(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】光接続デバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 6/26 20060101AFI20240903BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240903BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G02B6/26
G02B6/02 461
G02B6/036
G02B6/02 411
(21)【出願番号】P 2021562624
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044329
(87)【国際公開番号】W WO2021112016
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2019219055
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】荒生 侑季
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中西 哲也
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-016472(JP,A)
【文献】特開2016-153863(JP,A)
【文献】特表2013-522677(JP,A)
【文献】特表2012-524302(JP,A)
【文献】国際公開第2018/227008(WO,A1)
【文献】特開2017-146354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0139587(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02 - 6/036
G02B 6/10
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/42 - 6/44
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチコアファイバに含まれ、かつ、8.6μm以上9.2μm以下のモードフィールド径をそれぞれが有する複数のコアのそれぞれに対して、8.6μm以上9.2μm以下のモードフィールド径を有する単一コアファイバとの光学的接続を可能にするための構造を備えた光接続デバイスであって、
前記マルチコアファイバの前記複数のコアに一対一に対応するよう設けられ、それぞれが、純シリカを基準とした第1比屈折率差Δ1(%)を有する第1コアと、前記第1コアの外周を取り囲むとともに前記第1比屈折率差Δ1よりも低い第2比屈折率差Δ2(%)を有する第2コアと、前記第2コアの外周を取り囲むとともに前記第2比屈折率差Δ2よりも低い第3比屈折率差Δ3(%)を有するクラッドと、を含み、第1端面と前記第1端面とは反対側の第2端面とを有する複数の中継ファイバと、
前記第1端面が突出している第3端面と、前記第2端面が配置された第4端面と、を有し、前記第3端面から前記第4端面に向かって伸びる前記複数の中継ファイバのそれぞれを一体的に保持するキャピラリーと、
を備え、
前記キャピラリーは、前記第3端面と前記第4端面との間に設けられ、前記第3端面の外径に対する前記第4端面の外径の比で規定される、0.2以下の外径比Rを有するテーパー部を含み、
前記複数の中継ファイバのそれぞれにおいて、
前記第4端面における前記第1コアの半径r1
b(μm)で規定される断面積と前記第1および前記第2比屈折率差間の差(Δ1-Δ2)との積((π・r1
b
2)×(Δ1-Δ2))で与えられる屈折率体積V1(%μm
2)と、
前記第4端面における前記第2コアの半径r2
b(μm)で規定される断面積と前記第2および前記第3比屈折率差間の差(Δ2-Δ3)との積((π・r2
b
2)×(Δ2-Δ3))で与えられる屈折率体積V2(%μm
2)と、が以下の不等式:
156%μm
2≦(V2-V1)/R≦177%μm
2
を満たす、
光接続デバイス。
【請求項2】
前記複数の中継ファイバのそれぞれにおいて、前記第1コアまたは前記第2コアは純シリカからなる、請求項1に記載の光接続デバイス。
【請求項3】
前記第3端面上で規定される、前記第1コアの半径に対する前記第2コアの半径の比は、5.0よりも大きい、請求項1または2に記載の光接続デバイス。
【請求項4】
前記キャピラリーは、
前記第3端面を含んだ状態で前記第3端面と前記テーパー部との間に設けられた第1定常部であって、前記第3端面から前記第4端面に向かう基準方向に交差する断面の最大外径が前記第3端面から前記第4端面に向かって同一径に維持されている第1定常部と、
前記第4端面を含んだ状態で前記第4端面と前記テーパー部との間に設けられた第2定常部であって、前記基準方向に交差する断面の最小外径が前記第3端面から前記第4端面に向かって同一径に維持されている第2定常部と、
を有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光接続デバイス。
【請求項5】
前記第1定常部、前記テーパー部、および前記第2定常部の各長さが前記基準方向に沿って規定されるとき、前記テーパー部の長さと前記第2定常部の長さの和に対する前記第1定常部の長さの比は、0.5以上30以下の範囲に収まる、請求項4に記載の光接続デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光接続デバイスに関するものである。
