(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-02
(45)【発行日】2024-09-10
(54)【発明の名称】化粧シート及びこれを用いた化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240903BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240903BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/20 A
E04F13/07 B
(21)【出願番号】P 2022068792
(22)【出願日】2022-04-19
(62)【分割の表示】P 2018065952の分割
【原出願日】2018-03-29
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 将徳
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-319411(JP,A)
【文献】特開2006-182896(JP,A)
【文献】特開2011-213000(JP,A)
【文献】特開2011-042041(JP,A)
【文献】特開2017-202674(JP,A)
【文献】特開2008-081578(JP,A)
【文献】特開2016-168787(JP,A)
【文献】特開2016-168785(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0055136(US,A1)
【文献】特許第7063056(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
E04F13/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材及び表面保護層を有し、該表面保護層が紫外線吸収剤を含み、該基材が白色顔料粒子を含み、
前記基材が、ヒンダードアミン系光安定剤を更に含み、
前記白色顔料粒子の一次粒子の平均粒子径が0.02μm以上1.5μm以下であり、
該白色顔料粒子が、酸化チタンの表面の一部又は全部にAl及びSiの元素を含む被膜が形成されており、Ti、Al、及びSiの元素を下記の質量比で含む粒子であり、
前記基材中の前記白色顔料粒子の含有量a質量%と前記基材の厚みbμmの積を100で除した値[(a×b)/100]が、0.1以上20以下である、
外装用の化粧材に用いられる化粧シート。
Tiを1としたとき、
Alが0.02以上0.20未満であり、かつ、Siが0.002超0.070以下である。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤である、請求項1に記載の
外装用の化粧材に用いられる化粧シート。
【請求項3】
前記表面保護層が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1又は2に記載の
外装用の化粧材に用いられる化粧シート。
【請求項4】
裏打基材、前記基材、及び前記表面保護層の順で有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の
外装用の化粧材に用いられる化粧シート。
【請求項5】
前記基材と前記表面保護層との間に装飾層を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の
外装用の化粧材に用いられる化粧シート。
【請求項6】
被着材と請求項1~5のいずれか1項に記載の
外装用の化粧材に用いられる化粧シートを有する化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及びこれを用いた化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
壁、天井、床、玄関ドア等の建築物の内装材又は外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装材又は外装用部材には、一般的に、鋼板等の金属部材、樹脂部材、木質部材を被着材として、これらの被着材に化粧シートを貼り合わせたものが用いられる。これらの部材に用いられる化粧シートには、意匠性の観点より酸化チタン(TiO2)等の白色顔料を基材に含有させることが知られている。
【0003】
一方で、酸化チタンは光励起により強い酸化力を示すものであり、酸化チタンを含む化粧部材を外装用途に適用すると、酸化チタンの光触媒作用により基材に含まれる樹脂の分解や化学反応を引き起こすおそれがあり、樹脂の劣化や層剥離が生じ耐候性が低下することがある。
これに対し、酸化チタンの光触媒作用を励起する光は波長帯域380nm以下の紫外線を含むことに着目し、光に曝される化粧シートの表面保護層に紫外線吸収剤を添加し、紫外線による酸化チタンの光触媒作用を抑制する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、酸化チタンの光触媒作用を抑えるために、無機金属酸化物等で酸化チタンを表面処理した白色顔料粒子を用いる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-168785号公報
【文献】特許2016-168787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実用されている紫外線吸収剤の吸収波長帯域は、380nmから可視光線帯域まで連続しているものが多い。これは波長380nmが可視線と紫外線との境界近傍の波長であることによる。そのため、経時での層剥離の抑制や、更に紫外線吸収能を高めるために表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量を増加すると、可視光線の短波長帯域の紫から青の光も吸収して表面保護層の色相が黄色化してしまい化粧部材の意匠性に劣るものとなる。また、上記紫外線吸収剤が表面保護層からブリードアウトして化粧シート表面の汚染や艶等の外観変化を生じたり、更には化粧シート中の紫外線吸収剤濃度が減少したりして耐候性の低下を引き起こすことがある。
また、表面処理により酸化チタンの表面に皮膜が形成された白色顔料粒子は、当該皮膜の性状によっては樹脂への分散性が低下することがあり、その結果、紫外線吸収剤の効果が十分に発揮できず、耐候性等に劣る化粧部材になる。
他に、化粧部材にカーボンブラック等を含有させて、酸化チタンの光励起を促す波長を吸収することで光触媒作用を抑制する方法もあるが、化粧部材の意匠を制限することになり好ましくない。
