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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20240903BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240903BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01F27/29 G
H01F17/04 F
H01F27/29 125
H01F27/24 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022029445
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2023125389
(43)【公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【弁理士】
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】本田 裕行
(72)【発明者】
【氏名】石田 将之
(72)【発明者】
【氏名】相良 卓馬
(72)【発明者】
【氏名】中本 慎吾
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-076610(JP,A)
【文献】特開2016-152273(JP,A)
【文献】特開2017-183444(JP,A)
【文献】特開2018-060903(JP,A)
【文献】特開2018-148081(JP,A)
【文献】特開2015-035473(JP,A)
【文献】特開2020-31201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/04
H01F 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる巻芯部ならびに前記巻芯部の前記軸線方向での互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を有する、コアと、
前記第1鍔部に設けられた、金属板からなる第1端子電極と、
前記第2鍔部に設けられた、金属板からなる第2端子電極と、
前記第1端子電極および前記第2端子電極に接続され、かつ前記巻芯部に巻回された、少なくとも1本のワイヤと、
を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向けられる実装面と、前記実装面の反対側に向く天面と、前記実装面と前記天面とを連結するものであって、前記巻芯部側に向きかつ前記巻芯部の前記軸線方向での端部を位置させる内側端面と、前記内側端面の反対側に向く外側端面と、前記内側端面と前記外側端面とを連結しかつ互いに逆方向に向く第1側面および第2側面と、を有し、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の前記外側端面は、当該外側端面と前記第1側面とが交差する稜線に沿って延びる第1凸条および当該外側端面と前記第2側面とが交差する稜線に沿って延びる第2凸条を有し、
前記第1側面と前記第2側面とが対向する方向を幅方向としたとき、前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の前記実装面には、幅方向の中央部に盛り上がる隆起部が設けられ、前記隆起部の幅方向における両側に前記隆起部より低い肩部が形成され、
前記第1端子電極および前記第2端子電極は、それぞれ、前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の前記実装面における前記隆起部および前記肩部に沿って延びる部分を有し、
前記第1端子電極および前記第2端子電極の各々において、実装基板との接続部分が前記隆起部に沿って延びる部分によって与えられ、前記ワイヤとの接続部分が前記肩部に沿って延びる部分によって与えられ、
前記第1凸条および前記第2凸条の少なくとも一方は、前記第1端子電極および前記第2端子電極の各々における前記肩部に沿って延びる部分に当接している、
コイル部品。
【請求項2】
前記第1端子電極および前記第2端子電極は、前記第1凸条および前記第2凸条の突出高さ以下の厚みを有する金属板からなり、それぞれ、前記外側端面における前記第1凸条および前記第2凸条が設けられていない領域に沿って配置されかつ接着剤を介して前記第1鍔部および前記第2鍔部にそれぞれ固着される固着部を有する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記接着剤に由来する接着剤層が、前記第1凸条および前記第2凸条の各々と前記固着部と間を埋めるように形成されている、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1凸条の前記第2側面側の端縁および前記第2凸条の前記第1側面側の端縁には、第1アール面が形成され、前記第1凸条の前記第1側面側の端縁および前記第2凸条の前記第2側面側の端縁には、第2アール面が形成され、
