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特許7548229二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム及びそれを用いた包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム及びそれを用いた包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240903BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021530512
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2020020008
(87)【国際公開番号】W WO2021005893
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2019128449
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019199029
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桐山 和也
(72)【発明者】
【氏名】今井 徹
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-238730(JP,A)
【文献】特開平08-238729(JP,A)
【文献】特開2018-065922(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170330(WO,A1)
【文献】特開2018-167487(JP,A)
【文献】特開2006-212835(JP,A)
【文献】特開昭55-049264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
B65D65/00 -65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂組成物からなる基層(A)と、その両面にポリプロピレン系樹脂組成物からなる表面層(B)とを有し、以下の条件a)~d)を満たすことを特徴とする二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
a)基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物全体のメソペンタッド分率が95.0%以上、99.5%以下である。
b)基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物全体のプロピレンモノマー由来成分及びα-オレフィンモノマー由来成分の合計に対するα-オレフィンモノマー由来成分の割合が0.2モル%以下である。
c)表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中のプロピレンモノマー由来成分及びα-オレフィンモノマー由来成分の合計に対してブテン-1モノマー由来成分の割合が5モル%以上10モル%以下である。
d)二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの厚みが60μm以下であり、二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム全層の厚みに対して、表面層(B)の厚みの割合が3%以上9.5%以下である。
【請求項2】
ポリプロピレン系樹脂組成物からなる基層(A)と、その両面にポリプロピレン系樹脂組成物からなる表面層(B)とを有し、以下の条件A)~D)を満たすことを特徴とする二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
A)基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中のDSC融点の最も低いポリプロピレン系樹脂の融点ピーク温度が160℃以上である。
B)基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物全体のプロピレンモノマー由来成分及びα-オレフィンモノマー由来成分の合計に対するα-オレフィンモノマー由来成分の割合が0.2モル%以下である。
C)表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中のプロピレンモノマー由来成分及びα-オレフィンモノマー由来成分の合計に対してブテン-1モノマー由来成分の割合が5モル%以上10モル%以下である。
D)二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの厚みが60μm以下であり、二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム全層の厚みに対して、表面層(B)の厚みの割合が3%以上9.5%以下である。
【請求項3】
前記基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物全体のメルトフローレート(MFR)が2.0g/10min以上、4.5g/10min以下である請求項1又は2記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【請求項4】
前記基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物が複数のポリプロピレン単独重合体を含み、メソペンタッド分率が最も高いポリプロピレン単独重合体のメソペンタッド分率が97.5%以上であり、かつメソペンタッド分率が最も低いポリプロピレン単独重合体のメソペンタッド分率が96.5%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【請求項5】
前記基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物がプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体、及びプロピレン・ペンテン-1共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含む請求項1~4のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【請求項6】
前記二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの長手方向のヤング率が2.0GPa以上、幅方向のヤング率が4.0GPa以上である請求項1~5のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【請求項7】
前記二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの溶断シール強度が18N/15mm以上である請求項1~6のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【請求項8】
前記二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムのヒートシールの到達強度が3N/15mm以上である請求項1~7のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを用いた包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装する内容物の形状を保持しやすく、かつ内容物を確認しやすくすることで、サンドイッチなどを包装するのに適したポリプロピレン系積層フィルムに関するものであり、特に詳しくは、高い剛性を有し、かつ溶断シールとヒートシールが可能なポリプロピレン系積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレンを用いたフィルムは食品や様々な商品の包装用に用いられているが、使用されるポリプロピレンフィルムは、水蒸気や酸素透過性が小さいことが好ましく、また多様なユーザーが使用することができるように、製袋のための加熱シール方法として溶断シール加工とヒートシール加工の両方を行えるのが好ましい。
さらに、サンドイッチなどの食品の包装に使用されるフィルムには、食品の形状に合わせて製袋が行え、製袋するためのヒートシール性と密封性、内容物の視認性、印刷性に加えて、包装体の形状が変化しにくいことが求められる。