【0006】
そこで本発明は、白色顔料粒子の分散性が良好で、優れた耐候性を有する化粧シート、及び当該化粧シートを用いた化粧材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者は下記本発明に想到し、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0008】
[1]少なくとも基材及び表面保護層を有し、該表面保護層が紫外線吸収剤を含み、該基材が白色顔料粒子を含み、
該白色顔料粒子が、酸化チタンの表面の一部又は全部にAl及びSiの元素を含む被膜が形成されており、Ti、Al、及びSiの元素を下記の質量比で含む粒子である、化粧シート。
Tiを1としたとき、
Alが0.02以上0.20未満であり、かつ、Siが0.002超0.070以下である。
[2]前記基材が、ヒンダードアミン系光安定剤を更に含む、上記[1]に記載の化粧シート。
[3]前記紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤である、上記[1]又は[2]に記載の化粧シート。
[4]前記表面保護層が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の化粧シート。
[5]前記基材中の前記白色顔料粒子の含有量a質量%と前記基材の厚みbμmの積を100で除した値[(a×b)/100]が、0.1以上20以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の化粧シート。
[6]裏打基材、前記基材、及び前記表面保護層の順で有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の化粧シート。
[7]前記基材と前記表面保護層との間に装飾層を有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の化粧シート。
[8]被着材と上記[1]~[7]のいずれかに記載の化粧シートを有する化粧材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、白色顔料粒子の分散性が良好で、優れた耐候性を有する化粧シート、及び当該化粧シートを用いた化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の化粧シートの一例の断面を示す模式図である。
【
図2】本発明の化粧シートの一例の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<化粧シート>
本発明の化粧シートは、少なくとも基材及び表面保護層を有し、該表面保護層が紫外線吸収剤を含み、該基材が白色顔料粒子を含み、
該白色顔料粒子が、酸化チタンの表面の一部又は全部にAl及びSiの元素を含む被膜が形成されており、Ti、Al、及びSiの元素を特定の質量比で含む粒子であることを特徴とする。
本発明の化粧シートは、Ti、Al、及びSiの元素を特定の質量比で含む白色顔料粒子を基材に含むことで基材中の当該粒子の分散性が良好となり、更に酸化チタンの表面が被覆されているので光触媒作用が抑えられ、優れた耐侯性を発現することができる。
また、本発明の化粧シートの耐候性は、表面保護層に含まれる紫外線吸収剤により更に向上させることができ、一方で前記のとおり本発明の化粧シートは白色顔料粒子により優れた耐候性を発現することができるので、多量の紫外線吸収剤を含有することによる化粧シートの黄色化を避けることもできる。
更に、本発明の化粧シートは、カーボンブラック等を用いて酸化チタンの光触媒作用を抑制する場合とは異なり、化粧シートの色彩が制限されることがなく、化粧シートの意匠性に優れる効果も有し得る。
【0012】
[基材]
(白色顔料粒子)
本発明で用いられる白色顔料粒子は、酸化チタンの表面の一部又は全部にAl及びSiの元素を含む被膜が形成されており、Ti、Al、及びSiの元素を下記〈条件〉の質量比で含む粒子である。
〈条件〉Tiを1としたとき、Alが0.02以上0.20未満であり、かつ、Siが0.002超0.070以下である。
Alの質量比が上記範囲外であると基材中の白色顔料粒子の分散性が悪くなり色むらが生じることがある。また、白色顔料粒子の分散性が悪いと、基材に光安定剤を含有させた場合、基材中の特定箇所において光安定剤の濃度が低くなりより優れた耐候性が得られず、また層剥離を引き起こすおそれがある。また、Siの質量比が上記範囲外であると化粧シートの耐候性に劣る。
Alの上記質量比の好ましい範囲は、分散性の観点から、0.025以上が好ましく、0.03以上がより好ましい。またAlの上記質量比は、0.16以下が好ましく、0.12以下がより好ましい。
Siの上記質量比の好ましい範囲は、耐候性の観点から、0.003以上が好ましく、0.004以上がより好ましい。またSiの上記質量比は、0.060以下が好ましく、0.040以下がより好ましい。
【0013】
酸化チタンには、アナターゼ型、ブルッカイト型及びルチル型があるが、上記白色顔料粒子に用いる酸化チタンとしては、白色顔料としての隠蔽性及び耐候性の観点からルチル型であることが好ましい。
また、酸化チタンの表面の一部又は全部にAl及びSiの元素を含む被膜が形成された白色顔料粒子は、上記酸化チタンを少なくともAl及びSiの元素を含む無機金属酸化物で表面処理することにより得ることができる。
上記無機金属酸化物としては、例えばアルミナ及びシリカを用いることができる。また、酸化チタン表面に形成される皮膜にはAl及びSi以外の元素を含んでもよい。Al及びSi以外の元素を含む無機金属酸化物としては、ジルコニア、酸化錫、酸化アンチモン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0014】
基材中の白色顔料粒子の含有量a質量%と基材の厚みbμmの積を100で除した値[(a×b)/100]は、0.1以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることが更に好ましい。また、上記[(a×b)/100]の値は、20.0以下であることが好ましく、15.0以下であることがより好ましく、10.0以下であることが更に好ましい。基材中の白色顔料粒子濃度に関し、上記[(a×b)/100]の値が上記範囲内であれば、化粧シートが優れた耐候性を発現するのに好適である。
【0015】
上記白色顔料粒子の一次粒子の平均粒径は、0.02μm以上1.5μm以下が好ましく、0.15μm以上0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.3μm以下が更に好ましい。白色顔料粒子の平均粒径が上記範囲内であると、分散性及び耐候性に優れ、高い隠蔽性とともに、意匠性が良好となる。
