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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】真空バルブ
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/664 20060101AFI20240903BHJP
【FI】
H01H33/664 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022055477
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023147772
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】粟飯原 直也
(72)【発明者】
【氏名】道念 大樹
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-123433(JP,U)
【文献】特開平11-185576(JP,A)
【文献】実開昭56-005340(JP,U)
【文献】国際公開第2011/086699(WO,A1)
【文献】特開平07-085754(JP,A)
【文献】特開平05-190062(JP,A)
【文献】特開昭56-084829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/664
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動可能な可動側通電軸と、
前記可動側通電軸の軸線の延長上に配置される固定側通電軸と、
前記可動側通電軸の先端部に接続され、径方向に延びる可動側アームで接続される可動側第一コイルと、前記可動側第一コイルの内周側において前記可動側アームにさらに接続されている少なくとも1つ以上の可動側第二コイルとを有し、前記可動側第一コイルと前記可動側第二コイルとは同一平面上に周回し、周方向において前記可動側アーム毎にターンに分割され、それぞれの前記ターンはスリットを介して直接に接触しないように配置される可動側コイルと、
前記固定側通電軸の先端部に接続され、径方向に延びる固定側アームで接続される固定側第一コイルと、前記固定側第一コイルの内周側において前記固定側アームにさらに接続されている少なくとも1つ以上の固定側第二コイルとを有し、前記固定側第一コイルと前記固定側第二コイルとは同一平面上に周回し、周方向において前記固定側アーム毎に前記ターンに分割され、それぞれの前記ターンは前記スリットを介して直接に接触しないように配置される固定側コイルと、
前記可動側第一コイルの先端部上面に形成される可動側第一給電部と、
前記可動側第二コイルの先端部上面に形成される可動側第二給電部と、
前記固定側第一コイルの先端部上面に形成される固定側第一給電部と、
前記固定側第二コイルの先端部上面に形成される固定側第二給電部と、
前記可動側コイルの前記可動側第一給電部と前記可動側第二給電部の上面に接続される可動側接点と、
前記固定側コイルの前記固定側第一給電部と前記固定側第二給電部の上面に接続される固定側接点と、
を備えることを特徴とする真空バルブ。
【請求項2】
前記ターン間の空壁が軸方向において重なる
ことを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
前記可動側第一コイルと前記可動側第二コイルとが可動側導体で接続されており、前記可動側第一コイルの抵抗値と前記可動側第二コイルの抵抗値とが等しく、前記可動側導体との抵抗値よりも大きく、さらに、前記固定側第一コイルと前記固定側第二コイルとが固定側導体で接続されており、前記固定側第一コイルの抵抗値と前記固定側第二コイルの抵抗値とが等しく、前記固定側導体との抵抗値よりも大きい
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空バルブ。
【請求項4】
前記可動側第一コイルの断面積が、前記可動側第二コイルの断面積より大きく、さらに、前記固定側第一コイルの断面積が、前記固定側第二コイルの断面積より大きい
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項5】
前記可動側接点の表面と前記固定側接点の少なくとも1つの表面を凸形状とする
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項6】
前記ターン数がn個の場合に、前記固定側コイルと前記可動側コイルにおける前記空壁の軸方向における位置関係が、180/n度ずれる
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【請求項7】
前記可動側第一コイルの抵抗率が、前記可動側第二コイルの前記抵抗率より小さく、さらに、前記固定側第一コイルの前記抵抗率が、前記固定側第二コイルの前記抵抗率より小さい
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の真空バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
真空バルブは、真空を維持する絶縁容器内に、固定側電極及び可動側電極が配置され、回路の遮断および接続を行うものである。真空バルブは、事故発生時などに電気回路に流れる大電流を、固定側電極と可動側電極との間を閉状態から開状態にすることにより、遮断する機能を有する。電流を遮断する場合には、固定側電極と可動側電極との間にアーク放電が発生する。その状態が持続すると、固定側電極の接触部である固定側接点と、可動側電極の接触部である可動側電極が局所的に集中加熱され、温度上昇により絶縁破壊に至る。
【0003】