しかしながら、従来の溶断シールやヒートシール可能なポリプロピレン系フィルムは、機械特性に改善の余地があるものであった。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2017/170330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、高い剛性を有し、かつ溶断シール性とヒートシール性がともに優れた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は以下の構成によりなる。
[1]ポリプロピレン系樹脂組成物からなる基層(A)と、その両面にポリプロピレン系樹脂組成物からなる表面層(B)とを有し、以下の条件a)~d)を満たすことを特徴とする二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
a)基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物全体のメソペンタッド分率が95.0%以上、99.5%以下である。
b)基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物全体のプロピレンモノマー由来成分及びα-オレフィンモノマー由来成分の合計に対するα-オレフィンモノマー由来成分の割合が0.2モル%以下である。
c)表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中のプロピレンモノマー由来成分及びα-オレフィンモノマー由来成分の合計に対してブテン-1モノマー由来成分の割合が5モル%以上10モル%以下である。
d)二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの厚みが60μm以下であり、二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム全層の厚みに対して、表面層(B)の厚みの割合が3%以上10%以下である。
【0006】
[2]ポリプロピレン系樹脂組成物からなる基層(A)と、その両面にポリプロピレン系樹脂組成物からなる表面層(B)とを有し、以下の条件A)~D)を満たすことを特徴とする二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
A)基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中のDSC融点の最も低いポリプロピレン系樹脂の融点ピーク温度が160℃以上である。
B)基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物全体のプロピレンモノマー由来成分及びα-オレフィンモノマー由来成分の合計に対するα-オレフィンモノマー由来成分の割合が0.2モル%以下である。
C)表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中のプロピレンモノマー由来成分及びα-オレフィンモノマー由来成分の合計に対してブテン-1モノマー由来成分の割合が5モル%以上10モル%以下である。
D)二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの厚みが60μm以下であり、二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム全層の厚みに対して、表面層(B)の厚みの割合が3%以上10%以下である。
【0007】
[3]前記基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物全体のメルトフローレート(MFR)が2.0g/10min以上、4.5g/10min以下である[1]又は[2]記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【0008】
[4]前記基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物が複数のポリプロピレン単独重合体を含み、メソペンタッド分率が最も高いポリプロピレン単独重合体のメソペンタッド分率が97.5%以上であり、かつメソペンタッド分率が最も低いポリプロピレン単独重合体のメソペンタッド分率が96.5%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【0009】
[5]前記基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物がプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体、及びプロピレン・ペンテン-1共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含む[1]~[4]のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【0010】
[6]前記二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの長手方向のヤング率が2.0GPa以上、幅方向のヤング率が4.0GPa以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【0011】
[7]前記二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの溶断シール強度が18N/15mm以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【0012】
[8]前記二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムのヒートシールの到達強度が3N/15mm以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【0013】
[9][1]~[8]のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを用いた包装体。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高い剛性を有し、かつ溶断シール性とヒートシール性がともに優れた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、サンドイッチなど包装し商品を確認するための視認性や、包装体の形状がくずれにくく、内容物の見栄えが良く、しかもフィルムの厚みを減らすことによる環境面などへの貢献につながるものであった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムはポリプロピレン系樹脂組成物からなる基層(A)と前記基層(A)の両面に、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる表面層(B)を有する。
【0016】
(基層(A))
本発明において、基層(A)はポリプロピレン系樹脂組成物からなり、プロピレン単独重合体及びプロピレンを90モル%以上含有するプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の重合体を主として用いることが好ましい。プロピレン単独重合体及びプロピレンを90モル%以上含有するプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の重合体の含有量は95重量%以上であることが好ましく、97重量%以上であることがより好ましく、98重量%以上であることがさらに好ましく、99重量%以上であることが特に好ましい。
【0017】
プロピレン単独重合体はn-へプタン不溶性のアイソタクチックのプロピレン単独重合体であることが好ましい。
n-ヘプタン不溶性とは、ポリプロピレンの結晶性を指標すると同時に食品包装用として使用する際の安全性を示すものであり、本発明では、昭和57年2月厚生省告示第20号によるn-ヘプタン不溶性(25℃、60分抽出した際の溶出分が150ppm以下〔使用温度が100℃を超えるものは30ppm以下〕)に適合するものを使用することが好ましい態様である。
【0018】
他のα-オレフィンとしては、炭素数が2~8のα-オレフィン、例えば、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-1-ペンテンなどが好ましい。ここで共重合体とは、プロピレンに上記に例示されるα-オレフィンを1種又は2種以上重合して得られたランダム又はブロック共重合体であることが好ましく、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体、またはプロピレン・ペンテン-1共重合体であることが好ましい。
