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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20240903BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240903BHJP
   C08L 25/10 20060101ALI20240903BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240903BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240903BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C1/00 A
C08L25/10
C08L75/04
C08K3/36
C08K3/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021562458
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2020034208
(87)【国際公開番号】W WO2021111693
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019220669
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】奥平 早紀
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-097303(JP,A)
【文献】特開2019-189672(JP,A)
【文献】特開2005-255796(JP,A)
【文献】特開2005-036165(JP,A)
【文献】特開2003-176379(JP,A)
【文献】特開2002-047382(JP,A)
【文献】特開2008-050571(JP,A)
【文献】特表2014-506277(JP,A)
【文献】特開2019-189673(JP,A)
【文献】図解入門 よくわかる 最新ゴムの基本と仕組み,第1版第2刷,日本,株式会社 秀和システム,2011年04月10日,P124-125
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 1/00
C08L 25/10
C08L 75/04
C08K 3/36
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系エラストマー及びウレタン粒子を含むエラストマー組成物で構成されたトレッドを有するタイヤであって、
前記スチレン系エラストマーがスチレンブタジエンゴムであり、
前記スチレンブタジエンゴムのスチレン含有量が25質量%以上であり、
前記エラストマー組成物は、エラストマー成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量が65~95質量%であり、
前記トレッドは、下記式(1)を満たすタイヤ。
【数1】
【請求項2】
前記ウレタン粒子は、平均粒子径が500μm以下である請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記エラストマー組成物全体におけるスチレン含有量とウレタン粒子含有量との配合比(総スチレン量/総ウレタン粒子量)が0.5~5.0である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記エラストマー組成物全体におけるスチレン含有量とシリカ含有量との配合比(総スチレン量/総シリカ量)が0.05~3.00である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記エラストマー組成物全体におけるスチレン含有量と固体樹脂との配合比(総スチレン量/総固体樹脂量)が0.5~3.5である請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記エラストマー組成物がスチレン系樹脂及びテルペン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の固体樹脂を含む請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記エラストマー組成物は、エラストマー成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量が65~95質量%、ブタジエンゴムの含有量が5~35質量%である請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記スチレンブタジエンゴムは、スチレン含有量が25~50質量%、ビニル含量が10~80モル%、重量平均分子量が20万~150万である請求項1~7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記スチレンブタジエンゴムが変性スチレンブタジエンゴムである請求項1~8のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項10】
前記エラストマー組成物は、エラストマー成分100質量部に対する前記ウレタン粒子の含有量が1~50質量部である請求項1~のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項11】
前記エラストマー組成物は、シリカ及びカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1~10のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項12】
前記シリカの窒素吸着比表面積が80~250m/g、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が40~200m/gである請求項11に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記エラストマー組成物は、液体可塑剤及び固体樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1~12のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項14】
下記式(1f)を満たす請求項1~13のいずれかに記載のタイヤ。
【数2】
【請求項15】
乗用車用サマータイヤである請求項1~14のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車社会では自動運転化やカーシェアリングなどが拡大し、メンテナンスの機会が減っているため、タイヤには、長期にわたり安全を支えること(長寿命化)が求められている。長寿命化のためには、新品時のゴムの性能を持続させる必要があることから、熱老後のゴムの特性が非常に重要である。
【0003】
しかしながら、一般的に、タイヤを構成するゴム組成物は、長期間使用すると、熱老後のモジュラス(M100等)が大きく上昇し、柔軟性が損なわれる。そのため、老化後にタイヤ硬度が上昇し、ウェットグリップ性能等のタイヤ物性が低下するという問題がある。
【0004】
