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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240903BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240903BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240903BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20240903BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D101:00
B62D113:00
B62D119:00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022039306
(22)【出願日】2022-03-14
(65)【公開番号】P2023134002
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半田 聡
(72)【発明者】
【氏名】菅本 周作
(72)【発明者】
【氏名】井上 聡
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-306283(JP,A)
【文献】特開2013-082438(JP,A)
【文献】特開2020-132025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0055619(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014219222(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 101/00
B62D 113/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者により行われる自車両に対する操舵操作に対して操舵反力を与える反力装置と、前記操舵反力の強さを制御する操舵反力制御を実行する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記操舵反力制御の実行時、前記操舵反力として、前記操舵操作の量が大きいほど増加する反力を前記操舵操作に対して与えるように構成されている、
車両制御装置であって
前記制御装置は、
最終的な前記自車両の進行方向の変更を伴わずに前記自車両を横方向へ移動させるための所定の操舵操作を前記運転者が行う可能性はないと判定しているときには、前記操舵反力を基準となる反力よりも大きくし、
前記所定の操舵操作を前記運転者が行う可能性があると判定した場合、前記操舵反力を前記基準となる反力よりも小さくし、
前記所定の操舵操作を前記運転者が行う可能性があると判定した後、前記所定の操舵操作における前記操舵操作の量が最大となる前の所定の時点以降の期間における前記操舵操作の量の増加に対する前記操舵反力の増加率を、前記所定の時点よりも前の期間における前記操舵操作の量の増加に対する前記操舵反力の増加率よりも大きくする、
積極操舵反力制御を前記操舵反力制御として実行するように構成されている、
車両制御装置において、
前記制御装置は、
前記所定の操舵操作を前記運転者が行う可能性があると判定した場合、前記所定の操舵操作により達成されるべき操舵操作の量の経時的な変化パターンにより規定されている操舵操作の量よりも大きい量を目標操舵操作量として設定し、前記操舵操作の実際の量が前記目標操舵操作量よりも小さい場合、前記基準となる反力を小さくして得られる反力を前記操舵反力とすることにより、前記操舵反力を前記基準となる反力よりも小さくし、
前記所定の時点以降、前記変化パターンにより規定されている操舵操作の量よりも小さい量を前記目標操舵操作量として設定し、前記操舵操作の実際の量が前記目標操舵操作量よりも大きい場合、前記基準となる反力を大きくして得られる反力を前記操舵反力とすることにより、前記所定の時点以降の期間における前記操舵操作の量の増加に対する前記操舵反力の増加率を、前記所定の時点よりも前の期間における前記操舵操作の量の増加に対する前記操舵反力の増加率よりも大きくする、
ように構成されている、
車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記制御装置は、
前記運転者から前記積極操舵反力制御の実施が要求されているときに前記所定の操舵操作を前記運転者が行う可能性があると判定した場合、前記積極操舵反力制御を前記操舵反力制御として実施し、
前記運転者から前記積極操舵反力制御の実施が要求されていないときに前記所定の操舵操作が行われた場合、前記変化パターンにより規定されている操舵操作の量を前記目標操舵操作量として設定し、前記操舵操作の実際の量が前記目標操舵操作量よりも小さい場合、前記操舵反力を前記基準となる反力よりも小さくし、前記操舵操作の実際の量が前記目標操舵操作量よりも大きい場合、前記操舵反力を前記基準となる反力よりも大きくする通常操舵反力制御を前記操舵反力制御として実施する、
ように構成されている、
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーブ路に沿って車両を適切に走行させるために運転者に要求される適正なハンドル操作量の範囲(適正範囲)が存在する。そこで、車両がカーブ路に沿って走行しているときに運転者によるハンドル操作量が増加して適正範囲内に入った場合、運転者によるハンドル操作に対して与える反力(操舵反力)を大きくし、それにより、ハンドル操作量が適正範囲内に留まり易くするようにした車両制御装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-209844号公報
【発明の概要】
【0004】