【0019】
ポリプロピレン単独重合体は基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物に対し97重量%以上含むことが好ましく、98重量%以上がより好ましく、99重量%以上含むことがさらに好ましく、100重量%含むことが特に好ましい。
【0020】
プロピレンを90モル%以上含有するプロピレン・α-オレフィン共重合体を混合して使用する場合は、基材層(A)に使用されるポリプロピレン系樹脂組成物全体に対して、プロピレンを90モル%以上含有するプロピレン・α-オレフィン共重合体の含有量を3重量%以下とすることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましく、0重量%であることが特に好ましい。
【0021】
基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中のDSC融点の最も低いポリプロピレン系樹脂の融点ピーク温度が160℃以上であることが好ましい。
融点は後述する実施例に記載の方法で測定される。DSC融点の最も低いポリプロピレン系樹脂の融点ピーク温度が160℃以上であると包装体の形状がくずれにくく、また高速包装加工におけるフィルムの搬送をよりスムーズにすることができ、得られた製袋品にしわもより入りにくい。
【0022】
あるいは、基材層(A)で使用されるポリプロピレン系樹脂組成物全体のプロピレンモノマー由来成分及びα-オレフィンモノマー由来成分の合計に対するα-オレフィンモノマー由来成分の割合は溶断シール性の観点から0.2モル%以下であることが好ましい。こうすることで、剛性と溶断シール性を高いレベルで両立することができる。0.1モル%以下であることがより好ましく、0.05モル%以下であることがさらに好ましく、0モル%であることが特に好ましい。
【0023】
前記基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物全体のアイソタクチックメソペンタッド分率は剛性の観点から95%以上であることが好ましい。こうすることで、剛性と溶断シール性を高いレベルで両立することができる。97.0%以上であることがより好ましい。また製膜性の観点からは99.5%以下であることが好ましい。
【0024】
また、基材層(A)で使用されるポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は溶断シール性の観点から2.0g/10min以上であることが好ましい。こうすることで、剛性と溶断シール性をより高いレベルで両立することができる。フィルム伸度の観点から6.0g/10min以下であることが好ましい。
【0025】
このとき、前記基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物には複数のポリプロピレン単独重合体が含むことができる。
このときメソペンタッド分率が最も高いポリプロピレン単独重合体のメソペンタッド分率が97.5%以上であることが好ましく、98.0%以上がより好ましく、98.5%以上であることが特に好ましい。メソペンタッド分率が97.5%以上であるポリプロピレン単独重合体は30重量%以上、70重量%以下であることが好ましく、40重量%以上、60重量%以下であることがより好ましい。
このとき、メソペンタッド分率が最も低いポリプロピレン単独重合体のメソペンタッド分率が96.5%以下であることが好ましく、95.5%以下であることがより好ましく、95.0%以下であることが特に好ましい。
メソペンタッド分率が96.5%以下であるポリプロピレン単独重合体30重量%以上、70重量%以下であることが好ましく、40重量%以上、60重量%以下であることがより好ましい。
【0026】
基層(A)の厚みは、その用途や使用方法によって異なるが、フィルムの剛性や水蒸気バリア性の点で、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。透明性や環境への影響の点において、50μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましく、37μm以下が特に好ましい。
【0027】
基層(A)及び/又は表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中には防曇剤を添加することができる。本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中に添加する防曇剤としては、例えば、多価アルコ-ルの脂肪酸エステル類、高級脂肪酸のアミン類、高級脂肪酸のアマイド類、高級脂肪酸のアミンやアマイドのエチレンオキサイド付加物などを典型的なものとして挙げることができる。かかる防曇剤のフィルム中での存在量は全層換算で0.1~10重量%、特に0.2~5重量%が好ましい。
【0028】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの防曇性発現のメカニズムとしては、基層(A)を形成する樹脂中に防曇剤を添加することで、フィルム製造時及びフィルム形成後の保管時に、防曇剤が表面層(B)へ順次移行し、当該フィルム表面が防曇性を有する状態になる。収穫後も生理作用を持続することが特徴である青果物を包装対象としたときに、その効果を発揮することができる。
そして、流通過程で長期的に優れた防曇性を持続させるためには、包装体は冷凍保存よりもむしろ室温雰囲気での保存が望まれるところから、保存、流通時の気温変化を考慮して、5~30℃の間で温度変化を繰り返す経過中継続して防曇性を示すような防曇剤を選定することが好ましい。
【0029】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物には滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤やポリプロピレン系フィルムに通常添加される公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などを配合することも可能である。
【0030】
(表面層(B))
表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物に使用するポリプロピレン系樹脂として、少なくともブテン-1を含むプロピレン・α-オレフィン共重合体を含むのが好ましい。
少なくともブテン-1を含むプロピレン・α-オレフィン共重合体を使用することで、比較的共重合成分の割合が低くても、プロピレン・α-オレフィン共重合体の融点を低下させることができ、表面層(B)同志の混合が進みやすいため、高いヒートシール到達強度を発現することができる。また、表面層(B)の厚みを薄くしても、十分なヒートシール到達強度が得られやすい。
【0031】
ブテン-1の他のα-オレフィンとしては、炭素数が2~8のα-オレフィン、例えば、エチレン、ペンテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-1-ペンテンなどが好ましい。少なくともブテン-1を含むプロピレン・α-オレフィン共重合体共重合体とは、プロピレンに少なくともブテン-1を含むα-オレフィンを1種又は2種以上重合して得られたランダム又はブロック共重合体であることが好ましく、プロピレン・ブテン-1共重合体、及びプロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の共重合体であることが好ましい。
【0032】
表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物にはプロピレン単独重合体あるいはプロピレンを90モル%以上含有するプロピレンとブテン-1とは異なる他のα-オレフィンとの共重合体含んでも良いが、表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中にこれらは10重量%以下の含有量であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることがさらに好ましく、0重量%であることが特に好ましい。