特許文献1には、天然ゴム、ブタジエンゴム、ウレタン粒子を含むトレッドを有するタイヤが開示されているが、氷上性能の改善を目的とするもので、老化後のタイヤ物性の改善を課題とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-36268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、熱老化前後における硬度の上昇及びウェットグリップ性能の低下を抑制できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スチレン系エラストマー及びウレタン粒子を含むエラストマー組成物で構成されたトレッドを有するタイヤであって、前記トレッドは、下記式(1)を満たすタイヤに関する。
【数1】
【0008】
前記ウレタン粒子は、平均粒子径が500μm以下であることが好ましい。
【0009】
前記スチレン系エラストマーがスチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
【0010】
前記エラストマー組成物全体におけるスチレン含有量とウレタン粒子含有量との配合比(総スチレン量/総ウレタン粒子量)が0.5~5.0であることが好ましい。
【0011】
前記エラストマー組成物全体におけるスチレン含有量とシリカ含有量との配合比(総スチレン量/総シリカ量)が0.05~3.00であることが好ましい。
【0012】
前記エラストマー組成物全体におけるスチレン含有量と固体樹脂との配合比(総スチレン量/総固体樹脂量)が0.5~3.5であることが好ましい。
【0013】
前記エラストマー組成物がスチレン系樹脂及びテルペン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の固体樹脂を含むことが好ましい。
【0014】
前記エラストマー組成物は、エラストマー成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量が50~95質量%、ブタジエンゴムの含有量が5~50質量%であることが好ましい。
【0015】
前記スチレンブタジエンゴムは、スチレン含有量が5~50質量%、ビニル含量が10~80モル%、重量平均分子量が20万~150万であることが好ましい。
【0016】
前記スチレンブタジエンゴムが変性スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
【0017】
前記エラストマー組成物は、エラストマー成分100質量部に対する前記ウレタン粒子の含有量が1~50質量部であることが好ましい。
【0018】
前記エラストマー組成物は、シリカ及びカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0019】
前記シリカの窒素吸着比表面積が80~250m/g、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が40~200m/gであることが好ましい。
【0020】
前記エラストマー組成物は、液体可塑剤及び固体樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0021】
前記タイヤは、下記式(1f)を満たすことが好ましい。
【数2】
【0022】
前記タイヤは、前記乗用車用サマータイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、スチレン系エラストマー及びウレタン粒子を含むエラストマー組成物で構成されたトレッドを有するタイヤであって、前記トレッドは、前記式(1)を満たすタイヤであるので、熱老化前後における硬度の上昇及びウェットグリップ性能の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のタイヤは、スチレン系エラストマー及びウレタン粒子を含むエラストマー組成物で構成されたトレッドを有し、かつ該トレッドが前記式(1)を満たす。これにより、熱老化前後で、硬度の上昇が抑制され、ウェットグリップ性能の低下が抑制される。
【0025】
前記作用効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
スチレン系エラストマーを含むエラストマー組成物にウレタン粒子を添加し、かつ老化前後のM100(100%伸長時応力(100%モジュラス))の変化(上昇)を所定以下になるように小さく調整した場合、一般にウレタン粒子がスチレン系エラストマーに比べて耐熱性に優れていると共に、老化前後の硬度変化が小さく老化による硬度上昇が抑えられることにより、エラストマー組成物の柔軟性の悪化が防止されると推察される。従って、熱老化によるエラストマー組成物の硬度の上昇が抑制され、経時的なウェットグリップ性能の低下が抑制されると推察される。
【0026】
このように、本発明は、スチレン系エラストマー及びウレタン粒子を含むエラストマー組成物において、式(1)を満たすエラストマー組成物の構成にすることにより、熱老化前後における硬度の上昇及びウェットグリップ性能の低下を抑制するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、式(1)のパラメーターは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、熱老化前後における硬度の上昇及びウェットグリップ性能の低下を抑制することであり、そのための解決手段として当該パラメーターを満たす構成にしたものである。
【0027】
前記タイヤにおいて、前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、下記式(1)を満たす。
【数1】
老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下の抑制の観点から、「(M100a-M100f)/M100f×100」(=ΔM(熱老化前後における23℃の100%伸長時応力の変化率(%))は、36%以下が好ましく、34%以下がより好ましく、32%以下が更に好ましい。また、該変化率は小さいほど望ましく、31%以下、28%以下、26%以下、25%以下、21%以下、17%以下、14%以下、11%以下、7%以下の順でより望ましい。一方、該変化率の下限は特に限定されず、小さいほど好ましいが、実用的な観点からは、3%以上でも、5%以上でもよい。
【0028】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、ウェットグリップ性能等のタイヤ物性の観点から、下記式(1f)を満たすことが好ましい。
【数2】
M100f(熱老化前の23℃における100%伸長時応力)の下限は、0.80MPa以上がより好ましく、1.00MPa以上が更に好ましく、1.40MPa以上が特に好ましく、1.50MPa以上が最も好ましい。上限は、5.00MPa以下がより好ましく、4.00MPa以下が更に好ましく、2.90MPa以下が特に好ましく、2.80MPa以下が最も好ましい。
【0029】
なお、熱老化は、JIS K6257:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-熱老化特性の求め方」に準拠し、熱老化条件(80℃、1週間(168時間))で実施する。M100(23℃における100%伸長時応力)は、JIS K6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠し、23℃、500mm/分で引張試験を行い、100%伸長時の応力を測定する。