前記第1アール面を規定する曲率半径は、前記第2アール面を規定する曲率半径より小さい、
請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1側面と前記第2側面とが対向する方向を幅方向としたとき、前記外側端面における前記第1凸条および前記第2凸条が設けられていない領域の幅方向寸法は、前記巻芯部の幅方向寸法よりも大きい、請求項2ないし4のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項6】
前記軸線方向に測定した寸法において、前記巻芯部の寸法は、前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の寸法の3倍以上かつ4倍以下である、請求項1ないしのいずれかに記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1側面と前記第2側面とが対向する方向を幅方向としたとき、前記第1凸条の幅方向寸法および前記第2凸条の幅方向寸法の合計は、前記第1側面および前記第2側面間の距離の1/2以下である、請求項1ないしのいずれかに記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第1凸条の幅方向寸法および前記第2凸条の幅方向寸法の合計は、前記第1側面および前記第2側面間の距離の1/3以下である、請求項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記外側端面には、前記第1凸条と前記第2凸条との間に、少なくとも1つの第3凸条がさらに設けられている、請求項1ないしのいずれかに記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第1側面と前記第2側面とが対向する方向を幅方向としたとき、前記外側端面における前記第1凸条、前記第2凸条および前記第3凸条のいずれもが設けられていない領域の幅方向寸法は、前記巻芯部の幅方向寸法よりも大きい、請求項に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1側面と前記第2側面とが対向する方向を幅方向としたとき、前記第1凸条の幅方向寸法、前記第2凸条の幅方向寸法および前記第3凸条の幅方向寸法の合計は、前記第1側面および前記第2側面間の距離の1/2以下である、請求項または10に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第1凸条の幅方向寸法、前記第2凸条の幅方向寸法および前記第3凸条の幅方向寸法の合計は、前記第1側面および前記第2側面間の距離の1/3以下である、請求項11に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コアにワイヤを巻回した構造の巻線型のコイル部品に関するもので、特に、コアに備える鍔部の形状に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2009-16502号公報(特許文献1)には、コモンモードチョークコイルの製造方法が記載されている。コモンモードチョークコイルの製造に際して、コアに備える巻芯部にワイヤを巻回する工程が実施される。巻回工程では、コアを巻芯部の中心軸線まわりに回転させた状態で、ノズルからワイヤがトラバースされながら巻芯部に向かって供給される。これによって、ワイヤが巻芯部のまわりで螺旋状に巻回される。
【0003】
この巻回工程において、コアを上述のように回転させるため、コアは、回転駆動源に接続されたチャックによって保持される。チャックは、巻芯部の軸線方向での互いに逆の端部にそれぞれ設けられた2つの鍔部のうち、一方の鍔部をつかむように設計されている。
【0004】
より具体的には、鍔部は、通常、実装時において実装基板側に向けられる実装面と、実装面の反対側に向く天面と、実装面と天面とを連結するものであって、巻芯部側に向きかつ巻芯部の軸線方向での端部を位置させる内側端面と、内側端面の反対側に向く外側端面と、内側端面と外側端面とを連結しかつ互いに逆方向に向く第1側面および第2側面と、を有する。これに対して、チャックは、通常、一方の鍔部の外側端面に接する面と鍔部の第1側面および第2側面にそれぞれ接する面とを有している。
【0005】
チャックが鍔部をつかむ動作は、チャックが鍔部の外側端面に接した状態で、第1側面に接する面を与える部材と第2側面に接する面を与える部材とが互いに近づくことによって達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-16502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コイル部品の小型化に伴い、鍔部の寸法、より具体的には、鍔部の外側端面および内側端面間の寸法はより短くなる。その結果、鍔部の第1側面および第2側面とチャックとが接する面積が小さくなり、チャックによってコアを安定した姿勢で保持することが困難になり、コアの回転中心軸が巻芯部の中心軸線からずれて、コアを適正に回転できないことがある。