上述した車両制御装置は、運転者が車両をカーブ路に沿って走行させているときに操舵反力の調整を行うことにより、運転者によるハンドル操作を支援するものであるが、そうした支援が望まれる場面としては、車両をカーブ路に沿って走行させる場面のみならず、車両を直進させる場面や車両を車線変更させる場面もある。こうした場面においては、車両をカーブ路に沿って走行させているときの操舵反力の調整とは異なる形態での操舵反力の調整が求められるが、上述した車両運転支援装置は、そのような場面における操舵反力の調整を扱っておらず、又、求められる適切な操舵反力の調整の形態は、車両を直進させる場面と車両を車線変更させる場面との間でも異なる。
【0005】
本発明の目的は、自車両を直進させる場面及び自車両を車線変更させる場面のような最終的な自車両の進行方向の変更を伴わずに自車両を横方向へ移動させる場面において適切な操舵反力の制御を行うことができる車両制御装置を提供することにある。
【0006】
本発明に係る車両制御装置は、運転者により行われる自車両に対する操舵操作に対して操舵反力を与える反力装置と、前記操舵反力の強さを制御する操舵反力制御を実行する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記操舵反力制御の実行時、前記操舵反力として、前記操舵操作の量が大きいほど増加する反力を前記操舵操作に対して与えるように構成されている。
【0007】
更に、前記制御装置は、最終的な前記自車両の進行方向の変更を伴わずに前記自車両を横方向へ移動させるための所定の操舵操作を前記運転者が行う可能性はないと判定しているときには、前記操舵反力を基準となる反力よりも大きくし、前記所定の操舵操作を前記運転者が行う可能性があると判定した場合、前記操舵反力を前記基準となる反力よりも小さくし、前記所定の操舵操作を前記運転者が行う可能性があると判定した後、前記所定の操舵操作における前記操舵操作の量が最大となる前の所定の時点以降の期間における前記操舵操作の量の増加に対する前記操舵反力の増加率を、前記所定の時点よりも前の期間における前記操舵操作の量の増加に対する前記操舵反力の増加率よりも大きくする、積極操舵反力制御を前記操舵反力制御として実行するように構成されている。
更に、前記制御装置は、前記所定の操舵操作を前記運転者が行う可能性があると判定した場合、前記所定の操舵操作により達成されるべき操舵操作の量の経時的な変化パターンにより規定されている操舵操作の量よりも大きい量を目標操舵操作量として設定し、前記操舵操作の実際の量が前記目標操舵操作量よりも小さい場合、前記基準となる反力を小さくして得られる反力を前記操舵反力とすることにより、前記操舵反力を前記基準となる反力よりも小さくするように構成されている。又、前記制御装置は、前記所定の時点以降、前記変化パターンにより規定されている操舵操作の量よりも小さい量を前記目標操舵操作量として設定し、前記操舵操作の実際の量が前記目標操舵操作量よりも大きい場合、前記基準となる反力を大きくして得られる反力を前記操舵反力とすることにより、前記所定の時点以降の期間における前記操舵操作の量の増加に対する前記操舵反力の増加率を、前記所定の時点よりも前の期間における前記操舵操作の量の増加に対する前記操舵反力の増加率よりも大きくするように構成されている。
【0008】
本発明によれば、自車両を車線変更させるための操舵操作等の所定の操舵操作(即ち、最終的な自車両の進行方向の変更を伴わずに自車両を横方向へ移動させるための操舵操作)を運転者が行う可能性がないとき(例えば、自車両が直進しているとき)には、比較的大きい操舵反力が操舵操作に対して与えられる。このため、運転者は、自車両が直進する状態を維持するための操舵操作を行いやすくなる。
【0009】
一方、本発明によれば、自車両を車線変更させるための操舵操作等の所定の操舵操作を運転者が行う可能性があるときには、比較的小さい操舵反力しか、操舵操作に対して与えられない。このため、運転者は、自車両を車線変更させるための操舵操作等の所定の操舵操作を行いやすくなる。
【0010】
更に、本発明によれば、所定の操舵操作を運転者が行う可能性があると判定した後、操舵操作の量が最大となる前の所定の時点において、操舵操作の量の増加に対する操舵反力の増加率が所定の時点よりも前の操舵操作の量の増加に対する操舵反力の増加率よりも大きくされる。このため、運転者は、操舵操作の量を最大に維持しやすくなり、又、操舵操作の量が最大になった後に操舵操作の量を減少させやすくなる。
【0012】
更に、本発明によれば、所定の操舵操作を運転者が行う可能性があると判定した場合、運転者が所定の操舵操作を開始する前に操舵反力が小さくされ、その後、操舵操作の量が最大に近づくと、操舵操作の量の増加に対する操舵反力の増加率が大きくされ、しかも、そうした操舵反力が所定の操舵操作により達成されるべき操舵操作の量の経時的な変化パターンに基づいて決定されるものであるので、上記変化パターンに沿って操舵操作の量が変化するように運転者が所定の操舵操作を行う可能性を高めることができる。
【0013】
尚、本発明に係る車両制御装置において、前記制御装置は、前記運転者から前記積極操舵反力制御の実施が要求されているときに前記所定の操舵操作を前記運転者が行う可能性があると判定した場合、前記積極操舵反力制御を前記操舵反力制御として実施し、前記運転者から前記積極操舵反力制御の実施が要求されていないときに前記所定の操舵操作が行われた場合、前記変化パターンにより規定されている操舵操作の量を前記目標操舵操作量として設定し、前記操舵操作の実際の量が前記目標操舵操作量よりも小さい場合、前記操舵反力を前記基準となる反力よりも小さくし、前記操舵操作の実際の量が前記目標操舵操作量よりも大きい場合、前記操舵反力を前記基準となる反力よりも大きくする通常操舵反力制御を前記操舵反力制御として実施するように構成されてもよい。
【0014】
これによれば、運転者からの要求に応じた積極操舵反力制御の実施の有無の決定を行うことができる。
【0015】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置及びその車両制御装置が搭載された車両(自車両)を示した図である。
図2図2は、通常操舵反力制御における操舵角と基準操舵反力との関係を規定したルックアップテーブルを示した図である。
図3図3は、自車両が直進している場面を示した図である。
図4図4は、自車両が車線変更される場面を示した図である。