【0030】
ここで、ΔM(熱老化前後における23℃の100%伸長時応力の変化率(%))の抑制は、例えば、耐熱性が良好なスチレン系エラストマーを使用する方法、ウレタン粒子を構成するウレタン種を適宜選択する方法、使用するスチレン系エラストマーと硬度が同等のウレタン粒子を添加する方法、ウレタン粒子の添加量を調整する方法、ウレタン粒子の平均粒子径を調整する方法、等を単独又は適宜組み合わせることで、ΔMを小さく調整できる。
【0031】
M100fは、スチレン系エラストマー、フィラー、ウレタン粒子の種類や配合量を変更することで、適宜調整できる。例えば、スチレン系エラストマーとしてスチレンブタジエンゴムを用いる方法、スチレン系エラストマーの分子量を調整する方法、フィラー量を調整する方法、フィラーとしてシリカやカーボンブラックを用いる方法、柔軟性の高いウレタン粒子を用いる方法、フィラーの粒径を変える方法、ウレタン粒子の粒径を変える方法、等を単独又は適宜組み合わせることで、M100fを式(1f)の範囲に調整できる。
【0032】
(エラストマー成分)
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、スチレン系エラストマーを含む。
【0033】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)において、スチレン系エラストマーの含有量は、エラストマー成分100質量%中、50質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましく、85質量%以上が最も好ましい。上限は特に限定されないが、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。上記範囲内にすることで、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下を抑制できる傾向がある。
【0034】
スチレン系エラストマーは、スチレン骨格を有する化合物に由来する構成単位を含むエラストマーであれば特に限定されず、例えば、スチレンとスチレン以外のオレフィンとの共重合体(ブロック共重合体又はランダム共重合体)が挙げられる。スチレン以外のオレフィンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられ、なかでも、ブタジエンが好ましい。
【0035】
スチレン系エラストマーは、不飽和型スチレン系エラストマーでも水添スチレン系エラストマーでもよい。不飽和型スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン-ブタジエンランダム共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)等);スチレン-イソプレン共重合体(スチレン-イソプレンランダム共重合体、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンブロック共重合体(SIS)等);等が挙げられる。
【0036】
水添スチレン系エラストマーとしては、例えば、前記不飽和型スチレン系エラストマーを水添したもの(オレフィン成分の不飽和結合の少なくとも一部を水素化したもの)が挙げられる。水添スチレン系エラストマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(スチレン-エチレン-ブチレンランダム共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)等);スチレン-エチレン-プロピレン共重合体(スチレン-エチレン-プロピレンランダム共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)ブロック共重合体(SEP)等);スチレン-イソブチレン共重合体(スチレン-イソブチレンランダム共重合体、ポリスチレン-ポリイソブチレンブロック共重合体(SIB)等;スチレン-エチレン-イソプレン共重合体(スチレン-エチレン-イソプレンランダム共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-イソプレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SIPS)等);等が挙げられる。
【0037】
前述のスチレン系エラストマーのなかでも、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下の抑制の観点から、スチレンブタジエン共重合体(スチレンブタジエンゴム(SBR))が好ましい。
【0038】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)において、SBRの含有量は、エラストマー成分100質量%中、50質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましく、85質量%以上が最も好ましい。上限は特に限定されないが、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。上記範囲内にすることで、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下を抑制できる傾向がある。
【0039】
SBRは、スチレン含有量の下限が好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは21質量%以上、最も好ましくは25質量%以上である。該スチレン含有量の上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは28質量%以下である。
【0040】
SBRは、ビニル含量の下限が好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、特に好ましくは40モル%以上、最も好ましくは60モル%以上である。該ビニル含量の上限は、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくはビニル含量66モル%以下である。
【0041】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万以上、より好ましくは24万以上、更に好ましくは50万以上、特に好ましくは60万以上、最も好ましくは70万以上である。一方、Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは150万以下、より好ましくは120万以下、更に好ましくは100万以下、特に好ましくは90万以下である。
【0042】
なお、本明細書において、SBRのスチレン含有量は、H-NMR測定により算出される。ビニル含量は、ブタジエン部のビニル含量(ブタジエン構造中のビニル基のユニット数量)であり、H-NMR測定により算出される。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0043】