本願は、2019年12月3日に出願された日本特許出願第2019-219055号による優先権を主張するものであり、その内容に依拠すると共に、その全体を参照して本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
マルチコアファイバ(以下、「MCF:Multi-Core Fiber」と記す)に含まれる複数のコアと複数の単一コアファイバ(以下、「SCF:Single-Core Fiber」と記す)とを、それぞれ一対一に対応付けた状態で光学的に接続する光接続デバイスの一例として、FIFO(Fan-in/Fan-out)デバイスが知られている。通常、複数のSCFを束ねた場合、コアピッチの違いから、MCFの複数のコアと複数のSCFを直接接続することは困難である。そこで、MCFの複数のコアに一対一に対応付けられた複数のSCFを光学的に接続する際、FIFOデバイスを利用してピッチ変換が行われる。なお、特許文献1および特許文献2には、上述のFIFOデバイスとして、溶融延伸型のFIFOデバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-16472号公報
【文献】特開2015-1673号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一実施形態に係る光接続デバイスは、MCFに含まれる複数のコアのそれぞれに対してSCFとの光学的接続を可能にするための構造を備えたFIFOデバイスを含む。当該FIFOデバイスを介して光学的に接続されるべきMCFの各コアのMFDは、8.6μm以上9.2μm以下の範囲に収まり、また、SCFのMFDも、8.6μm以上9.2μm以下の範囲に収まる。上述の課題を解決するため、当該FIFOデバイスは、複数の中継ファイバと、キャピラリーと、を備える。複数の中継ファイバは、MCFの複数のコアに一対一に対応するよう設けられている。また、各中継ファイバは、第1コアと、該第1コアの外周を取り囲むように設けられた第2コアと、該第2コアの外周を取り囲むよう設けられたクラッドと、を含み、第1端面と第1端面とは反対側の第2端面とを有する。第1コアは比屈折率差Δ1(%)を有し、第2コアは比屈折率差Δ1よりも低い比屈折率差Δ2(%)を有し、クラッドは比屈折率差Δ2よりも低い比屈折率差Δ3(%)を有する。キャピラリーは、互いに対向するよう配置された第3端面(SCF側端面)と、第4端面(MCF側端面)と、を有し、該第3端面から該第4端面に向かって伸びる複数の中継ファイバのそれぞれを一体的に保持している。第3端面からは、複数の中継ファイバの第1端面を含む先端部が突出している。第4端面は、MCFの端面と対面する面であって、複数の中継ファイバの第2端面が配置されている(第4端面と複数の中継ファイバの他方の端面が一致している)。また、キャピラリーは、第3端面と第4端面との間に設けられたテーパー部を含む。テーパー部は、第3端面の外径ODMAXに対する第4端面の外径ODMINの比:ODMIN/ODMAXで規定される0.2以下の外径比Rを有する。複数の中継ファイバのそれぞれは、式:(V2-V1)/Rで規定される値が156%μm2以上177%μm2以下の範囲に収まるように構成されている。ここで、V1(%μm2)は、第4端面における第1コアの半径r1b(μm)で規定される断面積と、第1および第2比屈折率差間の差(Δ1-Δ2)と、の積((π・r1b
2)×(Δ1-Δ2))で与えられる屈折率体積(profile volume)であり、V2(%μm2)は、第4端面における第2コアの半径r2b(μm)で規定される断面積と、第2および第3比屈折率差間の差(Δ2-Δ3)と、の積((π・r2b
2)×(Δ2-Δ3))で与えられる屈折率体積である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】は、本開示の一実施形態に係る光接続デバイスの一例として、溶融延伸型のFIFOデバイスの製造工程の例を説明するための図である。
【
図2】は、
図1の製造工程を経て得られたFIFOデバイスの構成を示す図である。
【
図3】は、
図2に例示されたFIFOデバイスの各部における中継ファイバの断面構造および屈折率プロファイルである。
【
図4】は、
図2に例示されたFIFOデバイスの各部におけるコアピッチの変化を説明するための概念図である。
【
図5】は、FIFOデバイスとMCFとの間における電界強度分布の重なり積分と接続損失の関係を説明するための概念図である。
【
図6】は、8個のFIFOサンプル(サンプル1からサンプル8)のそれぞれについて、MCF-SCF間の接続損失の測定系を構成するMCF、SCF、および当該FIFOサンプルの各構造パラメータを示す図表である。
【
図7A】は、
図6に示された構造パラメータを有する8個のFIFOサンプルのうちサンプル1からサンプル4の接続損失の計算結果をプロットしたグラフである。
【
図7B】は、
図6に示された構造パラメータを有する8個のFIFOサンプルのうちサンプル5からサンプル8の接続損失の計算結果をプロットしたグラフである。
【
図8】は、
図6に示された構造パラメータを有する8個のFIFOサンプルのそれぞれの最適範囲を示す図表である。
【
図9】は、本開示の一実施形態に係るFIFOサンプルと比較例に係るFIFOサンプルのそれぞれについて、SCF側端面における屈折率プロファイルの例である。
【
