー層に隣接して、下記一般式(1)で表される構造
と、下記一般式(3)で表される構造とを有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする透明電極。
【化3】
(一般式(1)中、A1及びA2は、窒素原子とともに6員の含窒素芳香族複素環を形成する残基を表し、当該6員の含窒素芳香族複素環は縮環を形成してもよい。Lは、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。)
【化4】
(一般式(3)中、Re、Rd及びRfは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。n2は、1~4の整数を表す。なお、前記一般式(1)における連結基Lとの連結位置は、Re、Rd及びRfで表される置換基における置換可能な位置、又は、キノキサリン環において置換基としてRe、Rd及びRfが存在する位置以外の置換可能な位置である。)
【請求項3】
透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、
前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、
前記金属ナノワイヤー層に隣接して、下記一般式(
4)で表される構造を有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする透明電極。
【化5】
(一般式(4)中、Rg、Rh、Ri及びRjは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Rg、Rh、Ri及びRjのうち少なくとも一つが、6員の芳香族複素環を表し、この6員の芳香族複素環は縮環を形成してもよい。L
2
は、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。)
【請求項4】
透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、
前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、
前記金属ナノワイヤー層に隣接して、下記一般式(1)で表される構造
と、下記一般式(5)で表される構造とを有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする透明電極。
【化6】
(一般式(1)中、A1及びA2は、窒素原子とともに6員の含窒素芳香族複素環を形成する残基を表し、当該6員の含窒素芳香族複素環は縮環を形成してもよい。Lは、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。)
【化7】
(一般式(5)中、Arは、ベンゼン、カルバゾール、ジベンゾフラン、アザジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾチオフェン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン又はフルオレンの残基を表す。Rkは、水素原子又は置換基を表す。Rkのうち少なくとも二つが、6員の芳香族複素環を表し、この6員の芳香族複素環は縮環を形成してもよい。n3は2以上を表す。)
【請求項5】
透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、
前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、
前記金属ナノワイヤー層に隣接して、下記
構造式
(6)-48で表される構造を有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする透明電極。
【化8】
【請求項6】
前記金属ナノワイヤー層が、銀ナノワイヤーを含有することを特徴とする請求項1
から請求項5までのいずれか一項に記載の透明電極。
【請求項7】
前記金属ナノワイヤー層のワイヤー長さが、1
.0μm以上であることを特徴とする請求項1
から請求項
6までのいずれか一項に記載の透明電極。
【請求項8】
前記金属ナノワイヤー層のワイヤー径が、100nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項
7までのいずれか一項に記載の透明電極。
【請求項9】
前記金属ナノワイヤー層のワイヤーのアスペクト比が、100以上であることを特徴とする請求項1から請求項
8までのいずれか一項に記載の透明電極。
【請求項10】
請求項1から請求項
9までのいずれか一項に記載の透明電極を具備することを特徴とする電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極に関する。より詳しくは、低抵抗性と高光透過性が両立し、保存安定性に優れた透明電極及びそれを具備した電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットの普及により、タッチパネルによる操作を必要とする情報端末が増えてきている。さらに、前記の情報端末は薄さや軽さ、可撓性といった付加価値が求められており、従来の金属酸化物で形成された電極やタッチパネルではクラックや割れといった懸念がある。
【0003】
前記の問題を解決する手段の一つとして、銀などの金属ナノワイヤーを用いた電極が提案されている。しかしながら、金属ナノワイヤーは水分、イオン元、又は電界によって凝集(マイグレーション)を引き起こすため、高精細な配線パターンを形成することが難しいという問題があった。銀ナノワイヤーで形成した、隣接した電極が繋がって短絡する、又は片方のナノワイヤーが溶出して断線する、さらに、凝集体の形成による散乱成分に由来する薄膜の濁りが発生し、透明電極としての特性を保持することが難しい。
【0004】
特許文献1には、透過率向上のために反射防止層や防眩層を有する電極が開示されている。これは、光学調整により高光透過率を実現する技術であって、銀ナノワイヤーの反射を低減することによりある程度透過率向上が見込めるが、銀ナノワイヤーの添加量に依存した吸収は変化しないため、低抵抗性と高光透過率の両立を図れるものではない。
【0005】
特許文献2には、透過率向上のために銀ナノワイヤーに隣接して光学調整層を設け、光学調整により高光透過率を実現する技術が開示されているが、金属ナノワイヤーの凝集を防止する機能を有する材料については言及されていない。
【0006】
したがって、金属ナノワイヤーを用いて、金属の凝集を防止することによって、高精細な配線パターンを形成し、低抵抗性と高光透過率の両立し、保存安定性に優れた透明電極が得られる技術への要望が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第1965438号明細書
【文献】中国特許出願公開第203930742号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、低抵抗性と高光透過性が両立し、保存安定性に優れた透明電極及びそれを具備した電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、金属ナノワイヤー層に隣接して、特定の構造を有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する層を有する透明電極によって、金属ナノワイヤー層中の金属と相互作用し、当該金属の拡散を抑えることができ、その結果、低抵抗性と高光透過性が両立し、保存安定性に優れた透明電極透明電極が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0018】
1.透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、
前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、
前記金属ナノワイヤー層に隣接して、下記一般式(1)で表される構造と、下記一般式(2)で表される構造とを有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする透明電極。
【化9】
(一般式(1)中、A1及びA2は、窒素原子とともに6員の含窒素芳香族複素環を形成する残基を表し、当該6員の含窒素芳香族複素環は縮環を形成してもよい。Lは、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。)
【0019】
【0020】
(一般式(2)中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。n1は、1~4の整数を表す。なお、前記一般式(1)における連結基Lとの連結位置は、Ra、Rb及びRcで表される置換基における置換可能な位置、又は、キナゾリン環において置換基としてRa、Rb及びRcが存在する位置以外の置換可能な位置である。)
【0021】
2.透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、
前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、