【0008】
また、コイル部品の大型化を招くことなく、巻芯部でのワイヤの可能な巻回数をより多くするため、巻芯部の軸線方向での寸法をより長くしながら、鍔部の厚みをより薄くすることが考えられるが、この場合には、上述の課題がより顕著になる。
【0009】
そこで、この発明の目的は、ワイヤの巻回工程において、チャックによってコアを安定した姿勢で保持することができる、コイル部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、軸線方向に延びる巻芯部ならびに巻芯部の軸線方向での互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を有する、コアと、第1鍔部に設けられた、金属板からなる第1端子電極と、第2鍔部に設けられた、金属板からなる第2端子電極と、第1端子電極および第2端子電極に接続され、かつ巻芯部に巻回された、少なくとも1本のワイヤと、を備える、コイル部品に向けられる。
【0011】
第1鍔部および第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向けられる実装面と、実装面の反対側に向く天面と、実装面と天面とを連結するものであって、巻芯部側に向きかつ巻芯部の軸線方向での端部を位置させる内側端面と、内側端面の反対側に向く外側端面と、内側端面と外側端面とを連結しかつ互いに逆方向に向く第1側面および第2側面と、を有する。
【0012】
この発明において、前述した技術的課題を解決するため、第1鍔部および第2鍔部の各々の外側端面は、当該外側端面と第1側面とが交差する稜線に沿って延びる第1凸条および当該外側端面と第2側面とが交差する稜線に沿って延びる第2凸条を有し、第1側面と第2側面とが対向する方向を幅方向としたとき、第1鍔部および第2鍔部の各々の実装面には、幅方向の中央部に盛り上がる隆起部が設けられ、隆起部の幅方向における両側に隆起部より低い肩部が形成され、第1端子電極および第2端子電極は、それぞれ、第1鍔部および第2鍔部の各々の実装面における隆起部および肩部に沿って延びる部分を有し、第1端子電極および第2端子電極の各々において、実装基板との接続部分が隆起部に沿って延びる部分によって与えられ、ワイヤとの接続部分が肩部に沿って延びる部分によって与えられ、第1凸条および第2凸条の少なくとも一方は、第1端子電極および第2端子電極の各々における肩部に沿って延びる部分に当接していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、コイル部品が小型化され、よってコアが小型化されたとしても、第1凸条および第2凸条の存在によって、チャックと鍔部との接触面積あるいは接触部分が分布する領域を比較的大きく確保することができるので、ワイヤの巻回工程においてコアを安定した姿勢で保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の第1の実施形態によるコイル部品1の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す斜視図である。
図2図1に示したコイル部品1の外観を、実装面7および8側から示す底面図である。
図3図1に示したコイル部品1の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す正面図である。
図4図1に示したコイル部品1の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す左側面図である。
図5図1に示したコイル部品1に備えるコア5の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す斜視図である。
図6図5に示したコア5の外観を、実装面7および8側から示す底面図である。
図7図5に示したコア5の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す正面図である。
図8図5に示したコア5の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す左側面図である。
図9図4に示した右側面図の一部を拡大して示す図である。
図10図9の線X-Xに沿う断面図である。
図11】この発明の第2の実施形態によるコイル部品41の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す斜視図である。
図12図11に示したコイル部品41に備えるコア42の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1ないし図10を参照して、この発明の第1の実施形態によるコイル部品1について説明する。