図5図5の(A)は、積極直進操舵反力制御における操舵角と基準操舵反力との関係を規定したルックアップテーブルを示した図であり、図5の(B)は、積極車線変更操舵反力制御における操舵角と基準操舵反力との関係を規定したルックアップテーブルを示した図であり、図5の(C)は、積極車線変更操舵反力制御における経過時間と目標操舵角との関係を規定したルックアップテーブルを示した図である。
図6図6は、積極車線変更操舵反力制御における時刻に対する目標操舵角の変化を示した図である。
図7図7の(A)は、自車両の車線変更の前半の期間における操舵角と操舵反力との関係を示した図であり、図7の(B)は、自車両の車線変更の後半の期間における操舵角と操舵反力との関係を示した図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る車両制御装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施形態に係る車両制御装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態に係る車両制御装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両制御装置について説明する。図1に示したように、本発明の実施形態に係る車両制御装置10は、自車両100に搭載されている。以下の説明において、自車両100の運転者を単に「運転者」と称呼する。
【0018】
<ECU>
車両制御装置10は、ECU90を備えている。ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称である。ECU90は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース等を含む。CPUは、ROMに格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。
【0019】
<走行装置>
又、自車両100には、走行装置20が搭載されている。走行装置20は、駆動装置21、制動装置22及び操舵装置23を含んでいる。
【0020】
<駆動装置>
駆動装置21は、自車両100を走行させるために自車両100に付加される駆動トルク(駆動力)を出力する装置であり、例えば、内燃機関及びモータ等である。駆動装置21は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、駆動装置21の作動を制御することにより駆動装置21から出力される駆動トルクを制御することができる。
【0021】
<制動装置>
制動装置22は、自車両100を制動するために自車両100に付加される制動トルク(制動力)を出力する装置であり、例えば、ブレーキ装置である。制動装置22は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、制動装置22の作動を制御することにより制動装置22から出力される制動トルクを制御することができる。
【0022】
<操舵装置>
操舵装置23は、自車両100を操舵するために自車両100に付加される操舵トルク(操舵力)を出力する装置であり、例えば、パワーステアリング装置である。操舵装置23は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、操舵装置23の作動を制御することにより操舵装置23から出力される操舵トルク及び後述する操舵反力を制御することができる。
【0023】
<センサ等>
更に、自車両100には、アクセルペダル31、アクセルペダル操作量センサ32、ブレーキペダル33、ブレーキペダル操作量センサ34、ハンドル35、ステアリングシャフト36、操舵角センサ37、操舵トルクセンサ38、車速検出装置41、ウインカーレバー42、積極操舵反力支援スイッチ43、ウインカー50、周辺情報検出装置60及び道路情報検出装置70が搭載されている。
【0024】
<アクセルペダル操作量センサ>
アクセルペダル操作量センサ32は、アクセルペダル31の操作量を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。アクセルペダル操作量センサ32は、検出したアクセルペダル31の操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてアクセルペダル31の操作量をアクセルペダル操作量APとして取得する。ECU90は、アクセルペダル操作量AP及び自車両100の走行速度に基づいて要求駆動トルク(要求駆動力)を取得し、その要求駆動トルクに相当する駆動トルクが駆動装置21から自車両100(特に、自車両100の駆動輪)に与えられるように駆動装置21の作動を制御する。
【0025】
<ブレーキペダル操作量センサ>
ブレーキペダル操作量センサ34は、ブレーキペダル33の操作量を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。ブレーキペダル操作量センサ34は、検出したブレーキペダル33の操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてブレーキペダル33の操作量をブレーキペダル操作量BPとして取得する。ECU90は、ブレーキペダル操作量BPに基づいて要求制動トルク(要求制動力)を取得し、その要求制動トルクに相当する制動トルクが制動装置22から自車両100(特に、自車両100の車輪)に与えられるように制動装置22の作動を制御する。
【0026】
<操舵角センサ>
操舵角センサ37は、中立位置に対するステアリングシャフト36の回転角度を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。操舵角センサ37は、検出したステアリングシャフト36の回転角度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてステアリングシャフト36の回転角度を操舵角θとして取得する。
【0027】
<操舵トルクセンサ>