前記金属ナノワイヤー層に隣接して、下記一般式(1)で表される構造と、下記一般式(3)で表される構造とを有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする透明電極。
【化10】
(一般式(1)中、A1及びA2は、窒素原子とともに6員の含窒素芳香族複素環を形成する残基を表し、当該6員の含窒素芳香族複素環は縮環を形成してもよい。Lは、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。)
【0022】
【0023】
(一般式(3)中、Re、Rd及びRfは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。n2は、1~4の整数を表す。なお、前記一般式(1)における連結基Lとの連結位置は、Re、Rd及びRfで表される置換基における置換可能な位置、又は、キノキサリン環において置換基としてRe、Rd及びRfが存在する位置以外の置換可能な位置である。)
【0024】
3.透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、
前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、
前記金属ナノワイヤー層に隣接して、下記一般式(4)で表される構造を有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする透明電極。
【0025】
【0026】
(一般式(4)中、Rg、Rh、Ri及びRjは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Rg、Rh、Ri及びRjのうち少なくとも一つが、6員の芳香族複素環を表し、この6員の芳香族複素環は縮環を形成してもよい。L2は、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。)
【0027】
4.透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、
前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、
前記金属ナノワイヤー層に隣接して、下記一般式(1)で表される構造と、下記一般式(5)で表される構造とを有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする透明電極。
【化11】
(一般式(1)中、A1及びA2は、窒素原子とともに6員の含窒素芳香族複素環を形成する残基を表し、当該6員の含窒素芳香族複素環は縮環を形成してもよい。Lは、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。)
【0028】
【0029】
(一般式(5)中、Arは、カルバゾール、ジベンゾフラン、アザジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾチオフェン、アザカルバゾール、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン又はフルオレンの残基を表す。Rkは、水素原子又は置換基を表す。Rkのうち少なくとも二つが、6員の芳香族複素環を表し、この6員の芳香族複素環は縮環してもよい。n3は2以上を表す。)
【0030】
5.透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、
前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、
前記金属ナノワイヤー層に隣接して、下記構造式(6)-48で表される構造を有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする透明電極。
【0031】
【0032】
6.前記金属ナノワイヤー層が、銀ナノワイヤーを含有することを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の透明電極。
7.前記金属ナノワイヤー層のワイヤー長さが、1.0μm以上であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の透明電極。
8.前記金属ナノワイヤー層のワイヤー径が、100nm以下であることを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の透明電極。
9.前記金属ナノワイヤー層のワイヤーのアスペクト比が、100以上であることを特徴とする第1項から第8項までのいずれか一項に記載の透明電極。
【0033】
10.第1項から第9項までのいずれか一項に記載の透明電極を具備することを特徴とする電子デバイス。
【発明の効果】
【0034】
本発明の上記手段により、低抵抗性と高光透過性が両立し、保存安定性に優れた透明電極及びそれを具備した電子デバイスを提供することができる。
【0035】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0036】
導電材である金属、特に銀又は銀を主成分とした合金を含有する金属ナノワイヤー層によって、十分な低抵抗性と高光透過性とを兼ね備えた透明電極を作製するには、該金属ナノワイヤー層が電極として作用する均一な薄層の形成が求められるため、凝集等による不均一な薄層の形成が起こらない条件の設定が必要である。
【0037】
ところが、金属原子間の結合力は、昇華エンタルピーと相関があると言われている。銀の昇華エンタルピーは約285kJ/molと非常に高いため、強い銀原子同士の結合力を持っている。従って、銀ナノワイヤー同士も容易にマイグレーション、凝集が起こるため、安定性に優れ、かつ、低抵抗性と高光透過性を両立した透明電極を得ることが困難であった。
【0038】
しかしながら、本発明の透明電極によれば、銀原子が隣接する有機層を構成する窒素原子を含んだ有機化合物と相互に作用することによって、有機層表面における銀原子の拡散距離を減少し、銀原子の凝集作用を抑制することができることを見いだした。そのため銀原子のマイグレーション発生も抑えられ、安定性に優れたナノワイヤー層の形成を可能にした結果、十分な低抵抗性と高光透過性を保持する透明電極が得られたものと推定している。
【0039】
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、分子内に窒素原子を含有する芳香族複素環を有するので、金属と相互作用し、当該金属を固定する。すなわち、金属の拡散を抑えることができる。
【0040】
ここで、一般的な窒素原子を含有する芳香族複素環化合物では、金属との相互作用は弱く、金属の拡散を抑える効果は弱い。そこで、我々が鋭意検討した結果、主に下記二つの相互作用を形成する化合物(下記構造A及び構造Bを有する化合物)の場合に、強い効果が得られることを見いだした。
【0041】
A:縮環構造のオルト位に窒素(N)原子が存在する場合。
B:自由回転する窒素(N)原子が分子内に多数ある場合に、2分子で相互作用する。
【0042】
【0043】
したがって、前記構造Aを有する化合物として、前記一般式(2)、(3)及び(6)で表される構造を有する化合物の場合や、前記構造Bを有する化合物として、前記一般式(4)及び(5)で表される構造を有する化合物の場合に、金属の拡散を確実に抑えることができ、その結果、高精細な配線パターンを形成でき、低抵抗性と高光透過性が両立し、保存安定性に優れた透明電極が得られるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の透明電極を有する有機EL素子の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の透明電極は、透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、前記金属ナノワイヤー層に隣接して、前記一般式(1)で表される構造を有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0046】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記金属ナノワイヤー層が、銀ナノワイヤーであり、当該金属ナノワイヤーのワイヤー長さが、1.0μm以上であること、ワイヤー径が、100nm以下であること、並びにアスペクト比が、100以上である場合がより低抵抗性と高光透過性、かつ保存安定性に優れた透明電極が得られる観点から、好ましい。
【0047】
前記一般式(1)で表される構造を有する含窒素芳香族複素環化合物が、前記一般式(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)で表される構造を有することが、より低抵抗性と高光透過性、かつ保存安定性に優れた透明電極が得られる観点から、好ましい。
【0048】
本発明の電子デバイスは、本発明の透明電極を具備することによって、低抵抗性と高光透過性、かつ保存安定性に優れた電子デバイスを提供することができる。