【0016】
コイル部品1は、軸線方向AXに延びる巻芯部2ならびに巻芯部2の軸線方向AXでの互いに逆の端部にそれぞれ設けられた第1鍔部3および第2鍔部4を有する、ドラム状のコア5を備えている。コア5は、たとえばフェライト、またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などから構成される。巻芯部2は、図示では横断面形状がほぼ四角形状であるが、その他、六角形状などの多角形状、円形状、楕円形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。
【0017】
第1鍔部3は、実装時において実装基板側に向けられる実装面7と、実装面7の反対側に向く天面9と、実装面7と天面9とを連結するものであって、巻芯部2側に向きかつ巻芯部2の軸線方向AXでの端部を位置させる内側端面11と、内側端面11の反対側に向く外側端面13と、内側端面11と外側端面13とを連結しかつ互いに逆方向に向く第1側面15および第2側面17と、を有している。
【0018】
同様に、第2鍔部4は、実装時において実装基板側に向けられる実装面8と、実装面8の反対側に向く天面10と、実装面8と天面10とを連結するものであって、巻芯部2側に向きかつ巻芯部2の軸線方向AXでの端部を位置させる内側端面12と、内側端面12の反対側に向く外側端面14と、内側端面12と外側端面14とを連結しかつ互いに逆方向に向く第1側面16および第2側面18と、を有している。
【0019】
コア5は、一例として、軸線方向AXでの寸法が3.5mm、第1側面15および16と第2側面17および18とが対向する方向である幅方向WDでの寸法が2.6mm、実装面7および8と天面9および10とが対向する方向である高さ方向HDでの寸法が1.4mmとされる。
【0020】
コイル部品1は、たとえば、コモンモードチョークコイルを構成するもので、コア5の巻芯部2に巻回される第1ワイヤ21および第2ワイヤ22を備えている。コモンモードチョークコイルでは、周知のように、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22が巻芯部2のまわりで同方向に巻回されている。図示の例では、巻芯部2のまわりで、第1ワイヤ21が巻芯部2に接するように巻回され、第2ワイヤ22が第1ワイヤ21の外周に接するように巻回されている。ワイヤ21および22は、たとえば、銅、銀または金などの良導電性金属からなる中心線材と、中心線材を覆うポリアミドイミド、ポリウレタンまたはポリエステルイミドのような電気絶縁性樹脂からなる絶縁被膜と、を備える。ワイヤ22および21としては、径20μm以上かつ60μm以下のものを用いることが好ましい。
【0021】
第1鍔部3には第1端子電極23が設けられ、第2鍔部4には第2端子電極24が設けられる。第1鍔部3には、2つの第1端子電極23が互いに離隔しかつ幅方向WDに並んで設けられ、第2鍔部4には、2つの第2端子電極24が互いに離隔しかつ幅方向WDに並んで設けられている。
【0022】
2つの第1端子電極23を互いに区別するため、一方の第1端子電極には参照符号「23A」を付し、他方の第1端子電極には参照符号「23B」を付し、また、2つの第2端子電極24を互いに区別する場合には、一方の第2端子電極には参照符号「24A」を付し、他方の第2端子電極には参照符号「24B」を付す。
【0023】
第1ワイヤ21の第1端部および第2端部は、それぞれ、第1端子電極23Aおよび第2端子電極24Bに熱圧着によって接続される。第2ワイヤ22の第1端部および第2端部は、それぞれ、第1端子電極23Bおよび第2端子電極24Aに熱圧着によって接続される。
【0024】
第1鍔部3の外側端面13には、当該外側端面13と第1側面15とが交差する稜線に沿って延びる第1凸条25および当該外側端面13と第2側面17とが交差する稜線に沿って延びる第2凸条26が設けられる。
【0025】
同様に、第2鍔部4の外側端面14には、当該外側端面14と第1側面16とが交差する稜線に沿って延びる第1凸条25および当該外側端面14と第2側面18とが交差する稜線に沿って延びる第2凸条26が設けられる。
【0026】
第1凸条25および第2凸条26は、一例として、幅方向寸法が0.2mm、突出高さが0.1mmとされる。
【0027】
この構成によれば、コイル部品1が小型化され、よってコア5が小型化されたとしても、第1凸条25および第2凸条26の存在によって、チャックと鍔部3および4との接触面積あるいは接触部分が分布する領域を比較的大きく確保することができるので、ワイヤ21および22の巻回工程においてコア5を安定した姿勢で保持することができる。
【0028】
前述した第1端子電極23および第2端子電極24は、第1凸条25および第2凸条26の突出高さ以下の厚みを有する金属板からなることが好ましい。端子電極23および24を構成する金属板としては、たとえば、素体が銅からなり、その外側に向く面にニッケルおよび錫の順にめっきを施したものが用いられる。