表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中のプロピレン・ブテン-1共重合体の含有量は20重量%~50重量%であることが好ましく、25重量%~50重量%であることがより好ましい。その他のプロピレン・α-オレフィン共重合体としては、プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体を含むことが好ましく、表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中の含有量が50~80重量%以上であることが好ましく、50~75重量%以上であることがより好ましい。
【0033】
表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物のプロピレンモノマー由来成分、及びα-オレフィンモノマー由来成の合計に対してブテン-1モノマー由来成分が5モル%以上であることが高い溶断シール強度を発現する上で好ましく、5.5モル%以上であることがより好ましく、5.7モル%以上であることがさらに好ましい。
表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物のプロピレンモノマー由来成分、α-オレフィンモノマー由来成分の合計に対してブテン-1モノマー由来成分が5モル%以上とすると、球晶の成長を抑制することができる。
これは融点が高いポリプロピレン系樹脂組成物から構成される基材層(A)を延伸する場合、延伸する温度を上げる必要があるが、延伸温度を上げることにより延伸されたフィルムがゆっくり冷却された場合(例えば、テンター延伸機から出た時)に表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物中に球晶が成長しやすくなり、大きな球晶が生成しやすい。溶断シール後に溶融部に球晶が存在すると、界面が生じ溶断シール強度が低下しやすい。この傾向は、基材層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物の融点がより大きければ、より高温で延伸することになるため、より顕著になることを見出したことによる。
しかしながら、ブテン-1モノマー由来成分が多いと、シール部の形状が不均一となりやすいため、表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物のプロピレンモノマー由来成分、エチレンモノマー由来成分、ブテン-1モノマー由来成分の合計に対してブテン-1モノマー由来成分が10モル%以下であることが好ましく、9.5モル%以下であることがより好ましく、9モル%以下であることがさらに好ましく、8モル%以下であることが特に好ましく、6.5モル%以下であることが最も好ましい。
表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物がプロピレン・ブテン-1共重合体、及びプロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の共重合体であるとき、プロピレンモノマー由来成分、エチレンモノマー由来成分、ブテン-1モノマー由来成分の合計に対してブテン-1モノマー由来成分が5モル%以上であることが高い溶断シール強度を発現する上で好ましく、5.5モル%以上であることがより好ましく、5.7モル%以上であることがさらに好ましい。
しかしながら、ブテン-1モノマー由来成分が多いと、シール部の形状が不均一となりやすいため、表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物のプロピレンモノマー由来成分、エチレンモノマー由来成分、ブテン-1モノマー由来成分の合計に対してブテン-1モノマー由来成分が10モル%以下であることが好ましく、9.5モル%以下であることがより好ましく、9モル%以下であることがさらに好ましく、8モル%以下であることが特に好ましく、6.5モル%以下であることが最も好ましい。
【0034】
また、表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物全体のプロピレンモノマー由来成分及びα-オレフィンモノマー由来成分の合計に対するα-オレフィンモノマー由来成分の割合が多いと基層(A)と表面層(B)との界面での剥離が発生しやすい。
そのため、表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物に使用するポリプロピレン系樹脂中におけるα-オレフィンモノマー由来成分の割合は20モル%以下が好ましい。
【0035】
表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物には単独、若しくは複数のプロピレン・α-オレフィン共重合体を使用することができるが、ポリプロピレン系樹脂組成物中のDSC融点の最も低いプロピレン・α-オレフィン共重合体の融点ピーク温度は100℃以上であることが好ましい。この場合、溶断シール後に溶融部に球晶が存在しにくく、溶断シール強度が低下しにくい。
【0036】
表面層(B)の厚みの二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム全層の厚みに対する割合は、10%以下であるのが溶断シール強度の観点から好ましく、9.5%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましく、6%以下が特に好ましい。表面層(B)の厚みの割合が10%以下であると、溶断シール部のポリ溜りと呼ばれる融着部における球晶が少なくなるとともに、低融点樹脂の割合が少なくなり、溶断シール強度が低下しにくい。
ヒートシールの観点から表面層(B)の厚みの割合は3%以上が好ましく、4%以上がより好ましく、4.5%以上がさらに好ましく、5%以上が特に好ましい。
【0037】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、表面層(B)には滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤やポリプロピレン系フィルムに通常添加される公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などを配合することも可能である。またフィルムの耐ブロッキング性や滑り性を確保するための、無機質あるいは有機質の微細粒子を配合することも可能である。
【0038】
無機質微細粒子としては、二酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、カオリン、雲母、ゼオライトなどが挙げられ、これらの形状は、球状、楕円状、円錐状、不定形と種類を問うものではなく、その粒子径もフィルムの用途、使用法により所望のものを使用配合することができる。
また、有機質の微細粒子としては、アクリル、アクリル酸メチル、スチレン-ブタジエンなどの架橋体粒子を使用することができ、形状、大きさに関しては無機質微細粒子と同様にさまざまなものを使用することが可能である。また、これら無機質あるいは有機質の微細粒子表面に各種の表面処理を施すことも可能であり、また、これらは単独で使用し得るほか、2種以上を併用することも可能である。以上は後述の表面層(B)にも適合する。
【0039】
(フィルム全層厚み)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの全層厚みは、その用途や使用方法によって異なるが、フィルム強度、若しくは密封性又は水蒸気バリア性の観点から10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μ以上がさらに好ましい。
また、高速包装加工性、若しくは視認性の点において、60μm以下が好ましく、50μm以下がさらに好ましく、45μm以下が特に好ましく40μm以下が最も好ましい。
【0040】
(二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの製膜方法)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、例えば、一般的なポリオレフィンの場合の製膜条件となんら変わるものではなく、例えば、積層数に見合う押出し機を用いてTダイ法又はインフレーション法等で溶融積層した後、冷却ロール法、水冷法又は空冷法で冷却して積層フィルムとし、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法、チューブ延伸法等で延伸する方法を例示することができる。
ここで、逐次2軸延伸法にて製造する際の条件を例示すると、T型のダイスより溶融押出しした樹脂をキャスティング機にて冷却固化させて、原反シートを作成する。この際、溶融キャスティングするロール温度は、樹脂の結晶化を抑え、透明性を向上させる目的で15℃から40℃の間に設定する事が好ましい。