ここで、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50として求めることができる値である。
【0016】
基材は、白色顔料粒子を含む塗料を塗布してなる塗布膜であっても、白色顔料を含む樹脂組成物を成形してなるフィルムであってもよい。
基材が白色顔料粒子を含む塗料を塗布してなる塗布膜である場合、塗料に用いられるバインダー樹脂としては、特に制限はなく、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
上記基材は、上記樹脂の単層、あるいは同種又は異種樹脂による複層のいずれの構成であってもよい。また、基材が上記塗布膜である場合、化粧シートは後述の裏打基材を有することが好ましい。
【0017】
また、基材が白色顔料を含む樹脂組成物を成形してなるフィルムである場合、樹脂組成物に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などが使用される。これらの中で、加工特性を考慮すると、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びABS樹脂が好ましく、特にポリオレフィン樹脂が好ましい。本発明においては、これらの樹脂を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
上記基材は、上記樹脂の単層、あるいは同種又は異種樹脂による複層のいずれの構成であってもよい。
【0018】
基材は、上記白色顔料粒子以外の着色剤を含んだ着色基材であってもよい。上記白色顔料粒子以外の着色剤としては、カーボンブラック、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の着色剤が挙げられる。
着色の態様には特に制限はなく、透明着色であってもよく、不透明着色であってもよい。
【0019】
基材には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレーなどの無機充填剤、水酸化マグネシウムなどの難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられ、中でも耐候性の観点から光安定剤、紫外線吸収剤が好ましく、光安定剤がより好ましい。上記添加剤は単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0020】
(光安定剤)
上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤及びその化合物が好ましく、また、ブリードアウトしにくい高分子量タイプも使用することもできる。高分子量ヒンダードアミン化合物は、エチレンやその他モノマーとの共重合タイプ(例えばエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体)でも構わないし、ポリエチレンを始めとするポリマーにグラフト付加させたものでも構わない。その場合、例えばエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体とヒンダードアミン系光安定剤を含有させることもできる。
例えば、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル(メタ)アクリレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオシキ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジル)-2-n-ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラ(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,5,8,12-テトラキス〔4,6-ビス{N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミノ}-1,3,5-トリアジン-2-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2-第三オクチルアミノ-4,6-ジクロロ-s-トリアジン/N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物などが挙げられる。
上記光安定剤及び化合物は単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、分子中にピペリジン環構造を少なくとも2個以上有しかつ分子量が500以上のヒンダードアミン化合物を好適に使用することができる。上記ヒンダードアミン化合物のピペリジン環の数が2個未満では十分な耐候性が得られにくく、また、分子量が500未満では揮発しやすくなり、長期の耐候性を得ることが難しい可能性がある。
【0021】
基材中の光安定剤の含有量は、基材を構成する樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましい。また基材中の光安定剤の含有量は、基材を構成する樹脂100質量部に対し、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下が更に好ましい。光安定剤の含有量が上記範囲内であれば、ブリードアウトすることなく耐候性により優れる。
【0022】
基材が塗布膜である場合、塗布膜の厚さは、意匠性の観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、3μm以上が更に好ましい。また塗布膜の厚さは30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。
基材がフィルムである場合、フィルムの厚さは、耐候性、更には加工特性及び耐傷性を向上させる観点から、40μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、60μm以上が更に好ましい。またフィルムの厚さは200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。
【0023】
[表面保護層]