操舵トルクセンサ38は、運転者がハンドル35を介してステアリングシャフト36に入力したトルクを検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。操舵トルクセンサ38は、検出したトルクの情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて運転者がハンドル35を介してステアリングシャフト36に入力したトルクをドライバー入力トルクとして取得する。
【0028】
ECU90は、操舵角θ、ドライバー入力トルク及び自車両100の走行速度に基づいて要求操舵トルクを取得し、その要求操舵トルクに相当する操舵トルクが操舵装置23から自車両100(特に、自車両100の操舵輪)に与えられるとともに、後述するように設定される目標操舵反力RFtgtに相当する反力がハンドル35(運転者によるハンドル操作)に与えられるように操舵装置23の作動を制御する。従って、本例において、操舵装置23は、運転者により行われる自車両100に対するハンドル操作(操舵操作)に対して操舵反力を与える反力装置を含んでいる。
【0029】
<車速検出装置>
車速検出装置41は、自車両100の走行速度を検出する装置であり、例えば、車輪速センサである。車速検出装置41は、ECU90に電気的に接続されている。車速検出装置41は、検出した自車両100の走行速度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100の走行速度を自車速V100として取得する。
【0030】
<ウインカーレバー>
ウインカーレバー42は、ウインカー50を作動させるために運転者により操作されるレバーであり、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、ウインカーレバー42が中立位置から右旋回位置に操作されると、自車両100の右前方のコーナー部分及び右後方のコーナー部分に設けられているウインカー50を作動(点滅)させる。一方、ECU90は、ウインカーレバー42が中立位置から左旋回位置に操作されると、自車両100の左前方のコーナー部分及び左後方のコーナー部分に設けられているウインカー50を作動(点滅)させる。
【0031】
<積極操舵反力支援スイッチ>
積極操舵反力支援スイッチ43は、後述する積極操舵反力制御の実施を要求するために運転者により操作されるスイッチであり、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、積極操舵反力支援スイッチ43が操作されてオン位置に設定されると、積極操舵反力制御の実施が要求されたと判定する。
【0032】
<周辺情報検出装置>
周辺情報検出装置60は、自車両100の周辺の情報を検出する装置であり、本例においては、電波センサ61及び画像センサ62を備えている。電波センサ61は、例えば、レーダセンサ(ミリ波レーダ等)である。画像センサ62は、例えば、カメラである。尚、周辺情報検出装置60は、超音波センサ(クリアランスソナー)等の音波センサやレーザーレーダ(LiDAR)等の光センサを備えていてもよい。
【0033】
<電波センサ>
電波センサ61は、ECU90に電気的に接続されている。電波センサ61は、電波を発信するとともに、物体で反射した電波(反射波)を受信する。電波センサ61は、発信した電波及び受信した電波(反射波)に係る情報(検知結果)をECU90に送信する。別の言い方をすると、電波センサ61は、自車両100の周辺に存在する物体を検知し、その検知した物体に係る情報(検知結果)をECU90に送信する。ECU90は、その情報(電波情報)に基づいて自車両100の周辺に存在する物体に係る情報を周辺検出情報ISとして取得する。尚、本例において、物体は、車両、自動二輪車、自転車及び人等である。
【0034】
<画像センサ>
画像センサ62も、ECU90に電気的に接続されている。画像センサ62は、自車両100の周辺を撮像し、撮像した画像に係る情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報(カメラ画像情報)に基づいて自車両100の周辺に関する情報を周辺検出情報ISとして取得する。
【0035】
<道路情報検出装置>
道路情報検出装置70は、GPS装置71及び地図情報データベース72を含んでいる。
【0036】
<GPS装置>
GPS装置71は、いわゆるGPS信号を受信する装置であり、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、GPS装置71を介してGPS信号を取得する。ECU90は、取得したGPS信号に基づいて自車両100の現在位置P100を取得することができる。
【0037】
<地図情報データベース>
地図情報データベース72は、道路に関する情報等を含む地図情報を記憶したデータベースであり、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、自車両100の現在位置P100から自車両100が現在走行している道路等に関する情報を道路情報IRとして取得する。
【0038】
<車両制御装置の作動の概要>
次に、車両制御装置10の作動の概要について説明する。
【0039】
<通常操舵反力制御>
車両制御装置10は、積極操舵反力制御の実施が要求されていない場合、運転者によるハンドル35に対する操作(ハンドル操作、操舵操作)に対する反力(操舵反力)を制御する操舵反力制御として、通常操舵反力制御を実施する。
【0040】
通常操舵反力制御は、操舵角θ(操舵操作の量)に基づいて操舵反力の目標値(目標操舵反力RFtgt)を設定し、その目標操舵反力RFtgtに相当する操舵反力(通常操舵反力)をハンドル操作に対して与える制御であり、より具体的には、操舵角θが大きくなるほど大きな操舵反力(通常操舵反力)をハンドル操作に対して与える制御である。
【0041】
車両制御装置10は、通常操舵反力制御における目標操舵反力RFtgtの設定に使用するためのルックアップテーブルとして、図2に実線のラインL1で示したように、操舵角θと目標操舵反力RFtgtとの関係を規定したルックアップテーブルを記憶している。そして、車両制御装置10は、通常操舵反力制御の実行時、そのルックアップテーブルに操舵角θを適用してハンドル35(ハンドル操作)に対して与えるべき操舵反力(基準操舵反力RFb)を取得し、その基準操舵反力RFbを目標操舵反力RFtgtとして設定し、その目標操舵反力RFtgtに相当する操舵反力(通常操舵反力)が操舵装置23からハンドル35に対して与えられるように操舵装置23の作動を制御する。