【0041】
次に、延伸に適した温度まで原反シートを加熱後、延伸ロール間の速度差を利用してシートの流れ方向に延伸する、この際の延伸倍率は、延伸のムラがなく安定して製造する事を考えると3倍から6倍の間に設定することが好ましい。
次に、縦延伸したシートの両耳部をテンタークリップで把持し、熱風で延伸に適した温度まで加熱しながらシートの流れと直角方向に、順次拡げながら延伸する。この際の横延伸倍率は、厚み変動と生産性を考慮して7倍から10倍の間に設定することが好ましい。
【0042】
次に、横延伸したフィルムの両耳部をテンタークリップで把持したまま、160℃~170℃の範囲で加熱処理をするのが好ましい。熱処理時間は2~10秒の間に設定することが好ましい。また、両耳部をテンタークリップで把持したまま、フィルムの幅方向の1~10%の範囲で緩和することが好ましい。
次に表面層(B)表面にコロナ放電処理機によるコロナ放電処理を実施し、表面層(B)表面の表面張力を高めることが好ましい。これにより防曇性を高めることができる。
【0043】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、印刷性、ラミネート性等を向上させるために基材層(A)の表面処理を行うことが好ましい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等が例示できる。連続処理が可能であり、このフィルムの製造過程の巻き取り工程前に容易に実施できるコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理を行うのが好ましい。
【0044】
(フィルム特性)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、以下の特性を有することが好ましい。ここでいう長手方向とは、原料樹脂組成物をキャスティングしてから延伸したフィルムを巻取る工程までのフィルムが流れる方向を意味し、幅方向とは流れ方向と直角の方向を意味する。以下の特性においても同様である。
【0045】
(ヤング率)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた長手方向の初期ヤング率が2.0MPa以上であることが好ましい。より好ましくは2.2MPa以上である。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた幅方向の初期ヤング率が4.0MPa以上であることが好ましい。より好ましくは4.5MPa以上である。
【0046】
(5%伸長応力)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた長手方向の5%伸長応力が40MPa以上であることが好ましい。より好ましくは42MPa以上である。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた幅方向の5%伸長応力が110MPa以上であることが好ましい。より好ましくは110MPa以上である。
【0047】
(破断強度)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた長手方向の破断強度が125MPa以上であることが好ましい。より好ましくは130MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた幅方向の破断強度が330MPa以上であることが好ましい。より好ましくは350MPa以上であり、さらに好ましくは360MPa以上であり、特に好ましくは370MPa以上である。
【0048】
(破断伸度)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた長手方向の破断伸度が200%以上であることが好ましい。より好ましくは220%以上であり、さらに好ましくは240%以上である。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた幅方向の破断伸度が40%以上であることが好ましい。より好ましくは45%以上である。
【0049】
(熱収縮率)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた熱収縮率が長手方向で3%以下であることが好ましい。より好ましくは2.5%以下である。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた熱収縮率が幅方向で2.5%以下であることが好ましい。より好ましくは2.0%以下であり、さらに好ましくは1.5%以下であり、特に好ましくは1.0%以下である。
【0050】
(ヘイズ)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られたヘイズが10%以下であることが好ましい。より好ましくは7%以下である。
【0051】
(光沢度)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた光沢度が長手方向、幅方向ともに150°以下であることが好ましい。より好ましくは140°以下である。
【0052】
(動摩擦係数)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた動摩擦係数が長手方向、幅方向ともに0.4以下であることが好ましい。より好ましくは0.3以下である。
【0053】
(濡れ張力)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた溶濡れ張力が30mN/m以上であることが好ましい。より好ましくは35mN/m以上である。
【0054】
(表面固有抵抗)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた長手方向の表面抵抗が15LogΩ以下であることが好ましい。より好ましくは13LogΩ以下である。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた幅方向の表面抵抗が15LogΩ以下であることが好ましい。より好ましくは13LogΩ以下である。
【0055】
(水蒸気透過度)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた水蒸気透過度が7.0(g/(m・d))以下であることが好ましい。より好ましくは6.0(g/(m・d))以下であり、さらに好ましくは4.5(g/(m・d))以下である。
【0056】
(ヒートシール立ち上がり温度)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの表面層(B)のヒートシール立ち上がり温度が125℃以下であることが好ましい。125℃以下であると、ヒートシール温度が低くても十分なヒートシール強度を保持してヒートシールすることができるため自動包装する際に高速で運転することができ、また、シール部の密封性に優れ、また低温でヒートシールができるためフィルム全体が収縮しにくく、ヒートシール部にしわが生じにくく、よりヒートシール部の密封性が向上る。しかしながら、表面層(B)のヒートシール立ち上がり温度が115℃以上であることが、溶断シール強度の観点から好ましい。
【0057】
(130℃ヒートシール到達強度)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、内容物の脱落を防止するためには、後述する測定方法で得られた130℃での長手方向、及び幅方向のヒートシール到達強度は3.5N/15mm以上が好ましい。より好ましくは4.0N/15mm以上であり、さらに好ましくは4.5N/15mm以上である。
【0058】
(140℃ヒートシール到達強度)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、内容物の脱落を防止するためには、後述する測定方法で得られた140℃での長手方向、及び幅方向のヒートシール到達強度は4.0N/15mm以上が好ましい。より好ましくは4.5N/15mm以上である。
【0059】
(リングクラッシュ)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた長手方向のリングクラッシュが0.40Kg以上であることが好ましい。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた幅方向のリングクラッシュが0.50Kg以上であることが好ましい。
【0060】