SBRとしては、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであり、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に官能基を有し、少なくとも一方の末端を変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0045】
上記官能基を有する変性SBRとして、下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたSBR(S変性SBR)を好適に使用できる。
【0046】
【化1】
【0047】
上記式中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。
【0048】
上記S変性SBRとしては、溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたSBR(S変性S-SBR(特開2010-111753号公報に記載の変性SBR等))が好適に用いられる。
【0049】
、R及びRは、アルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。R及びRは、アルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、R及びRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
【0050】
上記式で表される化合物(上記変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
変性SBRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性SBRも好適に使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
【0052】
ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
【0053】
(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
【0054】
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドンN-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、
【0055】
N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。
【0056】
変性剤によるSBRの変性方法としては、従来公知の手法を使用でき、例えば、スチレンブタジエンゴムと該化合物とを接触させることで変性できる。具体的には、溶液重合によるSBRの調製後、該ゴム溶液中に該化合物を所定量添加し、SBRの重合末端(活性末端)と変性剤とを反応させる方法などが挙げられる。
【0057】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0058】
SBR以外に使用可能なエラストマー成分としては、イソプレン系ゴム(天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、これらの改質ゴム等)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴム等のゴム成分が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、BR、イソプレン系ゴムが好ましく、BRがより好ましい。
【0059】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)において、BRの含有量は、エラストマー成分100質量%中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、12質量%以上が更に好ましい。上限は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、20質量%以下が特に好ましく、15質量%以下が最も好ましい。上記範囲内にすることで、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下を抑制できる傾向がある。
【0060】
BRとしては、例えば、高シス含量のBR、低シス含量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
BRのシス含量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、上限は特に限定されない。上記範囲内であると、効果が良好に得られる傾向がある。
なお、BRのシス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0062】
BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよく、変性BRとしては、前述の変性剤で変性された変性BRが挙げられる。
【0063】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0064】
(ウレタン粒子)
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、ウレタン粒子(ウレタンビーズ)を含む。各種ウレタン粒子を添加することで、老化による硬度上昇が抑制され、長期的に良好なウェットグリップ性能等のタイヤ物性を付与できる。
【0065】
ウレタン粒子の含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上、最も好ましくは10質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内にすることで、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下を抑制できる傾向がある。なお、ウレタン粒子の含有量は、ウレタン粒子が後述の液体可塑剤を内包するウレタン粒子等、ウレタン樹脂以外の材料を含むものの場合、該材料を含むウレタン粒子全体の含有量である。
【0066】
ウレタン粒子の平均粒子径は、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下の抑制の観点から、500μm以下であることが好適である。該平均粒子径の上限は、45μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、35μm以下が更に好ましく、20μm以下が特に好ましく、15μm以下が最も好ましい。下限は、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましく、6μm以上が特に好ましい。
なお、平均粒子径は、粒度分布において積算(累積)百分率で表される積算値が50%となる粒径の値をいう。
【0067】
ウレタン粒子の構造は特に限定されず、中実構造(中身が詰まったウレタン樹脂ビーズ)、中空構造(内部に空洞を有する中空ウレタン樹脂ビーズ)、コア材料を内包するカプセル構造(軟化剤等の材料を内包するウレタン樹脂ビーズ)、等が挙げられる。ウレタン粒子は、粒子表面に表面修飾を施した粒子(粒子表面を変性剤で変性してエラストマーとの親和性を向上したウレタン粒子等)でもよい。また、ウレタン粒子は、顔料等で着色されたものでもよい。