【0042】
尚、ハンドル35を時計回り(右回り)に回転させる力が運転者によりハンドル35に加えられるときには、ハンドル35を反時計回り(左回り)に回転させる力が操舵反力としてハンドル35に対して加えられるように操舵装置23の作動が制御され、ハンドル35を反時計回り(左回り)に回転させる力が運転者によりハンドル35に加えられるときには、ハンドル35を時計回り(右回り)に回転させる力が操舵反力としてハンドル35に対して加えられるように操舵装置23の作動が制御される。
【0043】
又、車両制御装置10は、図2に示したルックアップテーブルを利用して基準操舵反力RFbを取得するのに代えて、操舵角θと基準操舵反力RFbとの関係を規定した演算式を利用して基準操舵反力RFbを取得するように構成されてもよい。この場合、車両制御装置10は、演算式に操舵角θを適用して基準操舵反力RFbを取得(演算)する。
【0044】
<積極操舵反力制御>
一方、積極操舵反力制御の実施が要求されている場合、車両制御装置10は、操舵反力制御として、積極操舵反力制御を実施する。このとき、車両制御装置10は、運転者が自車両100の車線変更を行う可能性(車線変更実施可能性)はないと判定した場合、即ち、図3に示したように、運転者が自車両100を直線道路に沿って走行(直進)させようとしていると推定される場合には、積極操舵反力制御として、積極直進操舵反力制御を実施する。一方、車両制御装置10は、図4に示したように、運転者が自車両100の車線変更を行う可能性(車線変更実施可能性)があると判定した場合には、積極操舵反力制御として、積極車線変更操舵反力制御を実施する。
【0045】
尚、図3及び図4において、符号LN2により示した車線は、自車線LN1の右隣に隣接して設けられている車線であって、その車線における車両の走行方向が自車線LN1における車両の走行方向と同じである車線(右隣接並走車線)である。又、符号LN3及び符号LN4で示した車線は、それぞれ、自車線LN1及び右隣接並走車線LN2にとっての対向車線である。
【0046】
又、以下、運転者が自車両100を車線変更させる場面として、自車線LN1(自車両100が現在走行している車線)から右隣接車線(走行方向が自車線LN1の走行方向と同一である車線であって自車線LN1の右隣の車線)に自車両100を進入させる場面を例に、車両制御装置10の作動を説明するが、その他、運転者が自車両100を車線変更させる場面としては、自車線LN1から左隣接車線(走行方向が自車線LN1の走行方向と同一である車線であって自車線LN1の左隣の車線)に自車両100を車線変更させる場面、高速道路の本線に繋がる緩やかなカーブ路から高速道路の本線に自車両100を進入させる場面、自車線LN1から右折専用レーンに自車両100を進入させる場面もある。
【0047】
更に、自車両100が車線変更のときと同様な動きをする場面としては、自車両100が救急車等の緊急車両の接近に伴って道路脇(自車線LN1の脇)に寄る場面もあり、車両制御装置10は、こうした場面にも適用可能である。従って、車両制御装置10は、ハンドル操作により自車両100が旋回して最終的な自車両100の進行方向の変更を伴う自車両100の右左折等の横方向への移動を伴う走行が行われる場面ではなく、ハンドル操作により自車両100が旋回するが最終的な自車両100の進行方向の変更を伴わずに自車両100を横方向へ移動させる走行が行われる場面にも適用可能である。
【0048】
又、本例においては、車両制御装置10は、ウインカー50が作動され且つそのウインカー50が示している自車両100の旋回方向に隣接並走車線が存在する場合、車線変更実施可能性があると判定し、そうではない場合、車線変更実施可能性はないと判定する。ここで、隣接並走車線は、自車線LN1に隣接する車線であって、その車線における車両の走行方向が自車線LN1における車両の走行方向と同じである車線であり、図4に示した例においては、ウインカー50が示している自車両100の旋回方向が右旋回方向であるので、隣接並走車線は、右隣接並走車線LN2である。尚、ウインカー50が示している自車両100の旋回方向に隣接並走車線が存在するか否かは、周辺検出情報IS及び/又は道路情報IRに基づいて判定される。
【0049】
尚、車両制御装置10は、上述した手法以外の手法により、車線変更実施可能性があるか否かを判定するように構成されてもよい。
【0050】
例えば、車両制御装置10は、運転者が自車両100のサイドミラーやバックミラーを確認する行為の回数が増加した場合、車線変更実施可能性があると判定し、そうではない場合、車線変更実施可能性はないと判定するように構成されてもよい。この場合、運転者が自車両100のサイドミラーやバックミラーを確認する行為の回数が増加したか否かは、運転者の少なくとも上半身を撮像することができる位置にカメラ(いわゆるドライバーモニターカメラ)により撮像された画像に基づいて判定される。
【0051】
或いは、車両制御装置10は、自車速V100に対して車速が相当程度に遅い先行車が発生した場合、車線変更実施可能性があると判定し、そうではない場合、車線変更実施可能性はないと判定するように構成されてもよい。この場合、自車速V100に対して車速が相当程度に遅い先行車が発生したか否かは、周辺検出情報ISに基づいて判定される。
【0052】
<積極直進操舵反力制御>
積極直進操舵反力制御は、通常操舵反力制御と同様に、操舵角θに基づいて操舵反力の目標値(目標操舵反力RFtgt)を設定し、その目標操舵反力RFtgtに相当する操舵反力(積極直進操舵反力)をハンドル35(ハンドル操作)に対して与える制御であり、より具体的には、操舵角θが大きくなるほど大きな操舵反力(積極直進操舵反力)をハンドル35に対して与える制御であるが、この積極直進操舵反力制御により与えられる操舵反力(積極直進操舵反力)は、操舵角θが同じであるときには、通常操舵反力制御により与えられる操舵反力(通常操舵反力)よりも大きい。
【0053】
即ち、車両制御装置10は、積極操舵反力制御の実施は要求されているが車線変更実施可能性はないと判定した場合、積極操舵反力制御の実施が要求されていない場合に比べ、操舵反力を大きくするように構成されている。