(自動包装適性)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた自動包装適性の評価が○又は△であることが好ましい。より好ましくは○である。
【0061】
(溶断シール強度)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた溶断シール強度が 19N/15mm以上であることが好ましい。より好ましくは20N/15mm以上である。
【実施例
【0062】
以下、本発明の具体例を実施例によってさらに説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、本明細書中における特性は下記の方法により評価をおこなった。
【0063】
(1)DSC融点
(株)島津製作所製、島津示差走査熱量計DSC-60を用いて得られた、ポリオレフィン系樹脂フィルムのDSC曲線の最大融解ピークの温度を融点とした。開始温度は30℃、昇温速度は5℃/min、終了温度は180℃とした。サンプル5ケを測定し、平均値を算出した。
【0064】
(2)メソペンタッド分率
ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率([mmmm]%)の測定は、13C-NMRを用いて行った。メソペンタッド分率は、Zambelliら、Macromolecules,第6巻,925頁(1973)に記載の方法に従って算出した。13C-NMR測定は、BRUKER社製AVANCE500を用い、試料200mgをo-ジクロロベンゼン-d4とベンゼン-d6の8:2の混合液に135℃で溶解し、110℃で行った。サンプル5ヶを測定し、平均値を算出した。
複数のポリプロピレン樹脂の混合物からなるポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率は混合物を上記方法で測定した値を用いる。
【0065】
(3)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。
複数のポリプロピレン樹脂の混合物からなるポリプロピレン系樹脂のアイソタクチックメソペンタッド分率は混合物を上記方法で測定した値を用いる。
【0066】
(4)α-オレフィンモノマー由来成分の割合(モル%)
プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体中のプロピレン、ブテン-1、エチレンの含有量は、高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第615~617頁に記載された方法により、13C-NMRスペクトル法によって決定する。なお、同書の256頁「(i)ランダム共重合体」の項記載の方法によってIRスペクトル法で決定することも可能である。
複数のポリプロピレン樹脂の混合物からなるポリプロピレン系樹脂のα-オレフィンモノマー由来成分の割合を上記方法で測定した値を用いる。
【0067】
(5)フィルム全層厚み
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを1cm×1cmのサイズに切り出し、ミクロトームにて断面試料を作製し、微分干渉顕微鏡にて観察し、基層(A)、表面層(B)、フィルム全層の厚みを測定した。サンプルのうち5ヶ所を測定し、平均値を算出した。
【0068】
(6)ヤング率、F5、引張破断強度、引張破断伸度
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを長手方向に200mm、幅方向に15mmのサイズにフィルムより切り出し、チャック幅は100mmとし、引張試験機(インストロンジャパンカンパニイリミテッド(株)社製:デュアルコラム卓上型試験機インストロン5965)にセットした。23℃雰囲気下で、引張速度を200mm/分とし、JIS K7127に準拠して引張試験を行った。
得られた歪み-応力カーブより、伸長開始から0.6%伸長時までの直線部分の傾きからヤング率を求めた。5%伸長時の応力をF5とした。引張破断強度、引張破断伸度はそれぞれ、サンプルが破断した時点での強度と伸度を採用した。サンプル5ヶを測定し、平均値を算出した。
サンプルを幅方向に200mm、長手方向に15mmのサイズに切り出し、同様にして行った。ここでいう長手方向とは、原料樹脂組成物をキャスティングしてから延伸したフィルムを巻取る工程までのフィルムが流れる方向を意味し、幅方向とは流れ方向と直角の方向を意味する。以下の測定においても同様である。
【0069】
(7)熱収縮率
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを長手方向に200mm、幅方向に20mmのサイズに切り出し、120℃熱風オーブン中に吊るして5分間加熱し、JIS Z1712に準拠して加熱後の長さを測定した。
加熱後の長さと加熱前の元の長さとの差の、加熱前の元の長さに対する割合を熱収縮率とした。サンプル5ケを測定し、平均値を算出した。
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを幅方向に200mm、長手方向に20mmのサイズに切り出し、同様にして行った。
【0070】
(8)ヘイズ
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの一方の面及び反対の面をヘーズメーター(日本電色工業株式会社製:NDH5000)を用い、23℃にてJIS K7105に準拠して測定した。これらの平均値を算出した。
【0071】
(9)光沢度
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの一方の面及び反対の面を光沢計(日本電飾工業社製 VG-1D)を用い、フィルムの長手方向における60度鏡面光沢度をJIS K7105 5.2光沢度:2004年に準拠し測定した。これらの平均値を算出した。
【0072】
(10)動摩擦係数
2枚の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの表面層(B)面同士を重ね合わせ、23℃で、JIS K7125に準拠して測定した。サンプル5セットを測定し、平均値を算出した。
【0073】
(11)濡れ張力(mN/m)
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを長手方向に297mm、幅方向に210mmのサイズで切り出し、温度23℃、相対湿度50%で24時間エージング後、温度23℃、相対湿度50%の試験室雰囲気でコロナ処理面を下記手順で、JIS K7100に準拠しながら測定した。
試験片をハンドコータの基板の上に置き、試験片の上に試験用混合液を数滴滴下して、直ちにワイヤバーを引いて広げる。綿棒又はブラシを使用して試験用混合液を広げる場合は、液体は少なくとも6cm以上の面積に速やかに広げる。液体の量は、たまりを作らないで、薄層を形成する程度にする。
濡れ張力の判定は,試験用混合液の液膜を明るいところで観察し、3秒後の液膜の状態で行う。液膜破れを生じないで、3秒以上、塗布されたときの状態を保っているのは、ぬれていることになる。
濡れが3秒以上保つ場合は、さらに、次に表面張力の高い混合液に進む。
また逆に、3秒以下で液膜が破れる場合は、次の表面張力の低い混合液に進む。この操作を繰り返し、試験片の表面を正確に、3秒間で濡らすことができる混合液を選ぶ。
各々の試験には,新しい綿棒を使用する。ブラシ又はワイヤバーは,残留する液体が蒸発によって組成及び表面張力を変化させるので、使用ごとにメタノールで洗浄し、乾燥させる。
コロナ処理面の表面を3秒間でぬらすことができる混合液を選ぶ操作を少なくとも3回行う。このようにして選ばれた混合液の表面張力をフィルムの濡れ張力として報告する。
【0074】
(12)表面固有抵抗値(LogΩ)
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを長手方向に100mm、幅方向に100mmのサイズで切り出し、フィルムを23℃、24時間エージング後、フィルムのコロナ処理面をJIS K6911に準拠して測定した。
【0075】
(13)水蒸気透過率
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを長手方向に100mm、幅方向に100mmのサイズで切り出し、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製PERMATRAN-W3/33)を用いて、フィルムのコロナ処理面を高湿度側になるようにし、温度37.8℃、湿度90%の条件にて測定を行った。サンプル3ヶ測定し、平均値を算出した。