【0049】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0050】
≪本発明の透明電極の概要≫
本発明の透明電極は、透明基板上に少なくとも導電材層を有する透明電極であって、前記導電材層が、金属ナノワイヤー層であり、前記金属ナノワイヤー層に隣接して、下記一般式(1)で表される構造を有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とする。
【0051】
〈イオンマイグレーションと含窒素芳香族複素環化合物の作用について〉
銀をはじめとした、金属のイオンマイグレーションの機構は諸説あり、完全に明らかとはされていない。一般的には段階的に進行すると考えられている。具体的には、まず、電極への水分の浸透から始まり、電極間の電位差と水の存在により電離が発生する。この際、特に銀や銅は硫黄や塩素と反応しやすいため、存在下では電離がより促進されると考えられている。次に、電離した金属イオンが陽極から陰極へと移動し、拡散した金属イオンが陰極で還元され、析出することで、陰極から陽極へ向けて金属析出が成長していく。
【0052】
含窒素芳香族複素環化合物を有する隣接する有機層と金属ナノワイヤー層からなる電極層を設けた構成を取ることで、電極層を構成する金属原子が有機層を構成する窒素原子を含んだ化合物と相互作用し、金属原子の機能層界面での拡散距離が減少し、銀の凝集や拡散が抑えられる、と考えられる。
【0053】
当該含窒素芳香族複素環化合物を含有する隣接する有機層を、以降簡単に「有機層」と呼称する。当該有機層は金属ナノワイヤー層の上部に隣接させても下部に隣接させても良く、また、両方に設け挟み込むような構成を取っても良い。有機層を下部に設ける場合では、金属ナノワイヤー層を形成する際に、金属ナノワイヤーが有機層側に拡散し、金属ナノワイヤー間の距離が短くなるため、ワイヤー間抵抗を下げることができる。結果、金属ナノワイヤーの量を減らすことができるため、電極の高光透過率と低抵抗性を両立することが可能である。また、有機層を上部に設ける場合では、金属ナノワイヤーの間隙に含侵するように含窒素芳香族複素環化合物が配置されることで、金属ナノワイヤーの安定化を効果的に促進することが可能である。
【0054】
したがって、本発明の透明電極の構成は、透明基板/有機層/金属ナノワイヤー層、又は透明基板/金属ナノワイヤー層/有機層、若しくは透明基板/有機層/金属ナノワイヤー層/有機層が例示される。
【0055】
本発明の透明電極は、上記各層に隣接してさらに他の機能層を有することができる。他の機能性層としては、例えば、平滑化層、ガスバリアー層、帯電防止層、易接着層、反射防止層、光散乱層、ハードコート層又はオーバーコート層などが例示される。中でも、電極としては、オーバーコート層を有することが好ましい。この場合は、透明基板/有機層/金属ナノワイヤー層/オーバーコート層、透明基板/金属ナノワイヤー層/有機層/オーバーコート層、又は透明基板/有機層/金属ナノワイヤー層/有機層/オーバーコート層などの構成を例示することができる。さらに、前記有機層とオーバーコート層は兼ねてもよく、例えば、オーバーコート材料と含窒素芳香族複素環化合物を混合した層を形成してもよい。
【0056】
本発明の「透明電極」でいう「透明」とは、波長500nmでの光透過率が50%以上であることをいい、光透過率が60%以上であることがより好ましく、光透過率が65%以上であることが更に好ましい。光透過率は、23℃・55RHの空調室で24時間調湿した試料をJIS K-7375に従って、測定することができる。
【0057】
以下、本発明の透明電極の構成について詳細に説明する。
【0058】
〔1〕透明基板
上記透明基板は、金属ナノワイヤー層を担持しうる板状体であり、透明電極を得るためには、JIS K 7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率
の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が80%以上の基板が好ましく用いられる。
【0059】
透明基板は無アルカリガラス、低アルカリガラス、又はソーダライムガラス等のガラス製基板であってもよいが、可撓性(フレキシブル性ともいう。)や軽量化のためには、樹脂基板であることが好ましい。
【0060】
樹脂基板としては、例えば、樹脂フィルム等が好適に挙げられ、生産性の観点や軽量性と柔軟性といった性能の観点から透明樹脂フィルムを用いることが好ましい。透明樹脂フィルムとは、JIS K 7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が60%以上、好ましくは80%以上のものをいう。
【0061】
用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚さ等については公知のものの中から適宜選択することができる。
【0062】
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、又はトリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0063】
上記全光線透過率が80%以上である透明樹脂フィルムであれば、本発明に用いられる樹脂基板として好ましく用いられる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、又はポリカーボネートフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、又は二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムがより好ましい。
【0064】
本発明に用いられる樹脂基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については、従来公知の技術を使用できる。
【0065】
例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、又はレーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
【0066】
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、又はエポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0067】
フィルム基板の表面または裏面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜からなるガスバリアー層を形成してもよい。
【0068】
バリア機能としては、JIS K 7129-1992に準拠した方法で測定した水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10-3g/(m2・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126-1987に準拠した方法で測定した酸素透過度が、1×10-3ml/m2・24h・atm以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10-3g/(m2・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0069】
高バリア性フィルムとするためにフィルム基板の表面又は裏面に形成されるバリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、又は窒化ケイ素等を用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0070】
《ガスバリアー層》
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などの有機電子素子に透明電極を適用する際に、素子内部に微量の水分や酸素が存在すると性能劣化が生ずる場合がある。樹脂基板には、当該樹脂基板を通して素子内部に水分や酸素が拡散することを防止するため、水分や酸素に対して高い遮蔽能を有するガスバリアー層を形成することが有効である。
【0071】
ガスバリアー層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法及びコーティング法などを用いることができるが、特開2004-68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものも好ましい。また、ポリシラザン化合物含有液を湿式塗布方式により塗布及び乾燥し、形成された塗布膜に波長200nm以下の真空紫外光(VUV光)を照射して、形成した塗布膜に改質処理を施して、ガスバリアー層を形成する方法も好ましい。
【0072】
ガスバリアー層の厚さは、1~500nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~300nmの範囲内である。ガスバリアー層の厚さが1nm以上であれば、所望のガスバリアー性能を発揮することができ、500nm以下であれば、緻密な酸窒化ケイ素膜でのクラックの発生等の膜質劣化を防止することができる。
【0073】