【0054】
車両制御装置10は、積極操舵反力制御の実施が要求されているときの目標操舵反力RFtgtの設定に使用するためのルックアップテーブルとして、図5の(A)に実線のラインL2で示したように、操舵角θと基準操舵反力RFbとの関係を規定したルックアップテーブルを記憶している。そして、車両制御装置10は、積極直進操舵反力制御の実行時、そのルックアップテーブルに操舵角θを適用してハンドル35(ハンドル操作)に対して与えるべき操舵反力の基準値(基準操舵反力RFb、基準となる反力)を取得し、その基準操舵反力RFbを目標操舵反力RFtgtとして設定し、その目標操舵反力RFtgtに相当する操舵反力(積極直進操舵反力)が操舵装置23からハンドル35に対して与えられるように操舵装置23の作動を制御する。尚、図5の(A)において、鎖線のラインL1は、通常操舵反力制御の実行時に目標操舵反力RFtgtの設定に利用される操舵角θと基準操舵反力RFbとの関係(即ち、図2に示した関係)を示すラインである。
【0055】
これによれば、通常操舵反力制御が実施されているときに比べ、運転者は、ハンドル操作量を増加させづらくなるため、ハンドル操作量をゼロ近傍に維持しやすくなり、自車両100を直進させるためのハンドル35の回転位置の保持を行いやすくなる。
【0056】
尚、車両制御装置10は、図5の(A)に示したルックアップテーブルを利用して基準操舵反力RFbを取得するのに代えて、操舵角θと基準操舵反力RFbとの関係を規定した演算式を利用して基準操舵反力RFbを取得するように構成されてもよい。この場合、車両制御装置10は、演算式に操舵角θを適用して基準操舵反力RFbを取得(演算)する。
【0057】
<積極車線変更操舵反力制御>
又、積極車線変更操舵反力制御は、操舵角θ及び操舵角差Δθに基づいて操舵反力の目標値(目標操舵反力RFtgt)を設定し、その目標操舵反力RFtgtに相当する操舵反力(積極車線変更操舵反力)をハンドル35(ハンドル操作)に対して与える制御であり、より具体的には、以下で説明するように設定される値の操舵反力(積極車線変更操舵反力)をハンドル35に対して与える制御である。
【0058】
即ち、車両制御装置10は、積極車線変更操舵反力制御における目標操舵反力RFtgtの設定に使用するためのルックアップテーブルとして、図5の(B)に実線のラインL3で示したように、操舵角θと基準操舵反力RFbとの関係を規定したルックアップテーブルを記憶している。そして、車両制御装置10は、積極車線変更操舵反力制御の実行時、そのルックアップテーブルに操舵角θを適用してハンドル35(ハンドル操作)に対して与えるべき操舵反力の基準値(基準操舵反力RFb、基準となる反力)を取得する。
【0059】
尚、本例においては、積極車線変更操舵反力制御において基準操舵反力RFbを取得するために使用する図5の(B)に示したルックアップテーブルは、通常操舵反力制御において基準操舵反力RFbを取得するために使用する図2に示したルックアップテーブルと同じものであるが、同じ操舵角θに対する基準操舵反力RFbが図5の(A)に示したルックアップテーブルから取得される基準操舵反力RFb以下であれば、図2に示したルックアップテーブルとは異なるものでもよい。
【0060】
更に、車両制御装置10は、積極車線変更操舵反力制御における目標操舵反力RFtgtの設定に使用するためのルックアップテーブルとして、図5の(C)に実線のラインLgで示したように、所定の時点(車線変更推実施判定時点tLC)から経過した時間(経過時間T)と目標操舵角θtgt(目標操舵操作量)との関係を規定したルックアップテーブルを記憶している。そして、車両制御装置10は、積極車線変更操舵反力制御の実行時、そのルックアップテーブルに経過時間Tを適用して目標操舵角θtgtを取得し、その時点の実際の操舵角θと目標操舵角θtgtとの差分を操舵角差Δθとして取得し、その操舵角差Δθに応じた操舵反力を操舵反力調整値RFaとして取得する。この場合、車両制御装置10は、操舵角差Δθが大きいほど大きい値の操舵反力を操舵反力調整値RFaとして取得する。
【0061】
ここで、実際の操舵角が目標操舵角θtgtよりも小さいときには、正の値の操舵反力調整値RFaが取得され、実際の操舵角が目標操舵角θtgtよりも大きいときには、負の値の操舵反力調整値RFaが取得され、実際の操舵角が目標操舵角θtgtと等しいときには、取得される操舵反力調整値RFaは、ゼロである。
【0062】
尚、車線変更推実施判定時点tLCは、車線変更実施可能性があると車両制御装置10が判定した時点である。
【0063】
車両制御装置10は、上述したようにして取得した基準操舵反力RFbから操舵反力調整値RFaを差し引いて得られる値を目標操舵反力RFtgtとして設定し(RFtgt=RFb-RFa)、その目標操舵反力RFtgtに相当する操舵反力(積極車線変更操舵反力)を操舵装置23からハンドル35に対して出力させる。従って、目標操舵反力RFtgtは、実際の操舵角が目標操舵角θtgtよりも小さい場合には、基準操舵反力RFbよりも小さい値に設定され、実際の操舵角が目標操舵角θtgtよりも大きい場合には、基準操舵反力RFbよりも大きい値に設定される。
【0064】
尚、図5の(C)において、鎖線のラインLbは、基準操舵角プロファイルPbを示しており、本例において、ガイド操舵角プロファイルPgは、基準操舵角プロファイルPbに基づいて設定される。
【0065】
基準操舵角プロファイルPbは、車両を並走隣接車線に車線変更させるときに達成されるべき操舵角θ(ハンドル操作の量、操舵操作の量)の経時的な変化パターンであり、例えば、過去に自車両100の運転者が自車両100の車線変更を行ったときの操舵角の変化パターン、或いは、運転スキルの高い運転者が車両の車線変更を行うときの操舵角の変化パターン、或いは、自車両100の車線変更を車両制御装置10が自律的に行うための制御プログラム等により設定される目標操舵角の変化パターンである。
【0066】
図5の(C)に示したように、ガイド操舵角プロファイルPgは、同じ経過時間Tにおいて、ガイド操舵角プロファイルPgから取得される目標操舵角θtgtが基準操舵角プロファイルPbから取得される操舵角θよりも小さくなるように基準操舵角プロファイルPbを全体的に縮小して得られるものである。