【0076】
(14)ヒートシール立ち上がり温度
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを長手方向に20cm、幅方向に5cm切り出した。切出した2枚のフィルムのコロナ処理をした表面層(B)同士を向かい合わせて重ね、熱傾斜試験機(東洋精機社製)を用いて、シール面が長軸方向に3cm、短軸方向に1cmのヒートシールバー5個を用い、それぞれのシールバーの長手方向の間隔を1cmとし、5個同時にヒートシールした。ヒートシールバー5個は80℃から5℃ピッチで温度設定した。ヒートシール圧力は1kg/cm、時間は1秒とした。ヒートシールバーの長軸方向がフィルムの長手方向と平行に、かつフィルムの幅方向の中央部に位置するようにした。サンプルの短軸方向の端部とシールバーとの間隔は0.5cmとした。
同様にして、ヒートシールバー5個を105℃から5℃ピッチで温度設定しヒートシールを行った。
それぞれのシール部(3cm×1cm)の長手方向の中央部15mmを幅方向にカットし、引張試験機(インストロン社製5965デュアルコラム卓上型試験機)の上下チャックに取付け、引張速度200mm/minで引張った際のそれぞれのヒートシール強度を測定した(単位はN/15mm)。
横軸に温度、縦軸にヒートシール強度をとった線形グラフを描き、ヒートシール強度が1N/15mmとなる温度をヒートシール立ち上がり温度とした。これを3回行い、平均値を算出した。
【0077】
(15)ヒートシール到達強度
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを長手方向に297mm、幅方向に210mm切り出した。切出した2枚のフィルムのコロナ処理をした表面層(B)同士を向かい合わせて重ね、熱傾斜試験機(東洋精機社製)を用いて、シール面が長軸方向に15mm、短軸方向に30mmのヒートシールバーを用いヒートシールした。ヒートシールバーは130℃に温度設定した。ヒートシール圧力は1kg/cm、時間は1秒とした。ヒートシールバーの長軸方向がフィルムの長手方向と平行に、かつフィルムの幅方向の中央部に位置するようにした。サンプル3ヶを測定し、平均値を算出した。
同様にして、140℃でも行った。
【0078】
(16)溶断シール強度
溶断シール機(共栄印刷機械材料(株)製:PP500型)を用いて、二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムからコロナ処理を内側にして溶断シール袋を作成した。
条件:
溶断刃:刃先角度60°
シール温度:370℃
ショット数:120袋/分
袋形状:縦方向20cm、水平方向20cm、フィルムの横手方向を縦方向とした。
上記溶断シール袋の底部の溶断シール部を水平方向に15mm幅で縦方向に切り出し、緩みを除いた状態で両端を引張試験機(インストロン社製5965デュアルコラム卓上型試験機)の把持部で、つかみ間隔を200mmとして把持し、引張速度200mm/分で引張り、シール部が破断したときの強度を溶断シール強度(N/15mm)とした。サンプル5ケを測定し、平均値を算出した。
【0079】
(17)リングクラッシュ
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを長手方向に152mm、幅方向に12.7mmを切り出した。デジタル式リングクラッシュテスター(テスター産業(株)社製)の試料テーブルの上に、フィルムサンプルの厚みに合わせて、アタッチメントのスペーサーをセットし、長軸が円周方向となるように円周に添って差し込む。23℃にて、圧縮版を下降速度12mm/min.で圧縮した際の最大荷重をリングクラッシュ測定値とした。サンプル3ヶを測定し、平均値を算出した。
二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを幅方向に152mm、長手方向に12.7mmを切り出し、同様にして行った。
【0080】
(18)自動包装適性
横ピロー製袋機(共栄印刷機械材料(株)製:PP500型)を用いて、二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムからコロナ処理を内側にしてピロー包装体を作製した。
条件:
溶断刃;刃先角度60°
シール温度;370℃
ショット数;120袋/分
袋形状:縦方向20cm、水平方向20cm、フィルムの幅方向を縦方向とした。
フィルム搬送時の滑らかさ、製袋品のシワの程度から自動包装適性を以下の3段階で評価した。
○:フィルム搬送性良好・製袋品シワなし
△:フィルム搬送性、製袋品シワのいずれか不良
×:フィルム搬送性不良・製袋品シワあり
【0081】
下記実施及び比較例で使用した各層を構成するポリプロピレン樹脂は次の通りである。
[PP-1]:プロピレン単独重合体:日本ポリプロ(株)製「FL203D」、MFR:3g/10分、融点:160.6℃、メソペンタッド分率:94.8%
[PP-2]:プロピレン単独重合体:日本ポリプロ(株)製「FY6H」、MFR:1.9g/10分,融点:163℃、メソペンタッド分率:98.9%
[PP-3]:プロピレン単独重合体:住友化学(株)製「FS2012」、MFR:2.5g/10分,融点:163℃、メソペンタッド分率:98.7%
[PP-4]:プロピレン・エチレンランダム共重合体:住友化学工業(株)製「FS2011DG3」、エチレン含有量:0.6モル%、MFR:2.7g/10分、融点:158℃、メソペンタッド分率:97.0%
[PP-5]:プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体:住友化学工業(株)製「FSX66E8」、エチレン含有量:2.5モル%、ブテン含有量:7モル%、MFR:3.1g/10分、融点:133℃
[PP-6]:プロピレン・ブテン-1共重合体:住友化学工業(株)製「SP3731」、ブテン含有量:12モル%、MFR:8.5g/10分,融点:130℃
[PP-7]:プロピレン・ブテン-1共重合体:住友化学工業(株)製「SPX38F4」、ブテン含有量:25モル%、MFR:8.5g/10分、融点:128℃
【0082】
(実施例1)
基層(A)の樹脂として[PP-1]を57重量%、[PP-2]を43重量%の割合で混合したものを使用した。
表面層(B)の樹脂として[PP-5]を70重量%、[PP-6]を30重量%の割合で混合したもの使用した。
2台の溶融押出機を用い、第1の押出機より基層(A)を280℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機より表面層(B)形成樹脂を250℃の樹脂温度にて溶融押出しし、チルロール接触面から表面層(B)/基層(A)/表面層(B)の順番に、Tダイ内にて積層して押出し、30℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得た。引き続き、130℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、幅方向に9.5倍の延伸を行った。テンター延伸機の予熱部温度は175℃、延伸部温度は165℃であった。
さらに、幅方向に延伸を行った後に、熱固定を165℃にて実施した。次に表面層(B)の表面(チルロール接触面でない面)に春日電機社製のコロナ放電処理機を用いコロナ放電処理を実施し、フィルムワインダーにより巻き取って二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。最終的なフィルム厚みは35μmであった。各層の厚み比は表面層(B)/基層(A)/表面層(B)=0.8μm/33.4μm/0.8μmであった。
得られた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは本発明の要件を満足するものであり、低温での十分なヒートシール強度と到達強度を有し、自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0083】
(実施例2)
各層の厚み比を表面層(B)/基層(A)/表面層(B)=1.5μm/32.0μm/1.5μmとした以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、実施例1と同様に低温での十分なヒートシール強度と到達強度を有し、自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0084】
(実施例3)