このアーク放電を消弧するために、固定側電極と可動側電極とには、接点と呼ばれる閉状態における接触部と、接点の背面に配置されるコイルを有する。固定側コイルと可動側コイルは、通電棒から軸方向に流れる電流を周方向へ流すため、通電棒とコイルの接触部とコイルと接点との接触部を有し、これを給電面と呼ぶ。
【0004】
さらに、固定側コイルと可動側コイルには、コイル抵抗増加による発熱を抑制するために、複数の円弧部に分割するスリットを有する。固定側コイルと可動側コイルには回転方向(XY方向)へ電流が流れることで、固定側接点と可動側接点の間に発生するアーク放電の放電電流と平行方向(Z方向)の磁場(縦磁界)が作用される。
【0005】
これによりアーク放電を構成する荷電粒子が、Z軸方向の磁束を中心に螺旋運動することで、アーク放電が固定側接点および可動側接点の表面全体に拡散し、発熱密度を低減することで、温度上昇を抑制し、絶縁破壊を回避する。
【0006】
アーク放電を構成する荷電粒子(イオン、電子)を縦磁界で補足するには、接点表面にある一定の閾値を超えた縦磁界強度(有効磁界強度)を印加されればよいので、有効磁界強度を超える領域が広いほどアーク放電の拡散面積が広がり、接点表面の発熱密度を低減できるため、接点表面温度を抑えることができる。つまり、アークの拡散面積が広いほど、遮断性能が向上する。
【0007】
例えば、特許文献1には、可動側および固定側コイルに、Z軸方向磁界(縦磁界)を発生する第一コイルと、その内側に設けた第一コイルとは逆方向の縦磁界を発生する第二コイルを設けることが開示されている。電流遮断時に流れる電流は、第一コイルと第二コイルに分流し、第二コイルによって発生した縦磁界は第一コイルによって発生した縦磁界を中央部では弱め、逆に周辺部では強めることによって縦磁界分布を均一にする旨について開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平5-190062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
真空バルブを用いて高電圧大電流を遮断する場合、大電流通電による接点の温度上昇を抑制するために電極径を大径化する必要がある。特許文献1の第二コイルは、コイル内側に発生する縦磁界同士で強め合うため、接点中央部で縦磁界強度が最大値を取る構成となっている。しかし、真空バルブで高電圧大電流を遮断するため、電極を大径化するに伴い固定側コイルと可動側コイルも大径化する必要があり、第二コイルの内側径も大きくなる。その場合、コイル内側に発生する縦磁界が干渉せず、接点外側から内側にかけて縦磁界強度が減衰し、中央付近で極小値を取るような分布となる。
【0010】
したがって、第一コイルと第二コイルで合成された縦磁界分布は接点中央付近で極端に低くなり、不均一化するといった課題がある。本開示では、電極を大径化した場合にも、接点表面の縦磁界強度を均一化して真空バルブの遮断性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る真空バルブは、可動可能な可動側通電軸と、可動側通電軸の軸線の延長上に配置される固定側通電軸と、可動側通電軸の先端部に接続され、径方向に延びる可動側アームで接続される可動側第一コイルと、可動側第一コイルの内周側において可動側アームにさらに接続されている少なくとも1つ以上の可動側第二コイルとを有し、可動側第一コイルと可動側第二コイルとは同一平面上に周回し、周方向において可動側アーム毎にターンに分割され、それぞれの前記ターンはスリットを介して直接に接触しないように配置される可動側コイルと、固定側通電軸の先端部に接続され、径方向に延びる固定側アームで接続される固定側第一コイルと、固定側第一コイルの内周側において固定側アームにさらに接続されている少なくとも1つ以上の固定側第二コイルとを有し、固定側第一コイルと固定側第二コイルとは同一平面上に周回し、周方向において固定側アーム毎にターンに分割され、それぞれの前記ターンはスリットを介して直接に接触しないように配置される固定側コイルと、可動側第一コイルの先端部上面に形成される可動側第一給電部と、可動側第二コイルの先端部上面に形成される可動側第二給電部と、固定側第一コイルの先端部上面に形成される固定側第一給電部と、固定側第二コイルの先端部上面に形成される固定側第二給電部と、可動側コイルの可動側第一給電部と可動側第二給電部の上面に接続される可動側接点と、固定側コイルの固定側第一給電部と固定側第二給電部の上面に接続される固定側接点と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、真空バルブの電極径を大型化したとしても、遮断性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1にかかわる真空バルブの断面図である。
図2】真空バルブの固定側電極および可動側電極、それらの周辺の斜視図である。
図3】固定側電極を構成する一部である固定側コイルの正面図である。
図4】固定側電極を構成する一部である固定側コイルの裏面図である。
図5】固定側電極を構成する一部である固定側コイルの側面図である。
図6】真空バルブが開極動作を実行した時の可動側コイルの可動側接点側を示す正面図である。
図7】真空バルブが開極動作を実行した時の固定側コイルの固定側接点側を示す正面図である。可動側電極を構成する一部である可動側コイルの裏面図である。
図8】電流が固定側通電軸から固定側コイルに流れた時に発生する磁界の方向を示す図である。
図9】電流が可動側通電軸から可動側コイルに流れた時に発生する磁界の方向を示す図である。
図10】可動側接点の表面に発生する縦磁界強度を示す分布図と、可動側コイルにおける電流と磁界の方向を示す断面図である。
図11】実施の形態3にかかわる可動側コイルにおける電流経路を示す正面図と断面図である。
図12】実施の形態3にかかわる可動側接点の表面に発生する縦磁界強度を示す分布図と、可動側コイルにおける電流と磁界の方向を示す断面図である。