【0067】
車両制御装置10は、積極操舵反力制御の実施が要求されているときに車線変更実施可能性があると判定した場合、その時点から所定の時間(制御開始時間Tstart)が経過した時点で、積極直進操舵反力制御を停止して積極車線変更操舵反力制御を開始する。
【0068】
本例において、制御開始時間Tstartは、車線変更実施可能性があると判定されてから、運転者が自車両100を車線変更させるためのハンドル操作(所定の操舵操作)を実際に開始するまでの時間として推定される時間から、所定の時間(制御早出し時間Ta)だけ短い時間に設定される。
【0069】
従って、本例においては、図6に示したように、基準操舵角プロファイルPbに基づいて目標操舵角θtgtを設定する場合、その設定は、時刻t61において開始されるが、ガイド操舵角プロファイルPgに基づいて目標操舵角θtgtを設定する場合、その設定は、時刻t61よりも早い時刻t60において開始される。別の言い方をすると、ガイド操舵角プロファイルPgに基づいた目標操舵角θtgtの設定は、基準操舵角プロファイルPbに基づいた目標操舵角θtgtの設定よりも早いタイミングで開始される。更に別の言い方をすると、ガイド操舵角プロファイルPgに基づいて目標操舵角θtgtを設定する場合、目標操舵角θtgtがゼロよりも大きくなるタイミングは、基準操舵角プロファイルPbに基づいて目標操舵角θtgtを設定する場合に比べ、早くなる。
【0070】
又、ガイド操舵角プロファイルPgに基づいた目標操舵角θtgtの設定が開始される時刻t60よりも後の時刻t62であって、基準操舵角プロファイルPbに基づいた目標操舵角θtgtの設定が開始される時刻t61よりも所定時間後の時刻t62以降、ガイド操舵角プロファイルPgに基づいて設定される目標操舵角θtgtは、基準操舵角プロファイルPbに基づいて設定される目標操舵角θtgtよりも小さくなる。
【0071】
以上のことから、車両制御装置10によれば、車線変更実施可能性があると判定されない限り、即ち、運転者が自車両100を直進させている限り、比較的大きな操舵反力がハンドル35(ハンドル操作)に対して与えられる。このため、運転者は、自車両100を直進させるためにハンドル35を中立位置に保持しやすくなる。
【0072】
更に、車線変更実施可能性があると判定された場合、運転者が自車両100を車線変更させるためのハンドル操作を開始する前に、ガイド操舵角プロファイルPgに基づいた目標操舵角θtgtの設定が開始される(目標操舵角θtgtがゼロよりも大きくなる)。従って、図7の(A)に実線のラインL4で示したように、同じ操舵角で比較した場合、操舵反力(積極車線変更操舵反力)は、図7の(A)に鎖線のラインL1で示した通常操舵反力制御により出力される操舵反力(通常操舵反力)よりも小さくなり、勿論、図7の(A)に鎖線のラインL2で示した積極直進操舵反力制御により出力される操舵反力(積極直進操舵反力)よりも小さくなる。このため、運転者が自車両100を車線変更させるためのハンドル操作を開始する前から、操舵反力が小さくなっているので、運転者は、スムーズにハンドル操作を行うことができる。
【0073】
又、運転者は、自車両100を車線変更させる場合、以下のように、ハンドル35を操作する。即ち、運転者は、自車両100を車線変更させる場合、ハンドル35に対する操作量(ハンドル操作量)を徐々に増加させてゆき、操舵角θ(操舵操作の量)が最大になる(操舵角θが最大操舵角θmaxに達する)と、ハンドル35をその時点の位置に保持し、自車両100が並走隣接車線に進入し終わると、ハンドル操舵量を徐々に減少させてゆき、ハンドル35が中立位置に達して操舵角θがゼロとなり、自車両100が直進し始めると、ハンドル35を中立位置に保持する。
【0074】
このように、運転者が自車両100を車線変更させるためにハンドル35を操作する場合において、車両制御装置10によれば、運転者がハンドル操作を開始した後、所定の時間が経過するまでの間は、図7の(A)に実線のラインL4で示した関係に従った操舵反力が操舵角θに応じてハンドル35(ハンドル操作)に与えられるが、所定の時間が経過すると、図7の(B)に実線のラインL5で示した関係に従った操舵反力が操舵角θに応じてハンドル35(ハンドル操作)に与えられる。
【0075】
このため、運転者がハンドル操作を開始した後、操舵角θが最大操舵角θmaxに近づき、所定の時間が経過すると、ハンドル操作量の増加に対する操舵反力の増加率がより大きくなるので、運転者は、操舵角θが最大操舵角θmaxに達したときに、ハンドル35を保持しやすくなる。更に、運転者は、自車両100が並走隣接車線に進入した後、ハンドル35を中立位置まで操作しやすくなる。
【0076】
更に、車線変更実施可能性があると判定した場合、運転者が自車両100を車線変更させるためのハンドル操作(所定の操舵操作)を開始する前に操舵反力が小さくされ、その後、操舵角が最大操舵角θmaxに近づくと、操舵角の増加に対する操舵反力(目標操舵角θtgt)の増加率が大きくされ、しかも、そうした操舵反力(目標操舵角θtgt)が自車両100の車線変更において達成されるべき操舵角の経時的な変化パターン(基準操舵角プロファイルPb)に基づいて決定されるものであるので、上記変化パターン(基準操舵角プロファイルPb)に沿って操舵角が変化するように運転者が自車両100を車線変更させるためのハンドル操作(所定の操舵操作)を行う可能性を高めることができる。
【0077】
尚、車両制御装置10は、図5の(C)に示したルックアップテーブルを利用して目標操舵角θtgtを取得するのに代えて、下式1、下式2及び下式3に示した演算式を利用して目標操舵角θtgtを取得するように構成されてもよい。
【0078】
θtgt=MAX(A・sin(ω・(t+φ)),0) …(1)
A=θmax・K1 …(2)
φ=T-K2 …(3)
【0079】
式1中、「MAX」は、MAX関数であり、式1中、「A」は、式2から演算され、式2中、「θmax」は、基準操舵角プロファイルPbにおける最大操舵角であり、「K1」は、「1」よりも小さい所定の値に設定される定数であり、式1中、「φ」は、式3から演算され、式3中、「T」は、車線変更推実施判定時点tLC(車線変更実施可能性があると判定された時点)から、運転者が自車両100の車線変更を行うためのハンドル操作を開始するまでの時間として推定される時間であり、「K2」は、「0」よりも大きい所定の値に設定される定数である。
