(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】車両、及び、車両の塩害評価システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20240903BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
G06Q10/04
G01C21/26 B
(21)【出願番号】P 2022047122
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本谷 綾子
【審査官】阿部 圭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-259753(JP,A)
【文献】特開2019-040310(JP,A)
【文献】特開2021-002107(JP,A)
【文献】特開2021-174410(JP,A)
【文献】特開2021-048493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
地点ごとの車両への塩害リスクを表す塩害リスクマップを取得する塩害リスクマップ取得部と、
前記位置情報取得部により得られた前記位置情報と、前記塩害リスクマップとに基づいて、自車両への塩害の程度を評価する塩害評価部と、
を備え、
前記塩害リスクマップは、地点に応じて塩害リスクが点数化されたマップであり、
さらに、前記塩害リスクマップは、地図がタイル状に分割されており、かつ、各タイルが塩害リスクに応じて点数化されて
おり、
前記塩害評価部は、タイル状に分割され点数化された前記塩害リスクマップ上を移動する前記自車両の塩害の程度を、移動した各タイルの点数と各タイルへの滞在時間の積和により評価する、
車両。
【請求項2】
前記塩害リスクの点数は、季節に応じて変更される、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
地点ごとの車両への塩害リスクを表す塩害リスクマップを取得する塩害リスクマップ取得部と、
前記位置情報取得部により得られた前記位置情報と、前記塩害リスクマップとに基づいて、車両への塩害の程度を評価する塩害評価部と、
を備え、
前記塩害リスクマップは、地点に応じて塩害リスクが点数化されたマップであり、
さらに、前記塩害リスクマップは、地図がタイル状に分割されており、かつ、各タイルが塩害リスクに応じて点数化されて
おり、
前記塩害評価部は、タイル状に分割され点数化された前記塩害リスクマップ上を移動する前記車両の塩害の程度を、移動した各タイルの点数と各タイルへの滞在時間の積和により評価する、
車両の塩害評価システム。
【請求項4】
前記塩害リスクの点数は、季節に応じて変更される、
請求項3に記載の車両の塩害評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、及び、車両の塩害評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックのフレームやボディは金属製であり、塩分が表面に付着すると、塩害(錆や腐食)が発生し易くなる。勿論、塩害はトラック以外にも金属製のフレームやボディからなる車両で広く生じ得る。塩分付着の原因は海水成分を含む潮風や道路の融雪剤などであり、沿岸部や冬期の北国では塩害発生リスクが高いと考えられる。
【0003】
従来の塩害対策としては、防錆材の塗布、車体の洗浄などが挙げられる。
【0004】
また、特許文献1には、塩害地域を走行した車両の走行履歴を参照すれば、車両のメンテナンスを行うタイミングを把握できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1にも記載されているように、車両の走行履歴から、その車両がどの地域をどの程度走行したかが分かるので、その車両が塩害を受けているか否かの凡その推定を行うことができる。
【0007】
しかしながら、従来の走行履歴に基づく塩害の推定は正確性や利便性などの点で未だ不十分であった。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、塩害を受けている程度を的確に評価できる車両、及び、車両の塩害評価システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両の一つの態様は、
自車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
地点ごとの車両への塩害リスクを表す塩害リスクマップを取得する塩害リスクマップ取得部と、
前記位置情報取得部により得られた前記位置情報と、前記塩害リスクマップとに基づいて、自車両への塩害の程度を評価する塩害評価部と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塩害を受けている程度を的確に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る車両の主要構成を示すブロック図
【
図3】実施の形態の動作の説明に供するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両の主要構成を示すブロック図である。
【0014】
本実施の形態の車両100は、位置情報取得部110と、塩害リスクマップ取得部120と、塩害評価部130と、記憶部140と、を有する。
【0015】
位置情報取得部110は、例えばGPS(Global Positioning System)受信機により構成されており、衛星からの電波に基づいて自車両の位置を取得する。なお、位置情報取得部110は、勿論GPSに基づいて自車両の位置上方を取得するものに限らず、例えばGPSの代わりにビーコンなどを用いて自車両の位置情報を取得してもよい。
【0016】
塩害リスクマップ取得部120は塩害マップを取得する。塩害リスクマップ取得部120は例えばメモリなどの塩害リスクマップを記憶可能な記憶部である。また塩害リスクマップ取得部120は例えば無線によって必要に応じて外部から塩害リスクマップを取得可能なものであってもよい。