前記ポリシラザン化合物とは、ケイ素-窒素結合を持つポリマーで、Si-N、Si-H、N-H等からなるSiO2、Si3N4および両方の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
【0074】
ポリシラザン化合物の塗布方法は、任意の適切な方法を選択することができ、例えば、塗工方法として、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等の各種印刷方法に加えて、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷、スクリーン印刷法、インクジェット印刷等の各種塗布法を用いることができる。
【0075】
また、ガスバリアー層をパターン状に形成することが好ましい場合には、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法を用いることが好ましい。
【0076】
《ハードコート層》
樹脂基板が表面にハードコート層を有することにより、耐久性や平滑性が向上する。ハードコート層は、硬化型樹脂から形成されていることが好ましい。
【0077】
硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等の熱硬化型樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂が挙げられる。
【0078】
また、ハードコート層には、耐傷性、滑り性や屈折率を調整するために、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機化合物の微粒子、又は、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン系樹脂粉末等の紫外線硬化性樹脂組成物を加えることができる。
【0079】
また、ハードコート層の耐熱性を高めるために、光硬化反応を抑制しないような酸化防止剤を選んで用いることができる。さらに、ハードコート層は、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエーテル化合物、フッ素-シロキサングラフトポリマーを含有してもよい。
【0080】
ハードコート層を形成するための塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル等)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、又はこれらを混合し利用できる。
【0081】
また、塗布液に含有される硬化型樹脂含量は、例えば、5~80質量%の範囲内であることが好ましい。
【0082】
ハードコート層は、上記塗布液を用いて、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の湿式塗布方法で塗設することができる。
【0083】
塗布液の層厚としては、例えば0.1~30μmの範囲内であることが好ましい。また、樹脂基板に塗布液を塗布する前に、あらかじめ基板に真空紫外線照射等の表面処理を行うことが好ましい。
【0084】
塗布液を塗布して形成した塗膜には、紫外線等の活性エネルギー線を照射して樹脂を硬化させる。これにより、ハードコート層を形成する。
【0085】
硬化に用いる光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。照射条件は、例えば50~2000mJ/cm2の範囲内が好ましい。
【0086】
〔2〕有機層
本発明の透明電極は、金属ナノワイヤー層に隣接して、下記一般式(1)で表される構造を有する含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を有することを特徴とし、当該化合物は、分子内に窒素原子を含有する芳香族複素環を有するので、金属と相互作用し、当該金属を固定する。すなわち、金属の拡散を抑えることができる。
【0087】
有機層の形成方法としては、塗布法、インクジェット印刷法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法などのドライプロセスを用いる方法などが挙げられる。中でもインクジェット印刷法や蒸着法が好ましく適用される。
【0088】
〔2.1〕一般式(1)で表される構造を有する化合物
【0089】
【0090】
(一般式(1)中、A1及びA2は、窒素原子とともに6員の含窒素芳香族複素環を表し、この6員の含窒素芳香族複素環は縮環を形成してもよい。Lは、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。)
【0091】
一般式(1)中、A1及びA2で表される、窒素原子とともに形成される6員の芳香族複素環としては、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。また、縮環を形成した6員の含窒素芳香族複素環としては、キナゾリン、キノリン、イソキノリン、アザジベンゾフラン、アザカルバゾール、アザジベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール環、ベンゾキノリン環及びベンゾイソキノリン環等が挙げられる。
【0092】
Lが表す連結基として用いられる芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環(フェニル環)、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環又はフルオレン環、芳香族複素環としては、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、アザジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、t-ブチル基、又はへキシル基等が挙げられる。
【0093】
また、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(2)~(6)のいずれかで表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0094】
<一般式(2)で表される構造を有する化合物>
【0095】
【0096】
(一般式(2)中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。n1は、1~4の整数を表す。なお、前記一般式(1)における連結基Lとの連結位置は、Ra、Rb及びRcで表される置換基における置換可能な位置、又は、キナゾリン環において置換基としてRa、Rb及びRcが存在する位置以外の置換可能な位置である。)
【0097】
一般式(2)中、Ra、Rb及びRcで表される置換基としては、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、アルキル、シアノ、ハロゲン原子等が挙げられる。また、Ra、Rb及びRcのうちの少なくとも一つが表す6員の芳香族複素環としては、前記一般式(1)のA1及びA2で挙げたものと同様である。
【0098】
<一般式(3)で表される構造を有する化合物>
【0099】
【0100】
(一般式(3)中、Re、Rd及びRfは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。n2は、1~4の整数を表す。なお、前記一般式(1)における連結基Lとの連結位置は、Re、Rd及びRfで表される置換基における置換可能な位置、又は、キノキサリン環において置換基としてRe、Rd及びRfが存在する位置以外の置換可能な位置である。)
【0101】
一般式(3)中、Re、Rd及びRfで表される置換基としては、前記一般式(2)のRa、Rb及びRcで表される置換基と同様である。また、Re、Rd及びRfのうち少なくとも一つが6員の芳香族複素環としては、前記一般式(1)のA1及びA2で挙げたものと同様である。
【0102】
<一般式(4)で表される構造を有する化合物>
【0103】
【0104】
(一般式(4)中、Rg、Rh、Ri及びRjは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Rg、Rh、Ri及びRjのうち少なくとも一つが、6員の芳香族複素環を表し、この6員の芳香族複素環は縮環を形成してもよい。L2は、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。)
【0105】
一般式(4)中、Rg、Rh、Ri及びRjで表される置換基としては、前記一般式(2)のRa、Rb及びRcで表される置換基と同様である。また、Rg、Rh、Ri及びRjのうち少なくとも一つが6員の芳香族複素環としては、前記一般式(1)のA1及びA2で挙げたものと同様である。
【0106】
また、L2が表す芳香族炭化水素環、芳香族複素環、アルキル基としては、それぞれ前記一般式(1)のLで挙げたものと同様である。
【0107】
<一般式(5)で表される構造を有する化合物>
【0108】
【0109】