【0080】
この場合、車両制御装置10は、経過時間Tを変数として式1乃至式3から目標操舵角θtgtを取得(演算)する。
【0081】
尚、通常操舵反力制御の実行時に車線変更実施可能性があると判定された場合、基準操舵角プロファイルPbから目標操舵角θtgtを取得し、その時点の実際の操舵角θと目標操舵角θtgtとの差分を操舵角差Δθとして取得し、その操舵角差Δθに応じた操舵反力を操舵反力調整値RFaとして取得するようにしてもよい。この場合も、車両制御装置10は、操舵角差Δθが大きいほど大きい値の操舵反力を操舵反力調整値RFaとして取得する。又、このように操舵反力調整値RFaを取得する場合において、基準操舵角プロファイルPbから取得される目標操舵角θtgtを上式1から演算する場合、定数K1は、「1」に設定され、定数K2は、「0」に設定される。
【0082】
<車両制御装置の具体的な作動>
次に、車両制御装置10の具体的な作動を説明する。車両制御装置10のECU90のCPUは、図8に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、図8に示したルーチンのステップ800から処理を開始し、その処理をステップ805に進め、積極操舵反力制御の実施が要求されているか否かを判定する。
【0083】
CPUは、ステップ805にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ810に進め、図9に示したルーチンを実行する。従って、CPUは、処理をステップ810に進めると、図9に示したルーチンのステップ900から処理を開始し、その処理をステップ905に進め、車線変更実施判定フラグX1の値が「1」であるか否かを判定する。車線変更実施判定フラグX1は、車線変更実施可能性があるか否かを表すフラグであり、その値は、車線変更実施可能性があると判定されたときに「1」に設定され、その値が「1」に設定された後、自車両100の車線変更が終了したとき、或いは、その値が「1」に設定された後、車線変更実施可能性はないと判定されたとき、「0」に設定される。
【0084】
CPUは、ステップ905にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ910に進め、経過時間Tが制御開始時間Tstart以上になっているか否かを判定する。
【0085】
CPUは、ステップ910にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ915に進め、図5の(C)に示したルックアップテーブルを利用して目標操舵角θtgtを設定する。次いで、CPUは、処理をステップ920に進め、ステップ915にて設定した目標操舵角θtgtに基づいて操舵反力調整値RFaを取得(演算)する。次いで、CPUは、処理をステップ925に進め、図5の(B)に示したルックアップテーブルを利用して基準操舵反力RFbを取得する。次いで、CPUは、処理をステップ930に進め、ステップ920にて取得した操舵反力調整値RFa及びステップ925にて取得した基準操舵反力RFbに基づいて目標操舵反力RFtgtを設定する。次いで、CPUは、処理をステップ935に進め、ステップ930にて設定した目標操舵反力RFtgtに相当する操舵反力が操舵装置23からハンドル35に出力されるように操舵装置23の作動を制御する。次いで、CPUは、ステップ995を経由して図8に示したルーチンのステップ895に処理を進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0086】
一方、CPUは、ステップ905又はステップ910にて「No」と判定した場合、処理をステップ940に進め、図5の(A)に示したルックアップテーブルを利用して基準操舵反力RFbを取得する。次いで、CPUは、処理をステップ945に進め、ステップ940にて取得した基準操舵反力RFbを目標操舵反力RFtgtとして設定する。次いで、CPUは、処理をステップ950に進め、ステップ945にて設定した目標操舵反力RFtgtに相当する操舵反力が操舵装置23からハンドル35に出力されるように操舵装置23の作動を制御する。次いで、CPUは、ステップ995を経由して図8に示したルーチンのステップ895に処理を進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0087】
又、CPUは、図8に示したルーチンのステップ805にて「No」と判定した場合、処理をステップ815に進め、図10に示したルーチンを実行する。従って、CPUは、処理をステップ815に進めると、図10に示したルーチンのステップ1000から処理を開始し、その処理をステップ1005に進め、図2に示したルックアップテーブルを利用して基準操舵反力RFbを取得する。次いで、CPUは、処理をステップ1010に進め、ステップ1005にて取得した基準操舵反力RFbを目標操舵反力RFtgtとして設定する。次いで、CPUは、処理をステップ1015に進め、ステップ1010にて設定した目標操舵反力RFtgtに相当する操舵反力が操舵装置23からハンドル35に出力されるように操舵装置23の作動を制御する。次いで、CPUは、ステップ995を経由して図8に示したルーチンのステップ895に処理を進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0088】
以上が車両制御装置10の具体的な作動である。
【0089】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0090】
10…車両制御装置、20…走行装置、23…操舵装置、35…ハンドル、42…ウインカーレバー、43…積極操舵反力支援スイッチ、50…ウインカー、60…周辺情報検出装置、61…電波センサ、62…画像センサ、70…道路情報検出装置、71…GPS装置、72…地図情報データベース、90…ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10