基層(A)の樹脂構成を[PP-1]を47重量%、[PP-2]を53重量%使用した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、実施例1と同様に低温での十分なヒートシール強度と到達強度を有し、自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0085】
(実施例4)
基層(A)の樹脂構成を[PP-1]を67重量%、[PP-2]を33重量%使用した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、実施例1と同様に低温での十分なヒートシール強度と到達強度を有し、自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0086】
(実施例5)
基層(A)の樹脂構成を[PP-3]を100重量%とした以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、実施例1と同様に低温での十分なヒートシール強度と到達強度を有し、自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0087】
(実施例6)
基層(A)の樹脂として、[PP-1]にグリセリンモノステアレート(松本油脂製薬(株)、TB-123)を0.16重量%、ポリオキシエチレン(2)ステアリルアミン(松本油脂製薬(株)、TB-12)を0.2重量%、ポリオキシエチレン(2)ステアリルアミンモノステアレート(松本油脂製薬(株)、エレックス334)を0.6重量%添加したもの([PP-8])を57重量%、[PP-2]を43重量%の割合で混合したものを使用した。
シール層(B)の樹脂として、[PP-5]にグリセリンモノステアレート(松本油脂製薬(株)、TB-123)を0.50重量%添加したもの([PP-9])を70重量%、[PP-6]を25重量%の割合で混合したものを使用した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは本発明の要件を満足するものであり、低温での十分なヒートシール強度と到達強度を有し、自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0088】
(比較例1)
基層(A)の樹脂として[PP-4]を100重量%の割合とし、 表面層(B)の樹脂として[PP-5]を82重量%、[PP-6]を18重量%の割合で混合したもの使用した。
2台の溶融押出機を用い、第1の押出機より基層(A)を280℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機より表面層(B)形成樹脂を250℃の樹脂温度にて溶融押出しし、チルロール接触面から表面層(B)/基層(A)/表面層(B)の順番に、Tダイ内にて積層して押出し、30℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得た。引き続き、130℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、幅方向に9.5倍の延伸を行った。テンター延伸機の予熱部温度は168℃、延伸部温度は158℃であった。
さらに、テンター延伸機の後半では、熱固定を165℃にて実施した後、表面層(B)表面に春日電機社製のコロナ放電処理機によるコロナ放電処理を実施し、フィルムワインダーにより巻き取って自動包装可能な二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。最終的なフィルム厚みは35μmであった。各層の厚み比は表面層(B)/基層(A)/表面層(B)=1.1μm/32.8μm/1.1μmであった。
得られた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、初期ヤング率が低く腰感が劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表2に示す。
【0089】
(比較例2)
表面層(B)の樹脂として[PP-5]を70重量%、[PP-6]を30重量%の割合で混合したもの使用した以外は、比較例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、溶断シール適性に劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表2に示す。
【0090】
(比較例3)
基層(A)の樹脂として[PP-1]を57重量%、[PP-2]を43重量%の割合で混合したものを使用した。
表面層(B)の樹脂として[PP-5]を70重量%、[PP-6]を30重量%の割合で混合したもの使用した。
2台の溶融押出機を用い、第1の押出機より基層(A)を280℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機より表面層(B)形成樹脂を250℃の樹脂温度にて溶融押出しし、チルロール接触面から表面層(B)/基層(A)/表面層(B)の順番に、Tダイ内にて積層して押出し、30℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得た。引き続き、120℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、幅方向に9.5倍の延伸を行った。テンター延伸機の予熱部温度は172℃、延伸部温度は159℃であった。
さらに、テンター延伸機の後半では、熱固定を165℃にて実施した後、表面層(B)表面に春日電機社製のコロナ放電処理機によるコロナ放電処理を実施し、フィルムワインダーにより巻き取って自動包装可能な二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。最終的なフィルム厚みは35μmであった。各層の厚み比は表面層(B)/基層(A)/表面層(B)=2.0μm/31.0μm/2.0μmであった。
得られた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、低温ヒートシール適性に劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表2に示す。
【0091】
(比較例4)
基層(A)の樹脂として[PP-4]を100重量%の割合とし、 表面層(B)の樹脂として[PP-5]を20重量%、[PP-7]を80重量%の割合で混合したもの使用した。
2台の溶融押出機を用い、第1の押出機より基層(A)を280℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機より表面層(B)形成樹脂を250℃の樹脂温度にて溶融押出しし、チルロール接触面から表面層(B)/基層(A)/表面層(B)の順番に、Tダイ内にて積層して押出し、30℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得た。引き続き、120℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、幅方向に9.5倍の延伸を行った。テンター延伸機の予熱部温度は172℃、延伸部温度は159℃であった。
さらに、テンター延伸機の後半では、熱固定を165℃にて実施した後、表面層(B)表面に春日電機社製のコロナ放電処理機によるコロナ放電処理を実施し、フィルムワインダーにより巻き取って自動包装可能な二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。最終的なフィルム厚みは35μmであった。各層の厚み比は表面層(B)/基層(A)/表面層(B)=1.1μm/32.8μm/1.1μmであった。
得られた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、低温ヒートシール適性及び溶断シール適性に劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表2に示す。
【0092】
(比較例5)
実施例1で[PP-1]を100重量%をもの使用した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、溶断シール適性に劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表2に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の高い剛性を有するポリプロピレン系積層フィルムは、青果物を包装し商品を陳列する際の見栄えや、フィルムの厚みを減らすことによる環境面などへの貢献につながり、青果物包装に適したものである。よって産業界に多大な寄与をするものである。