【0029】
第1端子電極23は、第1鍔部3の外側端面13における第1凸条25および第2凸条26が設けられていない領域に沿って配置されかつ接着剤27(図9および図10参照)を介して第1鍔部3に固着される固着部28を有する。同様に、第2端子電極24は、第2鍔部4の外側端面14における第1凸条25および第2凸条26が設けられていない領域に沿って配置されかつ接着剤27を介して第2鍔部4に固着される固着部28を有する。
【0030】
上記構成によって、第1端子電極23および第2端子電極24ならびに接着剤27はチャックを妨げることがない。このため、ワイヤ21および22の巻回工程においてコア5をチャックによって、安定した姿勢で保持することができる。
【0031】
上述した接着剤27は、図9および図10に示すように、接着剤層27aを形成し、当該接着剤層27aは第1凸条25および第2凸条26の各々と固着部28と間を埋めるように位置していることが好ましい。接着剤層27aの存在は、第1端子電極23および第2端子電極24の第1鍔部3および第2鍔部4への接合強度の向上に寄与する。
【0032】
接着剤27としては、たとえば熱硬化性のあるエポキシ樹脂が用いられる。接着剤27の熱衝撃耐性向上のため、シリカフィラーのような無機フィラーが接着剤27に添加されてもよい。接着剤27の塗布方法としては、ディスペンス法を採用することができる。
【0033】
図6によく示されているように、第1凸条25の第2側面17および18側の端縁および第2凸条26の第1側面15および16側の端縁には、2つの第1アール面R1が形成され、第1凸条25の第1側面15および16側の端縁および第2凸条26の第2側面17および18側の端縁には、第2アール面R2が形成される。そして、第1アール面R1を規定する曲率半径は、第2アール面R2を規定する曲率半径より小さくされることが好ましい。これにより、コア5の外周まで接着剤27が濡れ広がりにくくなり、接着剤27によって、コイル部品1の外形寸法が不所望にも大きくなることを防止または抑制することができる。
【0034】
また、図6によく示されているように、外側端面13および14における第1凸条25および第2凸条26が設けられていない領域の幅方向WDの寸法は、巻芯部2の幅方向WDの寸法よりも大きいことが好ましい。外側端面13および14における第1凸条25および第2凸条26が設けられていない領域の幅方向WDの寸法はより大きいほど、端子電極23および24の固着部28と外側端面13および14との接触面積を広くすることができ、よって、端子電極23および24の鍔部3および4に対する固着強度を高めることができる。
【0035】
図1図4図5および図8などによく示されているように、第1鍔部3および第2鍔部4の各々の実装面7および8には、幅方向WDの中央部に盛り上がる隆起部29が設けられ、隆起部29の幅方向における両側に隆起部29より低い肩部30が形成されていることが好ましい。
【0036】
第1端子電極23および第2端子電極24は、それぞれ、第1鍔部3および第2鍔部4の各々の実装面7および8における隆起部29および肩部30に沿ってS字状に湾曲して延びる部分を有する。
【0037】
第1端子電極23および第2端子電極24の各々において、実装基板(図示せず。)との接続部分が隆起部29に沿って延びる部分31によって与えられ、ワイヤ21および22との接続部分が肩部30に沿って延びる部分32によって与えられる。
【0038】
このような構成によれば、端子電極23および24におけるワイヤ21および22の接続部分と、実装基板と、の接続部分と、の間で、十分な距離を確保することができるので、実装基板への接続のためのはんだ付け用のフラックスがワイヤ21および22を伝わってコイル部品1へと浸入しにくくすることができる。
【0039】
前述した第1凸条25および第2凸条26は、第1端子電極23および第2端子電極24の各々における肩部30に沿って延びる部分32に当接している。これによって、端子電極23および24におけるワイヤ21および22との接続部分となる肩部30に沿って延びる部分32を、第1凸条25および第2凸条26の当接によって支えることができるため、ワイヤ21および22の熱圧着工程において、端子電極23および24における部分32の位置を安定的かつ強固に維持することができる。
【0040】
なお、端子電極23および24は、金属板に代えて、鍔部3および4上に形成される導体膜によって構成されてもよい。この場合、たとえば、鍔部3および4の実装面7および8上には、銀ペーストの焼付けによって下地電極が形成され、鍔部3および4の外側端面13および14上には、銀の蒸着によって下地電極が形成され、これら下地電極上に銅、ニッケルおよび錫の順にめっきが施される。
【0041】
軸線方向AXに測定した寸法において、巻芯部2の寸法は、第1鍔部3および第2鍔部4の各々の寸法(凸条25および26を含めての内側端面11および12の各々から外側端面13および14の各々までの寸法)の3倍以上かつ4倍以下であることが好ましい。この構成によれば、コイル部品1の大型化を招くことなく、巻芯部2でのワイヤ21および22の可能な巻回数をより多くすることができる。