【0068】
コア材料を内包するカプセル構造のウレタン粒子(材料を内包するウレタン粒子)は、ウレタン樹脂からなるシェル中に、コアとしてのコア材料を内包(封入)したものである。コア材料を内包するカプセル構造のウレタン粒子を用いた場合、経年でカプセルが壊れ、コア材料が放出されることで、エラストマー組成物の物性が向上し、M100等の変化を抑制できる。
【0069】
内包するコア材料としては、熱老化後において、ウェットグリップ性能等の性能を向上する作用機能を有する性能向上剤を用いることが望ましい。性能向上剤としては、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下の抑制の観点から、液体可塑剤が好ましい。シェル(ウレタン樹脂)に対する性能向上剤の使用量は、性能向上作用等の観点から適宜選択すれば良い。
【0070】
液体可塑剤は、25℃で液体状態の可塑剤であれば特に限定されず、オイル、液状ジエン系重合体、液状樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
オイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油脂、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。
【0072】
液状ジエン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×10~2.0×10であることが好ましく、3.0×10~1.5×10であることがより好ましい。
なお、本明細書において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0073】
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。
【0074】
液状樹脂としては、特に制限されないが、例えば、液状の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。
【0075】
液状芳香族ビニル重合体としては、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂等が挙げられる。具体的には、スチレンの単独重合体、α-メチルスチレンの単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体などの液状樹脂が例示される。
【0076】
液状クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。ここで、クマロン、インデン以外に骨格に含まれていてもよいモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどの液状樹脂が挙げられる。
【0077】
液状インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む液状樹脂である。
【0078】
液状テルペン樹脂は、αピネン、βピネン、カンフェル、ジペンテンなどのテルペン化合物を重合して得られる樹脂や、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料として得られる樹脂であるテルペンフェノールに代表される液状テルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等)である。
【0079】
液状ロジン樹脂は、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表される液状ロジン系樹脂が挙げられる。
【0080】
ウレタン粒子としては、根上工業(株)製「アートパール」、大日精化工業株式会社「ダイミックビーズCM」;等の市販品を使用できる。
【0081】
(充填剤)
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、充填剤(補強性充填剤)を更に配合してもよい。
【0082】
充填剤としては、特に限定されないが、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられる。なかでも、エラストマー組成物の物性の観点から、シリカ、カーボンブラックが好ましい。
【0083】
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0084】
シリカの含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは75質量部以下である。上記範囲内にすることで、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下を抑制できる傾向がある。
【0085】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは120m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。また、シリカのNSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは220m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内にすることで、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下を抑制できる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0086】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0087】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましい。また、上記含有量は、12質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0089】
カーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が挙げられるが、特に限定されない。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0090】
カーボンブラックを含む場合、その含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。また、該カーボンブラックの含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下を抑制できる傾向がある。
【0091】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、40m/g以上が好ましく、60m/g以上がより好ましく、70m/g以上が更に好ましく、90m/g以上が特に好ましい。上限は、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、100m/g以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下を抑制できる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K 6217-2:2001に準拠して求められる。