(一般式(5)中、Arは、カルバゾール、ジベンゾフラン、アザジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾチオフェン、アザカルバゾール、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン又はフルオレンの残基を表す。Rkは、水素原子又は置換基を表す。Rkのうち少なくとも二つが、6員の芳香族複素環を表し、この6員の芳香族複素環は縮環してもよい。n3は2以上を表す。)
【0110】
一般式(5)中、Rkで表される置換基としては、前記一般式(2)のRa、Rb及びRcで表される置換基と同様である。また、Rkで表される6員の芳香族複素環としては、前記一般式(1)のA1及びA2で挙げたものと同様である。
【0111】
<一般式(6)で表される構造を有する化合物>
【0112】
【0113】
(一般式(6)中、Y1及びY2は、O、S、N-R1を表す。X1~X16は、C-R2又はNを表す。X1~X16のうち少なくとも二つは、Nを表す。L1は、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基を表す。R1及びR2は、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、アルキル基を表す。)
【0114】
一般式(6)中、L1が表す芳香族炭化水素環、芳香族複素環、アルキル基としては、それぞれ前記一般式(1)のLで挙げたものと同様である。
【0115】
前記一般式(2)~(6)で表される構造を有する化合物の例示化合物を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、化合物(5)-12、(6)-1~47については、参考例とする。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
本発明に係る有機層は、前記含窒素芳香族複素環化合物を用いて、例えば、適当な有機溶剤に溶解して溶液状態の化合物含有層形成用塗布液を調製し、これら湿式塗布方式により、基板上に塗布及び乾燥して形成することが好ましい。
例えば、塗布液の固形分濃度が1~2質量%となるように溶媒に加え、得られた塗布液を、インクジェット法により、塗布及び乾燥して有機層を形成することができる。
【0152】
溶媒は、例えば、炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。エステル類としては、例えば、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチルなどが挙げられる。グリコールエーテル(炭素数1~4)類としては、例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(略称:PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ(炭素数1~4)アルキルエーテルエステル類が挙げられる。なお、プロピレングリコールモノ(炭素数1~4)アルキルエーテルエステル類としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。その他の溶媒として、例えば、N-メチルピロリドンなどが挙げられる。なお、本実施形態ではこれらに限定されるものではなく、また、これらを適宜混合した溶媒も好ましく用いられる。
【0153】
また、前記含窒素芳香族複素環化合物をバインダー樹脂に加えて塗布液を構成することも好ましい。例えば、バインダー樹脂としては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレートなどのセルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、コポリブチレン/テレ/イソフタレートなどのポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルベンザールなどのポリビニルアルコール誘導体、ノルボルネン化合物を含有するノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレートなどのアクリル樹脂又はポリイミド樹脂等を用いることができるが、これらの樹脂材料に限定されるものではない。この中では、ポリイミド樹脂やアクリル樹脂が、耐熱性、寸法安定性などの機械特性及び絶縁性などの電気特性の点で好ましい。その場合は、樹脂に対して前記含窒素芳香族複素環化合物を1~30質量%の範囲で混合することが好ましく、5~20質量%の範囲で混合することがより好ましく、5~10質量%の範囲であることがさらに好ましい。
有機層の厚さは、10~1000nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~100nmの範囲内である。
【0154】
〔2〕金属ナノワイヤー層
本発明に係る導電材層である金属ナノワイヤー層は、抵抗値として0.01~150Ω/sq.の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、導電材層の抵抗値が0.1~100Ω/sq.の範囲内である。導電材層の抵抗値が0.01Ω/sq.以上であると、高温、高湿等の環境変動に耐久性が得られ、抵抗値が150Ω/sq.以下であると、カールを抑制できる観点からから好ましい。
【0155】
〔2.1〕金属ナノワイヤー
金属ナノワイヤーとは、材質が金属であり、形状が針状又は糸状であり、径がナノメートルサイズの導電物質をいう。金属ナノワイヤーは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。金属ナノワイヤーで構成された透明導電層を用いれば、金属ナノワイヤーが網の目状となることにより、少量の金属ナノワイヤーであっても良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい透明電極を得ることができる。さらに、金属ナノワイヤーが網の目状となることにより、網の目の隙間に開口部を形成して、光透過率の高い透明電極を得ることができる。
【0156】
上記金属ナノワイヤーの径dと長さLとの比(アスペクト比:L/d)は、好ましくは10~100000の範囲内であり、より好ましくは50~100000の範囲内であり、さらに好ましくは100~10000の範囲内である。このようにアスペクト比の大きい金属ナノワイヤーを用いれば、金属ナノワイヤーが良好に交差して、少量の金属ナノワイヤーにより高い導電性を発現させることができる。その結果、光透過率の高い透明導電フィルムを得ることができる。
【0157】
なお、本明細書において、「金属ナノワイヤーの径」とは、金属ナノワイヤーの断面が円状である場合はその直径を意味し、楕円状である場合はその短径を意味し、多角形である場合は最も長い対角線を意味する。金属ナノワイヤーの径及び長さは、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡によって確認することができる。
【0158】
上記金属ナノワイヤーの径は、好ましくは500nm未満であり、より好ましくは200nm未満であり、さらに好ましくは10~100nmの範囲内であり、最も好ましくは10~50nmの範囲内である。このような範囲であれば、光透過率の高い透明導電層を形成することができる。
【0159】
上記金属ナノワイヤーの長さは、好ましくは1.0~1000μmの範囲内であり、より好ましくは10~500μmの範囲内であり、さらに好ましくは10~100μmの範囲内である。このような範囲であれば、導電性の高い透明導電フィルムを得ることができる。
【0160】
上記金属ナノワイヤーを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いられ得る。上記金属ナノワイヤーを構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル等が挙げられる。また、これらの金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。中でも好ましくは、導電性の観点から、銀又は銅であり、さらに好ましくは銀である。
【0161】
上記金属ナノワイヤーの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば溶液中で硝酸銀を還元する方法、前駆体表面にプローブの先端部から印可電圧又は電流を作用させ、プローブ先端部で金属ナノワイヤーを引き出し、前記金属ナノワイヤーを連続的に形成する方法等が挙げられる。溶液中で硝酸銀を還元する方法においては、エチレングリコール等のポリオール、及びポリビニルピロリドンの存在下で、硝酸銀等の銀塩の液相還元することにより、銀ナノワイヤーが合成され得る。
【0162】
均一サイズの銀ナノワイヤーは、例えば、Xia,Y.etal.,Chem.Mater.(2002)、14、4736-4745、Xia,Y.etal.,Nano letters(2003)3(7)、955-960に記載される方法に準じて、大量生産が可能である。
【0163】
上記透明電極は、透明基板上に、上記金属ナノワイヤーを含む透明導電層形成用組成物を塗工することにより形成することができる。より具体的には、溶媒中に上記金属ナノワイヤーを分散させた分散液(金属ナノワイヤー層形成用組成物)を、上記透明基板上に塗布した後、塗布層を乾燥させて、金属ナノワイヤー層を形成することができる。