図13】実施の形態4にかかわる可動側接点の表面に発生する縦磁界強度を示す分布図と、アーク放電発生直前にける固定側電極と可動側電極の断面図である。
図14】実施の形態5にかかわる可動側接点の表面に発生する縦磁界強度を示す分布図と、可動側コイルにおける電流と磁界の方向を示す断面図である。
図15】実施の形態1にかかわる固定側コイルおよび可動側コイルの正面図である。
図16】実施の形態6にかかわる固定側コイルおよび可動側コイルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この実施の形態1について、図1図5を参照し詳細に説明する。はじめに、図1~3および図6を参照して、実施の形態1に係る真空バルブ100の構成を説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態を実施するための実施の形態1に係る真空バルブ100の断面図である。筒状の絶縁容器3はアルミナ等のセラミックで構成される。絶縁容器3の一方の端部に、固定側端板4が配置される。さらに、絶縁容器3の他方の端部に、可動側端板5が配置される。
【0016】
固定側端板4に取り付けられる、固定側通電軸101の軸線の延長上に、可動側端板5を貫通するように、可動側通電軸201が取り付けられる。また、固定側通電軸101の端部には、固定側電極1を有する。固定側端板4、固定側通電軸101、および固定側電極1は、電気的に接続される。さらに、可動側通電軸201の端部には、可動側電極2を有する。可動側端板5には、Z方向に伸縮自在のベローズ6の一端側が取り付けられ、ベローズ6のもう一端側には、ベローズシールド7が取り付けられる。また、可動側端板5、ベローズ6、ベローズシールド7、可動側通電軸201、および可動側電極2は、電気的に接続される。
【0017】
さらに、絶縁容器3の内部には、金属などの導電性部材で形成されたアークシールド8を備える。アークシールド8は、固定側電極1と可動側電極2とを覆うように設置される。また、アークシールド8は、固定側電極1と可動側電極2との間にアーク放電が発生した場合、アーク放電の熱により固定側電極1と可動側電極2とから飛散する金属蒸気および金属粒子から他の部位を保護する役割を担う。
【0018】
図2は真空バルブ100の固定側電極1、可動側電極2の斜視図である。固定側コイル102は、固定側通電軸101の先端部に接続され、固定側接点103と固定側通電軸101の軸面104の間に配置される。さらに、固定側コイル102は、固定側通電軸101の軸面104の周縁に配置される。可動側コイル202は、可動側通電軸201の先端部に接続され、可動側接点203と可動側通電軸201の軸面204の間に設置される。さらに、可動側コイル202は、可動側通電軸201の軸面204の周縁に配置される。
【0019】
また、図2に示すように、固定側コイル102と可動側コイル202は互いに対向しており、固定側コイル102と可動側コイル202の通電方向が同一となるよう配置される。さらに、固定側コイル102と可動側コイル202を分割するスリット307a、307bの位置は回転方向において一致するよう配置される。
【0020】
なお、固定側コイル102と可動側コイル202はCuやAg等の低抵抗の金属で形成される。また、固定側電極1の接触面である固定側接点103と、可動側電極2の接触面である可動側接点203とは、対抗するように配置される。電極間の距離は、固定側接点103と可動側接点203との間の距離を示す。本実施の形態ではコイル部は、固定側コイル102と可動側コイル202と2つあるが、これに限定されず、そちらか一方だけでも良い。2つ設置することにより、より効果を奏する。
【0021】
図3は、真空バルブ100の固定側電極1を構成する一部である固定側コイル102の正面図である。固定側コイル102は可動側コイル202と同一方向の円周方向へ押し出された複数の導電性部材を有しており、固定側通電軸101を中心として外側から第一コイル301a、第二コイル302aと呼ぶ。第一コイル301aと第二コイル302aの端部が同一平面上において、固定側通電軸101、可動側通電軸201の径方向に延びるアーム306aと呼ばれる単一の導電性部材により接続されていることで、コの字型を形成している。
【0022】
また、固定側コイル102は等価的に1ターンとなるように、固定側コイル102の外周側から内側にかけてスリット307aを設けることで、複数に分割されている。さらに、固定側コイル102は固定側通電軸101の軸面104との導通を確保するため、第二コイル302aとアーム306aが交差する箇所の底面に給電面303aを設けている。
【0023】
固定側コイル102の第一コイル301aと第二コイル302aの間に空壁308aが形成されている。第一コイル301aと第二コイル302aとは同一平面上に周回し、周方向においてターン数が分割される。ターン数に分割されるとは、周方向においてアーム毎に第一コイル301aと第二コイル302aが分割されることをいう。アーム306a、306bの数が増えるほど、ターン数も増える。ここでは固定側コイル102について、説明しているが可動側コイル202も同様の仕組みである。
【0024】
図4は、真空バルブ100の固定側電極1を構成する一部である固定側コイル102の裏面図である。正面図と同様に、固定側コイル102と固定側接点103の導通を確保するために、第一コイル301aの端部上面に第一給電部304aを、第二コイル302aの端部上面に第二給電部305aを設けている。
【0025】
図5は、真空バルブ100の固定側電極1を構成する一部である固定側コイル102の側面図である。ここで、固定側コイル102を、正面図、裏面図、側面図を使って説明したが、可動側コイル202については、固定側コイル102と同様の仕組みであり、コイルが設置される箇所が固定側か可動側かだけの差になるので、正面図、裏面図、側面図での詳細な説明は割愛する。