表面保護層は、好ましくは硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。当該硬化物は、熱硬化樹脂組成物の硬化物であってもよいが、優れた耐候性及び耐傷性等の表面特性を向上させる観点から、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基を有するものである。ここで、電離放射線硬化性官能基とは、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0024】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
耐候性及び耐傷性、更には加工特性を向上させる観点から、官能基数は2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下が更に好ましく、特に2以上3以下が好ましい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
更に、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
【0026】
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。耐候性及び耐傷性、更には加工特性を向上させる観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。
【0027】
これらの重合性オリゴマーの官能基数は、耐候性及び耐傷性、更には加工特性を向上させる観点から、2以上8以下のものが好ましく、上限としては、6以下がより好ましく、4以下が更に好ましく、特に3以下が好ましい。
また、これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、2,500以上7,500以下が好ましく、3,000以上7,000以下がより好ましく、3,500以上6,000以下が更に好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。本発明においては、このような重量平均分子量を有し、かつ官能基数を有する重合性オリゴマーを用いることにより、表面保護層だけでなく中間樹脂層中の紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制し、より優れた耐候性を得ることができ、更には適度な硬度を有する表面保護層となるため、耐傷性、加工特性を向上させることができる。
【0028】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレート等とともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明において、電離放射線硬化性樹脂としては、耐候性及び耐傷性、更には加工特性を向上させる観点から、重合性オリゴマーを含むものであることが好ましい。電離放射線硬化性樹脂中の重合性オリゴマーの含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0030】
(紫外線吸収剤)
表面保護層に含まれる紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が挙げられる。中でも、上述の電離放射線を照射によっても変色しにくい観点から、好ましくはトリアジン系紫外線吸収剤である。紫外線吸収剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、トリアジン環に、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基及びこれらの基を含む有機基から選ばれる少なくとも一つの有機基が三つ連結したヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましく、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が更に好ましい。表面保護層は、化粧シートの最表面に位置する層であるため、層からブリードアウトしにくいものが好ましく、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は分岐構造を有するため、ブリードアウトしにくくなることが期待され、耐候性能の観点から、表面保護層に用いられる紫外線吸収剤として特に好ましいものである。
【0032】
【0033】
一般式(1)中、R11は2価の有機基であり、R12は-C(=O)OR15で示されるエステル基であり、R13、R14及びR15は各々独立して1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して1~5の整数である。
【0034】
R11の2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基等の脂肪族炭化水素基が挙げられ、耐候性の観点から、アルキレン基が好ましく、その炭素数は、好ましくは1以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。アルキレン基、アルケニレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,1-エチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン、1,2-プロピレン、2,2-プロピレン等の各種プロピレン基(以下、「各種」は、直鎖状、分岐状、及びこれらの異性体のものを含むものを示す。)、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種へプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基、各種ウンデシレン基、各種ドデシレン基、各種トリデシレン基、各種テトラデシレン基、各種ペンタデシレン基、各種ヘキサデシレン基、各種ヘプタデシレン基、各種オクタデシレン基、各種ノナデシレン基、各種イコシレン基が挙げられる。
【0035】
R13及びR14の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アリール基、アリールアルキル基等の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基が好ましい。中でも、R13及びR14の1価の有機基としては、フェニル基が好ましい。