【0017】
図2は、塩害リスクマップ取得部120が取得する塩害リスクマップの例を示す図である。塩害リスクマップは、地点に応じて塩害リスクが点数化されたマップである。また、本実施の形態の場合、塩害リスクマップは、地図がタイル状に分割されており、かつ、各タイルが塩害リスクに応じて点数化されたものである。
図2の例では、0,1,2,3の4段階で塩害リスクが点数化されており、点数が大きくなるほどリスクが高いことを表す。
【0018】
なお、塩害リスクマップにおける塩害リスクの点数は、季節に応じて変更されてもよい。例えば、降雪の多い地域では、冬期に融雪剤で塩害リスクが高まることから、降雪の多い地域では冬期の点数を大きくする。このようにすることで、より的確に塩害リスクを評価できるようになる。
【0019】
塩害評価部130は、位置情報取得部110により得られた自車両の位置情報と、塩害リスクマップ取得部120によって取得された塩害リスクマップと、に基づいて、自車両への塩害の程度を評価する。
【0020】
本実施の形態の塩害評価部130は、自車両の位置情報と塩害リスクマップとに基づく自車両の塩害リスクの点数を一定時間間隔で順次得て、順次得た点数を累積することで、塩害リスクの点数を得るようにしてもよい。
【0021】
また、塩害評価部130は、塩害リスクマップの点数と、塩害リスクマップ上に自車両が存在した時間と、を乗算することで、塩害リスクの点数を得るようにしてもよい。
【0022】
塩害評価部130は、図示しないが、例えば、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、RAM(Random Access Memory)等の作業用メモリ、及び通信回路を有する。そして、上記の自車両への塩害の程度を評価する処理は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0023】
塩害評価部130により得られた評価結果は、記憶部140に記憶される。記憶された評価結果は、例えば車載モニターに表示される。また、評価結果は、例えば無線により外部に送信されてもよい。
【0024】
次に、本実施の形態の動作について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0025】
車両100は、塩害評価処理を開始すると、まずステップS11において前回計測から一定時間以上経過したか否か判断し、一定時間(例えば1秒~10分程度)以上経過するとステップS12に移る。ステップS12では、位置情報取得部110が車両の現在位置を計測する。
【0026】
続くステップS13において、塩害評価部130が、現在位置と塩害リスクマップとから、現在位置のタイル点数を調べる。そして、続くステップS14において、塩害評価部130が、累積点数(塩害リスク点数)に現在位置の点数を加算する。
【0027】
ここで、
図2の地点Aから地点Bを移動した際の点数計算の例について説明する。地点Aから地点Bまでの経路には0,1,2,3点のマスがあるが,各マスを10分ずつ走行しかつ1分ごとに点数加算した場合(つまりステップS11での一定時間=1分の場合)においては、塩害リスク点数は、0×10分+1×10分+2×10分+3×10分=60点、と算出される。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態によれば、車両100は、自車両の位置情報を取得する位置情報取得部110と、地点ごとの車両への塩害リスクを表す塩害リスクマップを取得する塩害リスクマップ取得部120と、位置情報取得部110により得られた位置情報と塩害リスクマップとに基づいて自車両への塩害の程度を評価する塩害評価部130と、を有することにより、走った経路に基づいて塩害リスクを定量評価でき、塩害を受けている程度を的確に評価できるようになる。
【0029】
また、塩害リスクマップとして、地図がタイル状に分割されており、かつ、各タイルが塩害リスクに応じて点数化されているものを用いたことにより、塩害リスクマップのデータ量及び計算量を少なくできるというメリットがある。勿論、一般的な塩害マップを使用してもよいが、車載器上で点数を計算する場合には計算リソースやメモリに上限があるため、実施の形態のようなタイル状に点数化された塩害リスクマップを用いると有利である。
【0030】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0031】
上述の実施の形態では、塩害評価部130は評価結果として、自車位置の塩害リスクマップ上の点数と、塩害リスクマップ上に自車両が存在した時間と、を乗算しそれを積算した積算値を求める場合について説明した。塩害評価部130は、これに加えて、或いはこれに代えて、自車位置と塩害リスクマップとから得た点数の加算速度(つまりリスク点数の増加速度)を評価結果として求めてもよい。また、塩害評価部130は、例えば耐塩害仕様の塗装を施した車両ならば係数をかけて点数の積算値が低くなるようにしてもよい。
【0032】
塩害評価部130により得られたリスク点数の累積値や増加速度は、例えば洗車や車両点検の頻度の目安として用いることができる。また、防錆剤の必要性の判断や使用頻度の目安として用いることができる。
【0033】
さらに、上述の実施の形態では、位置情報取得部110、塩害リスクマップ取得部120及び塩害評価部130を車両100に設ける場合について述べたが、本発明は、例えば位置情報取得部110を車両に設け、塩害リスクマップ取得部120及び塩害評価部130は車両以外の例えば管理サーバーに設け、車両の位置情報を管理サーバーに送って管理サーバーで塩害リスクを評価してもよい。つまり、位置情報取得部110、塩害リスクマップ取得部120及び塩害評価部130を有する塩害評価システムとして具現化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、車両の塩害を評価する技術として広く用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
100 車両
110 位置情報取得部
120 塩害リスクマップ取得部
130 塩害評価部