【0026】
図6は、真空バルブ100が開極動作を実行した時の可動側コイル202の可動側接点203側を示す正面図である。ここで、図6を使って簡単に可動側コイル202について説明する。可動側コイル202は、円周方向へ押し出された複数の導電性部材を有しており、可動側通電軸201を中心として外側から第一コイル301b、第二コイル302bと呼ぶ。第一コイル301bと第二コイル302bの端部が同一平面上において、固定側通電軸101、可動側通電軸201の径方向に延びるアーム306bと呼ばれる単一の導電性部材により接続されていることで、コの字型を形成している。
【0027】
また、可動側コイル202は等価的に1ターンとなるように、可動側コイル202の外周側から内側にかけてスリット307bを設けることで、複数に分割されている。さらに、可動側コイル202は可動側通電軸201の軸面204との導通を確保するため、第二コイル302bとアーム306bが交差する箇所の底面に給電面を設けている。可動側コイル202の給電面は図6の裏側になるので図示しない。図3の固定側コイル102の給電面303aと同じ位置になる。
【0028】
可動側コイル202の第一コイル301bと第二コイル302bの間に空壁308bが形成されている。第一コイル301bと第二コイル302bとは同一平面上に周回し、周方向においてターン数が分割される。可動側コイル202は、可動側コイル202と可動側接点203の導通を確保するため、第一コイル301bの端部上面に第一給電部304bを、第二コイル302bの端部上面に第二給電部305bを設けている。
【0029】
図7は、真空バルブ100が開極動作を実行した時の固定側コイル102の固定側接点103側を示す正面図である。可動側コイル202と同様に、固定側コイル102と固定側接点103の導通を確保するため、第一コイル301aの端部上面に第一給電部304aを、第二コイル302aの端部上面に第二給電部305aを設けている。
【0030】
図1に矢印で示すY方向は、図1の紙面上の裏面から表面への方向を示し、矢印で示すX方向は、図1の紙面上の左から右への方向を示し、矢印で示すZ方向は、図1の紙面上の下から上への方向を示す。また、図2から図?に矢印で示すX方向、Y方向、およびZ方向は、図1に示すX方向、Y方向、およびZ方向とそれぞれ同様な方向を示す。
【0031】
さらに、図3~12にX方向、Y方向、およびZ方向を示す場合、X方向、Y方向、およびZ方向は、図1に示すX方向、Y方向、およびZ方向とそれぞれ同様な方向を示す。
【0032】
図1において、固定側電極1と可動側電極2を開状態にした直後は、電極間にアーク放電が局所的に発生する。その状態が持続すると、図2において固定側電極1の接触部である固定側接点103と、可動側電極2の接触部である可動側接点203が局所的に集中加熱され、温度上昇により絶縁破壊に至る。
【0033】
そこで、この構成を用いる場合、固定側コイル102と可動側コイル202には回転方向(XY方向)へ電流が流れることで、固定側接点103と可動側接点203の間に発生するアーク放電の放電電流と平行方向(Z方向)の磁場(縦磁界)が作用される。これによりアーク放電を構成する荷電粒子が、Z軸方向の磁束を中心に螺旋運動することで、アーク放電が固定側接点103および可動側接点203の表面全体に拡散し、発熱密度を低減することで、温度上昇を抑制し、絶縁破壊を回避する。
【0034】
ここで、アーク放電を構成する荷電粒子(イオン、電子)を縦磁界で補足するには、接点表面にある一定の閾値を超えた縦磁界強度(有効磁界強度Me)を印加されればよいと仮定すると、有効磁界強度Meを超える領域が広いほどアーク放電の拡散面積Amが広がり、接点表面の発熱密度を低減できるため、接点表面温度を抑えることができる。すなわちアークの拡散面積Amが広いほど、遮断性能が向上する。
【0035】
加えて、遮断電流が交流の零点を迎えた瞬間に発生する過渡回復電圧による絶縁破壊を回避する必要がある。したがって、零点において固定側接点103と可動側接点203の間の距離を大きく離した状態(長ギャップ)にしておく必要がある。
【0036】
つぎに、真空バルブ100の動作について説明する。真空バルブ100の内部は高い絶縁状態を維持するために、1×10-3Pa以下の真空状態に保たれる。また、固定側電極1と可動側電極2とを接続する閉状態と、固定側電極1と可動側電極2とを開放する開状態とを、切り替えることが可能である。
【0037】
すなわち、可動側通電軸201を移動することにより、開状態から閉状態への切り替え、あるいは閉状態から開状態へ切り替えることが可能である。図1は、固定側電極1と可動側電極2とが接続していない開状態である。言い換えると、固定側接点103と可動側接点203が接触していない状態である。
【0038】
つぎに、遮断動作時に発生するアーク放電を消弧するメカニズムについて説明する。アーク放電の発生位置は、遮断動作時に固定側接点103と可動側接点203とが最後に離れる点となる。この最終接触点901を起点として発生したアークは、固定側接点103から可動側接点203にかけて細い柱状の放電を形成する。
【0039】
このときの電流経路について、図6図7を参照して説明する。図6は、真空バルブ100が開極動作を実行した時の可動側コイル202の可動側接点203側を示す正面図である。図7は、真空バルブ100が開極動作を実行した時の固定側コイル102の固定側接点103側を示す正面図である。
【0040】
図7には固定側通電軸101から電流が流れた時の電流経路を破線矢印で示している。通電電流はZ軸に沿って固定側通電軸101から固定側コイル底面の給電面303aを通じ、固定側コイル102のアーム306aを介して固定側コイル102の第一コイル301aを流れる電流Isoと、固定側コイル102の第二コイル302aを流れる電流Isiが、XY平面において同一方向へ分流し、固定側コイル102の第一給電部304aと第二給電部305aを通じて固定側接点103へ流れる。アーク放電が発生している状態においては、固定側接点103へ流れた電流は、アーク放電を通じてZ軸方向に沿って可動側接点203へ流れる。