【0164】
上記溶媒としては、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられる。環境負荷低減の観点から、水を用いることが好ましい。
【0165】
上記金属ナノワイヤー層形成用組成物中の金属ナノワイヤーの分散濃度は、好ましくは0.1~1質量%の範囲内である。このような範囲であれば、導電性及び光透過性に優れる透明金属ナノワイヤー層を形成することができる。
【0166】
上記金属ナノワイヤー層形成用組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、金属ナノワイヤーの腐食を防止する腐食防止材、金属ナノワイヤーの凝集を防止する界面活性剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類、数及び量は、目的に応じて適切に設定され得る。また、前記金属ナノワイヤー層形成用組成物は、本発明の効果が得られる限り、必要に応じて、任意の適切なバインダー樹脂を含み得る。
【0167】
上記金属ナノワイヤー層形成用組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。塗布方法としては、例えば、スプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコート、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。
【0168】
塗布層の乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には100~200℃の範囲内であり、乾燥時間は代表的には1~10分の範囲内である。
【0169】
上記透明導電層が金属ナノワイヤーを含む場合、前記透明導電層の厚さは、好ましくは0.01~10μmの範囲内であり、より好ましくは0.05~3μmの範囲内であり、特に好ましくは0.1~1μmの範囲内である。このような範囲であれば、導電性及び光透過性に優れる透明導電フィルムを得ることができる。
【0170】
上記透明導電層が金属ナノワイヤーを含む場合、前記透明導電層の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0171】
〔2.2〕金属メッシュ
金属メッシュを含む透明導電層は、上記透明基板上に、本発明に係る金属ナノワイヤーが格子状のパターンに形成されてなる透明電極の一態様である。金属メッシュのパターンの形状は特に制限はなく、例えば、ストライプ状、格子状、又はランダムな網目構造であっても良いが、開口率は透明性の観点から80%以上であることが好ましい。
【0172】
上記金属メッシュを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いられ得る。上記金属メッシュを構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル等が挙げられる。また、これらの金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。中でも好ましくは銀であり、本発明に係る有機層によってマイグレーション現象が起こりにくく、打鍵時の断線抑制の観点からも好ましい。
【0173】
金属メッシュを含む透明導電層は、任意の適切な方法により形成させることができる。前記透明導電層は、例えば、銀塩を含む感光性組成物(透明導電層形成用組成物)を上記積層体上に塗布し、その後、露光処理及び現像処理を行い、金属ナノワイヤーを所定のパターンに形成することにより得ることができる。また、前記透明導電層は、金属微粒子を含むペースト(透明導電層形成用組成物)を所定のパターンに印刷して得ることもできる。
【0174】
また、金属ナノワイヤーを含む分散液を、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等の液相成膜法を用いて塗布、乾燥して膜形成すれば容易に得ることができる。
【0175】
このような透明導電層及びその形成方法の詳細は、例えば、特開2012-18634号公報に記載されており、その記載は本明細書に参考として援用される。また、金属メッシュから構成される透明導電層及びその形成方法の別の例としては、特開2003-331654号公報に記載の透明導電層及びその形成方法が挙げられる。
【0176】
上記透明導電層が金属メッシュを含む場合、前記透明導電層の厚さは、好ましくは0.1~30μmの範囲内であり、より好ましくは0.1~9μmの範囲内である。
【0177】
上記透明導電層が金属メッシュを含む場合、前記透明導電層の光透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0178】
〔3〕オーバーコート層
オーバーコート層は透明樹脂を用いる樹脂層であることが好ましく、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有することが耐熱性、寸法安定性などの機械特性及び絶縁性などの電気特性の点で好ましい。
【0179】
前記セルロースエステル樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(略称:TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース等が挙げられる。
【0180】
前記ポリカーボネート樹脂としては、例えば、パンライト、マルチロン(以上、帝人社製)が挙げられる。
【0181】
前記シクロオレフィン樹脂としては、例えば、ゼオノア(日本ゼオン社製)、アートン(JSR社製)、アペル(三井化学社製)等が挙げられる。
【0182】
前記アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリライト(三菱レイヨン社製)、スミペックス(住友化学社製)等が挙げられる。
【0183】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等が挙げられる。
【0184】
前記樹脂の中でも、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有することがより好ましく、特に、樹脂層が樹脂フィルムである場合にはポリイミド樹脂を含有することが好ましく、樹脂層がレジストである場合にはアクリル樹脂又はエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0185】
樹脂層には、必要に応じてマット剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、剥離促進剤等を含有することが好ましい。
【0186】
(マット剤)
樹脂層には、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることができる。中でも二酸化ケイ素が樹脂層のヘイズを小さくできるため、好ましい。
【0187】
(紫外線吸収剤)
樹脂層には、紫外線吸収剤を含有することが耐光性を向上する観点から好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐光性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの光透過率が、0.1~30%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1~20%の範囲、さらに好ましくは2~10%の範囲である。
【0188】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に電子デバイスなどが置かれた場合には、樹脂層の劣化が起こる場合がある。
【0189】
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート等を挙げることができる。
【0190】
特に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
【0191】
また、オーバーコート層として、金属ナノワイヤー層に導電性ポリマーからなる導電性ポリマー層を形成することも好ましい。これにより、電極面全体で均一な導電性を得ることができ、更に金属ナノワイヤー層上の凹凸を平滑化して、電極の電流リークを抑制できる。
【0192】
導電性ポリマー層には、導電性ポリマーが含有されており、当該導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを有してなることが好ましい。
本発明に用いられるポリアニオンを含有するπ共役系導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類等が挙げられる。なかでも、導電性、透明性、安定性等を高める観点から、ポリチオフェン類又はポリアニリン類が好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンがより好ましい。
【0193】