図10A】は、本開示の一実施形態に係るFIFOサンプルと比較例に係るFIFOサンプルのそれぞれについて、伝送距離に対するMFDの変化を示すグラフである。
【
図10B】は、本開示の一実施形態に係るFIFOサンプルと比較例に係るFIFOサンプルのそれぞれについて、各伝送距離でのMCFとの間における電界強度分布の重なり積分による損失α(dB)の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[発明が解決しようとする課題]
発明者らは、上述の従来技術について検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、溶融延伸型のFIFOデバイスの製造では、接続されるべきMCFのコア数と同数の中継ファイバと、該MCFのコア数と同数の貫通孔が設けられたキャピラリーが用意される。溶融前において、キャピラリーの両端面(SCFに対面する面を「SCF側端面」と記すとともにMCFに対面する面を「MCF側端面」と記す)の各サイズ(面積または最大径)は、MCFの端面のサイズ(面積または最大径)よりも大きい。そこで、貫通孔に中継ファイバがそれぞれ挿入された状態でキャピラリーが、MCF側端面のコアピッチがMCFの端面のコアピッチと略一致する程度まで加熱されながら延伸される。この延伸によりキャピラリーにテーパー部が形成され、複数のSCF側からMCF側に向かってコアピッチが縮小される。
【0007】
上述のように溶融延伸型のFIFOデバイスでは、キャピラリーだけでなく該キャピラリーに一体化された複数の中継ファイバも加熱されながら延伸される。そのため、各中継ファイバの屈折率プロファイルおよび電界強度分布は、該キャピラリーのSCF側端面とMCF側端面との間で大きく変化する。なお、FIFOデバイスを介して光学的に接続された複数のSCFとMCFとの間の接続損失(FIFOデバイスの挿入損失)は、主に、当該光接続デバイスに含まれる複数の中継ファイバのそれぞれにおける伝送損失と、該複数の中継ファイバとMCFの複数のコアとの間で生じる結合損失と、の和で与えられる。
【0008】
従来のFIFOデバイスでは、伝送損失と比較して、接続損失への影響が大きい結合損失を低減させるため、キャピラリーのMCF側端面における各中継ファイバのモードフィールド径(以下、「MFD:Mode Field Diameter」と記す)とMCF側の対応するコアのMFDとが略一致するように、各中継ファイバの屈折率プロファイルが調整されていた。しかしながら、上述の従来技術では、結合損失の増加要因となる各中継ファイバとMCF側の対応するコアとの間の電界強度分布の不整合については何ら考慮されておらず、接続損失を十分に低減することは困難であった。
【0009】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、1またはそれ以上のSCFとMCFの間での接続損失を効果的に低減するための構造を備えた光接続デバイスを提供することを目的としている。
【0010】
[発明の効果]
本開示に係る光接続デバイスによれば、1またはそれ以上のSCFとMCFとの間の接続損失が効果的に低減され得る。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
FIFOデバイスの一部を構成する各中継ファイバは、第1コアと、該第1コアの屈折率よりも低い屈折率を有する第2コアと、該第2コアの屈折率よりも低い屈折率を有するクラッドとで構成された二重コア構造を有する。溶融延伸型のFIFOでは、MCF側端面におけるコアピッチをMCFの端面におけるコアピッチに一致させるため、SCF側端面の面積よりもMCF側端面の面積が小さくなっている(テーパー部が形成される)。このような構造上の特徴から、SCF側端面からMCF側端面に向かって各中継ファイバの第1コアの外径は小さくなっている。各中継ファイバ内を伝搬する光の閉じ込めも、SCF側端面に近い区間では第1コアが支配的に機能する(第1コアが光導波領域として機能する)。一方で、MCF側端面に近い区間では第1コアの外径自体が小さくなっているため、次第に第2コアによる光閉じ込めが支配的になる(第2コアが実質的に導波領域として機能する)。ただし、SCF側端面における第1コアの半径がある値A以上であると、MCF側端面においても第1コアが光閉じ込めに寄与し得るため、
図5の上段に示されたように、たとえMCF側端面における各中継ファイバのMFDがMCFの各コアのMFDと一致していたとしても、第1コアの光閉じ込めの影響を受けて電界強度分布の重なり積分が小さくなる。つまり、
図5の上段における斜線部分の面積が大きくなることにより、結果的に、FIFOデバイス挿入に起因した結合損失は大きくなる。
【0012】
本開示の実施形態では、FIFOデバイスのMCF側端面における第1コアの光閉じ込めの影響を低減させるため、SCF側端面における第1コアの半径と、SCF端面に対するMCF端面の外径比が調整される。さらに、MCF側端面において第2コアによる光閉じ込めが支配的となるように、該第2コアの半径と中継ファイバの屈折率プロファイルが調整される。また、本実施形態では、MFDの任意の制御を可能な状態で設計される。この場合、テーパー部付近においてMFDが変化することにより中継ファイバのMFDが部分的に増加することになるが、本開示の実施形態では、FIFOデバイスの外径比を小さく調整することで、MCF側端面に近い区間においてMFDを所望の径に戻す。
【0013】
以下、本開示の実施形態の内容をそれぞれ個別に列挙して説明する。
【0014】