【0041】
図6には可動側接点203から可動側コイル202へ電流が流れた時の電流経路を破線矢印で示している。可動側接点203へ流れた電流は、可動側コイル上面の第一給電部304bを介して可動側コイル202の第一コイル301bの電流Imoと、第二給電部305bを介して可動側第二コイル302bの電流Imiが、XY平面において固定側コイル102の通電電流Iso、Isiと同一方向へ分流し、可動側コイル底面の給電面を通じて、可動側通電軸201へ流れる。
【0042】
図8は、図7に示すように電流が固定側通電軸101から固定側コイル102へ流れた時に発生する磁界の方向を示している。図7において固定側コイル102の第一コイル301aに流れる電流Isoは紙面時計回り方向へ通電することから、右ネジの法則に応じて、固定側コイル102と同一のXY平面上にはZ軸方向を主成分とした磁界が発生し、コイルの内側では負方向、外側では正方向の磁界Msoが印加される。
【0043】
また、固定側の第二コイル302bにおいても電流Isiが第一コイル301aの電流Isoと同一方向へ分流していることから、固定側コイル102と同一のXY平面上にはZ軸方向を主成分とした磁界が発生し、コイルの内側では負方向、外側では正方向の磁界Msiが印加される。
【0044】
図9は、図6に示すように電流が可動側通電軸201から可動側コイル202に流れた時に発生する磁界の方向を示している。図6に示す可動側コイル202の第一コイル301bにおける電流Imoの方向は、固定側コイル102の電流Isoの方向と同一であるため、可動側コイル202と同一のXY平面上にはZ軸方向を主成分とした磁界が発生し、コイルの内側では負方向、外側では正方向の磁界Mmoが印加される。
【0045】
また、可動側の第二コイル302bにおいても電流Imiが第一コイル301bの電流Imoと同一方向へ分流していることから、可動側コイル202と同一のXY平面上にはZ軸方向を主成分とした磁界が発生し、コイルの内側では負方向、外側では正方向の磁界Mmiが印加される。また、高電圧大電流のアーク放電を拡散させるためには長ギャップ状態において均一な縦磁界強度を保つ必要がある。
【0046】
図10は、本実施の形態1によって得られる可動側接点203の表面に印加される縦磁界分布を示す。図10の上段は、図9に示す可動側コイル202のa点からb点までに対応した可動側接点203の表面の縦磁界分布であり、下段は、可動側コイル202の第一コイル301bと第二コイル302bの配置図を示す。なお、本実施の形態における縦磁界は、交流電流のピーク時において接点表面に発生する縦磁界分布とする。
【0047】
ここで、固定側コイル102の第一コイル301aと可動側コイル202の第一コイル301bにより印加される縦磁界をMi、固定側コイル102の第二コイル302aまたは可動側コイル202の第二コイル302bにより印加される縦磁界をMo、MiとMoの合成縦磁界をMt、有効磁界強度をMeとする。また、Mmoは可動側コイル202の第一コイル301bによる縦磁界、Mmiは可動側コイル202の第二コイル302bによる縦磁界、Imoは可動側コイル202の第一コイル301bを流れる電流方向、Imiは可動側コイル202の第二コイル302bを流れる電流方向を示す。
【0048】
第一コイル301a、301bによる縦磁界Moは、第一コイル内側にZ軸正方向のピークを有し、可動側接点203の中央では縦磁界が発生しない分布となる。第二コイル302a、302bによる縦磁界Miは、第二コイル内側で発生する縦磁界が強め合い、可動側接点203の中央にZ軸正方向のピークを有する。
【0049】
一方で、第二コイル外側では縦磁界はZ軸負方向へ反転し、極小値を取る。上記Mo、Miの合成縦磁界Mtは、第二コイル302a、302bによる縦磁界Miが弱い領域では、第一コイル301a、301bによる縦磁界Moが補償し、第一コイル301a、301bによる縦磁界Moが弱い領域では第二コイル302a、302bによる縦磁界Miが補償される効果が得られる。
【0050】
特に、可動側接点203表面において、有効縦磁界強度Meより合成縦磁界Mtの方が大きい領域を、アーク拡散に対する有効縦磁界領域Aeと定義し、有効縦磁界領域Aeが広いほどアークを広く拡散することができ、接点表面の温度上昇を抑制することができる。言い換えると、有効縦磁界領域Aeが広いほど、遮断性能が高い。
【0051】
図10では、可動側接点203の周辺部の合成縦磁界Mtが有効縦磁界強度Meを下回っており、有効縦磁界領域Aeが接点中央部のみにアークが拡散する構成となっている。そのため、遮断性能を向上させるためには、接点周辺部において合成縦磁界Mt > 有効縦磁界強度Meとなるように設計することで、遮断性能を向上させることが可能となる。この方法については、実施の形態3、5、6で説明する。
【0052】
さらに、真空バルブ100を閉状態として、固定側通電軸101と可動側通電軸201の間に電流を通電した場合に、生じるジュール損失を低減する効果も得られる。固定側接点103と可動側接点203の材質は、CuやAgといった導電材料を主とした合金であるが、その導電率は純銅などに比べて低い。
【0053】
したがって、ジュール損失を低減するには、固定側コイル102と可動側コイル202内での電流通電経路を分岐することが、方策の一つである。従来のような単一コイルの真空バルブ100では第二コイル302aを有さない構造のため、第一コイル301aに全電流値の1/3が流れる。一方で、本実施の形態1では、第二コイル302aを設けることで、各コイルに流れる電流を全電流値の1/6に低減できる。したがって、各コイルに生じるジュール損失を1/2に低減でき、連続通電性能を向上させる効果も得られる。
【0054】
実施の形態2.