アリール基としては、炭素数が好ましくは6以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下のアリール基、例えば、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等が挙げられる。アリールアルキル基としては、炭素数が好ましくは7以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下のアリールアルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基、各種メチルベンジル基、各種エチルベンジル基、各種プロピルベンジル基、各種ブチルベンジル基、各種ヘキシルベンジル基等が挙げられる。
【0036】
R15の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。すなわち、R12としては、アルキルエステル基、アルケニルエステル基が好ましく、アルキルエステル基がより好ましい。
アルキル基としては、炭素数が好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは6以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、各種イコシル基が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数が好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下のアルケニル基、例えば、ビニル基、各種プロペニル基、各種ブテニル基、各種ペンテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種ノネニル基、各種デセニル基、各種ウンデセニル基、各種ドデセニル基、各種トリデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種イコセニル基が挙げられる。
【0037】
一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物としては、より具体的には、R11が炭素数1以上20以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数1以上20以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上20以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が好ましく、R11が炭素数1以上12以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数2以上16以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上12以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物がより好ましく、R11が炭素数1以上8以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数6以上12以下のアルキル基であるアルキルエステル基であり、R13及びR14が炭素数6以上10以下のアリール基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が更に好ましく、R11が炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R12及びR15が炭素数8のアルキル基であるエステル基であり、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物が特に好ましい。
【0038】
一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物としては、更に具体的には、下記化学式(2)で示される、R11がエチレン基であり、R12及びR15がイソオクチル基であるエステル基であり、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1のヒドロキシフェニルトリアジン化合物、すなわち2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジンが好ましく、このヒドロキシフェニルトリアジン化合物は、例えば、市販品(「TINUVIN479」、BASF社製)として入手可能である。
トリアジン系紫外線吸収剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
【0040】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2-エチル-ヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、オクチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートが挙げられる。また、これらの化合物にビニル基、アリル基などの官能基を有するものを用いることができる。これらのシアノアクリレート系紫外線吸収剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3-[3-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。また、これらの化合物に(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などの官能基を有するものを用いることができる。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノントリヒドレート、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ジエチルアミノ-2’-ヘキシルオキシカルボニルベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、1,4-ビス(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシフェノキシ)ブタン等を挙げることができる。これらのベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量は、基材を構成する樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。また基材中の紫外線吸収剤の含有量は、基材を構成する樹脂100質量部に対し、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、ブリードアウトすることなく耐候性により優れ、また表面保護層の黄変化を抑制するうえでも好適である。