(1) 本開示の一実施形態に係る光接続デバイスは、MCF(マルチコアファイバ)に含まれる複数のコアのそれぞれに対してSCF(単一コアファイバ)との光学的接続を可能にするための構造を備えたFIFOデバイスを含む。具体的に、当該FIFOデバイスは、その一態様として、複数の中継ファイバと、キャピラリーと、を備える。複数の中継ファイバは、MCFの複数のコアに一対一に対応するよう設けられている。また、各中継ファイバは、第1コアと、該第1コアの外周を取り囲むように設けられた第2コアと、該第2コアの外周を取り囲むよう設けられたクラッドと、を有する。第1コアは比屈折率差(第1比屈折率差)Δ1(%)を有し、第2コアは比屈折率差Δ1よりも低い比屈折率差(第2比屈折率差)Δ2(%)を有し、クラッドは比屈折率差Δ2よりも低い比屈折率差(第3比屈折率差)Δ3(%)を有する。なお、第1コア、第2コア、およびクラッドの比屈折率差Δ1、Δ2、Δ3は、いずれも純シリカ(SiO2)を基準として規定された、波長589nmにおける比屈折率差である。キャピラリーは、互いに対向するよう配置された第3端面(SCF側端面)と、第4端面(MCF側端面)と、を有し、該第3端面から該第4端面に向かって伸びる複数の中継ファイバのそれぞれを一体的に保持している。第3端面からは、複数の中継ファイバの第1端面を含む先端部が突出している。第4端面は、MCFの端面に対面する面であって、複数の中継ファイバの第2端面が配置されている(第4端面と複数の中継ファイバの第2端面が一致している)。キャピラリーは、第3端面と第4端面との間に設けられたテーパー部を含む。また、当該FIFOデバイスは、以下の条件1から条件3を満たす。
【0015】
条件1は、「テーパー部が、第3端面の外径ODMAXに対する第4端面の外径ODMINの比:ODMIN/ODMAXで規定される0.2以下の外径比Rを有する」ことで規定される。条件2は、「当該FIFOデバイスを介して光学的に接続されるべきSCFおよびMCFの各MFDは、8.6μm以上9.2μm以下の範囲である」ことで規定される。条件3は、「複数の中継ファイバのそれぞれが、以下の式(1):
(V2-V1)/R …(1)
で規定される値が156%μm2以上177%μm2以下の範囲に収まるように構成されている」ことで規定される。ここで、
V1:第4端面における第1コアの半径r1b(μm)で規定される断面積と、第1および第2比屈折率差間の差(Δ1-Δ2)と、の積((π・r1b
2)×(Δ1-Δ2))で与えられる屈折率体積(%μm2)
V2:第4端面における第2コアの半径r2b(μm)で規定される断面積と、第2および第3比屈折率差間の差(Δ2-Δ3)と、の積((π・r2b
2)×(Δ2-Δ3))で与えられる屈折率体積(%μm2)
である。
【0016】
(2) 本開示の一態様として、複数の中継ファイバのそれぞれにおいて、第1コアまたは第2コアは純シリカからなるのが好ましい。光伝搬に寄与する部分にGe、Fなどの屈折率調整剤を含まない純シリカが適用されることにより、1つのキャピラリーで保持される複数の中継ファイバ間において、屈折率プロファイルの半径方向に沿った形状のバラツキを低減することが可能になる(屈折率プロファイルの形状安定化)。
【0017】
(3) 本開示の一態様として、当該FIFOデバイスは以下の条件4を満たすのが好ましい。条件4は、「第3端面上で規定される、第1コアの半径r1aに対する第2コアの半径r2aの比:r2a/r1aが5.0よりも大きい」ことで規定される。このように、第2コアに対して第1コアを小さくすることで、MCF側端面において第1コアには光が実質ガイドされなくなる。それにより、MCFとFIFOの電界強度分布の重なり積分を大きくして、接続損失を下げることが可能になる。
【0018】
(4) 本開示の一態様として、キャピラリーは、上記テーパー部の他、第1定常部と、第2定常部と、を含むのが好ましい。第1定常部は、第3端面を含んだ状態で該第3端面とテーパー部との間に設けられている。第2定常部は、第4端面を含んだ状態で該第4端面とテーパー部との間に設けられている。第1定常部は、第3端面から第4端面へ向かう基準方向に交差する断面の最小外径が第3端面から第4端面に向かって同一径に維持されている。第2定常部は、第3端面から第4端面へ向かう基準方向に交差する断面の最小外径が第3端面から第4端面に向かって同一径に維持されている。
【0019】
(5) 本開示の一態様として、基準方向に沿って規定される第1定常部の長さをLwとし、基準方向に沿って規定されるテーパー部の長さをLtとし、基準方向に沿った前記第2定常部の長さをLnとするとき、当該光接続デバイスは、以下の条件5を満たすのが好ましい。条件5は、「テーパー部の長さLtと第2定常部の長さLnとの和:Lt+Lnに対する第1定常部の長さLwの比であって、以下の式(2):
Lw/(Lt+Ln) …(2)
で規定される比は、0.5以上30以下の範囲に収まる」ことで規定される。
【0020】
以上、この[本開示の実施形態の説明]の欄に列挙された各態様は、残りの全ての態様のそれぞれに対して、または、これら残りの態様の全ての組み合わせに対して適用可能である。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係る光接続デバイスの具体例を、以下に添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、これら例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、また、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図されている。また、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本開示の一実施形態に係る光接続デバイスの一例として、溶融延伸型のFIFOデバイスの製造工程の例を説明するための図である。