実施の形態1では図3図4図7図6に示すように、固定側コイル102の第一コイル301aと第二コイル302aの間に空壁308aが、同様に可動側コイル202の第一コイル301bと第二コイル302bの間に空壁308bが形成されている。
【0055】
本実施の形態2では空壁308a、308bが、同コイル部材と同じ材質で、かつ薄い導体で接続されていてもよいことを特徴とする。薄い導体の抵抗値をRt、コイルの抵抗値をRcとしたとき、Rt>Rcとなるように、つまり、第一コイル301a、301bの抵抗値と第二コイル302a、302bの抵抗値とが等しく、導体との抵抗値よりも小さくなるように、設計した場合、通電電流がアーム306a、306bを介して第一コイル301a、301bから第二コイル302a、302bへ導通させることができ、実施の形態1と同様に、接点表面の縦磁界分布を均一化する効果が得られる。さらに、コイル部材の切削量を減少できるため、コスト低減につながる。
【0056】
実施の形態3.
実施の形態1では図10に示すように、固定側および可動側の第一コイル301a、301bと第二コイル302a、302bの通電断面積が同じ場合について説明した。実施の形態1においては、第一コイル301a、301bの縦磁界Moに比べて第二コイル302a、302bの縦磁界Miが強く、接点表面における合成縦磁界Mtが接点中央でピークを有する分布となる。
【0057】
図11は、本実施の形態3における可動側コイル202の第一コイル301bと第二コイル302bの断面図である。本実施の形態3では第一コイル301a、301bの通電断面積をAo、第二コイル302a、302bの通電断面積をAiとしたとき、Ao>Aiとなることを特徴とする。第一コイル301a、301bの断面積が、第二コイル302a、302bの断面積より大きいことを特徴とする
【0058】
コイルによって発生する磁界の強度は、電流密度に依存する。そこで、本実施の形態3において、第一コイル301a、301bの通電断面積Aoを拡大し、通電電流値を増大させる。一方、第二コイル302a、302bの通電断面積Aiを縮小し、通電電流値を減少させる。
【0059】
図12は、本実施の形態3によって得られる可動側接点203の表面に印加される縦磁界分布を示す図である。図12の上段は、図11に示す可動側コイル202のa点からb点までに対応した可動側接点203の表面の縦磁界分布であり、下段は、本実施の形態3において可動側コイル202の拡張された第一コイル301bと、縮小された第二コイル302bの配置図である。第一コイル301bによる縦磁界Moは、第一コイル内側にZ軸正方向のピークを有し、可動側接点203の中央では縦磁界が発生しない分布となる。
【0060】
第二コイル302bによる縦磁界Miは、第二コイル内側で発生する縦磁界が強め合い、可動側接点203の中央にZ軸正方向のピークを有する。一方で、第二コイル外側では縦磁界はZ軸負方向へ反転し、極小値を取る。上記Mo、Miの合成縦磁界Mtは、第二コイル302bによる縦磁界Miが弱い領域では、第一コイル301bによる縦磁界Moが補償し、第一コイル301bによる縦磁界Moが弱い領域では第二コイル302bによる縦磁界Miが補償される効果が得られる。
【0061】
実施の形態1においては、第一コイル301a、301bの通電断面積Aoと第二コイル302a、302bの通電断面積Aiの関係がAo=Aiであり、第二コイル内側の縦磁界Miが強調される。一方、第二コイル外側においてZ軸負方向の縦磁界Miも強調されてしまうことから、第一コイル301a、301bによる縦磁界Moが相殺され、合成縦磁界Mtは接点周辺部において減少するといった課題があった。
【0062】
そこで、本実施の形態3においては、第一コイル301a、301bと第二コイル302a、302bの通電断面積の関係がAo>Aiであり、第二コイル内側の縦磁界Miの強度を抑制できる。そのため、第二コイル外側におけるZ軸負方向の縦磁界Miと第一コイル内側におけるZ軸正方向の縦磁界Moとの相殺効果を低減できる。よって、第一コイル301a、301bによる縦磁界Moの強度を増加させることができ、合成縦磁界Mtと有効縦磁界強度Meの関係は、接点全域においてMt>Meとなり、遮断性能を向上させることができる。
【0063】
実施の形態4.