【0042】
第1鍔部3において、第1凸条25の幅方向寸法および第2凸条26の幅方向寸法の合計は、第1側面15および第2側面17間の距離の1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましい。同様に、第2鍔部4において、第1凸条25の幅方向寸法および第2凸条26の幅方向寸法の合計は、第1側面16および第2側面18間の距離の1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましい。
【0043】
上記の構成によれば、コア5を圧縮成形する際に効果を発揮する。すなわち、コア5を圧縮成形する際、実装面7および8と天面9および10とを上下とし、上下方向から成形材料としての粉体をプレスした場合、凸条25および26の部分に圧力を十分に加えることができる。したがって、凸条25および26において、十分な強度を確保することができる。
【0044】
コイル部品1には、コア5の第1鍔部3の天面9および第2鍔部4の天面10の間を連結するように、天板35が設けられる。天板35はコア5に接着剤によって接合される。接着剤としては、たとえば熱硬化性のあるエポキシ樹脂が用いられる。接着剤の熱衝撃耐性向上のため、シリカフィラーのような無機フィラーが接着剤に添加されてもよい。接着剤の塗布方法としては、天板35に接着剤を塗布する印刷法、コア5の鍔部3および4の天面9および10側を接着剤にディップする方法、天板35およびコア5の双方に接着剤をディスペンス塗布する方法などを採用することができる。天板35の材料としては、フェライト、フェライト以外の非導電性材料、フェライト粉もしくは金属磁性粉含有する樹脂などが用いられる。コア5および天板35が双方とも磁性体から構成される場合、コア5および天板35は閉磁路を構成する。天板35に代えて、樹脂によるコーティングが施されてもよい。なお、天板35がなくても、樹脂コートがなくてもよい。
【0045】
図11は、この発明の第2の実施形態によるコイル部品41の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す斜視図である。図12は、図11に示したコイル部品41に備えるコア42の外観を、実装面7および8を上方に向けて示す斜視図である。図11図1に相当し、図12図5に相当している。図11および図12において、それぞれ、図1および図5に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0046】
第2の実施形態によるコイル部品41は、第1の実施形態によるコイル部品1と比較して、第1鍔部3および第2鍔部4の外側端面13および14において、第1凸条25と第2凸条26との間に、第3凸条43がさらに設けられていることを特徴としている。第3凸条43は、一例として、幅方向寸法が0.4mm、突出高さが0.1mmとされる。
【0047】
第3凸条43の存在は、チャックと鍔部3および4との接触面積をより大きく確保することができるので、ワイヤ21および22の巻回工程においてコア5をより安定した姿勢で保持することができる。
【0048】
第3凸条43は、外側端面13および14の各々の幅方向中央に1つ設けられたが、配置を適切に変更して、複数の第3凸状が設けられてもよい。
【0049】
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の実施形態が可能である。
【0050】
たとえば、この発明が向けられるコイル部品は、図示された実施形態のようにコモンモードチョークコイルを構成するもの以外に、単一のコイルを構成するもの、トランスやバランなどを構成するものであってもよい。したがって、ワイヤの数についても、コイル部品の機能に応じて変更され、それに応じて、各鍔部に設けられる端子電極の数も変更され得る。
【0051】
また、この発明に係るコイル部品を構成するにあたり、この明細書に記載された異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1,41 コイル部品
2 巻芯部
3 第1鍔部
4 第2鍔部
5,42 コア
7,8 実装面
9,10 天面
11,12 内側端面
13,14 外側端面
15,16 第1側面
17,18 第2側面
21,22 ワイヤ
23,23A,23B 第1端子電極
24,24A,24B 第2端子電極
25 第1凸条
26 第2凸条
27 接着剤
27a 接着剤層
28 固着部
29 隆起部
30 肩部
31 隆起部に沿って延びる部分
32 肩部に沿って延びる部分
43 第3凸条
AX 軸線方向
WD 幅方向
HD 高さ方法
R1 第1アール面
R2 第2アール面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12