π共役系導電性高分子は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、酸化剤、酸化触媒及びポリアニオンの存在の下で、化学酸化重合させることによって容易に製造できる。π共役系導電性高分子の形成に用いられる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、酸化剤の作用によって高分子化した際にも主鎖にπ共役系を有する。そのような前駆体モノマーとしては、例えば、ピロール類、チオフェン類、アニリン類、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0194】
〔4〕用途
本発明の透明電極は低抵抗性と高光透過性を併せ持ち、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、電子ペーパー、有機太陽電池、無機太陽電池等の各種オプトエレクトロニクスデバイスや、電磁波シールド、タッチパネル等の分野において好適に用いることができる。その中でも、透明電極表面の平滑性が厳しく求められる有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子や有機薄膜太陽電池素子等の有機電子素子用の透明電極として特に好ましく用いることができる。
【0195】
有機電子素子は基本的に、第1の電極、第2の電極および有機機能層を備え、第2の電極が第1の電極に対向配置され、有機機能層が第1の電極と第2の電極との間に設けられた構成を有するものである。
【0196】
かかる有機電子素子の一例として有機EL素子や有機薄膜太陽電池素子などが使用され、特に第1の電極として上述した透明電極が使用される。
【0197】
たとえば、有機EL素子では、本発明の透明電極を陽極として用いることが好ましく、有機機能層(有機発光層など)、第2電極(陰極)については有機EL素子に一般的に使われている材料、構成等の任意のものを用いることができる。
【0198】
有機EL素子の素子構成としては、陽極/有機発光層/陰極、陽極/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子注入層/陰極、等の各種の構成のものを挙げることができる。
【0199】
本発明に適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013-157634号公報、特開2013-168552号公報、特開2013-177361号公報、特開2013-187211号公報、特開2013-191644号公報、特開2013-191804号公報、特開2013-225678号公報、特開2013-235994号公報、特開2013-243234号公報、特開2013-243236号公報、特開2013-242366号公報、特開2013-243371号公報、特開2013-245179号公報、特開2014-003249号公報、特開2014-003299号公報、特開2014-013910号公報、特開2014-017493号公報、特開2014-017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
【0200】
図1は本発明の透明電極を有する有機EL素子の一例を示す断面図である。
【0201】
有機EL素子10は、樹脂基板2上に金属ナノワイヤー層4 及び有機層6を有し、透
明電極1を形成する。透明電極1は取出電極12と接続されている。透明電極1と対電極16の間に有機機能層14が設けられ、封止部材18によって素子全体が封止される。有機層6は金属ナノワイヤー層4の下部層、上部層又は下部層及び上部層の両方に形成されていてもよい。
【実施例】
【0202】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0203】
〔実施例1〕
<透明電極101の作製>
(透明基板の準備)
厚さ0.7mmの透明な無アルカリガラス(表中「ガラス」と表記)製の基板を透明基板として用いた。
【0204】
(Agナノワイヤー層(表中「AgNW」と表記。)の形成)
<導電材>
各実施例及び比較例に用いた導電材を以下に示す。
【0205】
導電材A「銀ナノワイヤー」は、特表2009-505358号公報の例1(銀ナノワイヤーの合成)に記載の方法にて得た銀ナノワイヤー導電材(短軸(径):50~100nm、長軸(長さ):20~40μm)を水に分散させた銀ナノワイヤー分散液(米国Cambrios社製“ClearOhm”(登録商標)Ink-A AQ)を、銀ナノワイヤーの濃度が0.055質量%となるように希釈したものを用いた。
【0206】
<銀含有組成物及び銀含有組成物を含む液体の調製>
(1)アセトンジカルボン酸銀(銀塩A)の合成
アセトンジカルボン酸43.8gを1000mLビーカーに秤量後、600gのイオン交換水に添加し溶解させ氷冷し、さらに102gの硝酸銀を溶解させた。そこへ、48gのn-ヘキシルアミンを投入後、30分間撹拌した。得られた白色の固体を濾取しアセトンで洗浄後、減圧乾燥することで88.2gのアセトンジカルボン酸銀を白色固体として得た(収率:82%)。得られたアセトンジカルボン酸銀の赤外吸収スペクトルは、IR:1,372.10cm-1、1,581.34cm-1であった。得られたアセトンジカルボン酸銀のTGA分析を、熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製)を用いて行った。分析条件は、昇温速度10℃/分、測定雰囲気を空気中とした。その結果、熱分解温度は175℃であった。また、熱重量分析後の残分は59.7質量%であり、理論残存率(59.4重量%)と一致していた。
【0207】
(2)銀含有組成物の調製
遮光瓶中で、上記合成で調製したアセトンジカルボン酸銀400mgを、2-エチルヘキシルアミン(2-EHA)200mg、イソアミルアミン400mgを混合したものに溶解させ、銀含有組成物を得た。
【0208】
遮光瓶中で、上記銀含有組成物で得られたアセトンジカルボン酸銀含有アミン溶液30gを水70gに添加して、銀含有組成物を含む液体を調製した。
【0209】
<銀ナノワイヤー層の形成>
前記導電材Aを、材質がステンレス(sus)のシム(シム厚み50μm)を装着したスリットダイコート(塗工幅550mm)を使用して基板の片面に塗布、乾燥し導電成分を積層形成した。さらに銀ナノワイヤーが塗布されている側に上記スリットダイコートを使用して得られた銀含有組成物を含む液体を塗布し、乾燥させて銀塩及び金属銀を含有するAgナノワイヤー層を形成した。
【0210】
<透明電極102の作製>
透明電極101の作製において、基板上にポリイミド樹脂を含有する層を下部層として設けた後にAgナノワイヤー層を形成した以外は同様にして、透明電極102を作製した。
【0211】
実施例に用いるポリイミドを以下の手順で準備した。
【0212】
<ポリイミドAの合成>
ステンレススチール製錨型撹拌機、窒素導入管、ディーン・スターク装置を取り付けた500mLのセパラブル4つ口フラスコに4,4′-オキシジフタル酸無水物(ODPA)56.11g(0.18モル)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)32.09g(0.18モル)、ガンマブチロラクトン(GBL)326.87g、ピリジン2.85g、トルエン33gを仕込み、反応系内を窒素置換した。窒素気流下80℃にて30分間撹拌することによりODPAを溶解させ、その後180℃まで昇温して6時間加熱撹拌を行った。
【0213】
反応中に生成する水はトルエン及びピリジンとの共沸混合物として反応系外へ除いた。反応終了後、室温まで冷却し、20質量%濃度のポリイミド溶液を得た。得られたポリイミドの構造は、下記の式のとおりである。
【0214】
このポリイミド溶液にイソプロパノールを投入し撹拌後に冷却してポリイミドAの固体を得た。
【0215】
【0216】
(式中、R1~R3のうち一つがメチル基、二つがエチル基を表す。)
<ポリイミド樹脂含有層の形成>
加圧溶解タンクにジクロロメタン(沸点40℃)を添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに、上記調製したポリイミドAを撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、残りの成分を添加し、撹拌して溶解させて、ポリイミド樹脂含有液を調製した。
【0217】
(ポリイミド樹脂含有液の組成)
ジクロロメタン 350質量部
ポリイミドA 100質量部
次いで、ポリイミド樹脂含有液を温度30℃で無アルカリガラス基板上に均一に流延した。乾燥時間15分間として、残留溶媒量が0.1質量%未満となる乾燥温度で乾燥させ、乾燥膜厚50μmのポリイミド樹脂含有層を得た。
【0218】
<透明電極103の作製>
透明電極101の作製において、基板上にアクリル樹脂を含有する層を下部層として設けた後にAgナノワイヤー層を形成した以外は同様にして、透明電極103を作製した。
【0219】
<アクリル樹脂含有層の形成>
加圧溶解タンクにジクロロメタン(沸点40℃)を添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに、上記調製したアクリル系樹脂を撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、残りの成分を添加し、撹拌して溶解させて、アクリル樹脂含有液を調製した。