【0044】
表面保護層には、必要に応じて、紫外線吸収剤以外の添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、光安定剤、耐摩耗性向上剤、重合促進剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、溶剤、着色剤等が挙げられ、より優れた耐候性を得るため、光安定剤等の耐候剤を用いることが好ましい。上記添加剤は単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0045】
表面保護層の厚さは、耐候性、更には加工特性及び耐傷性を向上させる観点から、1.5μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上が更に好ましい。また表面保護層の厚さは20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。
【0046】
[裏打基材]
本発明の化粧シートは、例えば
図2で示すように、裏打基材3、基材1、及び表面保護層2の順で有することができる。裏打基材は、化粧シートを補強したり、被着材との接着性を付与したり、隠蔽性を付与したりするために必要に応じて設けることができ、前記基材が塗布膜である場合に特に好適である。
裏打基材としては、樹脂シート、紙、不織布、織布、金属箔等が挙げられる。上記樹脂シートに用いられる樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
裏打基材の厚さは、目的に合わせて適宜決定できるが、通常、10~500μm以上が好ましく、15~200μmがより好ましく、20~100μmが更に好ましい。
【0047】
[装飾層]
本発明の化粧シートは、意匠性を向上させる観点から、例えば
図2で示すように、基材1と前記表面保護層2との間に装飾層4を有してもよい。
装飾層は、例えば、全面を被覆する着色層(いわゆるベタ着色層)であってもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層であってもよいし、またこれらを組み合わせたものであってもよい。例えば、被着材の地色を着色隠蔽する場合には、ベタ着色層とすることで、着色隠蔽しつつ、意匠性を向上させることができるし、更に意匠性を向上させる観点から、ベタ着色層と絵柄層とを組み合わせてもよいし、一方、被着材の地模様を生かす場合は、ベタ着色層とせずに絵柄層のみを設ければよい。
【0048】
装飾層に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合したものを使用することがきる。
バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらの中で特にポリウレタン系樹脂が好適である。
【0049】
着色剤としては、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。また、着色剤としてチタン白を用いる場合、基材に含まれる前記白色顔料粒子を用いることが、分散性及び耐候性の観点から好ましい。
【0050】
装飾層の厚さは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、被着材の地色を着色隠蔽でき、かつ意匠性を向上させる観点から、0.5~20μmが好ましく、1~10μmがより好ましく、2~5μmが更に好ましい。
【0051】
[接着剤層]
本発明の化粧シートは、接着剤層を設けてもよい。特に、基材と表面保護層との間に装飾層が設けられる場合、装飾層と表面保護層を接着させるために、接着剤層を設けることが好ましい。接着剤層を構成する接着剤としては特に制限はなく、ウレタン樹脂系接着剤、ビニル樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、セルロース樹脂系接着剤などが挙げられる。
接着層の厚さは、十分な接着性が得られる観点から、0.1~30μmが好ましく、1~15μmがより好ましく、2~10μmが更に好ましい。
【0052】
[透明樹脂層]
本発明の化粧シートは、透明樹脂層を設けてもよい。特に、装飾層を保護する観点から、装飾層上に直接、又は接着剤層などの他の層を介して透明性樹脂層を設けることができる。
透明性樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が好ましく挙げられる。中でも、耐候性及び耐傷性等の表面特性の向上の観点から、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリオレフィン樹脂が更に好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、樹脂基材を構成し得るものとして例示した樹脂が挙げられ、中でもポリプロピレン樹脂が好ましい。
透明性樹脂層は、必要に応じて、添加剤が配合されていてもよく、例えば、上記基材中に配合し得る添加剤として例示したものを用いることができる。各種の添加剤の中でも、紫外線吸収剤、光安定剤といった耐候剤を用いることが好ましい。添加剤の添加量は特に制限はなく、要求特性等に応じて適宜設定できる。
【0053】
透明性樹脂層の厚さは、装飾層の保護及び化粧シートの取り扱いの観点から、10~150μm以上が好ましく、30~120μm以上がより好ましく、50~100μm以上が更に好ましい。
【0054】
透明性樹脂層は、透明性樹脂層と他の層との層間密着性の向上等のために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施すことができる。これらの表面処理は処理する樹脂の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から、好ましく用いられる。
また、透明性樹脂層と他の層との層間密着性の向上のために、透明性樹脂層の片面又は両面にプライマー層を形成する等の処理を施してもよい。
【0055】
[プライマー層]
本発明の化粧シートは、プライマー層を設けてもよい。プライマー層を設ける場合、装飾層と表面保護層との間に設けることが好ましい。プライマー層を設けることにより、装飾層と表面保護層の密着性を高めることができ、かつ、表面保護層に対する応力が緩和され、表面保護層の耐候劣化による割れを抑制することが可能となり、耐久性を著しく向上させることができる。