図2は、
図1の製造工程を経て得られたFIFOデバイスの構成を示す図である。また、
図3は、
図2に例示されたFIFOデバイスの各部における中継ファイバの断面構造および屈折率プロファイルである。
【0023】
まず、溶融延伸型のFIFOデバイス(一実施形態に係る光接続デバイス)を得るため、
図1に示されたステップS1では、接続されるべきMCF300に含まれるコア301と同数の貫通孔151を有するキャピラリー150Aと、該貫通孔151と同数の中継ファイバ200が用意される。
【0024】
中継ファイバ200は、光軸AXに沿って伸びた裸ファイバ210と、該裸ファイバ210の外周に設けられた樹脂被覆220により構成されている。ただし、キャピラリー150Aの貫通孔151に挿入される部分(裸ファイバ210)は樹脂被覆220が除去されている。キャピラリー150Aは、貫通孔151の両側の開口が位置するSCF側端面150aおよびMCF側端面150bを有し、MCF側端面150b上における貫通孔151の配置は、接続されるべきMCF300のコア301の配置に対応している。
【0025】
次に、
図1に示されたステップS2では、中継ファイバ200のうち樹脂被覆220が除去された部分(裸ファイバ210)が貫通孔151にそれぞれ挿入された状態でキャピラリー150Aを加熱することにより、一体化キャピラリー150Bが得られる。一体化後、一体化キャピラリー150BのSCF側端面150aからは樹脂被覆220に覆われた中継ファイバ200の第1端部が突出する一方、MCF側端面150bからは中継ファイバ200の第1端部とは反対側の第2端部がそれぞれ突出した状態になっている。
【0026】
図1に示されたステップS3では、上述のステップS2で得られた一体化キャピラリー150Bの中間部を加熱しながら延伸される。この延伸作業後、一体化キャピラリー150BのMCF側端面150bの端部を含む先端が切断され、テーパー部120が設けられたFIFOデバイス100が得られる。
【0027】
延伸後のキャピラリー(実質的にはFIFOデバイス100の本体)は、一体化キャピラリー150BのSCF側端面150aおよびMCF側端面150bにそれぞれ相当するSCF側端面100aおよびMCF側端面100bを有する。SCF側端面100aからは、中継ファイバ200の樹脂被覆220で覆われた部分が突出している。MCF側端面100bは中継ファイバ200それぞれの切断された端面と一致している。また、当該FIFOデバイス100は、上述のテーパー部120の他、SCF側端面100aとテーパー部120との間に設けられた第1定常部110と、MCF側端面100bとテーパー部120との間に設けられた第2定常部130と、を更に有する。第1定常部110および第2定常部130の双方とも、当該FIFOデバイス100の長手方向(SCF側端面100aからMCF側端面100bへ向かう基準方向)に沿って実質的に断面外径(該長手方向に交差する断面の外径)が一定に維持されている部分であり、典型的には、第1定常部の外径変動は中心値に対して5%以下、第2定常部の外径変動は中心値に対して10%以下である。テーパー部120が設けられたFIFOデバイス100において、SCF側端面100aの最大外径ODMAXはMCF側端面100bの最大外径ODMINよりも大きくなっている。
【0028】
以上のように製造されたFIFOデバイス100は、
図2に示されたように、複数のSCF250とMCF300のコア301とを、一対一に対応させた状態で光学的に接続する。具体的には、SCF側端面100aから露出している中継ファイバ200の第1端部には、SCF250の一方の端面がそれぞれ融着接続またはコネクタ化された状態で接続される。なお、SCF250それぞれは、光軸AXに沿って伸びたコア261と該コア261の外周に設けられたクラッド262とで構成された裸ファイバ260と、該裸ファイバ260の外周に設けられた樹脂被覆270と、を備える。一方、MCF300は、複数のコア301と該複数のコア301を取り囲む共通クラッド302とで構成された裸ファイバ310と、該裸ファイバ310の外周に設けられた樹脂被覆320と、を備える。MCF側端面100bは、MCF300の端面300aと融着接続されるか、コネクタ化またはファイバアレイ化された状態で接続される。
【0029】
また、FIFOデバイス100において、第1定常部110は長さLwを有し、テーパー部120は長さLtを有し、第2定常部130は長さLnを有する。このとき、当該FIFOデバイス100は、製造のし易さ、また、実装のし易さを考慮して、上記条件5を満たすように設計される。すなわち、テーパー部120の長さLtと第2定常部130の長さLnとの和に対する第1定常部110の長さLwの比であって、上記式(2)で規定される比は、0.5以上30以下の範囲に収まる。加えて、FIFOデバイス100とMCF300との結合損失を効果的に抑制するため、当該FIFOデバイス100は、上記条件1を満たすよう設計される。すなわち、SCF側端面100aの最大外径ODMAXに対するMCF側端面100bの最大外径ODMINの比:ODMIN/ODMAXで規定される外径比Rが0.2以下に設定される。
【0030】