【0092】
(液体可塑剤)
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、液体可塑剤を含んでもよい。液体可塑剤としては、例えば、前述のものが挙げられる。なかでも、オイルが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
液体可塑剤の含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは12質量部以上、特に好ましくは20質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、特に好ましくは35質量部以下である。上記範囲内にすることで、老化による硬度上昇及びウェットグリップ性能低下を抑制できる傾向がある。オイルの含有量も同様の範囲が望ましい。
なお、液体可塑剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイル(伸展油)の量は含まれるが、前述の液体可塑剤を内包するウレタン粒子中の液体可塑剤の量は含まれない。
【0094】
オイルの市販品としては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。液状ジエン系重合体、液状樹脂の市販品としては、例えば、CRAY VALLEY社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0095】
(固体樹脂)
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、固体樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)を含んでもよい。
【0096】
固体樹脂の含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましい。該含有量は、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。
【0097】
固体樹脂の軟化点は、20℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、28℃以上が更に好ましく、30℃以上が特に好ましい。また、上記軟化点は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。上記範囲内にすることで、良好な耐摩耗性等が得られる傾向がある。
なお、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0098】
固体樹脂としては、例えば、固体状のスチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、石油樹脂(ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂石油樹脂等)などが挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、東亞合成(株)等の製品を使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スチレン系樹脂及びテルペン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の固体樹脂が好ましい。
【0099】
固体状のスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いた固体状ポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
【0100】
上記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
【0101】
なかでも、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましい。なお、本明細書において、固体状のスチレン系樹脂は、前記スチレン系エラストマーを含まない概念であるとする。
【0102】
固体状のクマロンインデン樹脂としては、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれていてもよいモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどの固体樹脂等が挙げられる。
【0103】
固体状のテルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。
ポリテルペンは、テルペン化合物を重合して得られる樹脂及びそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0104】
固体状のポリテルペンとしては、上述したテルペン化合物を原料とするα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β-ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂等の固体樹脂も挙げられる。固体状のテルペンフェノールとしては、上記テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した固体樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した固体樹脂が挙げられ、具体的には、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びホルマリンを縮合させた固体樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。固体状の芳香族変性テルペン樹脂(固体レジン)としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる固体樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した固体樹脂が挙げられる。なお、芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体;クマロン、インデンなどが挙げられる。
【0105】
固体状のp-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂としては、p-t-ブチルフェノールとアセチレンとを縮合反応させて得られる固体樹脂が挙げられる。
【0106】
固体状のアクリル系樹脂としては特に限定されないが、不純物が少なく、分子量分布がシャープな樹脂が得られるという点から、無溶剤型アクリル系固体樹脂を好適に使用できる。
【0107】
無溶剤型アクリル樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。アクリル系樹脂は、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないことが好ましい。また、上記アクリル系樹脂は、連続重合により得られる組成分布や分子量分布が比較的狭いものが好ましい。
【0108】
アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。また、アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