プライマー層は、例えば、上記装飾層に用いるバインダーとして例示した樹脂が好ましく挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上を併用することができる。上記樹脂としては、アクリル-ウレタン樹脂や、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体とアクリルポリオール樹脂との混合物等を用いることができる。また、プライマー層は、上記樹脂に、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を適宜混合した樹脂組成物により形成することができる。
プライマー層の厚さは、密着性を向上させる観点から、0.1~10μmが好ましく、0.5μm~8μmがより好ましく、1~6μmが更に好ましい。
【0056】
[化粧シートの製造方法]
本発明の化粧シートの製造方法について、本発明の化粧シートとして好ましい態様の一つである、基材、装飾層、接着剤層、透明樹脂層、プライマー層、及び表面保護層を順に有する化粧シートを例にとって、その製造方法を説明する。
本発明の化粧シートは、例えば、基材に装飾層を設ける工程、該装飾層上に接着剤層、透明樹脂層、及びプライマー層を設ける工程、並びに、該プライマー層上に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層を形成する工程を順に経ることにより製造することができる。
【0057】
基材に装飾層を設ける工程は、前記白色顔料粒子を含む基材上に、装飾層の形成に用いられるインキを塗布して所望の着色層、絵柄層を設けることにより行われる。該インキの塗布は、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式、好ましくはグラビア印刷法により行う。
【0058】
装飾層上に接着剤層、透明樹脂層、及びプライマー層を設ける工程は、基材上に設けられた上記装飾層に接着剤を塗布して接着剤層を形成した後に、透明樹脂層を構成する樹脂組成物を用いて、透明樹脂層を押出しラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーション等の方法により接着及び圧着させて積層して行うことができる。さらに、透明樹脂層を設けた後に、プライマー層を構成する樹脂組成物を用いて、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布して行うことができる。
【0059】
プライマー層上に表面保護層を形成する工程は、プライマー層上に紫外線吸収剤を含む硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層を形成する工程である。
表面保護層を形成するための、樹脂組成物の塗布は、硬化後の厚さが所定の厚さとなるように、好ましくはグラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式により、より好ましくはグラビアコートにより行う。
表面保護層の形成に電離放射線樹脂組成物を用いる場合、該樹脂組成物の塗布により形成した未硬化樹脂層は、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して硬化物とすることで、表面保護層となる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
照射線量は、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy(0.5~30Mrad)、好ましくは10~50kGy(1~5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
【0060】
<化粧材>
本発明の化粧材は、被着材と前述の化粧シートを有する。本発明の化粧材は、具体的には、化粧シートの基材側の面と被着材とを対向させて積層したものである。
【0061】
[被着材]
被着材としては、各種素材の平板、曲面板等の板材、円柱、角柱等の立体形状物品、シート(或いはフィルム)等が挙げられる。例えば、杉、檜、松、ラワン等の各種木材からなる木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の板材や立体形状物品等として用いられる木質部材;鉄或いは炭素鋼等の鉄合金、アルミニウム或いはジュラルン等のアルニウム合金、銅或いは真鍮等の銅合金、チタニウム等の金属の板材、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる金属部材;ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の板材や立体形状物品等として用いられる窯業部材;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる樹脂部材等が挙げられる。また、これらの部材は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
被着材は、上記のなかから用途に応じて適宜選択すればよく、壁、天井、床等の建築物の内装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材を用途とする場合は、木質部材、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましく、玄関ドア、門扉、屋根材、柵、塀等の外装用部材、窓枠、扉等の建具を用途とする場合は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましい。
【0062】
被着材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上5mmがより好ましく、0.5mm以上3mm以下が更に好ましい。
【0063】
[接着層]
被着材と化粧シートとは、優れた接着性を得るため、接着層を介して貼り合わせられることが好ましい。すなわち、本発明の化粧材は、少なくとも被着材、接着層、基材、及び表面保護層を順に有する部材であることが好ましい。
接着層に用いられる接着剤としては、特に限定されず、公知の接着剤を使用することができ、例えば、感熱接着剤、感圧接着剤等の接着剤が好ましく挙げられる。この接着層を構成する接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネート化合物等を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤も適用し得る。
また、接着層には、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜選択して用いることができる。
【0064】