FIFOデバイス100は、第1および第2定常部110、130の間にテーパー部120が設けられている。そのため、当該FIFOデバイス100の一部を構成する中継ファイバ200の断面構造は、
図3に示されたように、断面構造および屈折率プロファイルが異なっている。すなわち、中継ファイバ200に含まれる裸ファイバ210は、光軸AXを含むとともに比屈折率差Δ1を有する第1コア211と、第1コア211を取り囲むとともに比屈折率差Δ2を有する第2コア212と、第2コア212を取り囲むとともに比屈折率差Δ3を有するクラッド213と、を備える。第1コア211は、SCF側端面100aにおいて半径r1
aを有する一方、MCF側端面100bにおいて半径r1
bを有する。第2コア212は、SCF側端面100aにおいて半径r2
aを有する一方、MCF側端面100bにおいて半径r2
bを有する。
【0031】
MCF側端面100bにおいて、第1コア211の半径r1bおよび第2コア212の半径r2bは、上記条件3を満たす。具体的には、複数の中継ファイバ200のそれぞれにおいて、上記式(1):(V2-V1)/Rで規定される値は、156%μm2以上177%μm2以下の範囲に収まる。ここで、屈折率体積V1(%μm2)は、MCF側端面100bにおける第1コア211の半径r1b(μm)で規定される断面積と、比屈折率差Δ1から比屈折率差Δ2を引いて得られる第1の値(Δ1-Δ2)と、の積((π・r1b
2)×(Δ1-Δ2))で与えられる。屈折率体積V2(%μm2)は、MCF側端面100bにおける第2コアの半径r2b(μm)で規定される断面積と、比屈折率差Δ2から比屈折率差Δ3を引いて得られる第2の値(Δ2-Δ3)と、の積((π・r2b
2)×(Δ2-Δ3))で与えられる。なお、外径比Rが、SCF側端面100aに対するMCF側端面100bの外径比である。また、電界強度分布の任意の制御を可能にするため、第1コア211の外径2r1aと第2コア212の外径2r2aは、上記条件4を満たすよう設計される。すなわち、第1コア211の半径r1aに対する第2コア212の半径r2aの比:r2a/r1a(第1コア211と第2コア212の外形比と同義)は、5.0よりも大きい。このとき、SCF側端面100aおよびMCF側端面100bにおける各中継ファイバ200の屈折率プロファイルは、上記条件2を満たすよう設計される。すなわち、本開示の光接続デバイスは8.6μm以上9.2μm以下の範囲のMFDを有するSCFおよびMCFを想定している。なお、本明細書において、比屈折率差Δは、純シリカの屈折率をn0とし、各部の屈折率をnとするとき、以下の式(3):
(n-n0)/n0 …(3)
で与えられる。
【0032】
一方、MCF側端面100bでは、第1コア211の半径r1bは光をガイドできないほど小さくなる。そのため、MCF側端面100bにおける光閉じ込めの主体は、第2コア212となる。MCF側端面100bにおける各中継ファイバ200の屈折率プロファイルは、上記条件2を満たしているが、SCF側端面100aにおける第1コア211の半径r1aおよび第2コア212の半径r2aと比較して、MCF側端面100bにおける第1コア211の半径r1bおよび第2コア212の半径r2bが著しく縮小している。
【0033】
図4は、
図2に例示された光接続デバイスの各部におけるコアピッチの変化を説明するための概念図である。また、
図5は、光接続デバイスとMCFとの間における電界強度分布の重なり積分と接続損失の関係を説明するための概念図である。
【0034】
図4に示されたように、SCF側端面100aにおいて、伝搬光の光閉じ込めは、第1コア211による光閉じ込めが支配的になっている。このような光パワーを有する光が各中継ファイバ200の、第1定常部110に相当する区間を伝搬した後、テーパー部120に向かう。テーパー部120からMCF側端面100bへ向かう光は、中継ファイバ200のうち、第2定常部130に相当する区間を伝搬する。この区間において、各中継ファイバ200の屈折率プロファイルは半径方向に圧縮された形状を有しており、第2コア212による光閉じ込めが支配的になっている。
【0035】
なお、上述のように、SCF側端面100aにおける第1コア211の半径r1
aがある値A以上であると、MCF側端面100bにおいても第1コア211が光閉じ込めに寄与し得るため、
図5の上段に示されたように、たとえMCF側端面100bにおける各中継ファイバ200のMFDがMCF300の各コア301のMFDと一致していたとしても、第1コア211の光閉じ込めの影響を受けて電界強度分布の重なり積分が小さくなる。すなわち、各中継ファイバ200の電界強度分布100E
1とMCF300の各コア301の電界強度分布300Eで挟まれた斜線部分の面積が大きくなる。一方、本実施形態のFIFOデバイス100によれば、MCF側端面100bにおいて、第1コア211は光伝搬にほとんど寄与できない。そのため、
図5の下段に示されたように、各中継ファイバ200の電界強度分布100E
2とMCF300の各コア301の電界強度分布300Eで挟まれた斜線部分の面積は、上段の例と比較して有意に小さくなっている(接続損失の低下)。
【0036】
次に、本実施形態に係るFIFOデバイス100の構造条件について、複数サンプルを用意して検討する。