実施の形態1において、アーク放電の発生位置は、遮断動作時に固定側接点103と可動側接点203とが最後に離れる点となる。すなわち固定側接点103と可動側接点203の微小凹凸などの影響を受けて、アーク放電の発生位置は、固定側接点103と可動側接点203のどの位置でもなりうる。例えば、アーク放電の発生位置が図10の有効縦磁界領域Aeの外側である場合、接点表面においてアーク放電が局所的に発生し続け、集中加熱されることにより、やがて絶縁破壊に至る。
【0064】
図13は、本実施の形態4における接点の表面構造を示す図である。図13では固定側接点103と可動側接点203の中心部に、Z軸方向に巨視的な凸形状を形成している。具体的には接点表面の有効縦磁界領域Aeに対応する箇所を凸形状にしている。つまり、可動側接点203の表面と固定側接点103の少なくとも1つの表面を凸形状とする。
【0065】
これにより、遮断動作時の固定側接点103と可動側接点203との最終接触点901を、有効磁界領域Ae内としやすく、発生するアーク放電を素早く拡散することができる。これによりアーク放電による局所加熱を回避し、遮断性能を安定化させることができる。
【0066】
実施の形態5.
実施の形態1では、図10に示すように、Z軸方向において第一コイル301a、301bと第二コイル302a、302bの位置が同じ状態について説明した。実施の形態1においては、第一コイル301a、301bの通電断面積Aoと第二コイル302a、302bの通電断面積Aiの関係がAo=Aiであり、第二コイル内側の縦磁界Miが強調される。
【0067】
一方、第二コイル外側においてZ軸負方向の縦磁界Miも強調されてしまうことから、第一コイル301a、301bによる縦磁界Moが相殺され、合成縦磁界Mtは接点周辺部において減少するといった課題があった。
【0068】
図14は、本実施の形態5の構成と接点表面の縦磁界分布を示す図である。図14の上段は図9に示す可動側コイル202のa点からb点までに対応した可動側接点203の表面の縦磁界分布であり、下段は、可動側コイル202の第一コイル301bと第二コイル302b、および可動側接点203の断面図の位置関係、ならびに第一コイル301bにより発生する磁界Mmoと第二コイル302bにより発生する磁界Mmiを示す。
【0069】
実施の形態5では、Z軸方向における第一コイル301bと可動側接点203の距離Lmoと、第二コイル302bと可動側接点203の距離Lmiの関係がLmi>Lmoとなるよう配置される。これにより第二コイル内側の縦磁界Miの強度を抑制できる。そのため、第二コイル外側におけるZ軸負方向の縦磁界Miと第一コイル内側におけるZ軸正方向の縦磁界Moとの相殺効果を低減できる。
【0070】
ここでは可動側コイル202の例で説明したが、固定側コイル102も同様である。固定側コイル102の第一コイル301aの上面と固定側接点103の表面との距離Lso、第二コイル302aの上面と固定側接点103の表面との距離Lsiの関係がLsi>Lsoとなるよう配置される。両方のコイルが合わさるとの大小関係がLmi=Lsi>Lmo=Lsoとなるように配置される。
【0071】
よって、第一コイル301a、301bによる縦磁界Moの強度を増加させることができ、合成縦磁界Mtと有効縦磁界強度Meの関係は、接点全域においてMt>Meとなるため、遮断性能を向上させることができる。
【0072】
実施の形態6.