接着層は、上記の樹脂を溶液、あるいはエマルジョン等の塗布可能な形態にしたものを、グラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
接着層の厚さは特に制限はないが、優れた接着性を得る観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下が更に好ましい。
【0065】
[化粧材の製造方法]
化粧材は、化粧シートと被着材とを積層する工程を経て製造することができる。
本工程は、被着材と、本発明の化粧シートとを積層する工程であり、被着材の装飾を要する面と、化粧シートの基材側の面とを対向させて積層する。被着材と化粧シートとの積層する方法としては、例えば、接着剤を間に介して化粧シートを板状の被着材に加圧ローラーで加圧して積層するラミネート方法、接着剤を間に介して化粧シートを供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、被着材を構成する複数の側面に順次化粧シートを加圧接着して積層していくラッピング加工、また、固定枠に固定した化粧シートが軟化する所定の温度になるまでシリコーンゴムシートを介してヒーターで加熱し、加熱され軟化した化粧シートに真空成形金型を押し付け、同時に真空成形金型から真空ポンプ等で空気を吸引し化粧シートを真空成形金型に密着させる真空成形加工等が好ましく挙げられる。
【0066】
ラミネート加工やラッピング加工において、ホットメルト接着剤(感熱接着剤)を用いる場合、接着剤を構成する樹脂の種類にもよるが、加温温度は160℃以上200℃以下が好ましく、反応性ホットメルト接着剤では100℃以上130℃以下が好ましい。また、真空成形加工の場合は加熱しながら行うことが一般的であり、80℃以上130℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以上120℃以下である。
【0067】
<用途>
以上のようにして得られる化粧材は、任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。また、化粧シートを鋼板等に貼着した後、Vカット加工、ラッピング加工等の曲げ加工を施すこともできる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装材又は外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装材又は外装用部材等に用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
(評価及び測定方法)
(1)耐候性の評価
各実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、サンシャインウェザーメーター(「WEL-300」、スガ試験機株式会社製)を用いて、ブラックパネル温度63℃、120分中18分降雨の条件下で6000時間放置する耐候試験を行った。耐候試験後の化粧材の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎:外観上大きな変化は確認されなかった。
○:基材に軽微なクラックが確認された。
×:基材に大きなクラック、あるいは基材と表面保護層との剥離や浮き等の異常の少なくともいずれかが確認された。
【0070】
(2)分散性の評価
各実施例及び比較例で得られた化粧シートの厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。基材中に分散した白色顔料粒子の分散性を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:白色顔料粒子の均一な分散が確認された。
×:白色顔料粒子の分散に均一性が乏しく、一部凝集が確認された。
【0071】
[実施例1]
基材として、酸化チタンの表面にAl及びSiの元素を含む被膜が形成された白色顔料粒子、及びヒンダードアミン系光安定剤としてビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネートを樹脂100質量部に対し3質量部含有する、厚さ60μmのポリプロピレンシートを用いた。上記白色顔料粒子は、Ti:Al:Siの質量比が1:0.05:0.003であり、基材中の上記白色顔料粒子の含有量は10質量%であり、上記白色顔料粒子の一次粒子の平均粒径は0.26μmであった。
上記基材の両面にコロナ放電処理を施した後、基材の表面(一方の面)に、アクリル-ウレタン樹脂からなる印刷インキを用いてグラビア印刷し、装飾層を形成した。
次いで、装飾層の上に、ウレタン樹脂系接着剤を乾燥後の厚みが3μmとなるように塗布し、透明な接着剤層を形成した。
更に接着剤層の上に、ポリプロピレン系樹脂をTダイ押出し機により加熱溶融押出しし、厚み80μmとなるようにポリプロピレンからなる透明性樹脂層を形成した。
その後、透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体及びアクリルポリオールからなる樹脂成分を含む樹脂組成物を含む塗布液で、厚みが4g/m2となるように塗布し、厚さは約4μmのプライマー層を形成した。
最後に、電離放射線硬化性樹脂組成物として、重量平均分子量約5000、3官能のウレタンアクリレートオリゴマー100質量部に、トリアジン系紫外線吸収剤として2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジンを4質量部含有させ、グラビアコート法にてプライマー層上に塗膜を形成した。その後、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させることにより、厚さ5μmの表面保護層(5g/m2)を形成させて化粧シートを得た。
得られた化粧シートについて、上記の評価を行った。その評価結果を表1に示す。
【0072】
[実施例2及び3]、[比較例1及び2]
実施例1において用いた白色顔料粒子の代わりに、表1に示すTi:Al:Siの質量比で酸化チタンの表面が被覆された白色顔料粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記の評価を行った。その評価結果を表1に示す。
【0073】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の化粧シート及び化粧材は、耐候性に優れることから、特に外装用の化粧材として有用である。
【符号の説明】
【0075】
10.化粧シート
1.基材
2.表面保護層
3.裏打基材
4.装飾層
a.白色顔料粒子