【0109】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良い。また、アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していてよい。
【0110】
固体状の石油樹脂とは、石油化学工業で用いられるナフサ分解の副生油の一部(C5留分やC9留分など)の重合により生成した樹脂を指し、C5の鎖状オレフィン混合物をカチオン重合したC5系石油樹脂、ジシクロペンタジエン留分を熱重合したジシクロペンタジエン系石油樹脂、C9芳香族オレフィン類混合物をカチオン重合したC9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、C9留分に含有されるアルファメチルスチレンを抜き取り、純アルファメチルスチレンで製造したピュアモノマーレジンと呼ばれる石油樹脂、およびこれらを水素添加した樹脂などが挙げられる。なかでも、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂が好ましく、C5系石油樹脂、C5C9系石油樹脂がより好ましい。
【0111】
(他の成分)
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、ワックスを含んでもよい。ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0112】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0113】
ワックスを含有する場合、その含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0114】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、老化防止剤を含んでもよい。老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましい。
【0115】
老化防止剤を含有する場合、その含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0116】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、ステアリン酸を含有してもよい。ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0117】
ステアリン酸を含有する場合、その含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0118】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、酸化亜鉛を含有してもよい。酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0119】
酸化亜鉛を含有する場合、その含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0120】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、硫黄を含有することが好ましい。硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0122】
硫黄を含有する場合、その含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。
【0123】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、加硫促進剤を含有することが好ましい。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0124】
加硫促進剤を含有する場合、その含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.0質量部以下である。
【0125】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている他の配合剤(有機架橋剤等)を更に配合してもよい。これらの配合剤の含有量は、エラストマー成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0126】
前記エラストマー組成物全体におけるスチレン含有量(エラストマー組成物中の総スチレン量(g))と、ウレタン粒子含有量(エラストマー組成物中の総ウレタン粒子量(g))との配合比(総スチレン量/総ウレタン粒子量)は、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.9以上が更に好ましく、1.1以上が特に好ましく、1.2以上が最も好ましく、1.7以上がより最も好ましく、1.8以上が更に最も好ましい。上限は、5.0以下が好ましく、4.5以下がより好ましく、4.0以下が更に好ましく、3.4以下が特に好ましく、3.6以下が最も好ましい。上記範囲内にすることで、熱老化前後における硬度の上昇及びウェットグリップ性能の低下を抑制できる。
【0127】
前記エラストマー組成物全体におけるスチレン含有量(エラストマー組成物中の総スチレン量(g))と、シリカ含有量(エラストマー組成物中の総シリカ量(g))との配合比(総スチレン量/総シリカ量)は、0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.15以上が更に好ましく、0.20以上が特に好ましく、0.22以上が最も好ましい。上限は、3.00以下が好ましく、2.00以下がより好ましく、1.00以下が更に好ましく、0.50以下が特に好ましく、0.30以下が最も好ましい。上記範囲内にすることで、熱老化前後における硬度の上昇及びウェットグリップ性能の低下を抑制できる。
【0128】
前記エラストマー組成物全体におけるスチレン含有量(エラストマー組成物中の総スチレン量(g))と、固体樹脂含有量(エラストマー組成物中の総固体樹脂量(g))との配合比(総スチレン量/総固体樹脂量)は、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましく、1.8以上が特に好ましい。上限は、3.5以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましく、2.2以下が特に好ましい。上記範囲内にすることで、熱老化前後における硬度の上昇及びウェットグリップ性能の低下を抑制できる。
【0129】
前記トレッド(トレッドを構成する加硫後のエラストマー組成物)は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどの混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0130】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。
【0131】
本発明のタイヤは、上記エラストマー組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記エラストマー組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0132】