図6は、8個のFIFOサンプル(サンプル1からサンプル8)のそれぞれについて、MCF-SCF間の接続損失の測定系を構成するMCF、SCF、および当該FIFOサンプルの各構造パラメータを示す図表である。用意された8個のFIFOサンプルのうち、サンプル1、サンプル2、サンプル5、およびサンプル6のSCF側端面100aには、9.2μmのMFDを有するSCF250が配置され、サンプル3、サンプル4、サンプル7、およびサンプル8のSCF側端面100aには、8.6μmのMFDを有するSCF250が配置される。また、サンプル1からサンプル4のMCF側端面100bには、9.2μmのMFDを有するMCF300が配置され、サンプル5からサンプル8のMCF側端面100bには、8.6μmのMFDを有するMCF300が配置される。
【0037】
さらに、サンプル1からサンプル8のそれぞれの外径比Rは、0.16または2.0に設定されている。波長589nmにおける差Δ1-Δ2に関して、サンプル1からサンプル8のそれぞれに設定される範囲は、0.30%以上0.4%以下の範囲、または、0.35%以上0.45%以下の範囲である。サンプル1からサンプル8のそれぞれにおいて、SCF250と低損失に接続するため、中継ファイバ200それぞれの、SCF側端面100aにおける第1コア211の半径r1aは4.25±0.25μm(4.0μm以上4.5μm以下)である。また、サンプル1からサンプル8のそれぞれにおいて、中継ファイバ200それぞれの、MCF側端面100bにおける第1コア211の半径r1bは、0.68μmおよび0.85μmである。
【0038】
以上のような構造を有するFIFOサンプルのサンプル1からサンプル8について、MCF-SCF間の接続損失の計算結果が
図7Aおよび
図7Bに示されている。なお、
図7Aおよび
図7Bに示されたサンプル1からサンプル8の計算結果において、縦軸は差Δ2-Δ3を示し、横軸はMCF側端面100bにおける第2コア212の半径r2
bを示す。また、
図7Aおよび
図7Bの各計算結果において、G710は接続損失が0dBよりも大きく0.02dB以下となる範囲、G720は接続損失が0.02dBよりも大きく0.04dB以下となる範囲、G730は接続損失が0.04dBよりも大きく0.06dB以下となる範囲、G740は接続損失が0.06dBよりも大きく0.08dB以下となる範囲、G750は接続損失が0.08dBよりも大きく0.10dB以下となる範囲、G760は接続損失が0.10dBよりも大きく0.12dB以下となる範囲を、それぞれ示している。残りのラインも、0.02dB間隔で示されている。また、破線で囲まれた領域ARは、サンプル1からサンプル8の各測定結果の最適範囲を示している。
【0039】
図8に示された構造パラメータは、
図7Aおよび
図7Bに示されたラインのうち、ラインG710で示された、接続損失が0dBよりも大きく0.02dB以下となる範囲(最適範囲を示す領域AR)に収まるサンプルの構造パラメータである。すなわち、サンプル1からサンプル8のそれぞれに関して、接続損失を0dBよりも大きく0.02dB以下の範囲に収めるためには、波長589nmにおける差:Δ2-Δ3の最適範囲は、0.35%以上0.45%以下、または0.40%以上0.50%以下である必要がある。MCF側端面100bにおける第2コア212の半径r2
bの最適範囲は、4.75μm以上5.25μm以下、5.25μm以上5.75μm以下、4.50μm以上5.0μm以下、5.0μm以上5.50μm以下のいずかである必要がある。
図8中の「r2
a(μm)」は、上述の半径r2
bと
図6に示された各サンプルの外径比Rから算出された値である。屈折率体積V1(%μm
2)、屈折率体積V2(%μm
2)、および上記式(1):(V2-V1)/Rで規定される値も、上述の半径r2
bを用いて算出される(式(1)参照)。なお、
図8には、SCF側端面100aでの第1コア211の半径r1
aに対する第2コア212の半径r2
aの比:r2
a/r1
aも、サンプルごとに示されている。したがって、
図6の条件範囲および
図8の最適範囲の値を用いて算出される上記式(1):(V2-V1)/Rで規定される値の共通範囲は、156%μm
2以上177%μm
2以下である。
【0040】
次に、FIFOデバイスの内部を伝搬する光のMFDおよび各伝送距離での電界分布とMCF300の電界分布の重ね合わせ積分により算出される損失(以下、損失α(dB)と記す)の変化について、種々のサンプルを利用して検証する。なお、
図9は、本開示の一実施形態に係るFIFOサンプルと比較例に係るFIFOサンプルのそれぞれについて、SCF側端面100aにおける屈折率プロファイルの例である。
図10Aは、本開示の一実施形態に係るFIFOサンプルと比較例に係るFIFOサンプルのそれぞれについて、伝送距離に対するMFDの変化を示すグラフである。また、
図10Bは、本開示の一実施形態に係るFIFOサンプルと比較例に係るFIFOサンプルのそれぞれについて、各伝送距離での電界分布とMCF300の電界分布の重ね合わせ積分により算出される損失(損失α)の変化を示すグラフである。また、この検証では、波長1310nmにおいて9.2μmのMFDを有するSCF250と、波長1310nmにおいて8.6μmのMFDを有するMCF300のコア301を光学的に接続する場合について行うものとする。
【0041】
図9において、G910は比較例1に係るFIFOサンプルの屈折率プロファイルを示し、G920は比較例2に係るFIFOサンプルの屈折率プロファイルを示し、G930は本開示の一実施形態に係るFIFOサンプル(以下、「本実施形態のFIFOサンプル」と記す)の屈折率プロファイルを示す。比較例1、比較例2、および本実施形態のいずれのFIFOサンプルとも、SCF側端面における第1コアの半径r1
aは、4.28μmである。また、比較例1のFIFOサンプルにおいて、SCF側端面上において規定される第1コアの外径2r1