【0220】
(アクリル樹脂含有液の組成)
ジクロロメタン 350質量部
アクリル系樹脂(ヒタロイド7927、日立化成(株)製)
100質量部
上記組成のアクリル樹脂含有液をガラス基板上に流延して塗布膜を形成し、70℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気に窒素パージしながら、紫外線ランプを用い、照射部の照度が300mW/cm2、照射量を0.3J/cm2として塗布膜を硬化させ、アクリル樹脂含有層を得た。
【0221】
<透明電極104~113の作製>
透明電極101の作製において、基板上に本発明に係る含窒素芳香族複素環化合物を含有する層を隣接する下部層として設けた後にAgナノワイヤー層を形成した以外は同様にして、透明電極104を作製した。
【0222】
本発明に係る含窒素芳香族複素環化合物である例示化合物(2)-2を用いて、塗布液の固形分濃度が1.5質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルを溶媒として用いて撹拌速度を500rpm、10分間混合して塗布液とし、疎水性PVDF
0.2μmフィルター(ワットマン社製)で濾過して、有機層の塗布液を得た。
【0223】
得られた塗布液をインクジェット法により、前記ガラス板に塗布した。その後、温度80℃で2分間の簡易乾燥を行い、さらに温度120℃で6分間の乾燥を行って有機層である下部層を形成した。下部層の層厚は50nmであった。
【0224】
同様にして、例示化合物(2)-2の代わりに表Iに記載の例示化合物を用いて、透明電極105~113を作製した。
【0225】
<透明電極114~123の作製>
透明電極102の作製において、下記例示化合物を含むポリイミド樹脂含有液を調製して用いた以外は同様にして、透明電極114を作製した。
【0226】
(ポリイミド樹脂含有液の組成)
ジクロロメタン 350質量部
ポリイミドA 100質量部
例示化合物(2)-2 5.0質量部
同様にして、例示化合物(2)-2の代わりに表Iに記載の例示化合物を用いて、透明電極115~123を作製した。
【0227】
<透明電極124~138の作製>
透明電極103の作製において、下記例示化合物を含むアクリル樹脂含有液を調製して用いた以外は同様にして、透明電極114を作製した。
【0228】
(アクリル樹脂含有液の組成)
ジクロロメタン 350質量部
アクリル系樹脂(ヒタロイド7927、日立化成(株)製)
100質量部
例示化合物(2)-2 5.0質量部
同様にして、例示化合物(2)-2の代わりに表Iに記載の例示化合物及び添加量を用いて、透明電極125~138を作製した。
【0229】
≪評価≫
以上得られた透明電極101~138を用いて、下記評価を実施した。
【0230】
(1)シート抵抗値の測定
作製した各透明電極について、シート抵抗値[Ω/sq.]を測定した。
シート抵抗値の測定は、抵抗率計(ナプソン株式会社製EC-80)を用いて、渦電流方式で行った。
【0231】
(2)光透過率の測定
作製した各透明電極について、基板、下部層、Agナノワイヤー層全体の光透過率(%)を測定した。光透過率の測定は、分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製U-3300)を用いた。
【0232】
(3)高温高湿保存下駆動前後でのシート抵抗値変化
作製した各ガラス基板上の透明電極について、レーザー発振器HOYA CANDEO
OPTRONICS株式会社製HSL-4000IIIを用いて、ガラス基板の中心に1
00μ幅のラインを形成し、Agナノワイヤー電極層を2つに分割した。その後、温度80℃、湿度85%RH下で5V駆動を300時間実施前後の前記電極層間の抵抗値変化率を下記評価基準に基づいて評価した。下記評価のA~Cを実用上問題ないレベルとした。
【0233】
A:高温高湿保存後の抵抗値の変化率が±100%未満の値
B:高温高湿保存後の抵抗値の変化率が±100%以上、±1000%未満の値
C:高温高湿保存後の抵抗値の変化率が±1000%以上、±10000%未満の値
D:高温高湿保存後の抵抗値の変化率が±10000%以上の値
以上の透明電極の構成及び評価結果を下記表Iに示す。
【0234】
【0235】
表Iの結果から、本発明のAgナノワイヤー層に本発明に係る含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を形成することで、低抵抗性と高光透過性が両立し、高温高湿下においても保存安定性の高い透明電極が得られることが分かった。
【0236】
〔実施例2〕
実施例1で作製した透明電極103、104、及び124において、下部層として形成した有機層を、上部層として表IIに示すように形成した以外は同様にして、透明電極201~226を作製し、実施例1と同様な評価を実施した。
【0237】
以上の透明電極の構成及び評価結果を下記表IIに示す
【0238】
【0239】
表IIの結果から、本発明のAgナノワイヤー層に本発明に係る含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を上部層として形成することで、低抵抗性と高光透過性が両立し、高温高湿下においてもより保存安定性の高い透明電極が得られることが分かった。
【0240】
〔実施例3〕
実施例1で作製した透明電極102、103、104、114及び124において、下部層として形成した有機層を、下部層と上部層として表IIIで示すように形成した以外は
同様にして、透明電極301~330を作製し、実施例1と同様な評価を実施した。
【0241】
以上の透明電極の構成及び評価結果を下記表IIIに示す
【0242】
【0243】
表IIIの結果から、本発明のAgナノワイヤー層に本発明に係る含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を下部層及び上部層として形成することで、低抵抗性と高光透過性が両立し、高温高湿下においてもより保存安定性の高い透明電極が得られることが分かった。
【0244】
〔実施例4〕
実施例1で作製した透明電極101、及び104において、基板をガラスから下記樹脂フィルムに変え、下部層として形成した有機層を下部層及び上部層として表IVに示すように形成した以外は同様にして、透明電極401~433を作製し、下記折り曲げ耐性を加えて、実施例1と同様な評価を実施した。
【0245】
なお、用いた樹脂フィルムは以下のとおりである。
【0246】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムは、帝人フィルムソリューション株式会社製のテレフレックスFT3、フィルム厚25μmを使用した。
【0247】
ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムは、帝人フィルムソリューション株式会社製のテオネックスQ51、フィルム厚25μmを使用した。
【0248】
ポリイミド(PI)フィルムは、I.S.T.株式会社製のTOMED TypeS、フィルム厚25μmを使用した。
【0249】
(4)屈曲前後のシート抵抗値変化
作製した透明電極に対して、曲率が6mmφのプラスチック製ローラーに、Agナノワイヤー層又は上部層形成面が外側になるように巻き付けた状態で、85℃、85%RHの環境下、500時間保存した。屈曲前後でのシート抵抗値変化を下記評価基準に基づいて評価した。下記評価のA~Cを実用上問題ないレベルとした。
【0250】
A:屈曲保存後のシート抵抗値の変化率が±5.0%未満の値
B:屈曲保存後のシート抵抗値の変化率が±5.0%以上±10%未満の値
C:屈曲保存後のシート抵抗値の変化率が±10%以上±20%未満の値
D:屈曲保存後のシート抵抗値の変化率が±20%以上の値
以上の透明電極の構成及び評価結果を下記表IVに示す
【0251】
【0252】
表IVの結果から、基板として可撓性のある樹脂フィルムを用い、本発明のAgナノワイヤー層に本発明に係る含窒素芳香族複素環化合物を含有する有機層を下部層及び上部層として形成することで、低抵抗性と高光透過性が両立し、高温高湿下においても安定性が高い透明電極が得られることが分かった。さらに樹脂基板を用いることで、可撓性を有する透明電極を得ることができ、当該透明電極を具備することで可撓性を有する電子デバイスの作製も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0253】
本発明の透明電極は低抵抗性と高光透過性を併せ持ち、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、電子ペーパー、有機太陽電池、無機太陽電池等の各種オプトエレクトロニクスデバイスや、電磁波シールド、タッチパネル等の分野において好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0254】
1 透明電極
2 樹脂基板
4 金属ナノワイヤー層
6 有機層
10 有機EL素子
12 取出電極
14 有機機能層
16 対電極
18 封止部材