前記タイヤとしては、空気入りタイヤ、エアレス(ソリッド)タイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。また、オールシーズンタイヤ、サマータイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)等に使用できる。なかでも、乗用車用サマータイヤに好適に使用できる。
【実施例
【0133】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0134】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR1:下記製造例1
SBR2:SBR:日本ゼオン(株)製のNS616(非油展SBR、スチレン含有量21質量%、ビニル含量66mol%、Mw24万)
BR:JSR(株)製のBR730(シス含量95質量%)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のN339(NSA96m/g)
シリカ:エボニック社製のウルトラシルVN3(NSA175m/g)
シランカップリング剤:エボニック社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX-140
テルペン系樹脂:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX300N(軟化点30℃、ポリテルペン樹脂(β-ピネン樹脂))
スチレン系樹脂:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4401(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点85℃、Tg43℃)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
ウレタン粒子1:根上工業(株)製のアートパールC-400(ウレタンビーズ(中空構造)、平均粒子径15μm)
ウレタン粒子2:根上工業(株)製のアートパールC-800(ウレタンビーズ(中空構造)、平均粒子径6μm)
ウレタン粒子3:根上工業(株)製のアートパールJB-400(ウレタンビーズ(中空構造)、平均粒子径15μm)
硫黄:粉末硫黄(軽井沢硫黄(株)製)
加硫促進剤1:住友化学(株)製のソクシノールCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:住友化学(株)製のソクシノールD(N,N’-ジフェニルグアニジン)
【0135】
<末端変性剤の作製>
窒素雰囲気下、100mlメスフラスコに3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン)(アヅマックス(株)製)を23.6g入れ、更に無水ヘキサン(関東化学(株)製)を加え、全量を100mlにして作製した。
【0136】
<製造例1>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn-ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を540g、ブタジエンを1460g、テトラメチルエチレンジアミンを17mmol加え、40℃に昇温した。次に、ブチルリチウムを10.5mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に0.4mol/Lの四塩化ケイ素/ヘキサン溶液を3.5mL加え、30分撹拌を行った。次に、上記末端変性剤を30mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液に2,6-tert-ブチル-p-クレゾール(大内新興化学工業(株)製)0.2gを溶かしたメタノール(関東化学(株)製)2mLを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、SBR1を得た。得られたSBR1のスチレン含有量は28質量%であった。Mwは717,000であり、ビニル含量は60モル%であった。
【0137】
<実施例及び比較例>
各表に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製のバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で15分間加硫し、試験用タイヤ(新品、サイズ:195/65R15)を製造した。
【0138】
試験用タイヤについて、下記評価を行った。結果を各表に示す。なお、熱老化は以下のように実施した。表1、2、3、4の基準比較例は、それぞれ比較例1-1、2-1、3-1、4-1とした。
(熱老化)
JIS K6257:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-熱老化特性の求め方」に準じ、試験用タイヤ(新品)に80℃で1週間の熱老化を施した。
【0139】
<耐熱性>
(熱老化前のM100f、熱老化後のM100aの測定)
試験用タイヤ(新品タイヤ)を80℃のオーブンで7日間(1週間)熱劣化させたものを熱老化タイヤとした。新品タイヤのトレッドから採取した新品サンプル(加硫後のエラストマー組成物)、熱老化タイヤのトレッドから採取した熱老化サンプル(加硫後のエラストマー組成物)のM100について、それぞれJIS K6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠し、23℃、500mm/分で引張試験を行い、100%伸長時の応力(MPa)を測定した。
【0140】
(熱老化後のトレッド硬度)
試験用タイヤ(新品タイヤ)を80℃のオーブンで7日間(1週間)熱劣化させたものを熱老化タイヤとした。熱老化タイヤのトレッドから採取した熱老化サンプル(加硫後のエラストマー組成物)の硬度について、JIS K 6253に定められた硬度の測定法に準じて測定した。基準比較例の熱老化サンプルの硬度を100とし、各熱老化サンプルの硬度を指数化した。指数が小さいほど、熱老化による硬度上昇が小さく、耐熱性が良好であることを示す。
【0141】
<ウェットグリップ性能試験>
熱老化タイヤを装着した自動車について、湿潤路面において初速度100km/hからの制動距離を測定した。下記式により基準比較例の熱老化タイヤを装着した自動車の制動距離を100とし、各熱老化タイヤの制動距離を指数化した。指数が大きいほど、熱老化後のウェットグリップ性能が良好で、長期間の走行後におけるウェットグリップ性能が優れていることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=(基準比較例の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
【表3】
【0145】
【表4】
【0146】
各表から、スチレン系エラストマー及びウレタン粒子を含むエラストマー組成物で構成されたトレッドを有し、かつ該トレッドが前記式(1)を満たすタイヤの実施例は、熱老化前後におけるトレッド硬度の上昇が抑制され、熱老化後のびウェットグリップ性能が良好であった。従って、長期間走行後においても、ウェットグリップ性能等のタイヤ物性が良好に維持できることが明らかとなった。