aに対する第2コアの外径2r2
aの比:r2
a/r1
aが3以上5以下の範囲に設定されている。比較例2および本実施形態のFIFOサンプルでは、いずれも比:r2
a/r1
aが5を超えており、MFDの任意の制御が可能な状態で設計されている。ただし、比較例1および比較例2のFIFOサンプルは、いずれも外径比Rが1/3.4、すなわち0.294に設定されているのに対し、本実施形態のFIFOサンプルでは、外径比Rが1/6.4、すなわち0.156に設定されている。すなわち、比較例1および比較例2のFIFOサンプルは、いずれも外径比Rが0.2よりも大きく、本実施形態のFIFOサンプルでは、外径比Rが0.2以下に設定されている。なお、用意された本実施形態のFIFOサンプル、比較例1のFIFOサンプル、および比較例2のFIFOサンプルのいずれも、差:Δ1-Δ2の値および差:Δ2-Δ3の値は同程度である。これらFIFOサンプル間では、上述の外径比Rの他、第2コア212の半径が異なっている。
【0042】
上述のような構造を有する光学特性を
図10Aおよび
図10Bに示す。なお、
図10Aにおいて、グラフG1010Aは、比較例1に係るFIFOサンプルにおけるMFDの変化を示し、グラフG1020Aは、比較例2に係るFIFOサンプルにおけるMFDの変化を示し、グラフG1030Aは、本開示の一実施形態に係るFIFOサンプルにおけるMFDの変化を、それぞれ示す。また、
図10Bにおいて、グラフG1010Bは、比較例1に係るFIFOサンプルにおける損失αの変化を示し、グラフG1020Bは、比較例2に係るFIFOサンプルにおける損失αの変化を示し、グラフG1030Bは、本開示の一実施形態に係るFIFOサンプルにおける損失αの変化を、それぞれ示す。
【0043】
図10Aから分かるように、比較例1のFIFOサンプルの場合、テーパー部120(長さLtの区間)におけるMFDの変化は小さい。一方、比較例2および本実施形態の各FIFOサンプルの場合、テーパー部120においてMFDが大きく変化している。ただし、比較例2のFIFOサンプルの場合、テーパー部120からMCF側端面100bに向かう区間(第2定常部130)においてもMFDは拡大したままになっている。これに対し、本実施形態のFIFOサンプルの場合、テーパー部120で拡大したMFDは、テーパー部120からMCF側端面100bに向かう区間(第2定常部130)において元の径に縮小している。これは、外径比Rが上述のように1/6.4と小さく設定されているためである。すなわち、このような小さい外径比Rを有するFIFOサンプルにおいて、テーパー部120からMCF側端面100bに向かう区間(第2定常部130)における第1コア211は、光が導波できないほど小さくなる一方、第2コア212による光閉じ込めの影響が優位となる。このような状況の下、MFDが第2コア212に基づいた径に縮小したためである。
【0044】
図10Bは、用意された各FIFOデバイスの低損失化を確認するために、漏れ損失を考慮したFIFOサンプル側の電界強度分布とMCF300側の電界強度分布との重ね合わせ積分による結合損失(損失α)の計算結果を示している。この
図10Bから分かるように、比較例1に係るFIFOサンプルの場合、MFDの変化量抑制に伴い、当該FIFOサンプルとMCF300との電界強度分布の重ね合わせ積分の変化量も小さくなる。最終的な結合損失は約0.022dBである。比較例2に係るFIFOサンプルの場合、MFDがテーパー部120内で拡大するため、電界強度分布の重ね合わせ積分の変化量も大きくなる。結果、最終的な結合損失は約0.175dBとなっている。本実施形態に係るFIFOサンプルの場合、テーパー部120におけるMFDの変化量が大きいため、電界強度分布の重ね合わせ積分の変化量も一時的に大きくなる。しかしながら、テーパー部120からMCF側端面100bへ向かう区間(第2定常部130)では、MFDが任意径に縮小しているため、重ね合わせ積分に起因する結合損失(損失α)も抑制されている。最終的な結合損失は約0.007dBとなり、比較例1と比べても顕著な改善が確認できた。
【0045】
なお、テーパー部120におけるMFD(または実効断面積Aeff)の変化量が大きい場合には、シングルモードを維持できず、かつ結合損失を増加させてしまうことを懸念される。そのため、比較例1では、MFDの変化量抑制のため、SCF側端面100aにおける第1コア211の外径2r1aに対する第2コア212の外径2r2aの比:r2a/r1aが3以上5以下の範囲に設定されている。
【0046】
一方、本実施形態の場合、テーパー部120におけるMFD(または実効断面積Aeff)の変化量が大きい場合でも、外径比Rがある値より小さく設定されているため(条件1)、中心のコア径を縮小しMFDを任意径に戻すことができる。そのため、本実施形態に係るFIFOサンプルにおいて、第1コア211と第2コア212の外径比:r2a/r1aの範囲には実質的な制限はない(コアの外径比は5よりも大きい)。すなわち、本実施形態に係るFIFOサンプルによれば、MFDの任意の制御が可能な状態で、漏れ損失を抑制しながらテーパー部120を光が伝搬できるので、伝搬損失と結合損失の和で規定される挿入損失(接続損失)が効果的に抑制される。
【符号の説明】
【0047】
100…FIFOデバイス(光接続デバイス)、100a…SCF側端面(第3端面)、100b…MCF側端面(第4端面)、150A、150B…キャピラリー、200…中継ファイバ、211…第1コア、212…第2コア、213…クラッド、250…SCF(単一コアファイバ)、300…MCF(マルチコアファイバ)。