実施の形態1において、アーク放電の発生位置は、遮断動作時に固定側接点103と可動側接点203とが最後に離れる点となる。すなわち固定側接点103と可動側接点203の微小凹凸などの影響を受けて、アーク放電の発生位置は、固定側接点103と可動側接点203のどの位置でもなりうる。例えば、アーク放電の発生位置が図10の有効縦磁界領域Aeの外側にある場合、接点表面においてアーク放電が局所的に発生し続け、加熱されることにより、やがて絶縁破壊に至る。
【0073】
図15は実施の形態1における、固定側コイル102と可動側コイル202との回転角を説明する正面図である。図15は、固定側コイル102と可動側コイル202との中心を原点Oとし、この原点Oから紙面上の上方向に伸びた基準軸θoから時計回りを正の角度とした場合の固定側コイル102と可動側コイル202の正面図である。図15の上の図が固定側コイル102、図15の下の図が可動側コイル202を表す。
【0074】
図15を参照して、固定側コイル102と可動側コイル202は第一コイル301a、301bを2個有する。固定側コイル102の角度θs1は、基準軸θoから原点Oを中心に正方向に線分を回転させた場合に、最初に接する先端部305stとこの線分とが成す角度である。
【0075】
同様に角度θs2は、基準軸θoから原点Oを中心に正方向に線分を回転させた場合に、角度θs1の次に接する先端部305stとこの線分とが成す角度である。つまり、アーム毎に分割されるターン毎の先端部305stの角度である。コイル部は周方向にターンに分割される。なお、固定側コイル102の第一コイル301aと第二コイル302aは複数(i)個配置されていてもよく、それらの角度をまとめて角度θsn(n=1、2、…、i)とする。
【0076】
同様に、可動側コイル202の角部θm1は、基準軸θoから原点Oを中心に正方向に線分を回転させた場合に、最初に接する先端部305mtとこの線分とが成す角度である。同様に角度θm2は、基準軸θoから原点Oを中心に正方向に線分を回転させた場合に、角度θm1の次に接する先端部305mtとこの線分とが成す角度である。なお、可動側コイル202の第一コイル301bと第二コイル302bは複数(i)個配置されていてもよく、それらの角度をまとめて角度θmn(n=1、2、…、i)とする。
【0077】
実施の形態1においては、角度(θsn―θmn)=0度となるよう配置されている。言い換えると、固定側スリット307aと可動側スリット307bとが重なる状態となる。つまり、ターン間の空壁308a、308bが軸方向において重なる状態となる。
【0078】
この場合、第一コイル301a、301bの上面の給電部304a、304bと第二コイル302a、302bの上面の給電部305a、305bにおける通電電流はZ軸方向に流れる。したがって、本構造において給電部直上の接点表面は、縦磁界が発生しない弱点部となる。したがって、アーク放電が発生する電極乖離直後(短ギャップ時)にこの弱点部でアーク放電が発生した場合、アーク放電が拡散するまでの時間が長くなり、温度上昇により絶縁破壊に至る可能性が高い。
【0079】
図16は、実施の形態6における、固定側コイル102と可動側コイル202との回転角を説明する正面図である。図16の上の図が固定側コイル102、図16の下の図が可動側コイル202を表す。
【0080】
図16に示すように本実施の形態6においては、角度(θsn―θmn)=180/i度となるよう配置されている。言い換えると、固定側スリット307aと可動側スリット307bとが直交する状態となる。ここで、nはコイル部が分割される数をいい、ターン数をいう。ターン数がn個の場合に、固定側コイル102と可動側コイル202における空壁の軸方向における位置関係が、180/n度ずれることになる。
【0081】
本構造では、アーク放電が発生する電極乖離直後において、固定側コイル102の上面の給電部304a、305a直上の接点表面には、可動側コイル202による縦磁界が印加されるため、弱点部を補償することができる。逆に、可動側コイル202の上面の給電部304b、305b直上の接点表面には、固定側コイル102による縦磁界が印加されるため、弱点部を補償することができる。したがって、弱点部にアーク放電が発生する確率を低減し、遮断性能を安定化させることができる。
【0082】
実施の形態7
実施の形態1においては、固定側コイル102と可動側コイル202が同一金属あるいは合金で形成されており、CuやAg等の低抵抗材料の使用を想定した。本実施の形態7では可動側第二コイル302aと固定側コイル102の第二コイル302aの材料は、例えば前記金属に加えて、Cr、Ni、Mo、W、V、Nb、Ta等の金属あるいは、これらの合金で形成されていてもよい。
【0083】
このとき、可動側コイル202の第一コイル301bと固定側コイル102の第一コイル301aの抵抗値をRo、本実施の形態7で示した金属あるいは、それらの合金で構成された可動側第二コイル302aおよび固定側コイル102の第二コイル302aの抵抗率をRiとしたとき、Ri>Roを満たすことを特徴とする。つまり、第一コイル301a、301bの抵抗率が、第二コイル302a、302bの前記抵抗率より小さくなることを特徴とする。
【0084】
Ri>Roと設計することにより、第一コイル301a、301bへ流れる電流値を増大させ、第二コイル302a、302bへ流れる電流値を減少させることで、固定側接点103および可動側接点203の表面における周辺部の縦磁界強度を強めることができる。これにより、有効縦磁界領域Aeが接点全域に広がることで、遮断性能の向上をもたらすことができる。
【符号の説明】
【0085】
1:固定側電極、2:可動側電極、3:絶縁容器、4:固定側端板、5:可動側端板、6:ベローズ、7:ベローズシールド、8:アークシールド、100:真空バルブ、101:固定側通電軸、102:固定側コイル、103:固定側接点、104:固定側軸面、201:可動側通電軸、202:可動側コイル、203:可動側接点、204:可動側軸面、301a:固定側第一コイル、302a:固定側第一コイル、303a:固定側コイル底面給電部、304a:固定側コイル上面第一給電部、305a:固定側コイル上面第一給電部、306a:固定側アーム、307a:固定側スリット、308a:固定側空壁、301b:可動側第一コイル、302b:可動側第二コイル、304b:可動側コイル上面第一給電部、305b:可動側コイル上面第二給電部、306b:可動側アーム、307b:可動側スリット、308b:可動側空壁、305st:固定側コイル上面外側給電部先端、901:最終接触点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16